CSISも今度は弾薬調達&提供問題レポート [安全保障全般]
台湾有事に緊要な兵器弾薬が1週間で枯渇の現状
それら緊要兵器の製造には2年以上必要で・・・
従来から指摘されていた問題を再提起
1月23日、CSISのSeth Jones国際安全保障部長で副理事長が「戦時に空っぽの弾薬庫:Empty Bins in a Wartime Environment」とのレポートを発表し、米軍や西側諸国軍の弾薬不足問題を軍需産業側面から指摘しています。
最近、各方面からの弾薬関連の課題指摘をご紹介していますが、特にロシアによるウクライナ侵略で、大国が間接的にでも対峙する戦いでは長期化が避けられず、その中で弾薬や兵器が想定以上のペースで消費されることが明らかになったことを契機として、以前から繰り返し指摘されていた(紛争時には表面化するが、戦後に忘却の繰り返し)問題や課題が、再びクローズアップされた形になっています
CSISは予算制度、官僚的鈍重な手続き、必要数見積もりの甘さと長期計画の欠落、法的規制の存在などの視点から問題を指摘して改善を提言しています。これまでの提言と重なる部分も多いと思いますが、米国がこの状態なら、日本をはじめ西側諸国は更に悲惨な状況だと言えますので、繰り返しになってもご紹介しておきます
弾薬や兵器の現状
●例えば米軍は、ウクライナに160両の160両のM777 155mm榴弾砲を提供した結果、米陸軍の在庫は「Low」状態になったが、製造企業のBAE Systems社は、毎年150両の発注を数年継続してくれる約束が無ければ、製造ライン再立ち上げは採算に合わないと主張している
●同じくウクライナに8000発提供(保有総数約15000発から提供)したJavelin携帯式対戦車ミサイルは、提供分を補充するのに現状の軍需産業能力だと12年必要である
●中国の強力な防空網下で戦うことが求められる台湾有事には、長射程の精密誘導ミサイルが極めて重要で、空対艦ミサイルLRASM、空対地ミサイルJASSM、艦対艦ミサイルSM-6、対艦トマホークミサイル等の確保が重要だが、これの保有量は僅か1週間で底をつく程度で、新規発注&製造には20か月以上が必要である。(最重要のLRASMは、必要数確保に最低10年は必要との見積もりあり)
●つまり戦いは始まってからでは補充弾薬を新規提供することは不可能であり、予算制度、官僚的鈍重な手続き、必要数見積もりの甘さ、法的規制の存在等々の多様な視点から改善を図って平時から備えておくことが必要である
Defense-News報道のCSIS提言概要
●国防製造法(Defense Production Act)で、調達に時間を要する原材料(long-lead subcomponents)、例えば関連金属、推進剤、関連電子部品などを、国家戦略備蓄(strategic munitions reserve)として確保しておき、非常時の弾薬調達を1-2年短縮する。(完成弾での国家戦略備蓄も含まれていると推測)
●米議会の理解を得て、予算科目の枠を超え、柔軟に弾薬調達予算を確保できるような枠組みの確立
●米軍だけでなく、同盟国を含めた弾薬や兵器の必要数の再見積もりと、同見積もりを基礎とした長期的な弾薬調達計画作成と軍需産業との長期的な製造協議
●鈍重で非効率でリスク回避志向の強い現在のFMS(foreign military sales)制度の改革。一般商業ベース取引より2年も余分に時間が必要な現FMS制度の改革
●併せて、緊要な同盟国が相手であっても、重要技術情報が関係すると更に12-18ヵ月余分に輸出承認手続きが必要な現制度の改善
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CSIS関連webページ
→https://www.csis.org/analysis/empty-bins-wartime-environment-challenge-us-defense-industrial-base
報告書現物44ページ
→https://csis-website-prod.s3.amazonaws.com/s3fs-public/2023-01/230119_Jones_Empty_Bins.pdf?VersionId=mW3OOngwul8V2nR2EHKBYxkpiOzMiS88
筆者による報告書YouTube解説(4分弱)
44ページのレポートを確認しておらず、1月23日付Defense-News記事だけで同レポートをご紹介していますので、多分に誤解がある恐れがあります。ご容赦ください。ただ、断片的な紹介になっているCSISの提言にも、容易に実行可能なものは全くなく、繰り返す歴史の中で改善できなかった困難な課題が山積していると考えてよいでしょう。中国やロシアだって似たようなものだと推測されます
過去記事でもご紹介した、最もニーズが高く、不足の危機感が共有されている空対艦ミサイルLRASMの例だと、800-1200発必要と想定される中で200発しか保有しておらず、現在年間35発の製造能力を2023年に88発まで増強する計画ですが、それでも必要数確保までには10年必要な計算になります
自衛隊の現状? 「たまに撃つ 弾が無いのが 玉に傷」との川柳があるくらいで、上記レポートの「1週間」程度よりも寂しく、この川柳でググってみると、「3日」以下とか、「3回」以下とか、「出撃2回」以下とか、様々に表現されている方がいらっしゃいます・・・
弾薬量の圧倒的不足問題
「米空軍の弾薬ロードマップ検討」→
「米軍は弾薬にもっと予算配分を」→https://holylandtokyo.com/2022/12/02/3990/
「賛否交錯:輸送機からミサイル投下」→https://holylandtokyo.com/2022/11/15/3936/
「弾薬不足:産業基盤育成から」→https://holylandtokyo.com/2022/10/19/3758/
「ウ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/
「Stand-inとoffのバランス不可欠」→https://holylandtokyo.com/2020/07/01/562/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
それら緊要兵器の製造には2年以上必要で・・・
従来から指摘されていた問題を再提起
1月23日、CSISのSeth Jones国際安全保障部長で副理事長が「戦時に空っぽの弾薬庫:Empty Bins in a Wartime Environment」とのレポートを発表し、米軍や西側諸国軍の弾薬不足問題を軍需産業側面から指摘しています。
最近、各方面からの弾薬関連の課題指摘をご紹介していますが、特にロシアによるウクライナ侵略で、大国が間接的にでも対峙する戦いでは長期化が避けられず、その中で弾薬や兵器が想定以上のペースで消費されることが明らかになったことを契機として、以前から繰り返し指摘されていた(紛争時には表面化するが、戦後に忘却の繰り返し)問題や課題が、再びクローズアップされた形になっています
CSISは予算制度、官僚的鈍重な手続き、必要数見積もりの甘さと長期計画の欠落、法的規制の存在などの視点から問題を指摘して改善を提言しています。これまでの提言と重なる部分も多いと思いますが、米国がこの状態なら、日本をはじめ西側諸国は更に悲惨な状況だと言えますので、繰り返しになってもご紹介しておきます
弾薬や兵器の現状
●例えば米軍は、ウクライナに160両の160両のM777 155mm榴弾砲を提供した結果、米陸軍の在庫は「Low」状態になったが、製造企業のBAE Systems社は、毎年150両の発注を数年継続してくれる約束が無ければ、製造ライン再立ち上げは採算に合わないと主張している
●同じくウクライナに8000発提供(保有総数約15000発から提供)したJavelin携帯式対戦車ミサイルは、提供分を補充するのに現状の軍需産業能力だと12年必要である
●中国の強力な防空網下で戦うことが求められる台湾有事には、長射程の精密誘導ミサイルが極めて重要で、空対艦ミサイルLRASM、空対地ミサイルJASSM、艦対艦ミサイルSM-6、対艦トマホークミサイル等の確保が重要だが、これの保有量は僅か1週間で底をつく程度で、新規発注&製造には20か月以上が必要である。(最重要のLRASMは、必要数確保に最低10年は必要との見積もりあり)
●つまり戦いは始まってからでは補充弾薬を新規提供することは不可能であり、予算制度、官僚的鈍重な手続き、必要数見積もりの甘さ、法的規制の存在等々の多様な視点から改善を図って平時から備えておくことが必要である
Defense-News報道のCSIS提言概要
●国防製造法(Defense Production Act)で、調達に時間を要する原材料(long-lead subcomponents)、例えば関連金属、推進剤、関連電子部品などを、国家戦略備蓄(strategic munitions reserve)として確保しておき、非常時の弾薬調達を1-2年短縮する。(完成弾での国家戦略備蓄も含まれていると推測)
●米議会の理解を得て、予算科目の枠を超え、柔軟に弾薬調達予算を確保できるような枠組みの確立
●米軍だけでなく、同盟国を含めた弾薬や兵器の必要数の再見積もりと、同見積もりを基礎とした長期的な弾薬調達計画作成と軍需産業との長期的な製造協議
●鈍重で非効率でリスク回避志向の強い現在のFMS(foreign military sales)制度の改革。一般商業ベース取引より2年も余分に時間が必要な現FMS制度の改革
●併せて、緊要な同盟国が相手であっても、重要技術情報が関係すると更に12-18ヵ月余分に輸出承認手続きが必要な現制度の改善
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CSIS関連webページ
→https://www.csis.org/analysis/empty-bins-wartime-environment-challenge-us-defense-industrial-base
報告書現物44ページ
→https://csis-website-prod.s3.amazonaws.com/s3fs-public/2023-01/230119_Jones_Empty_Bins.pdf?VersionId=mW3OOngwul8V2nR2EHKBYxkpiOzMiS88
筆者による報告書YouTube解説(4分弱)
44ページのレポートを確認しておらず、1月23日付Defense-News記事だけで同レポートをご紹介していますので、多分に誤解がある恐れがあります。ご容赦ください。ただ、断片的な紹介になっているCSISの提言にも、容易に実行可能なものは全くなく、繰り返す歴史の中で改善できなかった困難な課題が山積していると考えてよいでしょう。中国やロシアだって似たようなものだと推測されます
過去記事でもご紹介した、最もニーズが高く、不足の危機感が共有されている空対艦ミサイルLRASMの例だと、800-1200発必要と想定される中で200発しか保有しておらず、現在年間35発の製造能力を2023年に88発まで増強する計画ですが、それでも必要数確保までには10年必要な計算になります
自衛隊の現状? 「たまに撃つ 弾が無いのが 玉に傷」との川柳があるくらいで、上記レポートの「1週間」程度よりも寂しく、この川柳でググってみると、「3日」以下とか、「3回」以下とか、「出撃2回」以下とか、様々に表現されている方がいらっしゃいます・・・
弾薬量の圧倒的不足問題
「米空軍の弾薬ロードマップ検討」→
「米軍は弾薬にもっと予算配分を」→https://holylandtokyo.com/2022/12/02/3990/
「賛否交錯:輸送機からミサイル投下」→https://holylandtokyo.com/2022/11/15/3936/
「弾薬不足:産業基盤育成から」→https://holylandtokyo.com/2022/10/19/3758/
「ウ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/
「Stand-inとoffのバランス不可欠」→https://holylandtokyo.com/2020/07/01/562/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
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