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人員不足の米宇宙軍が任務部外委託を検討 [Joint・統合参謀本部]

2023 年末に関連企業へ人材派遣の情報提供依頼
海兵隊の 1/18 規模で宇宙軍人的戦カモデル追及
単なるモニターや機材トラブル対処ではなく
任務遂行に直結する役割担当を RFI で問いかけ

Saltzman7.jpg3月29日付米空軍協会 web 記事が、発足から僅か4年目で、2025 年度予算が満額認められても軍人と文民職員合わせて 15000名規模しかない米宇宙軍が、増え続ける任務要求に対処するため、他軍種で行われている「業務の部外委託」の枠を超え、より任務遂行に直結する役割を民間企業社員に業務委託できないか、RFI情報提供要求を発出して検討している様子を報じています

米国防省や米空軍が反対する中、結局はトランプ大統領の「鶴の一声」で誕生した宇宙軍ですが、フランス軍が追随して宇宙軍を設けたり、ウクライナでの戦いで宇宙センサーや衛星通信の重要性が一段とクローズアップされるにつれ、宇宙軍の存在自体への反対は目立たなくなりましたが、陸海海兵隊の中で最小の海兵隊でさえ 17万人規模の中、軍人 9400名と文民4600名の宇宙軍は如何にも小さく、世界に展開する米軍と統合作戦するにも「頭数」不足は否めません

宇宙軍トップ Saltzman 大将は3月27 日講演で
Saltzman6.jpg●我々のようにな小規模な軍は、持てる人員をどのように募集・育成・評価・動機付け等するかについて、特に注意を払い慎重に取り組まなければならない。そして小さな戦力の全てをよく掌握し、如何に最大能力を発揮させるかを継続的に検討し続ける必要がある
●どの部署の勤務者に長期勤務で経験を積ませる必要があるか? 軍人や文民職員に経験を積ませて実施させるべきポストはどこか? 部外の業務請負業者に委託して軍人や文民職員の負担を軽減可能な職務があるか? 宇宙軍所属戦力と部外委託人材の適切な混合比はどのあたりか・・・等々を よく見極める必要がある

●宇宙軍は、他軍種とは異なる独自の人的戦力構成モデルを編み出す必要があり、我々は検討に着手している。そこで宇宙軍独自の考え方や手法で、軍人と文民職員と部外委託人材の最適な組み合わせを見出したいと考えており、その一環として2023年末に関連企業に宇宙軍の素案を示し、業務委託が可能か、疑問点や問題点があるかを尋ねるRFI情報提供要望を発出している

space force2.jpgSaltzman宇宙軍大将のニーズは理解できても、米宇宙軍の考えている事は他軍種の部会委託の範疇を超え、日々の作戦任務遂行や緊要な作戦任務の実行までを委託する可能性もはらんでおり、RFIには、24時間体制交代勤務の現場のクルーに入り、宇宙監視(Space Domain Awareness & Intelligence)、ミサイル警戒監視(Missile Warning/Defense)、衛星通信運用(MILSATCOM)、軌道上作戦運用(Orbital Warfare)等の業務を請負可能かを問う質問も含まれているようです

つまり従来の訓練支援や衛星関連の維持サポート業務以外に、例えば敵ミサイル警戒警報任務においてリアルタイムで衛星運用を担ったり、同盟国宇宙アセットまで操作する業務を含む「業務委託」を念頭に置き、関連企業に対応可能性や問題点を問いかけているようです

space force4.jpgもちろん懸念事項は多く、宇宙軍の指揮命令系統と部外委託業者との関係はどのように整理するのか? 部外委託業者はどこまで責任を負えるのか? 文書上の業務委託契約で様々な状況があり得る軍事作戦の役割を担えるのか?・・・等々の疑問が関連企業経営層から既に提起されているようです

宇宙軍は、長らく完成発表が待ち望まれている民間企業活用の指針となる「commercial strategy」を間もなく公開する予定であり、上記の疑問に宇宙軍の考え方が示されると期待されています
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Space part-time2.jpg宇宙軍の任務についてよく把握しておらず、具体的にどのような任務を「部外委託」の対象として検討しているのかイメージがぼんやりしていますが、急速な宇宙利用の拡大や衛星打ち上げ会社の台頭を考えれば、「部外委託」の拡大はニーズに対応するために避けられないのでしょう。サイバー戦分野も似ているような気もします

宇宙分野の民間活力利用は、米宇宙軍や国防省の前線勤務者からの強い要望でもあり、今後の進展を関心を持って見守りたいと思います

宇宙軍と企業連携
「衛星への燃料補給で2企業連携」→https://holylandtokyo.com/2024/02/20/5554/
「正規兵のパートタイム勤務許可」→https://holylandtokyo.com/2024/01/30/5479/
「衛星への軌道上補給に企業活用へ」→https://holylandtokyo.com/2023/03/01/4320/
「衛星延命に企業と連携」→https://holylandtokyo.com/2021/11/10/2350/
「有志が民間企業大量導入訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/09/16/3609/
「民間衛星守る国際規範を」→https://holylandtokyo.com/2022/09/05/3601/

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米海軍が新兵基礎訓練間にスマホ使用を許可へ [Joint・統合参謀本部]

新兵教育10週間での脱落率を抑える狙い
従来は8-10週間内に公衆電話で5回の通話機会に限定
先に許可した陸軍と空軍に追随する形で
携帯使用は2週間に一回程度で音声通話以外のアプリ使用禁止

Navy boot camp.jpg3月29日米海軍が、約10週間の新兵基礎教育期間におけるスマホ使用やスマホでの家族との電話を禁止してきた従来に方針を転換し、アプリ使用やビデオ通話は引き続き禁止されるものの、2-3週間に1回程度のスマホ電話使用を許可することに方針変更した明らかにしました

スマホ許可について米海軍関係者は、「基礎教育期間10週間の最初の2-3週間で脱落除隊する者が多い事から、その防止につながることを期待している」、「海軍人としての基礎固めに集中すべき重要な基礎教育期間だが、スマホが銀行使用や財務処理における認証機能の役割を果たすなど、約10週間スマホ使用を禁じることが現代社会では現実的ではないと判断した」等と変更理由を説明しています

Navy boot camp3.jpgこれまで米海軍の基礎教育課程では、期間中に5回、新兵をまとめて公衆電話に連れて行き、順番に電話を掛けさせる手法を取ってきましたが、本件を紹介する同日付Military.com記事や掲載写真によると、普段はカギのかかるロッカー内で保管されている各自のスマホを、許可された一定時間だけ使用可とされ、申し訳程度の仕切りがある大部屋の中でスマホ通話が許されるようです

Navy boot camp4.jpg既に米陸軍と米海軍は一足先にスマホ使用を許可しており、米海軍もこれに追随した形となりますが、募集難に苦しむ米海軍は1月末に、「採用時の素養試験で一定の成績を取れば、高校卒業資格がなくても入隊を許可する」と発表し、「コックや甲板長等であれば高い学力は不要だ」、「様々な人材確保策を検討しているが、学力レベルを下げて採用するリスクを試してみたい。我々は決断した」と説明し、他軍種が死守している「一線」を既に超えた対応をしています。

同時に米海軍は、新兵の基礎能力底上げのため、2022年から入隊時の基礎教育期間を8週間から10週間に延長し、加えて2023年3月からは、陸軍が既に行っていた入隊前に準備教育を行うことも開始したところでした。
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Navy boot camp2.jpg米軍の新兵募集難への対応や退職防止のための取り組みを折に触れご紹介していますが、決して米軍だけの問題ではないことを肝に銘じて頂きたいと思います。米国や他の西側諸国と比較し、少子高齢化の進捗が速い日本では、より大きな問題であることをご認識いただければと思います。

それと、新兵のスマホ使用に関して、恐らく自衛隊は米軍ほど厳しくはないと思います。訓練時間中の使用や持ち歩き制限されると思いますが、勤務時間が終了した夜の自由時間等であれば、上記でご紹介した米海軍ほど厳しくないと思います。(10週間で公衆電話使用が5回に制限とか、ちょっと驚きの厳しさです)

新兵募集難&離職者増への対応
「米海軍が採用の高卒条件撤廃」→https://holylandtokyo.com/2024/02/07/5522/
「空軍が募集年齢上限を42歳に」→https://holylandtokyo.com/2023/10/31/5184/
「空軍が24年ぶりに募集10%未達へ」→https://holylandtokyo.com/2023/09/25/5035/
「入隊学力試験に電卓持ち込み可へ」→https://holylandtokyo.com/2023/08/29/4976/
「募集難に合法移民へ猛烈アプローチ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/16/4743/
「兵士慰留に職種変更容易化へ」→https://holylandtokyo.com/2023/05/12/4608/
「米空軍が体脂肪基準緩和へ」→https://holylandtokyo.com/2023/04/07/4494/
「歩きスマホやポケットハンドOK」→https://holylandtokyo.com/2021/12/16/2519/

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米空軍が空軍内意思疎通と搭乗員関連アンケート実施 [米空軍]

共に対象者数万名の大規模意識調査
継続実施で部内意思疎通と搭乗員退職防止策に反映

WAGGI.jpg3月26日付米空軍協会web記事が、米空軍が毎年約4万名の搭乗員全員に対して行っている「Aircrew Engagement Survey:搭乗員意識調査」と、州空軍兵全員と抽出した1万2千名の空軍正規兵士(全体の4.2%)に2年に一回行っている「Where Airmen and Guardians Get Information調査」(通称WAGGI調査:どこからどのように空軍の情報を得ているか調査)について取り上げているのでご紹介します

通称「WAGGI調査」は2011年から、「Aircrew Engagement Survey:搭乗員意識調査」は何時から開始されたか確認できませんでしたが、共に記事の雰囲気から継続的に実施されているアンケート調査で、「搭乗員意識調査」はあるのかもしれませんが、自衛隊で「WAGGI調査」の類が継続的に行われているとの話を聞いたことがありませんので、ご参考まで概要を紹介させていただきます

空軍内の情報共有や意思疎通を問う「WAGGI調査」
WAGGI3.jpg●2011年に開始された2年に1回の調査は、ほぼ全ての州空軍兵士とランダム抽出された正規兵の約4.2%に相当する1万2千名を対象に実施され、米空軍指導層が、兵士がどのような情報を、どのような手段で、どのような頻度で得ているか&求めているか等について調査し、兵士との意思疎通の改善に役立てるために実施されている
●担当する空軍省広報局のTadd Sholtis博士は「本調査は、空軍兵士や州軍兵士が空軍内での様々な意思疎通に関し、どんな部分に懸念を持っているか尋ね、意思疎通をより良い方向に導く対策を検討するためのもの」と説明しており、調査結果を踏まえ、情報伝達手段を紙媒体からデジタルメディアに変更したり、上級指揮官のSNSの使用法改善等につなげている

WAGGI4.jpg●前回2022年調査から、州空軍兵士と正規空軍兵士を対象とした調査を別々にし、よりそれぞれの対象者の特性や課題に焦点を当てた異なった質問内容の調査を行っている
●2022年WAGGI調査の結果、正規空軍兵は空軍内の各種意思疎通が「普通・おおむね良いmoderate」から「良いgood」と感じているが、州軍兵士は「意思疎通が効果的ではない」と感じていることが明らかになっている。また発足したばかりの宇宙軍では、発足当初の様々な業務のために、意思疎通が犠牲になっている部分があるとの結果も示されている

Aircrew Survey.jpg●調査結果を受け、前線兵士に情報を伝えるためのリードタイムを十分に確保する必要性と、対面での会議やミーティング、e-mail、SNS等の意志疎通ツールの適切な使い分けの理解や浸透の必要性が示され、改善が進んでいるかについても2024年調査の内容に含まれている
●2024年の調査は間もなく4週間の回答期限で開始されるが、回答は強制ではなく、自由に意見を記述可能な枠も設定されている。回答結果を踏まえ、より詳細な調査が必要と判断された場合には、回答者の匿名性に配慮しつつ、個別の面談調査が計画されており、2022年調査の際には正規兵157名と州軍兵22名が対象となっている

「Aircrew Engagement Survey:搭乗員意識調査」
WAGGI2.jpg●(本アンケート調査の開始年は不明だが、最近)毎年行われている全ての航空機搭乗員約4万名を対象とした今年の調査は、2月15日から回答が開始され、3月28日が回答期限となっている。15分間程度で回答完了可能なアンケートであり、回答は個人情報と紐づけて個人人事情報として保存されることはなく、アンケート分析部署のみで処理される
●アンケートの目的は、米空軍パイロットや搭乗員の離職が増える中、搭乗員の抱える悩みや離職につながる要因の把握により、離職を防止し、時間をかけて養成した搭乗員に任務継続契約してもらえるような人事施策を検討する資とすることにある

Aircrew Survey2.jpg●例えば昨年のアンケート結果からは、搭乗員が離職を考える理由として、(転勤や長期海外展開による)家庭生活の不安定、金銭的な不安、飛行任務から離れたスタッフ業務への不満があることが明らかになり、配置ポストに関し個人の希望を柔軟に反映する仕組みの導入やボーナス等支給面での修正等につなげている
●本アンケートを空軍司令部で担当するTravolis Simmons准将は、「長期的にデータを蓄積して調査結果を分析することで、搭乗員の採用や育成に役立て、契約延長者を増やすことにつなげたいと考えており、搭乗員の管理を包括的に検討する材料としても活用している」と説明している。
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Aircrew Survey3.jpg調査結果がどの程度公開(空軍内部と一般国民に対し)されているのか把握していませんが、「WAGGI調査」に関しては、世の中にSNS等を通じて誤情報があふれ、敵対国から「印象操作」や「情報戦」が仕掛けられている中、組織が構成員に伝えたい内容が、「部内広報」を通じて正しく伝わっているのかを確認する手段として、自衛隊でも一考の余地ありかもしれません

「搭乗員意識調査」の方は、搭乗員の金銭面での不満にこたえ、ボーナスを増額したと記事は伝えていますが、他の職種の兵士は当然不満を持つと思いますよねぇ・・・「なんでパイロットだけが・・・」と。脅威が変化しているのに、「パイロットだけが重視され、ボーナス貰えるのかよ・・」と。

米空軍パイロット不足関連
「コロナ後の民間との争奪戦に備え」→https://holylandtokyo.com/2021/10/17/2271/
「女性登用増に航空機設計基準変更」→https://holylandtokyo.com/2020/08/26/533/
「ヘリ操縦者養成から固定翼削除試行」→https://holylandtokyo.com/2020/08/07/517/
「身長基準を廃止」→https://holylandtokyo.com/2020/05/27/682/
「Fly-only管理の募集中止」→https://holylandtokyo.com/2020/03/25/789/
「5年連続養成目標数を未達成」→https://holylandtokyo.com/2020/02/27/838/
「採用の身長基準を緩和」→https://holylandtokyo.com/2019/11/29/2985/

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台湾がMQ-9Bを追加契約し戦闘機等の負担軽減へ [安全保障全般]

米国が武装許可するか不透明も
グレーゾーン時期や有事でのISR・目標照準・攻撃に
国産無人機Teng Yun開発が不調な中で

MQ-9B.jpg3月27日付Defense-Newsが、2020年11月に米国が台湾への輸出を承認している海洋活動用無人偵察(攻撃)機MQ-9B SkyGuardianに関し、2023年5月の2機購入契約に続き、今年3月11日に追加で2機の購入FMS契約を台湾と製造企業General Atomics Aeronautical Systemsが結んだと紹介し、活発化する中国戦闘機等への対処に多忙な台湾戦闘機などを補完し、ISRや目標ターゲティングや(米国が許せば)対地・対艦・対潜水艦攻撃にも活躍が期待され、運用態勢整備が進めば追加購入が予期されると紹介しています

また同時に、台湾が独自に2015年から国産開発開始しているMQ-9と同クラスの無人機「Teng Yun」開発が、昨年から本格化した試験で十分な成果を得られておらず遅れているが、米国製エンジンや飛行管制装置を導入した「Teng Yun 2」は、多少時間はかかっても重要な戦力になっていくだろうとの専門家の見方も取り上げ、中国脅威の最前線台湾が無人機導入を進める様子を紹介していま

MQ-9B SkyGuardianの導入について
MQ-9B2.jpg●2023年5月に約320億円で最初の2機契約。そして今回3月11日に追加の2機を約370億円で契約。当初の2機は、契約時に2025年5月納入予定とされていたが、現時点では2026年納入予定と修正され、今回契約の追加2機は2027年納入予定
●これら契約には、2セットの地上管制装置も含まれている。まだ公表はされていないが、台湾導入のMQ-9Bには、L3Haris製のWESCAM MX-20ターゲティング装置やRTX(旧レイセオン)製のSeaVue多用途レーダーが搭載される模様

台湾が国産開発目指す無人機「Teng Yun」
Teng Yun 2.jpg●MQ-9と同タイプの中高度長期在空無人機の開発を目指し、2015年から台湾National Chung-Shan Institute of Science and Technologyが無人機「Teng Yun」開発を開始
●米国製エンジンや飛行管制装置を導入した「Teng Yun 2」が2023年3月から本格的な飛行試験を開始したが、作戦行動に投入可能なレベルの成熟度に達しておらず、開発は遅れており、進捗が遅い

Teng Yun 2 3.jpg台湾の国防専門家Chen Kuo氏は、中国軍機の台湾周辺での活動活発化に伴い、台湾空軍の戦闘機など作戦機は対応に追われており、多忙な戦闘機等を補完するため、グレーゾーン事態時のISRや目標照準、更には有事の対地・対艦・対潜水艦攻撃にも台湾は無人機を活用したいと考えているが、無人機搭載用の攻撃兵器を米国が提供するか、またMQ-9Bへの攻撃兵器搭載を許可するかは不透明だと見ています

米台ビジネス評議会会長(president of the US-Taiwan Business Council)のRupert Hammond-Chambers氏は、台湾でのMQ-9B運用は、米国のみならず周辺国との相互運用性(interoperability)を高めることとなり、台湾軍には作戦運用ニーズもあることから、最初の4機で運用を支える要員の育成、基本インフラの整備、運用ノウハウの蓄積を図った後に、米国の台湾への武器提供の姿勢に大きな変化がなければ、更に追加でMQ-9を導入するだろう、と見ています
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MQ-9B JMSDF4.jpg対中国正面でMQ-9Bを導入しているのは、豪州と日本(海上自衛隊と海上保安庁がレンタル形式で)で、米空軍も嘉手納基地にMQ-9部隊を海自鹿屋基地から移設しておいています。これらアセットの国家の枠を超えた連携が、どのように可能なのかわかりませんが、有人機の活動にはコストやリスクが高すぎる周辺空域ですので、上手くいくことを期待いたします

また航空自衛隊に置かれては、日本より厳しい脅威環境にある台湾軍の動向も参考にされ、脅威の変化にもかかわらず60年近く変化のない戦闘機飛行隊数10個(戦闘機7個と支援戦闘機3個)体制を是非再精査し、無人機も含めた体制の見直しをご検討いただきたいと思います。つまり有人戦闘機への投資を減らし、他の必要な分野に投資を再配分を考えてほしいということです

MQ-9やMQ-9B関連記事
「海自がMQ-9Bを東シナ海試験運用」→https://holylandtokyo.com/2024/03/04/5603/
「米空軍が鹿屋に配備」→https://holylandtokyo.com/2022/10/27/3811/
「2回目の対中国応用演習」→https://holylandtokyo.com/2021/05/01/211/
「9B豪州への輸出許可」→https://holylandtokyo.com/2021/04/29/119/
「本格紛争対応に機体改修」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-22

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事前告知:米海兵隊巡回サイバー部隊が日本部隊確認 [サイバーと宇宙]

事前告知で敵のサイバー攻撃抑止狙いか
以前も海兵隊チームの艦艇初展開をアピール
派遣人数や派遣期間などは非公開で

marine cyber rotational.jpg3月22日米海兵隊が、沖縄に司令部を置く対中国主要戦力である「第3海兵遠征軍:III Marine Expeditionary Force」(規模約1万7千名)に対し、海兵隊サイバーコマンドの「サイバーローテーション部隊:cyber rotational force」を派遣すると発表しました

米海兵隊は発表声明で、Ryan Heritage海兵隊サイバーコマンド司令官の「米海兵隊の全てのレベルでの迅速な意思決定を支えるため、強靭で信頼に足るネットワークを維持する技量と必要な資源を有することを確認することが派遣の狙いだ」「サイバー関連の様々な取り組みの一つのステップ」との言葉を掲載し、

marine cyber rotational3.jpgアジア太平洋海兵隊司令官であるWilliam Jurney中将の「いくつかの地域敵対国の兵器射程圏内に位置する我が部隊は、物理的側面とヴァーチャル側面の両面から、緊要なネットワーク防御を確実にすることが極めて重要だ」とのコメントに加え、2023年発表「国防省サイバー戦略」の一節「中国やロシアが洗練されたサイバー兵器を継続的に開発蓄積し、有事に際しカオスを巻き起こそうとしている」を引用し、サイバー部隊派遣の重要性を説明しています
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marine cyber rotational2.jpg米海兵隊は、海兵隊サイバーコマンドの「ローテーション部隊:cyber rotational force」派遣を定期的にアピールしており、本ブログでもコロナ感染拡大で世界で大騒ぎになり始めた2020年3月に「海兵隊サイバー防御チームが艦艇初展開」との記事で、米海軍艦艇での感染者爆発的発生の中でも、ローテーション派遣部隊の活動のアナウンスメント効果で「悪者」のサーバー攻撃を抑止しようとする試みをご紹介しています

規模の面から、陸海空軍に比して「サイバー部門」が不十分だと考えられる海兵隊の「苦肉の策」かもしれませんが、地道な努力としてTake Noteさせていただきます

米海兵隊のサイバー強化対策
「海兵隊サイバー防御チームが艦艇初展開」→https://holylandtokyo.com/2020/04/09/720/

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緊急速報(追記有):「出来すぎ」イラン攻撃への迎撃作戦概要 [安全保障全般]

斜体フォント部分が追記部分

14日早朝のミサイル130発と無人機150機による攻撃
99%をイスラエル&米英軍で迎撃したと米政府高官
「出来すぎ」の迎撃戦果にちょっと違和感が・・・

Iran attack.jpg4月14日のイスラエル時間未明(日本時間の14日夜明け頃か)、4月1日にイスラエル軍機が行った在シリアのイラン大使館への爆撃に対する報復攻撃をイラン革命防衛隊が遂行し、イランの弾道&巡航ミサイル130発以上と無人機約150機がイスラエルに向け発射されました。

これに対し、イスラエル軍と米英軍が協力して戦闘機と防空ミサイルとイージス艦防空システムで迎撃作戦を行い、米国政府高官はイラン側攻撃の99%を迎撃し、その大半はイスラエル軍の戦闘機やArrow2又は3防空ミサイルにより行われたが、米軍もバイデン大統領が前週に増強派遣を指示した米空軍戦闘機や米海軍イージス艦で迎撃作戦に参加し、スナク英首相も英軍戦闘機が複数の無人機を要撃したと発表しています
(なお英国防省は、米軍戦力をイラン攻撃対処に集中させるため、本来の対IS作戦のための追加戦闘機と空中給油機を事前に追加派遣していた、と発表)

冒頭紹介の攻撃概略図を掲載のNYポスト紙記事
https://nypost.com/2024/04/13/world-news/iran-launches-attack-on-israel-live-updates/

Iran attack2.jpg以下では、米国政府高官がメディアに「異常なほどの迅速さ」で語ったイランによる攻撃概要と、この「出来すぎ」感のある迎撃成果について、速報でご紹介いたします。本当に出来すぎで違和感ありありです・・・

14日付米空軍協会web記事によれば
●イラン側の攻撃
・攻撃はイラン、イラク、シリア、イエメン各地から行われ、兵器内訳は
・巡航ミサイル100発以上
・地上発射弾道ミサイル30発以上
(上記ミサイルの内、100発以上はほぼ同時発射され、防空網の飽和を狙った攻撃だった)
・無人機(自爆突入型か?)150機以上

●米軍による要撃成果
F-15EX Northern Edge3.jpg・イスラエル軍と米英軍間の敵攻撃状況の情報共有や迎撃目標割り当ては、米中央軍が運営する在カタールのCAOC(Combined Air Operations Center)で実施
・F-15E Strike EaglesとF-16で無人機70機以上迎撃
・Patriot防空ミサイル(在イラクのエルビル)で弾道ミサイル1発迎撃
・東地中海配備の米イージス艦で弾道ミサイル4-6発迎撃

●イスラエル軍の対応概要
・弾道ミサイル防衛システムArrow-2とArrow-3、並びに空軍戦闘機でイラン攻撃の大部分に対処
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PAC-3 4.jpg正直な感想を申し上げれば、これだけ大規模な弾道&巡航ミサイルと無人機による「夜間」の「飽和攻撃」を99%迎撃するなど、漫画の世界でも設定困難なレベルの「出来すぎ」成果であり、一部SNS上で有識者も含めてつぶやかれている「米とイランが攻撃シナリオを事前に共有していた」説に共感してしまいます。即座に「G7首脳によるTV会議が開催」とか、この米政府高官によるイラン攻撃概要や米側戦果公表の「迅速すぎ」感もあります

もちろん、完全にイラン側の飽和攻撃計画を把握していたとしても、戦闘機(なぜStrike Eaglesで?)による夜間要撃も含めた99%の迎撃戦果は「お見事」の一言であり、防空作戦の指揮統制を行った在カタールのCAOC(Combined Air Operations Center)の采配を含め、そのノウハウを日本も是非学ぶべきだと強く思います

イランがロシアに大量売却したイラン製ドローン兵器
「イラン製自爆無人機がウクライナで猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/

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フーチ派無人機&ミサイル防衛教訓で迅速改修改善 [Joint・統合参謀本部]

10 月以降の戦いの教訓をソフトと運用法改善に
次展開予定の空母戦闘群も既に新ソフト&戦術で訓練
紅海の MD センサーには厳しい自然環境を克服し

SMWDC Houthi4.jpg3月21日付Defense-News記事は、紅海での2023年 10 月 19日の米イージス艦によるフーチ派巡航ミサイル3発の迎撃成功以降、フーチ派無人機への対処を含む様々な交戦経験が、米海軍の SMWDC(少将指揮官の水上・機雷戦開発センター: Surface and Mine Warfighting Development Center)を中心に、米海軍の多様な部署(Naval Surface Warfare Center や Naval Information Warfighting Development Center)と企業や大学研究機関も含めた緊密な連携により、艦艇機材やソフト改修、運用要領の修正 に迅速に生かされ反映されていると紹介しています

中国やロシアとの本格紛争を想定した対処の基本は不変だとしながらも、高温多湿で海面状況や大気の状況がミサイル防衛や無人機対処に厳しい紅海の環境への対応や、フーシ派保有装備や行動パターンを分析して前線部隊に対応要領を助言したり、派遣準備中の部隊への準備訓練に迅速に反映する様子が参考になりますので、作戦や装備性能に関連する事項で細部は不明ですが、取り上げさせていただきます

各方面との緊密な連携
SMWDC Houthi.jpg●上記で紹介した、SMWDC を中心とした米海軍内の情報部門を含む複数部署や、ロッキード社と Johns-Hopkins 大学応用物理研究所の知見を持ち寄り、現有イージス艦装備の特性や機材設定パラメータレベルにまでさかのぼり、フーチ派無人機やミサイル運用の特性を踏まえ対処を検討

●SMWDC、艦艇の乗組員、打撃グループのリーダー、第5艦隊のリーダーなどが参加する連携調整 会議を毎週開催し、SMWDC が推奨する友軍戦術の変更、敵行動の変化や気づき事項、敵情把握のための艦艇システム設定の新手法、緊急の教訓を共有徹底
●毎週の連携調整会議では、各部署の各種センサーや戦闘システムが収集したデータだけでなく、各 持ち場でどのように兵士や組織が行動したか、マニュアルが適切かの視点も含め何が起こったかを 「storyboard」として持ち寄り、連携改善に役立てる意見交換実施

迅速なソフトアップデート
SMWDC Houthi2.jpg●SMWDC を中心とする広範な戦訓分析かた抽出されたソフト用改修箇所は、大規模なイージス戦闘 ソフト改修を待つことなく、小さな改修を迅速投入する仕組み「Aegis Speed to Capabilty process」 を設けて更新をスピードアップており、すでに一部の艦艇には無人機対処の改修ソフトが搭載され、「機能の大幅な向上」が見られたと報告されている

迅速な展開予定部隊への教訓戦術展開&訓練
SMWDC Houthi3.jpg●SWWDC は数計を現地に展開予定の部隊に説明するだけでなく、現実に想定されるシナリオを踏まえた高度な水上戦術訓練として準備し、実際リンカーン空母戦闘群は過去6か月間の教訓が満載の 訓練を実施して最終展開準備中である
●SMWDC 司令官は具体的な戦術修正の内容について言及を避けたが、「紅海は大気や海面反射等の関連から、レーダー運用が最も難しい地域であり、その環境で如何にレーダーシステムを設定するか非常に難しい」と述べ、捜査員のレーダーパラメータ設定に関する部分が教訓や戦術変更に含まれている模様である
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SMWDC Houthi5.jpgイスラエル VS ハマス戦争から派生した紅海での「フーチ派巡航ミサイルや無人機との戦い」ですが、既にご紹介したように「艦艇垂直発射管 VLSへのミサイル洋上補充の重要性」や「無人機対処エネルギー兵器の重要性」を改めて浮きりにし、 仏海軍艦歴に「初のミサイル迎撃成功」の機会を提供するなど、少なくない影響や教訓を西側国家群に提供しています。

ロシアや中国との本格紛争を備える過程で、このような実戦経験を生かす取り組みは極めて大切と言えましょう。ただ西側メディアが厳しい視線を向けていますが、米軍等の迎撃ミサイルが1発3~6億円で、フーチ派の無人機がせいぜい30~60万円であることから、100倍のコスト負担を強いられているという現実が、改めてクローズアップされているのも事実です

フーチ派対処からの教訓
「艦艇垂直発射管 VLSへのミサイル洋上補充」→ https://holylandtokyo.com/2024/03/26/5669/
「無人機対処エネルギー兵器」→https://holylandtokyo.com/2024/03/28/5678/

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在日米軍兵士や軍属への医療体制改善を米議会も要求 [米国防省高官]

米軍基地医療施設も不十分で日本の病院も受入拒否多発
過去2年間で日本病院が 24 人拒否し4名が死亡が
「日本では日本人に対しても救急医療体制が不足」と指摘

Naval Hospital okinawa3.jpg1月4日及び3月21日付 Military.com 記事が、在日米軍基地の救急医療体制及び日本の病院の救急医療体制不足により、在日米軍人や軍属およびその家族が十分な救急医療を受けられない不安や現実から、軍人や軍属が日本を離れるケースが出ているとして、アジア太平洋軍や国防保健庁(Defense Health Agency)が改善対応を行っているが、米議会もこれを問題視して国防省に医療体制改善を求めていると報じています。

記事は、米軍基地の医療体制の問題と日本の病院の受け入れ態勢の両方の問題を指摘し、米議会が「土気や定着率に与える影響に関する報告を引き続き懸念」しており、日本の医療体制については「日本人も同じ問題に直面している」としながらも、

Naval Hospital Okinawa.jpg国防省監察官報告書は「言葉の壁、医療へのアプローチの違い、特定の医薬品の入手可能性の欠如など、基地外の医療リソースを利用する際の重大な課題が判明」とも分析しており、在日米軍約11万人(軍人約 54,000人、軍人家族約 45,000人、国防省文民職員や請負業者8,000人)への医療提供体制は、頭在化すると大きな日米間の電製になる可能性もあり感念されます。

両記事が記載している事案例など、
●2023 年初め、沖縄海軍病院の深刻な人員不足を受けて、豪手納空軍基地医療スタッフは、妊娠中の軍人、配偶者、扶養家族 を出産のため国外に送り出す準備を始めた。
●横須賀と沖縄の軍治療施設は 2021 年以降、銃撃による算傷や重大な自動車事故、二段ベッドから転落して肝臓裂傷を負った事故など、重傷の兵士や家族の治療ができていない。

Naval Hospital Okinawa2.jpg●在日米海重と海兵隊によれば、過去2年間で少なくとも 24人の米軍人や国防総省職員、または扶養家族が日本の病院から の救急医療を拒否され、4人が死亡している。
●あるケースでは、エスカレータから約 15 メートル転落して脳損傷を負った7歳の子供が、救急車が搬送先医療施設が見つからず 35分も立ち往生して死亡している

●日本では救急医療専門分野が発達しておらず、救急救命室ERを24時間維持可能な救急医が不足している。救急専門医が勤務していない場合、救急治療能力が不十分な医師が関与することがある。
●このため、患者は治療を拒否される可能性もある。この状況は米国人だけではなく、日本国民にも当てはまる。2022年12月に日本では8,000人以上の患者が救急医療を拒否され、2023年1月には1万6,000人が拒否されている。

Defense Health Agency2.jpg●このように厳しい医療環境から、米軍人や国防省職員や家族を支える教師や児童臨床心理士までもが日本を離れるケースが出ており、在日11万人の米軍関係者に小児心理学者が1人しか存在しない状態となっている。

国防保健庁は2022年12月に、軍病院で治療できる場合は対応するが、収容不可の場合は日本の医療機関に依頼するとの方針を発表しましたが、軍人軍属や家族からの反発が強く、表現を改め、引き続き軍病院で慢性疾患の治療を行うが、救急医療は空き状況に応じて継続すると苦しい発表をしています。

Defense Health Agency.jpgその後国防省は2023年12月に、新たな医療システム構築に関する戦路計画を発表し、医療システム安定のため医療関係者の人員配置を改善し、即応性を高めると発表しましたが、米議員の元には苦情が続いており、「国防保健庁の戦略対応計画の進捗や、国防省監察官監査結果への対応について注視していく」と米議員は国防省に書簡を出しているところです。

またアジア太平洋軍司令官 John Aquilino 海軍大将は、3月21日の予算案関連の上院軍事委員会での証言で、本件への対応状況について説明する予定だそうです(議会証言は終わっていますが、関連内容に関する報道無し)
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Defense Health Agency3.jpg米軍を受け入れる目本の医療体制が、他の米軍駐常国と比較してどうなのか記事は取り上げていませんが、米国人と日本人では医療への期待度や考え方が異なる面もあると思います。いずれにしても、本件が日米関係に影響を与えることが無い様祈り ます。

ちょっと気になるのは、沖縄の医師会などが米軍関係者への医療提供を拒んでいるとか、積極的でないなどの実態がないのか・・・との点です。そうでないことも願うばかりですが・・・

在日米軍に関連の記事
「太平洋空軍司令官は元在日米軍司令官」→https://holylandtokyo.com/2023/04/26/4567/
「米空軍大改革で太平洋空軍演習強化」→https://holylandtokyo.com/2024/02/29/5587/
「横田基地部隊が緊急退避や被害対処訓練」→https://holylandtokyo.com/2023/11/07/5194/
「極東の戦闘機は?軍事的合理性から考える」→https://holylandtokyo.com/2022/11/09/3904/

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GPI日米共同開発で米国は予算削減し日本が負担か [安全保障全般]

米側予算が前年310億円から次年度案270億円に削減
米軍予算案資料は日本が負担してくれるから削減と説明
他にも削減努力したと説明も・・・

GPI MDA2.jpg3月20日付米空軍協会web記事が、日米が2023年8月18日に合意したGPI(Glide Phase Interceptor)共同開発を含む極超音速兵器迎撃兵器の開発費について取り上げ、米軍の予算説明文書が2024年度予算(約310億円)より2025年度予算案(約270億円)が減少したのは、様々な調達コスト削減に努力したと同時に、日本が開発費を一部負担してくれるからだと説明していると報じています

また記事は、米本土への中国やロシアの極超音速兵器への危機感を共有する米議会が、2024年度予算関連法令で迎撃兵器開発を加速するよう国防省に命じ、当初計画で運用開始を2035年としていたところ、2029年に初期運用態勢確立で、2032年に完全運用態勢確立を求め、国防省要求の約310億円に加え、追加で330億円を予算化した経緯を踏まえ、2025年度予算案にも議員要求で開発加速予算が追加される可能性があるとしています

更に迎撃兵器開発について同記事は・・・
GPI MDA.jpg●日米は2023年8月、海軍艦艇から発射する現有迎撃ミサイルの改良型で、大気圏再突入後の「最も脆弱な滑空段階の」極超音速兵器を迎撃するGPI共同開発を発表し、Raytheon TechnologiesとNorthrop Grummanが関与することが明らかにされている。これは共同開発の優等生として高く評価された「Standard Missile-3 (SM-3) Block IIA」開発の成功を受けての新たな挑戦である

●迎撃ミサイルGPI開発とは別に、北米コマンド司令官Guillot空軍大将は、極超音速兵器を迎撃するために不可欠な同兵器を探知追尾するセンサーとして、長距離識別レーダーLRDR(Long Range Discrimination Radar)の導入推進を「最優先事項」の一つとして挙げ、予算説明文書でも「永続的な長距離ミッドコース識別、正確な追跡、命中評価を提供するLRDRの優れた能力は、迎撃兵器の効率的な能力発揮を助ける」と重要性を訴えている

LRDR radar.jpg●またGPIやLRDRとは別に、極超音速兵器や弾道ミサイルを発見追尾する「Hypersonic and Ballistic Tracking Space Sensor プロトタイプ計画」の予算が約115億円含まれており、今年2月にミサイル防衛庁MDAと宇宙開発庁SDAが協力し、一連の衛星群(MDAのHBTSSや、SDAのTracking Layer spacecraftを含む)を打ち上げたように、今後数年をかけ、衛星を使った軌道上での試験を実施したいと考えている
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共同開発の成功例とされる「SM-3 Block IIA」が1発30億円程度と言われる中、GPI価格が気に成りますが、既に中国の弾道ミサイルだけでも日本の対処能力を遥かに超えており、極超音速兵器迎撃兵器にまで大きな投資をする意味があるのかと考えるのはまんぐーすだけでしょうか? 米国へのと付き合いも「ほどほど」にしておかないと・・・

GPIの日米共同開発合意発表(2023年8月18日)
https://www.defense.gov/News/Releases/Release/Article/3498431/us-department-of-defense-and-japan-ministry-of-defense-press-release-on-the-com/

迎撃兵器システム開発関連
「迎撃兵器を日米共同開発で」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/
「迎撃兵器開発を2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/

極超音速兵器はそんなに脅威か?
「同兵器を過大評価するな」→https://holylandtokyo.com/2023/12/15/5343/
「ウで次々撃墜:同兵器を過信するな」→https://holylandtokyo.com/2023/06/01/4695/

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再利用可能な極超音速テスト飛行体Talon-A開発 [米国防省高官]

母機から発射し、自力で着陸帰投する機体目指し
2回目の飛行で極超音速達成
国防省計画の極超音速機体用センサー等試験に利用

Talon-A.jpg3月15日付Defense-Newsは、米国防省との契約に基づき、「Stratolaunch」社が再利用可能な極超音速飛翔体Talon-A開発のため3月9日に2回目の試験飛行(TA-2)を行い、目標としていた極超音速飛行に成功して太平洋上に落下したと報じました。試験はロスの北方約100㎞に所在する「Mojave Air and Space Port」を拠点に実施されたとのことですが、現時点では、試験での飛翔高度や正確な飛翔速度など具体的な試験内容は非公開となっているようです

Talon-A2.jpgこのTalon-Aは、国防省が2022年に開始した「SkyRange計画」に基づき、極超音速飛翔体(航空機や兵器)に使用または搭載する素材やセンサーや各種搭載装備の試験用飛翔体として開発されており、今後は母機から発射されたTalon-Aが、搭載された各種素材や搭載装備の極超音速試験飛行後に、飛行場に自力で帰還着陸して再利用可能になり、「毎週1回飛行可能」な体制がとれるよう「Stratolaunch」社が開発を続けていくとのことです。

Talon-Aが今後どのようなスケジュールで「自力で飛行場に着陸帰還」して再利用可能態勢を確立する計画なのかも非公開のようですが、次回の試験飛行(TA-3)は2024年後半に予定されており、この際は「SkyRange計画」の一貫であるMACH-TB (Multi-Service Advanced Capability Hypersonics Test Bed program)用のセンサー等を、Talon-Aに載せた1回目の試験飛行を行うことが2023年11月に契約済(合計5回の試験飛行契約)だそうです

Talon-A3.jpgStratolaunch社CEOであるZachary Krevor氏はまた、Talon-Aを上空まで運搬して投下する「Roc」との「母機」(翼幅115m、搭載可能重量23トン・50万ポンド)が、次回15回目の飛行で飛行時間60時間に達する予定だが、より高く上昇可能なように準備中で、同時に連邦航空局FAAの飛行承認を得るための審査飛行にもなる予定だと説明しています

そして「Roc」とは別の追加「母機」として、2023年春に倒産したVirgin Orbitが保有していたB-747型機を購入&改修して準備中で、2025年のTalon-A試験飛行には投入する予定だと説明し、「細部には言及できないが、2024年の最終四半期には、(Talon-A以外の)別の顧客にB-747でサービスを提供する予定だ」とも語っています
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Talon-A4.jpgDefense-News記事は、米国防省にとって、米国用の極超音速兵器開発に加え、中国やロシアの極超音速兵器対処面でも、この極超音速環境での試験を提供する「Talon-A」は重要だと紹介しています

この極超音速技術の応用先がどのように広がっていくのか理解できていませんが、とりあえず「Stratolaunch社」や「SkyRange計画」や「MACH-TB」との言葉をTake Noteしておきましょう

米軍の極超音速兵器開発
「突然グアムにARRW」→https://holylandtokyo.com/2024/03/08/5662/
「同兵器を過大評価するな」→https://holylandtokyo.com/2023/12/15/5343/
「米陸軍の配備は24年に持ち越し」→https://holylandtokyo.com/2023/11/15/5224/
「ウで次々撃墜:同兵器を過信するな」→https://holylandtokyo.com/2023/06/01/4695/
「空軍がARRW配備断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「バカ高い極超音速兵器」→https://holylandtokyo.com/2023/02/08/4261/

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