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次期空軍トップに議会が鋭い質問 [米空軍]

WelshSen.jpg19日、次期空軍参謀総長候補のウェルシュ大将(現欧州空軍司令官:Gen. Mark Welsh)が、上院の軍事委員会で承認を得るための証言を行った模様です。また同時に、事前に示された質問に対し、文書で回答しています。
同大将への議会からの質問と回答が公開されていますので、ちょっとのぞいて見ました。

同大将の回答は、空軍スタッフが知恵を絞って作成したものと思われ慎重な安全運転表現が並んでおり、なんとなく眠気を誘います。
一方で、議会からの質問は現在の米軍の諸問題を浮き彫りにした点で極めて興味深いです。実に「人間臭い」というか、「やっぱりそういう問題があるんだ・・」と思わせる諸課題が取り上げられています。

計46ページの文書なので全部はご紹介できませんが、まんぐーすの好みでウェルシュ大将の主張を最初に触れ、次に軍の問題を浮き彫りの議会質問をつまみ食いです。
なお「性的暴力」や「麻薬・アルコール」や「士気」のやり取りもありますが、暗くなりそうなので省略しました。

ウェルシュ大将が回答の優先事項
厳しい財政環境下で、如何にして与えられた任務を遂行して現在の戦いに立ち向かい、同時に将来の戦いに向けた備えを行うかが最重要の課題である
具体的には以下の5項目が重要と考える
---核戦力部隊の継続強化
---今の戦いの勝利のために統合や多国籍作戦に協力
---空軍兵士とその家族のケアと強化
---航空宇宙サイバー装備・組織・訓練の近代化
---調達部門の優秀性再確保

Welsh2.jpg(若干の補足)→核運用部隊は長らく誰も顧みず、兵士の士気低下や装備の老朽化が顕著。爆撃機による核爆弾誤送事件等もあり、立て直しが緒に就いたばかり
調達の優秀性「再確保」は空中給油機に続いてプロペラ小型攻撃機の機種選定でも不備を指摘され、やり直しを命ぜられるなど対外的に信頼感を失っている現状有り。重要であっても、あまり夢のない項目が並んでいるのが現状です

興味深い議員からの質問

質問:無人機運用に当たる士官の昇任率が他分野に比して低い(例えば少佐以上への昇任率は平均9割だが、無人機部隊は7割台)が、この状況をどのように見ているか。
回答:無人機運用関係者のキャリアパス基準を定めて適正に管理を開始した。空軍長官とも協力し、教育訓練制度の充実に努める。

(若干の補足)→急速に拡大する無人機運用分野には、恐らく他職域で「成績下位者」や「嫌われ者」だったモノが寄せ集められている可能性が高い。有人機操縦から無人機操縦に、どんな人間が回されたかは想像に難くない。

Welsh4.jpg質問:各軍種のサイバー戦要員をサイバーコマンドに集約し、より効率的で組織的な運用をすべきだとサイバーコマンド司令官が要求しているが、貴官はどう考える
回答:サイバーコマンド創設以来、空軍は多くの要員を差し出してきた。そのために空軍内のサイバー部隊の充足率は8割に満たない状況である。前線部隊とのバランスを考慮してサイバーコマンドの充実を考えるべき。当面は空軍内を優先したい

質問:地域作戦コマンド司令官からは、空軍が無人機によるISR要求に対応できないとか、ISR情報分析(収集、分析評価、配布)要員を十分養成できていないとの不満が上がっている。また要員不足の分析業務を業者委託で行う経費が膨大になっているとの不満も聞こえてくるが。どう考える。

質問:特殊作戦コマンド司令官からは、特殊作戦を支援する「mission enabler」分野(救命救助、前線空輸、ISR、電子戦等々と想像)の充実が不十分との指摘があるが、貴官はどう考える
回答:(種々の装備品導入計画や要員養成計画を説明し)空軍も限られた資源の中で懸命に取り組んでいる。

(若干の補足)→過去10年間テロとの戦いでその重要性が繰り返し叫ばれてきたISRやmission enabler分野ですが、有人戦闘機・爆撃機優先の空軍文化を十分に変えるまでには至らなかったようです
今後重点が移っていくA2AD環境対処は、有人戦闘機・爆撃機優先の旧型空軍人が考える脅威とは異なりますが、この分野でも過去の夢「湾岸戦争」を追い続けるのでしょうか?

質問:地域戦闘コマンド司令官とサイバーコマンド司令官のどちらが、サイバー作戦を指揮すべきと貴官は考えるか
Welsh3.jpg回答:サイバー戦対処についての、国家レベルの任務分担や対処指針が未確定な段階で議論するのは難しい。一般論では、大統領直属の地域コマンド司令官が作戦指揮を執るべきだと考えるが、その担当内での作戦に限定することが前提である。しかしサイバー戦の場合、地理的にその作戦範囲を限定することが可能か、との点で判断が難しいし、難しいのではないかと思う

(若干の補足)→サイバー戦の本質に関わる質問と回答です。議員の側もよく勉強し、時機に則した質問を投げかけています。安全保障に関する国家の成熟度が見て取れます。
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現在のシュワルツ空軍参謀総長は、8月12日で退役だったはずで、シュワルツ大将は空軍司令部勤務の無い後任予定者には、少なくとも6週間程度の準備期間が必要だと要望していたのですが・・・。
選挙区の部隊が削減されるのに反対した議員がごねて、19日まで議会証言が遅れたわけです。民主主義の限界を感じさせられる今日この頃です。

「驚天動地の次期空軍トップ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-11
「空軍トップの交代は8月」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-09-1

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