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空軍長官がステルス空中給油機検討に積極言及 [米空軍]

KC-Z検討約7年前倒しの重要性力説
つなぎ給油機KC-Yの継続は不明なまま

blended wing6.jpg昨年12月11日、Kendall空軍長官が外交問題評議会CFRで講演し、中国の防空能力強化&延伸により従来型の米軍輸送機や空中給油機が作戦空域に接近困難になりつつあり、ステルス性を輸送機や空中給油機に求める必要があると訴え、ステルス形状で空軍の気候変動対処構想「Climate Action Plan」にも沿って燃料効率が良く環境にも優しいBWB機(blended wing body aircraft:B-2やB-21形状の機体)の検討を推進すべきと主張しました

そして、将来米空軍の態勢作りをより明確に盛り込む2024年度予算案(2023年10月からの予算)では、この将来輸送機や給油機、長らく放置されてきた電子戦能力強化、更に新構想に基づく弾薬類体系の構築と備蓄量確保に向けた方向性を打ち出すと改めて強調しました

blended wing7.jpg同講演を取り上げた1月13日付米空軍協会web記事は、電子戦や弾薬体制(生産体制拡充や対象攻撃目標に適した弾薬体系の整備方向手順を含む弾薬ロードマップ作製)については発言を詳しく紹介していませんが、以下ではKC-46(KC-X)の次の次に当たる「KC-Z」と呼ばれてきた将来給油機検討についての発言をご紹介いたします

なお「KC-Z」については、2022年春夏頃までは2030年代に検討開始とされてきましたが、米空軍給油機検討担当幹部が2022年8月に「空軍長官から検討大幅前倒し指示を受け、予備的検討が6-7年前倒しの2023年から開始になった」と発言し大きな話題になりました。

LMXT.jpg大幅な前倒し検討開始以外に「話題となった」背景には、KC-46(KC-X)と「KC-Z」の間に「つなぎ給油機KC-Y」として導入される予定で、ロッキードとエアバス社共同で入念に受注を狙って準備を進めてきた「KC-Y」が無くなる可能性も出てきたことで、業界内の「どろどろ」「魑魅魍魎」が動き出したとの懸念があります

「KC-Z」についてKendall空軍長官は
●伝統的に米空軍は、DC-10やB-767などの旅客機を空中給油機や輸送機に改良して使用してきた。もちろん独自開発のC-17輸送機のようなパターンもあるが、両タイプとも今後の作戦様相を考えると生存性が不足しており空軍のニーズをもはや満たさない
blended wing.jpg●例えば中国は、より遠方から我が航空機を迎撃可能になり、我々から行動の自由を奪い始めており、我が輸送機や給油機は生存性を念頭に今後は設計されるべきである

●これらを踏まえ米空軍は、民間機市場では実現しておらず既存機活用ができないBWB機(blended wing body aircraft)について、国防省と協力してプロトタイプ作成に進みたいと考えている
(注:2022年10月の米空軍気候変動対処構想「Climate Action Plan」発表時には、DIU(Defense Innovation Unit)と協力して初期的な設計検討を開始しており、燃料消費量を3割削減可能なBWB機の2027年までの試験飛行を目指すと発表されている)

blended wing2.jpg●空軍は引き続き、老朽化が急速に進む現在の主力空中給油機の近代化や更新に投資を続けていくが、空軍はその段階より先の次世代を見据えて前進しなければならず、現在の関連航空アセットが成し得ない環境でも生き残るアセットを得る必要がある
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同空軍長官はCFRでの講演で、「KC-X」として導入が開始されているKC-46を現計画の179機導入後、従来計画の「つなぎ給油機KC-Y」に進むのか、同長官が頻繁に示唆している「KC-Y」導入中止とKC-46継続購入に進むのか明確にしませんでした

LMXT5.jpg2022年8月には前述の空軍担当幹部が「KC-Y」について、「2022年秋には要求性能が明らかになり、調達が2023年春に決定されるだろう」と語っていたにもかかわらず、方向性が見えなくなってきています。

繰り返しますがこの件は、KC-46機種選定時に3回選定をやり直した末に敗北した「遺恨」や「恨み」を晴らすため、「KC-Y」受注獲得に向け万全の準備進めロッキード社と組んだ「エアバス社」を、如何に納得させるかにかかっている「ドロ沼」です。米空軍はこの「ドロ沼」を避けるため、気候変動問題まで持ち出してBWB機推進を訴えていくのでしょう・・・

空中給油機検討の関連記事
「空軍がKC-YとKC-Zの検討予定に言及」→https://holylandtokyo.com/2022/08/26/3558/
「BWB機の技術動向調査」→https://holylandtokyo.com/2022/08/05/3508/
「将来給油機体制検討に企業へ情報提供依頼」→https://holylandtokyo.com/2022/07/11/3425/
「給油機のミニマム必要機数を削減」→https://holylandtokyo.com/2022/06/13/3319/
「KC-XYZの再検討再整理表明」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/3151/
「KC-Yにロッキードが名乗り」→https://holylandtokyo.com/2021/10/05/2260/

選定やり直し3回:KC-46機種選定の泥沼
「KC-X決定!泥沼回避可能か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25

気候変動対処計画
「米空軍の同計画CAP」→https://holylandtokyo.com/2022/11/07/3747/
「海軍と海兵隊が同計画検証演習」→https://holylandtokyo.com/2022/09/28/3666/
「米国防省が気候変動対処構想発表」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/

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今は不要も韓国への核再配備計画を事前決定しておけ [安全保障全般]

1991年に配備が撤去されて以来の再配備問題
ユン大統領が自開発か米に展開要請を迫られる可能性に言及
CSIS米有識者委員会が提言まとめる

CSIS Korea4.jpg1月19日、CSISが主催した14名の有識者による「朝鮮半島における抑止力強化」に関する検討委員会が報告書を発表し、ユン韓国大統領の発言を引き金に大きなトピックになりつつある「韓国への核兵器再配備」について、現時点では必要なく再配備はむしろ逆効果になりかねないが、

事態の推移によっては考慮せざるを得なくなることから、公には細部計画や手順等について曖昧なままにしつつも、配備や使用要件の他、運搬手段や保管場所や保管場所のセキュリティーなど兵站支援事項などは事前決定し、事前決定したことだけは明確にしておくべきで、そのための机上検討演習を行うべきと提言しました。

CSIS Korea6.jpgこの14名の検討委員には、Vincent K. Brooks元在韓米軍司令官、アーミテージ元国務副長官、Randall G. Schriverアジア太平洋担当国防次官補、Katrin F. Katz元NSC日韓担当補佐官などが含まれていますが、折しも1月11日に韓国大統領が「韓国はいずれ、米国に核兵器の再配備を要請するか、自国開発することを迫られるだろう」と発言し、北朝鮮の挑発行為がエスカレートする中、韓国世論が核兵器自国開発支持に大きく傾きつつある状況下でレポートが公開されました

同委員会は前提として、現時点では核兵器の再配備が必要な状況ではなく、核拡散抑止に重きを置くべきとBrooks元司令官が代表して説明しつつも、報告書では情勢に応じて必要なオプションとして再配備を残したとレポートについて語っています

CSIS Korea.jpgそして報告書は、「米韓両国は可能性がある核兵器再配備を具体的に検討する机上検討演習実施を考慮すべきで、再配備の兵器の種類や配備時程やロジ的なことを事前決定していると公に明確にしておく一方で、細部計画については曖昧さを維持しておく手法を取るべき」と提言しているようです

また再配備検討演習では、「具体的な運用法や保管セキュリティ―を考慮した具体的な保管場所や、運搬手段をF-16やその後継の可能性があるF-35にするのか等も含めて煮詰める必要がある」とまとめているようです。

CSIS Korea2.jpg更に検討委員会のKatz元NSC担当補佐官は、「具体的な兵站支援面などを煮詰めることなく、この問題を抽象的に議論するのは無責任だ」、「これらの議論を恐れる必要はなく、今が議論に適したタイミングだ」と主張しています

具体的な運搬手段としては、「継続的に半島周辺に展開する核搭載巡航ミサイル攻撃原潜や戦略爆撃機、また韓国南部に拠点を持つ核と通常兵器の両方が使用可能な航空機の配備準備も意味ある選択肢だ」と提案しています

CSIS Korea3.jpgまた同有識者委員会は、宇宙からの北朝鮮の動向把握が非常に重要なことから、最近日本と米国が宇宙分野における協力拡大に合意したように、韓国がミサイル警戒用の米国早期警戒赤外線監視衛星の情報に直接アクセスできるような体制整備のため、米韓両国も協力を強化すべきと提言しているようです
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CSISの同検討委員会関連webページ
https://www.csis.org/news/csis-commission-korean-peninsula-releases-landmark-report-enhancing-extended-deterrence-south

CSIS Korea7.jpg北朝鮮を対象にした「再配備」検討になっていますが、米韓両国に於かれましては、中国からの「嫌がらせ」にめげることなく、「細部手順の事前決定」に向けた諸検討と、「細部合意に関する曖昧さの維持」に協力して取り組んでいただきたいと思います

核アレルギーの強すぎる日本は、米韓の「再配備」検討の様々な紆余曲折を横目で見ながら、核へのアレルギーに邪魔されない純軍事的で、かつ視野の広い国家戦略を見据えた落ち着いた議論を踏まえつつ、政治的な決断に備える姿勢が望まれるのでしょう。

核兵器に関連する記事
「バイデンsole purpose断念」→https://holylandtokyo.com/2022/11/04/3888/
「ドイツの核シェアリングと戦闘機」→https://holylandtokyo.com/2022/01/19/2614/
「核兵器禁止条約でごたごた言うな」→https://holylandtokyo.com/2021/01/26/307/
「中国は核兵器管理条約を拒否」→https://holylandtokyo.com/2020/07/13/570/

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米空軍が推進する戦力管理サイクルAFFORGEN [米空軍]

24か月間を1サイクルとして管理
20年間の中東での戦力酷使を反省材料に
既に少数戦力部隊からは不満の声も・・・

AFFORGEN.JPG1月3日付Defense-Newsが「2023年注目の米軍動向」の一つとして、米空軍が本格的に推進しようとしている「戦力管理サイクル」を取り上げています。

この「戦力管理サイクル」は、米空軍の新しい戦力造成管理計画「new force generation plan : AFFORGEN」の一環とされており、部隊の運用を6か月間単位の4つのステップからなるサイクルで回し、各部隊の「燃え尽き現象」を防止し、「新人の養成やベテランの技量維持」を計画的に行って米空軍全体の能力を適切に維持発展させていくことを狙いとしています

AFFORGEN3.JPG米空軍の苦い経験として、約20年間継続した中東でのテロとの戦いで、中東域への長期に及ぶ連続した部隊派遣により、兵士の「燃え尽き現象」「特定任務の反復による部隊能力維持困難」「兵士の家庭崩壊」などなどの問題が深刻化し、パイロットをはじめとして離職者が激増し、同時に対中国等の本格紛争への転換が困難に直面している現実が背景にあります

6か月間単位の4つのステップサイクルとは
●前線派遣後のアセット修理などリセット期間
  (resetting after a deployment)
●基礎訓練期間
  (basic training)
●応用訓練期間
  (advanced training)
●即応態勢期間
  (mission availability)

AFFORGEN2.JPGただ、特殊任務を持つ少数部隊や、米空軍として保有アセット数が少ない部隊はこのサイクルを守ることが難しく、既に当該部隊の兵士がSNS上で「リセット期間のはずなのに、大量の任務に忙殺されている」等の不満をぶちまける事態となっており、完全にこの方式を適用することは容易ではなさそうです

米空軍は同時に、本格紛争における被害状況下の運用を想定し、戦力を分散して運用するACE(agile combat employment)構想を推進し、その重要なピースとして少ない兵士で戦力運用を継続するための「兵士の多能力化:multi-capable airmen」に着手し、基礎訓練期間(basic training)や応用訓練期間(advanced training)の改革にも取り組んでいるところです
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AFFORGEN4.jpg2023年には、米空軍の「new force generation plan : AFFORGEN」に関連する、取り組みや問題点を指摘する報道が増えそうですのでご紹介しておきます。

それから・・・、2022年11月に、従来は戦闘機パイロットのみが就いていた「空軍司令部作戦部長」ポストに、特殊作戦ヘリMH-53Jと統合部隊も含め特殊作戦部隊一筋の中将が推挙されましたが、背景には「AFFORGEN」を軌道に乗せたいBrown空軍参謀総長の意向が働いたとも言われています

戦力管理ローテーションのための人事とのうわさ
「仰天人事:空軍作戦部長に特殊作戦一筋の男が」
https://holylandtokyo.com/2022/11/18/3965/

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ロシアの大改良新型TU-160M2爆撃機開発前進!? [安全保障全般]

初飛行1981年TU-160の8割を更新の新造機M2型開発
2024-25年に運用開始し、27年までに10機体制
現有16機のTU-160も近代化改修してM2型へ
ほとんど実戦活躍が無かった同機の再生はあるのか?

TU-160M2.jpg1月10日付Defense-Newsは、プーチン大統領の強い押しで2015年から開発が始まった、TU-160の骨格をほぼそのまま活用しつつ、8割のシステムを新しくする新造機TU-160M2が、ツポレフ社傘下のMAC工場での2回目の試験飛行を終え、12月末にロシア国防省に引き渡され、今後更なる本格的な試験を経て2024-25年の運用開始と、2027年までの10機製造(当面の契約規模)に向けて前進していると報じました

ウクライナ侵略の当初計画が崩壊し、軍事面でも経済面でも苦境にあるロシアにおいて、今後の試験や部隊配備が順調に進むとは考えにくく、ロシア軍需産業とロシア国防計画が順調なことを示す「カラ元気」の可能性大ですが、隣国ロシアが極超音速兵器や核兵器を搭載する戦略爆撃機の動向ですので、ご紹介しておきます

TU-160M2 2.jpg初代TU-160はNATOで「ブラックジャック」と呼ばれ、米空軍B-1爆撃機を模倣したと言われる低空侵攻が可能な可変後退翼を持った超音速爆撃機ですが、B-1Bより一回り大きい機体と2倍弱のエンジン出力により、最大速度はB-1Bのマッハ1.25に対してマッハ2.05、航続距離はB-1Bを16%上回る14,000 km、最大搭載量はB-1Bの34tを17%上回る40tを誇った機体でした

試作機が1981年に初飛行し、1987年5月には2個飛行隊で運用開始しましたが、製造途中でソ連が崩壊し、試作機8機を含む35機しか生産されませんでした。特にウクライナは19機を保有していましたが、極めて複雑な構造から運用困難で放置され、後にロシアが8機買い戻した以外は使用されないまま廃棄される運命をたどっています

TU-160M2 3.jpgその後音沙汰がな途絶えていましたが、2005年頃からプーチン大統領が突然搭乗した映像が公開されたり、2007年に15年間中断されていた海外への遠距離偵察飛行に登場するなど、プレゼンスを再び示し始めました

それでも1987年の運用開始から実戦投入はありませんでしたが、2015年11月にシリアのアサド政権支援のため、他の戦略爆撃機とともに対ISの巡航ミサイル攻撃を行い実戦デビューを果たし、ロシア軍のウクライナ侵攻においても巡航ミサイル攻撃を行う様子が目撃されていたところです

TU-160M2 4.jpgTU-160の骨格を基にしたTU-160M2の開発は、2015年頃より表面化し、既存16機の近代化改修と合わせ50機程度の新造機Tu-160M2を開発製造する構想をロシア国防相が同年発表し、2018年1月に10機の新造TU-160M2製造契約をツポレフ社傘下のUACと締結していました。

開発UACで2022年1月と12月に試験飛行を行い、報道された露国防省への引き渡しとなっていますが、今後は企業が確認した基本性能を露空軍部隊で確認し、更に作戦運用を想定した北米や諸外国周辺空域への長距離飛行や低空での作戦行動試験、更には極超音速兵器などの兵器発射試験も行われる予定だそうです

M2型機は現有16機のTU-160の8割の搭載システムや装備を更新するほか、エンジンも新しいNK-32-02にして飛行試験で引き続き確認していくとのことです
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TU-160M2 5.jpg2024-25年には運用開始し、2027年までに10機を新造し、既存機16機のアップグレード改修機も含め50機体制を目指すとのことですが、ロシア経済大混乱の中、今後忘れた頃に報道されると予想されるTU-160M2運用開始の知らせを待つことといたしましょう。

プーチンが好みそうな威圧感ある機体ですが、長射程ミサイルを搭載するとは言え、BWB(blended wing body aircraft)形状に近い機体とは言え、ステルス性がB-1Bよりはるかに劣る大きな機体であり、今後の運用法にも注目したいところです

TU-160やM2型機に関するウィキペディア情報
https://ja.wikipedia.org/wiki/Tu-160_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F) 

TU-160登場の記事
「ロシアTU-160爆撃機が南アフリカ展開」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-22
2018年にも南米ベネズエラへ飛行

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嘉手納にドイツから米空軍F-16展開 [米空軍]

(追記)16日に8機、その後追加で4機到着の模様
撤退開始したF-15戦闘機の穴埋めに一時的な展開
昨年11月展開の8機のF-22と共にプレゼンス維持

F-16 Spangdahlem6.jpg1月16日、ドイツのSpangdahlem空軍基地に所在する米空軍第52戦闘航空団のF-16戦闘機が、嘉手納基地に展開しました。

2022年11月1日から、機体老朽化を理由に約2年間で段階的な米本土への撤収を開始している同基地F-15戦闘機部隊(48機)の一時的な穴埋め戦力で、F-15の後釜戦力が未定の中で、対中国最前線の沖縄での米空軍プレゼンスを維持するためのローテーション派遣と考えられます

F-16 Spangdahlem.jpgこの戦闘機展開に関する声明文で米空軍は、何機のF-16がドイツから展開したか、またいつまで展開するのか言及していませんが、「F-16戦闘機の展開は米空軍のアジアインド太平洋戦略に基づくものであり、同戦闘機の嘉手納での運用開始に伴い、その特徴を生かしつつ、嘉手納チームと一体となって同地域の平和と安定を脅かす攻撃的な行動を抑止し、いざとなればその脅威を打ち負かすであろう」と発表しています

昨年10月末に嘉手納F-15の撤退開始発表時、米空軍は「アジア太平洋正面での戦力向上は最優先課題であり、嘉手納航空アセットの高性能機種への転換は、日米同盟の強固な基盤の上で態勢を強化することへのコミットメントの事例である」と決意を表明していますが、米共和党などからF-15撤退決定に強い反発の声が上がり、有力上院議員等から国防省に対し、今後の対中国正面への戦力展開計画と中国の弾道ミサイル脅威を見据えた地域の対処計画を報告するよう厳しい追及が続いています

F-16 Spangdahlem4.JPG米空軍は嘉手納F-15の撤退開始発表後、11月4-5日にかけアラスカ配備のF-22を8機嘉手納に展開させ、中国正面へのコミットメントが揺ぎ無いことを示し、更に今回欧州ドイツからF-16を派遣して様々な懸念の声に対応しているところです。(現在もF-22が嘉手納に展開中なのかは不明)

本展開についてRAND研究所のDavid Ochmanek上席研究員は、Military.comの取材に応え、「ドイツ基地から嘉手納基地への戦闘機移動ではあるが、ロシアによるウクライナ侵略が継続する中で、欧州米空軍戦力を削減することを意味するものではないだろう。欧州には絶えず米空軍アセットが交代で派遣されている」とコメントしていますが、

F-16 Spangdahlem5.jpgさらに突っ込んで、「F-16やF-22展開は嘉手納にとって力の近代化であるが、どの機種の有人機が嘉手納に派遣されようが、中国の弾道ミサイル攻撃から在日米軍基地を守れるのかとの大問題が無視されてはならない」、

そして、「F-15でも16でも22でも、中国のミサイル攻撃に対しては極めて脆弱であり、何が派遣されようがあまり興味はない。嘉手納だけでなく、地域全体の米軍の体制を、この中国脅威を前にしてどうするのかを知りたい」と米空軍や米軍全体の姿勢を問いただしています
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これ以上何も申し上げることはありません。上記最後の一文がまんぐーすの一番の関心事項でもあり、自衛隊にも向けられた「古くて新しい大きな課題」です

嘉手納基地からのF-15撤退関連
「第1陣の8機米へ帰還」→https://holylandtokyo.com/2022/12/06/4021/
「米空軍幹部発言から大きな流れを学ぶ」→https://holylandtokyo.com/2022/11/09/3904/
「衝撃、11月1日から段階的撤退」→https://holylandtokyo.com/2022/10/31/3817/
「嘉手納でelephant walk」→https://holylandtokyo.com/2022/11/25/3981/

CSISやCSBAの台湾への提言:非対称戦略へ
「CSISが台湾軍に非対称戦術を迫る」→https://holylandtokyo.com/2023/01/16/4160/
「CSBAは2014年に同要求」→https://holylandtokyo.com/2020/11/08/381/

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レポート:宇宙軍は衛星のSM&L(機動とロジ)重視を [サイバーと宇宙]

衛星のSM&L:Space Mobility and Logistics
機動:衛星能力を維持しつつ宇宙での位置を変える
ロジ:機能点検、修理、給油、機能増強など

Space SM&L.jpg1月5日Aerospace Corporationが米宇宙軍への政策提言レポートを発表し、宇宙軍も重要性を当初から理解しているものの、技術的な壁等から実質未着手の「衛星のSM&L:Space Mobility and Logistics」分野、つまり「衛星や宇宙船に機動性を持たせ、状況対応力や強靭性を高める」ための軌道上の衛星の機動性確保(つまり移動用燃料補給)や衛星への補給支援(軌道上での点検、修理、給油、能力向上)に、民間活用と民間サービス応用導入と軍独自投資開発等の複数アプローチを選択して取り組むべきと提言しています

「衛星のSM&L」は、宇宙軍が2020年6月発表の最初の文書「Spaceopower」でも、核となる5つの重要分野の一つと記述しているテーマですが、打ち上げ重量の制約の中で技術的ハードルも高く、宇宙軍創設から現在までの数年間は「運用部隊も運用部隊も関連取得計画もなかったし、機会もなかった」と認める状況にある分野だと、「Enabling a New Space Paradigm: Harnessing Space Mobility and Logistics」とのレポートは表現しています。

Space SM&L2.jpg衛星や宇宙船に機動性を持たせ、状況対応力や強靭性を高めるに必要不可欠な要素の「衛星のSM&L」ですが、現在の衛星は限定的な推進燃料しか搭載されておらず、かつ燃料補給を受ける設計にもなっていないため、慎重な推進燃料使用を心がけているようですが、衛星が搭載する高価な機材が機能しているのに、推進燃料を使い果たして軌道上に浮かんでいるだけの状態になるのが大部分のもようです

もちろん推進燃料の搭載量を増やす検討もあったようですが、打ち上げ重量制約の範囲で、厳しい宇宙環境に耐える主任務機材の信頼性を確保するために重量がかさみ、燃料搭載量は抑えざるを得なかったのが現在の状況です

Space SM&L3.jpg「SM&L」の「SM:Space Mobility」に直結する推進燃料補給以外にも、「SM&L」の「L:Logistics」に該当する衛星への補給支援(軌道上での点検、部品確保、修理、能力向上)も取り残された重要課題であり、同レポートは「SM&L」の課題を以下の6つに整理し議論しています

なお、「Materiel Logistics」は「衛星等の維持に必要な部品等を宇宙空間に事前集積&保管すること」、「Client Augmentation」は「軌道上の衛星のアップグレードと修理」、「Active Debris Mitigation」は「デブリを破棄するために軌道変更すること」と説明されています

• Inspection
• Orbit Modification
• Materiel Logistics
• Refueling
• Client Augmentation
Active Debris Mitigation

Space SM&L4.jpgレポート執筆者はこの「SM&L」改善を通じて「衛星や宇宙船に機動性を持たせ、状況対応力や強靭性を高める」ために、上記6つの各項目の特性や民間市場での自律的発展可能性を踏まえ、4つのアプローチ(参加Participant, 既存サービス調整導入Customized, テナント参加Anchor Tenant, and 自立開発運用Owner)を米宇宙軍は選択して取り組むべきと提言しています

6日付米空軍協会web記事のまとめによれば、6項目の最初の4項目については、民間衛星での需要もあることから、民間企業が進める技術開発とサービスから、打ち上げ能力、宇宙での事前配置されたリソースとデポなど、資材ロジスティクス能力を活用でき、また衛星ライフサイクルのさまざまな段階で衛星軌道を変更することが可能だと同レポートは分析しています

Space SM&L5.jpg一方で、デブリの軽減とクライアント増強 (軌道上衛星の能力向上や修理) には、そのような機能開発や展開に、宇宙軍による多くの特設投資が必要になる場合もあると主張し、いずれにしても、米宇宙軍を21世紀の戦略環境にふさわしい宇宙戦闘部隊に発展させるには、「SM&L」検討&導入が不可欠だと同レポートの筆者3名は訴えています
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Aerospace Corporationの同レポート紹介webページ
https://csps.aerospace.org/papers/enabling-new-space-paradigm-harnessing-space-mobility-and-logistics

引き続き、宇宙ドメインについては基礎知識不足を「露呈しぱなっし」のまんぐーすですが、「SM&L」との用語など、小さなことからコツコツと学んでいきたいと思います。

末尾に紹介しております、ブログ「東京の郊外より」支援の会へのサポートについても、年初に当たり改めてご検討をお願い申し上げます

衛星に機動性を求める米国防省の取り組み
「小型衛星核推進装置を求め企業募集」→https://holylandtokyo.com/2021/09/28/2233/
「核熱推進システム設計を3企業と」→https://holylandtokyo.com/2021/04/20/111/
衛星の延命や機動性付与技術
「衛星用の熱核推進システム推奨」→https://holylandtokyo.com/2022/01/27/2622/
「衛星延命に企業と連携」→https://holylandtokyo.com/2021/11/10/2350/
「画期的:衛星が推進力衛星とドッキングで延命へ」→https://holylandtokyo.com/2020/02/28/839/

「米国防省が国防宇宙戦略を発表」→https://holylandtokyo.com/2020/06/23/629/

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米陸軍は2023年極超音速兵器配備までに2回試験 [Joint・統合参謀本部]

2023年末の部隊配備までに陸軍と海軍の共同試験を

LRHW4.jpeg1月1日付Defense-Newsによれば、米陸軍の迅速能力造成室長(Rapid Capabilities and Critical Technologies Office)Robert Rasch中将が、予定している米陸軍部隊への2023年末極超音速兵器の配備前に、時期は非公表ながら陸海軍共同での同兵器のフル装備試験を2回実施すると語った模様です

LRHW.jpg極超音速兵器の陸軍と海軍の共同開発は、陸軍が両軍共用の「hypersonic glide body」を担当し、海軍が「two-stage hypersonic missile booster」開発を担う形で、3年前くらいから加速していましたが、2020年初めにハワイでの試験に成功したものの、2021年後半にはmissile booster試験に失敗し、2022年6月に仕切り直し試験で成功していたところです

更に過去にさかのぼると、10年前に米陸軍は極超音速兵器の基礎試験に成功していますが、一端陸軍は技術的ハードルと必要資金難から開発を中止しています。それでも5年ほど前から陸軍独自に開発を再開しましたが、進捗が芳しくなく、国防省の仲立ちで海軍と協力体制を組んで今日に至っています

LRHW3.jpg2021年5月には、ワシントン州の米陸軍第1軍団に極超音速兵器(LRHW:Long-Range Hypersonic Weapon:通称「Dark Eagle」)の受け入れ部隊が編成され、実ミサイルを除く地上機材や模擬ミサイルキャニスター等を受領し、2023年運用開始に向け、本格的な試験や部隊運用の細部手順検討に向けた準備を開始しています
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陸軍と海軍は、地上や艦艇や潜水艦から「初速ゼロ」で極超音速兵器を発射する共通点があり共同開発していますが、空軍は戦闘機や爆撃機から空中発射することから独自に開発を目指しています。

LRHW5.jpg地上から発射する米陸軍が、2023年末の部隊配備予定で最も先行していますが、米海軍艦艇搭載は早くても2025年、潜水艦への配備は2028年以降となるのが現時点での見積もりで、米空軍は2028年頃に戦闘機搭載型HAWCのプロトタイプを開発製造して正式導入やその規模を判断する模様です

極超音速兵器はロシアや中国が開発&配備面で先行し、米議会等から矢のような催促が国防省や米軍にあるようですが、「中国と米国では、同兵器の位置づけが異なる」とKendall空軍長官が指摘しているように、高価な同兵器の開発に成功しても、その配備や使用先は限定されるとの指摘にも留意する必要があります

米軍の極超音速兵器開発
「迎撃兵器開発を2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/
「米潜水艦配備は2028年以降」→https://holylandtokyo.com/2021/11/26/2450/
「陸軍部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holylandtokyo.com/2021/10/18/2342/
「米空軍が3度目の正直でHAWC成功」→https://holylandtokyo.com/2021/09/30/2281/
「最近の状況&米海軍が2段目ロケット試験成功」→https://holylandtokyo.com/2021/08/30/2169/
「米艦艇搭載は2025年頃か」→https://holylandtokyo.com/2021/07/30/2037/
「豪州とも協力」→https://holylandtokyo.com/2020/12/10/340/
「今頃学会と情報収集枠組み」→https://holylandtokyo.com/2020/11/04/378/
「3月の極超音速兵器テストは誤差20㎝」→https://holylandtokyo.com/2020/10/16/434/
「3軍協力で極超音速兵器開発」→https://holylandtokyo.com/2020/08/21/530/
「ボディー試験に成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-22
「空軍開発本格化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-16
「攻防両面で超超音速兵器話題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-08-1
「防御手段無し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-21-1
「宇宙センサー整備が急務」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31

米空軍と国防省の同兵器開発の対立
「米空軍が戦闘機搭載型HAWC契約」→https://holylandtokyo.com/2022/12/27/4090/
「3回連続ARRW成功」→https://holylandtokyo.com/2022/12/16/4061/
「空軍:高価な同兵器は少数保有で」→https://holylandtokyo.com/2022/02/22/2742/
「国防省が空軍に改善提言」→https://holylandtokyo.com/2022/02/10/2670/
「国防次官:同兵器は最優先事項だ」→https://holylandtokyo.com/2022/01/26/2649/
「空軍長官:重要性は中国と米国では異なる」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/

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CSISが台湾軍に非対称戦術を迫る [安全保障全般]

戦闘機VS戦闘機や艦艇VS艦艇の戦いはあきらめよ!
台湾海空軍は対称戦を捨てろ。小さな米軍を目指すな
非対称な戦い「ヤマアラシ戦略:porcupine strategy」を
高価で豪華だが脆弱な装備追及を止めろ!

taiwan defense4.jpg先日ご紹介したCSISによる台湾有事Wargameレポート(1月9日発表:中国による台湾侵攻)は、台湾が早期に降伏しないとの前提で、日米が協力して精力的に支援すれば、中国の侵略企図は破砕できるが、台湾経済は壊滅的な被害を受け、米軍は空母2隻と数十隻の艦艇や数百機の航空機を数千人の兵と共に喪失し、長期にわたり世界の指導的役割を果たせなくなるとの厳しい現実を突きつけ話題となりました。

本日は同レポートの中から、CSISが台湾軍に求めた軍装備体系の大改革に関する部分(123-125ページ)を取り上げ、陸軍を最優先せよ、弾薬や装備品は紛争開始前に台湾に備蓄しておけ(ウクライナ方式の侵略後提供は不可能)、そして台湾海軍や空軍は高価ながら有事に役に立ちそうもない艦艇や戦闘機調達を止め、移動式の対艦ミサイルや対戦車ミサイルや防空ミサイルや地雷などを最優先し、非対称な戦いで長期持久を図れるような装備体制変革を直ちに推進せよと訴えた部分をご紹介します

taiwan defense.jpgCSISは、以前から多数の研究が台湾に非対称戦体制への変革を迫っているにもかかわらず、台湾政府や台湾軍により変革がとん挫している現状を踏まえ、米国に対し「アメとムチ」を駆使して台湾軍改革を進めるよう強く迫っていますが、日本の自衛隊にも程度の差はあれ台湾軍と同方向の変革が必要なことは、2010年5月のCSBA「エアシーバトル」レポート当時から明確ですので、「喉元に刃を突きつける」気持ちでご紹介いたします

2010年5月のCSBA報告書の解説
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「2CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20
「3CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20-1
「4CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21
「5CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21-1
「6CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24
「最後CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-30

元祖ASB:CSBAの報告書
「ASBの背景:対中国シナリオ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-30

CSISの台湾軍への提言部分(123-125ページ)より

ウクライナ方式は通用しない
taiwan defense2.jpg●ウクライナでは、ロシアの侵略開始後に、西側からウクライナへの兵器や装備品提供が始まり、現在も継続して可能であるが、台湾ではこのウクライナ方式は通じない。ロシア軍と異なり、中国軍は台湾への補給物資輸送を阻止する能力があることから、侵略開始前に必要な装備や弾薬を台湾が保有している必要がある
●米国は、遅れている台湾へのFMS装備提供を加速前倒しし、台湾も自身で製造可能な多様な弾薬調達を急ぎ、中国による侵略開始前に必要量を確保しておく必要がある

台湾陸軍に対して
taiwan defense3.jpg●台湾陸軍が必要な質や能力を保有しているか不明確(怪しい)であるが、戦力差からして中国軍を台湾上陸前に撃破することは不可能であり、中国軍上陸部隊に台湾沿岸部で粘り強く抵抗することが不可欠であることから、これが可能なように、急いで台湾陸軍の効率性や残存性を高める必要がある。台湾軍は陸軍強化を最優先すべきである
●台湾は山脈や河川により地形が複雑であり、これを最大限に活用して戦いを長引かせ、中国軍に消耗戦を挑むべきである。台湾主要都市の防衛は大きな被害を生むが、都市を失うことは中国側の作戦を容易にしてしまう

台湾海軍や空軍に対して
taiwan defense5.jpg●歴史的に台湾軍は、米軍の小型版を目指すように多様な装備を導入し、大型水上艦艇や最新戦闘機、更には潜水艦や地上装備を現在も追求し、戦闘機470機、水上艦艇26隻、潜水艦4隻等を保有している。
●このような装備は、まだ中国軍が弱体であった当時には、台湾の能力を誇示して中国侵略を抑止するには意味があったかもしれないが、中国軍が急速にミサイル部隊や海空軍戦力を増強した今となっては、現在の対称戦を想定した戦力構成(symmetrical capabilities)は不適切である

●有事になれば、台湾海軍水上艦艇は中国艦艇部隊にほとんどダメージを与えることなく壊滅するであろうし、残存性の高い潜水艦もわずか4隻では継続的な海洋戦力とはならない
●台湾空軍も、中国軍のミサイル部隊を前に台湾海軍と同様に極めて脆弱であり、強固な地下シェルターに格納されて中国ミサイル攻撃を生き残る可能性のある僅かな戦力では、ほとんど戦い全般に貢献できないだろう

taiwan defense7.jpg●我々のWargame結果が有効性を示した非対称な戦いを追求する「ヤマアラシ戦略:porcupine strategy」では、台湾軍が「艦艇VS艦艇」や「戦闘機VS戦闘機」の戦いでは中国軍に対抗できない現実を踏まえ、台湾軍が高価で脆弱な通常兵器よりも、機動性や隠密性を備えたJavelin対戦車ミサイルやStinger携帯防空ミサイルなどへの重点投資を求めている
●このような結論は他の多くの台湾軍事戦略への研究提言と方向を同じくするもので、最新の軍事バランスに当てはめても一貫している。この非対称戦略では、台湾海軍に大型艦艇よりも安価な、沿岸防衛用の移動式対艦巡航ミサイル、機雷、小型対艦ミサイル搭載ボート、機雷敷設能力強化に投資するよう強く求めている。空軍には移動式防空ミサイルの充実など。

●特に、例えば台湾に提供予定で未到着の地上発射ハプーン対艦ミサイル400発などは、今回のWargameで死活的に重要であることが示されており、200発追加することで政治的リスクや兵站補給の課題などを局限しながら極めて大きな追加効果を上げることが示されている。MLR or MDTFシステム等と同様で高い効果を上げる。

taiwan defense8.jpg●ただし、このような非対称戦型への変革、つまり「ヤマアラシ戦略:porcupine strategy」追求は、当時のLee Hsi-Min台湾軍参謀総長により2017年にまとめられているが、その後の台湾軍幹部はこの構想導入に消極的なままである
●今日の脅威環境を踏まえれば、「アメとムチ」の組み合わせで台湾軍改革を推進させることに、強い決意をもって米国は望むことが不可欠である
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CSISレポートの台湾軍への提言部分(123-125ページ)は分かり易い英語で書かれており、116ページからの他の提言部分と合わせ、一度目を通してはいかがでしょうか。

taiwan defense6.jpg2014年12月にCSBAが発表した台湾軍戦略への提言レポートと共通する部分が多く、「古くて新しい」指摘です。繰り返しになりますが、2010年5月にCSBAが提案した「エアシーバトル構想」で示された日本への提言も、未だに「古いが新しい」提言であると認識すべきです。特に依然として戦闘機命派が牛耳る航空自衛隊にあっては・・・

CSISの同レポート紹介webページ
https://www.csis.org/analysis/first-battle-next-war-wargaming-chinese-invasion-taiwan
CSISレポートの現物(165ページ!)
https://csis-website-prod.s3.amazonaws.com/s3fs-public/publication/230109_Cancian_FirstBattle_NextWar.pdf?WdEUwJYWIySMPIr3ivhFolxC_gZQuSOQ

インパクト強烈なCSISレポート・台湾有事で日本も・・・
空母2隻・数10隻の艦艇と数百機の航空機喪失、台湾経済大打撃・米軍の影響力当面喪失危機
「台湾有事のWargame結果を異例公開」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/

旧態然とした台湾軍の問題は根深く、対中国に向けた政府主導の軍改革も、国防省や軍幹部や軍OBの抵抗で進まず、時間的余裕もない現状。日本にも通じる米国専門家指摘の問題点を確認
https://holylandtokyo.com/2023/01/04/4103/

CSBA提言の台湾新軍事戦略に学ぶ
まとめ→https://holylandtokyo.com/2020/11/08/381/
その1:総論→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27
その2:各論:海軍と空軍へ→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27-1
その3:各論:陸軍と新分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27

2010年5月のCSBA報告書の解説
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「2CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20
「3CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20-1
「4CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21
「5CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21-1
「6CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24
「最後CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-30

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沖縄海兵隊の主力旅団が縮小改編MLRへ [安全保障全般]

2+2で合意:3200名規模から2000名規模へ
海兵旅団から軽快な「海兵沿岸旅団MLR」へ
宇宙分野での連携強化も合意し岸田首相訪米準備

MLR4.jpg1月11日、ワシントンDCで日米2+2が開催され、13日の岸田首相とバイデン大統領との会談を前に、宇宙分野での協力強化に加え、在沖縄海兵隊で3200名規模の「第12海兵旅団」を縮小しつつも対中国作戦により適合した「第12海兵沿岸旅団:MLR:Marine littoral regiment」に2025年までに改編することに等に合意したと発表されました

「海兵沿岸旅団:MLR:Marine littoral regiment」の創設は、対中国など本格紛争に対処可能な将来米海兵隊への変革方針を示した2020年3月米海兵隊発表の「Force Design 2030構想」で明らにされ、アジア太平洋地域に3個設けることとなっています。

MLR3.jpgMLRを生み出した同構想は、戦車部隊の廃止、歩兵部隊や回転翼部隊の削減、総兵数の削減、ロケット部隊や対艦部隊や無人システムの増加や電子戦の強化などを柱に、小規模だが軽快な部隊に再編し、海軍と連携し制海に力点を置く将来海兵隊の姿を描いたもので、他軍種にも大きなインパクトを与える大きな方向転換を明確にしたものでした

同構想発表時には、日本に最初のMLR設置とDavid Berger海兵隊司令官が述べていましたが、地元調整のむつかしさ等から(推測)、まずハワイに第3MLRが最初に創設され、2023年9月の態勢確立に向け訓練中です

MLR5.jpgMLRは、従来の海兵旅団が歩兵や戦車や火砲中心だったのに対し、中国などのミサイル射程内の厳しい環境下「contested maritime spaces」で自己防御を図りつつ、機敏に移動しつつ敵艦艇や敵上陸部隊を攻撃するより軽快な部隊編成を目指し、対艦ミサイル部隊や防空部隊やISR部隊や兵站支援部隊を中心に構成される模様で、ハワイの第3MLRが試行錯誤を行っています

またMLRに関する報道では、「戦闘が始まれば中国が海空で優勢になる可能性が高いが。戦力を追加で投入できるようになるまでの間、最前線の部隊がいかに相手の侵攻を食い止めるかがカギを握ることになり、MLRにはその中心的な役割が期待される」とか、「小規模なチームに分散して各離島へ展開し、敵からの攻撃をかわしながら相手の艦艇や航空機の進出を食い止め、制海権の確保を目指す」と紹介されています

MLR2.jpgただ各種報道はあまり触れていませんが、現在の3000名以上規模から2000名弱規模に縮小されることは事実で、「軽快さや分散行動や機動展開の容易さ」を追求するとは言え、中国のミサイル射程内の危険な地域に戦力を置いておけないとの軍事的合理性に基づく判断とも言えます。在沖縄海兵隊の総兵力は変わらないとの、思慮深い配慮に基づくよくわからない説明は日米両政府からなされていますが・・・

ハワイで準備中の先輩部隊第3MLRの状況
(2022年8月の記事より)
●同年2月に対空監視から味方部隊の航空管制までも担当する「対空大隊」を編成し、6月には攻撃能力を担う「第3沿岸戦闘チーム」や文字通りの「戦闘兵站大隊」が再編成され、RIMPACでも訓練に参加
MLR.jpg●2023年9月の態勢確立に向け、軽着上陸用艦艇の「stern landing vessel」や、長距離運航が可能な「unmanned surface vessel」導入がカギとなるが、無人艦艇導入チームが同年夏から検討を開始。
●同年秋には、打撃力強化の柱「Medium Missile部隊」が編成予定で、「stand-in force」の準備が進んでいる
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宇宙分野での協力強化については、米国の日本に対する防衛義務を定めた「日米安全保障条約第5条」が宇宙空間も適用対象になりうることを2+2で確認しています。これは露のウクライナ侵略が宇宙ドメインで始まっていた最近の事例を踏まえると重要な一歩だと思います

「反撃能力」「敵基地攻撃」に関しても協力強化へ・・・。どこを攻撃すればよいのか、日本のISR能力では特定できないでしょうから・・・

CSISの強烈インパクトのレポート発表が1月9日で、日米2+2が11日で、日米首脳会談が13日との美しい流れになっています

米海兵隊の主力海兵旅団の改革
「ハワイで創設のMLR部隊」→https://holylandtokyo.com/2022/08/19/3546/
「米海兵隊のstand-in force構想」→https://holylandtokyo.com/2022/05/25/3264/
「MLRを日本にも」→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/726/
「Force Design 2030構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25

CSISの強烈インパクトのレポート発表
「台湾有事のWargame結果を異例公開」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/

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カナダが正式に88機F-35A導入発表 [亡国のF-35]

初度4機を2026年に、2032年までに全機を
寒冷地での運用実績やサプライチェーン安定を受け

Canada F-35.jpg1月9日、カナダのAnita Anand国防相は、CF-18戦闘機の後継としてF-35を第1候補にすると2022年3月に発表してところ、88機を2032年までに調達する過去30年間でカナダ空軍最大の投資案件になることを正式に決定したと発表し、2026年に4機、27年に6機、28年に6機を当面導入予定だと明らかにしました

また、F-35導入決定が遅れたことで138機保有のCF-18の維持が困難になっていることに関し同女性国防相は、豪州から導入決定している中古FA-18と現有CF-18の延命アップグレードにより、F-35導入完了2032年までの間に戦闘機不足に陥らないよう対応すると説明しています

Canada F-35 3.jpgカナダは8か国の「共同開発国」としてF-35開発開始当初から参画していましたが、策士であるトルドー首相の下、F-35共同開発国ながら同機の開発遅れや価格高騰を理由に購入決定を延期し続け、「つなぎ戦闘機」として豪空軍中古F-18購入まで決断していましたが、2018年頃から複数機種を候補に「情勢をしっかり見極める機種選定」を再開し、2022年3月に「F-35を第1候補、グリペンを第2候補に指定し、F-35で価格交渉がとん挫すればグリペンにする」と「粘り腰」発表していたところです

この「情勢をしっかり見極める機種選定」を振り返り同国防相は、「F-35はこの間に成熟した。サプライチェーン問題も懸念はなく、カナダは同機が期限内に納入されると確信し、CF-18退役を進められると判断した」と述べ、更にカナダ特有の寒冷地運用の懸念に関しても、ノルウェーや米軍アラスカでの運用実績が懸念を払しょくし、北極圏でのドラッグシュート運用や「磁北でなく真北での運用」にも取り組んでいくと説明しています

Canada F-35 2.jpgまた同国防相は具体的なカナダでの運用&訓練拠点基地に関し、ケベック州のBagotville基地とアルバータ州のCold Lake基地を計画していると明らかにしました

F-35導入に関連する国内産業への恩恵について、既に共同開発国としての参画で約4000億円規模を確保し、今後25年間は3300もの雇用を生み出すとし、その数値はさらに拡大するだろうと期待を同国防相は表明しています
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Canada F-35 4.jpg価格交渉も想定内で収まり、サプライチェーン問題にも懸念は無いとの発表ですが、F-35の維持費高止まりやエンジン問題などに改善変化が全くない中ですので、種々の国際情勢を総合的に勘案した「政治的決断」と理解するのが適当でしょう

ロッキード社はカナダの発表に併せ、現時点でF-35戦闘機は既に890機以上が9か国の27基地で運用されているとアピールしています。

F-35導入を決定した国(カッコ内は購入予定機数)

●共同開発国(8か国)
豪州(100機), Denmark(27), Italy(90), Netherlands(37), Norway(52), 英国(138)、米国(2443)(空軍1763、海兵隊420、海軍260)、そしてカナダ(88機)
トルコも共同開発国ながら、ロシア製SAM購入で排除された

●FMS購入国(9か国)
Belgium(34機), Israel(19), 日本(42+100) , 韓国(40)、シンガポール(当面12機 最終的に約50機) ポーランド(32機 2020年1月)、スイス(32)、そして、フィンランド(64機)、ドイツ(最大35機)、そして検討中なのがチェコ(24機)

策士トルドー首相カナダ選定の紆余曲折
「F-35を第1候補に決定」→https://holylandtokyo.com/2022/03/31/3061/
「仕切り直し再開か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-11-03
「カナダが中古の豪州FA-18購入へ!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-10
「痛快:カナダがF-35購入5年延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-23
「カナダに軍配:旅客機紛争」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-28
「米加の航空機貿易戦争に英が参戦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-16-1
「第2弾:米カナダ防衛貿易戦争」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-04
「5月18日が開戦日!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-20

「ノルウェーがF-35を領空保全任務に」→https://holylandtokyo.com/2022/01/12/2598/

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

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https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

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