電磁パルス無人機対処兵器THOR「群れ」試験に成功 [米空軍]
4月5日にAFRLが過去最大の群れ対処試験を実施&成功
引き続き細部性能は非公開ながら2024年デモ機製造へ
5月19日付米空軍協会web記事は、米空軍研究所AFRLが約4年前から具体的開発に着手している、マイクロ波による電磁パルス効果(EMP効果)で無人機の電子回路を破壊する方式の兵器THOR(Tactical High-power Operational Responder)試験を4月5日に実施し、AFRL史上最大規模の「無人機の群れ」対処に成功したと紹介しています
この「無人機の群れ対処に成功」した試験で、何機で構成された「無人機の群れ」だったのか?、群れの全ての無人機が無効化されたのか?・・・に関する質問にAFRLは回答を避けていますが、
AFRLのTHOR開発責任者は「THORは、その広いビーム範囲、高いピークを持つ出力、目標無人機を補足追尾する早い動作のアンテナを生かし、小型無人機の群れ対処に極めて優れた有効性を示した」とし、また副開発責任者の大尉は「THORは初期型のデモ機だが、THOR開発を通じて獲得できた技術が、世界中で無人機防御態勢強化のために活用されるだろう」との声明を出しています
THOR開発は、2019年の小型無人機1機への対処試験から本格化し、2020年からは海外最前線への試験配備で教訓や運用者の意見を聴取して改良を進め、2021年には成果を見た米陸軍も開発投資に参画、2022年2月にはLeido社と装備名「Mjolnir」で2024年デモ機製造で契約締結して今日に至っています
THORや装備名「Mjolnir」の具体的な「有効射程距離」や「対処可能無人機の規模や機数」は不明で、都市部で使用した場合の「副次的被害の恐れ」についても情報が全くありませんが、機関砲やミサイルによる迎撃より単位当たりの対処コストが安価で、電磁波による「光速」対処が可能な点で優れた可能性を秘めた防御兵器ですので期待したいと思います。
以下では、関連過去記事の要旨と関連映像を過去記事からピックアップ紹介します
【2021年7月の記事】
●THORは、マイクロ波電磁パルス効果(EMP効果)で機体の電子回路を破壊する兵器で、細部性能は不明ながら、AFRL2021年公開映像のナレーションでは「光速」かつ「long range」で小型無人機の電子回路を静かに破壊でき、数百の小型無人機を同時無効化も可能と説明
●長さ6mコンテナ上にパラボラアンテナを取り付けた形状の装置。C-130輸送機で空輸可能で、2名が3時間で現場設置可能。ニューメキシコ州のKirtland空軍基地がTHOR開発拠点
●レーザーや妨害電波による小型無人機対処兵器は、同時に1機にしか対処できないが、THORは同時に大量の無人機対処が可能。また、防空ミサイル迎撃は高価だが、THORは電気代だけで安価に同時多数に対処可能
【2022年7月の記事】
●無人機の群れ攻撃からの防御兵器THOR(Tactical High Power Operational Responder)開発に関し、米空軍研究所AFRLは2022年2月にLeidos社と約32億円の契約を結び、2024年初めに装備名「Mjölnir」でプロトタイプ作成することになっている
●THORは2021年から約1年間の前線試験(場所非公開:中東と推定)を経て5月に帰国も、その間、現地で射程範囲拡大に取り組み出力を5割アップさせ、また現場試験運用した空軍Security Forcesから意見聴取しながら操作性の改善に取り組んできた
●AFRL開発責任者Adrian Lucero氏らは、「無人機対処兵器には、ガンやレーザー方式、捕獲網方式などがあるが、高出力マイクロ波はより広範囲の無人機により短時間で対処可能な点で優れている」と6月24日に説明した
●またLucero氏とHeggemeier氏は、前線派遣先での実績から「THORは94%の信頼性を証明した」と説明し、今後は海外派遣先から持ち帰ったTHORを分解して部品の損耗程度等を確認し、「Mjölnir」プロトタイプ開発時の改良に反映すると述べた
米空軍研究所AFRLの解説映像2021年
Leidos社のTHOR解説映像(約30秒)
THOR関連の記事
「装備名Mjölnirで24年にプロトタイプ作成へ」→https://holylandtokyo.com/2022/07/14/3432/
「強力電磁波で小型無人機の群れ同時無効化狙う」→https://holylandtokyo.com/2021/07/06/1942/
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引き続き細部性能は非公開ながら2024年デモ機製造へ

この「無人機の群れ対処に成功」した試験で、何機で構成された「無人機の群れ」だったのか?、群れの全ての無人機が無効化されたのか?・・・に関する質問にAFRLは回答を避けていますが、
THOR開発は、2019年の小型無人機1機への対処試験から本格化し、2020年からは海外最前線への試験配備で教訓や運用者の意見を聴取して改良を進め、2021年には成果を見た米陸軍も開発投資に参画、2022年2月にはLeido社と装備名「Mjolnir」で2024年デモ機製造で契約締結して今日に至っています
以下では、関連過去記事の要旨と関連映像を過去記事からピックアップ紹介します
【2021年7月の記事】

●長さ6mコンテナ上にパラボラアンテナを取り付けた形状の装置。C-130輸送機で空輸可能で、2名が3時間で現場設置可能。ニューメキシコ州のKirtland空軍基地がTHOR開発拠点
●レーザーや妨害電波による小型無人機対処兵器は、同時に1機にしか対処できないが、THORは同時に大量の無人機対処が可能。また、防空ミサイル迎撃は高価だが、THORは電気代だけで安価に同時多数に対処可能
【2022年7月の記事】
●THORは2021年から約1年間の前線試験(場所非公開:中東と推定)を経て5月に帰国も、その間、現地で射程範囲拡大に取り組み出力を5割アップさせ、また現場試験運用した空軍Security Forcesから意見聴取しながら操作性の改善に取り組んできた
●AFRL開発責任者Adrian Lucero氏らは、「無人機対処兵器には、ガンやレーザー方式、捕獲網方式などがあるが、高出力マイクロ波はより広範囲の無人機により短時間で対処可能な点で優れている」と6月24日に説明した
●またLucero氏とHeggemeier氏は、前線派遣先での実績から「THORは94%の信頼性を証明した」と説明し、今後は海外派遣先から持ち帰ったTHORを分解して部品の損耗程度等を確認し、「Mjölnir」プロトタイプ開発時の改良に反映すると述べた
米空軍研究所AFRLの解説映像2021年
Leidos社のTHOR解説映像(約30秒)
THOR関連の記事
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空軍長官:次期制空機NGAD候補企業が同じ基地内で設計競争中 [米空軍]
F-35の失敗(維持整備費・知的財産・開発製造同時進行)回避
競争各企業の検討状況にアクセス可能体制
書類の束をでなく、デジタル設計データに随時アクセス
5月22日、Kendall空軍長官が軍事記者との朝食懇談会で、18日に関連文書(推定:提案要求書案)が関係企業に配布され、企業選定が開始された次期制空機NGAD開発状況に関して語り、F-35の失敗繰り返さないために知的財産権や維持整備関連データへの国防省の完全アクセスを確保することや、
空軍側と候補企業技術者が開発拠点であるWright-Patterson基地に集まり、まさに「side-by-side」で仕事を進めており、かつデジタル設計の利点を生かし、企業側の開発状況に空軍関係者が何時でもアクセス可能にして確認できる状態で、競争させつつ開発と状況確認を効率的に進めていると驚きの現状を語っています
<
strong>比喩的に表現しているのか、現実を描写しているのか、Kendall長官の発言は理解が難しいところもありますが、オバマ政権時代に技術開発担当次官としてNGAD開発の端緒を担当し、F-35のゴタゴタ処理にも奔走してきたKendall氏の思いが詰まったNGADですので、22日付Defense-News記事から同空軍長官発言を長くなりますがご紹介します。
22日付Defense-News記事によれば空軍長官は
●F-35計画のような失敗を避けることに焦点を当てNGADに取り組み、導入後の維持整備コストに関わるロッキード社データ入手の権利を確保していなかったF-35の失敗を繰り返さないよう、製造企業保有の全ての関連データへのアクセス権を確保するし
●F-35では当時は好まれた「Total System Performance」との考え方が採用され、企業選定で契約を勝ち取った企業は、兵器のライフサイクル全てで「永続的な独占的地位」を確保することとなり、結果としてこの悪習慣がもたらすものに長年に渡り苦労をさせられている
●F-35で多くの問題を生んだ製造と開発の過度な同時進行(excessive concurrency)も極力避けなければならない。同時進行方式では、開発や試験中に判明した不具合に対処するのが極めて複雑で困難になる。NGADやB-21でも多少の同時進行は起こるが、空軍はリスク最小化に合理的な判断を行う
●開発に伴う知的財産「intellectual property」への政府側の必要なアクセス権もしっかり確保する必要がある。またNGADでは、主担当から下請け企業に至るまで「モジュラーオープンシステム設計」思想導入を徹底し、機体の能力向上時に開発時と異なる新たな企業が参入可能な形を確保する
●NGAD拠点はオハイオ州Wright-Patterson空軍基地に置き、開発担当責任者には,現在米空軍の戦闘機や先進航空機担当幹部を務めるDale White,准将が就任することになる。
●NGADは高価な装備品であり(2022年4月に同空軍長官は1機数百億円と発言)、複数の契約企業で遂行する余裕はなく、単一の主担当企業を2024年のいずれかの時期に選定する
●NGADと行動を共にする無人ウイングマン機CCAも同時並行的に開発することになるが、潜在的な複数の企業と検討を進めており、最終的に何個の企業が携わるかを述べるのは時期尚早である
●NGAD開発の端緒は、オバマ政権時に開発担当次官を務めていた際に実施した「Aerospace Innovation Initiative」で、同取り組みから生まれた6世代機用の要素技術が実験的なプロトタイプ機「X-planes」に結び付き、それらの要素技術が機能することを証明することになる
●デジタル設計技術やモデリング技術の発展により、国防省や政府側と、関連企業設計チームとの連携は以前より効率的に進められており、空軍側と応札するであろう複数企業(bidding companies)は「essentially working side-by-side at Wright-Patterson」であり、空軍側設計関係者は各企業NGAD設計チームのデータベースに直接アクセスできる体制になっている(have direct access to the databases companies are using to design their pitches for NGAD)
●関係者で希望するものは皆が基本的に同じWright-Patterson基地に住んでおり、我々は競争している企業がどのような設計を行っているかについて詳細な知識(intimate knowledge)を得ている
●我々は関係企業と一体となって、設計や契約プロセスが可能な限り融合されたものとなるよう取り組んでおり(We’re very involved with them. … We’re going to have as integrated and as fully integrated a design process and contracting process as possible)、過去に行われたどの調達案件より効率的なアプローチを執っている。
●関係企業が大量の束の文書を空軍側に提出し、その文書を時間をかけて確認する従来イメージではなく、文書の束を待つことなく、設計状況をいつでも直接直ちに確認できる体制が構築されている
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Kendall空軍長官は、物事を多少誇張して先行発言することが過去にあり、多少は割り引いて聞く必要はあるでしょうが、NGAD開発拠点が置かれた米空軍研究所AFRL所在のWright-Patterson基地に、ボーイングやロッキードやNorthrop Grumman等のNGAD担当技術者が集結し、空軍側とガラス張りの態勢を構築して受注1社を目指してしのぎを削っている・・・点は間違いなさそうです
NGADに向け、2020年9月に「既に初飛行済」と空軍省幹部(Roper次官補:当時)が言及したデモ機は、空軍長官が今回言及した「実験的なプロトタイプ機X-planes」だと思いますが、予算獲得に向け、少しずつ明らかになって行く次世代制空機NGADに注目してまいりましょう。過去記事でこれまでの経緯も是非ご確認ください
NGAD関連の記事
「企業選定開始を発表」→https://holylandtokyo.com/2023/05/22/4656/
「欧州型とアジア太平洋型の2タイプ追求」→https://holylandtokyo.com/2023/05/10/4604/
「NGADは1機が数百億円」→https://holylandtokyo.com/2022/05/09/3193/
「NGADの無人随伴機開発は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-20
「無人機の群れ前線投入が課題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/28/3474/
「デモ機が既に初飛行済」→https://holylandtokyo.com/2020/09/17/482/
無人ウイングマンCCA関連
「CCAを2020年代後半導入へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/03/4473/
「空軍長官:NGADが200機、CCAは1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/
米空軍の戦闘機構成議論
「戦闘機の近未来体制は」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/
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競争各企業の検討状況にアクセス可能体制
書類の束をでなく、デジタル設計データに随時アクセス

空軍側と候補企業技術者が開発拠点であるWright-Patterson基地に集まり、まさに「side-by-side」で仕事を進めており、かつデジタル設計の利点を生かし、企業側の開発状況に空軍関係者が何時でもアクセス可能にして確認できる状態で、競争させつつ開発と状況確認を効率的に進めていると驚きの現状を語っています
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22日付Defense-News記事によれば空軍長官は

●F-35では当時は好まれた「Total System Performance」との考え方が採用され、企業選定で契約を勝ち取った企業は、兵器のライフサイクル全てで「永続的な独占的地位」を確保することとなり、結果としてこの悪習慣がもたらすものに長年に渡り苦労をさせられている
●F-35で多くの問題を生んだ製造と開発の過度な同時進行(excessive concurrency)も極力避けなければならない。同時進行方式では、開発や試験中に判明した不具合に対処するのが極めて複雑で困難になる。NGADやB-21でも多少の同時進行は起こるが、空軍はリスク最小化に合理的な判断を行う

●NGAD拠点はオハイオ州Wright-Patterson空軍基地に置き、開発担当責任者には,現在米空軍の戦闘機や先進航空機担当幹部を務めるDale White,准将が就任することになる。
●NGADは高価な装備品であり(2022年4月に同空軍長官は1機数百億円と発言)、複数の契約企業で遂行する余裕はなく、単一の主担当企業を2024年のいずれかの時期に選定する
●NGADと行動を共にする無人ウイングマン機CCAも同時並行的に開発することになるが、潜在的な複数の企業と検討を進めており、最終的に何個の企業が携わるかを述べるのは時期尚早である

●デジタル設計技術やモデリング技術の発展により、国防省や政府側と、関連企業設計チームとの連携は以前より効率的に進められており、空軍側と応札するであろう複数企業(bidding companies)は「essentially working side-by-side at Wright-Patterson」であり、空軍側設計関係者は各企業NGAD設計チームのデータベースに直接アクセスできる体制になっている(have direct access to the databases companies are using to design their pitches for NGAD)
●関係者で希望するものは皆が基本的に同じWright-Patterson基地に住んでおり、我々は競争している企業がどのような設計を行っているかについて詳細な知識(intimate knowledge)を得ている

●関係企業が大量の束の文書を空軍側に提出し、その文書を時間をかけて確認する従来イメージではなく、文書の束を待つことなく、設計状況をいつでも直接直ちに確認できる体制が構築されている
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NGADに向け、2020年9月に「既に初飛行済」と空軍省幹部(Roper次官補:当時)が言及したデモ機は、空軍長官が今回言及した「実験的なプロトタイプ機X-planes」だと思いますが、予算獲得に向け、少しずつ明らかになって行く次世代制空機NGADに注目してまいりましょう。過去記事でこれまでの経緯も是非ご確認ください
NGAD関連の記事
「企業選定開始を発表」→https://holylandtokyo.com/2023/05/22/4656/
「欧州型とアジア太平洋型の2タイプ追求」→https://holylandtokyo.com/2023/05/10/4604/
「NGADは1機が数百億円」→https://holylandtokyo.com/2022/05/09/3193/
「NGADの無人随伴機開発は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-20
「無人機の群れ前線投入が課題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/28/3474/
「デモ機が既に初飛行済」→https://holylandtokyo.com/2020/09/17/482/
無人ウイングマンCCA関連
「CCAを2020年代後半導入へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/03/4473/
「空軍長官:NGADが200機、CCAは1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/
米空軍の戦闘機構成議論
「戦闘機の近未来体制は」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/
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引き続きインドネシアは米国に塩対応 [安全保障全般]
米陸軍トップが訪問も「全てのmajor powers国と仲良く」と
米比関係が急速に改善進展するのとは対照的
5月12日付ABCNEWS電子版は、同日James McConville米陸軍参謀総長がインドネシアを訪問し、インドネシア国防相など同国安全保障関係者と、両国間の軍事協力関係強化について協議したと報じています
ただ、米国との関係が急速に進展し、ホワイトハウス高官が「驚くべき:stunning」と表現する程のフィリピン関係とは対照的に、 中国との関係を強く意識して「中立的な立場」だと強調するインドネシア側との話し合いはあまり進展がなかった雰囲気で、会談後の報道も具体的な合意事項等の発表が全く含まれていません。
5月12日付ABCNEWS電子版によれば
●11日までフィリピンを訪問していた米陸軍参謀総長は同日夜インドネシアに到着し、12日にインドネシアのPrabowo Subianto国防相と会談した。同大将はインドネシアとの軍事演習強化を含む両国関係の深化方法について議論したと語った
●また同大将は、「この地域に我々は多くの友人を持ち、緊密に連携している。地域の平和、安全、安定に関し、我々は利害を共有している。だからこそ我々は、皆にとって自由で開かれたインドアジア太平洋を維持するために協力しているのだ」と表現した
●ただしPrabowo Subiantoインドネシア国防相は、「地域の平和と安定の推進と維持は我々共通の関心事だ」と述べる一方で、「インドネシアは全ての国、特に全てのmajor powers国との関係維持を望んでいる」と強調して発言し、McConville大将がインドネシア訪問直前に訪問したフィリピンとは異なり、中国との関係を引き続き重視している事を示唆した
●11日には、インドネシアでASEAN首脳会合が開催され、中国との距離感が加盟国内で異なるASEAN内の複雑な思惑に配慮する形で、従来のASEAN会合と変わらない表現である「地域での誤算や衝突を避けるため、地域での対立事案については自制した姿勢で対応すべき:call for self-restraint in the disputes to avoid miscalculations and confrontations」との声明が採択されている
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米フィリピン関係は、今年2月の米国防長官訪比時の米軍の比軍基地へのアクセス数倍増(4個基地から8個)合意、3月の米軍第5世代機(F-22)初訪比と南シナ海上での訓練、4月11日の「2+2」会合での国防支援調整協議(レーダー、無人機、軍用輸送機、防空装備、F-16輸出)と、
米海兵隊が新部隊MLR(Marine Littoral Regiment)まで投入してフィリピン側と連携を深めた大規模演習「Balikatan」(4月)など、「驚くべき:stunning」進展を見せていますが、中国経済大減速の中でもASEAN諸国の動きは様々です
フィリピンの変化の背景を米国の専門家(AEIのZack Cooper氏)は、「比は過去5年間に渡り、中国との関係改善アプローチを試みたが、中国側がその高圧的な態度を変えなかったことで比国民の反感を買い、フィリピンは国益保護&追求のため、米国との協力強化の道を選択するに至った」と分析しているところです。
タイの総選挙結果を受け、タイ軍事政権に変化がありそうですが、米国との関係がどうなるのか、中国に配慮を見せていたタイ政権に変化があるのかにも注目したいと思います
インドネシア関連の記事
「戦闘機の機種選定」→https://holylandtokyo.com/2022/01/06/2581/
「オーストリアに中古戦闘機購入打診」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-21
「米軍が活動拠点求め」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-16-1
フィリピン関連の記事
「米比が33年ぶりに比で空軍演習」→https://holylandtokyo.com/2023/05/08/4597/
「米比2+2とBalikatan演習」→https://holylandtokyo.com/2023/04/20/4524/
「5世代機初展開F-22」→https://holylandtokyo.com/2023/03/24/4442/
「第3MLRの編成」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/
「前政権時の米とのギクシャク」→https://holylandtokyo.com/2021/08/02/2065/
「三菱製レーダーを提供へ」→https://holylandtokyo.com/2020/08/31/536/
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米比関係が急速に改善進展するのとは対照的

ただ、米国との関係が急速に進展し、ホワイトハウス高官が「驚くべき:stunning」と表現する程のフィリピン関係とは対照的に、 中国との関係を強く意識して「中立的な立場」だと強調するインドネシア側との話し合いはあまり進展がなかった雰囲気で、会談後の報道も具体的な合意事項等の発表が全く含まれていません。
5月12日付ABCNEWS電子版によれば

●また同大将は、「この地域に我々は多くの友人を持ち、緊密に連携している。地域の平和、安全、安定に関し、我々は利害を共有している。だからこそ我々は、皆にとって自由で開かれたインドアジア太平洋を維持するために協力しているのだ」と表現した
●ただしPrabowo Subiantoインドネシア国防相は、「地域の平和と安定の推進と維持は我々共通の関心事だ」と述べる一方で、「インドネシアは全ての国、特に全てのmajor powers国との関係維持を望んでいる」と強調して発言し、McConville大将がインドネシア訪問直前に訪問したフィリピンとは異なり、中国との関係を引き続き重視している事を示唆した

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米海兵隊が新部隊MLR(Marine Littoral Regiment)まで投入してフィリピン側と連携を深めた大規模演習「Balikatan」(4月)など、「驚くべき:stunning」進展を見せていますが、中国経済大減速の中でもASEAN諸国の動きは様々です

タイの総選挙結果を受け、タイ軍事政権に変化がありそうですが、米国との関係がどうなるのか、中国に配慮を見せていたタイ政権に変化があるのかにも注目したいと思います
インドネシア関連の記事
「戦闘機の機種選定」→https://holylandtokyo.com/2022/01/06/2581/
「オーストリアに中古戦闘機購入打診」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-21
「米軍が活動拠点求め」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-16-1
フィリピン関連の記事
「米比が33年ぶりに比で空軍演習」→https://holylandtokyo.com/2023/05/08/4597/
「米比2+2とBalikatan演習」→https://holylandtokyo.com/2023/04/20/4524/
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「第3MLRの編成」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/
「前政権時の米とのギクシャク」→https://holylandtokyo.com/2021/08/02/2065/
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米空軍の対中国救難救助検討は引き続き迷走中 [米空軍]
欧州や中東でのみ有用なHH-60Wヘリ調達削減決定後も
米陸軍がFLRAA候補にした2機種も検討対象と
当面はCV-22オスプレイとHH-60Wでしのぐのか
中国の強固な防空網下で活動可能なアセットは夢か
4月27日付米空軍協会web記事が、最近の米空軍幹部による米議会軍事委員会での2024年度予算案説明の中なら、遠方CSAR(遠方の戦闘捜索救助:combat search and rescue)アセット検討状況について証言する様子を紹介していますが、2023年度予算で2021年導入開始直後のHH-60Wヘリ調達機数を、対中国脅威下で活用困難との判断から当初計画108機から85機に削減した「後の体制検討」について、実質進展がない模様です
対中国で、母国から遠い中国大陸近傍での戦いを強いられる米軍兵士にとって、敵の勢力下で航空機や艦艇が撃墜撃沈されたり、敵影響下での地上活動を命ぜられた場合に、味方が救出してくれるとの「安心感」「信頼感」は士気に直結しますし、米国世論を踏まえれば、救助作戦が遂行不可能なエリアでの活動実施は、米政権や米軍指揮官にとって命令不可能と言っても過言ではない極めて判断困難なものとなります
そんな軍事作戦遂行の基盤中の基盤である「CSAR:捜索救助任務」構想が、今頃になって根本的見直しを迫られていること自体が驚くべきことですが、どうしようもなく、手を付けられないから今まで放置せざるを得なかった感もあり、弾薬確保や前線への輸送能力欠如と相まって、対中国作戦の基礎崩壊とも見ることができます
同時に、仮に東シナ海や台湾近傍で米軍機や米艦艇が撃墜や撃沈され、近傍の同盟国である日本が米軍兵士に有効な救助活動を提供できなかった場合(努力する姿勢を見せなかった場合も含め)、米国民感情からも、米軍兵士から見ても許容できるものではなく、日米同盟の根幹を揺さぶるものとなりえることを、日本は認識しておくべきと考えます。
このように、中国正面での「CSAR:捜索救助任務」が極めて重い問題であることを最初に再確認しておき、実質進展がない米空軍内での検討状況を米議会証言から以下でご紹介しておきます。
4月27日付米空軍協会web記事によれば
●27日の下院軍事委員会でBrown米空軍参謀総長は、議員からアジア太平洋戦域における遠方CSARに関してHH-60Wでは能力不足だからCV-22オスプレイ活用を検討しているかと問われ、オスプレイを追加導入してCSARに活用するつもりは無く、一旦停止した製造ラインを再立ち上げるにはコストが掛かりすぎると理由の一端を説明した
●そしてBrown大将は、米陸軍が最近FLRAA(将来長距離攻撃ヘリ)に選定したティルローター型機「Bell V-280」も候補として検討すると述べ、更に他の候補機として空軍現有のCV-22オスプレイや同陸軍機種選定に敗れたSikorsky-Boeing社製の「Difiant X」へりのほか、具体的機種には言及せず他の企業製品も見ていると語った
(なお、米空軍現有のCV-22に関しては、同機を保有する空軍特殊作戦軍司令官が最近繰り返し、CV-22が遠方CSAR任務を遂行する計画はないと強調している)
●26日に上院軍事委員会で証言したJames Slife空軍作戦部長は、ベトナム戦での歴史が示すように、米空軍にとって撃墜された兵士を救出することは「道徳的義務:moral imperative」だと表現し、この義務を果たすため非伝統的な手法を含め検討中だとし、唯一確かなことは速度270㎞程度でC-130から空中給油を受ける必要があるアセット(HH-60Wのこと)では厳しい環境での答えにはならない点である、と述べている
●また同委員会でRichard Moore空軍計画部長は、HH-60Wの85機要求は十分な機数であり、同機が担う救命救助任務と人員回収(personnel recovery)の内、人員回収(personnel recovery)任務については、米軍内に同任務可能な機種が多数現存する点を指摘し、加えてHH-60Wはイラクやアフガン用に購入されたものであり、対中国戦域では有用ではない、と明言している
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ちなみに、米陸軍が2022年12月に機種結果を発表したティルローター型機「Bell V-280」導入は、2025年に陸軍の細部要求を体現したプロトタイプ機が完成し、部隊運用開始が2030年頃との導入計画となっており、仮に米空軍が活用を決定しても使用開始は10年後になります
またHH-60W選定時に、ティルローター型機はダウンウォッシュ(ホバリング時の下方への風量)が強すぎて、救難員がロープで遭難者を収容する作業が不可能との理由で排除した経緯があるのに、なぜ今になって簡単に復活可能なのか理解に苦しみます
米空軍内では、電動無人ヘリ「eVTOL」を前線での極地輸送や救難救助に活用する検討「Agility Prime」計画も始まっていますが、2021年に「100nm先に、3~8名を速度100マイル程度で輸送可能」を目標に定め、「2023年までに実用可能なオプションに煮詰めたい」としたものの、その後進展があったとの報に接していません
冒頭に述べたように、対中国作戦遂行上の目立たない「肝」である遠方CSARは、米軍だけでなく自衛隊にとっても極めて重要な任務ですが、全く目途が立たないように思えます。兵站輸送能力確保や弾薬確保と並んで・・・
救難救助体制の再検討
「対中国の救難救助態勢が今ごろ大問題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/
「米空軍トップが語る」→https://holylandtokyo.com/2022/09/08/3614/
米陸軍のFLRAA選定結果
「米陸軍が過去40年で最大のヘリ機種選定」→https://holylandtokyo.com/2022/12/09/4043/
電動ヘリ導入検討「Agility Prime」計画の状況
「米空軍が電動ヘリeVTOL導入検討に本格始動」→https://holylandtokyo.com/2022/06/29/3370/
「電動ヘリeVTOLでACE構想推進へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/13/105/
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米陸軍がFLRAA候補にした2機種も検討対象と
当面はCV-22オスプレイとHH-60Wでしのぐのか
中国の強固な防空網下で活動可能なアセットは夢か

対中国で、母国から遠い中国大陸近傍での戦いを強いられる米軍兵士にとって、敵の勢力下で航空機や艦艇が撃墜撃沈されたり、敵影響下での地上活動を命ぜられた場合に、味方が救出してくれるとの「安心感」「信頼感」は士気に直結しますし、米国世論を踏まえれば、救助作戦が遂行不可能なエリアでの活動実施は、米政権や米軍指揮官にとって命令不可能と言っても過言ではない極めて判断困難なものとなります

同時に、仮に東シナ海や台湾近傍で米軍機や米艦艇が撃墜や撃沈され、近傍の同盟国である日本が米軍兵士に有効な救助活動を提供できなかった場合(努力する姿勢を見せなかった場合も含め)、米国民感情からも、米軍兵士から見ても許容できるものではなく、日米同盟の根幹を揺さぶるものとなりえることを、日本は認識しておくべきと考えます。
このように、中国正面での「CSAR:捜索救助任務」が極めて重い問題であることを最初に再確認しておき、実質進展がない米空軍内での検討状況を米議会証言から以下でご紹介しておきます。
4月27日付米空軍協会web記事によれば

●そしてBrown大将は、米陸軍が最近FLRAA(将来長距離攻撃ヘリ)に選定したティルローター型機「Bell V-280」も候補として検討すると述べ、更に他の候補機として空軍現有のCV-22オスプレイや同陸軍機種選定に敗れたSikorsky-Boeing社製の「Difiant X」へりのほか、具体的機種には言及せず他の企業製品も見ていると語った
(なお、米空軍現有のCV-22に関しては、同機を保有する空軍特殊作戦軍司令官が最近繰り返し、CV-22が遠方CSAR任務を遂行する計画はないと強調している)
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またHH-60W選定時に、ティルローター型機はダウンウォッシュ(ホバリング時の下方への風量)が強すぎて、救難員がロープで遭難者を収容する作業が不可能との理由で排除した経緯があるのに、なぜ今になって簡単に復活可能なのか理解に苦しみます

冒頭に述べたように、対中国作戦遂行上の目立たない「肝」である遠方CSARは、米軍だけでなく自衛隊にとっても極めて重要な任務ですが、全く目途が立たないように思えます。兵站輸送能力確保や弾薬確保と並んで・・・
救難救助体制の再検討
「対中国の救難救助態勢が今ごろ大問題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/
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米陸軍のFLRAA選定結果
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電動ヘリ導入検討「Agility Prime」計画の状況
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次期制空6世代機の企業選定開始! [米空軍]
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提案要求書の原案を関連企業に提示し質疑開始の模様
米空軍は2024年に(a contract by or in 2024)契約と
内容についてはほとんど非公開
5月18日、米空軍が次期制空機NGAD(Next Generation Air Dominance)の要求性能に関する文書(solicitation:非公開)を、関連企業(対象企業非公開)に配布し、2024年の契約締結に向けた選定業務を開始したと発表しました
どのような位置づけの文書かも明らかではありませんが、一般的には、正式な提案要求書(RFP)を発出する前の原案を企業側に提示し、内容が不明確な部分などに関する質疑期間を設けて文書を精査し、数か月後に正式な提案要求書として企業に提示し、3か月程度の期限で企業提案を受け付け、受け取った各企業の提案を数か月かけて評価するのがスケジュール感ですが、この流れだと2024年末の決定となる概算できます
NGADに関しては、2020年9月にRoper調達次官補(当時)が、「NGADは既にプロトタイプの初飛行を実施した」と明らかにして世界中が仰天したのですが、18日の発表では「プロトタイプ機初飛行」に関連した企業のみが対象なのか、新規参入希望企業も対象なのか、対象企業は何社か・・・等々の質問には米空軍は答えない姿勢だったようです
ただし、2022年8月に行われたNGAD用の次世代エンジンAETP契約に、エンジン開発企業「以外」で含まれていたボーイング、ロッキード、Northrop Grummanがその実績からも企業選定の対象だろうと一般的には考えられています
なお、前出のRoper次官補が当時ぶち上げた「以後の戦闘機は50-100機程度しか製造せず、8-12年サイクルで最新技術を取り入れた新型戦闘機を導入して陳腐化を避ける」との構想は、現在のKendall空軍長官が「制空機はそんな短周期で入れ替わり可能な単純なシステムではない」とバッサリ切り捨てています
またNGADには、NGADに随伴することを想定している無人ウイングマン機CCA開発と併せて、2024年度予算案に約2700億円が計上され、今後は年々増額されて5年間で約2兆2000億円を研究開発費として投入するとの構想案を米空軍は示しているところです。
以下では米軍事メディアが報じた米空軍18日発表から、NGADへの要求事項概要を紹介します
●(family of systemsとして)融合した兵器システムとしてのsolicitation(直訳:情報などの要望書)を発出した。企業選定の段階であり、設計や製造に関するsolicitation細部には現時点で言及しない
●NGADへの要求性能には、破壊力強化、生存性・相互運用性・全ドメインとの連携性などが求められ、かつ強固に防御された厳しい環境下でこれらが遂行可能なことが含まれている。これらをより適切に可能なのは米空軍だけであり、この分野で前進しなければ、敗北が待っている
●NGADは、制空任務(counter-air missions)と対地攻撃任務(to strike ground targets)を担う。また空軍発表は敵防空能力制圧・破壊(Suppression/Destruction of Enemy Air Defenses (SEAD/DEAD) mission)の任務を担うことも示唆している(seemingly suggested)
●NGAD計画を通じ、米空軍は軍需産業基盤の拡大と刺激を狙っており、オープンアーキテクチャーを追求し、NGADの能力向上時に競争原理を働かせると同時に、機体維持整備費の縮減を図る
●F-35で維持整備費が大きな問題となっていることを受け、長期的に維持整備収入が見込めることも踏まえ、維持整備費を低く抑える誘因が働くようなインセンティブを設定する
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次期制空機NGADに関しては、Kendall空軍長官から以下のような情報が出ています
・NGADは1機数百億円(空軍長官22年5月)
・NGAD調達機数を200機と仮置きし、無人ウイングマン機CCA必要数1000機を導いて2024年度予算を立案(空軍長官23年3月)
・NGADは航続距離短めの欧州型と長いアジア太平洋型になろう(空軍長官23年5月)
F-22後継機の位置づけにある次期制空機NGADは、F-22が退役予定の2030年頃以降の導入予定と認識していますが、別計画で進む無人ウイングマン機CCA計画は、2020年代後半導入開始を目指して先行的に進むと4月に空軍幹部が突然明らかにし、「必要だろうけど、なぜ突然そんなに慌ててるの?」との疑問が界隈から聞かれたところです。
米空軍参謀総長人事と併せ、注目してまいりましょう
AETPエンジン開発と米空軍
「AETP開発を機体メーカー含め契約」→https://holylandtokyo.com/2022/09/01/3581/
NGAD関連の記事
「欧州型とアジア太平洋型の2タイプ追求」→https://holylandtokyo.com/2023/05/10/4604/
「NGADは1機が数百億円」→https://holylandtokyo.com/2022/05/09/3193/
「NGADの無人随伴機開発は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-20
「無人機の群れ前線投入が課題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/28/3474/
「デモ機が既に初飛行済」→https://holylandtokyo.com/2020/09/17/482/
無人ウイングマンCCA関連
「CCAを2020年代後半導入へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/03/4473/
「空軍長官:NGADが200機、CCAは1000機」→https://holylandtokyo.com/2023/03/09/4403/
米空軍の戦闘機構成議論
「戦闘機の近未来体制は」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/
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どのような位置づけの文書かも明らかではありませんが、一般的には、正式な提案要求書(RFP)を発出する前の原案を企業側に提示し、内容が不明確な部分などに関する質疑期間を設けて文書を精査し、数か月後に正式な提案要求書として企業に提示し、3か月程度の期限で企業提案を受け付け、受け取った各企業の提案を数か月かけて評価するのがスケジュール感ですが、この流れだと2024年末の決定となる概算できます

ただし、2022年8月に行われたNGAD用の次世代エンジンAETP契約に、エンジン開発企業「以外」で含まれていたボーイング、ロッキード、Northrop Grummanがその実績からも企業選定の対象だろうと一般的には考えられています

またNGADには、NGADに随伴することを想定している無人ウイングマン機CCA開発と併せて、2024年度予算案に約2700億円が計上され、今後は年々増額されて5年間で約2兆2000億円を研究開発費として投入するとの構想案を米空軍は示しているところです。
以下では米軍事メディアが報じた米空軍18日発表から、NGADへの要求事項概要を紹介します

●NGADへの要求性能には、破壊力強化、生存性・相互運用性・全ドメインとの連携性などが求められ、かつ強固に防御された厳しい環境下でこれらが遂行可能なことが含まれている。これらをより適切に可能なのは米空軍だけであり、この分野で前進しなければ、敗北が待っている
●NGADは、制空任務(counter-air missions)と対地攻撃任務(to strike ground targets)を担う。また空軍発表は敵防空能力制圧・破壊(Suppression/Destruction of Enemy Air Defenses (SEAD/DEAD) mission)の任務を担うことも示唆している(seemingly suggested)

●F-35で維持整備費が大きな問題となっていることを受け、長期的に維持整備収入が見込めることも踏まえ、維持整備費を低く抑える誘因が働くようなインセンティブを設定する
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次期制空機NGADに関しては、Kendall空軍長官から以下のような情報が出ています
・NGADは1機数百億円(空軍長官22年5月)
・NGAD調達機数を200機と仮置きし、無人ウイングマン機CCA必要数1000機を導いて2024年度予算を立案(空軍長官23年3月)
・NGADは航続距離短めの欧州型と長いアジア太平洋型になろう(空軍長官23年5月)

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AETPエンジン開発と米空軍
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次の米空軍人トップは現在の副参謀総長か? [米空軍]
現職Brown大将の推薦で空軍内評価も高いが
副参謀総長には現作戦部長で特殊作戦のプロが候補
バイデン大統領が女性大将を押す可能性も
5月17日付Defense-Newsが、複数の現職及び退役空軍高官(匿名)からの情報として、Brown空軍参謀総長が統合参謀本部議長に就任した後の後任空軍人トップに、現在の副参謀総長であるDavid Allvin大将(輸送機パイロット)が就き、その後任に現作戦部長のJim Slife中将が就任する案が米空軍案だが、「多様性」を重んじるバイデン大統領等が米輸送コマンド司令官である女性のJacqueline Van Ovost大将を押す可能性があると報じています
米軍高官人事は現在、一人の上院議員が妊娠中絶希望女性兵士への帰国旅費拠出問題を持ち出して動きがストップしており、債務上限問題に隠れて米軍全体で大問題となっており、今後の動きが全く読めませんが、記事は現在のBrown参謀総長も強く推している「輸送機と特殊作戦ヘリパイロットの空軍ツートップ」の主役Allvin大将の人物像とその頭にある米空軍の将来像(F-35調達大幅削減と先進ドローン調達増など)の一端を紹介しているので取り上げます
空軍参謀総長候補と噂のDavid Allvin副参謀総長
●1986年空軍士官学校卒業後、C-141輸送機パイロットとしてキャリアを開始し、後にテストパイロットとなりC-17輸送機の導入試験に参画。その後テストパイロット経験から宇宙飛行士への道を志すも、時期尚早との周囲の勧めもあり空軍に残り、1999年ACSCを優秀学生で卒業し、隣接する上級エアパワー研究所で航空戦力運用分野で修士号
●中佐から大佐にかけ、飛行教育分野や輸送機部隊の指揮官等を歴任し、その間にテストパイロットとして素養もありF-15,やF-16戦闘機を含む12機種以上を操縦し、大将としては異例の4600時間以上の飛行時間を誇る
●2010年9月に准将に就任し、アフガニスタンでの飛行教育担当をNATO職務として遂行し、その後2012-13年の間、空軍輸送コマンド作戦運用センター長として世界中で運行する空軍輸送機や空中給油機の作戦運用や航空機取り回しを仕切る
●以後の(最近)10年間の経歴が、Allvin大将の「完璧なインサイダー:consummate insider」との評価を確立する。つまりこの間、国防省、空軍司令部、米欧州軍、国連(J-5から派遣の米国連大使の上級軍事補佐官)で複数の戦略および計画担当将官の任務を果たして昇進し、空軍の利益をより強力に推進擁護し、複雑な米国政府官僚機能の中でのナビゲーターとして「完璧なインサイダー」の地位を確立した、と関係者は評価している。
●2020年11月に空軍副参謀総長に就任し、主に予算編成や新事業推進管理に中心的役割を果たしているが、「完璧なインサイダー」としての実力を遺憾なく発揮し、「ワシントン流のノウハウを備えた教授的なリーダー」として、更に「人とは異なる大きいビジョン」を持ちつつ、熱心に勉強し、自制心を持ち、他者に敬意をもって政府内外の見識を集めて議論を進める高い能力を発揮した
●特に副参謀総長として参加した国防省の新規事業計画の評価を行う「Joint Requirements Oversight Council」の指導的メンバーとして、また戦略的計画ペーパーの取りまとめで能力を発揮し、米空軍の優先事項が従来より確実に国防省予算案に組み込まれて「空軍に莫大な勝利をもたらした」と空軍司令部や空軍OBから評価されている
●また、厳しい現実に直面している新兵募集や操縦者・整備員・サイバー専門兵士等の確保についても、彼はその経験から兵士の職域管理に柔軟性を持たせることなど独自のアイディアを持って推進しており、Brown現参謀総長が推進するACE構想に関しても、空軍全体から草の根のアイディアを募って積極的に具現化するなど手腕を発揮しBrown大将も評価している
●空軍予算の拡大獲得等を通じてKendall空軍長官とも緊密な関係を築き、特殊作戦ヘリ操縦者ながら空軍作戦部長に2022年12月から就任(史上初)している行動派の副参謀総長候補Jim Slife中将とも良好で緊密な関係を構築しており、関係者は「Allvin参謀総長がアイディアを出し、Slife副参謀総長が実行を担う」形になるのでは・・と早くも予想している。ちなみに空軍人ツートップが共に非戦闘機パイロットなれば10年ぶりとなる
●現在のBrown参謀総長・Allvin副参謀総長・Slife作戦部長体制は、維持費のかさむF-15やA-10の早期退役を加速し、F-35の調達機数も計画よりも削減し、先端無人機や指揮統制能力強化への投資を推進する案を練って推進し始めているが、「Allvin参謀総長とSlife副参謀総長」体制に加え、同じ方向の在韓米軍副司令官Scott Pleus中将を空軍司令部スタッフのまとめ役に配置する人事案も進めてモメンタムの維持を追求している
●Allvin大将の作戦運用面での経験不足を懸念する声もあるが、対中国の専門家でACE構想発案者である太平洋空軍司令官Kenneth Wilsbach大将を「戦闘機族のボス」と言われる空軍戦闘コマンド司令官にする「異例の人事案」も進められており、後任の太平洋空軍司令官にもペンタゴンとのパイプが太くかつ地域専門家の即戦力Schneider中将を推薦しており、大きな問題とはなっていない
////////////////////////////////////////////////
あくまで米空軍内での「皮算用」であり、オースチン国防長官やバイデン大統領が、上記記事のような人事案を認めるのか全く定かではありません。
まんぐーすの個人的感想を申し上げれば、今の時代だからこそ、改革推進派の「Allvin参謀総長とSlife副参謀総長」体制を実現してほしいですし、10年ぶりの非戦闘機パイロット2トップに大いに期待したいです
参謀総長候補のAllvin副参謀総長公式経歴
→https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/108725/david-w-allvin/
関連する米空軍人事案
「Brown参謀総長は米軍人トップ候補」→https://holylandtokyo.com/2023/05/09/4618/
「ACCトップ候補が極めて異例」→https://holylandtokyo.com/2023/05/11/4614/
「太平洋空軍司令官候補は元在日米軍司令官」→https://holylandtokyo.com/2023/04/26/4567/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
副参謀総長には現作戦部長で特殊作戦のプロが候補
バイデン大統領が女性大将を押す可能性も

米軍高官人事は現在、一人の上院議員が妊娠中絶希望女性兵士への帰国旅費拠出問題を持ち出して動きがストップしており、債務上限問題に隠れて米軍全体で大問題となっており、今後の動きが全く読めませんが、記事は現在のBrown参謀総長も強く推している「輸送機と特殊作戦ヘリパイロットの空軍ツートップ」の主役Allvin大将の人物像とその頭にある米空軍の将来像(F-35調達大幅削減と先進ドローン調達増など)の一端を紹介しているので取り上げます
空軍参謀総長候補と噂のDavid Allvin副参謀総長

●中佐から大佐にかけ、飛行教育分野や輸送機部隊の指揮官等を歴任し、その間にテストパイロットとして素養もありF-15,やF-16戦闘機を含む12機種以上を操縦し、大将としては異例の4600時間以上の飛行時間を誇る
●2010年9月に准将に就任し、アフガニスタンでの飛行教育担当をNATO職務として遂行し、その後2012-13年の間、空軍輸送コマンド作戦運用センター長として世界中で運行する空軍輸送機や空中給油機の作戦運用や航空機取り回しを仕切る
●以後の(最近)10年間の経歴が、Allvin大将の「完璧なインサイダー:consummate insider」との評価を確立する。つまりこの間、国防省、空軍司令部、米欧州軍、国連(J-5から派遣の米国連大使の上級軍事補佐官)で複数の戦略および計画担当将官の任務を果たして昇進し、空軍の利益をより強力に推進擁護し、複雑な米国政府官僚機能の中でのナビゲーターとして「完璧なインサイダー」の地位を確立した、と関係者は評価している。

●特に副参謀総長として参加した国防省の新規事業計画の評価を行う「Joint Requirements Oversight Council」の指導的メンバーとして、また戦略的計画ペーパーの取りまとめで能力を発揮し、米空軍の優先事項が従来より確実に国防省予算案に組み込まれて「空軍に莫大な勝利をもたらした」と空軍司令部や空軍OBから評価されている
●また、厳しい現実に直面している新兵募集や操縦者・整備員・サイバー専門兵士等の確保についても、彼はその経験から兵士の職域管理に柔軟性を持たせることなど独自のアイディアを持って推進しており、Brown現参謀総長が推進するACE構想に関しても、空軍全体から草の根のアイディアを募って積極的に具現化するなど手腕を発揮しBrown大将も評価している
●空軍予算の拡大獲得等を通じてKendall空軍長官とも緊密な関係を築き、特殊作戦ヘリ操縦者ながら空軍作戦部長に2022年12月から就任(史上初)している行動派の副参謀総長候補Jim Slife中将とも良好で緊密な関係を構築しており、関係者は「Allvin参謀総長がアイディアを出し、Slife副参謀総長が実行を担う」形になるのでは・・と早くも予想している。ちなみに空軍人ツートップが共に非戦闘機パイロットなれば10年ぶりとなる

●Allvin大将の作戦運用面での経験不足を懸念する声もあるが、対中国の専門家でACE構想発案者である太平洋空軍司令官Kenneth Wilsbach大将を「戦闘機族のボス」と言われる空軍戦闘コマンド司令官にする「異例の人事案」も進められており、後任の太平洋空軍司令官にもペンタゴンとのパイプが太くかつ地域専門家の即戦力Schneider中将を推薦しており、大きな問題とはなっていない
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あくまで米空軍内での「皮算用」であり、オースチン国防長官やバイデン大統領が、上記記事のような人事案を認めるのか全く定かではありません。
まんぐーすの個人的感想を申し上げれば、今の時代だからこそ、改革推進派の「Allvin参謀総長とSlife副参謀総長」体制を実現してほしいですし、10年ぶりの非戦闘機パイロット2トップに大いに期待したいです
参謀総長候補のAllvin副参謀総長公式経歴
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DARPAが「動翼」の無い航空機X-65イメージ公開 [米国防省高官]
試験飛行を2025年開始予定
「動翼」なく「Active Flow Control」で機体制御
機体の軽量化・耐久性強化・ステルス性向上など狙い
5月16日付TheDeBreifなど複数の米航空メディアが、同15日にDARPAが公開した、「動翼」の無い航空機開発計画「CRANE:Control of Revolutionary Aircraft with Novel Effecters」の試験開発機体X-65イメージ図を報じています
航空機の「動翼」とは、エルロン、エレベーター、およびラダーからなる操縦翼面(いわゆる舵面)で、3つはそれぞれ航空機の回転(ロール)、上下(ピッチ)、左右(ヨー)方向の動きを制御するものですが、「CRANE」計画ではこの動翼(traditional, exterior-moving flight controls)を、AFC技術(Active Flow Control)に置き換えようとしています
そしてDARPAはこのAFC技術を用いて、機体周辺の空気の流れを制御して機体を動かす実験的な無人機(X-65:experimental uncrewed aircraft that maneuvers by controlling the air flow around it)を製造し、2025年からの試験飛行開始を「CRANE」計画で目指しています。
DARPAの「CRANE」計画は数年前から開始されていたらしいですが、本格的に表面化したのはDARPAが2023年1月に「Aurora Flight Sciences社」と契約し、Phase 1「基本コンセプト成熟」、Phase 2「飛行制御ソフト開発と制御技術開発」、Phase 3「機体重量7000ポンド(3トン強)のX-65試験飛行」の3段階で進めることを明らかにしてからで、その後わずか5か月でイメージ図が公表されたことで話題となっています
この「動翼」をAFC技術(Active Flow Control)に置き換えることのメリットは、部品の可動部分や接続部分を無くすことで、機械的複雑さを無くして信頼性向上や軽量化が図られ、関連部品の摩耗等による交換不要で維持整備負担が軽減され、更にステルス性向上にもつながる等とされているようです
またDARPAは実験機X-65に、「モジュラー構造の翼:modular wing configurations」を要求しており、今後民間機への応用も期待されるAFC技術(Active Flow Control)が官民挙げての研究で日進月歩で進化することも想定し、最新技術を開発途中でも容易に取り込める配慮もしています
このAFC技術が確立されると、航空機産業界への影響が少なくないと思われますので、折に触れ今後もフォローしていきたいと思いますし、以下の過去記事で「AI空中戦ソフト技術」や「小型無人機対処兵器」開発にも関わっているボーイング傘下の企業「Aurora Flight Sciences社」にも、引き続き注目したいと思います
Aurora Flight Sciences社案は以下のDARPA計画候補機にも
「大型水上離着陸機の候補」→https://holylandtokyo.com/2023/02/15/4268/
同社の名前が出てくる記事
「小型無人機対処装備を求めオプション試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「8企業がAI空中戦でF-16人間操縦者に挑む」→https://holylandtokyo.com/2020/08/19/528/
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「動翼」なく「Active Flow Control」で機体制御
機体の軽量化・耐久性強化・ステルス性向上など狙い

航空機の「動翼」とは、エルロン、エレベーター、およびラダーからなる操縦翼面(いわゆる舵面)で、3つはそれぞれ航空機の回転(ロール)、上下(ピッチ)、左右(ヨー)方向の動きを制御するものですが、「CRANE」計画ではこの動翼(traditional, exterior-moving flight controls)を、AFC技術(Active Flow Control)に置き換えようとしています

DARPAの「CRANE」計画は数年前から開始されていたらしいですが、本格的に表面化したのはDARPAが2023年1月に「Aurora Flight Sciences社」と契約し、Phase 1「基本コンセプト成熟」、Phase 2「飛行制御ソフト開発と制御技術開発」、Phase 3「機体重量7000ポンド(3トン強)のX-65試験飛行」の3段階で進めることを明らかにしてからで、その後わずか5か月でイメージ図が公表されたことで話題となっています

またDARPAは実験機X-65に、「モジュラー構造の翼:modular wing configurations」を要求しており、今後民間機への応用も期待されるAFC技術(Active Flow Control)が官民挙げての研究で日進月歩で進化することも想定し、最新技術を開発途中でも容易に取り込める配慮もしています

Aurora Flight Sciences社案は以下のDARPA計画候補機にも
「大型水上離着陸機の候補」→https://holylandtokyo.com/2023/02/15/4268/
同社の名前が出てくる記事
「小型無人機対処装備を求めオプション試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
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AMRAAM最新型の大増産で謎の後継JATMは? [米空軍]
【追加情報】
AIM-120後継のAIM-260今年hopefully量産開始
5月2日の上院軍事委員会で空軍長官と空軍参謀総長が
最初はF-22に搭載し、無人ウイングマンCCAにも搭載
ただし(今年の?)生産目標数は掲げず・・・と
////////////////////////////////////////////
新型AMRAAMのAIM-120D-3(輸出型はC-8)が今年部隊へ
2026年製造終了予定だったAIM-120が大増産&26年以降も
謎のAIM-120後継ミサイルAIM-260(JATM)は順調?
4月18日、米空軍と海軍の戦闘機が搭載している空対空ミサイルAIM-120(AMRAAM)の最新D-3型を開発製造するレイセオン社が、米空軍による審査(Functional Configuration Audit)を無事通過し、2023年後半には米空軍や海軍部隊に提供を開始すると発表しました
「D-3」型は15の搭載回路カードが更新され、最新ソフトを搭載することで、GPS利用航法能力やデータリンク能力向上、ネットワーク能力や誘導装置能力も向上するということですが、「D-3」型の輸出版である「C-8」に対する審査も今年後半には完了し、現在42か国(14機種)に搭載されている空対空ミサイルの西側スタンダードであるAIM-120最新型が、対ロシアや対中国で世界の空を守るだろうと報道されています
ロシアのウクライナ侵略とウクライナへの兵器提供で弾薬庫が「空っぽ」になる危機に直面している米国やNATO諸国は、各種兵器の増産体制確保と調達予算確保に奔走し始めていますが、AIM-120も今後の生産は「D-3」と「C-8」型に絞られ増産体制強化と予算確保が進行中ですが、
2022年に317発、23年に271発であった調達数が、2024年度の米空軍予算案資料では、2024年度に457発、25年に462発、26年に664発と調達増を図り、後継ミサイルJATM(AIM-260)導入で26年にAIM-120製造中止計画だったものが、2027年にも118発、28年以降にも30発以上を調達して生産ラインを残すことになっています
このAIM-120の2026年以降の製造継続についてRichard G. Moore米空軍計画部長は、ウクライナでの教訓を理由とした増産だと説明しましたが、記者団からはすぐさま後継ミサイルJATM(AIM-260)導入の遅れがあるのかと質問が飛び、「現時点では遅れはない」とMoore中将が回答したようです
ただ更に同中将は、「JATMは現在前進中(is still progressing)のミサイルで、2024年度予算案のAIM-120関連経費にも、JATM(AIM-260)導入加速に資する事業が含まれている」とも発言しており、「2022年度中にIOC予定」だと2022年4月に空軍幹部が発言していたJATM(AIM-260)の極秘開発の進捗状況に疑念を呼ぶ結果となっています
AIM-260(JATM:Joint Advanced Tactical Missile)とは
●現在も超極秘プレジェクトながら、2019年夏に米空軍担当のGenatempo空軍准将(当時)によって明らかにされたAIM-120後継ミサイル
●同准将は当時、2021年度に発射試験を開始し、2022年度IOCを目指す計画を明らかにし、AIM-120より射程距離を延伸し、中国のPL-15空対空ミサイルとの空中戦でも対抗可能な能力獲得を目指すと語っていた。
●また2019年に米空軍は、JATM保管場所として、ユタ州のHill空軍基地に厳重なセキュリティーを確保できる「Special Access Program Facility」を設置すると明らかにしている
●性能等は全く不明ながら、AIM-120射程が初期型(A/B型70㎞)、C型100㎞、D型150㎞程度のところ、AIM-260は200㎞越えで、飛翔速度も「120」のマッハ4からマッハ5に向上すると噂されている
●無人標的機QF-16使用の様々な試験が、Tyndall空軍基地を周辺で実施されているとの報道もあったが、写真が一枚も出回らない極秘開発案件である
////////////////////////////////////////////
まぁ必要ないとは言いませんが、台湾有事の際に、どの程度米軍の戦闘機クラスに搭載した空対空ミサイルに活躍の場があるのか、台湾有事をシミュレーションしたCSISやCNASのレポートを確認したいものです。
最もニーズが高いとされる対艦巡航ミサイルLRASM(空対艦ミサイル)の射程が1000㎞超ですからねぇ・・・
AMRAAM(AIM-120)後継のAIM-260開発関連
「超極秘開発の新型空対空ミサイルAIM-260 JATM」→https://holylandtokyo.com/2022/04/04/3088/
インパクト強烈なCSISレポート・台湾有事で日本も・・・
空母2隻・数10隻の艦艇と数百機の航空機喪失、台湾経済大打撃・米軍の影響力当面喪失危機
「台湾有事のWargame結果を異例公開」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/
弾薬不足警鐘レポート
「CSISも弾薬調達&提供問題レポート」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/4212/
「米軍は弾薬にもっと予算配分を」→https://holylandtokyo.com/2022/12/02/3990/
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AIM-120後継のAIM-260今年hopefully量産開始
5月2日の上院軍事委員会で空軍長官と空軍参謀総長が
最初はF-22に搭載し、無人ウイングマンCCAにも搭載
ただし(今年の?)生産目標数は掲げず・・・と
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新型AMRAAMのAIM-120D-3(輸出型はC-8)が今年部隊へ
2026年製造終了予定だったAIM-120が大増産&26年以降も
謎のAIM-120後継ミサイルAIM-260(JATM)は順調?

「D-3」型は15の搭載回路カードが更新され、最新ソフトを搭載することで、GPS利用航法能力やデータリンク能力向上、ネットワーク能力や誘導装置能力も向上するということですが、「D-3」型の輸出版である「C-8」に対する審査も今年後半には完了し、現在42か国(14機種)に搭載されている空対空ミサイルの西側スタンダードであるAIM-120最新型が、対ロシアや対中国で世界の空を守るだろうと報道されています

2022年に317発、23年に271発であった調達数が、2024年度の米空軍予算案資料では、2024年度に457発、25年に462発、26年に664発と調達増を図り、後継ミサイルJATM(AIM-260)導入で26年にAIM-120製造中止計画だったものが、2027年にも118発、28年以降にも30発以上を調達して生産ラインを残すことになっています

ただ更に同中将は、「JATMは現在前進中(is still progressing)のミサイルで、2024年度予算案のAIM-120関連経費にも、JATM(AIM-260)導入加速に資する事業が含まれている」とも発言しており、「2022年度中にIOC予定」だと2022年4月に空軍幹部が発言していたJATM(AIM-260)の極秘開発の進捗状況に疑念を呼ぶ結果となっています
AIM-260(JATM:Joint Advanced Tactical Missile)とは

●同准将は当時、2021年度に発射試験を開始し、2022年度IOCを目指す計画を明らかにし、AIM-120より射程距離を延伸し、中国のPL-15空対空ミサイルとの空中戦でも対抗可能な能力獲得を目指すと語っていた。
●また2019年に米空軍は、JATM保管場所として、ユタ州のHill空軍基地に厳重なセキュリティーを確保できる「Special Access Program Facility」を設置すると明らかにしている

●無人標的機QF-16使用の様々な試験が、Tyndall空軍基地を周辺で実施されているとの報道もあったが、写真が一枚も出回らない極秘開発案件である
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まぁ必要ないとは言いませんが、台湾有事の際に、どの程度米軍の戦闘機クラスに搭載した空対空ミサイルに活躍の場があるのか、台湾有事をシミュレーションしたCSISやCNASのレポートを確認したいものです。
最もニーズが高いとされる対艦巡航ミサイルLRASM(空対艦ミサイル)の射程が1000㎞超ですからねぇ・・・
AMRAAM(AIM-120)後継のAIM-260開発関連
「超極秘開発の新型空対空ミサイルAIM-260 JATM」→https://holylandtokyo.com/2022/04/04/3088/
インパクト強烈なCSISレポート・台湾有事で日本も・・・
空母2隻・数10隻の艦艇と数百機の航空機喪失、台湾経済大打撃・米軍の影響力当面喪失危機
「台湾有事のWargame結果を異例公開」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/
弾薬不足警鐘レポート
「CSISも弾薬調達&提供問題レポート」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/4212/
「米軍は弾薬にもっと予算配分を」→https://holylandtokyo.com/2022/12/02/3990/
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CSIS:露のウへのミサイル攻撃を総括分析 [安全保障全般]
ロシアの失敗を将来の戦いで期待すべきではないし
ウクライナ経済の復興は極めて厳しいが
防空&ミサイル防衛システムと分散運用の効果確認
5月11日付Defense-Newsが、CSISのミサイル防衛プロジェクト副責任者であるIan Williams研究員の寄稿を掲載し、ロシアによるウクライナ侵略当初からの巡航ミサイルや無人機による攻撃は、ロシア軍ミサイル部隊等の低パフォーマンスや、目標情報の入手分析や情報伝達能力の低さにより、ウクライナの指揮統制能力や防空能力を破砕するに至らないままミサイル等を消費し、低調になりつつあるとの指摘を紹介しています
この間、ロシアミサイル部隊や無人機攻撃部隊は、攻撃目標重点をウクライナ軍からウクライナのエネルギーインフラに移し電力供給網等に打撃を与えたが、春に現地を訪問して確認した限りでは最低限の電力網は維持されており、また西側の支援も得たウクライナ防空能力向上により、弾薬不足は影を落としているものの、2022年春のミサイル撃墜率10%程度から、同年年末には5割程度になり、最近では7-8割にまで向上していると同研究員は指摘しています
同研究員は、このロシア軍のミサイル攻撃作戦事例は、ロシア軍の自軍への過信やウクライナ軍能力過小評価が重なったケースであり、将来のミサイル防衛を考える上では注意を要するものの、ミサイル攻撃に不可欠な敵目標の継続的かつ迅速な把握、指揮統制系統維持の重要性、更に防御側の分散、機動、隠蔽、カモフラージュなどの基本的な自軍防御努力の重要性が改めて確認されていると主張しています
同研究員は5月5日に本件に関する約70ページのレポート「Putin’s Missile War」を発表しており、Defense-Newsへの寄港はその概要の概要ですが、細部の作戦状況に関する情報入手が難しい中で、公開情報や現地調査を踏まえ、将来の軍事作戦の中核になるミサイル攻撃や無人機攻撃についてアプローチを試みるもので貴重であり、概要の概要を更につまみ食いしてご紹介しておきます
5月11日付Defense-News記事によれば
●2022年2月以来、ロシア軍は数千発のミサイルや片道無人機よるウクライナ攻撃を行っており、これによりウクライナ国民や社会インフラは大きな損害を受け、戦後のウクライナ経済回復は大変厳しく、海外からの大きな支援を持ってして長期間を要することになろう
●しかし軍事的にロシア軍は戦略目標を達したとは言えず、作戦の細部は依然不明部分が多いが、ロシア軍の作戦遂行能力の低さ(ミサイル部隊等の低能力や、目標情報の入手分析や情報伝達能力の低さ)とウクライナ軍の西側支援を活用した粘り強い戦いにより、ウクライナは指揮統制系統を維持し、ウクライナ国民の士気は大きな低下を見せていない。またウクライナの兵站能力も、低下はしているがロシアの狙いほどはダメージを受けていない
●このようなロシア軍の状況は、湾岸戦争やイラク戦争時の米主導多国籍軍による巡航ミサイルや精密誘導兵器を巧みに使用した作戦結果と対照的で、イラク国家指導層とイラク軍の指揮系統を絶ち、イラク防空能力を短期間で破砕して航空優勢を獲得した戦史とは対極の結果となっている
●現在のロシア軍は既にミサイル在庫が大幅に減少し、ウクライナへの攻撃数は減少しており、国内で新規に製造した少数のミサイル等で時折攻撃を再開する程度にまで攻撃は低下している。逆にウクライナは世界的な防空兵器弾薬枯渇に直面してはいるが、西側からの防空兵器提供を受け、ロシア側ミサイルの迎撃率を飛躍的に(前述のように)向上させている
●言い換えればロシアは、自らがウクライナ侵略後にウクライナ内で確立したかったA2AD網構築に失敗し、逆に西側の支援を受けたウクライナ軍のA2AD網に阻止され、被害が拡大している状況にも見える
●ロシア側の失敗の原因は、侵略の目標目的達成に必要な作戦規模を低く見積もりすぎていたこと、ロシア軍の能力を過信していたこと、特にウクライナ軍の機動・分散による部隊配備の変化を迅速に捕え、攻撃サイクルに反映する仕組みの機能不全が際立った印象がある
●ロシアによるウクライナ侵攻で観察された事象が、他の地域で今後再現されるとの前提を置くべきではないが、巡航ミサイル等による攻撃は非常に危険だが、完全に阻止不可能ではないことをウクライナは示したと言える。
●高性能の防空システムと指揮統制システムを訓練した兵士に運用させ、ローテクではあるが重要な装備の分散、機動展開による位置秘匿、装備品のカモフラージュによる隠蔽、おとりによる敵監視網情報網のかく乱などを組み合わせる事で、防空&ミサイル防衛システムを機能させ、被害を緩和することが可能なことを示したとは言える
/////////////////////////////////////////////////
「戦った経験がない」中国軍とウクライナでのロシア軍を比較することは困難ですが、通所兵器での西側との対峙を事実上あきらめ、核戦力による抑止や対応に軸足を移しつつあったロシア軍と、台湾有事を例に考えれば、通常兵器でも十二分に米軍に対応可能なレベルの中国軍の現状での違いは明らかだと思います
CSISのIan Williams研究員ご指摘のように、「高性能の防空システムと指揮統制システムを訓練した兵士に運用させ、ローテクではあるが重要な装備の分散、機動展開による位置秘匿、装備品のカモフラージュによる隠蔽、おとりによる敵監視網情報網のかく乱などを組み合わせる事」の重要性を再確認しておきましょう。
そして、日本の環境で有事に機能しそうもない戦闘機に過剰投資している日本の現状への警鐘と理解しておけば良いと思います
CSISのレポート「Putin’s Missile War」紹介ページ
→https://www.csis.org/analysis/putins-missile-war
ウクライナでの戦いに学ぶ
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦に直面するウ」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/
「アジア太平洋への教訓は兵站」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「SpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
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→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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ウクライナ経済の復興は極めて厳しいが
防空&ミサイル防衛システムと分散運用の効果確認

この間、ロシアミサイル部隊や無人機攻撃部隊は、攻撃目標重点をウクライナ軍からウクライナのエネルギーインフラに移し電力供給網等に打撃を与えたが、春に現地を訪問して確認した限りでは最低限の電力網は維持されており、また西側の支援も得たウクライナ防空能力向上により、弾薬不足は影を落としているものの、2022年春のミサイル撃墜率10%程度から、同年年末には5割程度になり、最近では7-8割にまで向上していると同研究員は指摘しています

同研究員は5月5日に本件に関する約70ページのレポート「Putin’s Missile War」を発表しており、Defense-Newsへの寄港はその概要の概要ですが、細部の作戦状況に関する情報入手が難しい中で、公開情報や現地調査を踏まえ、将来の軍事作戦の中核になるミサイル攻撃や無人機攻撃についてアプローチを試みるもので貴重であり、概要の概要を更につまみ食いしてご紹介しておきます
5月11日付Defense-News記事によれば

●しかし軍事的にロシア軍は戦略目標を達したとは言えず、作戦の細部は依然不明部分が多いが、ロシア軍の作戦遂行能力の低さ(ミサイル部隊等の低能力や、目標情報の入手分析や情報伝達能力の低さ)とウクライナ軍の西側支援を活用した粘り強い戦いにより、ウクライナは指揮統制系統を維持し、ウクライナ国民の士気は大きな低下を見せていない。またウクライナの兵站能力も、低下はしているがロシアの狙いほどはダメージを受けていない

●現在のロシア軍は既にミサイル在庫が大幅に減少し、ウクライナへの攻撃数は減少しており、国内で新規に製造した少数のミサイル等で時折攻撃を再開する程度にまで攻撃は低下している。逆にウクライナは世界的な防空兵器弾薬枯渇に直面してはいるが、西側からの防空兵器提供を受け、ロシア側ミサイルの迎撃率を飛躍的に(前述のように)向上させている

●ロシア側の失敗の原因は、侵略の目標目的達成に必要な作戦規模を低く見積もりすぎていたこと、ロシア軍の能力を過信していたこと、特にウクライナ軍の機動・分散による部隊配備の変化を迅速に捕え、攻撃サイクルに反映する仕組みの機能不全が際立った印象がある

●高性能の防空システムと指揮統制システムを訓練した兵士に運用させ、ローテクではあるが重要な装備の分散、機動展開による位置秘匿、装備品のカモフラージュによる隠蔽、おとりによる敵監視網情報網のかく乱などを組み合わせる事で、防空&ミサイル防衛システムを機能させ、被害を緩和することが可能なことを示したとは言える
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「戦った経験がない」中国軍とウクライナでのロシア軍を比較することは困難ですが、通所兵器での西側との対峙を事実上あきらめ、核戦力による抑止や対応に軸足を移しつつあったロシア軍と、台湾有事を例に考えれば、通常兵器でも十二分に米軍に対応可能なレベルの中国軍の現状での違いは明らかだと思います

そして、日本の環境で有事に機能しそうもない戦闘機に過剰投資している日本の現状への警鐘と理解しておけば良いと思います
CSISのレポート「Putin’s Missile War」紹介ページ
→https://www.csis.org/analysis/putins-missile-war
ウクライナでの戦いに学ぶ
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦に直面するウ」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/
「アジア太平洋への教訓は兵站」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
「SpaceXに学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
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現時点では却下も豪州がB-21購入検討認める [安全保障全般]
B-21製造企業CEOは「may still be on the table」と
豪州公開のDefense Strategic ReviewでB-21に言及
4月24日に豪州政府が発表した「Defense Strategic Review 2023」の中で、米空軍とNorthrop Grumman(以下NG社)が開発中の新型ステルス爆撃機B-21に関し、「豪州と米国でB-21の豪州導入に関し議論を行ったが、現下の情勢を踏まえ適当なオプションとは考えなかった」と明記し、同爆撃機導入検討が行われたことが明らかになりました
同27日に定期決算発表を行ったNG社CEOのKathy Warden氏は本件に関し、「B-21が(まだ初飛行も行っていない)開発段階にあり、同機開発契約を結んでいる米国以外の政府とB-21について議論することは時期尚早だと思うが、両国間で議論が行われ、継続していること(there were discussions—ongoing ones)が重要である」、「まだ議論の俎上にある(such a move may still be on the table.)」と言及しています
2021年9月15日に米英豪が協力枠組み「AUKUS」を創設し、柱として米英の原子力潜水艦技術を豪に提供して豪が8隻以上の原潜建造を目指すことや、AIやサイバーや量子技術でも連携する方針を明らかにしており、その後AUKUSを航空宇宙分野にも拡大する様子が報道される中、同CEOは27日に「2-3年前であればサプライズだっただろうが・・」とも発言し、どこまで両国協議に関与しているのか(いないのか)謎ですが、「匂う」発言をしています
NG社の剛腕女性CEOはまた同時に、現時点で豪州がB-21導入を追求しなかったとしても、同国は2月に大規模なFMS要求を米国に提出し、長射程対レーダーミサイルAARGM-ER (Advanced Anti-Radar Guided Missile, Extended Range)や、空中発射対艦攻撃巡航ミサイルLRASMと同対地攻撃版JASSM-ERを求めているとも発言もし、米豪間の強い関係を示唆しています
なお、24日の豪州「・・・Review 2023」発表に寄せ、オースチン米国防長官が声明を出し、B-21関連記述には直接言及しないながらも、「豪州が新技術の導入の先頭に立って関与を継続している点を高く評価したい」、「自由で開かれたIndo-Pacificの維持に、豪州がAUKUS やQuad参加を含め重要な役割を果たしていることの証左である」、
更に「2024年には豪が初めてNational Defense Strategyを発表する予定だ」と述べており、想像を勝手にたくましくすると、2024年の「・・Strategy」文書での進展を米国として期待しているのかもしれません。
ただ、豪州方面からの報道では、更に投資するならF-35導入機数を増やしたいとの豪州の意向が米国に伝えられたとの記事もあり、1機700億とか800億円で、周辺機材や格納施設等を含めると莫大な初期投資が必要なステルス爆撃機の導入はハードルが高いのかもしれません
4月24日発表の豪州Defense Strategic Reviewのwebサイト
→https://www.defence.gov.au/about/reviews-inquiries/defence-strategic-review
2021年9月AUKUS創設発表時の関連記事
「AUKUS発表と米豪2+2」→https://holylandtokyo.com/2021/09/20/2255/
最近のB-21関連記事
「米軍事メディアの観察」→https://holylandtokyo.com/2022/12/14/4027/
「映像で紹介:B-21初披露式典」→https://holylandtokyo.com/2022/12/05/4015/
「10の視点でご紹介:NG社事前リリース」→https://holylandtokyo.com/2022/12/01/4004/
米海軍の艦艇潜水艦建造や修理能力がピンチ
「強度不足で米海軍の4ドック使用停止」→https://holylandtokyo.com/2023/02/03/4234/
「米空母と潜水艦修理の75%が遅延」→https://holylandtokyo.com/2020/08/27/534/
「空母故障で空母なしで出撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-16
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
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豪州公開のDefense Strategic ReviewでB-21に言及

同27日に定期決算発表を行ったNG社CEOのKathy Warden氏は本件に関し、「B-21が(まだ初飛行も行っていない)開発段階にあり、同機開発契約を結んでいる米国以外の政府とB-21について議論することは時期尚早だと思うが、両国間で議論が行われ、継続していること(there were discussions—ongoing ones)が重要である」、「まだ議論の俎上にある(such a move may still be on the table.)」と言及しています

NG社の剛腕女性CEOはまた同時に、現時点で豪州がB-21導入を追求しなかったとしても、同国は2月に大規模なFMS要求を米国に提出し、長射程対レーダーミサイルAARGM-ER (Advanced Anti-Radar Guided Missile, Extended Range)や、空中発射対艦攻撃巡航ミサイルLRASMと同対地攻撃版JASSM-ERを求めているとも発言もし、米豪間の強い関係を示唆しています

更に「2024年には豪が初めてNational Defense Strategyを発表する予定だ」と述べており、想像を勝手にたくましくすると、2024年の「・・Strategy」文書での進展を米国として期待しているのかもしれません。

4月24日発表の豪州Defense Strategic Reviewのwebサイト
→https://www.defence.gov.au/about/reviews-inquiries/defence-strategic-review
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