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NGADの再検討は年内に終わるだろう [米空軍]

2025年2月の次年度予算案提出に間に合わせたい

Allvin NGAD.jpg10月25日、Allvin空軍参謀総長が軍事記者団体の会合で、1機350~450億円とのあまりにも高額な推定コストが契機となり、8月にKendall空軍長官が「計画の一時停止&再検討」を発表した次期制空機NGADに関し、12月までには専門家検討会等を経て方向性を決定し、2025年2月の次年度予算案提出に織り込みたいと語りました

28日付米空軍協会web記事はAllvin発言を
●現在は、元空軍参謀総長3名、元統合参謀本部副議長1名、および有力な民間専門家2名を含む委員会が多角的に検討しており、今年12月には今後の対応策を勧告する予定で、2025年2月に予定の国防省の大統領予算提出にも影響を与えたい
Allvin Reporters2.jpg●計画の一時停止&再検討は、ゆっくり進むことや足踏みすることではない。ただ、決定して一方通行の扉をくぐり抜けると方向転換は難しいので、一時停止&再検討は賢明なことだ

●NGADは非常に高価だが、非常に有能な有人プラットフォームだ。我々がNGADを一時停止&再検討しているからといって、それを放棄したとの先入観を持つのは好ましくない。決定はまだなされていない
●(ただし、中国の軍事力増強と南シナ海での接近阻止・領域拒否戦略を受け、)有人NGADが今の脅威化下で機能するかどうか、設計時よりも確信が持てなくなっている。また、非常に高価な計画になることも判明しており、費用、能力、脅威を再検証して、それが正しい選択なのか見極めが必要となっている

Allvin14.jpg●我々は「想定する脅威に対するコストに見合った最善策なのか?」、「制空権を獲得する最善策なのか?」を再確認する必要がある。そして、仮に現在提案されているNGAD設計が最善策だと判明した場合、我々はその費用をどう捻出するかを考える必要がある

●NGADをF-22の後継機だと呼ぶ人もいるが、あくまでNGADは空軍が目指す戦力を構成するfamily of systemsの一員をなす有人の侵入型プラットフォームだ。またこのFamilyには、NGAD開発が開始された後に本格検討を開始し、具体的開発が始まっている無人の侵入型プラットフォームCCA(Collaborative Combat Aircraft)も含まれている。
●(現在100機導入予定のB-21機数を増やす可能性があるか?・・・との質問に対し、)我々はその可能性を否定していない

以上のAllvin大将発言を踏まえて同記事はコメントし
Allvin NGAD3.jpeg●無人ウイングマン機CCAが、Kendall空軍長官に「NGAD計画の一時停止&再検討」を決断させることになった。F-35や次期爆撃機B-21と緊密に連携するよう設計されたCCA は、侵攻型有人戦闘機の必要性を減らし、B-21爆撃機の追加導入をより魅力的なものにする可能性がある。

●CCAは生命維持装置を必要とせず、有人戦闘機の数分の1の価格で抑えられる可能性があるため、無人機と有人機の組み合わせのあるべき論が噴出している
●米空軍は、NGADが他のライバル戦闘機を機動性などなどで打ち負かす従来の戦闘機型プラットフォームだとは一度も言及していない。その任務は敵防空網を突破&制圧したり、小型で高速なステルス爆撃機に近いものになるかもしれない。
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Allvin NGAD2.jpgAllvin空軍参謀総長は「We intend to have that by December」と語ったようですが、クリスマス前までには検討を終えたいと・・と解釈しております

日本は既に「亡国のF-35」で身動きできない状態に近くなっていますが、NGAD再検討結果が「賢明なもの」になり、日英伊による次世代戦闘機(GCAP:Global Combat Air Program)開発を賢明な方向に導いてくれることを期待しております

次期制空機NGADの現在位置
「NGADは F-35より安価に」→https://holylandtokyo.com/2024/09/19/6351/
「再検討の方向性か」→https://holylandtokyo.com/2024/09/10/6315/
「数か月間保留する」→https://holylandtokyo.com/2024/08/06/6185/

NGAD再検討による波及的影響
「ステルス給油機も運命共同体?」→https://holylandtokyo.com/2024/10/16/6370/
「見直しならNG社が再挑戦?」→https://holylandtokyo.com/2024/10/08/6347/
「先端エンジン開発に危機感」→https://holylandtokyo.com/2024/10/18/6380/
「空対空ミサイルへの影響」→https://holylandtokyo.com/2024/10/23/6337/

日英伊の共同次世代戦闘機GCAP開発
「英が見直し検討???」→https://holylandtokyo.com/2024/09/24/6364/
「日英伊がやっと合意」→https://holylandtokyo.com/2023/12/18/5352/
「英伊が日恫喝:逃げるな!」→https://holylandtokyo.com/2023/02/14/4299/

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批判の嵐の中:輸送機からミサイル投下発射追求 [米空軍]

米特殊作戦軍と空軍特殊作戦車が2022年契約
小型巡航ミサイルBlack Arrowの次回試験を今秋に

Black Arrow.jpg10月3日付米空軍協会web記事は、米軍の特殊作戦軍がLeidos社と契約して進める、C-130 特殊作戦機の貨物室から投下&発射する小型巡航ミサイル「Black Arrow」の開発状況を取り上げ、2023年12月の試験成功を受け、今秋にもAC-130から投下&発射する試験を計画していると報じています

しかしながら、輸送機を活用した兵器投射には根強い反対論があります。

米空軍は中国との本格紛争を念頭に、大量の攻撃目標に対応するには、柔軟な発想で多様なオプション検討が不可欠だとし、2020年ころから本件に取り組んでいますが、 有力専門家多数の反対派は、圧倒的に不足する輸送力が対中国作戦の課題なのに、輸送機を攻撃に活用するのは本末転倒で、また、輸送機から投射する高価な誘導兵器に依存するようでは破産すると、口をそろえて強く非難してきたところです

そんな中での「Black Arrow」開発状況は・・・
Black Arrow2.jpeg●Leidos 社は、AC-130への迅速装備に成功した「GBU-69小型滑空弾」と、DARPAと実施したC-130 輸送機から無人機を射出&回収する「X-61 Gremlins program」の経験を基に、 2021年に Black Arrow 小型巡航ミサイルの設計を開始
●同社の状況を見た米特殊作戦軍と空軍特殊作戦車が、2022年にBlack Arrow共同研究開発契約を同社と締結。すべての軍種での将来使用可能を前提に、low-costで多様な任務対応可能で、将来の最新技術導入可能なものを念頭に本格開発着手
●2023年12月、同社は Black Arrowの模擬弾頭搭載ミサイル発射及び貨物室からの投下&分離試験に成功。この試験には米海軍開発&試験センターも協力。
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Black Arrow3.jpg米空軍は2021~22年に複数回、ロッキード社の協力を得た「Rapid Dragon 計画」で、射程約 1000 kmの空対地長射程ミサイルJASSM-ERを、米空軍MC-130特殊作戦機の後方から投下&発射するデモ試験に成功し、欧州での演習でも訓練発射した実績を残しています

Black Arrow小型巡航ミサイルとJASSM-ER の性能差までご紹介できなくて申し訳ありませんが、今年秋に予定される Black Arrow試験の様子を、軍事メディアや専門家がどのように評価するかに注目したいと思います

輸送機からの兵器投下検討
「欧州演習で初披露」→https://holylandtokyo.com/2022/11/15/3936/
「巡航ミサイル投下&攻撃試験」→https://halylandtokyo.com/2021/12/20/2550/
「Rapid Dragon を本格検証へ」→https://holylandtokyo.com/2020/11/06/380/
「Stand-inとoffのバランス不可欠」→https://holylandtokyo.com/2020/07101/562/
「空軍計画部長が語る」→https://holylandtokyo.com/2020/06/09/619/
「MC-130からパレタイズ兵器投下試験」→https://holylandtokyo.com/2020/06/09/619/

輸送能力や弾薬量の圧倒的不足
「民間海空輸送力活用のための取組」→https://holylandtokyo.com/2022/10/21/3780/
「弾菜不足:産業基盤育成から」→https://holylandtokyo.com/2022/10/19/3758/
「ウ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/

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嘉手納基地にローテーション配備戦闘機飛来 [米空軍]

現在配備と同じ 2機種が、別部隊から飛来
引き続きトータルの嘉手納配備機数や機種はぼんやり

F-22 Kadena2.jpg10月10日付米軍協会 web 記事は、10月4〜5日頃、嘉手納配属で退役目前のF-15CD 型戦闘機の代替ローテーション派遣機の交代機として、新たに F-22とF-16が到着した(引き続き機数は、現展開機も到着機も全て不明)と紹介しています

交代機が到着する以前も、4月から嘉手納に展開していたのはF-22とF-16でしたので、派造元部隊が異なる機体が嘉手納に到着したいうことですが、少なくとも F-22については、4月から派遣のバージニア州ラングリー基地所属機体も引き続き嘉手納に留まると記事は紹介しつつ、今次アラスカ州エルメンドルフ基地のF-22が到着したと紹介しています

F-16 Kadena3.jpgF-16に関しては、4月から州空軍SD州 114航空団とモンタナ州148航空団所属機が派造されていますが、今次到着したのはSC州ショー空軍基地の第 77遠征戦闘飛行隊所属機だと記事は紹介しています。ただ、4月からの派遣機と完全に入れ替わるのかどうかについては一切触れていません。

ローテーション派遣機の機数については、嘉手納に残っているF-15CID 機の機数と共に、継続的に一切公開されておらず、嘉手納配備戦闘機の戦力は引き続き「?」状態が続いています

【ご参考:嘉手納F-15C/D 撤退と代替機派遣の経緯】
●2022年11月45日にかけ、アラスカ配備の8機のF-22が手納に展開
●2022年 12月1日、第一弾として(恐らく)8機のF-15が米本土に帰還

●2023年1月17日、ドイツの米空軍基地から 16機のF-16が展開
●2023年3月28日、アラスカ Elelson 基地第 355戦闘飛行隊所属の F-35が展開(この時点で、各機種の機数は不明ながら F-22やF-16も手納に所在)

●2023年4月8日 F-22アラスカ~帰還、同10日F-16ドイツへ帰還
●2023年4月8日、米本土からF-15Eが嘉手納に展開

●2023年 10月3日、加州とルイジアナ州の州空軍F-15Cが展開
●2023年 11月20日、ユタ州HiI基地からF-35展開

●2024年4月11日、ハワイの2個飛行隊から F-22展開 (5月1日に VA州ラングレー基地のF-22追加配備と発表)
●2024年4月日時非公開、派遣非公開でF-16 展開 (5月1日に州空軍SD州114航空とモンタナ州148航空団から派造と公表)

●2024年 10月第1週末に、アラスカ州エルメンドルフ基地の F-22
●同じ 2024年10月第1週末に、SC州ショー空軍基地のF-16がそれぞれ嘉手納着

F-15C Kadena2.JPGなお、嘉手納に僅かに残っているF-15CIDの状況も不明です。 8月26日に4機のF-15C が沖縄を離れた際、同基地は「嘉手納基地に残っているF-15Cの最終飛行日時はまだ決まっていないが、残りの F-15Cは間もなく出発する」と説明していましたが、10月に入っても新たな発表はありません・・・
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2022年10月に米空軍が突然、老朽化により維持困難になった沖縄配備 40年のF-15C型戦闘機 40機を、「今後2年間で」段階的に米本土へ撤退&退役させると発表し、当面は「穴埋め戦闘機ローテーション派遣」で戦力の空白を防ぐ方針を発表し示し、上に紹介したローテーション配備が始まりました

F-15EX 3.jpgそして「今後検討する」としてきた後継機に関し、米国防省は2024年7月3日、「48機の嘉手納F-15Cを36機のF-15EXへ」、「36 機の三沢F-16を48機のF-35Aへ」、「岩国海兵隊 F-35Bの機数を調整(Modity)」すると発表し、移行時期については「over the next several years」でと瞬味に表現していました

その後8月26日付の米空軍協会 web 記事は、根拠不明確ながら「notional date for fully equipping Kadena」を2026年と記載し、その後の各種報道も 2026年にF-15EX部隊体制が整うような表現ぶりとなっています

以前にも触れましたが、米空軍関係者の推測本音については、以下の過去記事(「米空軍の本音邪推:」→https://halylandtokyo.com/2024/05/2215868/)をご覧ください

嘉手納にF-15EX 配備へ
「F-15EX部隊完成は 2026年」→https://holylandtokyo.com/2024/09/18/6281/

嘉手納基地 F-15C 撤退発表後の動き
「嘉手納にF-15EXを」→https://holylandtokyo.com/2024/07/05/6097/
「米空軍の本音邪推:」→https://holylandtokyo.com/2024/05/22/5868/
「F-35&F-15C→F-22&F-16」→https://halylandtokyo.com/2024/05/02/5803
「ユタ州から F-35派遣」→https://holylandtokyo.com/2021/03/22/166/

F-15EX関連の記事
「初号機は正規軍でなく州空軍へ」→https://holylandtokyo.com/2024/06/13/6009/
「試験配備直後に大規模演習参加」→https://holylandtokyo.com/2021/05/25/1710/
「初号機を米空軍受領」→https://holylandtokyo.com/2021/03/22/166/

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米空軍トップが更に推薦図書:空軍の失敗に学べ等 [米空軍]

第3回の空軍参謀総長推薦図書&PODCAST 等
各国空軍の失敗事例、意思疎通重要性、AI有効活用の勧め等

Allvin15.jpg10月10日付米空軍協会 web 記事が、AIvin空軍参謀総長が追加(第3回)で公表した「Leadership Library」(推薦図書&論文&PODCAST)4種類を取り上げ、概要を解説していますので取り上げます

Allvin 大将はKendall 空軍長官とタッグを組み、米空軍の大改革に取り組んでいますが、その大きな背景となっている中国脅威との対峙に向け、様々な角度から米空軍兵士の意識改革を求めており、推薦図書等で取り上げるテーマも様々ですが、過去記事で紹介した書籍等もご参考にご覧ください

"Why Air Forces Fail: The Anatomy of Defeat" edited by Robin Higham and Stephen J. Harris
Allvin book3.jpg●軍事史専門家による書籍。各国空軍(露、ポーランド、仏、英、伊、独、アルゼンチン、そして米空軍)の失敗分析
●Alivin 大将「兵站、インフラ、積極進取な指導力等々がいかに重要かを余すところなく示唆する書籍。今現在の決断が、明日の即応態勢を決定づけることを示している。戦略的な計画立案における必須事項が盛り込まれている」 ●ロシアがウクライナで苦戦している現状に触れつつ、ロシア軍における空軍の地上軍への隷属ドクトリンが影響している、との分析等を紹介

Allvin book31.jpg"Made to Stick: Why Some Ideas Survive and Others Die," by Chip Heath and Dan Heath
●NY Times 紙がベストセラーとして紹介した書籍
●AINin 大将「任務完遂は、関係者との明快な communication がれているかにかかっていることを訴えている」

"Conflict Occurs When Debate Fails," Open to Debate
Allvin book32.JPG●PODCASTで、WW2以降の紛争の変遷に関し、David H. Petraeus 退役陸軍大将と歴史家の Andrew Roberts 氏が議論を戦わせたもの。
●現代紛争を倫理面、戦略面、核抑止、サイバー威、誤情報拡散等々から討論しており、現代戦における紛争解決、リーダーシップの在り方、軍事意思決定に関する説明責任等を考察する好材料

Allvin book33.jpg"Embracing Gen Al at Work," by H. James Wilson and Paul R. Daugherty
●Harvard Business Review 誌に掲載された論文。
●Allvin 大将「新たに登場した人工知能 AIの力を、規範に沿い自をもって有効活用することで能力向上につなげてほしい。インテリジェントなAIへの問いかけ、人間側判断との適切な組み合わせ、AIとの対話訓練等により、それが可能になろう」
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以前にも申し上げましたが、従来の米空軍参謀総長は、就任時に就任するまでに読んだ書籍の中から、「Leadership Library」を一度に紹介するだけでしたが、AlIvin 大将は、就任後に、その激務の合間に自己研鑽のため触れた最新のアイテムを、2-3か月毎に3-4アイテムを継続して紹介していくスタイルです。

大変強い意志と努力が必要なことだと思いますし、そのこと自体が米空軍人に強く響くと思います。

Allvin 空軍参謀総長の推薦図書など
「追加:無人機、組織改革等」→https://holylandtokyo.com/2024/08/21/6143/
「米空軍の大改革に備え」→https.//holylandtokyo.com/2024/01/31/5473/

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C-130で飛行時間1万時間達成:41年で [ふと考えること]

退役中佐でEglin基地所属の65歳の操縦者
空軍士官学校卒で初飛行は1983年11月23日
RF4 偵察機かA-10攻撃機希望だったが・・
特殊作戦軍C-130 操縦者で、退役後も民間テスト操縦者
C-130の全ての派生型を操縦の「生き字引」

C-130 Hogg.JPG9月24日、米空軍Materiel Commandの第一分遣隊(FL 州エグリン基地)の標準化&評価コマンドの主任操縦者として、民間会社からテストパイロットとして派遣されているGary Hogg退役中佐が、MC-130Hの電子機器近代化試験飛行でC-130型機での飛行時間1万時間を達成しました。

65歳のHogg氏は、11歳のお孫さんの誘導で駐機場に到着し、駆けつけた家族や同僚から祝福を受け、「C-130 を飛行させるチームと共に働くことは、この上なく楽しいことです。このチームがスムーズに協力して飛行することが出来たとき、正に純粋な喜び感じます」とコメントしています。

C-130 Hogg2.JPGGary Hogg退役中佐は空軍士官学校卒業後、何となくRF-4偵察機かA-10攻撃機の操縦を希望していましたが、チームで飛行任務をこなすC-130の世界に魅せられ、最初の任地であった欧州の空軍特殊作戦部隊でC-130EとMC-130Eに搭乗し、特殊作戦や捜索救助ヘリに空中給油する任務に就きました

特殊作戦部隊での様々な体験については、今も語れないことが多いようですが、ハイチでの作戦に向かう 14機のMH-53へりに悪天候下で必死に空中給油を行い、自機も最終目的地への着陸に悪天候で2回失敗しつつ、最後のチャンスの3回目で何とか 100億円の機体を生還させることが出来たことなどを振り返り、米空軍協会機関紙の取材に語っています

C-130 Hogg4.jpgHogg 氏は、空軍特殊作戦軍の基準評価部門やロビンズ空軍基地等で飛行試験に従事し、米軍のC-130 派生型のほとんどを操縦した後、2004年に中佐としてエグリン基地に着任し、同基地で退役を迎えましたが、C-130のエキスパートとして民間企業に所属しつつ空軍に派遣される形でテストパイロットの仕事を続けています

退役から 20年経過した今でも C-130を操縦できることが無上の喜びだと語る Hogg 氏は、「私が考えもしなかったキャリアの節目ですが、私は本当に恵まれていました。このチャンスを得られたことにとても感謝しています」と振り返り、第一分遺隊司令官の大佐は「彼の40年の経験から学べる部隊の若手がうらやましい」とコメントしています
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C-130 Hogg3.jpg米空軍士官の「出世」との観点で見ると、空軍士官学校卒で、45歳前後の中佐で退役するのは「出世とは縁遠いキャリア」だったことになりますが、65歳になっても、米空軍の一員としてパイロットを続けているHogg氏の生き様は、間違いなく「誰もがうらやむキャリア」だと思います。

「出世」コースから外れても、地道に与えられた仕事に取り組んできたことが、「1万時間」に繋がったのだと思います。おめでとうございます!ますますのご活躍を!

C-130 関連の記事
「初飛行から 70周年を語る」→https://holylandtokyo.com/2024/09/12/6264/
「ハリケーン観測部隊の活躍」→https://holylandtokyo.com/2024/05/29/5898/
「ACから 105mm砲取外し検討」→https://holylandtokyo.com/2023/11/10/5219/
「MCで飛行中航空機のサイバー対処」→https://halylandtokyo.com/2021/12/23/2548/
「AC 用のレーザー兵器開発」→https://holylandtokyo.com/2021/10/21/2332/
「MCに海面着陸フロートを」→https://holylandtokyo.com/2021/10/13/2296/
「MCからミサイル投下発射」→https://holylandtokyo.com/2022/11/15/3936/

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NATO感激!ウクライナ開発の音響ドローン探知システム [安全保障全般]

1個数万円の音響センサーとスマホを組み合わせ
約1万セット配置でも安価にロシアドローンを探知し機銃迎撃
独やルーマニアで NATO諸国に披露され大反響

Sky Fortress.jpg9月18日、米空軍協会「All, Space & Cyber Conference」での北極圏活動をテーマにしたパネル討議で、欧州米空軍司令官とNATO空軍司令官を兼務するJames B. Hecker 米空軍大将が、北極圏におけるロシア軍活動活発化等を受け、地域の空地状況把握のため厳しい気象環境での中~高高度無人偵察機 MQ-9やRQ-4運用に挑戦していると語り、北米空軍アラスカコマンド司令官のほか、ノルウェーとスウェーデン空軍トップが、気候変動で北極圏の地政学的位置受けが大きく変化しつつある状況を説明し、北極圏での空地状況把握の重要性を訴えました

そんなパネル討議の中で、Hecker 大将が「中~高高度の監視や状況把握も重要だが、ウクライナや中東で大きな注目を集めている低高度域での監視&状況把握も強化が必要」と述べ、ウクライナ技術者が開発した安価で画期的な対ドローン音響センサーネットワーク「Sky Fortress」を紹介していますので、取り上げます

Hecker 大将はパネル討議で・・・
Hecker.jpg●ウクライナ軍の費用対効果の高いISR システム「Sky Fortress」は、音でドローンを検知するスマホ活用の音響センサーネットワークである。これらセンサーは位置情報等データをドローン迎撃機動部隊に中継し、最小限の訓練でドローン撃墜を可能にする
●独のRamstein 空軍基地やルーマニアの基地に同システムを持ち込み、数か国関係者が見守る中で検証し、うまく機能することが分かった。更にNATO 諸国の空軍トップを集め、技術原理を含めて「Sky Fortress」を説明したが、皆一様に興奮を隠せない様子だった
●センサー1個当たり数百ドルと手頃な価格で非常に効果的なシステムで、ロシアのドローンに対し有効性が既に証明されている

7月25日付の別報道が「Sky Fortress」を紹介し・・
Sky Fortress3.jpg●ウクライナの技術者2名が開発した「Sky Fortress」は、約2m弱のポールにつけられた「マイクとスマホ」で、飛来するドローンの音を検知するという、シンプルながら効果的な技術を使用
●ウクライナは 9,500個の「マイクとスマホ」からなる広範なネットワークを展開し、収集データを一元管理し、iPad 経由で迎撃機動部隊にドローン移動情報を提供して防空能力を大幅に強化した。このシステム使用で数時間程度の訓練とコストで、ドローンを対空砲火で効果的に無力化することが可能になった

Hecker2.jpg●前出の Hecker 大将は「Sky Fortress」の費用対効果の良さを強調し、センサー1台あたりの価格は400~500ドルで、ネットワーク全体の価格はパトリオットミサイル2発よりも安い。ウクライナは、イラン製無人機を含むロシアの膨大な低コスト攻撃無人機と戦っているため、この費用対効果は極めて重要と語っている
●また、「Sky Fortress」は電磁波使用のレーダーと異なり、「地形による電波の影」の影響を受けにくい点で、またドローンの通信周波数妨害機能を備えることで撃退効果を高めている

●ロシアのドローン 84機による大規模な攻撃の際、ウクライナ軍は 80機のドローン迎撃に成功し、「Sky Fortress」の大規模ドローン攻撃対処能力を証明した。「Sky Fortress」に他のNATO 諸国が強い関心を示している
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Sky Fortress2.jpgウクライナの人々の祖国防衛への強い思いが生んだ素晴らしいアイデアが、軍事の世界に革命をもたらしています。

久々に、背筋が伸びるような思いがするニュースをお伝え出来てうれしいです!

無人機対処の検討関連
「50kwレーザー兵器断念」→https://holylandtokyo.com/2024/05/16/5780/
「マイクロ波兵器本格検証へ」→https://holylandtokyo.com/2023/11/20/5211/
「安価で携帯可能な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/10/08/2280/
「副次的被害小な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「米国防省の対処戦略」→https://holylandtokyo.com/2021/01/12/295/

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空対空ミサイルAMRAAMの現在位置(日本生産も検討) [米空軍]

性能&価格から極秘JATMと「high/low mix」を企業が推奨
射程延伸、妨害対処力向上、地対空ミサイルとしても
NGAD不透明化で注目のF-22能力向上にも貢献可

AIM-120 AMRAAM4.jpg9月10日付米空軍協会web記事は、約30年間空中戦ミサイルの世界標準(42か国14機種で使用中)として空を制してきた空対空ミサイルAIM-120 AMRAAM製造レイセオン担当幹部が記者団に、AIM-120の後継的位置づけで超極秘開発&製造(?)が進むロッキード製AIM-260 JATM(Joint Advanced Tactical Missile)が存在するも、改良&進化を続けるAIM-120への需要は衰えることを知らず、様々な可能性を秘めていると語った内容を紹介しています

AIM-120(最新型射程約150㎞)より射程距離を延伸し、中国のPL-15空対空ミサイルとの空中戦でも対抗可能な能力獲得を目指すAIM-260 JATMは、射程200㎞越え、飛翔速度もAIM-120のマッハ4に対しマック5、電子妨害対処力強化等を目指すと言われていますが、その開発状況等は全く闇の中で、2022年に初期運用能力IOC獲得とか、ユタ州のHill空軍基地に極秘保管庫設置とか、260導入で120は2026年で製造中止とか、真偽不明の情報が多数流布している状態です

AIM-120 AMRAAM3.jpg2023年5月に「ウクライナ紛争で需要が大爆発AIM-120の現状」をご紹介した際は、初期のA型からB→C→D型と進化を度げ、D型でもD1→D2→D3と3ステップの改良性能向上を果たし、GPS利用航法やデータリンク能力向上、ネットワークや誘導装置能力向上をお伝えし、更に「D3」型の輸出版「C8」の審査完了も間近で、世界42か国(14機種)に搭載されるだろうとご紹介したところでした。そんなAMRAAMの現在位置を製造企業幹部は・・・

レイセオン社のJohn Norman担当副社長は
●継続的に改良が進む最新AMRAAMの射程距離は、米空軍がAIM-260 JATM開発に要求してきたレベルに近づいており、またJATMは電子妨害対処能力で優れた能力を保有しているが、米空軍との機密脅威データの共有を含む開発改良努力を経て、最新のAMRAAMはこれら全ての要素で驚異的なパフォーマンスを示している
AIM-120 AMRAAM.jpg●JATMは「ドアを蹴破る、非常に高価な兵器」となるが、AMRAAMは「手頃な価格の証明済み実戦兵器」で、この2つのミサイルは相互に補完的な役割を担えると考えている。最新のD3型AMRAAMには脅威に対抗できる能力がある

●最新のD3型AMRAAMの具体的特長は、第1に航続距離と飛行時間の延長で、以前と比較し約2 倍になっている。推進力は変えずに、長距離射撃の飛行方法を変えたことで実現した
●敵の電子妨害対処に関しては、処理速度が従来の4倍にもなった最新回路カードを搭載し、先進的なデジタル無線周波数変調(DRFM)妨害技術を導入した。

AIM-120 AMRAAM2.JPG●同じAMRAAMでこれだけ性能が進化すると、使用する作戦立案者やパイロットにその新たな能力をよく理解してもらうことが重要で、米空軍の「weapons school」「Air Warfare Center」「Test and Evaluation Squadron」のほか、米海軍の関連部署や世界42か国のユーザーも回って説明している

●AMRAAM はNASAMS (National Advanced Surface-to-Air Missile System) から発射することでSAMとしても利用可能で、多くの国がウクライナのNASAMS用に古いAMRAAMを寄贈し始めている。中には製造後30年経過したミサイルも含まれていたが、発射有効率95%の驚異的な信頼性を維持している

●これまで当社は年間450~650発AMRAAMを生産してきたが、これが昨年1,200発まで急増しており、米空軍・国防省・国務省と他国での生産可能性を協議中(日本が有力候補)。ただ新たな製造ライン立ち上げには、安定的な需要、それも年間2,000発程度が必要となる
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AIM-120 AMRAAM5.jpg推定価格が1機約450億円とのドン引きレベルで「再検討」状態となった次期制空機NGADは、「a family of systems」で必要能力を確保する方向で再精査再検討が進み、具体的には要求性能を「下げて」存続させる方向の模様ですが、そうなると「a family of systems」の重要ピースである空対空兵器にも注目が集まります

AIM-260 JATMが高価格で数を確保しずらいとなれば、比較的低価格で性能向上が著しいAIM-120 AMRAAMへの需要は衰えず、防空兵器SAMとしての需要と相まって、日本での生産ライン立ち上げも現実味がありそうな気がします。次期制空機NGADに再検討は、戦闘機命族の栄枯盛衰だけでなく、色々と周辺への波及が大きそうです。

AIM-120(AMRAAM)と後継AIM-260 JATM開発
「2026年製造中止のはずが大増産中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/17/4556/
「超極秘開発のAIM-260 JATM」→https://holylandtokyo.com/2022/04/04/3088/

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JASSM-ERの2倍の射程JASSM-XRを開発中 [Joint・統合参謀本部]

JASSM-ERは500nmも、JASSM-XRは推測1000mm射程
ロッキードが独自開発中で2026年に試験飛行か
背景には米空軍の「大幅射程延伸」要望が・・・

JASSM-XR5.jpg9月30日付米空軍協会 web 記事が、9月27日に米国防省が発表した長射程空対地ミサイル JASSM (空対艦LRASMも若干含む)購入の約5300億円大型契約を紹介するとともに、9月 16日の空軍協会「Air, Space & Cyber Conference」でロッキード社が独自開発を発表した、JASSM-ER (Extended Range)の射程を大幅アップする「JASSM-XR(Extreme Range)」を紹介していますので取り上げます

JASSM-XR4.jpg長射程空対地ミサイル JASSM や空対艦ミサイルLRASM は、兄弟関係にあるステルス形状の兄弟巡航ミサイルで、1000ポンドの弾頭を搭載して射程延長ER 型で約500mm(約900km)の射程を持つ兵器ですが、強固な防空網を持つ中国との戦いで最も需要が高いと想定されており、例えば現在年間約720発製造のJASSM は、年1,100発まで増産予定だとロッキー ドが明らかにしています

今回発表約5300億円契約の4800億円分はJASSM用で、6割が2032年までに製造する米空軍分、約3割がFMS用で日本、オランダ、フィンランド、ポーランド向けのJASSMだと公表されており、約540億円がLRASM用とのことですが、具体的なミサイル数と配分先(軍種や国)までは公表されていないようです。以上がJASSMとLRASM 大型契約についてです

JASSM-XR (Extreme Range)の独自開発発表について
JASSM-XR.jpg●9月16日にロッキード社のMichael Rothstein 副社長は、JASSM 本体を数フィート延伸して追加燃料を搭載可能にすることで、従来型より射程距離を大幅にアップ可能な「JASSM-XR」を独自開発中と発表したが、正確なミサイルの大きさや射程距離は語らなかった
●ただ同副社長は、射程はERに比し「大幅に拡大され、その増加は小さなものではない」と付け加えた。なお業界筋は、XRの追加燃料容量から推測してERの2倍の射程約1,000mmになる可能性があると述べている。

JASSM-XR2.jpg●同社広報担当者は、XR はJASSM-ERやLRASMと共通性があり、爆撃機、F-35、F-15、FIA-18に搭載できるが、F-16には搭載できないと説明している。同副社長はこの点に関し、XRは標準的JASSMに比し重量が増すため、戦闘機に搭載すると航空機の航続距離は短くなるが、ミサイル射程延伸で相殺されると説明している。
●また同副社長は、まだ政府の承認も資金提供もないが、米空軍が JASSMとLRASMに何を求めるかを予測し、要請があれば直ちに対応でるよう準備していると語り、別の関係者は、より長い射程距離は「当然の要請」で、空軍は漸進的な改善ではなく「ステップ的な変化」に関心があると述べた

●なおXR 開発状況について同副社長は、2026年に試験飛行が可能だが、量産準備が整うのはまだ「数年先」になると述べた
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JASSM-XR3.jpg射程1000nm(約1800km)とは、第一列島線を構成する沖縄など南西諸島と中国大陸との距離の約2倍を意味します。

遠方からの長距離攻撃は米空軍の任務で、地上部隊や米海軍は他の分野で頑張るべき・・・と空軍はかねてから主張していますが、一方で、それだけ遠方から兵器を発射するような戦いでないと、米軍兵士を派遣できないと、米国防省や米軍は考えているということです。単純に言えば・・・

JASSM 関連の記事
「LRASMとJASSM増産ライン開設」→https://holylandtokyo.com/2023/04/13/4498/

LRASM不足問題の関連
「CSIS が台湾有事War-Games」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/
「CSISも弾業調達問題レポート」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/4212/

米空軍にとって遠方攻撃は「存在意義」です
「米空軍が陸海海兵隊を批判」→https.//holylandtokyo.com/2020/05/25/680/
「誰の任務なのか?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02

遠方攻撃に傾く米軍地上部隊
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「射程 1000kmの砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1

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ついにフーシ派攻撃にB-2ステルス爆撃機まで [安全保障全般]

米海軍と米空軍の合同フーシ派攻撃作戦で
地下弾薬庫攻撃に大型貫通爆弾使用か?
兵器等の自力製造を推進する同派の基盤攻撃
2017年1月の2機でのリビア爆撃以来の実任務投入

houthi Austi.jpg10月17日、イランの支援を受け紅海やアデン湾等を航行する西側船舶やイスラエルへの攻撃を続けるフーシ派拠点を、米海軍と空軍戦力が攻撃し、この攻撃に初めてステルス大型爆撃機であるB-2が少なくとも2機投入されたと、会議のため訪問中のNATO本部でオースチン国防長官が明らかにしました。

houthi Austi3.jpgまた更に同国防長官は、「5か所の強化された地下兵器貯蔵施設を攻撃した」、「敵がどんなに深く地中に埋もれ、堅固に守られ、要塞化されていても、世界規模でその施設を攻撃できる米国の能力を示した」と述べ、米中央軍報道官は、「標的にはミサイル、兵器部品、および地域全体の軍艦や民間船舶を狙うために使用されるその他の弾薬等、様々な先進的な通常兵器が含まれていた」と説明しています

本件を報じる17日付米空軍協会web記事は、専門家らによる「イランのフーシ派への影響力は、他の支援先グループほど強くない」との分析や、米国安保当局者の「フーシ派は我々が以前考えていたよりも武器部品の多くを自前で生産可能で、イランへの部品依存度は低いが、イランは依然として高性能な部品等を供給している」との見方を紹介しつつ、今回のB-2による大型貫通爆弾使用の可能性の背景を説明しています

西側とフーシ派の戦い激化を過去記事から
houthi rebels7.jfif●フーシ派は、2023年10月2日にハマスがイスラエルへの奇襲攻撃を行って以来、イスラエルによるハマスへの軍事行動を阻止するためとの名目で、ミサイルやドローンで 90隻以上の西側船舶を攻撃し、船1隻を拿捕し、2隻を沈没させ、船員4人を殺害しているが、攻撃を受けた船の多くは紛争とは全く関係がなく、イラン行きの商船も含まれているのが実態

●Hudson研究員のBrian Clerk 氏は強い危機感を示しフーシ派との闘いを、「疑いの余地なく、米海軍がWW2以降で経験した最も長期にわたる激しい戦闘である」、「フーシ派は、イラン提供兵器を使用した実戦経験を積み重ねて能力を高めており、米軍が阻止できないレベルになる寸前だ。フーシ派は有能で、豊富な経験を能力向上につなげている」と分析
●現地に展開する米空母戦闘群を指揮する米海軍少将は、「イランは資金や物資援助だけでなく情報支援も行ってる可能性が非常に高い。少なくともフーシ派は海上輸送船や米軍艦攻撃訓練をイランから受けているのは事実だ」と言及

6月14日付Military.com記事
Houthi Rebels.jpg●(フーシ派への攻撃をなぜもっと強めないのか、との不満の声が米海軍乗組員の間で上がっていることを認めつつ、)国際情勢は単純ではなく、欧米海軍が周辺海域で防御態勢をとっている一方で、サウジはフーシ派との和平協定を模索し、ほぼ沈黙を守っている。報道では一部の中東諸国は米国に、自国領土からフーシ派攻撃を行わないよう要請しており、米空母の存在に依存している
●また、米国政府もフーシ派の行動をイスラエルVSハマス戦争と同レベルで議論しておらず、イランがイスラエルに大規模なドローンとミサイル攻撃を行っても、間接的にイランとの緊張を緩和しようと努めているように見える
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houthi rebels5.jfifイスラエルの北方、レバノンとイスラエルの紛争が激化していますが、イスラエルのはるか南方に位置するイエメン所在フーシ派との戦いも、「フーシ派は注目を集めることで、ある意味で利益を得ている」と米関係筋が分析するフーシ派の姿勢を背景として、「ロープロファイル」を望む世界の雰囲気を見透かすように、B-2ステルス大型爆撃機を投入するレベルに拡大しているということです。

中国の経済崩壊を受けた中国の不安定化が気になるところですが、予断は禁物ながら、中国は諸外国から経済支援や投資を呼び込むため、「明らかに対外的な強硬姿勢を緩めている」と考えてよいと思います。九州西方男女群島の領空侵犯など、国としての姿勢ではなく、前線部隊の士気低下に伴う「ケアレス操縦ミス」と見るのが自然だと思います

そんな中、中東情勢は心配です・・・

フーシ派関連の記事
「米輸送軍の教訓」→https://holylandtokyo.com/2024/10/17/6374/
「原油15万トン流出危機」→https://holylandtokyo.com/2024/09/05/6311/
「米海軍がフーシ派とWW2以来の激戦」→https://holylandtokyo.com/2024/07124/6044/
「イスVSイラン防研速攻解説」→https://hotylandtokyo.com/2024/04/25/5847/
「対処で防御迅速改善」→https://holylandtokyo.com/2024/04/15/5741/

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米国関係者:先端エンジン開発継続の必要性訴え [米空軍]

AETPはF-35搭載なく、NGAD計画も縮小方向で
無人機CCA搭載用は安価&低耐久性も多用途性が難題
またAI搭載で大電力&冷却性能も重要に

AETP engine.jpg9月25日付米空軍協会web記事が、「Air, Space and Cyber conference」でのエンジン開発パネル討議の模様を取り上げ、20年をかけ開発してきた次世代戦闘機エンジンAETP(Adaptive Engine Transition Program)がF-35に搭載されず、本来の開発目的である次世代制空機NGAD製造機数と搭載エンジン数が下方修正方向にあることで、最先端エンジンの研究開発人材やノウハウが失われつつある現状への危機感と、

AETP engine4.jpg米空軍が早期前線投入に向け注力する無人ウイングマン機CCA(Collaborative Combat Aircraft)搭載用エンジンに関し、多様な用途と任務に対応可能な性能とAI機器を支える大電力と冷却能力を求められる一方で、ほどほどの耐久性で良いから低コストでとの空軍要求に直面するだろう等々と、米空軍研究所の担当部長と2大エンジンメーカーGE AerospaceとPratt & Whitney社の担当副社長が語ったと紹介していますので取り上げます

次世代戦闘機エンジンAETP開発への懸念
AETP XA-101.jpg●AETP開発は、約20年をかけた航空機推進エンジン開発(GE Aerospace 社がXA100を、Pratt & Whitney社がXA101を開発)における「最後の大規模研究開発案件」だったが、F-35への改修搭載が却下され、元々の開発目的であった次期制空機NGADの要求性能や製造機数の下方修正検討が行われている現状に強い危機感を持っている
●米国は軍用エンジン分野で中国やロシアより先を行っているが、新しいエンジンが実際に配備され、実戦の経験を経た改良や研究が継続されなければ、米国の優位性はすぐに失われる危険性が本当にある。先進的なエンジン技術への資金提供を継続しなければ、業界は人材プールを維持できない。既にハイレベルの技術者需要は減少している

AETP XA-100.jpg●今の軍事用エンジン開発は、精巧さに劣る安価な小型エンジン、例えば極超音速用、ドローン用、ミサイル用のエンジン分野で多様な要求が高まっているが、それに応じた予算の増加がない中で要求が増えており、対応は限界に達している。そしてこの小型エンジン開発は、基礎技術を生み出す「ハイエンドで、最も精巧で、最も技術的に難しい」エンジン研究を犠牲にして行われている
●F-35への搭載は断念の一方で、AETPの次世代制空機NGADへの搭載に向けた準備を両社が行っているが、NGAD計画は現在縮小方向で再検討中で、空軍上層部は単発エンジン機で製造機数300未満を示唆している。仮にそうなればエンジン製造企業の2機体制維持は困難になり、健全な競争環境は失われる

無人ウイングマン機CCA搭載用エンジン関連
AETP6.jpg●空軍研究所担当部長 → 安価でありながら、戦闘機と行動を共にする信頼性と多用途対応力が求められるCCA用エンジン問題は解決していない。予算によるが、エンジン寿命は 1~5,000時間(有人戦闘機エンジンは8000時間程度)を想定し、維持整備要領や作戦運用方法を踏まえ、現有エンジンを改良等して対応することになろう

●P&W社副社長 → 空軍は提供の迅速さと低コストを重視すると予期しており、我が社の豊富な市販エンジンなら今日にでも提供可能。ただ空軍は人工知能を多用するだろうから、より多くの電力と冷却能力を求めると予期している。要請に応じて対応する。今はNorthrop Grumman社のCCA試験機Model 437にPratt 535 エンジンを提供して試験等を行っている
●GE社副社長 → CCA用エンジン提供に向け、夏に機敏で低コストなエンジン技術に優れる無人機製造企業Kratos Defense and Security 社と契約を結んだ。最大の短期的課題は、推進力確保だけでなく、多量のプロセッサが出す大量の熱の放散で、エンジン自体も赤外線追尾を避けるため低温を求められる点である
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AETP XA-100 3.jpgなおAETPエンジンは、デモ試験段階で、F-35搭載のF135エンジンと比較し、燃費25%改善・航続距離30%増・推力倍増の結果を出しているようですが、開発費等を含め生産に約8000億円が必要で、現F-35エンジン改修費見積もりの3倍で、ライフサイクルコスト換算だと4兆3000億円も現エンジン改修より高価だそうです。細部は過去記事参照。

技術者の発言ですから、「最も精巧で、最も技術的に難しい」エンジン開発に挑戦したい気持ちが強く出るのは仕方ないことで、その辺りを差し引いて考える必要がありましょうが、戦闘機の存在意義に立ち返った議論を米空軍参謀総長らが提起している今、エンジン開発にもその影響が及んでいる現状をご紹介しておきます

世界の空軍における戦闘機の位置づけは、次世代戦闘機開発が世界全体でスローダウンや見直しが始まり、F-35の活動が莫大な維持整備&運用経費により低調となることで、加速度的に低下するのでは・・・と思います。戦闘機命派が考えるより遥かに早く・・・

F-35のエンジン問題
「AETPのF-35搭載を断念」→https://holylandtokyo.com/2023/03/16/4422/
「AETP採用なら調達機数削減!覚悟?」→https://holylandtokyo.com/2022/09/13/3644/
「AETP採用しないと産業基盤崩壊訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/08/24/3562/
「空軍長官:国防省に下駄預ける」→https://holylandtokyo.com/2022/08/09/3515/

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米輸送軍が「ウ」や「イ」や対フーシ派作戦の教訓語る [Joint・統合参謀本部]

ウクライナとイスラエルとフーチ派関連です
兵站の基礎である輸送任務の様々な事例で
派手な内容ではないが基本を振り返る機会に

Ovost7.jpg9月17日、Jacqueline D. Van Ovost米輸送コマンド司令官が米空軍協会「Air, Space and Cyber Conference」で講演し、昨年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲攻撃後の対応、フーシ派との戦いでの取り組み、そしてウクライナへの弾薬輸送の教訓等を断片的ながら語っているので取り上げます

Van Ovost大将の話は、派手な作戦事例やヒーローを紹介するような内容ではなく、事前に定めた基本手順が存在しても、有事の現場では様々な事情の影響を受けることを示す事例や、民間輸送企業との連携事例、更に危険物である「弾薬」輸送の難しさに関する事例等で、輸送現場の苦労や汗を感じさせる貴重な中身だと思います

ハマスによるイスラエル奇製直後の対応
C-17 Gaza airdrop2.jpg●奇襲後に米輸送軍は、中東の米軍を守りながら、ガザ地区への支援物資の空中投下作戦を遂行し、並行してイスラエルを妨害するイエメンの反政府組織フーシ派による攻撃から地域の船舶移動を維持するため活動した。このような危機発生時に私が考えるのは3つ。事態に対する自身の立場の確認、事態に対応可能な部隊能力、そして統合指揮官ニーズに応えるための指揮統制の在り方である
●初動の重要任務は PAC-3 防空ミサイル部隊の空輸だったが、行動基準では12機のC-17 輸送機が必要になるが、展開先の状況等を踏まえ最終段階で再評価してみると重要性の高い装備は7機で輸送可能で、発電機等の装備は追送でOKと判明した。輸送要求が錯綜する初動時に、状況に応じた「再評価」を行う重要性を痛感した事例で、空軍全体で取り組む ACE構想 (agile combat employment) での機動展開輸送を考える大きな教訓となった

フーシ派からの攻撃対処で民間輸送業者と連携
houthi rebels7.jfif●現在も続くフーシ派との戦いでは、米軍が輸送を委託している民間船舶の安全確保が急務となった。我々はまず、商業海上輸送企業との定期会合を開始し、戦術顧問団をバーレーンの中東海軍司令部に派遣した。そして海運業者全てに情報提供するための危機管理センターを設置し、スエズ運河経由か喜望峰経由かの助言、ペルシャ湾航行の安全情報提供、そして脅威の種類や特徴等々について情報共有を行った
●その後、商船まとめて船団を編成し、海軍艦艇で護衛する作戦を開始した。また標的になりにくくする防御行動として、商船に海上ジグザグ航行を助言した。これら助言は以前から決められていた行動基準に基づくものだが、これだけ大規模に行うことで貴重な経験となっている。 また商船に海軍の戦術顧問と通信装備を提供し、海軍艦艇との意思疎通を円滑するよう手配している
●今も続くフーシ派との戦いであるが、長期間脅威が持続すれば、物資輸送に多くの資源が必要になることを、我々は身に染みて学んでいるところである

ウクライナへの弾薬輸送
Ukrainian forces2.jpg●ウクライナへの支援物資輸送で最も難しいものは「弾薬輸送」である。これまで約10万発の長距離砲と約25万発の対戦車砲弾、約3.8兆円相当の武器、航空機、戦車等々を輸送したが、誰も危険性から保管したくない危険物を、米本土の倉庫→港→港→列車→道路等の経路で輸送する場合、点と点を結び付ける調整がいかに困難かを、現在も組織全体で痛感し続けている
●弾薬という危険物の爆発事故を避けるため、一度に集積可能な弾薬量は制限され、その基準は通過国によって異なり、列車や船舶の遅れで計画の修正が頻発し、更に軍事的脅威レベルも場所により変化する中での諸調整は、忍耐の限界を試される試練である

●ただ同時に、毎日ロシアから攻撃を受けつつも柔軟に対応し、国内での軍事物資輸送を巧みに粘り強く行っているウクライナの取り組みは、米軍兵士に大きな刺激と教訓を与えてくれている

米輸送コマンド共通の課題
Ukraine Air defense3.jpg●輸送する人員装備の位置や状態、燃料や弾薬の危険度や各種制限に関する情報を、サプライチェーンに沿って指揮官にリアルタイムに提供可能なデータ処理および通信ツールへの投資強化が必要だ。
●我がコマンドは「25 in 25 initiative」構想で、2025年までに輸送部隊の 25%に通信キットを装備することを目標としているが、実現は難しいのが現状だ。しかし極めて重要な投資であり継続して要求していく
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兵站の重要性を考える意重なお話だと思います。どれも戦史の教訓として学んだことがある軍事輸送のポイントかもしれませんが、最新の実例を通じ学ぶことで、頭に刻むチャンスとなれば幸いです。

輸送コマンド関連の記事
「Van Ovost 女性司令官が語る」→https://holylandtokyo.com/2023/06/15/4727/
「輸送機による燃料輸送にも取り組むが」→https://holylandtokyo.com/2023/04/11/4490/
「米空軍若手が ACEの課題を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/11/27/397/

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NGAD後退と共にステルス給油機も勢い失う [米空軍]

米空軍はNGADもNGASも必要との姿勢も
かつての構想は変わりつつあると産業界や専門家

NGAS 5.jpg9月13日付 DefenseOne 記事は、予算枠や予算優先順位の制約下、また将来の航空優勢概念や同獲得手法の見直しが議論される中、米空軍の次期制空機NGADが計画を一時停止して再検討を迫られているが、NGADの要求後退と共に、将来空中給油機NGAS(Next-Generation Air-Refueling System)つまりステルス給油機構想も勢いを失っていると報じています

同記事は、空軍関係者は依然として、KC-46AやKC-135より生存性の高いステルス次世代 給油機の必要性を主張しているが、次世代制空機 NGAD を見直しに追いやった予算等環境を鑑みれば、次世代給油機への投資の見通しは「心許無い」と表現し、軍需産業界幹部の「望まれる時期に現状の予算環境でNGAS が実現可能だとの話を、誰も聞いたことがない」とのコメントを紹介しています

Clark.jpgまた記事は、お馴染みハドソン研究所 Bryan Clark 研究員による、「次世代制空機NGADが、強固に防御された敵空域に侵入して航空優勢を確保する構想は衰退し、CCAなど無人機が突破&近接作戦を行う構想に大きく変化しつつあり、これに伴ってステルス給油機の必要性も低下している」、 「戦闘機や給油機が敵地近くで作戦する思想は、もはや現実的でも実現可能でもない。だから NGAD計画は見直しに入り、NGAS もステルス性を優先しない方向に向かう」とのコメントを記事は紹介しています

なお将来給油機計画NGASに関し米空軍報道官は今年7月、NGASの運用構想や要求性能に関する分析を2024 年末までに完了する予定で、その結果を基に2026年度予算案を編成するので、NGAS 関連の様々な質問には同分析後に対応したいと説明しているようです
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NGAS4.jpg戦力投射の量的&質的面でも、教命教助体制的にも、予算面でも、対中国作戦で「戦闘機や給油機が敵地近くで作戦する思想は、もはや現実的でも実現可能でもない」・・・との結論に至りつつあると解釈してよいと思います

でも、予算不足やF-35の航続距離不足や兵器運搬能力不足などなど、なんで今頃になって気が付いたのでしょうか? ウクライナや中東での(無人機等関連の)戦訓? 次期ICBM 計画の巨額費用判明?・・・この辺りの裏話が明らかになるには、もう少し時間が必要かもしれません

ステルス給油機NGASの関連
「C/KC は F/Bと共に開発すべき」→https://holylandtokyo.com/2024/05/15/5776/
「ベンチャー企業に BWB デモ機を」→https://holylandtokyo.com/2023/08/21/4962/
「ステルス給油機検討開始」→https://holylandtokyo.com/2023/02/13/4281/
「長官が積極発言」→https://holylandtokyo.com/2023/01/25/4156/

次期制空機NGADの現在位置
「NGADは F-35より安価に」→https://holylandtokyo.com/2024/09/19/6351/
「数か月間保留する」→https://holylandtokyo.com/2024/08/06/6185/

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第16空軍のコマンドへの格上げの現在位置 [米空軍]

CyberとEWとISRを担う16空軍格上げ発表から半年
空軍長官と参謀総長直属「Air Forces Cyber」の姿は?
新任の第16空軍司令官 Hensley 中将が語るも・・・

16th Air Force5.jpg8月30日、今夏第 16空軍司令官に同副司令官から昇任&就任したThomas K Hensley 中将が、2月に米空軍が打ち出した空軍大改革メニューの一つ「第 16空軍のコマンド『Air Forces Cyber』」への格上げ(司令官は中将を維持)」に関し、未だ骨格部分は米空軍首脳部により検討中だとしながらも、「格上げ事業」を担う新司令官としての所を記者団に語りました

本日取り上げる第16空軍は、2019年10月に第24空軍(サイバー担当部隊)と第25空軍(ISR+一部のEW 電子戦担当部隊)を合併して編成した後、更に2021年7月に米空軍各所から電子戦部隊を集めて第 350航空団として新編し、16空軍に追加編入して今に至っている部隊です。

16th Air Force4.jpg第16空軍編成の狙いは「情報制圧組織:information dominance organization」の創設で、つまり、サイバー空間での情報と、画像・映像・電磁スペクトラムからの情報を総合的に組み合わせて新たなインテリジェンスを生み出し、敵情を迅速に把握して地域コマンドや機能コマンドに提供し、併せてサイバー空間や電磁スペクトラム領域で攻撃的作戦を遂行することが期待されています。

2019年10月新編の直前に、世界的なセンサー網を誇る気象部隊も配下に入れる決断があり、他軍種からも注目を集め、米海兵隊は第 16空軍をまねた「Marine Corps Information Command」を後に創設したほど、米空軍内外から注目を集めている部隊です

16th Air Force2.JPG2月に米空軍が打ち出した大改革は、新装備の構想や開発を一手に担う「ICC: Integrated Capabilties Command 創設」、「戦闘・輸送・GS コマンドの即応態勢強化」、「ACE 構想に対応可能な人材養成」の3つを柱とするもので、これまでも2025年の「Talisman Sabre 演習」大規模化計画や「ICCの難産」状況等についとご紹介してきたところですが、「16空軍」の活動自体やその「格上げ」については放置状態でしたので、正直中身は薄いですが司令官発言をご紹介しておきます

第16空軍司令官 Hensley 中将は記者団に対し
16th Air Force6.jpg●サイバー、電子戦、ISR、広報、天気予報等を広範にカバーする第16空軍に、大規模再編が予定されている。第16空軍は、太平洋空軍や中央空軍と同等の service component command に『Air Forces Cyber』として格上げ昇格する方向だ
●ただし、現時点で第16空軍の将来に関し私が言えるのは、米空軍上級リーダーたちが、非常に慎重なプロセスで進めているが、決定にかなり近づいているのだろうと感じていることだけである

16th Air Force3.JPG●一部世論の中には、16空軍の役割が十分明確に定義されていないとの批判があるが、我々は自身の権限を理解しており、例えばよく議論される戦略的メッセージングや、それら(軍事欺瞞)作戦について(広報部と)協力する権限についても把握している
●また、「異質な部隊の寄せ集め」との見方もあるが、異なる性格の部署を束ねることには多くの利点がある。一人の指揮下にあることで、指揮や努力を統一し、迅速機敏に結果を生み出す力を得ることは大きい。異なる要素が別々の組織に属していては「必要なスピードと機敏性」は得られない

16th Air Force.JPG●第16空軍の多様性多面性は欠陥ではなく特徴であり、従来のターゲティング情報処理分析と21世紀の戦争概念を統合(allowing the integration of traditional targeting intelligence with 21st century warffare concepts)可能な形態だと考えている。我々はサイバー。電磁スペクトル、non-kinetic 効果、また触媒としてのISRと気象をサイバー等と融合可能でもあり、様々な可能性を秘めている

●今は 16空軍の将来に関する最終決定を待つ立場だが、部隊支援任務を複雑にしている可能性がある 16空軍内部の課題への対処、つまり部隊内で実施すべき多様で多面的な機能間の連携を微調整するため懸命に取り組んでいる。
●新しく設置された「information warfare operations center」は、16空軍が持つすべてを融合し、全ての空軍部隊の任務遂行を支援できるよう設計されており、大きな力になる
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16th Air Force7.jpgHensley司令官は大変だと思います。最近突然注目を集めるようになったとは言え、米空軍の本流でない「日陰者」や「オタク」扱いされてきた「サイバー」や「電子戦」や「ISR」人材をかき集め、一つに束ねてやるから「シナジー効果を生み出せ」と命ぜられているのですから。

更にこれを、太平洋空軍や中央空軍と同等の Service Component Command に『Air Forces Cyber』として格上げ昇格させる・・・というのですから・・・

第16空軍関連の記事
「中露対処の情報戦語る」→https://holylandtokyo.com/2023/11/27/5247/
「サイバーと ISRに加え電子戦も」→https://holylandtokyo.com/2021/07/09/1967/
「第16空軍創設:大統領選が初任務」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19

米空軍が大改革アクションを発表
「飛行軍司令は不要」→https://holylandtokyo.com/2024/07/08/6049/
「大改革の概要発表」→https://holylandtokyo.com/2024/02/16/5579/
「改革の目玉ICC コマンド」→https://holylandtokyo.com/2024/05/23/5873/
「前段階:米空軍総レビュー実施」→https://holylandtokyo.com/2023/09/07/5012/

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米空軍特殊作戦軍がプロペラ攻撃機要求への疑念に反論 [米空軍]

「中国だけが脅威じゃない」と過激派対応前面に主張
将来の展開に備えこの程度の機数は必要とどんぶり主張
運用開始すれば新たな斬新な使用法見つけるとも

OA-1K2.jpg9月18日、米空軍特殊作戦軍AFSOCが中東等でのローテク過激派対処用に導入要求中のプロペラ攻撃機について、米議会等から要求機数や要求性能算定の根拠が「余りにもどんぶり勘定だ」と批判されている件に関し、司令官であるMichael E. Conley中将が「将来の想定外の展開に備えて75機は必要だ」「わが部隊のDNAは斬新な手法で同機を有効活用する」と、官僚的でない強引な主張を展開していて興味深いのでご紹介します

AFSOC が要求しているプロペラ攻撃機は、中東地域を主に想定した過激派グループやその他のローテク脅威と戦うため、2020年から「Armed Overwatch」計画の名のもとに、近接航空支援やISR任務用に小型プロペラ機導入に着手したもので、最終的に AFSOC は、Air Tractor社製の農薬散布機OA-1Kに、L3 Harris 社製のセンサーと機銃等を搭載した機体を75機要求することを決定しています

OA-1K4.jpgこの要求に関し Conley司令官は、「米国を上げての中国、中国、中国は理解している。しかし、世界には他の国も存在する。国家として、中央軍の中東での任務はまだ終わっていない」とし、大型攻撃機の数分の1のコスト相当する75機約 3000億円での導入を主張しています。

しかし米議会や会計監査院GAOは、「中国と対峙するような本格紛争で、軽攻撃機 75機は機能しない」、「必要な能力分析前に調達機数を決定している。機体能力の変化が調達必要機数に与える影響を評価していない。検討途中で想定作戦任務の変更があったのに、必要性を再評価をしていない」と、余りにもいい加減な見積もりに基づく AFSOCの要求に疑問を呈し、米議会は国防省に説明責任を果たすよう厳しく要求しているところです

そんな中ですが Conley 司令官は・・・
Conley.JPG●国防省は中国抑止の武器購入に注力しているが、世界は専門家が考えていた以上に混沌としている。太平洋重視は理解できるが、中東の混乱と継続する戦いは、ローテク過激派が依然として脅威であることを示している。
●OA-1k が構想&決定された時点から、世界は少し変わったと思う。しかし、この機体は依然としてコスト効率の高い近接航空支援アセットで、過激派やその他のローテク脅威と戦うため 75機が必要だ。当初計画の時期に75機を購入できない可能性もあるが、それでも必要

OA-1K3.jpg●現在の能力評価や分析で軽攻撃機の有用性を結論付けることは危険だ。現時点での前提や仮定は、このアセットのより幅広い任務に対する有効性や状況適応能力を見落とす恐れがある.
●我々はAC-130やCH-47 の機体側面に機銃や砲を装備した部隊であり、C-130側面にジェット推進装置を追加してイランから脱出した部隊である。それが我々のDNAだ。この航空機を入手し運用開始すれば、搭乗員や整備員が、今だけでなく将来にも役立つ斬新な手法を見つけると思う。
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OA-1K.jpg米空軍特殊作戦軍AFSOC司令官である MichaelE. Conley 中将の、米議会には絶対通用しそうもない、清々しいまでの「人情に訴える」ご主張とお気持ちは十分すぎるほど理解できますし、75機を約 3000億円程度で導入可能なれば、何とかしてあげてほしいと思いました

ただし、米空軍は次期ICBM 計画で、空軍年間予算総額の2倍以上もの予算超過をやらかしてしまい、「一丁目一番地」だったはずの次期制空機NGAD 計画で大幅下方修正しなければならないほど追い込まれています。

准将から飛び級で中将に昇任してAFSOC司令官に就任しているConley中将の武運長久を祈りたいのですが・・・

米空軍特殊作戦軍AFSOCの関連
「AC-130の105mm砲取外し検討」 →https://holylandtokyo.com/2023/11/10/5219/
「MQ-9でネットワーク構成試験」→https://holylandtokyo.com/2023/09/26/5061/
「救難救助検討は迷走中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/23/4592/
「空軍No2に出身者が」 →https://holylandtokyo.com/2022/11/18/3965/

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米海軍トップ:次期艦載戦闘機FA-XX計画に変更なし [Joint・統合参謀本部]

米海軍初の女性トップLisa Franchetti大将が語る
淡々と「3社からの提案を評価中」と・・・
米議会が関連予算を削減し、専門家の目も厳しい中

FA-XX3.jpg10月2日、2023年夏から米海軍トップ(Chief of Naval Operations)に女性として初めて就いているLisa Franchetti大将が次期艦載戦闘機FA-XX計画について軍事記者団に、米空軍が見積価格の「バカ高さ」等から次期制空機NGAD計画ダウングレード見直しを迫られる中でも、またFA-XXに対し議会やOBから批判がある中でも、「空軍の取り組みからその必要性を学んだ」「3社の提案から調達先を選定している」と淡々と語っています

米海軍のF/A-XX は、F/A-18多用途戦闘機と E/A-18電子戦攻撃機の後継機となる予定で、米海軍が導入途中の第5世代戦闘機 F-35Cでは最新の脅威に対し能力不足と想定されている、「航続距離」「センサー能力」「電子戦機能」面等々で能力向上を狙っている機体で、3社(Boeing, Lockheed Martin, Northrop Grumman)の提案から2025年には1つに絞り込む予定とされています

会見でFranchetti大将は・・・
Franchetti5.jpg●第6世代の機体は、高度なセンサーと殺傷力、より優れた航続距離を持ち、有人アセットとして無人アセットを巧みに融合して戦力化できるものと期待している。米空軍の次世代制空機NGAD計画から学んだことの一つは、我々が将来必要とする能力獲得のために、計画を実行する必要があるということだ
●米海軍の航空アセットは、潜水艦戦力と並んで、我が海軍が保有する戦略的優位性の1つである。(FA-XXに関しては、)3社から提案があり、現在調達先を選定しているところだ

●(米空軍のNGAD計画一時停止&再検討は懸念材料か、との質問に対し、)各軍種の将来航空機計画を何らかの形で一致させることは理にかなっているが、空軍の決定がどうなれ、F/A-XXを妨げるほどではない。
FA-XX2.jpg●一般的な視点で述べると、各軍種が相互に学んで相互に補完する関係にあることが大切で、「互いに何を学べるか?」「各軍種が共通性を持つことで、どの分野で互いの能力を固めることが出来るか」を考えることは常に大切

本会見を紹介する2日付米空軍協会web記事は、2024年初め、米海軍は目の前の海軍全体の即応性維持に重点を置くため、F/A-XX への投資約1500億円延期を決定したが、米議会は F/A-XX予算の更なる削減を追求していると紹介しています。そしてその背景には、以下に紹介する専門家や海軍OBが指摘する問題があります(2020年6月30日の記事より)

専門家や海軍OBのFA-XXへの辛らつ批判
Clark.jpg●ハドソン研究所Bryan Clark研究員(海軍OB)の米下院で証言 → 米海軍の財政上の厳しい現実からすれば、新しい機体を開発導入することは事実上難しく、現有航空機の派生形にならざるを得ない。従って、生産ラインを維持するためにも、FA-18調達をゼロにする米海軍案は不適切で、F/A-XXオプションを残す意味でもFA-18製造ラインを維持すべき

Work-Reagan3.jpg●前海軍次官Bob Work氏 → 海軍と海兵隊がF-35のB型とC型、更にFA-18の3機種運用になって維持整備面を含めて既に難しい問題となっているにもかかわらず、4機種目のFA-XXに進む判断に大きな懸念を持っている。、航続距離が必要なら無人機が必要なことは各種分析から明白であり、焦点を絞って無人機へ早く進むべきだ

●元米海軍トップGarry Roughead退役大将(無人艦載攻撃機X-47Bを開発推進していた現役時から、米海軍内の無人攻撃機に対する消極姿勢を問題視)→ 2012年に無人艦載機が初飛行や着艦試験を成功させた後の8年間、その成果は放置されたままだ。これほど重要な新技術に、これだけ怠惰な姿勢は許しがたい
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Franchetti4.jpg最近、Franchetti大将が乳がん闘病中であることが公表され、治療のため短期間職務を離れていたことも明らかになっています。他軍種と比較して、飛びぬけて問題が多い印象の米海軍のかじ取りは「ストレス満載」かと思いますが、頑張って頂きたいと思います

上でご紹介した専門家や海軍OBのご意見だけでなく、まんぐーすが最近見聞きする米海軍関連の艦艇維持整備や新規装備開発の問題、更には高級幹部も含む規律違反の問題等々を考え合わせると、FA-XX計画が計画通りに進むとは到底考えられませんが・・・

米海軍次期艦載戦闘機FA-XX関連の記事
「企業幹部:同計画変更の情報無し」→https://holylandtokyo.com/2024/08/19/6176/
「FA-XXの構想進まず」→https://holylandtokyo.com/2020/06/30/634/

空母艦載の無人攻撃機構想がしぼむ様子
「組織防衛VS無人機導入派」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2014-08-01
「哀愁漂うUCLASS議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-17
「UCLASSの要求性能復活?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-14
「夢しぼむUCLASS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-21

無人艦載攻撃機X-47Bの夢
「夏にRFP発出か:無人艦載機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-28-1
「映像:空母甲板上で試験中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-11
「映像:X-47B地上カタパルト発進」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-01
「X-47Bが空母搭載試験へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-28-1

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ヘリ重大事故率が3倍の米陸軍が根本見直し中 [Joint・統合参謀本部]

2023年度重大事故10件死者14名の惨状
2024年春は事故発生率が過去の3倍に
初級訓練用ヘリ機種の再検討やティルローター機対応も
コスト面からもVR訓練の在り方も含め再検討

US Army Heli all.jpg8月26日付Defense-Newsは、米陸軍でヘリコプター事故が激増し、2023年度は死亡率が2011年の米軍イラク撤退以降の最高となり、死者や装備被害4億円以上が出る「クラスA事故」10件で14人が死亡する深刻な状況で、2023年4月には全陸軍航空部隊が飛行を一斉に停止して安全確認や基本事項の再徹底を行うも、2024年も事故が止まず、2024年春には飛行時間当たりの事故発生率が過去平均の3倍に達する危機的状況だと報じています

対策として米陸軍は、「あらゆる選択肢を排除せず検討する」として多方面からアプローチを行っており、最近の事故の特徴や原因の細部分析と対策、ティルローター機訓練の再検討、初級練習機の再評価、シミュレーションやVR訓練の在り方検討、飛行を中止して安全教育に集中する時間の設定などなど、様々に議論されているようですので、「他山の石」としてご紹介させていただきます

8月26日付Defense-Newsによれば米陸軍は
McCurry.jpg●米陸軍将来コマンド参謀長のMac McCurry少将は、「過去2年間、事故率と原因要因を常に注視し、特に編隊飛行、つまり航空機同士が接近飛行する様子や任務を、任務のタスク毎に評価している。また最近では、環境条件に応じ操縦者がテールローター機をどのように操作するかに焦点を当てている」と述べた
●具体的に同参謀長は「1つの考慮点は、適切な基礎訓練用航空機を保有しているかである」と語り、陸軍が2013年後半にベル社のTH-67単発訓練用ヘリを退役させ、訓練機を双発のLUH-72Aラコタ軽多用途へリコプター約200機に置き換え、運用コストと操作の複雑さを巡り激論を呼んだ決定に言及した。そして「全てが検討の対象となっており、訓練用機首も訓練法も全てが検討されている」と語っている。

US Army Heli uh-60.jpg●また同少将は飛行部隊維持全体と安全確保の両立にも視点を広げ、「航空部隊運用にはコストが掛かる。操縦者訓練には多額の費用が必要で、そのため、コスト面、飛行の基礎面、そしてティルトローターを搭載した将来の航空機の導入による影響などから、現在、最適な前進方法について多くの分析を行っている」と語り、
●更に、「シミュレーションやVR技術の向上で、航空訓練に仮想現実や拡張現実が普及する中、実機に乗らなくても訓練効率を向上可能な部分はどこか? どの訓練項目が最新技術で最適化されるか?」を再確認すべきとも同少将は語っている。また最近まで陸軍航空運用検討センター司令官だった人物は、「ヘリ部隊が有人・無人アセットが混在する複雑な組織へ変化する中、搭乗員のための新たな組織的訓練モデルを検討している」と述べている。

US Army Heli FLRAA.jpg●米陸軍は今年初め、「Aviation Standup」と名付けた基本や基礎に立ち返る安全強化の取り組みを発表し、その狙いを「事故発生時に悪い流れを断ち切り、改めて部隊運用の基礎的な部分に焦点を当てる」と説明し、「必ず何らかの効果が出る」と同参謀長は説明している

●米陸軍は2022年12月に将来型長距離強要機(FLRAA)にベル製の次世代ティルトローター設計機を選択し、一方で今年初めに(既に3000億円以上開発に投入済だった)攻撃・偵察任務用有人ヘリ(FARA)開発を中止して、この役割に無人機投入を決定したが、同少将は本件に絡め「今後 1年以内に、陸軍航空の主要幹部を中心に、FLRAAが部隊投入される前に組織的訓練モデルをどうするか、いくつかの決定がなされる」と語っている
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US Army Heli uh-72.jpg上の記事では、将来導入のFLRAA関連でティルローター機への言及が多くなっていますが、今年7月初めにAH-64アパッチヘリが飛行訓練中に墜落して教官が死亡、訓練生が負傷した調査中の事故に見られるように、米陸軍のヘリ事故はAH-64やUH-60やCH-47や上記練習機LUH-72Aなどの既存機で発生しています

日本の陸上自衛隊でもそうですが、陸軍の主力は歩兵や砲兵や戦車部隊であり、それら部隊出身幹部が組織の本流として出世します。ヘリ部隊は近代戦で重要ですが、ヘリ操縦者が「飛行手当」をもらって歩兵等の本流幹部より「羽振りが良い」ことからイジメられ、昇任面で冷遇されています。(あまりに短絡的な表現ですが、本質はそうです)

US Army Heli ch-47.jpgまた、飛行運用と地上部隊である本流組織では作戦行動への考え方に大きな差もあり、組織文化の隔たりも大きく、飛行部隊に地上部隊幹部が口を出せない雰囲気があり、安全管理が飛行部隊で疎かになっていても、飛行部隊独自には改善が難しい閉鎖性もあります

それからもう一つ、以下の過去記事でも指摘したように、防空兵器やドローンの発達により、ウクライナや中東で顕著になり、各国軍の間で認識が広がりつつある前線での有人ヘリ運用の限界説と、そのような認識の現場部隊士気への負の影響への懸念です。航空優勢獲得に関する戦闘機の有効性への疑問と共に、ドローンによる「低高度の航空優勢確保」がもたらす、静かな、しかし大きな軍事変革の流れがもたらす影響です。

つまり、このような複雑な実態を踏まえると、陸軍ヘリ部隊の改善は容易ではありません。

前線での有人ヘリ運用の限界露呈
「小型ドローンで軍用へリ撃墜の衝撃」→https://holylandtokyo.com/2024/08/29/6213/

米陸軍迷走の象徴!? ヘリ選定のグダグダ
「3千億円投入済のFARAは中止」→https://holylandtokyo.com/2024/02/22/5567/
「Black Hawk 2000機の後継FLRAA選定」→https://holylandtokyo.com/2022/12/09/4043/
「UH-60後継の選定開始」→https://holylandtokyo.com/2021/07/16/2009/
「無人化でなく自動化推進!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-11

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