米海軍の最優先事業コロンビア級SSBNの初契約 [Joint・統合参謀本部]
オハイオ級2500億円に対しコロンビア級は6000億円以下を目標
5日、米海軍のコロンビア級戦略原潜計画責任者であるScott Pappano少将が会見し、2031年に運用開始を予定するコロンビア級SSBN(オハイオ級の後継)の1番艦(Columbia)の建造と2番艦(Wisconsin)の建造準備契約を、約1兆円($9.47 billion)でGeneral Dynamics Electric Boatと結んだと発表しました
14隻保有するオハイオ級戦略原潜を、最低12隻のコロンビア級に更新する計画で、2021年から1番艦の建造に着手し、2027年に米海軍に引き渡し、2031年に運用開始を予定するものです
現有のオハイオ級は1970年後半に1番艦が建造され、運用中の14隻は古いもので運用開始から36年、新しいものでも24年が経過しており、米国核兵器の2/3を担うSSBNの更新は米海軍の最優先プロジェクトだと歴代の海軍トップは言い続けたきたところです
コロンビア級は全長は約560フィートで、オハイオ級とほぼ同じですが、2万トンを超える潜水艦は米海軍史上最大で、ロシア海軍のボレイ級SSBNと同等の大きさです。SLBM(Trident II D5)搭載数をオハイオ級の24発から16発に削減しますが、新しい電気推進システムを搭載し、42年間燃料交換不要で維持修理費を大幅に削減可能な原子炉の搭載が予定されています
問題は価格です。現在のオハイオ級が1隻2500億円なのに対し、コロンビア級は当初4900億円を目指したものの、現在では5900億円以下を目指すとの流れになっており、米海軍では「核抑止任務は別枠予算で見てほしい」と訴え続けており、今後毎年1隻ペースの調達が継続可能なのか全く目途が立っていません
また一方で、対中国を考えた米海軍の将来体制検討では、攻撃型原潜バージニア級の急速増強(毎年3隻)との数字も出てエスパー前国防長官も推していた状況で、弱体化している海軍用造船所の能力で何が可能で何を優先すべきかも議論になっているようです
6日付Military.com記事によれば
●5日、Pappano海軍少将は記者会見で、「本日の契約は少なくとも12隻調達するコロンビア級SSBNにとっての重大なマイルストーンとなった」と述べ、海軍省のJames Geurts調達開発担当次官補は「多くの努力によって今日を迎えることができたが、これだけでは不十分であり、皆が協力して巨大プロジェクトを遂行し、核抑止任務遂行に貢献しなければならない」と決意を新たにした
●またプロジェクトリーダーのJon Rucker海軍大佐は、「オハイオ級建造計画を1970年代に立ち上げて以来、初の戦略原潜プロジェクトであり、またオハイオ級の老朽状態から、ミスの許されない余裕のない重要プロジェクトだ」と難しさ厳しさを表現した
●また同大佐は、コロンビア級戦略原潜は2080年代まで長年に渡り運用する重要装備で、一番艦は初期投資も含め約1兆円(the lead ship will cost $9.2 billion)になると語った
●米海軍は今後毎年1隻ペースでコロンビア級を調達する計画だが、米国防省はバージニア級攻撃原潜の建造ペースアップも重点に挙げており、米海軍艦艇を担当する造船施設の労働力の質の低下問題視され、建造ミスや火災も頻発する最近の状況の中、潜水艦建造の実行可能性に疑問視するレポートがCongressional Research Serviceから10月に出されている
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米海軍は、トラブル続きで完成できないフォード級空母がニミッツ級の約2倍の価格で、コロンビア級戦略原潜もオハイオ級の2.5倍の価格と、重要装備品の開発管理がでたらめな軍種として悪名を轟かせており、コロンビア級原潜にも不安の声が多く聞かれる状況です
サイバーや宇宙や電磁波戦も含めた、抑止概念の再整理が叫ばれる中、コロンビア級戦略原潜プロジェクトの将来が明るいとは思えません。せめて、1番艦契約が粛々と遂行されることを祈ります
コロンビア級(オハイオ級の後継)SSBN計画の関連
「NKのおかげSSBNに勢い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-2
「コロンビア級の予定概要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-27
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13
多くの専門家が核兵器関連予算の縮小を予期
「バイデン政権で予想される国防政策の変化は?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-09
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
5日、米海軍のコロンビア級戦略原潜計画責任者であるScott Pappano少将が会見し、2031年に運用開始を予定するコロンビア級SSBN(オハイオ級の後継)の1番艦(Columbia)の建造と2番艦(Wisconsin)の建造準備契約を、約1兆円($9.47 billion)でGeneral Dynamics Electric Boatと結んだと発表しました
14隻保有するオハイオ級戦略原潜を、最低12隻のコロンビア級に更新する計画で、2021年から1番艦の建造に着手し、2027年に米海軍に引き渡し、2031年に運用開始を予定するものです
現有のオハイオ級は1970年後半に1番艦が建造され、運用中の14隻は古いもので運用開始から36年、新しいものでも24年が経過しており、米国核兵器の2/3を担うSSBNの更新は米海軍の最優先プロジェクトだと歴代の海軍トップは言い続けたきたところです
コロンビア級は全長は約560フィートで、オハイオ級とほぼ同じですが、2万トンを超える潜水艦は米海軍史上最大で、ロシア海軍のボレイ級SSBNと同等の大きさです。SLBM(Trident II D5)搭載数をオハイオ級の24発から16発に削減しますが、新しい電気推進システムを搭載し、42年間燃料交換不要で維持修理費を大幅に削減可能な原子炉の搭載が予定されています
問題は価格です。現在のオハイオ級が1隻2500億円なのに対し、コロンビア級は当初4900億円を目指したものの、現在では5900億円以下を目指すとの流れになっており、米海軍では「核抑止任務は別枠予算で見てほしい」と訴え続けており、今後毎年1隻ペースの調達が継続可能なのか全く目途が立っていません
また一方で、対中国を考えた米海軍の将来体制検討では、攻撃型原潜バージニア級の急速増強(毎年3隻)との数字も出てエスパー前国防長官も推していた状況で、弱体化している海軍用造船所の能力で何が可能で何を優先すべきかも議論になっているようです
6日付Military.com記事によれば
●5日、Pappano海軍少将は記者会見で、「本日の契約は少なくとも12隻調達するコロンビア級SSBNにとっての重大なマイルストーンとなった」と述べ、海軍省のJames Geurts調達開発担当次官補は「多くの努力によって今日を迎えることができたが、これだけでは不十分であり、皆が協力して巨大プロジェクトを遂行し、核抑止任務遂行に貢献しなければならない」と決意を新たにした
●またプロジェクトリーダーのJon Rucker海軍大佐は、「オハイオ級建造計画を1970年代に立ち上げて以来、初の戦略原潜プロジェクトであり、またオハイオ級の老朽状態から、ミスの許されない余裕のない重要プロジェクトだ」と難しさ厳しさを表現した
●また同大佐は、コロンビア級戦略原潜は2080年代まで長年に渡り運用する重要装備で、一番艦は初期投資も含め約1兆円(the lead ship will cost $9.2 billion)になると語った
●米海軍は今後毎年1隻ペースでコロンビア級を調達する計画だが、米国防省はバージニア級攻撃原潜の建造ペースアップも重点に挙げており、米海軍艦艇を担当する造船施設の労働力の質の低下問題視され、建造ミスや火災も頻発する最近の状況の中、潜水艦建造の実行可能性に疑問視するレポートがCongressional Research Serviceから10月に出されている
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米海軍は、トラブル続きで完成できないフォード級空母がニミッツ級の約2倍の価格で、コロンビア級戦略原潜もオハイオ級の2.5倍の価格と、重要装備品の開発管理がでたらめな軍種として悪名を轟かせており、コロンビア級原潜にも不安の声が多く聞かれる状況です
サイバーや宇宙や電磁波戦も含めた、抑止概念の再整理が叫ばれる中、コロンビア級戦略原潜プロジェクトの将来が明るいとは思えません。せめて、1番艦契約が粛々と遂行されることを祈ります
コロンビア級(オハイオ級の後継)SSBN計画の関連
「NKのおかげSSBNに勢い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-2
「コロンビア級の予定概要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-27
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13
多くの専門家が核兵器関連予算の縮小を予期
「バイデン政権で予想される国防政策の変化は?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-09
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
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