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戦闘機世代デプテューラ去る [米空軍]

DeptulaLTG.jpg米空軍参謀本部の情報部長(正確にはISR部長)であるデプテューラ中将(Lt. Gen. David Deptula)が、10月1日付で退役することになりました。華々しい有人空軍機による航空作戦時代をリードした主要戦闘機パイロット最後の世代が、最終ポストで無人機による空軍ISRの基礎を作り上げて現役を去ることになりました。
なお後任には、宇宙や衛星管制の専門家がノミネートされています(人物に関しては後述します)

「無人機の未来を語る」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-07-25
「空軍情報部長が中国の脅威を」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-01
「米空軍ISR組織の革新」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-21

●デプテューラ中将の功績
AirCampaign.jpg何と言ってもデ中将が注目を浴びたのは1991年の湾岸戦争の際です。
クウェートに侵攻したイラク軍を撃退するための航空作戦を、ペンタゴンの地下でワーデン大佐(The Air campaignの著者)が率いるチーム「チェックメイト」の主要メンバーとして立案したのがデ中将です。

最終的には中央軍の航空作戦指揮所で「砂漠の嵐」作戦を仕切り、空軍戦力の有効性を高らかに示した事で大いに名をあげ、空軍のヒーローとして昇任と主要ポストを得ることになります。
なお、デ中将の湾岸戦争での活躍は、トム・クランシーの著書「暁の出撃」の中でも取り上げられています。

desertstorm.jpgその後は湾岸戦争航空作戦の概念を更に発展させ、精密誘導兵器とネットワークを有効に組み合わせたEffect Based Operation(効果基盤型作戦)の概念として完成させ、当時勢いを増していたNCWの考えやトランスフォーメイションの流れにものせて世界の軍事理論をリードしました。

●デプテューラ中将の苦難
デ中将によるEffect Based Operationの概念は、2003年春のイラク戦争開戦時の「Shock and Awe(ショックと畏怖)」作戦として大いに効果を発揮し、事態の早期収拾が期待されました。
shockawe.jpgしかしイラク戦争のその後はご存じの通りで、従来型の戦争概念が通用しないCounterinsurgency主体の作戦へ移行していきました。それは同時並行的に事態が悪化したアフガニスタンも同様で、そこでは従来の空軍戦力の出番はありませんでした。

そして現在空軍は・・・無人機によるISRや近接航空支援(A-10, F-16, F15E,B-1やB-52も投入)で地上部隊をサポートする役割を求められるようになっています。空軍幹部はその支援任務を「Joint Forces Enabler(統合作戦推進者)」任務と呼びますが、空軍が花形だった「湾岸戦争型」の戦争の時代が終わりを告げたことは明らかになっています。

ゲーツ国防長官が、「いつか再び第2の湾岸戦争がやってくる」と信じて止まない軍人を「治療が不可能な次の戦争狂」と呼んで相手にしないように、世界の安全保障環境は大きく変化下と言えましょう。

「ゲーツ長官が空軍へ最後通牒」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-17
どこかの国の安全保障環境認識は、シビリアンも制服も「次の戦争狂」に似たものがあるようですが・・・・。

●後任者は日本でもお馴染み
JamesLTG.jpgなお、後任のISR部長には宇宙分野の専門家(衛星の管制や打上げ指揮官等々を歴任 宇宙飛行士ではない)で、かつ07年から08年12月まで横田基地で5空軍と13空軍の副司令官を兼務していたジェームズ中将(現14空軍司令官・空軍の戦略的宇宙利用を担当Lt. Gen. Larry James)がノミネートされています。

この人事は象徴的です。米空軍情報運用のコントロール役が、戦闘機パイロットから宇宙の専門家へバトンタッチです。情報収集やその伝達において、宇宙の識能が重視される時代になったといえましょう。同時に、戦闘機パイロットがなぜ必要なのか、なぜ重用されてきたのかを考え直す契機となるでしょう。

なおジェームズ中将の後任は、女性初の空軍宇宙飛行士であるヘルム少将(Maj. Gen. Susan Helms)が昇任して配置される予定です。

●米空軍主要ポストから去る戦闘機乗り
MQ-1.jpgそれにしても米空軍における「戦闘機パイロット外し」は猛烈な勢いで進んでいます。空軍参謀総長、戦闘コマンド司令官、情報部長が非戦闘機パイロットです。恐らくゲーツ長官の意向も大きく影響しているのでしょうが、どこまでこの流れが進むのか注目です
今後、米軍の主要幹部人事が進む(カートライト統合参謀本部副議長の引退などなど)のですが、注目する必要がありそうです。

「米空軍の戦闘機削減が本格化」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-28-1
「米空軍OBが断末魔の叫び」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-05-1
「英国も戦闘機削減」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-03
「イスラエルがF-35で苦悩」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-01

ジェームス中将と横田時代に親交を深めた防衛省や自衛隊幹部も多いかと考えられますが、今話をしたら米空軍を取り巻く環境と空軍の変化の早さに話題がかみ合わないのではないでしょうか・・。
特に戦闘機パイロットの扱いに関しては・・・
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