SSブログ

米大統領が最後に対テロ7原則を再確認 [安全保障全般]

OBAMA-MacDill.jpg6日、オバマ大統領が任期中最後の安全保障演説(ホワイトハウス関係者談)をフロリダのMacDill空軍基地で行い、オバマ政権の対テロ指針を「7原則」で再確認しつつ、トランプ政権への牽制球を交えながら、8年間の成果からアピールしています。

大統領としての主要スピーチと軍事メディアは位置付けており、大統領が持論としてきた対テロ姿勢である「テロは米国の存立を脅かす脅威ではない」「持続可能な態勢で長期的視点で対応」「拷問など非合法的な手段の排除」「地上部隊や大規模空爆ではなく、無人機による焦点攻撃」「明確な戦略に基づく対処」「民主的な手続きを踏んだ対処」を再度強調したと報じています

大統領は演説前に、同じフロリダ州に所在する対テロの中核を担う中央軍司令部と特殊作戦コマンド司令部を訪問して感謝の意を伝えており、対テロが任期中の最も重要な安全保障案件であったとも言えます

一方これにより安倍首相と真珠湾を訪れる際は、対中国メッセージはなく、戦没者慰霊のメッセージと日米同盟への軽い言及に終わる様子が想像できそうです

全文を見たわけではありませんが、米空軍協会web記事とDefense-News記事を組み合わせ、オバマ大統領の考え方を振り返り、今後のトランプ&Mattis体制での変化具合を見る参考にしたいと思います

オバマ政権の対テロ7つの指針と評価
OBAMA-MacDill2.jpg8年間の任期を通じ、次期政権への基礎固めを行えた。ISILの背骨を砕きつつあるが、より大きな過激テロリズム脅威との戦いは1世代の時間が必要だと考える
●テロの脅威を、より多くの爆撃や大戦力を世界中に展開して早期に排除するなどと言った「間違った約束」は批判されるべきであり維持可能でスマートな戦略を生み出す長期的視点が重要

中東やアフガンに展開している米軍兵士は、私が就任した2009年当時より18万人も減少している。海外派遣部隊は一般的に脆弱な状況に置かれており、この点からも維持可能な外交政策を採用すべきだと考える
対テロ同盟の形成努力に成功を収め、情報収集システムや仕組みを確立したが、今後も米国にとって小規模な個人ベースのテロ攻撃はセキュリティー上の問題でアリ続ける


7つの指針の一つ目はテロの脅威に正しい認識を持つことである(keeping the threat in perspective)。テロは危険でそこに存在しているが、米国の存立に直ちに影響を与える脅威ではない
テロリストは世界秩序の支配者や主役であるかのように振るまい演出するが、彼らは単に殺人者でアリ、過剰に評価すべきではない

2つ目は過剰に手を出す範囲を広げて滅んだ過去の大国と同じ過ちを犯してはならない点である。真に必要な場合にのみ、明確な任務の基に兵力を派遣すべきである
3つ目に捕虜等の尋問に拷問を用いるような国に戻ってはいけない。我が国の価値観や法のルールを遵守することは弱みにはならない

OBAMA-MacDill3.jpg4つ目にテロリストを生み出すような戦い方はしない。一般市民を巻き添えにして犠牲者を増やすような大規模空爆や地上部隊の作戦の代わりに、焦点を絞った無人機攻撃を最大活用し続ける事で、攻撃が再びテロリストを生み出さないようにすべき
5つ目に、国家安全保障に関わる施策は透明性と合法性を確保すべき。併せて大統領として、オバマ政権における対テロ戦略の法的根拠をまとめたレポートを発表した

●そして、議会が2001年にテロとの戦いに軍事力の使用を承認して以降、この承認に関して議論せず、結果的に恒久的に戦争状態にあるような形になっていることを国家として不健康な状態であり、志願制軍隊を維持する国家として、また人口の1%だけを危険で困難な任務に従事させることをきちんと議会で議論し承認手続きを行うべきだ

6つ目は民主主義の力を対テロに活用する事を米国の方針として要望すること
7つ目は情報収集に当たって明確な規定と制限を設け、移住者の宗教確認のような手段は行わないことで、我々を守る市民の自由を尊重すること

関連のDefense-News記事は
http://www.militarytimes.com/articles/obama-farewell-speech-troops
////////////////////////////////////////////////////////

OBAMA-MacDill4.jpgオバマ大統領は大統領で、きちんとその信念を貫いた主張しており、トランプ氏の「ツイッターつぶやき攻勢」よりは明確で整理されており、戦略や指針として議論しやすくなっています

また、イラクから早く撤退しすぎたことがISILの増長を促したとの批判にも、撤退当時の米軍受け入れに対するイラク政府の姿勢からすれば、米軍兵士の身分や安全を保障する観点から最大限の努力をしたとの説明しており、一定の説得力があります

まぁ、人権や透明性と合法性への過度のこだわりには賛成できませんが、依然としてトランプ氏よりは安心してみていられる感は否めません
オバマ大統領もホワイトハウスのどこかの壁に、「あと何日で自由になれる」日めくりカレンダーを吊しているのでしょうか?

オバマ大統領の発言記事
「対ISILでNSC招集」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-08
「核先制不使用宣言準備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-07
「卒業式で議会を大批判」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-03
「シリアに安全地帯は考えない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-17
「サイバー事業者の義務強化法案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-15

nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0