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太平洋軍司令官候補が議会で燃料と兵站の重要性を [Joint・統合参謀本部]

議会承認を得るため上院軍事委員会で所信を語る
空中給油や輸送コマンドとの連携兵站重視と
昨年6月には一時次の米海軍制服トップと報じられた方

Paparo6.jpg2月1日、現在の米太平洋海軍司令官で、次のアジア太平洋軍司令官(正確にIndo-Pacific Command司令官)候補にノミネートされているSamuel J. Paparo Jr海軍大将が、上院軍事委員会で承認を得るための質疑に臨み、中国の台湾侵攻に関しては慎重な回答をしつつ、対中国作戦に向けては「more forward, more distributed posture:より前方に、より分散した戦力配備態勢で」との基本方針を語り、

Paparo5.jpg更に脅威情勢に対応し、兵站支援面で「効率」より「効力効果:effectiveness」を重視した準備の必要性を主張し、具体的に西太平洋での燃料不足を取り上げ、空中給油能力の不足や無人空中給油機の開発の必要性を示唆するような発言までしています。また太平洋軍と輸送コマンドとのメジャーコマンド連携が極めて重要になるとも語っています

まずはPaparo海軍大将のご経歴概要を
●1964年生まれ。米海軍士官学校出身「ではない」空母艦載戦闘機パイロットで、F-14やFA-18やF-15Cで飛行時間6千時間以上・着艦1100回以上のトップガンスクール出身者。
●海軍パイロットながら、米空軍戦闘機部隊への交換操縦者として空軍F-15C部隊に配属され、サウジに展開して実任務を遂行した経験もあるほか、米空軍指揮幕僚大学ACSCやAWCコースも履修し、空軍との人的つながりも太い

Paparo7.jpg●横須賀配属空母のF-14操縦者として勤務を開始し、艦載機飛行隊長や空母航空団司令官や空母戦闘群司令官を歴任し、中東担当の第5艦隊司令官も務め、米中央軍海軍と米太平洋軍海軍司令官(現在ポスト)を経験している
●統合職として、米中央軍の作戦部長(J3)経験のほか、珍しい職歴として、アフガニスタンの「Nuristan Province」復興担当指揮官として、米陸軍第10山岳師団第3旅団や第173空挺旅団と共に活動した経歴アリ

Franchetti5.jpg●何と言っても最近では、昨年6月12日に全米各種メディアが「次の米海軍制服トップ候補に国防長官がPaparo海軍大将を推薦」と複数の匿名海軍や国防省幹部の証言付きで報じながら、同7月21日には当初から大本命とされてきた女性のLisa Franchetti大将の正式候補推薦がバイデン大統領から発表されるとのドタバタに巻き込まれた人物

(太平洋海軍司令官が、一段上の太平洋軍司令官に就任するのは、現在のJohn Aquilino司令官など多くの実績があるルートであり、米空軍とのパイプもある点からも、順当で適切な人事だと上院でも全く反対意見はないようです)

Paparo海軍大将は議会で証言し・・・
Paparo.jpg●(中国による台湾侵攻の可能性について問われ、)習近平主席の考え方や行動予測は語れないが、中国が軍事力を背景に国境を再設定を狙い、復興主義者、修正主義者、拡張主義国家として侵略を拡大する大胆な動きを目にしており、ますます無秩序&混沌に向かう世界情勢を体感している
●このような情勢を受け米太平洋軍は、「more forward, more distributed posture:より前方により分散した戦力配備態勢」に転換する必要がある

●またこのような体制と作戦運用を支えるため、「効率性efficiency」の原則を基に構築されてきた兵站態勢を、「効力効果effectiveness」の原則で再検討すべきと考えている
●(未だ要求性能を満たせない状態で正式運用を開始したKC-46空中給油機に対する評価と問われ、)統合戦闘力を発揮するうえで、ダイナミックに機動する必要がある航空作戦構想から、空中給油能力を懸念している。統合戦力として(空中給油のために)足の長い、無人の、multi-domain platformsが、作戦機と輸送機用に必要だ

Paparo2.jpg●また(分散運用を支えるだけの)地域全体への燃料供給も極めて重要だ。抑止面で、競争面で、危機紛争対処面で、米輸送コマンドとのメジャーコマンド間協力(COCOM-to-COCOM relationship)が最も重要だ。2つのコマンドが常続的に顔を突き合わせるように作戦計画を煮詰め、有事に備えている

(ご参考:昨年夏に、米本土とハワイ・グアム、豪州、日本の拠点を巻き込み、航空機70機と3000名以上が参加し、空軍輸送コマンドと米輸送コマンドが連携して史上最大のMobility Guardian演習が実施され、「more forward, more distributed posture」体制を支える準備が実施されている)

Samuel Paparo海軍大将の公式経歴
祖父・父も米海軍勤務の筋金入りです
→ https://www.cpf.navy.mil/Leaders/Article/2628260/admiral-samuel-j-paparo/

Paparo大将も巻き込まれた人事ゴタゴタ
「大統領は初の女性トップ指名」→https://holylandtokyo.com/2023/07/24/4888/
「Paparo大将を国防長官が推薦報道」→https://holylandtokyo.com/2023/06/13/4747/

2023年の史上最大の空輸演習@西太平洋
「Mobility Guardian演習が初めて海外で」→https://holylandtokyo.com/2023/07/13/4852/

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Bamboo Eagle:初のACE構想統合&多国間演習 [Joint・統合参謀本部]

Red Flag 24-1演習(1月15-26日)に引き続き26日から8日間
米空軍主催で英豪空軍、米海軍海兵隊航空機も参加し
加州の5基地での分散運用で対中国ACE作戦訓練

Bamboo Eagle.jpg1月30日付米空軍協会web記事が、初めてのACE構想に基づく分散基地運用(practicing the hub-and-spoke concept along with Agile Combat Employment)演習「Bamboo Eagle」が、「Red Flag 24-1演習」最終日1月26日とオーバーラップする日程で2月2日まで(推定)実施されると紹介しています。

なお、「Red Flag 24-1」がラスベガス近傍のネリス空軍基地で行われたので、「Red Flag 24-1」参加機の大部分が、「Bamboo Eagle」参加のため、ネリスから加州5つの(想定)分散運用基地への機動展開を含むACE構想の実戦的演習に取り組んでいるということです

Bamboo Eagle3.jpgACE構想(Agile Combat Employment)は米空軍が対中国を強く意識し、米空軍全体で運用能力向上を図っている構想で、従来のように設備充実の大規模根拠飛行場を中心とした航空作戦では、中国の弾道&巡航ミサイル攻撃により運用不能に陥る懸念があることから、不便で設備不十分でも残存性が少しでも高い基地に戦力を分散しつつも、指揮統制や兵站面をしっかりやって強靭で生存性の高い戦力運用を目指す構想です

初の本格的統合&多国間ACE構想演習となっている「Bamboo Eagle」では、米空軍航空戦術(空対空や空対地航空作戦が主体)演習「Red Flag 24-1」の演習項目に加え、(台湾有事をたぶんに想定した)対艦攻撃訓練や、ACE構想の重要要素となる不便な分散基地への迅速な展開と現地での兵站や指揮統制を含む態勢確立が、実戦とバーチャル訓練を交えて実施されるとのことです

参加者は米軍全軍種から兵員3000名と航空機約150機、そして英空軍と豪州空軍から300名が参加する大規模なものとなった模様で、その内訳は・・・

Bamboo Eagle4.jpg●米空軍→B-2爆撃機、F-35、F-22, F-15E, and F-16 戦闘機、 C-130 and C-17 輸送機、KC-135 and KC-46空中給油機、EC-130電子戦機、HC-130特殊作戦機(兵員投入回収機)、HH-60救難ヘリ
●米海兵隊→F-35B、MQ-9無人偵察攻撃機
●米海軍→EA-18電子戦攻撃機

●英空軍→ユーロファイターとA330空中給油機
●豪州空軍→F-35A ・・・・です。

初の「Bamboo Eagle」演習で、分散運用基地(practicing the hub-and-spoke concept)に設定された5基地は全て加州の5基地

●米海軍のNaval Air Station North Island,
●米空軍のBeale Air Force Base, Travis Air Force Base, Edwards Air Force Base
●海兵隊のCamp Pendleton

Bamboo Eagle5.jpgBamboo Eagle演習を計画運用する米空軍Warfare Centerの公式発表は演習を・・・

「東太平洋の海洋と空域を作戦空域に見立て、海洋ドメイン作戦も組み入れた実戦的な全ドメイン訓練環境を設定し、訓練参加者が米本土西部の複数の(分散運用)基地から作戦行動を開始し、分散基地の指揮統制や兵站運用や空中給油等も含めた訓練を行った」と紹介しています
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Bamboo Eagle6.jpg台湾有事の対中国作戦では、西太平洋の島々や第1&第2列島線上の同盟国等の分散運用基地に展開し、指揮統制や兵站支援体制も確立して作戦運用することを前提とし、その実行力獲得を狙った初の「Bamboo Eagle」演習ですが、陸続きの加州の5つの基地と、環境が整わない西太平洋に分散する島や国々の基地とでは大きな違いがあります。

それでもこれだけの米空軍の参加規模で、海軍や海兵隊も主旨に賛同し、英軍や豪州軍も馳せ参じての演習は大きな一歩だと思います。「Bamboo Eagle」との演習名は、竹(Bamboo)の「しなやかさ」や外部からの力への「対応力や強靭性」を期待しての表現かな・・・

米空軍のACE構想関連記事
「PACAFはACE運用態勢未確立」→https://holylandtokyo.com/2023/09/19/5048/
「生みの親が現状語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
「米空軍がACEドクトリン発表」→https://holylandtokyo.com/2021/12/17/2532/
「欧州米空軍がACE確認演習」→https://holylandtokyo.com/2021/10/27/2317/
「GuamでF-35等が不整地離着陸訓練」→https://holylandtokyo.com/2021/01/29/310/
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/

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映画「トップガン」の第3弾にパラマウントが着手 [ちょっとお得な話]

『トップガン マーベリック』の製作陣/キャストが再集結か
ただクルーズの予定は2025年又は26年まで余裕なしとか
現在61歳(1962年生)のクルーズはどんな役割を?

Tom Cruise6.jpg1月11日付米映画情報専門サイト「Puck」によれば、大ヒット映画「トップガン」の第3弾にパラマウントが着手した模様です。主演のトム・クルーズ(Tom Cruise)は先日、米ワーナー・ブラザースとパートナー契約を締結したのですが、独占的な契約ではないため、今後も『トップガン』『ミッション:インポッシブル』シリーズでパラマウントと連携していくとのことです。

1986年公開「トップガン」の続編である2022年公開「トップガン マーヴェリック」は、トム・クルーズのキャリア史上最高となる14億9000万ドル(約2160億円)の世界興行収入を記録。作品賞を含むアカデミー賞6部門にノミネートされ、音響賞を受賞しています。

Tom Cruise5.jpg大ヒットの「トップガン マーヴェリック」の脚本を共同執筆したアーレン・クルーガーが、同人気シリーズの最新作に向けて脚本の草稿に取り掛かっているとも報じられています。

「Puck」によれば、3作目では主演のトム・クルーズをはじめ、ルースター役のマイルズ・テラー(Miles Teller)やハングマン役のグレン・パウエル(Glen Powell)といったキャストの復帰も見込まれているとのこと。またジェリー・ブラッカイマーとデヴィッド・エリソンも引き続きプロデューサーを務める見込みだという。

Tom Cruise2.jpg更に、前作でメガホンをとったジョセフ・コシンスキーが、監督もしくは次作に戻ってくる可能性もあるという。

ただ、トム・クルーズには現在、『ミッション:インポッシブル』シリーズ第8弾や、ダグ・ライマン監督と共に宇宙で撮影する新作映画が控えているとも言われており、「Puck」は「クルーズの予定は2025年又は26年まで余裕がないのでは?」とも報じています

Tom Cruise.jpg「トップガン マーヴェリック」の監督で、3作目でもメガホンを握る、又はプロデューサーとして関わる可能性があるらしいコシンスキー氏は、第2弾が大成功を収めた理由をハリウッド記者団に以下のように語っていました。

●我々はこの映画が可能な限り最上の大きなスクリーンで楽しんでもらえるように製作しました。最新設備の映画館ならば、(コロナ下の)ここ数年皆が待ち望んでいた経験を観客の皆さんが劇場で再発見できると感じたから。成功の理由はそこに関係していると思う。

Tom Cruise4.jpg●ストーリーが人々の心に響いたことも大きいだろう。人々は35年ぶりにトムがマーヴェリックを再演するのを観ずにはいられなかったし、それは本当にスリリングなことであった。だから昔流の映画を作りたかったんだ」「昔流のやり方に最新のハイテク装置を装備して撮影した。観客はその実践的な映画の撮影につぎ込まれた我々のすべての努力を感じてくれたんだと思う
●座席の端をつかむような手に汗握る映画だったという感想が絶えないよ。ストーリーが語られる中での、実践的な映画製作の力が本当に評価されたんだと実感している
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SNS上では3作目の場面設定を、「海軍を定年退官したマーベリックは、タイのリゾート地近くで小型機での遊覧飛行や操縦体験を提供する暮らしを始めていた。地元の人達とも馴染み、かつての緊張の日々から解放されたそんな一日が終わりを告げる夕暮れ時、仕事を終えシャワーを浴びたマーベリックがビール片手に南国の風に吹かれていると・・・。かつての同僚が突然訪ねてきた。マーベリック、頼みを聞いてくれないか・・・」と語る人まで現れています

Tom Cruise3.jpg以上の出だしが、嘘か誠か全く分かりませんが、既にファンの期待や妄想は「千里を駆け巡る」レベルになっているのでしょう。まんぐーすは「トップガン マーヴェリック」見る前、突拍子もない場面設定や、現実とかけ離れた作戦任務が描かれて白けるのでは・・・と一抹の懸念を抱いていましたが、大迫力の音響と映像で、コロナ下で縮んでいた心を開放してもらいました。3作目にも期待いたしましょう

映画トップガン関連の記事
「太平洋軍トップはトップガン出身」→https://holylandtokyo.com/2020/12/07/337/
「コロナで第2弾公開延期」→https://holylandtokyo.com/2020/04/12/722/
「第2弾の予告編2」→https://holylandtokyo.com/2019/12/19/2847/

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米空軍が電動固定翼機の3か月間のお試し試験終了 [米空軍]

Joby Aviation社電動ヘリ試験に続き固定翼Aliaでも
負傷者搬送やF-35部品輸送の低コスト運用
トラック車両輸送より「早くて安い」とアピール

Alia BETA3.jpg1月28日、電動固定翼機「Alia」を開発したBETA Technologies社が、米空軍と共に10月末からフロリダ州Duke飛行場(Tyndall空軍基地から約120㎞)を拠点として取り組んできた同機(機体はBETA社保有)の3か月間に及ぶお試し試行運用を終了し、従来C-130輸送機が行ってきた負傷者の高度医療機関近傍への空輸や、設備不十分な飛行場に着陸したF-35に修理用部品を空輸する試験飛行などを行ったと発表しました

米空軍は2020年2月から、日進月歩の民生電動ヘリ&航空機を活用するプロジェクト「Agility Prime」を本格的に立ち上げ、空軍研究所のAFWERXチームが主導で10社以上の企業と様々なレベルの契約を締結して「民間活力活用」を図っており、2023年年9月には「電動ヘリeVTOL」として、トヨタ自動車も600億円出資しているJoby Aviation社から初号機を入手し、加州エドワーズ空軍基地で同じく3か月間のお試し使用試験を行ったところです

Alia BETA4.jpg電動ヘリ&電動固定翼機の用途を空軍は多様な側面から検討中ですが、従来型ヘリでは危険な特殊部隊員の侵入・帰還輸送や敵領域での救難救助、静粛性を活用した偵察、最前線の分散運用基地での輸送任務、広大な演習や試験場での移動用など、66項目の将来想定任務がアイディアとして米空軍プロジェクトチーム内で検討されているとのことです。

また「無人機」開発の教訓から、民間主導の競争に任せすぎると価格競争になり、結果として中国製部品や中国企業がサプライチェーンに大きく絡んで米国防省が採用できなくなる問題の再発を防ぐため、民間企業の競争や柔軟な発想を妨げない「ほどほど」の米国防省による関与で、米国内の電動ヘリ&航空機産業を成長させつつ、米国内サプライチェーンも育成する姿勢で取り組んでいるようです。

電動固定翼機「Alia」の3か月お試し試験では
Alia BETA5.jpg●まず「Alia」は、幅約50フィート(15m)、航続距離250マイル(450㎞)、最大速度138ノット(時速250㎞)でペイロードは1000ポンド(約450㎏)、騒音レベルは通常ヘリの10%程度レベル。
●「Alia」には、垂直離着陸可能なティルローター形式の型もあるが、空軍は通常離着陸型をお試し。機体の受け入れ前に、3基のシュミレータ(うち1台は移動可能型)と2機の充電設備を入手済で、2023年10月に米国防省初の充電設備としてDuke飛行場に設置

●1月11日実施の患者輸送試験の概要
・救難救助ヘリHH-60Wが、患者を最前線基地想定のジョージア州Moody空軍基地から、安全な後方基地を想定したフロリダ州Eglin基地に空輸。その後Eglin基地に待機していた「Alia」機内にストレッチャー毎患者を移し、高度医療施設近傍をイメージした約120㎞先のDuke飛行場へ、従来のC-130輸送機ではなくAliaで移送

ALIA Beta2.jpg・BETA Technologies社は、「僅か10分でのHH-60ヘリからAliaへの乗り換えは、一刻を争う患者輸送にとって重要なポイント」(C-130の場合、機体への患者の固定、エンジン始動から離陸までの時間もより多く必要)、「この120㎞飛行にC-130は乗員3名と燃料費約1600ドルが必要だが、Aliaは乗員2名と燃料費わずか5ドルで可能」(エンジン推進航空機と比較し、単純な構造の電動航空機は、維持整備費も安価)とアピール
・米空軍の試験飛行担当部隊指揮官は、「Aliaの様な低コスト輸送アセットを導入することで、前線での空輸任務に必要なC-130の負担軽減が可能」と電動航空機の利点をアピール

●F-35部品の輸送試験
・「Maintenance Recovery Team (MRT) mission」として、Duke飛行場に緊急着陸したF-35の修理に必要な部品を、Eglin基地との間を往復してAliaが空輸
・BETA Technologies社は、「この任務を車両による陸上輸送で行うと、4時間とガソリン代45ドルが必要だが、Aliaだと1時間と燃料代25ドルで可能」とアピール
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Archer Aviation.jpg米空軍は上記でご紹介したJoby社とBETA Technologies社製の電動ヘリや航空機の「お試し試験」の他に、既にArcher Aviation社と約210億円で6機の電動eVTOL機購入契約を結んでいるとのことで、「まず電動ヘリや電動固定翼機の特性を米空軍内に周知する」フェーズから、徐々に「本格的な任務アサインと部隊戦力化」フェーズに進んでいる模様です

どの機体もデザインが洗練されており、既存の軍需産業が生み出す航空機とは一味違いますねぇ・・・・。完全に素人目線ですが・・・

米空軍の「Agility Prime」計画
「電動固定翼機Aliaの試験開始」→https://holylandtokyo.com/2023/12/05/5267/
「Joby社電動ヘリで本格試験開始」→https://holylandtokyo.com/2023/10/05/5076/
「米空軍が電動ヘリ導入検討開始」→https://holylandtokyo.com/2022/06/29/3370/
「電動ヘリeVTOLでACE構想推進へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/13/105/

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米海軍が募集難を受け「高卒」条件を撤廃へ [Joint・統合参謀本部]

米海軍は2000年に一年間だけ緩和した過去が
陸空海兵宇宙軍はそこまでの緩和を許容せず
「コックや甲板長など」可能な仕事がある・・・と

Navy recruits2.jpg1月27日付Military.com記事が、米海軍司令部人事計画部長であるRick Cheeseman海軍中将へのAPによるインタビュー記事を引用しつつ、新兵募集難に苦しむ米海軍が、採用学力テストで一定の成績を納めれば、高校卒業資格の無い若者を24年ぶりに採用に踏み切ると報じています。陸空海兵隊宇宙軍が「最後の一線として」原則維持している「高卒以上」採用の原則を断念する決定に、波紋が広がっています

コロナ感染予防対策として、高校や各種イベントでの採用活動自粛を強いられ、コロナ後は一般企業の好条件を武器にした旺盛な採用活動の後塵を拝して人材集めに苦悩する米軍全体にあって、2023年度目標の3万7700名の募集目標数に対し、31800名(目標の84%)しか採用できなかった米海軍は、前線の人手不足を賄うため、2024年度は4万600名の採用目標を掲げています。ちなみに2024年度の米海軍予算定員は33万8000名で、募集目標の占める大きさが衝撃的です

Navy recruits6.jpgこの2024年度採用目標について同中将は、「我々はこれだけの新人が必要で、募集担当官に4万600名かき集めて来いとはっぱをかけている。完全に達成可能な数字だとは考えていないが、この目標に向かっていく」と語っており、単なる悲壮感を超えた、どうしようもない現実へ、底なしの対応を迫られている感さえ漂っています。

ただ昨年の募集目標達成率で米海軍の84%より低い米陸軍(75%)は、「高卒」基準の放棄まで踏み込んでおらず、同じく目標を達成できなかった米空軍も含め、これまでの採用期間を延長したり、採用前に数週間から数か月の準備教育を「高卒以上」の入隊希望者に行い、入隊者の質確保に取り組んだりしているところです

Navy recruits5.jpg記事によると、米海軍は2023年度に「高卒以上」資格が無い入隊希望者2442名を「門前払い」したということですが、今回の「高卒資格以上」の条件撤廃決定に伴い、決定後72時間以内に2442名全てに当該決定を伝え、改めて米海軍への入隊意思確認の接触を図ったと同中将は語っています

厳密にいえば、例えば米空軍も入隊採用試験で100点満点の65点以上取れば、「高卒以上」の資格が無くても採用しているようですが、その比率は0.5%以下で、例外的に優秀な場合のみに受け入れているようです。

Navy recruits4.jpg募集目標未達で目標の75%しか採用できなかった米陸軍は、米海軍のように採用学力試験で50点以上取れば「高卒以上」の資格が無くても採用との方針で進むと、採用後の新兵教育部隊で脱落者が増えるだけだ・・・との問題意識から「高卒以上」条件を崩すつもりは無いようです

この懸念に関して米海軍人事部長Cheeseman中将は、「学力が低い新入兵士の初期教育機関での脱落率は11.4%で、学力の高いグループの脱落率6.5%より高いが、それほど大きな差だとは考えていない」、「コックや甲板長(cook or boatswain mate)等の役割を期待する新兵にそれほど高い学力は必要ない。必要な教育を行えば任務を十分果たしてくれる」、

「米海軍は並行して人材確保策を検討しているが、学力レベルを下げて採用する手法もリスクをとって試してみたい。我々は決断した。やってみようと・・・」と、実に正直に語っています
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Navy recruits.jpg2024年度の目標数に関し「完全に達成可能な数字だとは考えていないが、この目標に向かっていく」・・と語る同中将の目には、現在の米海軍最前線部隊の様子はどう映っているのでしょうか? 

一昔前では考えられなかったような、様々な問題や異常事態が前線部隊では起こっているのでしょうが、日本にとっても、決して「対岸の火事」ではないはずです。

新兵募集難&離職者増への対応
「空軍が募集年齢上限を42歳に」→https://holylandtokyo.com/2023/10/31/5184/
「空軍が24年ぶりに募集10%未達へ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/25/5035/
「入隊学力試験に電卓持ち込み可へ」→https://holylandtokyo.com/2023/08/29/4976/
「募集難に合法移民へ猛烈アプローチ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/16/4743/
「兵士慰留に職種変更容易化へ」→https://holylandtokyo.com/2023/05/12/4608/
「米空軍が体脂肪基準緩和へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/07/4494/
「歩きスマホやポケットハンドOK」→https://holylandtokyo.com/2021/12/16/2519/

米空軍パイロット不足関連
「コロナ後の操縦者争奪戦に備え」→https://holylandtokyo.com/2021/10/17/2271/
「女性登用増に航空機設計基準変更」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-20
「ヘリ操縦者養成から固定翼削除試行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-06
「米空軍がパイロット募集の身長基準を廃止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-23
「Fly-only管理の募集中止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-15
「5年連続養成目標数を未達成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-19
「採用の身長基準を緩和」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18
「操縦者不足緩和?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-12
「操縦者養成3割増に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-21-1
「下士官パイロットは考えず」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19-3
「F-35操縦者養成部隊の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12-3

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女性陸軍大佐が男性部下への性的襲撃で解任 [Joint・統合参謀本部]

アジア太平洋同盟国への支援協力担当部隊長
女性が加害者の性的襲撃は約6%との米国防省統計
襲撃複数回のほか、あそこを握るとかも・・

Sullivan.jpg1月23日付Military.comが、昨年10月13日に第5安全保障支援旅団(5th SFAB : 5th Security Force Assistance Brigade)の第5工兵大隊長(5th Brigade Engineer Battalion)だったMeghann Sullivan大佐(女性)を、男性部下に性的襲撃(sexual assault)で同ポストから解任していたことを、米陸軍報道官が最近になって公表したと報じました

解任されたSullivan大佐はまだ米陸軍に所属しているものの、現在は異なる基地(5th SFABはワシントン州のLewis-McChord統合基地所在)の第1軍団隷下部隊に異動しており、弁護士を付けて係争中なのか等、それ以上の細部は明らかになっていませんが、5th SFSBに対しては電子メールや音声記録等々を含む部隊調査が行われ、結果として解任されたSullivan大佐の上司たる5th SFSB司令官Jonathan Chun大佐も解任され、後に米陸軍を離職しているとのことです

Sullivan5.jpg同事案に関与した一人の匿名情報源によれば、解任されたSullivan大佐は、少なくとも2名の男性部下を性的襲撃し、他に数名の男性隊員にセクハラ行為を行い、右事案のいくつかは飲酒強要などアルコールにも絡むもので、中には男性部下に無理やりキスしたり、相手の同意なく男性兵士のベルトの下部分を手でつかんだりしたとの容疑がかけられていたとのことです。

なお、第5安全保障支援旅団のようなSFAB(Security Force Assistance Brigade)は、2017年から2020年にかけ、同盟国軍の訓練や能力向上を支援するために新設された部隊で、5th SFABはアジア太平洋地域の中でも豪州、日本、モンゴルなど対中国で重要な同盟国を主担当にしており、Sullivan大佐は同旅団で最初の女性大隊長だったとのことです

性的襲撃関連の米国防省2022年対象調査によれば
Sullivan2.jpg●性的襲撃被害者の中で、男性兵士の占める割合は約10%であるが、被害者が恥ずかしくて上司等への報告を控えているケースが相当数あるのではないか、と国防省は考えている
●また性的襲撃の中で、女性が加害者である件数は約6%であるが、この場合も同じく被害者が訴え出ていないケースが多数あるのではないか、と国防省は見ている
●男性の上級士官が加害者であるケースは8%を占めているが、女性上級士官が加害者のケースは極めて稀で、国防省の統計の中でほとんど確認できない(加害者を性別で区分していない報告も多い)
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Sullivan3.jpg以前、華やかな経歴の米空軍女性戦闘機パイロット少将が、「部下を罵倒する」「会議で不規則発言を繰り返す」「電話で喚き散らす」などの行為を繰り返し、職務を解任され退職したケースをご紹介したことがありましたが、男性の部下をレイプする大佐のケースは初めて見聞きしました。米軍のような大きな組織は社会の縮図ですから、中にはそんな人が紛れ込んでいるのでしょう・・・

ただ2022年を対象とした米国防省の性的襲撃関連調査で、「男性兵士の被害者は約10%」「女性が加害者である件数は約6%」との部分について、国防省が「周囲からの偏見を恐れ、未報告の事案が(相当数)存在している:is seen by the Pentagon as underreported due to societal stigma」と分析している点は興味深いところです

女性士官に関するいろいろ案件
「超優秀なはずの女性少将Pがクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「女性上院議員が空軍P時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08

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米がトルコへの最新F-16と改修キット売却承認 [安全保障全般]

トルコのスウェーデンNATO加盟承認を受け
F-35計画から排除されたトルコに代替戦闘機として
トルコの「米国戦術核兵器シェアリング」にも貢献か

sweden nato4.jpg1月27日付Defense-Newsが、スウェーデンのNATO加盟に反対していたトルコが賛成すると米国政府に約束したことを受け、米国務省が40機の最新F-16と79機分のF-16近代化改修キットを$23 billion(約3兆4000億円)で売却することを承認(正確には米議会に通知)したと報じています。米議会内にはトルコの人権問題を理由にF-16売却に反対する有力議員も存在するようですが、トルコが人権問題を改善すると一応コミットしたことで、この話は進むようです

トルコがスウェーデンのNATO加盟に反対している表面上の理由は、トルコに対し反政府活動をしているクルド人等へのスウェーデンの姿勢が不適切との説明ですが、一般にはトルコが「駆け引き材料」としてスウェーデンのNATO加盟承認を利用している見られていました

一方でトルコの戦闘機問題の経緯は・・・
sweden nato2.jpg●トルコは約200機のF-16戦闘機を保有運用しているが、その中の旧式F-16約100機をF-35に更新し、残り約100機(現在は79機)を能力向上するとの構想の下、F-35共同開発メンバー(部品の製造分担を含む)に当初から参加していたが、2019年にトルコが防空ミサイル選定でロシア製S-400の導入決定したことでトルコ防空を実質支えてきた西側諸国が猛反発、トルコをF-35計画から排除することを米国トランプ政権が2019年9月に決定

F-16 turkey3.jpg●F-35導入の道を断たれたトルコには、ロシアがSU-35やステルス機SU-57E売り込んだり、トルコ自身が国産ステルス戦闘機TF-X開発に本腰との動きもあったが、有効性や実行可能性の問題から話は進まず、また100機のF-16能力向上についてもとん挫。ただ、NATO唯一のイスラム国であるトルコとの関係も米には重要で、F-35部品調達のトルコ完全脱却も時間が必要等の点から、2021年10月に「米がトルコにF-16売却提案」との報道が。
●別の視点として、欧州NATO諸国(ドイツ、ベルギー、オランダ、イタリア、トルコ)による「米国戦術核兵器シェアリング」任務で、有事必要時には、5か国の戦闘爆撃機によりB61戦術核爆弾が運搬&投下する約束がなされていますが、この役割をトルコに継続させるため、長く使用可能な最新F-16をトルコに提供する意味も多少はあると思料

sweden nato3.jpg2022年2月からのロシアによるウクライナ侵略を受けた「中立国スウェーデンやフィンランドのNATO加盟の動き」は、2023年4月に露と長い国境線を持つフィンランドの加盟が実現して大きく前進しましたが、スウェーデンの加盟については、トルコとハンガリーの反対で1年以上ごたごたしています。

残るはハンガリーだけですが、トルコの態度変更を受け、ハンガリー首相が反対姿勢転換の方向性を示すも、翌1月25日には同じ政党所属の議会議長が「判断を急ぐ必要はない」と発言しており、「露骨にロシアに肩入れし、ウクライナ支援や北欧国の新規加盟を妨害し続けている」ハンガリーに対し、NATOや西側諸国からは「NATOはハンガリーに対する安全保障の部分的停止も視野に入れるべき」、「ハンガリーをEUから蹴り出せ」との声も高まっています

忘れてました・・・同記事はギリシャが40機のF-35を購入することも、米国務省が承認したと報じています。諸経費を含め1.26兆円とか・・破綻国家に売却して大丈夫なのでしょうか・・・?

スウェーデン関連の記事
「欧州戦闘機計画とス」→https://holylandtokyo.com/2023/12/18/5352/
「欧州空の盾計画にスが参加」→https://holylandtokyo.com/2023/07/12/4828/
「B-1爆撃機が初展開」→https://holylandtokyo.com/2023/06/22/4780/

トルコへのF-35提供停止などの経緯
「F-35代替でF-16提案か?」→https://holylandtokyo.com/2021/10/20/2357/
「トルコへのF-35部品依存」→https://holylandtokyo.com/2020/10/14/432/
「トルコ代替で米で部品製造」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-27
「トルコをF-35計画から除外」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17
「S-400がトルコに到着」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14

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B-21次期爆撃機は既に低レート量産入り [米空軍]

残念な追記です・・・
(1月25日の報道を踏まえて)

Warden CEO.jpg1月25日開催のNG社CEO会見(四半期決算説明会)で、B-21開発製造事業について、米空軍との初期開発&5ロット製造契約(2015年)は「固定経費」契約で1機あたり「$550 million」となっているが、諸物価の高騰等により現在は「$778 million」となっており、1機あたりの差額「$75 million」(約110億円)の損失を生じることとなっていると語り、初期5ロット製造(推定21機)で約2300億円の損失を抱えると明らかにしました

CEOのKathy Warden女史は、2015年契約段階で米空軍幹部が「少なくとも100機調達」と述べ、最近では運用担当のGSコマンドが「150-200機必要」と主張していること等を背景に、トータルのB-21計画ではNG社にしっかりした利益をもたらすことになろうと株主に説明していますが、同時に「今後は固定価格契約にはより慎重に臨む所存だ」とも説明しています

超優等生だったB-21開発に「けち」がついて残念ですが、NG社にとってはそれよりも問題なのが、Kendall空軍長官も頭を抱える「GBSDプロジェクト(ICBM:ミニットマンⅢ)」で、2020年契約時から2029年運用開始を目指す計画で、既に37%のコスト増(約4.5兆円アップ)見積りの「超難事業」となっていると1月29日付の記事(https://holylandtokyo.com/2024/01/29/5478/)でご紹介したところです。核抑止3本柱の維持は難しいかもしれません・・・
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(以下は、1月18日付の報道を基にしたベースの記事です)

昨秋に調達担当次官が承認と明かす
試験機を量産ラインで製造し成熟度を確認済と
当初計画2020年代半ばに運用態勢確立に向け着々

B-21 low-rate2.jpg1月22日、米国防省のWilliam LaPlante調達担当次官(元空軍副長官)が声明を発表し、昨年11月10日に初飛行に成功した次期ステルス爆撃機B-21に関し、地上試験や飛行試験の順調な進み具合や、試験用機体を量産機製造ラインで組み立てる等、製造設備や製造ライン技術者&作業従事者の技量を十分に成熟したレベルに高めていることが確認できたことから、2023年秋に「低レート量産:low-rate production」の承認を出していた、と明らかにしました。

B-21は、2022年12月2日に限定された形での機体お披露目式典が行われ、2023年11月10日に初飛行(製造拠点の加州Palmdale工場から、同州内Edwards空軍基地)が確認され、その後は同空軍基地で地上滑走など本格的な地上確認試験が継続されていたところ、2024年1月17日には同空軍基地での初飛行も目撃(空軍報道官も認める)されていました

LaPlante B-21 2.jpg2023年秋に同次官が承認したという「低レート量産:low-rate production」が、どの程度の製造ペースを指すのか不明ですが、計画では「2020年代半ばに初期運用態勢確立」、「2030年代には老朽化が進むB-1およびB-2爆撃機の後継機となり、エンジン更新を含む近代化改修を終えた76機のB-52Jと共に、米空軍爆撃機2機種体制を構築」、「少なくとも100機調達」と米空軍は発信を続けており、

B-21の持つステルス性能を生かし、強固な防空網を持つ本格的な敵対国に対しても、「通常兵器と核兵器の両方を搭載&使用可能な機体仕様」で「penetrating deep strike missions」が遂行可能な能力を米空軍に提供するアセットだとも説明されてきています。なお同爆撃機の調達&運用&維持整備に関する30年間の総コストは$203 billion(約30.0兆円)で、機体1機の平均価格は$692 million(1020億円)と見積もられています

B-21 low-rate.jpg複数の米空軍高官は2023年下旬時点で、「初披露した初号機を含め、現在6機が様々な製造段階にある」と述べ、これらの機体は様々な初期試験用の特別仕様や計測機材搭載の形態となっているが、所要の試験終了後は部隊配備用に機体改修して実戦部隊に提供されると説明しており、従来の新型機体開発&製造の流れと比べ、「開発試作&試験段階から、効率的な量産態勢確立への円滑な移行」を強く意識した計画が極めて順調に実行されている様子が伺えます

またNorthrop Grumman社関係者は、「米空軍と協力し、B-21の全ライフサイクルをカバーするdigital ecosystem構築に取り組んでおり、個々の機体の製造段階から部隊提供後の維持整備や各種運用データを一括管理することで、現場の整備員や空軍技術者と弊社開発関係者が一体となって、B-21の効率的な製造・使用・維持につなげる体制を構築しつつある」ともアピールしています
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B-21 low-rate3.jpgB-21爆撃機の開発が順調な理由について以前米空軍関係者が、「計画が開始された後は、要求性能を一切変更しなかった。設計や技術審査がある程度順調に進むと、様々な方面から、様々なコネやルートを経て、この能力も付加してはどうかとか、新たに開発や研究が始まっているこの技術をB-21で試してみないか・・・等々の話が持ち込まれたが、一切受け付けなかった」と話していましたが、高官や政治的な「横やり」が「グダグダ開発」の一番の原因かもしれません

米軍や米国防省が取り組む様々な新規開発案件の中で、「唯一」と断言しても良いくらい信じがたいレベルで順調なB-21開発計画の、今後の「武運長久」を心から祈念申し上げます

B-21関連記事
「初飛行を12の視点で分析」→https://holylandtokyo.com/2023/12/01/5284/ 
「11月10日早朝の初飛行」→https://holylandtokyo.com/2023/11/13/5238/
「Taxi Tests開始」→https://holylandtokyo.com/2023/10/30/5180/
「エンジン稼働試験開始&屋外写真」→https://holylandtokyo.com/2023/09/15/5041/
「最近power on試験実施」→https://holylandtokyo.com/2023/08/03/4911/
「豪州も購入検討した」→https://holylandtokyo.com/2023/05/15/4588/
「B-21導入で米空軍爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「初披露のメディア扱い」→https://holylandtokyo.com/2022/12/14/4027/
「映像:B-21初披露式典」→https://holylandtokyo.com/2022/12/05/4015/
「10の視点で:NG社事前リリース」→https://holylandtokyo.com/2022/12/01/4004/
「12月2日に初披露」→https://holylandtokyo.com/2022/10/24/3796
(これ以前に2011年から25本の記事アリ)

米空軍の爆撃機体制
「B-21導入で爆撃機部隊の今後」→https://holylandtokyo.com/2022/12/23/4050/
「爆撃機管理は今後5-7年が多難」→https://holylandtokyo.com/2021/08/06/2024/

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「ウ」への米国支援兵器約2400億円分が記録不十分も [安全保障全般]

22年2月開戦から23年6月までの国防省監察官調査
23年末で総額6兆6000億円の援助物資の4%以下
「汚職による横流し等の形跡は一切ない」「記録は改善中」

Javelin FMG-148.jpg1月11日付DefenseOne記事が、米国防省監察官が米国からウクライナへの支援供給武器の管理追跡状況(2022年2月の開戦から2023年6月までの記録を監査)について調査&監査した結果、開戦時の各種混乱、米国監視担当官の開戦時不在やその後の要員不足、安全確保面からの前線状況確認不足、ウクライナ及び米国側双方の事務作業の遅れ等々から、

開戦後から大量に援助された携帯防空兵器Stingerや対戦車ミサイルJavelins等々の追跡記録が、約1.67Billiomドル(約2400億円)相当分(2023年末時点で援助装備品総額は約6兆6000億円で、その3.7%に相当)に関し不明確だと指摘している、と報じています

Stinger SAM.jpgただ、記録不十分な責任が米側の事務処理不備に起因する部分も相当部分含まれ、また米国からの援助装備品の追跡管理は時間が経過するほど改善されており、かつ援助品がウクライナ側担当者の汚職により横流し転売されたりした形跡は全くなく、

むしろ貴重な援助兵器をウクライナ兵士が死守しようとして落命したケースも多数あり、現在もウクライナ兵約8000名の生死や所在が不明な全面戦争の混乱の中、教訓とすべき点はあるが致し方ない側面が多い、との論調のDefenseOne記事となっています

記録不備の原因等として報告書は
ukuraine UAV.jpg●在ウクライナ米国大使館が、開戦の2022年2月から同年5月まで閉鎖されており、この5か月間に現地で支援物資をフォローする人員が不在だった
●同大使館再開後も、監査を担う国防協力室の職員配置がウクライナ各地のオフィスに一か所1名で、かつ米国政府が危険な前線地域への米職員の立ち入りを制限したことから、2022年春頃から大量に提供された支援兵器を前線で十分に追跡記録&確認できなかった

●米本土側でも、通常の支援物資の流れとは異なる多様なルートで、短期間に大量の兵器が提供されたことから、事務スタッフのデータ処理が追い付かず、入力漏れ等の事態が多発した
●それでも、2023年2月時点では総データの87%が規定で定められた期限までに把握&データベース入力されなかったが、2023年6月時点でデータベース更新不備率が56%にまで低下している

ウクライナ議会の支援物資監視担当議員のコメント
ukraine war lesson2.jpg●(開戦当初の混乱はあったかもしれないが、)現時点で米側監査官は24時間いつでもどこでも監査することができ、午前2時に対戦車ミサイルの保管状況確認を受け入れることもある。
●我が国はロシアの侵略を受けた全面戦争下にあり、現在約8000名のウクライナ軍兵士が生死不明の状態だが、そのような混乱の中でも、物質追跡が出来なくなったものについては「追跡不能」や「所在不明」として報告している
●わが軍兵士は援助兵器を大切に使用しており、貴重な兵器を守るために犠牲となった兵士が多数いることも忘れないでほしい

在ウクライナ米国大使経験者のJohn Herbst氏は、
●支援物資追跡に関しては、支援対象国の管理要員が不足しているケースが多いのだから、米国がリーダーシップを発揮して監視要員を増員すべき

CSISのMark Cancian研究員
Ukraine air defense.jpg●支援物資の追跡管理に関しては、米国主導で民間業者の人員を投入することで、米国政府職員のオーバープレゼンスを避けつつ、管理レベルを向上させることが得策
●ロシアの戦車を目の前にして、援助兵器使用記録を適時に入力することが困難なのは当然であり、ウクライナ側の状況は致し方ない
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この監査は、武器援助を担当する米国防省自身が行っている点で不十分だとのご意見もありましょうし、2400億円との不明援助装備等の規模に関しても決して小さいとは言えません。

DefenseOne記事の英文タイトルは如何にもですが、記事の内容は冷静な視点を維持していると感じますし、まんぐーすも致し方ないと思います。今後の教訓とすればよいと思います。

様々な視点から「ウ」の教訓
「23106月:米陸軍首脳「ウ」の教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/10/13/5129/
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「イラン製無人機が猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「アジア太平洋への教訓は兵站」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「22年6月:米陸軍首脳のウの教訓」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245/
「SpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/

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米空軍制服トップが推薦図書等を公表 [米空軍]

「組織改革や挑戦」に関する4アイテムの簡明さ
書籍2冊、Podcast1本、論文1本
推薦図書等に関する空軍兵士の意見を募るとか

Leadership Lib.jpg1月17日付米空軍協会web記事が、昨年11月に就任したDavid W. Allvin新空軍参謀総長が推薦する書籍等4アイテムを紹介しています

従来は推薦図書を公表するのがお決まりでしたが、統合参謀本部議長に就任したBrown空軍大将が空軍参謀総長時に、「書籍だけでなく、映画やPodcastや他のメディア(論文等を含む)も対象にする」と時代に沿った変更を行い、Allvin新参謀総長は冒頭の4アイテムを選定したとのことです

Allvin16.jpg昨年6月にKendall空軍長官が推薦図書(この時はまだ書籍縛り)を発表した際は、ロシアのウクライナ侵略の真っただ中でしたが、普段から自身の業務の優先事項を3つ挙げろと言われたら、「1にChina、2にChina、3にChinaだ」と公言していたそのままに、約10冊の推薦図書は全て中国に関するもので話題を集めました

Leadership Lib4.jpg今回Allvin新参謀総長が推薦した4アイテムは、いずれも「不確実性の中での組織改革と挑戦」に関するもので、Kendall空軍長官の命で昨年9月から検討が開始され、今年2月12日に発表予定の「米空軍の組織構造、訓練、兵器開発等々」全体に及ぶ改革の「初期実施計画」(最最適化:re-optimization計画)を強く意識したものとなっています

なおAllvin大将は新たな試みとして、推薦書籍等に対する空軍兵士からの意見を求めると明らかにし、「皆からの意見は重要で、組織として何を重視し、皆のリーダーシップ探求の旅に何が不可欠なのかを定義するうえで極めて大切だ」とその理由を説明しています

推薦された4アイテムを、同大将の推薦の弁と共にご紹介

●書籍「One Mission」 by Chris Fussell
元海軍SEALsによるこの本は、「大規模な組織に革命を起こすための重要事項」とともに、「組織改革成功の実例から得られる教訓を学ぶ生々しいテキスト」

Leadership Lib3.jpg●書籍「Analogies at War」 by Yuen Foong Khong
この本はベトナム戦争について考察し、「歴史上の類似事象が政治的意思決定にどのように影響したか」を描いたもので、「政策選択に作用する認知プロセスを明らかにし、仮定に疑問を投げかけ、現代の意思決定における認知の罠を回避するリソースとして役に立つ」と推薦

●論文(Foreign Affairs誌掲載)「The Path to AI Arms Control: America and China Must Work Together to Avert Catastrophe」 by Henry Kissinger and Graham Allison
「AI軍備管理への道:米国と中国は大惨事を回避するため協力すべき」とのタイトルの論考は、「規制無きAI開発がもたらす影響に対処するため、迅速な行動と協力の必要性を訴えている」と推薦

●Podcast「How to Excel When Everything Is Changing」 by Brad Stulberg
4Pアプローチ(Pause, Process, Plan, Proceed)で、「衝動的な反応ではなく、思慮深い対応をするための秘訣」について詳しく説明
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Leadership Lib5.jpg記事は、公表されたリストは今後追加される可能性があると記していますが、過去の参謀総長が7-12冊程度の書籍をリストアップしていたことと比較すると、まず4つに絞り込んできたAllvin大将の姿勢に、仕事人&実務家として名をはせてきた人柄がにじんでいるように感じます

2月12日の米空軍&宇宙協会主催の航空宇宙戦シンポジウムで、Kendall空軍長官がどのような空軍の改革「初期実施計画」(最最適化:re-optimization計画)を持ち出すのか大変気になりますが、剛腕Kendall長官の決定を実行に移すAllvin参謀総長の手腕にも期待です

Kendall空軍長官が宣言
「来年1月までに米空軍総レビュー実施」→https://holylandtokyo.com/2023/09/07/5012/

全てが中国関連の書籍です!!!
「Kendall空軍長官の推薦図書19冊」→https://holylandtokyo.com/2023/06/19/4736/

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