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戦闘機稼働率8割への課題 [米空軍]

部品が足りない・・・半分しか・・
整備員の長時間勤務は当分・・・
別件:PGM不足は解消された

Kelly3.jpg5日、米空軍作戦部長のMark Kelly中将が米空軍協会ミッチェル研究所で講演し、今年9月17日付のメモでマティス国防長官が指示した「2019年9月末(2019年度末)までに、F-16,F-22、F-35及びFA-18の稼働率を8割以上に」への取り組み状況について語りました

この指示が出た際、一部の専門家からは、稼働率は使用可能機数と保有機数の比率だから、故障の多い老朽化機体を破棄して計算上の稼働率を上げるぐらいしか手段はない・・・との「裏技・奥の手」案も出ていましたが、Kelly中将からは「裏技」に関する話はなかったようです

ちなみに対象4機種の2017年稼働率は・・・
・ F-16C 786機 70%
・ FA-18 546機 約半分
・ F-22  187機 49%
・ F-35A 119機 54%

Kelly作戦部長の話は結局のところ、「米空軍としては、資源配分も行い一生懸命、全力で取り組んでいる」、「整備員は滅私奉公の精神で、1日12時間勤務もいとわずに頑張っている」と言いつつ、部品が不足し、ステルス機は手間がかかり、整備員の熟練には時間が必要・・・との内容で、見通しは明るくないとの印象です。

6日付米空軍協会web記事によれば
Kelly.jpg●マティス国防長官からの指示である2019年9月までの期限に向け、米空軍は必要な資源投入を行っている。既に整備員の不足解消には目途が立っている。
●一方で機体を運用可能にするための部品確保が難しい状態で、現状では必要数の半分の部品確保しかできていない。また、ステルス機のステルスコーティングの取り扱いに時間を要し、整備が長時間に及んでいる

●「懸念事項は部品供給体制だ」、「部品供給体制に投資しているが、必要な部品の半分程度しか確保できないのが現状である」と説明した
●また、ステルス機のF-22やF-35は、整備で機体内部の作業を行う際、機体表面のステルスコーティングを「切り貼り」する必要があり、整備時間が長くなって稼働率を悪化させている。「通常6-7時間を機体表面の処理のために要している」と語り、稼働率アップの難しさを強調した

F-16に関しては、既に相当改善できており、目標の81%に近いレベルにきている。しかしステルス機については多くの整備所用を抱えていると認めた
maintainers2.jpg整備員不足については、数の面では対応ができつつあるが、新しい整備員の技量向上には時間が必要であり、現時点では整備員数の増加が整備時間短縮に直接結びついておらず時間が必要

逆に、新しい整備員の現場での教育や監督にマンアワーととられ、短期的には負担となっている。1日12時間勤務のような状態がまだ続いている
私の過去32年間の空軍勤務では長時間勤務が当たり前だったが、この状態が来年には改善されるとは言えない状態だ。整備員たちの滅私奉公(service before self)精神に依存しているのが現状だと認識している

中東作戦での精密誘導兵器不足
GBU-28.jpg対ISIS作戦の活発化や関連同盟国等の弾薬不足に対応し、2015年頃から精密誘導兵器PGMの不足が深刻な状況で、地域戦闘コマンド司令官にはPGMの使用を抑制してもらっていたが、何とか改善ができてきた
●2017年から、関連軍需産業の協力を得てPGM生産量増強に取り組んできたが、前線への供給増や備蓄増に結び付くようになってきた

パイロット不足について
●パイロットの流出防止のため、付加業務の軽減や海外派遣期間の調整、更には勤務延長ボーナス額の増により勤務延長を申し出るパイロットの比率が5年ぶりに回復傾向になった
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F-35 sunset.jpg主要戦闘機の稼働率8割以上の目標は、国防費5%カットの中で、優先度がどのようになるのか興味深いところです。将来への投資を取るか、今の態勢維持に注力するか・・・難しい永遠の課題です

Kelly作戦部長は触れませんでしたが、来年5月発行のAirForce Magazine恒例の米空軍主要装備品一覧表で、ひっそりとF-22やF-35初期型の稼働率が低い機体の機数分が削減されているかもしれませんね・・・

稼働率関連の記事
「戦闘機の稼働率を1年で8割に戻せ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-11
「2Bソフト機は稼働率4割台」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-10-1
「2/3が飛行不能FA-18の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-07
「世界中のF-35稼働率は5割」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-3
「F-35の3F機の稼働状況」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-22
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1

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