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主張:戦闘機搭載の戦術核は欧州に不要 [米空軍]

B-61 LEP.jpg14日、米国の中堅シンクタンクStimson Centerが、必要経費や軍事的必要性を吟味し、米軍保有の戦術核兵器の戦闘機に搭載しての使用や、欧州配備に疑問を投げかける短いレポートを発表しました。

これまで軍事環境の変化を学ぶ視点の一つとして、戦術核運搬可能に改良された戦闘爆撃機としては一部の「F-15EとF-16とTornado」があり、欧州には「F-16とTornado」が保有されている事。そして約200発の「B61戦術核爆弾」が「Belgium, Italy, Germany, Netherlands, and Turkey」に分散保管されている状況を紹介してきました。

そして今、米軍が欧州で米軍戦術核の保管を継続するのか、またF-35に戦術核兵器搭載型を設けるかについての議論があり、現時点で米国防省は近代化&延命改修を終えた「新型B61戦術核爆弾」を2020年までに提供する予定で、F-35戦術核運搬型の準備は2020年代半ばまで終える「腹づもり」だとご紹介してきました

B-61 LEP2.jpgなおB-61改修は、従来複数タイプ(B61-3, -4, -7, and -10)あった戦術核爆弾を、新たな460発の「B61-12」に統一するものです

更に、ロシアの軍事的脅威が「復活」する中、この戦術核に対する態度が分かれていた欧州諸国が、継続保有に傾きつつあることも米空軍幹部の発言から先日ご紹介したところです

「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

そんな中、Stimsonレポートは・・・
(レポート内で、3ケースの削減可能経費の比較分析を行っている。3ケースは、戦闘爆撃機用のB21調達中止ケース、戦闘爆撃機用のB21調達中止に加えて欧州保管戦術核の廃止ケース、戦術核全廃ケースの3つ)

B-61 LEP3.jpg●結論としてStimson Centerの研究者2名(BARRY BLECHMAとLAICIE HEELEY)は、既に研究&開発経費をほとんど投入済みの「B61-12」は限定数導入し、B-21次期爆撃機など突破力のある爆撃機で使用し、今後は戦闘爆撃機への戦術核搭載を止めて同航空戦力を他に活用、更に欧州に戦術核を置かないことを提言している。
●また欧州諸国が心理的な不安を訴えル事の対策として、B-21を定期的に欧州に展開させることを提案しおり、これにより2017-2021年度の期間で約4000億円を節約し、トータルでは約6600億円の経費削減が可能と見積もっている。そして3つの視点から上記結論を説明している

まず戦術的核兵器は既に軍事的には有効性を失っている。使用の可能性は極めて低いと考えられ、良く持ち出される政治的な意味合いについては「chimera」(キメラ:ライオンの頭・ヤギの体・蛇の尾を持ち, 火を吐く空想の怪獣。妄想、根拠のない幻想、非現実的な考え)に過ぎない

また、中国やロシアが防空網を強化している事を理由に、B-21次期爆撃機でさえも突破できない可能性が将来あるとして、航空機発射の長距離核搭載ミサイルJRSOを米空軍は要求しているが、であるならば戦術戦闘機が搭載する戦術核爆弾B61が有効とは考えられない
更に、欧州5カ所に戦術核兵器が保管されているが、トルコのクーデター事例に見られるように、テロリストた敵対的勢力に戦術核が奪われる可能性を高めることになる
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レポート現物(5ページのPDF)
http://www.stimson.org/sites/default/files/file-attachments/B61-Life-Extension-Program.pdf

戦術核爆弾の要否についての細かい議論は出来ませんが、こんな話題やレポートを通じ、日本でも核兵器に関する基礎的な知識が広がり、普通に議論できるようになればと思います。
そう言えば、日本と核兵器に関する実に興味深い話題が2つ飛び出しました・・・。

●その1
16日付読売web記事http://www.yomiuri.co.jp/world/20160816-OYT1T50055.html?from=ytop_main6
USJAPAN.jpgバイデン米副大統領は15日、ペンシルベニア州の集会で、米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏が日本の核保有を認める発言をしたことを巡り、「日本は我々が書いた憲法で核保有国になれないことを彼は理解していない。学校で習わなかったのか」と批判した。バイデン氏の発言は、日本国憲法がGHQ主導で作成されたことを踏まえたものとみられるが、米政府高官が公の場で「我々が書いた」と表現するのは極めて異例

●その2
16日付毎日web記事http://news.yahoo.co.jp/pickup/6211260
米ワシントン・ポスト紙は15日、オバマ政権が導入の是非を検討している核兵器の先制不使用政策について、安倍晋三首相がハリス米太平洋軍司令官に「北朝鮮に対する抑止力が弱体化する」として、反対の意向を伝えたと報じた。同紙は日本のほか、韓国や英仏など欧州の同盟国も強い懸念を示していると伝えている

Tatsumi1.JPGなおStimson CenterはワシントンDC所在の中堅シンクタンクですが、東アジア安全保障研究プログラム(http://www.stimson.org/programs/east-asia)の一環として、辰巳由紀上級研究員のリードの基、1佐級自衛官を継続して客員研究員として受け入れている「志」あるシンクタンクです。

辰巳さん自身も米国に腰を据え、日米安全保障分野において現地ならではの情報を踏まえた分析を行うと共に、日本の状況や立場を米国向けに積極的に発信されている極めて貴重な人材です。また、訪米する政財界VIPの通訳としても活躍されています

日本のメディアは安全保障の視点でも、女性の活躍紹介の視点でも、もっとこの様な人材の存在を取り上げれば良いのに・・・と思います

戦術核兵器と関連F-35記事など
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

オバマ大統領が「核兵器先制不使用」の宣言準備?
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-07
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