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空自宇宙部隊と米宇宙軍の本格協議SETスタート [サイバーと宇宙]

イスラエルとブラジルに続く3か国目のSET開設
アジア太平洋諸国とは初のSET開始

Japan SET.jpg7月13日、米宇宙軍が諸外国との協力関係強化のために行っているSET(Space Engagement Talks)が、イスラエルとブラジルに続き、アジア太平洋諸国で初めて日本の航空自衛隊との間で開始され、東京市ヶ谷の航空幕僚監部で将官級協議(SET)や作業部会に分かれての部門別協議が行われました

米側は米宇宙軍計画部長のPhilip A. Garrant中将とアジア太平洋宇宙軍(昨年10月創設)司令官のAnthony J. Mastalir准将が率いるアジア太平洋宇宙軍スタッフで構成され、日本側は空幕防衛部長の坂梨弘明空将補(パイロットでない防衛部長!)を筆頭に、2022年3月創設の宇宙作戦群(2020年5月創設の宇宙作戦隊が拡大)スタッフが参加した模様です

Japan SET3.jpg自衛隊とのSET開始は、今年1月の「2+2」で合意された「宇宙での状況認識・相互運用性・作戦面での協力を更に深化&強化し、有事にそれぞれが攻撃を受けた際は相互に防御行動をとる新たなコミットメント確認」を受けたもので、

昨年3月の宇宙コマンド司令官James Dickinson大将や同10月の宇宙軍参謀総長(正確には作戦部長)Raymond大将の訪日から更に前進し、具体的協力関係強化に向けた実務的協議を推進するものです

Japan SET5.jpgSETについてアジア太平洋宇宙軍の報道官は、「宇宙ドメイン状況認識、宇宙情報、教育訓練、部隊構築、能力向上、アジア太平洋宇宙軍との調整要領などなど、SETで取り上げられた項目について、作業部会(Space Working Group)で具体的なアクションアイテムの設定や時程等を議論した」と説明し、

またMastalirアジア太平洋宇宙軍司令官はアジア太平洋地域国との初のSET創設に当たり、「SETは、同盟国等との新たな協力を推進するメカニズムであり、地域の安定と宇宙環境の長期的な維持に大きく貢献するものだ」と表現しているところです
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Japan SET2.jpg米国から見て地球の裏側に存在する自衛隊部隊は、宇宙監視面で米軍を補完可能な地理的メリットを持っていますが、宇宙関連のアセットが極めて限定的な自衛隊に、米軍との協力で何が可能なのか、さっぱりイメージアップできませんが、

パイロットでない空幕防衛部長・坂梨空将補の采配に、大いに期待したいと思います!!!

米宇宙軍関連の記事
「宇宙輸送企業の選定へ」→https://holylandtokyo.com/2023/07/10/4819/
「衛星への軌道上補給に企業活用へ」→https://holylandtokyo.com/2023/03/01/4320/
「衛星のSM&L重視」→https://holylandtokyo.com/2023/01/18/4130/
「有志が民間企業大量導入訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/09/16/3609/

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米空軍が搭乗員用新型CBRNマスクを近々投入 [米空軍]

従来装備より格段に快適で装着も迅速に
ただ依然としてCBRN汚染機体への対応は棚上げ

M69 Joint.JPG7月6日付米空軍協会web記事は、米空軍が数十年更新されてこなかった大型機搭乗員用の新型CBRN対処用マスク&スーツ(化学、生物、放射能、核兵器汚染対処マスク&スーツ)を6月に空軍内に披露し、7月に入ってメディア発表したと紹介しています

新しいCBRN対処マスク&スーツは正式名称が「M69 Joint Service Aircrew Mask Strategic Aircraft assembly」と長いので、マスクと全身スーツ等を合わせて「M69 system」と略して記事では紹介されています。

M69 Joint2.jpg従来の「Unit-19P Aircrew Eye and Respiratory Protection (AERP)」が正確に何時から使用されているのか確認していませんが、「数十年前:decades ago」から使用されていたようで、匿名のC-17パイロットによれば、「分厚いゴミ袋を全身にかぶせられて飛行機を操縦しているようなものだ」「暑く霧が立ち込め、状況認識が大幅に低下し、飛行中に使用するのは非常に危険だ」との代物だったようです

2018年からHH-60W救難ヘリやC-130H輸送機で試験使用が始まり、現在では約2万セットが米空軍部隊に配分されて最終運用確認が行われており、2024年までには初期運用態勢確立IOCが宣言される予定だそうですが、試験着用した輸送機搭乗員は「装備更新の遅れが気になっていたが、M69は素晴らしい。この装置は従来の AERP よりも何光年も先を行っている」と大喜びで感想を語っています

M69 Joint5.jpg新旧マスクシステムの具体的な性能差は公開されていませんが、従来マスク全体の着用には約10分必要だったところ、M69システムでは全身スーツを含めても2分強程度で着用可能で、着用感も涼しく、視界も良好で、かさばらないことから狭い機内での活動にも適しており、対中国など強固に防御された厳しい空域での作戦活動にも対応できる部隊レベルでも高評価な模様です

CBRN汚染された機体の扱いは?
ただ、搭乗員を守るマスクシステムが改善されてみると、CBRNで汚染された機体の扱いについて進展がないことが、改めて課題として米空軍内で再認識され始めているとのことです

C-17 R11.jpg例えばB(生物兵器)対処には、配備数は限定的ながらもコロナ対策で活用され高評価だった、大型機全体を大型シェルターに入れ、湿度管理した60-80度の高温空気を送り込んで、機体装備には影響を与えずにウイルスや細菌を消毒する「Joint Biological Agent Decontamination System (JBADS)」が存在しますが、「CRN」対処は手つかずの状態が現実のようです

米空軍の基本マニュアルには、「大型機の除染が完了するまで、他の航空機から隔離したエリアで駐機させ、空輸任務から除外する必要がある」と記されているようですが、汚染された飛行場に着陸した機体に搭載された乗員と貨物の具体的な扱い方や、極めて緊急度の高い辞任や貨物の場合の対応など疑問は尽きない状態だそうです。

M69 Joint4.jpgまた、汚染された輸送機等の上空通過は、国際的な基準のない現状では同盟国であっても拒否する可能性があり、着陸となると不可能と考えざるを得ないのが現状であり、移動そのものが困難な可能性がある点でも根本的な課題が残っています

それにも増して、1機300億円近いC-17輸送機をCBRN環境で作戦させ、「汚染機体」とする判断が米軍指揮官に可能なのか・・・との意見が、匿名のC-17操縦者から聞かれたと記事は伝えています

救難や患者空輸や気象観測の課題
「気象部隊が対中国に備えIWOSを」→https://holylandtokyo.com/2023/07/04/4807/
「対中国に備える患者空輸医療チーム」→https://holylandtokyo.com/2023/06/27/4772/
「救難救助検討は引き続き迷走中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/23/4592/
「救難救助態勢が今ごろ大問題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/

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女性大将が米海軍トップに就任へ!!! [Joint・統合参謀本部]

現在の海軍No2である女性Lisa Franchetti大将が
米4軍のトップに女性は初めて
国防長官は別の男性大将を6月に推薦したが・・・
その男性大将は太平洋軍司令官に推薦・・

Franchetti5.jpg7月21日、バイデン大統領が8月21日に退役する米海軍トップ(CNO:Chief of Naval Operations海軍作戦部長)Mike Gilday海軍大将の後任に、現在副CNOである女性のLisa Franchetti大将を推薦し、米議会の承認を得られれば米4軍で初の女性トップになることが明らかになりました(なお沿岸警備隊司令官には、2022年8月から女性のLinda Fagan大将が就任済)

6月14日付ブログ記事でご紹介していたように、春から6月上旬までは、女性のLisa Franchetti大将が次期米海軍トップの大本命だとメディアも専門家も一致して「うわさ」していたのですが、「情報駄々洩れ」状態が災いしたのか、女性への「ガラスの天井」が存在したのか、

Franchetti6.jpg6月13日になって突然、各種メディアが「オースチン国防長官は太平洋海軍司令官であるSamuel Paparo海軍大将を推薦した」と相次いで報じ、その後は米海軍関係者は「本件は大統領の専決事項である」の一点張りでコメントを避け続けていました。

米軍の高級幹部約250名の人事全体は、アラバマ州選出のTuberville上院議員が「妊娠中絶が禁止された州から、許可された州へ移動して手術を受ける女性兵士に、旅費と休暇を付与する制度」に強硬に反対して人事案審議をストップさせており、この膠着状態は4か月以上経過した現在も継続中で、米海軍トップ人事の件も皆忘れかけていたタイミングでの突然の発表でした

Franchetti4.jpg以下に再掲載する6月14日付の記事でご紹介したように、Franchetti大将は1964年生まれで、2回の空母戦闘群司令官や第6艦隊司令官、更に欧州アフリカ艦隊司令官を前線指揮官として勤め、統合参謀本部では重責J-5長経験者でもあり、副CNOを経て何ら問題ない順当な女性海軍トップ候補の誕生です

この米海軍トップ人事のドタバタは前回の交代時にも見られた減少で、今やお家芸レベルに達しています。なお、6月中旬から今まで「次の海軍トップ候補」だった太平洋海軍司令官であるSamuel Paparo海軍大将は、過去の流れに沿ってインドアジア太平洋軍司令官候補者に同時に推薦されています

Lisa Franchetti海軍大将の公式経歴
https://www.navy.mil/Leadership/Flag-Officer-Biographies/BioDisplay/Article/3148210/admiral-lisa-franchetti/

軍での女性を考える記事
「海兵遠征軍レベルの先任軍曹に」→https://holylandtokyo.com/2022/12/20/4072/
「米潜水艦の最先任軍曹に初の女性」→https://holylandtokyo.com/2022/09/02/3619/
「米海軍Blue Angelsに初の女性パイロット」→https://holylandtokyo.com/2022/07/21/3484/
「沿岸警備隊司令官に女性が」→https://holylandtokyo.com/2022/04/07/3112/
「初の女性空母艦長が出撃」→https://holylandtokyo.com/2022/01/07/2587/
「技術開発担当国防次官に」→https://holylandtokyo.com/2022/01/26/2649/
「初の女性月面着陸目指す」→https://holylandtokyo.com/2021/07/05/1935/
「黒人女性が初の海軍戦闘操縦コース卒業」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-12
「初の米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-20
「GAO指摘:女性の活用不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-20
「初の歩兵師団長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-10
「超優秀なはずの女性少将がクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「3軍長官が士官学校性暴力を討議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「上院議員が空軍時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空自初:女性戦闘機操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19
「米国防省:全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「ある女性特殊部隊員の死」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11

 女性徴兵制度がある国
「前線にも:イスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27
「究極の平等目指し:ノルウェー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「社会福祉業務選択肢もオーストリア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22

/////// 以下は2023年6月14日掲載の記事です //////

現在の太平洋海軍司令官が海軍人トップへ
直前まで女性大将推薦で動いていたはずが
「最悪の人事情報管理」と関係者吐露

Paparo.jpg6月12日NBC News等米メディアが、2019年8月から米海軍トップのCNO(chief of naval operations)を勤め、今年8月21日退役が決定していMike Gilday海軍大将の後任に、オースチン国防長官が大統領に、現在の太平洋海軍司令官であるSamuel Paparo海軍大将を推薦したと報じました。

Franchett2.jpg先週から12日昼の段階では、現在の副CNOである女性Lisa Franchetti大将が初めて女性として4軍のトップになると様々なソースが報じ、実際米海軍や国防省内でもその方向でスタッフが動いていた事実が確認されていたようですが、海軍現役やOB幹部から「最悪の人事情報管理」だ・・・との声が上がるほど「情報だだ漏れ」状態だったようです

米海軍報道官や国防省は「それは大統領が決定する事項だ」とノーコメントを貫いているようで、厳密に言えば、国防長官の推薦を受け、最終的にバイデン大統領が米議会への推薦者を判断することになりますが、12日付Defense-Newsによれば、匿名の2名の関係海軍高官がPaparo海軍大将推薦を認めたようです

Paparo3.jpg太平洋海軍司令官ポストは、対中国作戦を海上・水中作戦を立案&実行する重要ポストですが、これまでは同ポストから一段上の太平洋軍司令官に就任するケースが多く、実際現在のインドアジア太平洋軍司令官(対中国作戦の大統領直属の指揮官)であるJohn Aquilino大将も、太平洋海軍司令官から就任しています

女性Franchetti大将も Paparo大将もともに1964年生まれで、共に空母戦闘群司令官やナンバー艦隊司令官(前者が第6艦隊、後者が第5艦隊)を勤め、前者が欧州アフリカ艦隊司令官、後者が中央軍&太平洋軍海軍司令官を務めた経歴を持ちますが、統合職では前者がJ-5経験者ですが、後者は主要な統合ポスト経験がありません。

Paparo2.jpgアジア太平洋に関しては、前者は在韓米海軍司令官経験のみで、後者は現在の太平洋海軍司令官で分があります。女性Franchetti大将も Paparo大将も、アナポリスの海軍士官学校出身「ではない」点では同じです

なぜ、直前に外野から見て「どんでん返し」になったのかは邪推しかありませんが、「最悪の人事情報管理」による女性トップ誕生との噂流布が国防省レベル以上で嫌われたか、中央軍&太平洋軍海軍司令官の経験がより重視されたのか・・・・もしれません

Franchett.jpgただ米海軍トップ人事のごたごたは現CNO就任時の4年前にもあり、米議会の承認も得て2019年8月1日にCNO就任が決定していた人物が、最終段階の「身辺調査」で不適切な過去が判明し、7月7日に辞任退役に追い込まれる事態が発生(下の過去記事参照)、

グダグダの装備品開発(空母、LCS等々)、艦艇の衝突事故や火災事故、ワイロ事件等々で「何をやってもダメな米海軍」と揶揄される中、米海軍人事全体が大混乱に陥り、本来なら別の大将の中から米海軍トップを選出するはずが候補者が見当たらず、中将の中から選出する「異例中の異例」な経緯をたどった記憶も生々しいところです

海軍トップは大統領の正式推薦まで予断を許さない雰囲気ですが、いずれにしても、統合参謀本部議長も含め、陸海空海兵隊のトップが全て同時に交代する夏の人事となりました。

Samuel Paparo海軍大将の公式経歴
祖父・父も米海軍勤務の筋金入りです
→ https://www.cpf.navy.mil/Leaders/Article/2628260/admiral-samuel-j-paparo/ 

4年前の米海軍トップ交代の大混乱
大本命が最終段階で過去の不始末でクビに
「異例:大将に適任者なく中将から」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-19
「Moran大将突然の辞任」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-09

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空飛ぶレーダーE-7の今後の能力向上開発を米英豪共同で [米空軍]

ロンドンに3空軍トップが集まり合意署名式
米空軍への2027年初号機納入の前倒し策か
豪6機運用中で、英3機と米26機が導入予定のE-7
日本のE-767の今後の維持整備懸念がさらに加速

E-7 statement.jpg7月17日、英国西部のFairford英空軍基地で開催中の航空ショー「Royal International Air Tattoo」の会場で、米・英・豪の3か国空軍トップが一堂に会し、E-7早期警戒管制機の「今後の能力向上開発、試験評価、相互運用性向上、維持整備協力、教育訓練及び安全情報の共有」を3国が緊密に協力して行う旨を文書化した「Joint Vision Statement」に署名しました

E-7 statement3.jpgE-7早期警戒管制機については、豪空軍が既に6機を導入済運用中で、英空軍は2024年運用開始予定で3機発注済、米空軍は今年2月末にボーイング社と2027年に初号機を受領し、計26機を導入する契約を結んだところですが、前述の内容に3か国が協力して取り組むことで、米空軍の導入を少しでも前倒しさせ、3か国全体で同機の能力向上を円滑かつ少しでも安価に進める事を狙った取り組みと見られています

「Joint Vision Statement」の詳細は明らかにされていませんが、今年2月にはKendall米空軍長官が英国訪問時に英国防大臣と本件を協議し、最近ではBrown米空軍参謀総長が豪州に米空軍関係者を派遣し、豪が運用中のE-7で訓練に参加させたりの実質的協力が始まっており、空軍省幹部も米英間でE-7試験飛行データの共有を開始していると語り、ボーイング幹部も米国への機体提供を早める可能性に言及し始めていたところでした

E-7 statement2.jpgそれにしても、軍種レベルで特定の既存機種の能力向上に共同体制を構築する事例は珍しく、米軍事メディアは「画期的」とか「ground-breaking declaration」との表現で17日の英国での合意署名を報じています

この3か国は、2022年にAUKUSを結成して豪州への攻撃型原子力潜水艦提供を確約し、極超音速兵器や最先端技術開発での協力にも同枠組み拡大発表して「蜜月関係」を内外に示していますが、この「E-7」案件がAUKUS案件扱になるかは不明です。

E-7 statement4.jpgもしかしたら、日常業務ベースで当たり前に行われてきた情報共有を、わざわざ「Joint Vision Statement」にして署名式でアピールしただけかもしれませんが、仮にそうであったとしても、「不動産バブル崩壊」を契機に、経済面での負のスパイラルが加速している中国の「傷に塩を刷り込む」効果抜群の合意署名式典だと思います

E-767.jpgただし、E-7導入加速とE-3退役の前倒し可能性に関連して気になるのが、航空自衛隊が運用する早期警戒管制機E-767(E-3と同種のレーダーを搭載)の今後の維持整備問題です。 E-3が早期退役することで、E-767の部品入手がますます困難になったり、ボーイングに部品価格を吊り上げられて「ぼったくられる」可能性を危惧しています。

E-7関連の記事
「E-7とE-3違いを概観」→https://holylandtokyo.com/2023/03/30/4447/
「初号機を2027年納入契約」→https://holylandtokyo.com/2023/03/06/4358/
「導入を正式発表」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
「E-3は2023年から退役へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/01/3074/
「後継機検討のRFI」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711/

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米軍がペルシャ湾やシリア緊迫にF-35派遣 [Joint・統合参謀本部]

シリアでのロシア軍機による威嚇や米軍上空飛行
ペルシャ湾でのイランによる民間タンカー拿捕未遂受け

USS McFaul.jpg7月17日、米中央軍は同軍担当エリアに、F-35戦闘機と追加のF-16戦闘機、更には追加のミサイル駆逐艦を派遣すると発表しました。今年の春以降にシリア上空で駐留米軍や米軍偵察機に対するロシア軍の威嚇飛行が活発化していることや、最近のペルシャ湾やホルムズ海峡でのイラン勢力による商用タンカーへの発砲などの事案を受けての戦力増強です

ペルシャ湾やホルムズ海峡周辺では、7月初めにイラン勢力が2隻の商用タンカーを拿捕しようと試み、内1隻のタンカーにはイラン勢力が発砲する事案が発生し、米海軍ミサイル駆逐艦USS McFaulが急行してタンカーを解放した事案が発生したばかりです

F-35 CENTCOM.jpgこのようなイランの行為に対しては、A-10攻撃機がまず海洋抑止任務に派遣され、次いでF-16戦闘機や米海軍P-8哨戒機派遣で戦力強化が図られ、追加でミサイル駆逐艦USS Thomas Hudnerも決定された模様です。

現在約900名の米軍兵士が展開しているシリアでは、7月に入り、無人偵察攻撃機MQ-9がロシア軍戦闘機にシリア西部上空で威嚇飛行されたり、シリア東部では米軍展開エリア上空を定期的にロシア戦闘機が飛行し、米軍有人機の500フィート以内にロシア戦闘機が接近するなど、ロシア軍による脅威が増しています

F-35 CENTCOM2.jpgこれらシリアでのロシア軍機の活発化を受け、6月に米軍はF-22を中東域に派遣していましたが、その帰国とタイミングに合わせるような形で、オースチン国防長官とMichael Kurilla中央軍司令官が協議してF-35派遣を決定したとのことです 

過去に遡ると、2019年に米軍無人偵察機RQ-4がイラク軍機に撃墜された事案もありましたが、シリアと対イラン正面のペルシャ湾方面の両方に目を光らせる意味を含んだF-35派遣だと国防省高官は記者団に背景を説明した模様です
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USS McFaul2.jpgしばらく中東の話題には触れていませんでしたが、ウクライナや対中国の話題に世界の目が向いている隙をつくように、世界では様々な勢力がうごめいています

ウクライナを巡る世界経済への悪影響、中国経済の「不動産バブル崩壊」による今後20年間は継続するであろう不良債権問題、これらを受けた欧米経済の加速的減速を受け、台湾正面だけでなく、世界各地に不穏な動きが拡大することを強く懸念しています

中東における動き
「サウジとイランが中国仲介で国交」→https://holylandtokyo.com/2023/04/21/4550/
「秋までに100隻規模の無人艇部隊を」→https://holylandtokyo.com/2023/01/06/4118/
「60か国がAI活用海洋演習実施中」→https://holylandtokyo.com/2022/02/14/2685/
「B-52が9か国戦闘機と編隊飛行」→https://holylandtokyo.com/2022/04/06/3105/

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Eメール「.MIL」と「.ML」の誤送信で米軍情報流出 [サイバーと宇宙]

「.MIL」のつもりが「.ML」へメール送信
「.ML」はロシアと近いアフリカのマリ共和国のドメイン名
秘密情報の送信記録はないと報道も数百万通のメール

mali5.jpg7月17日付Defense-News記事は、米国防省や米軍勤務者が誤ってメール送信先アドレスに、「.MIL」のつもりで「.ML」と誤タイプ入力したために、秘密指定の内容は含まれていないと報道されているようですが、外交文書、納税申告書、パスワード、幹部の渡航詳細等の情報が誤発信されていたと報じています。(最初に報じたのはフィナンシャル・タイムズ紙FT紙の模様)

FT紙によれば、誤タイプの性格から、誤送信は相当以前からあったと想像され、誤送信メール総数は数百万通とも報じられていますが、「.ML」ドメインを管理するオランダ人起業家のJohannes Zuurbier氏がこの誤送信メールの存在に最初に気付いたらしく、同氏は同紙に対し「このリスクは現実のものであり、米国の敵対者によって悪用される可能性がある」と語っているようです

mali.jpgまた同氏は本件を受け、「.ML」ドメインの管理権をマリ政府に移譲するとしており、最近ロシアとの接近が話題になっているマリから、ロシアに関連情報が流出する可能性が指摘されているようです

米国防省報道官は、事態を深刻に受け止めて対応しているとし、米国防省のメールアドレスから「.ML」ドメインアドレスに送信されたメールは、誤送信とシステムが認識して「返送:Bounce」される仕組みになっていると説明していますが、個人アドレスを使用して「.ML」アドレスに送信した場合は対応できないと認めています。

mali2.jpgもちろん国防省や米軍は、個人アドレスでの業務内容を含むメール送信を許可していませんが、「.MIL」のつもりで「.ML」に誤送信したメールには、X線写真と医療データ、身分証明書情報、船舶の乗組員リスト、基地の職員リスト、施設の地図、基地の写真、海軍査察報告書、契約書、いじめに関する内部調査、公式旅行日程などが含まれていた模様です

特にFT紙は、今年5月のマコンビル陸軍参謀総長とその代表団のインドネシア訪問旅行計画が含まれていたことを例に挙げ、高官の移動日程は通常公開されるべきものではないはずだと指摘しているようです

mali3.jpgこの他にも、オランダのドメインを示す「.NL」と「.ML」を間違え、オランダ国防省やオランダ軍宛てを意図していたメールがマリのドメインに配信されたこともあったようですが、Defense-Newsからの問い合わせに対し、在米オランダ大使館から返答はない模様です。
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個人のアドレスで業務上の内容を含む情報をメール送信した「誤り」が根本にありますが、「.MIL」のつもりで「.ML」へ誤送信する可能性は誰にでもありそうなことで、「他山の石」としたいと思います。

mali4.jpg誤送信されたメールは、誰かが閲覧できるような状態にあるのでしょうか? デジタルデータのことですから、エラーメッセージが出たメールでも、どこかのサーバーに残されているんでしょうねぇ・・・

それにしても、どこの国にもありそうな案件ですねぇ・・・。日本の「.jp」に似たドメインには、「.je 英国のジャージー代官管轄区」、「.jm ジャマイカ」「.jo ヨルダン」「.kp 北朝鮮」「.np ネパール」なんかが挙げられます。
関係者の皆様は、連休明け早々から「暑い夏」をお過ごしのことでしょう・・・

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F-35需要増に生産が間に合わない??? [亡国のF-35]

米軍が今の総調達数を維持すれば・・・の話ですが
ただし、米軍は空軍を筆頭に調達減少気味の怪
年間156機でも企業側は精いっぱいの模様

F-35 Greece4.jpg7月3日付米空軍協会web記事が、8月にも通算1000機目のF-35が製造されるタイミングや、2日にイスラエルが追加で25機のF-35A導入を発表した等を受け、編集長自らが筆を執って「世界中でF-35需要が高まっており、このままでは製造企業側の生産能力が追い付かない」との根拠の極めてあいまいな記事を書いています

確かに、最近は欧州を中心にF-35導入を決定する国が増え、Finland, Switzerland, Germany, Czechからの発注が159機となって、当面の年間生産数目標156機(2025年までにこの規模を目指すとのロッキード計画)を超えたとF-35命派が騒いでいるところです

F-35 Romania.jpgその他にも欧州では、Belgium, Denmark, Italy, Norway, U.Kが先行して購入決定又は運用を開始しており、更に経済混乱でアテネの荒廃ぶりが話題のギリシャまでが20機程度の導入を検討していると言われています。北米ではカナダが共同開発国ながら極めて慎重に88機導入に動き始め、アジアでは「赤信号、みんなで渡れば怖くない」方式で日本、韓国、シンガポールが導入数を増やす方向にあります

記事でJohn A. Tirpak編集長は、諸外国の具体的な機体受領年度はほとんど公開されていないが、コロナでサプライチェーンの乱れが残る中、2025年までの目標年間156機生産(2022年は145機、23年と24年は126機)体制確保も容易ではなく、それ以上の製造ペース拡大は胴体など主要構成部品、主要な製造工具類、そして製造ラインに必要な従業員確保の全ての面で容易ではないとの米空軍Hunter計画部長の4月の議会証言を紹介しつつ、国を挙げて対応すべき課題だとのニュアンスで記事を書いています

F-35 Finland3.jpgただここで注意する必要があるのが米軍、特にF-35最大の購入予定機数1763機(既に約350機導入済)の米空軍の動向です。米空軍は当初計画では年間110機ペースで導入する予定でしたが、実際は80機から始まり、60機に低下し、最近は2028年まで48機にまでペースを落とす計画を明らかにしています

米海軍や海兵隊も同様のペースダウンを予定しており、その理由として、本音の「維持費高止まりでなるべき機数を増やしたくない。調達機数削減を発表するまでは最低の調達ペースで」は包み隠して、F-35の「Block 4 upgrade」や関連する「Technology Refresh 3 upgrade」が試験等を経て成熟してからの完成版F-35を手戻りなく受領したいと説明しているようです

F-35 Thai.jpgちなみに、8月に通算1000機目となるF-35がテキサスの工場で製造されるようですが、とりあえずはロッキード社が保管し、上記「Technology Refresh 3 upgrade」が試験等を経て成熟してから、年末か2024年初に空軍に引き渡されるようです

米軍需産業応援団のような米空軍協会や付属のミッチェル研究所などは、戦闘機パイロットOBを巻き込んで、F-35本格フル生産の年間220機体制を支える生産ライン増強を最近メディアで訴えていますが裏では空軍幹部が議会で証言しているように、サプライチェーンの限界を主張して増産を抑え、海外への売込みは懸命に進めて米軍調達機数削減決定のタイミングを模索している・・・と認識しておくべきでしょう

F-35 Germany.jpg米軍の調達削減が公になった段階では西側主要国はF-35導入契約を完了しており、もう後へは引けません。そして米空軍等の総生産指数削減決定を引き金に、更に高騰する既にバカ高い維持整備費にF-35導入国の国防費はますます圧迫され、「亡国のF-35」の現実を痛いほど感じることになるのでしょう・・・

F-35調達機数削減の動き
「F-35削減派が空軍2トップか」→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/
「米海軍が調達ペース抑制」→https://holylandtokyo.com/2022/07/07/3420/
「米海兵隊も削減示唆」→https://holylandtokyo.com/2022/01/17/2586/
「米空軍2025年に調達上限設定を」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「英国は調達機数半減か」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/

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米国がまもなく化学兵器全廃完了 [安全保障全般]

サリン等の化学物質は無効化完了
残るはロケット弾頭など9月末期限まで
化学兵器禁止条約未締結国3つと
締結国でも保有&使用疑念のロシアやシリア

M55 rocket4.jpg7月7日付Defense-Newsが、1997年に発効した化学兵器禁止条約に基づき米国が取り組んできた保有化学兵器の破棄措置期限が9月末に迫る中、6月22日にロケット弾頭に充填されていたサリンなどの化学剤3万トンの無効化が完了し、残るは化学兵器運搬手段で化学剤が充填されていたM55ロケット弾等の処分のみになったと紹介しています

化学兵器は1925年(発行28年)のジュネーブ議定書で「使用禁止」とされましたが、その開発、生産および貯蔵までは禁止されておらず、1993年1月にパリで署名され1997年4月29日に発行した「化学兵器禁止条約」(現在まで193か国署名批准、エジプト、NK、南スーダンのみ未締結)で、保有まで禁止されたものです

M55 rocket2.jpg1997年から約10年で既保有化学兵器の破棄が求められましたが10年では完了せず、2011年時点で米露リビアの3か国の破棄未完了が確認され、条約締結国から早期破棄完了が求められました。これを受けロシアが2017年9月、リビアが同年11月に破棄完了を報告しました

ピーク時には3万トンが80万発の弾頭に分かれて保管されていた米軍化学兵器は、破棄場所や手法等をめぐって主要貯蔵施設のあったケンタッキー州やコロラド州の理解がなかなか得られず、太平洋上のジョンストン環礁やユタ州の砂漠施設での化学剤破棄作業から順次開始され、2015-16年からやっとケンタッキー州やコロラド州での破棄作業も追随、2023年6月22日に化学剤破棄処理が完了したもようです

M55 rocket5.jpg現在は、代表的な化学兵器運搬手段であったM55ロケット弾約5万発の破棄作業が9月末の期限に向けて行われており、一部の副生成物は微生物とともに処分されたり、金属部分は540度C以上の温度で無害化されたのち、スクラップ金属として再利用される計画となっているようです

第1次世界大戦で少なくとも10万人が犠牲となったといわれる化学兵器ですが、米国の破棄完了をもって地球上から化学兵器が消滅したと信じている専門家はおらず、米国防省のKingston Reif担当次官補は、未申告の化学兵器保有や使用が疑われているロシアとシリアに対して特に懸念を抱いていると語っています
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M55 rocket3.jpg一応は、検証制度の実効性や加盟国数などから、「モデル軍縮条約」とも言われる化学兵器禁止条約ですが、未申告の化学兵器保有や使用が疑われているロシアとシリアなどなど、懸念は尽きることがありません

地下鉄サリン事件を経験した日本の教訓が示すように、カルトやテロリストが比較的容易に入手可能なこの兵器について、改めて考える機会となれば・・・と考えご紹介しました

AI技術で新たな兵器の恐れ
「AI作成の生物兵器に危機感」→https://holylandtokyo.com/2022/10/04/3671/

化学兵器禁止条約の解説(外務省)
中露も締結国ですが・・・
エジプト、NK、南スーダンが未締結、イスラエル未批准
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bwc/cwc/gaiyo.html 

最近の化学兵器使用と最近の取り組み(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol162/index.html 

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米空軍史上最大の空輸演習が初めて西太平洋で [米空軍]

「Mobility Guardian」演習が初めて海外で
Five Eyes(米英加豪NZ)と仏と日本が参加
ハワイ・グアム・豪州・日本の基地に展開訓練

Mobility Guardian.jpg7月5日、米空軍輸送コマンドが今回で4回目となる隔年開催の空輸&空中給油演習「Mobility Guardian 2023」を初めて海外(西太平洋地域)で開始し、参加同盟国(Five Eyes(米英加豪NZ)と仏と日本)空軍と共に、過去最大規模だった2019年の約3倍の規模で、対中国のためのACE構想(Agile Combat Employment)や多能力兵士養成(Multi-Capable Airmen)を支える実験的な訓練を7月21日までの予定で実施しています

Mobility Guardian2.jpg米空軍輸送コマンドからの参加は兵士約3000名と輸送機・空中給油機あわせて70機と公表されていますが、実際には関連航空機が展開するハワイ・グアム・豪州・日本の基地等々で、同盟国兵士等も含め15000名が関連する史上最大の米空軍空輸給油演習となっているようです

3日付空軍輸送コマンドの演習紹介記事も、6日付Defense-News記事も、具体的な演習の設定や予定や同盟国軍の参加規模等について触れていませんが、輸送コマンド記事は空輸や空中給油のほかに「患者空輸」「グローバル空輸支援システムGAMSS」「指揮統制」「人道支援・被害復旧」を主要な演習項目として挙げ

Mobility Guardian4.jpgDefense-News記事は参加兵士の声として、「空軍輸送部隊の新しい展開モデル「AFFORGEN」を実際に試すことに興味を持っている。発電機を抱えて展開し、通信を確立してテントを設営し・・・と言った環境に応じた対処を迫られるが、将来の戦いを考えればこんな訓練機会がもっと必要だ」とのC-17搭乗員の言葉を取り上げ、演習の雰囲気を伝えています

Mobility Guardian3.jpgまた空軍輸送コマンドのMike Minihan司令官は、「Mobility Air Force(MAF)」との言葉を用い、対中国作戦でのACE構想実現に必要な空輸&空中給油所要に対応可能なレベルに空輸能力を高めるため、同盟国アセットを巻き込んだ関連体制強化を図りたい、と本演習に向け抱負を述べています

過去3回の「Mobility Guardian」演習がどのようなものだったか把握していませんが、今回の演習計画担当の中佐は「歴史的にこれまで輸送コマンドは、中東地域での輸送任務に焦点を当ててきた」、「西太平洋地域は全く異なる環境であり、演習の焦点も全く異なる。TTP(戦術・技術・手順)全てでシフトを求められている」と語っており、

Mobility Guardian5.jpg対中国念頭の本演習は初めてなのかもしれません。(前回2021年演習はコロナの渦中で、今年の1/7規模だったようですので、対中国を具体的にイメージできるレベルの設定が困難だったのかも・・・)

今後「Mobility Guardian 2023」で検索いただくと、様々な画像や映像が公開されていくと思いますので、ご興味のある方はご自身でご確認ください。

Mike Minihan司令官関連の記事
「2025年に中国と戦う」→https://holylandtokyo.com/2023/01/31/4241/
「KC-46A空中給油機が36時間連続飛行」→https://holylandtokyo.com/2022/12/12/3974/
「KC-46を操縦者1人で試行運用」→https://holylandtokyo.com/2022/11/02/3881/
「不具合抱えたままKC-46運用開始宣言」→https://holylandtokyo.com/2022/09/21/3688/

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「欧州空の盾」計画に中立国スイス&スウェーデン参加 [安全保障全般]

独が中心となり17国体制で防空システム共同購入
既存NATOシステムとの融合でロシア脅威に備え

ESSI3.jpgドイツが中心となって2022年10月に創設され、ロシアの脅威に対抗する防空&ミサイル防衛システムの共同迅速購入などを目的とし、当初14ヵ国で始まった「欧州空の盾取り組み」(ESSI:European Sky Shield Initiative)に、今年2月のデンマークとスウェーデン追加参加に加え、7月7日に中立国として2番目でスイスが参加署名する予定だと明らかにされました

ESSI.jpg当初の14ヵ国は全てNATO加盟国で、Belgium, Bulgaria, Czechia, Estonia, Germany, Hungary, Latvia, Lithuania, the Netherlands, Norway, Slovakia, Slovenia, Romania, the United Kingdomの14ヵ国でしたが、2月にDenmark and Swedenが加わって16か国となり、7月7日にスイスがドイツで開催されるESSI覚書署名式で17番目に正式加盟するとのことです

具体的にESSIでは、既存のNATO防空システムを強化する方向で、防空&ミサイル防空システムを加盟国が相互運用性を備えた形での導入方針で、市場にある装備品を有効に迅速に開発導入することを目指しており、調達においてはNATOの「Modular Ground-Based Air Defence High Visibility Project」枠組みを活用するそうです

ESSI4.jpgただし、具体的装備としてイスラエル製の「Arrow 3」や米国製の「パトリオット」と言った欧州製でない装備名が上がっていることにフランスが強く反対し、加盟を拒んでいる現状もあるようです。

日本の「左巻き」の皆様が良く事例として取り上げられる「欧州の中立国」ですが、脅威の変化に即し、時代の変化に応じて、柔軟に仲間を作って国益を追求する姿勢を是非学んでいただきたいと思います。
またフランスはフランスだなぁ・・・と改めて感じるESSIでした

ウクライナで学ぶ防空の重要性
「ウクライナで露が制空権で優位に!?」→https://holylandtokyo.com/2023/06/28/4795/
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「イラン製無人機が猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→ https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/

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