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「ウ」への米国支援兵器約2400億円分が記録不十分も [安全保障全般]

22年2月開戦から23年6月までの国防省監察官調査
23年末で総額6兆6000億円の援助物資の4%以下
「汚職による横流し等の形跡は一切ない」「記録は改善中」

Javelin FMG-148.jpg1月11日付DefenseOne記事が、米国防省監察官が米国からウクライナへの支援供給武器の管理追跡状況(2022年2月の開戦から2023年6月までの記録を監査)について調査&監査した結果、開戦時の各種混乱、米国監視担当官の開戦時不在やその後の要員不足、安全確保面からの前線状況確認不足、ウクライナ及び米国側双方の事務作業の遅れ等々から、

開戦後から大量に援助された携帯防空兵器Stingerや対戦車ミサイルJavelins等々の追跡記録が、約1.67Billiomドル(約2400億円)相当分(2023年末時点で援助装備品総額は約6兆6000億円で、その3.7%に相当)に関し不明確だと指摘している、と報じています

Stinger SAM.jpgただ、記録不十分な責任が米側の事務処理不備に起因する部分も相当部分含まれ、また米国からの援助装備品の追跡管理は時間が経過するほど改善されており、かつ援助品がウクライナ側担当者の汚職により横流し転売されたりした形跡は全くなく、

むしろ貴重な援助兵器をウクライナ兵士が死守しようとして落命したケースも多数あり、現在もウクライナ兵約8000名の生死や所在が不明な全面戦争の混乱の中、教訓とすべき点はあるが致し方ない側面が多い、との論調のDefenseOne記事となっています

記録不備の原因等として報告書は
ukuraine UAV.jpg●在ウクライナ米国大使館が、開戦の2022年2月から同年5月まで閉鎖されており、この5か月間に現地で支援物資をフォローする人員が不在だった
●同大使館再開後も、監査を担う国防協力室の職員配置がウクライナ各地のオフィスに一か所1名で、かつ米国政府が危険な前線地域への米職員の立ち入りを制限したことから、2022年春頃から大量に提供された支援兵器を前線で十分に追跡記録&確認できなかった

●米本土側でも、通常の支援物資の流れとは異なる多様なルートで、短期間に大量の兵器が提供されたことから、事務スタッフのデータ処理が追い付かず、入力漏れ等の事態が多発した
●それでも、2023年2月時点では総データの87%が規定で定められた期限までに把握&データベース入力されなかったが、2023年6月時点でデータベース更新不備率が56%にまで低下している

ウクライナ議会の支援物資監視担当議員のコメント
ukraine war lesson2.jpg●(開戦当初の混乱はあったかもしれないが、)現時点で米側監査官は24時間いつでもどこでも監査することができ、午前2時に対戦車ミサイルの保管状況確認を受け入れることもある。
●我が国はロシアの侵略を受けた全面戦争下にあり、現在約8000名のウクライナ軍兵士が生死不明の状態だが、そのような混乱の中でも、物質追跡が出来なくなったものについては「追跡不能」や「所在不明」として報告している
●わが軍兵士は援助兵器を大切に使用しており、貴重な兵器を守るために犠牲となった兵士が多数いることも忘れないでほしい

在ウクライナ米国大使経験者のJohn Herbst氏は、
●支援物資追跡に関しては、支援対象国の管理要員が不足しているケースが多いのだから、米国がリーダーシップを発揮して監視要員を増員すべき

CSISのMark Cancian研究員
Ukraine air defense.jpg●支援物資の追跡管理に関しては、米国主導で民間業者の人員を投入することで、米国政府職員のオーバープレゼンスを避けつつ、管理レベルを向上させることが得策
●ロシアの戦車を目の前にして、援助兵器使用記録を適時に入力することが困難なのは当然であり、ウクライナ側の状況は致し方ない
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この監査は、武器援助を担当する米国防省自身が行っている点で不十分だとのご意見もありましょうし、2400億円との不明援助装備等の規模に関しても決して小さいとは言えません。

DefenseOne記事の英文タイトルは如何にもですが、記事の内容は冷静な視点を維持していると感じますし、まんぐーすも致し方ないと思います。今後の教訓とすればよいと思います。

様々な視点から「ウ」の教訓
「23106月:米陸軍首脳「ウ」の教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/10/13/5129/
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「イラン製無人機が猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「アジア太平洋への教訓は兵站」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「22年6月:米陸軍首脳のウの教訓」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245/
「SpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/

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