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その3:米空軍改善提案コンテスト最終候補 [米空軍]

軍曹2名の提案が国防省全体を巻き込むインパクト
空軍士官候補生1名による提案にもご注目

Project FoX3.JPG3月4日に開催された毎年恒例「米空軍改善提案コンテスト:Spark Tank competition」でプレゼンされた最終候補6件をご紹介するシリーズの第3弾で最終回。

米空軍の前線部隊で勤務する中堅クラスをリーダとして提案される改善提案から、米軍部隊が直面する課題やそれに立ち向かう動きや考え方を知ることで、米軍の今を考えます

本日ご紹介するのは、前線部隊の軍曹2名がチームリーダーの「不便な展開地での燃料と水輸送負担の軽減アイディア」と、士官候補生1名による提案「無人機を輸送機で空中けん引して航続距離拡大」です。

軍曹2名のチームのアイディアはシンプルですが、その基本コンセプトがDARPAや各所を巻き込み大きなプロジェクトになろうとしているとの興味深い事例です

辺鄙な前線部隊での燃料と水輸送負担を軽減する提案

Project Arcwater.jpg●Brent Kenney上級軍曹とMatthew Connelly2等軍曹(ドイツ第52戦闘航空団)がチーム長の「Project Arcwater」
●米空軍では本格紛争に備え、戦力を分散運用するACE構想を推進しているが、分散展開先への装備品、燃料、水、食料等の輸送備蓄が大きな問題。どれも削減不能な要素であるが、特に燃料と水の輸送所用が大きく課題となっている

●「Project Arcwater」のアイディアは極めてシンプルな改革案。まず高性能の太陽光発電パネルの導入(月の光でも発電が継続可能なレベル)、次に高性能な除湿器による前線での水確保(展開先の自然水と合わせて必要量確保)、そして前線部隊の規模に応じた小型発電機の導入による燃料消費量の削
●軍曹2名は市販品レベルで改善効果を試算し、高性能の除湿器で1日に100リットル以上が確保でき、自然水を合わせれば1日に1000リットル確保もそれほど困難でないと試算した。また部隊規模に応じた小型発電機導入で燃料消費量を1/15に削減可能と提案した

Project Arcwater2.jpg●この「コロンブスの卵」的提案は大きな反響を呼び、DARPAをはじめ多くの組織が協力を申し出たり独自検討を深化を進めている。軍曹2名は「Spark Tank」でのプレゼンで資金確保を求めているのではなく、この取り組みを米空軍や米軍のしかるべき組織のしかるべき士官の下で発展させる体制づくりを希望している


無人機を輸送機で空中けん引して行動範囲拡大
 
空軍士官候補生1名による提案
WW2当時のけん引輸送グライダーにヒントを得て
価値特許も申請中

Aerial Tow Rehookup.jpg●空軍士官学校のGrant Schlichting候補生単独での提案「Aerial Tow Rehookup—Novel Range Extension」
●無人機の用途拡大が様々に検討される中、その行動範囲の拡大は重要な課題だが、現在の空中給油は複雑な作戦運用や計画が必要であり、1回の給油量も2000ポンド程度に限定される

●そこで、飛行中の輸送機から伸ばしたけん引ロープの先に取り付け、無人機がロープと結合できるフック「Aerial Tow Rehookup」の制作を思いついた。空軍士官学校の風洞や研究施設を利用して2年間をかけて開発し、仮特許も申請している
Aerial Tow Rehookup2.jpg●同候補生は更なる半年間の研究と試験実施のため、約1.4億円の資金提供を求めている。ただ申請が認められなくても、彼は米空軍の開発拠点の一つであるエドワーズ空軍基地で同フックの開発と試験を続け、その後に卒業後はパイロットコースに進みたいと考えている

●なお、「Spark Tank」の最終候補に士官候補生が残るのは2019年以来で、その際は気象予報を支援するソフト開発を提案していた
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これまで2022年「米空軍改善提案コンテスト:Spark Tank competition」でプレゼンされた最終候補6件をご紹介してきましたが、無人機や3DプリンターやGameやスマホアプリ開発技術など、民生技術を軍事の世界に取り込んで有効に活用する提案が評価されています

Spark Tank.jpgカーター国防長官時代から、国防省主導で民間スタートアップ企業の技術を軍事利用する試みが始まっていますが、民間組織の管理や対象の見極めが難しく、なかなかうまくいっていない中、草の根の提案が組織を活性化させることを期待したいと思います

でも個人的には、本日ご紹介した軍曹2名の「Project Arcwater」に魅力を感じます。兵站支援分野の細かな効率性は、前線で汗を流す兵士しか肌間隔でつかんでおらず、そんな中から生まれた提案が「コロンブスの卵」とは痛快です

なお3月4日の発表会では、外部有識者による審査チームが「Project Arcwater」を最優秀提案に選出したようです。

どの提案の紹介も十分ではなく、読者の皆様も消化不良気味かもしれませんが、細部については「https://www.afwerx.af.mil/spark-tank.html.」をご覧ください

米空軍改善コンテスト最終候補6件をご紹介
「無人機で血液輸送&操縦者酸素マスク改善を3Dで」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-25
「Gameでリーダー教育&戦闘機ソフトをスマホ手法で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-26

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その2:米空軍改善提案コンテスト最終候補 [米空軍]

米空軍の教育に「Game」を
Gameと呼ぶな、「Simulators」だ

Spark Tank 2.jpg3月4日に開催された毎年恒例の「米空軍改善提案コンテスト:Spark Tank competition」に進出した最終候補6件をご紹介するシリーズの第2弾。

米空軍の前線部隊で勤務する中堅クラスをリーダとして提案される改善提案から、米軍部隊が直面する課題やそれに立ち向かう動きを考え方を知ることで、米軍の今を考えます

本日ご紹介するのは、「Gameを使用して意思疎通、リーダーシップ、チームワーク、意思決定を学ぶ」提案と、「スマホアプリ開発の手法で戦闘機ソフト開発&改修を」です。

Gameでリーダーシップを学ぶGame「DAGGER」

DAGGER.jpg●米空軍大学のMatthew Correia氏をリーダーとするチームによる提案
●パイロット教育に「Simulators」教育は不可欠な要素となっているが、基本的には若者に人気の「Game」であり、他の米空軍の技能習得にも応用できるはずである

●最近米空軍が「新たなリーダーシップに求められる資質:new Airman Leadership Qualities」を導入したことを受け、この普及教育用の「Simulators」として、ロールプライングGameを使用することを思いついた
●米空軍大学では、課程を履修した者誰もが忘れられない「一連の障害物コースを仲間と共に協力し、リーダーシップを発揮して乗り越える科目」が組み込まれているが、これをGameで提供する手法に取り組んでいる

Spark Tank.jpg●この「DAGGER」と名付けたGameは、ネット環境があればどこからでも利用でき、世界各国の様々な赴任場所にいる同僚とチームを組んで学びの場に参加できる
●意思疎通、リーダーシップ、チームワーク、意思決定、人材管理、イノベーションを学ぶプログラムであるが、様々な応用分野が考えられる

戦闘機ソフト開発をスマホのアプリ感覚で迅速柔軟に

Project FoX.jpg●第412試験航空団Allen Black少佐がチーム長の「Project FoX」
●スマホのアプリ開発が世界中で同時並行的に複数の開発者によって行われている形を、戦闘機用ソフト開発でも実現したい

●ソフト開発がオープンアーキテクチャー化改修されたF-22を手始めに、戦闘機用コードを一般の商用コードに変換する情報保証されたタブレットを使用し、戦闘機用ソフトを改良&新規作成し、他機種とも共有する
●手始めに3月には、F-35が使用している地対空ミサイルを回避するソフトをタブレットでアレンジし、F-22でも使用できるようにする

Project FoX3.JPG●従来の時間のかかる複雑な試験サイクルを簡素化し、様々な開発者のアイディアを迅速に取り込める。我がチームは約1億3000万円の初期資金を得られれば、まず第5世代戦闘機にこの仕組みを導入したい
●このソフト開発&改修の迅速化手法は、無人ウイングマン構想のソフト開発にも一部企業が導入しており、サイバー戦やAI活用にもつながるものである
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ご紹介した2つの提案は、もう少し具体的な中身がわからないとコメントが難しいところですが、一般社会で存在感のある「Game」や「アプリ」の考え方を、米空軍で利用しようとの挑戦です

このレベルの提案が前線の部隊から出てくるところがうらやましいです

どの提案の紹介も十分ではなく、読者の皆様も消化不良気味かもしれませんが、細部については → https://www.afwerx.af.mil/spark-tank.html. をご覧ください

その1:米空軍改善コンテスト最終候補ご紹介
「無人機で血液輸送&操縦者酸素マスク改善を3Dで」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-25

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その1 米空軍改善提案コンテスト最終候補 [米空軍]

Spark Tank competitionの最終候補をご紹介

Spark Tank.jpg3月4日に米空軍協会戦闘シンポジウム(フロリダ州で開催)の会場で、米空軍の前線部隊から提出された各種改善提案の発表会が開催され、最終候補に残った6つの提案がプレゼンを行いました。

毎年開催の米空軍省主催「Spark Tank competition」との改善提案コンテストが、優秀提案に予算をつけたりするのかは不明ですが、米空軍協会web記事が最終候補を取り上げ紹介していますので、GW中に3回に分けてご紹介することとし、本日は2つの最終候補をご紹介いたします

なお、どの提案が最優秀に選ばれたかについては、「その3」の記事の中でご紹介いたします

Spark Tank 2.jpg1つは「輸血用血液の最前線への最終輸送手段に無人機を」との提案で、もう一つは「操縦者の低酸素症の原因と関係がある酸素マスクのフィット感を改善するシリコン詰め物を3Dプリンターで」との提案です。

いずれも少佐が提案チーム長を務める草の根の提案で、米空軍前線部隊のニーズや部隊のニーズを体現したもので、部隊の現実を知る機会なので取り上げます

輸血用血液の最前線への最終輸送手段に無人機を
 
Blood UAV.jpg●ネリス空軍基地第99医療支援隊の提案:提案チーム長はGiselle Rieschick少佐
●前線での負傷者等に輸血用の血液を緊急輸送する必要が生じた場合、地上に脅威がある場合、乗員6名のUH-60ヘリを輸送手段にすることになるが、搭乗員の命をリスク下に置き、種々の手続きが極めて複雑で煩雑になる。かつてヘリで20分の輸送を対空脅威から断念した経験が今回の提案の背景にある

Blood UAV3.jpg●この課題を解決するため、約50㎏の専用ボックスを搭載し、40マイル以上飛行可能な無人機2機の導入と、通信覆域拡大のためピックアップトラックに搭載可能な通信タワーを約5500万円で導入することを提案する
●「輸血用血液の緊急輸送ニーズ」は米空軍前線部隊だけでなく、陸軍部隊でも、海軍艦艇部隊が沿岸地域から地上部隊を支援する場合にも使用でき、統合レベルでも多様なニーズがあるはずであり、血液以外にも多様な応用が可能である


3Dプリンターで操縦者用酸素マスクのフィット改善シリコン挿入具を

MBU-20P.jpg●空軍士官学校で歯科医として勤務するGiselle Rieschick少佐を中心としたチーム提案
●操縦者の低酸素症が大きな問題となっているが、その要因の一つと考えられている問題に酸素マスクの不適合がある。多くの操縦者が酸素マスクと鼻の接点に不快感を感じ、中には酸素マスクを外して飛行しているパイロットも少なくないと言われている

●歯科医であるRieschick少佐は、歯の詰め物で歯の治療を行う際、10種類のタイプの詰め物の中から患者のあったタイプを選択し、微調整して治療に使用してきたが、操縦者の酸素マスクMBU-20/Pには5種類のタイプしかなく、パイロットは各顔の形状に合わせた微調整もせず使用している状況に驚いた
Oxygen Mask.jpg●例えばF-35操縦者用のHUDヘルメットは4500万円もするというのに、安全に直結する酸素マスクに顔形状にあった選択肢がない状況改善に、歯科医の世界では広く普及し始めていたスマホ撮影の顔写真と3Dプリンターの組み合わせを応用し、酸素マスクのフィッティングを改善する安価なシリコン製挿入具の開発を提案した

●周辺の操縦者にこのアイディアを話すると大きな支持が得られたが、実用化には膨大なデータの蓄積や試験が必要であり、支援を得るため提案コンテストに応募した
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今日ご紹介した「改善提案コンテスト」については、他の4件の最終候補も順次ご紹介します

どの提案の紹介も十分ではなく、読者の皆様も消化不良気味かもしれませんが、細部については → https://www.afwerx.af.mil/spark-tank.html. をご覧ください

ウクライナ関連記事
「ウクライナの無人攻撃機活躍」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-04
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米空軍がE-7導入を正式発表:2027年に1番機 [米空軍]

機体年齢44歳のE-3 AWACSの後継として
2027年の1番機はあくまでプロトタイプとか
2023年度予算案には研究開発テスト評価費が約260億円

E-7 Wedgetail.jpg4月26日、米空軍はE-3早期警戒管制機AWACSの後継として、「E-7 Wedgetail」を導入すると正式発表しました。ただし、現在保有する31機のE-3の後継機として、E-7を何機導入するかについて米空軍は明らかにしておらず、プロトタイプ機を契約するとの発表らしく、奥歯に物が挟まったような感もいたします

3月25日にKendall空軍長官が、「(E-3後継機の)最有力候補はE-7だと思うが、最終決定までには細部にわたる慎重な検討や確認も必要だ。今後数か月で意思決定する」と語っていたところですが、あっさり発表になりました。

E-3 AWACS.jpgE-3の老朽化による稼働率低下は前線部隊と維持整備部隊にとって以前から大きな問題となっており、昨年2月末には太平洋空軍司令官が「E-3の最近の信頼性度合いから、早急に新たな代替機が必要だ。E-3は離陸するのがどんどん困難になっている」、「最新のE-7を早急に導入すべき」とフライング発言し、空軍参謀総長が翌日には発言の火消しに回るなど物議を醸していました

また2021年7月には、米本土の維持整備部隊のあるTinker基地兵士が士気が上がらない部隊状況をメディアに訴え、ゴタゴタの末に部隊指揮官が解任される事態も発生していたところです

26日付Defense-News記事によれば
E-7 2.jpg●米空軍の発表は、米空軍は市場調査によって、戦術戦闘管理、指揮統制、目標探知追尾能力などから判断して「E-7 Wedgetail」がE-3の後継となる唯一のプラットフォームだとの結論に至ったと説明している
●そして米空軍は、2023年度にE-7を製造するボーイングと契約を結ぶ予定になっている。なお米空軍の2023年度予算案には、後継機のための研究開発テスト評価費が約260億円計上されており、併せて31機保有のE-3の15機を退役させる計画も盛り込まれている

E-7 Wedgetail2.jpg●なお(2023年度契約を予定する)最初のプロトタイプ機(first rapid prototype)は2027年度に納入されることとなっており、2番目のプロトタイプ機(a second rapid prototype)予算は2024年度予算に含まれる予定となっている
●ただし、米空軍はE-7を何機導入する予定かについて今回の発表で言及していない

追加情報:26日付米空軍協会web記事によれば
●米空軍報道官は、「31機保有のE-3の一部の後継としてE-7A Wedgetailsを導入することを決定した。何機E-7を導入するかは評価した後に決定する」と明らかにした
●また「rapid prototypeの1番機は2027年以降に納入される。production decisionは(プロトタイプが納入される前の)2025年に行う」とも表明した

●豪州によりE-7は開発され、韓国、トルコ、英国が保有又は購入計画を持っている。ただし、米空軍が導入するE-7は、これら各国が導入する機体とは異なった装備やシステム構成をなる模
●ボーイング関係者は、「米空軍にはopen architectureバージョンを提供し、現在のE-7にはない、他企業のシステムを搭載可能な形にする」と語っている
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ABMS4.jpg4月1日の記事でもご紹介したように、元々米空軍はE-3後継機は導入せず、宇宙を含めた多様なセンサー情報を集約して迅速に指揮統制に使用可能にするABMS(Advanced Battle Management System)導入を急いでいましたが、技術的課題や予算制約もあり遅々として進まず、ABMS(最近報道等が全くない)導入までのギャップを埋めるE-3後継機導入が不可避となり、最近になって急に話題となった経緯があるようです

これもまんぐーすの完全な邪推ですが、3月25日に空軍長官が「慎重に検討する。今後数か月後で決定する」発言をした1か月後の4月26日に正式発表となっており、何かに「せかされて」いるような気がしてなりません。

KC-46 Flight.JPG「E-7 Wedgetail」はボーイング製ですが、先日は空中給油機関連でRVS改修設計合意やKC-46をKC-YやZに・・・とのボーイング寄りの発表が米空軍からあったところでもあり、ボーイングに何かあるのかなぁ・・・と邪推してしまいます

平均年齢44 歳のE-3関連話題
「予算案通過なら2023年から退役へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/01/3074/
「後継機検討のRFI」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711/
「急にE-3後継機が大きな話題に」→https://holylandtokyo.com/2022/01/31/2669/
「米空軍航空機は依然高齢です」→https://holylandtokyo.com/2021/12/08/2475/
「空軍長官が7つの優先事項を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-12
「PACAF司令官:E-7ほしい発言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-27

米空軍空中給油機の整備方針を大転換
「KC-XYZの再検討再整理表明」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/3151/

将来戦に向けた指揮統制改革:JADC2、AIDA、ABMS関連
「国防副長官がAIDA開始発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-23
「具現化第1弾でKC-46に中継ポッド」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-22
「3回目はアジア太平洋設定で」→https://holylandtokyo.com/2020/10/05/425/
「2回目のJADC2又はABMS試験演習」→https://holylandtokyo.com/2020/09/09/476/
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「今後の統合連接C2演習は」→https://holylandtokyo.com/2020/05/14/671/
「連接演習2回目と3回目は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28

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米空軍とボーイングがKC-46のRVS改修にようやく合意 [米空軍]

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給油操作を行う映像装置RVSの根本的改修
2020年春に検討開始し、2021年5月に一度交渉決裂も
空中給油機関連課題が急に整理されていく流れに疑念も

KC-46 Flight.JPG4月19日米空軍報道官が、ボーイング社との間で2020年春から協議を続けてきたKC-46空中給油機のRVS更新改修設計案について4月11日に合意し、基本契約に沿って改修費用を全額ボーイング社が負担して2024年中旬までにRVS更新改修を終了することになったと発表しました

KC-46は従来の給油機とは異なり、操縦席内にあるカメラ映像を見ながら給油装置を操作するシステムを導入しましたが、その映像システムRVS(Remote Vision System)が太陽の位置や夜間に見辛く、捜査員が給油ブームで対象機の機体をひっかいて傷つけたり、安全に操作できないとの問題が生じて2017年夏に「category I deficiency:第1級不具合」に指定されました

KC-46 RVS.jpgこの不具合にボーイングは小手先の「ソフト改修」で対処しましたが空軍側は納得せず、根本的ハード対策が必要だと主張し、延々と押し問答が続いて2019年には膠着状態に至りました。最終的には2020年2月に時の空軍参謀総長が新任ボーイングCEOを訪問して直談判するに至り、その後少し動きがあって2020年4月に「RVS 2.0」を開発して更新することで合意したものです

KC-46 RVS 2.0.jpg冒頭でご紹介したように、その後も2021年5月に「RVS 2.0」設計交渉が決裂するなど、2021年秋には合意するはずの予定が今年4月まで遅れた超難産ですが、KC-46契約全体を貫く「固定価格契約」原則を維持し、「RVS 2.0」開発導入も全てボーイング経費持ちになります

これまでの様々な不具合対処経費を含めると、約6500億円ボーイングが自腹を切って対応しており、「RVS 2.0」開発導入経費がどの程度が現時点で公表されていませんが、更なるボーイング負担となります

4月19日付Defense-News記事によれば
KC-46 RVS2.jpg●米空軍報道官の声明によれば、「RVS 2.0」は、新しい4K解像度ディスプレー、改良した複数の可視光&赤外線カメラ、給油操作員操作パネルの完全再設計、画像処理プロセッサーの再設計により課題に対処する。特に3組のパノラマ視野カメラにより、昼夜を問わず、切れ目ない必要な視界を操作員に提供する
●また声明は、今後数か月で正式契約を交わすことになるが、「RVS 2.0」導入により、RVS関連の2つの「category I deficiency:第1級不具合」と6個の「第2級不具合」が解消されると説明している

KC-46 RVS 2.0 2.jpg●ボーイング社は「今回の合意は、米空軍とボーイングの緊密な連携でKC-46Aをニーズに応じて能力向上していく事例であり、最新技術を製造ラインに落とし込む流れを示すものである」、「この改修により世界最高の給油機は更に能力を向上させ、何世代にもわたり空軍運用者に恩恵をもたらすだろう」とコメントしている

●なおKC-46給油機は、導入予定の177機のうち既に57機が米空軍に納入済で、米空軍は作戦空域での使用を認めないなど使用制限を課しつつも、最近許可したF-22とF-35を含む対象機の85%への空中給油を認めている
●なお同機は米空軍以外では、日本が4機導入予定で2機を受領済、イスラエルも今年に入り2機導入を発表している。
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Brown4.jpg4月11日に「RVS 2.0」について空軍とボーイングが合意し、翌4月12日にBrown米空軍参謀総長が空中給油機の今後の体制整備について、従来の「KC-X(KC-46)→KC-Y(つなぎ給油機)→KC-Z(ステルス給油機)」との考え方を再検討中で、「Y」や「Z」で特別な能力を追求せず、KC-46を改良して使用していく方向も検討しつつあると明らかにしている辺り、色々な裏がありそうで想像してしまいます

KC-XYZの再整理については、「機種選定のドロ沼を避けたい」及び「予算もないのでステルス給油機は断念」と邪推しておりますが、KC-46に関する妥協も含めて考えれば、コロナで民航機需要が激減し、B-787の事故もあり瀕死のボーイングを米国政府として支えるための一連の判断とも邪推できます

米空軍空中給油機の整備方針を大転換
「KC-XYZの再検討再整理表明」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/3151/
「KC-Yにロッキードが名乗り」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20
「つなぎ空中給油機KC-Yに着手へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-05
「2016年当時の空中給油機後継プラン」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-09-22

KC-46関連の記事
「恒久対策は今も未定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-11
「50機目受領も恒久対策未定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-11
「KC-YもXと同じ対決へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-20
「KC-46空中給油機に更に2件の最高度不具合発覚」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-18
「F-22とF-35のデータ中継装置を搭載へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-22
「KC-46空中給油機を一部の任務に投入開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-25
「恒久対策は2023-24年から」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-30
「今度は燃料漏れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-31-1
「やっぱりだめで更に1年遅れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-04
「重大不具合について3月に手打ち!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-21
「空軍トップが新CEOに改善要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

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グアム島配備の米潜水艦が2隻から5隻体制に [Joint・統合参謀本部]

2021年11月の2隻体制から、3月末には5隻体制へ増強完了
対中国で優越な数少ない分野の潜水艦力強化
バージニア級でなく旧式のロサンゼルス級3隻増ですが
バージニア級増強は施設整備もあり2026年とか・・・

Annapolis guam.JPG4月15日付Defense-Newsが、米海軍がアジア太平洋地域の潜水艦能力を強化するため、グアム島配備の潜水艦を、従来の2隻から5隻体制に増強完了したと報じています。

グアム島潜水艦体制の強化については、2021年11月にJeffrey Jablon太平洋海軍潜水艦隊司令官(少将)が表明していたものですが、表明時点で2隻のロサンゼルス級潜水艦体制だったものを、2021年12月にハワイから1隻増強し、追加で2022年3月にハワイと加州からの各1隻を加え、計5隻のロサンゼルス級潜水艦体制を確立しました

Springfield guam.jpg本当であれば、2000年代から導入が開始され、既に19隻が任務に就いているバージニア級潜水艦を増強したいところでしょうが、受け入れ施設等の関係もあり、バージニア級は2026年配備予定だそうです。

増強した3隻の内、2隻がハワイからグアムへの移動であり、その実際の効果がどの程度かは不明ですが、対中国で西側軍事力が優越状態にあると言い切れる数少ない分野でもあり、「AUKUS」で豪州に攻撃型原潜を提供する決断もあり、現時点で対応可能な所で手を打ったのでしょう

【ご参考事項】
対中国における潜水艦分野での米国や西側優位に関する発言など

元太平洋軍作戦部長(2022年3月)
Virginia-class2.jpg●中国は台湾の海上封鎖を試みるだろうが、西側は潜水艦戦力や戦術で優位な立場にあり、この利点を生かすため西太平洋への攻撃原潜配備数を増やす必要がある
●太平洋軍はグアムに3隻の攻撃原潜を配備しているが、これを6隻に増強するため、ロサンゼルス級の延命を進め、バージニア級の増産(年2隻から3隻へ)体制を構築する必要がある。また豪州に米潜水艦基地を設ける必要がある

米国防省「中国の軍事力2021」レポート(2021年11月)
Annapolis guam2.jpg●中国の西側潜水艦への対処能力(anti-submarine warfare)は、依然としてレベルが低く、アキレス腱となっている。
●中国はこの欠点を改善するため、中国空母や中国潜水艦防御のために水上艦艇を2030年までに460隻に増強する計画
●中国の現在の潜水艦戦力は、戦略原潜を4隻と攻撃型ディーゼル潜水艦50隻の体制

戦略家エドワード・ルトワック氏
(「ラストエンペラー習近平」2021年7月刊 奥山真司訳より)
Luttwak5.jpg●ISRやAI情報処理能力の発展で、水上艦艇の脆弱性は過去20年間で20倍になったと考えるべき。平時からグレーゾーン事態では水上艦にも役割は残されているが、戦闘状態に入ったら格好の潜水艦の餌食である
●対中国の軍事作戦を考える時、中国の大規模艦隊は世界最大の「標的」となるともいえる。米海軍の攻撃型原潜が一つの鍵になる。西側の優位性を最大限に生かすべきである

日米が協力すべき軍事技術分野4つ
Los Angeles-class2.jpg(Atlantic Councilレポート2020年4月)
●中国は過去10年にわたり、有人及び無人潜水艦へ膨大な投資を行っている。
●米国も本分野への投資を始め、日本ではIHIが独自に無人水中艇開発を行ったが、防衛省としてこの分野への参画決断はない状態である。論理的に見て協力が望まれる分野である

CSBA報告書
米海軍に提言:大型艦艇中心では戦えない(2020年1月)
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Los Angeles-class.jpg上記の「元太平洋軍作戦部長」が要望している「6隻」体制なら、常に南シナ海も含む第一列島線内に、米海軍攻撃型原子力潜水艦を1隻ローテーション配備できるのかもしれません。(基礎知識皆無ですので完全な邪推です

最新の「中国の軍事力2021」レポートが、「中国の西側潜水艦への対処能力は、依然としてレベルが低く、アキレス腱だ」と言うのですから、水中無人艇への投資も含めて日本も協力し、この分野を「梃子」に対中国抑止力を高めたいものです。 

既に始まっている攻撃原潜の後継検討
「戦略原潜設計チームを次期攻撃原潜にも投入へ」→https://holylandtokyo.com/2021/11/04/2333/

攻撃原潜への極超音速兵器の搭載時期は
「バージニア級へは2028年以降」→https://holylandtokyo.com/2021/11/26/2450/

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米陸軍が前線での電力消費増に対応戦略検討 [Joint・統合参謀本部]

「Operational Energy戦略」を年末までに
前線兵士や前線指揮所での電子デバイス増に対応
気候変動対処に電気自動車導入推進などのため

Energy strategy.jpg4月12日付Defense-Newsが、米陸軍が前線での電力消費量増加や気候変動対処のための電気自動車導入に対処するため、2022年末までに「作戦運用エネルギー戦略:Operational Energy Strategy」をまとめて産業界とも共有し、最新技術導入を促進し、技術革新方向を示して協力を得ようとしていると紹介しています

米国防省の気候変動対処戦略CAPを受け、2月8日に米陸軍も「climate strategy」を発表し、2035年までに全陸軍基地に「自給自足のミニ総合発電施設:microgrids」を設置し、また同年に戦術車両にハイブリッド車を、そして2050年までに全電動戦術車両を導入する方針を明らかにしています

Energy strategy2.jpg米陸軍「climate strategy」を受け、前線の作戦運用部隊でのより具体的なエネルギー調達や分配や管理要領や技術開発方針を打ち出す「作戦運用エネルギー戦略:Operational Energy Strategy」を、2022年末までに作成することになっており、その概要方向を記事は紹介しています

考え方が古いまんぐーすにとって、前線で各兵士が持ち運ぶ電子デバイス増に対応する電源確保は理解できるにしても、戦闘車両の電動化については燃料輸送や維持整備負担軽減、更に車両静粛化とのメリットがあるとは理解しつつも、本当に施策を推進する動機が働くのか「?」です

Wormuth7.jpgですがChristine Wormuth陸軍長官(女性・前政策担当国防次官)は、「多くの資源を投入したくなる取り組みであり、このシステム改革を前線に届けるために必要な労力を忘れるほどの強い魅力がある」と語って米陸軍としてのやる気をアピールしています

そんな「Operational Energy戦略」が包含する分野は幅広く、従来の化石燃料から再生可能エネルギーへの移行や、展開先同盟国等からのエネルギー調達までを含む内容になるそうですが、本日は記事が断片的に取り上げている、ミニ総合発電施設Microgrids、バッテリー、バッテリー充電、産業界の動向等についてご紹介します

4月12日付Defense-News記事によれば
Energy strategy4.jpg●ミニ総合発電施設Microgrids
米海軍が加州ミラマー航空基地で導入しているシステムを、米陸軍基地に導入する企業提案の検討などが行われている
また前線や機動展開先で利用可能な、移動式発電機とも呼べる「mobile microgrid system」の検討も進められており、装置の更なる小型化が追求されている

●発電機
既に、発電効率を高めつつ信頼性を向上させ、かつ多様な発電機との部品相互融通性を高めた発電機の部隊配備が始まっているが、これに蓄電能力を加えて前線での有効性を高める挑戦が続いている
また兵士が着用可能な「wearable solar panels」や、持ち運び可能な「燃料電池fuel cells」の開発動向に注目している
ミニ総合発電施設Microgridsも発電機も、前線兵士が個々に保有して使用する電子デバイス用の「wearable batteries」充電や電動車両の充電に不可欠な装備である

●バッテリー
Energy strategy5.jpgリチウムイオンバッテリーの持続性や迅速な充電を求めた改良に取り組んでおり、「silicon anode」技術の活用などを検討している。
また、使用機材個々に特化した多様なバッテリーが前線に混在し、ロジ面での大きな負担となっている現状を改善するため、バッテリーの共通化標準化に取り組んでい

●バッテリー充電
バッテリーの共通化標準化に合わせ、バッテリー充電機の共通化標準化にも取り組んでいる
また、戦闘車両BradleyやStryker内に充電装置を付加し、移動中に兵士着用の「CWB:conformal wearable battery」や電子デバイスに充電可能にする試験が昨年夏から行われている
トレーラーの荷台に積載可能なコンテナサイズの充電器開発及び更なる小型化にも取り組んでいる

●産業界との連携
Energy strategy3.jpgバッテリーの蓄電量増加や前線でのバッテリー充電能力確保は依然として大きな課題であり、産業界からは米陸軍のインフラが圧倒的に不足しているとの指摘もあるが、数年前と比較して、社会全体での電気自動車普及の動きもあり、商用ベースでの充電設備の研究開発は飛躍的に進んでいる

Microgridsやバッテリー開発も企業側での競争原理も働いており、国防省や陸軍の気候変動対処戦略発表を受け、国防分野での需要拡大への期待感も企業側で膨らんでおり、win-win関係を構築する機運が高まっている

米陸軍幹部は、企業との取り組みのベクトルをそろえるためにも「Operational Energy戦略」が重要だとしており、産業界側にも同戦略の必要性重要性を語る関係者が多い。特に新たな参入企業を期待する場合には、要求を明確にすることが重要である
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Wormuth3.jpg過去記事でご紹介している米国や英国の取り組みは本格的なもので、なかなか「腹落ちしない」まんぐーすの時代追随能力の限界を感じております

ウクライナ侵略でエネルギーコストや消費財全般の価格が上昇しており、国防予算を圧迫しており、本政策の優先順位をどうするかで米国防省や各軍種の本気度を見てまいりましょう

排出ゼロや気候変動への取組み関連
「米空軍が航空燃料消費削減を開始」→https://holylandtokyo.com/2022/02/16/2691/
「米国防省は電気自動車&ハイブリット車導入推進」→https://holylandtokyo.com/2021/11/15/2423/
「米国防省が気候変動対処構想発表」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/
「米陸軍が電動戦闘車両導入の本格検討へ」→https://holylandtokyo.com/2020/09/25/487/

「英空軍トップが熱く語る」→https://holylandtokyo.com/2021/12/03/2474/
「英空軍が非化石合成燃料でギネス認定初飛行」→https://holylandtokyo.com/2021/11/19/2444/
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07

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ロシアの電子戦に迅速対処したSpaceXに学べ [米国防省高官]

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ウクライナでのロシアの電子戦に触れつつ
ウ国に提供したStarlinkを防御したSpaceXの対処に驚嘆
国防省専門家「目を見張るほど」「涙が出るほど」素晴らしい

Starlink spaceX.jpg4月20日のイベントで国防省や米空軍の幹部が、ロシアの電子妨害に対処してウクライナのインターネット接続を確保したSpaceX社の迅速で見事な対応を取り上げ、国防省をはじめとする政府機関もこの柔軟で迅速な対処を学ぶべきだと訴えました

イーロン・マスクが率いるSpaceX社は、ロシアのウクライナ侵略開始直後に、31歳のウクライナ副首長兼ねてデジタル相からの要請を受け、48時間以内に衛星利用インターネットサービス「Starlink」をウクライナに提供し、同時に関連端末を多量にウクライナに届けました。

Starlink spaceX2.jpgこれを受け、ロシアもウクライナをインターネットから遮断すべく直ちに電子戦(EW:electromagnetic warfare)を開始したようですが、翌日にはSpaceXが「Starlink」ソフトの妨害対象部分を見つけ出し、直ちに修復してロシアの妨害を無効化し、ウクライナのネット接続を今日まで確保し続けているとのことです

20日付Defense-News記事によれば
●米国防長官室のDave Tremper電子戦室長は、「SpaceXのElon Musk社長は、開戦時に数千のスターリンク端末を届けてウクライナを支援したが、ロシアの電子妨害にも迅速に対処して翌日には無効化している」、「電子戦において理想的な素晴らしい対処であり、その様子は涙が出るほど素晴らしい」と讃えた
Tremper.jpg●そして同時に同室長は、「仮にこれを政府機関が行っていたら、このようなコード修正に多くの手間をかけた分析を行い、意思決定に時間を要し、契約と実行まで含まると途方もない時間が必要だったろう」と語り、「我々にはこのような機敏さが必要で、電磁スペクトラム戦に向き合う姿勢や大胆に挑戦して変革することを可能にしなければならない」と訴えた

●また同室長は、システムの2重化・複数化の重要性を強調し、一つが被害を受けても、生き残ったもう一つで機能を維持する重要性を訴えた。そしてEW装置を更新する際には、単なる更新ではなく、システムの強靭性アップを図るべきだと主張した
●更に、AIや機械学習の導入による装備の処理速度向上や、デジタル設計活用による調達の迅速性追求も重要だと述べ、開発中の電子戦機EC-37B(Compass Call)がこの技術を活用し、地上で様々な新たな電子妨害手法を運用者と煮詰めている様子を紹介した

electromagnetic war.jpg●ウクライナにおけるロシアの電子戦について同室長は、米国防省が予期していたほど強力ではない(Pentagon expected a much stronger EW showing from Russia)と述べつつも、侵攻部隊を前進させながら電子戦を同時進行するロシア軍の同期された活動と、高度で洗練されたEW装備から多くを学んでいると語った
●また、ロシア軍のような電子戦を実戦で行うには、電子戦担当部隊や兵士の教育訓練が極めて重要で、士官から下士官レベルに至る全ての関係者が理解するまでの徹底した準備訓練と知識の浸透が欠かせないと表現した

electromagnetic war4.jpg●米空軍電磁スペクトラム課長のTad Clark准将は、今後の戦いは電磁波を絡める比率が一層高まると予想され、特に緒戦において電磁波領域を支配することが、戦い全体を優位に進める上で不可欠になると語った
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民間から改革の「旗手」や「担い手」として招かれながら、2-3年勤務後に国防省や各軍種の「硬直性」「改革意欲欠如」「複雑怪奇な手続き」「様々な抵抗」などに不満をぶちまけつつ去っていく事例が続いています。

不満をつづった文書をネット上に公開して昨年9月に辞任した国防省CSOに続き、2019年から空軍省CAO(chief architect officer)を務めていたPreston Dunlap氏が、web上に「国防省官僚制を改革するため成すべきこと」との8ページもの文書を投稿して数週間後に辞任することを明らかにしました

Conley.jpgDave Tremper電子戦室長の前任者であるWilliam Conley氏は「車いす上の改革者」と呼ばれましたが、この方も道半ばにして辞任しており、その際各方面から「電子戦の改善改革を考え抜き、民間の革新的技術の早期導入を推進し、敵に負担を強いる戦略を思慮していた人物」で、「新たなセンサー技術や電磁スペクトラム兵器のアイディアを膨らましていた人物」として惜しむ声が上がった方でした。軍の改革は難しいということです

ウクライナにおけるサイバー&電子戦
「露VSウのサイバー戦とFedorov副首相」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-22

最近のEW関連記事
「米空軍が電子戦専門航空団創設」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-30
「Electronic Protection超重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-03
「2021年春完成の電子戦戦略を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-30
「米陸軍は2027年までに前線電子戦部隊整備」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-04
「電子戦専門の航空団創設へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-03
「さわり国防省電子戦戦略」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-03
「国防省の電子戦担当少将が語る:道遠し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-19

原点:ロシアの電子戦に驚愕の米軍
「東欧中東戦線でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02

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イスラエルがレーザー防御兵器の試験成功発表 [安全保障全般]

昨年5月にロケット4000発撃ち込まれ対応迫られる
首相は2月「年内配備」、国防相「as soon as possible」と
100kw程度で無人機や短距離ロケット対処から
迎撃ミサイル「Iron Dome」では費用がかさみ過ぎ

Gantz2.jpg4月14日イスラエルのBenny Gantz国防相が、イスラエル製のレーザー防御兵器(名称は「laser wall」か「Iron Beam」)が最近のテストで、迫撃弾やロケット弾や対戦車ミサイルや無人機の迎撃に成功したと発表し、「as soon as possible」で国境周辺に配備したいと語りました

イスラエルは以前から、北部国境でヒズボラから、ガザ地区からはハマスから、イランの支援を受けているとイスラエルが主張する射程数㎞から数十㎞のロケット攻撃を受け、周辺イスラエル国民に被害が出るなど喫緊の安全保障課題となっていましたが、2021年5月にはハマスとの対立が激化し、僅か11日間で4000発もの攻撃を受けイスラエル国民12名が死亡する事態となりました。

laser wall.jpgイスラエルは、このようなロケット攻撃対処に「Iron Dome」との迎撃ミサイルシステムを米国の援助も得て開発導入し、9割の迎撃成功率を誇ると誇示していますが、ハマス等のロケットが1発コスト数万円程度なのに、「Iron Dome」ミサイル1発は数千から数億円とも言われ、イスラエル首相が「経済の方程式が成立しない」と表現する状態です

もちろん、物理的に短期間に数千ものロケット弾に迎撃ミサイルシステムで対処することは難しく、そこでイスラエルが注力してきたのがレーザー迎撃兵器の開発です。

Bennett.jpgイスラエル首相や国防省はその性能細部について言及していませんが、2月にBennett首相は「レーザービーム1回発射は数ドル程度のコスト」「イランが後ろ盾の同時攻撃も無効化できる」「2022年度中に配備する」と語り、首相と国防省はともに、地上だけでなく海上と空中にも配備すると語っています

以下では、発表当日4月14日にイスラエルで放映された関連TVニュース映像と、開発状況に詳しいTV出演専門家の解説から、テスト成功が報じられたレーザー防御兵器(名称は「laser wall」か「Iron Beam」)について断片情報をご紹介します

4月14日ニュース映像等によれば
laser wall2.jpg●試験したレーザー防御兵器は出力100kw程度で、米国が現時点で開発に手を伸ばしている300kwレベルよりは低い。レーザー出力は、イスラエルの限定的な試験環境にも制約を受けている
●開発に関する米国との協力はあるが、細部は説明できない

●イスラエルは、弾道ミサイルに対して「Arrow-1,2,3」やパトリオットミサイル、短距離のロケットに対しては「Iron Dome」など、センサーと迎撃兵器を重層的に配備してきているが、今回のレーザー兵器はこれらを補完するものであり、とってかわるものではない
laser wall5.jpg●例えばイスラエル北部国境では、雲や雨で年間60-80日程度はレーザー兵器使用に適さない気象条件となることから、全てをレーザー兵器で賄うことはできない

●レーザーは電力が確保できれば発射でき、迎撃ミサイルのように「弾切れ」や「ミサイル製造や輸送」の心配がない。また連続発射が可能で、多数同時目標対処にも向いている
laser wall4.jpgただし映画「スターウォーズ」のように、一瞬のレーザー照射で目標が破壊されるわけではなく、敵ミサイルや無人機を無効化するには一定時間レーザーを照射し続ける必要がある

国防省が公開したテスト映像にもあるように、装置自体は比較的小型で、電源部分を合わせてもトラックで輸送可能である
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「laser wall」とか「Iron Beam」と呼ばれるこの装備は、その出力等から世界最先端とまでは言い切れない気がしますが、2021年5月にハマスから4000発もロケットを撃ち込まれて国民から厳しい視線を浴びているイスラエル政府とイスラエル軍ですから、あらゆるアイディアを投入して改良を進めると思います。

laser wall3.jpg弾道及び巡航ミサイル対処、砲弾やロケット弾対処、そして無人機対処まで、「いつまでたっても完成まであと5年」と揶揄されながらも、レーザーに対する期待は非常に大きいので、ハイテク産業で世界有数のイスラエルに大いに期待したいと思います

ちなみに・・・
遅れがちな米国防省「Directed Energy Roadmap」の目標設定

●2022年までに、150-300KW級の兵器化
 100Kwでドローン、小型ボート、ロケット、迫撃砲に対処可能
 300kwで巡航ミサイルに対処可能
●2024年までに、500KW級の兵器化
●2030年までに、1GW級の兵器化 

紹介映像1(6分30秒:2022年4月14日)


紹介映像2(3分:2022年4月14日)


紹介映像3(2分19秒:2022年2月)
  

開発の長い歴史と脅威背景の紹介映像(11分30秒:2022年1月)


エネルギー兵器関連
「陸軍が50KWレーザー装備の装甲車3台導入へ 」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-15
「AC-130用兵器の企業地上試験終了で空軍へ提供」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-12
「米議会がレーザー兵器開発に懸念で調査要求へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-08
「戦闘機防御用から撤退へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-01
「米空軍が無人機撃退用の電磁波兵器を試験投入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-27
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-05
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24
「F-15用自己防御レーザー試験」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-04
「エネルギー兵器での国際協力」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-27
「エネルギー兵器とMD」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「レーザーは米海軍が先行」[→]https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24
「無人機に弾道ミサイル追尾レーザー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-17-1
「私は楽観主義だ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-23
「レーザーにはまだ長い道が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-18
「AC-130に20年までにレーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-06

国防省高官がレーザーに慎重姿勢
「国防次官がレーザー兵器に冷水」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-12
「米空軍大将も慎重」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-24

夢見ていた頃
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
「米企業30kwなら準備万端」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「米陸軍が本格演習試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14-1

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山東省に新たな日本&韓国方面向きMD大型レーダー [中国要人・軍事]

標高750mに2019年11月以降に建設か?
同敷地には台湾方面監視レーダーが既に存在
日本全域を監視範囲に収め、宇宙状況把握にも使用可能か
日本は弾道ミサイルを保有していませんが・・・

Large Phased Array3.jpg4月18日付Defense-Newsが、商用衛星で2022年2月に撮影された写真を用い、山東省(山東半島やチンタオがある)中心部の標高750m付近に大型の弾道ミサイル監視レーダーが新設されていると報じ(上写真左が2018年6月、右が2022年2月撮影)、台湾方向を向く既存同型レーダーと共に監視体制を強化していると紹介しています

Shandong Province.jpg記事は当該弾道ミサイル探知追尾用レーダーを「LPAR:Large Phased Array Radar」と呼び、性能の細部は不明ながら、同形状で同規模の米軍AN/FPS-115はレーダー正面120度範囲を3000nm(5600㎞)監視できると紹介しています

Shandong Province2.jpgちなみに新レーダーのある山東省中心部から、ソウルが約800㎞、福岡市と台北市が共に約1100㎞、東京やフィリピンのルソン島北部までが2000㎞で、朝鮮半島と日本列島4島全域を物理法則からするとカバーできることになります

また米軍AN/FPS-115レーダーと同程度の傾きを持って設置されていることから、宇宙監視にも応用可能だろうと記事は推測しています

Heilongjiang Province.jpg新レーダーと同じ場所に隣接設置されてる既存の台湾方面向きレーダーは2013-2014年に建設されており、その他にも同種レーダーが、北朝鮮北方でロシアに接する黒竜江省(上の図)に朝鮮半島と日本方面向きに、台湾北方の浙江省にも台湾向きに設置済だそうです。更に新疆ウイグル自治区には、インド向きで同種レーダーが存在しているとか

確か中国は、米軍が韓国にTHAAD用レーダーを配備しようとした際、中国本土が監視範囲に入って許せないと韓国に嫌がらせしていますが、中国自身もしっかりやることをやっております

それにしても、日本は弾道ミサイルを保有していないのに、中国はいろいろ考えているのでしょうか?

Large Phased Array2.jpgちなみに、台湾でも米国の援助を受け、AN/FPS-115レーダーを発展させた「世界最強」級のミサイル監視レーダーが2013年頃には稼働し始めています。台湾の「Hsinchu」近郊「Leshan Mountain」に設置されたレーダーで、目標の大きさにもよりますが、巡航ミサイルや弾道ミサイルを3000km遠方から探知できるとの米軍需産業関係者の話が当時報道されています

山東省中央部に設置の新レーダーは、「北緯36°01′30″」「東経118°05′31″」で標高2300フィートに所在しているとのこと、ご興味のなる方は、ぜひ公開情報で現物をご確認ください

AN/FPS-115発展型の台湾「世界最強」級ミサイル監視レーダー
「台湾の巨大な中国監視レーダー」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2013-11-28

アラスカに2021年末に設置で試験中の巨大BMDレーダー
「BMD用の巨大新型レーダーLRDR完成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-08

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