SSブログ

ロシア軍が「鉄の壁:arc of steel」を構築中 [Joint・統合参謀本部]

露海軍がカスピ海から対IS巡航ミサイル26発・発射の報を受け
時局に沿う良い講演:露軍の動向を俯瞰的に描写

Ferguson.jpg6日、欧州NATO海軍のMark Ferguson司令官(米海軍大将:欧州米海軍司令官も)がAtlantic Councilで講演し、ロシア軍がNATOとの対峙と強く意識し、「鉄の壁:arc of steel」を構築しつつ、多方面に及ぶハイブリッドな戦力増強に取り組み、NATO包囲網の突破を図ろうとしていると訴えました

北極海から地中海に及ぶ「鉄の壁」との表現を用い、ロシア海軍だけでなく、ロシア軍全体の欧州正面での活動を俯瞰的に捕らえた点で、「頭の整理に役立つ」講演となっていますのでご紹介します

Ferguson司令官は講演で
●我々は、NATO海軍を直接的に睨んだ、より攻勢的でより能力の高いロシア海軍を見せつけられており、海洋ドメインが競争的な状況になっているとの警告をロシア軍から受け取っている
Ferguson2.jpgロシア軍の各要素の動きが統合され、迅速さを増して戦略的な奇襲の様相を帯びるのを目の当たりにし、また、ロシア軍から発せられる言葉が、NATOとの直接対峙を念頭に置いた行動や覚悟を反映するものと感じている。

●今年初め、同大将はロシアが公表した新海洋戦略を評価し、「大西洋や地中海での露軍の活動について語る一方で、ロシア周辺海域により強く焦点を当てた内容になっている」と語っていたところ。
●また「ロシアは地中海に恒久プレゼンスを確保し、NATOによる軍事包囲網、経済制裁、政治的孤立化を打ち破ろうとしている」とも当時表現していた

ロシアは北極海から地中海に掛けて「鉄の壁:arc of steel」を構築しようとしている。北極海での新基地から、レニングラード、クリミアにかけ、ロシア軍は最新の防空網や巡航ミサイル等々の最新装備を配備している
●また海洋での戦力投射構築にも取り組み、露軍のシリア基地は今や東地中海への「project power」拠点となり得る。露軍の海洋阻止はNATO海軍戦力を主対象としており、上記領域でのNATO海洋戦力活動を危険にして抑止するものだ

地上戦力と海上戦力の協力態勢
Ferguson3.jpgロシア陸上戦力は、黒海周辺国、ウクライナ、ポーランド、バルト3国と対峙しているが、ロシア海洋戦力は側面から陸上戦力を支援する構えとなっている
北極圏の基地や黒海艦隊拡大への約2800億円の投資は、ロシア軍のこれら狙いへのコミットを裏付けるものとなっている

潜水艦戦力の躍進にも注目すべきだ。「鉄の壁」を越えての戦力投射のため、ロシア潜水艦が増強されている。Chirkov露海軍司令官は露潜水艦のパトロールが昨年5割増しになったと語っており、過去10年には見られなかった活発化を見せている
●新装備として、より静粛な攻撃原潜や戦略原潜を導入し、搭載巡航ミサイルの射程も伸びている。先月、Caliber巡航ミサイル(射程2500km:別名Klub)を搭載したキロ級潜水艦が黒海に配備され、欧州の東半分が射程に入った

非対称戦術と通常戦との融合
ロシア軍は、サイバーや宇宙や電子戦を、欺瞞や攪乱(ambiguity)戦術に組み合わせて活用している。非対称戦を通常戦と組み合わせ情報戦やハイブリッド戦としてNATO意思決定系統を麻痺させる事を狙っている
攪乱(ambiguity:不明確さ)を生起させることに焦点を当てており、ロシア軍は地上で民族や宗教師団を用い、攻撃的な情報操作、誤情報流布や非正規兵に欺瞞した戦力の欺瞞を画策し、海上では敵戦力の意思決定を混乱させている

Ferguson4.jpgロシア軍全体での「即応演習:snap drills」も盛んだ。ほとんど事前の準備なしに命令により実施される演習で、その数が急増している
ロシア軍は意思決定を集約しつつ有り、中央からの命令により、動員演習や機動展開演習の頻度を増加させている。海軍もこれの対象だ。この様な即応演習を最近数多く目にしている

●これらロシア軍の動向に対処するため、米軍とNATO軍は以下の3つに優先投資すべきである
●一つは高列度紛争の訓練、次に即応体制の維持、3つめにロシア軍の能力増強ペースにあわせた投資
///////////////////////////////////////////////////////

Atlantic Council」での講演と、「今年初め」の講演内容の両方が併記されている記事で、どちらの講演か明確な区別が難しい「Defense-News記事」です。ご容赦を!
でも、ロシアが暴れて米国有識者の関心が高まる中、時局に適した、良い内容の記事だと思います!

でも、さすがNATO軍司令官(60歳)です
ロシア軍全体の動向を、地図を広げたように陸海空軍戦力を念頭の置きつつ解説する様子は、現場の作戦運用を担当する指揮官に相応しいです

もちろんワシントンDCでの講演ですから、予算を削減したら大変ですよ・・・とのアピールもたっぷり含まれていると思いますが・・・。

露艦艇から対IS巡航ミサイル攻撃の解説映像



追加情報!
8日、露海軍艦艇からIS攻撃のため発射された26発の巡航ミサイルの内、4発がイラン国内に着弾と、米政府高官が匿名で明らかに。着弾場所や地上被害など細部には触れず。ロシア国防省は否定
http://www.defensenews.com/story/defense/air-space/strike/2015/10/08/us-official-four-syria-bound-russian-missiles-crashed-in-iran/73602298/


前線ロシア部隊は危険
「2日連続トルコ領空侵犯」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-06
「黒海NATO演習と露軍反応」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-03
「露軍の電子戦力は米より強力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ロシア空軍事故多発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-13

ロシア軍のシリア展開関連
「露空軍空爆開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-30-1
「シリアは地政学チェルノブイリ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23
「対ISに暗雲:露軍展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-21
「イラン核合意で中露が中東で好き放題」 →http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-08

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0