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(1/2)米中衝突シナリオを基礎に [Air-Sea Battle Concept]

迎春 2012年 元旦

F-35stealth.jpg中国のF-20戦闘機や中国空母など、ここ一年は本質的な「脅威の変化」や「戦いの変化」から目を反らすような事象が多数発生し、日本国内の議論もマスコミ受けするセンセーショナルな話題が先行しました。

そのため、本当に考え真剣に取り組む必要のある「脅威の変化」や「戦いの変化」に目が向きませんでした。
小手先の文言「機動的防衛力」でお茶を濁した中身のない「防衛計画の大綱」や「中期防」が決定され、だめ押しは年末のF-35購入決定でした
これらの動きは、まさに奈落の底に突き進む暴走列車(大東亜戦争時の大本営もさぞかし・・・)を思い起こさせます。

「石破茂・元防衛大臣の怒り」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-24

年始に当たりもう一度、日本が置かれている戦略的環境を見つめ直し、いささかでも暴走列車を止める仲間を増やすべく、米国の西太平洋地域における対中国の軍事情勢認識を振り返りたいと考える次第です。米国の考えがすべて正しいとは思いませんが、多くの専門家が力を注いで分析に取り組んでいることは厳然たる事実です。

CSBA2ndjasbc.jpg2回連続の長い記事で取り上げるのは、2010年5月にシンクタンクCSBAが発表したレポートAirSea Battle: A Point of Departure Operational Concept」です(説明スライドも)。

タイトルが示すように、本レポートはAir-Sea Battle(ASB)を提唱したモノです。確かに最近、ASBは予算削減や海空軍の対立で動きが停滞気味ですが、本レポートが分かりやすく描写した中国軍の予想行動は、脅威認識として、今では米国防政策や各軍種の装備品開発や調達を司る一貫した基礎を成しています。

「Air-Sea Battleの状況」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-23-1
「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
その他、その2~6、番外編など

本レポートについては、既に10本近くの記事で紹介していますが、ここに再びその内容を再整理して2回に渡ってご紹介し、日本の防衛を憂慮する心ある皆様の判断に供したいと思います。

中国正面の米軍の状況
DF-21-1.jpg中国正面の米軍の特徴は、防御が弱い同盟国の基地や防御が不十分な少数の前方展開基地に依存している点である。これらの基地は全て中国兵器の射程内にある後方補給面では、米本土から遠く、かつグアム島など少数の補給施設に依存する難しい環境に置かれている。
反面中国は、例えば膨大な飛行場と弾道ミサイルを移動できる広大な国土を持っている。
●よって、湾岸戦争に代表される米軍の過去のパワープロジェクションの前提であった、危機に際して迅速に必要な戦力を前方展開基地に展開し、近傍に兵站補給のための兵站の聖域(攻撃を受けない地域)を設置することができない

中国の戦い方
cyberwar.jpg中国の軍事論文や最近の中国軍研究によると、中国の接近拒否能力は、米軍が当然のように享受してきた従来のパワープロジェクションを無効化する。紛争時中国は、大規模な先制攻撃により短時間で米軍の基盤となる基地や部隊、指揮統制ネットワーク、補給ルートに大きな被害を与えることを狙っている。
具体的に中国の先制攻撃は、以下のような行動を伴う。
---開戦直後に中国は、エネルギー兵器、対衛星兵器、妨害電波及びサイバー攻撃等を併用し、米国の衛星(ISR、通信、赤外線)の無効化を行う。
---弾道ミサイルの連続同時発射攻撃と地上発射巡航ミサイルによる攻撃、更に航空機攻撃も併用し、米と日本の海空基地を攻撃する。アンダーセン、嘉手納、三沢、佐世保、横須賀、関連自衛隊基地、補給・燃料拠点(グアム等)等の基地が攻撃対象に含まれる。 
---対艦弾道ミサイルと対艦地上発射巡航ミサイルで、大陸から1500nm以内の米軍と同盟国艦艇を攻撃して耐えられない損害を与え、同距離内を「Keep-out zone」として米側に立ち入らせない(接近拒否戦略

米側が受ける被害
chinacyber3.jpg●仮に中国からの先制攻撃が行われれた場合、米軍の前方作戦基盤は無くなり、サイバー・宇宙・電磁パルスなどの分野でも聖域は期待できない。
サイバー戦能力については不明な部分が多いが、仮に米中双方が同等の能力を持って戦った場合、ネットワークへの依存度が高い米側が遙かに大きなダメージを受ける。典型的な例は米軍の兵站補給部門で、商用のネットワークに大きく依存する米側システムは大きな弱点を形成している。
●従来の戦いで当然のように行っていた、複雑な戦場情報ネットワークの立ち上げや衛星の回線周波数を買い占めを前提とする、大規模で継続的な海上・航空活動を遂行することは不可能となる。

これらの結果、米軍は、滑走路や燃料不足等による航空戦力運用の大幅制限、海上艦艇情報や対潜水艦情報の不足、空中給油機への過度の負担、作戦遂行物資の不足、長期を要する艦艇・潜水艦の再発信準備等の問題に直面する
●米軍は作戦地域へのアクセスを拒否され、作戦の主導権を失い、主導権を回復する足場をも失いかねない状況に至る。

せめてもの備え
CHAMP2.jpgC2やISRアセットへの被害を予期し、衛星が使用不能な場合に備え、空中中継機や空中ISRアセットを準備する必要がある。しかし同時に、能力が限られる空中アセットでの運用に備え、情報入手や回線使用の優先順位について、事前に全軍レベルや国家及び同盟国レベルで検討しておく必要がある
基地や施設の抗たん性強化は高価であり、またそれのみでは前線基地基盤を維持することは難しいため、次回に述べる中国ISRや宇宙アセットの無力化・盲目化等の施策と併せて総合的に対処策を考慮すべきである。
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上記の「戦いの様相」予想は、あくまでも米軍の立場から見たモノです。このような状況になった場合の日本国内の状況については、それぞれが胸に手を当てて考える必要があります
戦闘機に膨大な投資を行うべきなのか? 「四方を海に囲まれた日本は、500個師団の地上部隊を保有しているのと同じだ」と独の将軍に言わしめた日本が、陸自の定員と「黄金律」の予算シェアを維持していることが正しいのか・・・

次回は、このような状況になることを防ぐため、CSBAのレポートが推薦する米軍と同盟国(日本が一番重要)の戦い方をご紹介します。更に日本の国防に思いを馳せていただきます。

「2/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「補足米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-2

「有事直前嘉手納から撤退?」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
「Air-Sea Battleの起源」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-24-1
「米海軍は日本から豪へ移動」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-29-2
「米国の姿勢シャングリラ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01
「前半:サイバーと宇宙演習の教訓」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-01
「後半:サイバーと宇宙演習の教訓」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-02

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