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米軍への精密誘導兵器供給が間に合わない [Joint・統合参謀本部]

JDAM-Empty.jpg11月号の米空軍協会webサイトが「Empty-Racks:弾がない爆弾搭載ポイント」ととの記事を掲載し対ISIL等の戦いで精密誘導兵器の使用が増加しており、細部は明らかにされて以内ながら、弾薬の十分な蓄積が失われていると警鐘を発しています。

一般市民への被害を局限したい前線指揮官の意向から、JDAMやHellfireミサイルやSDBの需要が急増しているのですが、米軍だけでなく危機感を募らせる中東諸国、またロシアを恐れる欧州諸国からも需要が急増しているようです。

一方で、米国の予算状況は未だ強制削減の悪夢から抜け出せずに暫定予算を繰り返し、例年ベースの予算しか確保できず、また製造企業も各種関連企業が各パーツを分担して製造していること等もあり、簡単に大増産が可能な状況でもないようです

米軍幹部の公式見解は「在庫減少を気にしているが、必要な任務の遂行には影響はない」と「から元気感」が漂うもので、実態が数字で明らかになることはないでしょうが、雰囲気を感じて頂くため記事をご紹介します

記事「Empty-Racks」によれば
JDAM-New.jpg米空軍が弾薬の保有レベルが危機的に低下していることを明らかにして1年が経過したが、依然として空軍は苦労しており、対ISILコアリション国の弾薬購入要求も断っている状態にある
●空軍は細部を開かさないが、前線の米空軍指揮官は「不足は真実だ。空の弾薬庫があちこちにある」、「弾薬備蓄量は、中東での戦いが開始以来、全米軍トータルで最低レベルに落ちている」と語っている

●今年4月、空爆用の弾薬不足が深刻さを増したことも受け、カーター国防長官が対ISILに野戦砲やアパッチ攻撃ヘリを投入すると発表し、6月頃から導入が始まり、多少は空爆用の精密誘導兵器需要が減る事が期待されている
●強制削減問題の中、在天予算で凌ぐ状況にある米軍は、通常予算ではない「海外緊急作戦費:Overseas Contingency Operations」で弾薬購入をまかなおうとしているが、手続きに時間がかかる事が問題である

●米空軍省の担当中将は、米軍の前線指揮官が安心できるレベルに備蓄量が達するまで、FMSによるJDAM等の海外提供には「No」である。正確には「今は応じられない」だが、対ISILに協力する諸国の要望にも対応できない状態

対リビア作戦は弾薬予算無し
SDB3.jpg弾薬不足が深刻化したのは、2011年のリビア作戦からである。米議会はイラクやアフガンで使用する弾薬予算は承認したが、リビア作戦には認めなかった。またリビア作戦に参加したNATO諸国が早々に弾薬を消耗し、米軍が貸し出す羽目になったことも大きかった
●ちなみに、ロシアの脅威が叫ばれる中でも、NATO諸国の弾薬不足は今も回復されておらず、今年7月のNATOサミットでも、NATO軍司令官が5年遅れとなっている弾薬備蓄努力を各国に訴えた

●米中央軍の空軍は2015年に28700発を対ISILに使用したが、2016年はそれを上回るペースで使用が進んでおり、多い時には毎日100発以上のペースとなる
米海軍と米空軍は「協力して」JDAMを調達していると報道官は言うが、在庫をシェアしていない。また米空軍は海外に貸した弾薬分の返却に新型JDAMを要求したりもしている

企業努力も単純ではない
●JDAMとSDB(Small Diameter Bomb)を製造するボーイング社は、キットの製造を毎日120から150に増産し、2017年末までに36500キットを製造する計画を立てている
無人攻撃機MQ-9が搭載する精密誘導兵器であるHellfireミサイルは、要員養成訓練用の使用も増加しており、増産を迫られている

SDB4.jpg●8月に米空軍長官は、ボーイングやロッキード以外にも製造メーカー拡大をしたい旨の取り組みを表明したが、物事はそう単純ではなかった。大企業が製造ライセンスを提供することには向かなかった
●JDAMなどの精密誘導兵器が登場した当時は、これほど大量に使用されるとは想定されず、レーダーやエンジンのように複数の製造企業を競わせる体制が必要だと考えず、法律の対象範囲とならなかったのである

●精密誘導兵器全体の需要が高まり、企業の製造部門が追いつかないこともある。例えば無誘導のロケット弾「Hydra rocket」の先端に装着するだけで誘導兵器になる、「Advanced Precision Kill Weapon System」も製造もそうで、3倍増に対応している
●爆弾製造が複数組織の共同作業であることも単純増産を難しくしている。例えばボーイングは誘導キットだけを製造しており、弾頭自体は米陸軍が空軍に提供しているだけで、これら関係者を組み合わせていくことが単純でないのだ
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弾薬の保有量は、基本的な作戦遂行上の重要秘密事項です
ですから、これくらい密かに話題になると言うことは、かなり深刻な事態になっていると見て良いでしょう

金目の問題だと思いますが、「勇猛果敢、支離滅裂」な空軍の世界では、最新の機体にだけ注目が集まり、弾薬予算は残予算で充当しておけ・・・的な収まりであることが多いのでしょう
ある日突然、大きな問題としてクローズアップされないことを祈ります

弾薬関連の記事
「リビア作戦での欧州惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-10
「韓国は地中貫通弾530発購入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-27-1
「JDAMキットで射程・全天候性向上」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-07

「ロケット弾を誘導兵器に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-12
「超巨大貫通弾MOP完成か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-18

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