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中国軍事脅威の本質を:防衛大綱見直しに備え、エアシーバトルの背景を [Air-Sea Battle Concept]

安倍新政権が「防衛計画の大綱」や「中期防衛力整備計画」の見直しを早々に打ち出しました。

CSBA2ndjasbc.jpgそこで、もう一度日本が置かれている戦略的環境を見つめ直すため取り上げるのが2010年5月にシンクタンクCSBAが発表したレポートAirSea Battle: A Point of Departure Operational Concept」です(説明スライドも)。

元旦に、退役海軍大将による小論「エアシーバトルの実行」を取り上げてご説明しましたが、やっぱり物足りないと思うので、「元祖」に登場していただきます

中国の軍事脅威に関するさまざまな見方が提示されていますが、最も的確に判りやすく、シナリオ風に表現しているのがこのレポートだと思うので、昨年の年初に続き、しつこく取り上げます。
日本が何をすべきかを考える資としていただければ・・・
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中国正面の米軍の状況
DF-21-1.jpg中国正面の米軍の特徴は、防御が弱い同盟国の基地や防御が不十分な少数の前方展開基地に依存している点である。これらの基地は全て中国兵器の射程内にある後方補給面では、米本土から遠く、かつグアム島など少数の補給施設に依存する難しい環境に置かれている。
反面中国は、例えば膨大な飛行場と弾道ミサイルを移動できる広大な国土を持っている。
●よって、湾岸戦争に代表される米軍の過去のパワープロジェクションの前提であった、危機に際して迅速に必要な戦力を前方展開基地に展開し、近傍に兵站補給のための兵站の聖域(攻撃を受けない地域)を設置することができない

中国の戦い方
cyberwar.jpg中国の軍事論文や最近の中国軍研究によると、中国の接近拒否能力は、米軍が当然のように享受してきた従来のパワープロジェクションを無効化する。紛争時中国は、大規模な先制攻撃により短時間で米軍の基盤となる基地や部隊、指揮統制ネットワーク、補給ルートに大きな被害を与えることを狙っている。
具体的に中国の先制攻撃は、以下のような行動を伴う。
---開戦直後に中国は、エネルギー兵器、対衛星兵器、妨害電波及びサイバー攻撃等を併用し、米国の衛星(ISR、通信、赤外線)の無効化を行う。
---弾道ミサイルの連続同時発射攻撃と地上発射巡航ミサイルによる攻撃、更に航空機攻撃も併用し、米と日本の海空基地を攻撃する。アンダーセン、嘉手納、三沢、佐世保、横須賀、関連自衛隊基地、補給・燃料拠点(グアム等)等の基地が攻撃対象に含まれる。 
---対艦弾道ミサイルと対艦地上発射巡航ミサイルで、大陸から1500nm以内の米軍と同盟国艦艇を攻撃して耐えられない損害を与え、同距離内を「Keep-out zone」として米側に立ち入らせない(接近拒否戦略

米側が受ける被害
chinacyber3.jpg●仮に中国からの先制攻撃が行われれた場合、米軍の前方作戦基盤は無くなり、サイバー・宇宙・電磁パルスなどの分野でも聖域は期待できない。
サイバー戦能力については不明な部分が多いが、仮に米中双方が同等の能力を持って戦った場合、ネットワークへの依存度が高い米側が遙かに大きなダメージを受ける。典型的な例は米軍の兵站補給部門で、商用のネットワークに大きく依存する米側システムは大きな弱点を形成している。
●従来の戦いで当然のように行っていた、複雑な戦場情報ネットワークの立ち上げや衛星の回線周波数を買い占めを前提とする、大規模で継続的な海上・航空活動を遂行することは不可能となる。

これらの結果、米軍は、滑走路や燃料不足等による航空戦力運用の大幅制限、海上艦艇情報や対潜水艦情報の不足、空中給油機への過度の負担、作戦遂行物資の不足、長期を要する艦艇・潜水艦の再発信準備等の問題に直面する
●米軍は作戦地域へのアクセスを拒否され、作戦の主導権を失い、主導権を回復する足場をも失いかねない状況に至る。

せめてもの備え
CHAMP2.jpgC2やISRアセットへの被害を予期し、衛星が使用不能な場合に備え、空中中継機や空中ISRアセットを準備する必要がある。しかし同時に、能力が限られる空中アセットでの運用に備え、情報入手や回線使用の優先順位について、事前に全軍レベルや国家及び同盟国レベルで検討しておく必要がある
基地や施設の抗たん性強化は高価であり、またそれのみでは前線基地基盤を維持することは難しいため、次回に述べる中国ISRや宇宙アセットの無力化・盲目化等の施策と併せて総合的に対処策を考慮すべきである。
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A2AD阻止の鍵「盲目化」作戦
PLA.jpg中国は、接近する敵を遠方で発見・識別・攻撃することで拒否戦略を成立させており、ISRシステムが中国のアキレス腱となる。逆に、米国にとってもISRが重要であり同時に弱点であるから、双方が相手を「盲目化」させる事を追求する。
●一朝有事に相手を盲目化させるための「偵察競争」は既に平時から始まっている。サイバー、宇宙、水中領域においても同様である。

●中国を盲目化することにより、中国の攻撃精度・能力が低下し、更に戦果確認能力も低下することから中国は余分な弾道ミサイルの使用を余儀なくされる。特に水上目標の位置評定は中国にとって難しい課題であり、盲目化は我への脅威減殺に重要である。
●米側にとって盲目化の重要目標は中国の宇宙関連システムである。中国の軌道上アセットへの攻撃や中国の衛星攻撃能力の破壊が重要である。

●宇宙目標以外では、中国の長距離攻撃を可能にする陸上設置の海洋監視OTHレーダーやISR関連中継施設が重要攻撃目標になる。
●また、中国軍が導入を計画している高々度長期在空無人機は宇宙アセットのISR能力を補完する装備として注意が必要である。

中国の弾道ミサイル対応
DF-21-1.jpg●盲目化で既に触れた対処以外では、空海軍のステルス長距離攻撃機と潜水艦発射兵器で中国防空システムを攻撃し、スタンドオフ電子攻撃兵器で弱体化させ、通過可能なコリドーを切り開いて弾道ミサイル攻撃パッケージを投入が鍵となる。
●この際、スタンドオフ兵器で固定ミサイルを攻撃し、有人無人の長期在空ステルス機で移動目標を破壊する。

中国海軍への対応
●情勢が緊迫し中国の先制攻撃の可能性が高まった時点で、日本にある海軍イージス艦は事前指定のBMD配備に就き、空母は中国の脅威レンジ以遠に移動する。
潜水艦は前進配備し、同盟国の潜水艦とASW(対潜水艦作戦)を第1列島線内で実施。巡航ミサイル潜水艦や攻撃潜水艦、同盟国潜水艦は大陸沿岸エリアでISRや攻撃(SEAD)任務に備える。
●紛争開始後、友軍潜水艦群の総合能力を考えれば、あまり中国艦艇への攻撃は期待出来ない。そこでASBでは航空機による艦艇攻撃に依存する。

●防空システムが強固な艦艇には空中発射巡航ミサイルが必要だが、中国艦艇自身の対空防御力は限定的であるため安価な兵器で対応できる。米海軍の航空攻撃アセットは、開発中の無人艦載機ステルス機N-UCASを除き足が短く空軍の戦闘機やUAVは、搭載量が少なく他の任務もある
●そこで、対空脅威がない前提で、在空時間が長く武器搭載量が多い空軍爆撃機に対応させる手法もある

中国潜水艦への対応
ChinaSB.jpg●まず第一列島線の東側の中国潜水艦排除に努める。次に、米と同盟国による「琉球バリア(第一列島線のラインをイメージ)」を通過する中国潜水艦を捕捉して対処する。
中国潜水艦は長期活動能力が低いため、母基地へ頻繁に帰投する必要があることからこの作戦が有効であろう。
●なおこの琉球バリア形成には、海上自衛隊の対潜水艦作戦能力が極めて重要な役割を担う。また米空軍ステルス爆撃機による潜水艦基地周辺への機雷投下や攻撃も有効。その他、水中無人システムとして開発中のUUVや移動型機雷なども有効

戦闘空域での航空優勢の確保
嘉手納、グアム、マリアナ諸島の米空軍基地や自衛隊の基地に被害が出た場合、東日本の基地へ米空軍戦闘機とミサイル防衛部隊の増強を送り込み、中国軍対処を支援する。これにより日本国内の目標防護と日本の防衛意志を強固にする
●米戦闘機等を早期に日本に増強すれば、それだけ中国側の損耗を増加でき、日米のBMD用ミサイルを防空に使用せずミサイル防衛に使用できる。

西日本から琉球列島にかけては、特に中国の弾道ミサイルや航空攻撃を受け脆弱なので、米日の大部分の戦闘機等は東日本から長距離運用を行う。
ChinaAF.jpg●航空優勢を東シナ海から琉球列島まで拡大し、琉球列島にある幾つかの滑走路を使用できれば、中国軍機を損耗させ、我のISRアセットの運用が容易になる。
●航空優勢拡大により、我の海上戦力による地上目標攻撃や突破型作戦の支援も容易になる。

その他のアセットや抗たん化
●確実な我の攻撃戦果確認や追加攻撃のため、ステルス長距離ISR攻撃機は高価であるが有効であり、また中国に対応策のための出費を強要する意味でも重要である。
テニアン、サイパン、パラオの空港施設は改造すべき。陸海空軍が合同で定期的にBMD訓練を実施すべきであり、日本との訓練も増やすべきであろう。

陸軍や海兵隊の役割
●地理的環境からも能力上も、米国は中国大陸で大規模な陸上作戦を行う意図はなく西太平洋地域は主に空軍と海軍の活動する戦域である
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このCSBAのレポートを議論すると、必ず出てくるのが「それじゃあ、なぜ日本に戦闘機を売り込むのか?」との疑問です。つまり、同レポートの航空優勢確保に関する具体的提案、つまり「日本の第4世代戦闘機を増やし、5世代戦闘機を提供する」の部分(今回は未紹介の部分)に関する疑問です。

CSBA LRS UCAS.JPG少なからず心ある者は「これだけ丁寧にかつ正直に各種ミサイルの脅威を認識していながら、脆弱な飛行場と多くの関連システムに依存する戦闘機への投資を日本に迫るのか」との純粋な疑問を持ちます

共に議論をした方やメールをいただく皆さんのご意見を総合すると、CSBAが軍需産業からの研究資金提供を受けているから、又は自国軍需産業保護を「影の」目標に置いているから、との結論です
まんぐーすも全く同感です

新政権の皆さんや防衛省の皆様には、このあたりを十分注意していただき、「防衛計画の大綱」や「中期防衛力整備計画」の見直しに取り組んで頂きたいものです。
「動的防衛力」の撤廃はもちろんのこと、専守防衛や大綱別表の作戦機数(戦闘機等の機数)に踏み込まないと、何にも替わりません。
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最後に外野の声も

中国国防省の副局長が日本にアドバイス
日本は中国のミサイルの脅威を考慮しないのだろうか。局地戦が発生して両国の艦艇や戦闘機が出動する前に、中国側がミサイルで先制攻撃するかもしれないのに
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-29 そのとおりだと思う

海軍情報部長など米軍高官も
●J-20は中国の装備開発が想像以上に進んでいることを示した。しかし空母と共に、それらを運用するにはまだまだ長期間を要するだろう。それよりも我々は、中国のサイバー戦や宇宙関連技術等(の非対称な能力)を警戒している
「海軍高官の懸念」→http://www.afpbb.com/article/politics/2781770/6633582
「空軍へ最後通牒」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-17

「脅威の変化を語らせて」
http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08

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小論「エアシーバトルの実行」に思う [Air-Sea Battle Concept]

謹賀新年 本年もよろしくお願いいたします!

FitzgeraldADM.jpg米国防大学が発行する機関紙JFQ(Joint Force Quarterly)の11月号に、退役海軍大将による「エアシーバトルの実行:Delivering Air Sea Battle」との小論が掲載されました。

退役海軍人(ADM. Mark P. Fitzgerald)の論文ながら、国防大学の出版物だからでしょうか、中国に絞ったエアシーバトル論ではなく、一般的なA2AD対処を取り上げて必要な分野への予算投入や施策推進を訴えています。

全般にはCSBAの提示したA2AD環境での紛争様相を基礎とし、本年2月に米海軍と空軍トップがエアシーバトル共著論文で表明した「networked, integrated, attack-in-depth」の方向性推進を主張する中身で、上記方向でエアシーバトルをより具体化して煮詰めていかないと議会の支持を得られない、との締めになっています。

「CSBAの対中衝突シナリオ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「CSBA同後半シナリオ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「海空軍トップのAS-Battle論文」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19

JFQ67.jpg今回この小論を取り上げるのは、米国防大学発行の機関紙で、国防省の準公式見解として中国の脅威をどのように描写しているかを紹介するためです。

小論ではエアシーバトルに関する将来の課題を3つの視点から指摘していますので、その流れに沿って準公式見解「中国軍事力の脅威」を紹介したいと思います。
防衛計画の大綱を見直すということなので、米国と日本が直面する脅威は同じだが、受ける被害は異なる点を肝に銘じていただくためにも・・

第1:ミサイル脅威への対処
●敵領土の奥深くに隠された弾道ミサイルや巡航ミサイルの大量同時発射は、米軍のこれまでの優位性を否定する可能性を持っている。これらミサイルは、戦いの初期段階において我々の飛行場、防空ミサイル基地、海軍機動部隊を迅速に攻撃する能力があり、我々の作戦を数時間「麻痺」させる。

ASBM DF-21D.jpg●この「麻痺」に続く敵航空機や巡航ミサイルによる攻撃で、我が戦力を基地や空母から前線に投入前に「全滅」させることが可能になる
●敵は政治的又は地理的要因を利用し、米軍が近傍基地から航空戦力中心の戦力投射することを防ぐため、ハイ・ローミックスの手段を用いるだろう

●このような脅威に対処するには、強靭なISR攻撃力(ISR-S)が必要である。具体的には、米空軍の長距離攻撃爆撃機(LRS-B)や空母艦載の無人攻撃偵察機(UCLASS)である。これらは敵の勢力範囲外から敵を危機に置く事が出来る
●敵の基地だけでなく、地上の航空機やミサイル支援施設を迅速な目標特定によって破壊しなければならない。ISRと迅速な情報共有が欠かせない

第2:強固に敵対的な電磁環境対処
●エアシーバトルでは、(敵の攻撃に対して脆弱な)衛星通信やGPSへの依存度を低下させることが求められる。
通信ネットワークは、自立形成可能な設計思想で構築されるべきである。ミサイル防衛はネットワークが行き残らなければ機能しない。敵領域で運用するアセットは、生き残りのため、電磁スペクトラムから隠れたり防御したりする手法を見出さなければならない
兵器システムの発展に比べ、通信手段は恐ろしいまでに不適切なままである。今すぐシステム設計をまとめ、計画を開始せよ

第3:防御強固な戦闘域に対処する長距離攻撃
現在、航空作戦センター(AOC)や海洋作戦センター(MOC)で目標選定と兵器の割り当てが実施されているが、同作戦センターは将来の戦闘地域で作戦を遂行する十分な通信手段や周波数帯がなく、迅速に作戦に対応できない
●また同作戦センターは敵精密誘導兵器による攻撃の危険が大きいため、生存可能な場所やプラットフォームからの任務遂行を考慮する必要がある

AOC.jpg●将来AOCやMOCは、リンクを強化して前線の戦闘指揮官に統制権限を委譲可能でなければならない。前線でのローカルなネットワークが重要となる
ローカルネットワーク内のISR情報分析では、電波、光学、赤外、その他のデータを迅速に融合し、ネットワーク内のシステムに配信し、戦術サイバー攻撃や通常攻撃に活用し、時間的余裕の無い目標攻撃を可能にしなければならない
●敵地奥深くでは、上記ローカルネットでの情報分配が無人システム間で自動的に行われるべきである。

●将来の戦場では、戦闘資源を戦線に投入し、戦闘管理を前線に委ね、現場を信頼して事態に対処させることになる。
●前線への権限委譲は、過去20年間行ってきた「弱い敵」対処の中央管理方式に比べて非効率だが、長距離のリアルタイム通信依存が削減でき、より敵攻撃に対し強固である。

最後に・・・
CSBA LRS3-2.jpg●上記で指摘した不足部分を早急に手当てしなければならない。最も重要なのはネットワーク設計であり、国防省は早急に措置しなければならない。また無人システムはエアシーバトルの鍵である「networked, integrated, attack-in-depth」に必要不可欠である。
●一連のシステム(A Family of Systems)の中で、個々のアセットの役割を明確にし、要求を定義しなければならない。現状は、あまりにも多くの見解が乱れ飛ぶ状況になっている。
●エアシーバトルは依然不完全であり、適切に構築され議会の理解と支持を獲得しなければならない
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読者の皆さんに想像していただきたいのは、上記のような戦いを米側が対中国で行った場合、日本はどうなるか・・・です。
第一列島線より東側から無人爆撃機を発進させ、第一列島線より西側全体が「denied battlespace」や「Contested Battlespace」となって前線に権限を依存する戦いが繰り広げられるイメージです。

chinaFlag.jpg例えば、AOCやMOCといった指揮所は、普通に考えれば危険な日本国内に置く事は難しいでしょう在日米軍戦力は危機が迫った段階でどのような行動をとるでしょうか?
在日米軍基地や自衛隊の数少ない基地は、作戦の基盤としてカウントできるでしょうか? 
戦闘機による空中戦は、どの場面で、どのような重みを持って実施される必要があるのでしょうか?
金科玉条のごとき陸海空自衛隊の予算配分は何のため? 「専守防衛」は何のため? 

より戦略的に見れば、このような戦いの最後はどのような「収め」になるのか? この戦いで軍事力はどのような役割を果たすことを期待されるのか?
戦いを抑止するためにはどのような軍事力が最も効果的か?

China12Liang.jpg米国防省や米軍は厳しい財政状況に直面しており、組織削減の危機に直面しています。そんな中、中国の脅威は理解できても急激に戦略や戦術が変更できるでしょうか?
特に前線の太平洋軍は「とりあえず同盟国との訓練や関係を強化しろ」との指示を受け従来どおりの訓練や目先の事態対処用の議論に熱心になっているかもしれませんが、先を見通したアドバイスを日本にくれるとは限りません。ワシントンDCの国防省だって似たり寄ったりです

「防衛計画の大綱見直し」議論は、この辺りをよく頭にいれ、日本の防衛をよく自身で考えた上で行うべきです。特に米国との防衛協力を再構築するに当たっては・・。
五月雨式に提示される米国からの要求に対応するだけでは、決して目的地には到達しません。日本の主張をぶつける中で妥協点を見出さなければ・・

著者Mark Fitzgerald退役大将の現役時代
「商船も武装すべき」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-17

関連のエアシーバトル過去記事
「CSBAの対中衝突シナリオ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「同後半シナリオ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「海空軍トップのAS-Battle論文」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19

「脅威の変化を語らせて」
http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08

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エアシーバトルで救難作戦を [Air-Sea Battle Concept]

ASB-Resque.jpg13日付の米空軍webサイトが、エアシーバトル訓練の一環として、米空軍の救難部隊が空母攻撃群と共同訓練を行った様子を報じています

予算の強制削減、サイバー、性的襲撃、F-35開発が不調だ等の「後ろ向き」なニュースばかりを米空軍関連の話題としてご紹介してきましたが、エアシーバトルは一応部隊レベルまでコンセプトの普及が進みつつあり、「出来ることからコツコツと」の雰囲気が広がりつつあるようです

空母ニミッツ戦闘群の展開準備訓練として・
USSNimitz2.jpg●11月1日から15日にかけ、第3艦隊と米空軍第563救難群が、太平洋上の空母ニミッツを中心にPR(Personnel Recovery:人員救出)訓練や海上射撃訓練を行った
●空軍救難部隊からは、ネリス空軍基地等から救難ヘリ(HH-60G)5機と人員約160名が参加した。特に今回は、ROC(Rescue Operations Center:救難作戦指揮所)を特殊作戦用HC-130Jで空輸し、状況掌握や海軍との意思疎通・通信設定を統制しつつ、本格的な海上作戦に取り組んだ

●訓練に先立ち、空軍救難部隊は空母機動部隊の運用、エアシーバトル、海上での救難作戦戦術・技術・手順等を学んで訓練に臨んだ
●訓練の最終段階では、空母機動部隊が攻撃を受けた場合の多様な状況が付与され、HC-130Jから空軍救難員が太平洋に飛び込んで救助活動や現場からの脱出を支援した
●第55及び66救難隊は、これまで経験の無い海上での射撃訓練を行い、敵勢力下の海上救出技術や戦術・手順を、海軍部隊との共同作戦場面で実地に訓練した

参加の空軍部隊指揮官たちは・・・
HH-60G.jpg●エアシーバトルは、敵のA2AD環境下において、海空軍が全てのドメインで統合して戦う手法である。本訓練は、同コンセプトの元で如何に効率的に人命救出作戦を行うかを海軍と共に追求する機会である
●同時に、空軍救難群にとっては空母機動部隊との共同法や海上救難手法を、エアシーバトルの中で学び考える良い機会である。

●実践的な環境設定の中、緊急時の敵対的海洋空間における海上目標救出の機会はこれまで無かったダイナミックな訓練である。将来の作戦に備える意味で、極めて貴重な価値ある訓練となるだろう
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極めて具体的な環境設定の訓練です
HC-130J.jpg米空母群が(中国からの)攻撃を受けて被害を受け、引き続き敵攻撃を受ける危険のある地域で救助を求める兵士を救出する・・・。
洋上や遠方でも救出作戦を指揮できるROCをC-130に搭載して展開させ・・・

このような地道な米軍の訓練を見ていると、被害状況下などまったく想定していないように見える自衛隊の予算要求や訓練が、「過去の遺物」のように見えてきます・・。
領空侵犯措置や空中戦など、戦闘機の活躍場面だけに力が入り・・・。

軍事組織はなぜ自己改革できないのか:「軍の幹部は、既存の戦闘方法に熟練していることによって昇任したのであり、それを変化させるような動機は小さい」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-02

Joint Operational Access Concept (JOAC)とは→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-20

エアシーバトル(ASB)について
「ASBを包括する大戦略を」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-09
「エアシーバトル批判者に語る」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-29
「A-10が艦艇攻撃訓練」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-25-1
「陸軍もエアシーバトル文書を」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-06-1

「1/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18

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対中戦略は経済を柱に、エアシーバトルを補助に [Air-Sea Battle Concept]

okazaki.jpg6日付のWedgeサイトで岡崎久彦氏が、エアシーバトル(ASB)による対中国戦争の戦術的・技術的検討にとどまらず、いかにして中国に勝利を収め得るかと言う対中戦争全体の戦略を考える時期ではないか・・・と問題提起をしています

そして岡崎氏の意見として「西側にとっては経済封鎖が最大の武器であり、ASBは、そうした大戦略の中における効果的な補助手段として考えるべきだ」との考え方を提示し議論を呼びかけています。

総選挙での票目当ての、「尖閣」や「竹島」にだけ焦点を絞ったような目先の議論が「満開」な中、大御所らしい正々堂々とした姿勢の問いかけですのでご紹介します

記事「エアシーバトルを対中戦略に高めよ」は・・
Hammes-NDU.jpg●10月19日付ウェブNational Interest誌で、Hammes米国防大学主任研究員は、ASBを単にA2/ADに対抗するためと説明するだけでなく、全般的な対中戦略の中に占める位置づけをはっきりさせるべきである、と述べている。

●また同研究員は、ASBは対イランと対中国と言われているが、イランについてはホルムズ海峡封鎖能力を破壊するという戦略的目的達成が可能であるが、中国に対しては、何が勝利かのシナリオが全く見えていない、と述べている
●更に、米の国防関係者は、ASBの戦術的・技術的説明だけでなく、対中国勝利のための軍事戦略を示す必要がある、と論じている

岡崎氏の対中国戦略案は・・・
ASBConcept.jpg●今後、対中戦略を考えるとすれば、戦術的にはA2/ADを含めた、大規模な経済封鎖戦略でしょう
●経済交流が絶たれれば、中国の主要輸出入産業は操業停止、大量の失業者が街に溢れ、社会不安を生み出します。中国保有の米国債など、敵性財産として、償還利払いが停止されれば紙くずです。

●今の中国は、国民が中国共産党を信頼して、穴にこもっても長期戦を戦い抜くというような人民戦争の時代ではありません
●上層部の汚職などで一党支配の正統性を失っている中国政府にとって、唯一の正統性である高度成長が止まれば、政府の基盤も危うくなるでしょう。

chinaecono.jpg●追い詰められ、在日米軍基地や米本土に自暴自棄的戦略攻撃を試みても、それは真珠湾と同じで、反撃の方が遙かに破滅的であることは明白です。
●イランの場合もそうですが、西側にとっては、経済封鎖が最大の武器であり、ASBは、そうした大戦略の中における効果的な補助手段として考えるべきだと思います。
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このような大局的な視点に立った議論は大いに歓迎です
地理的に広大で人口も多い中国は、狭く細長い日本に比して軍事的には圧倒的に有利であり、例え日本が核武装しても軍事的なパリティー(平衡状態)は望めません
この点からも岡崎氏の案は議論に値すると思います

一方で、岡崎氏の「在日米軍基地や米本土に自暴自棄的戦略攻撃を試みても、それは真珠湾と同じで、(西側諸国による)反撃の方が遙かに破滅的であることは明白」との主張には、少し注意が必要だと思います

Chinese-BM-ranges50.jpg少なくとも、「自暴自棄的戦略攻撃」によって受ける被害は中国に近い日本遠い米国では大きく異なり、日本はその点をよく念頭に置きつつ米国との対中軍事戦略すり合わせを行うべきです

米軍が進めるASBは、遠方からの攻撃を中心にしつつ、味方戦力を分散する等して敵攻撃に対する強靭性(Resiliency)を追求するものです
言い換えれば、緒戦における中国のミサイルによる先制攻撃を何とか最低限の被害でしのぎ、反撃の足場を確保しつつ遠方から反撃を試みようとするものです

日本は大陸に近く「逃げられない」位置に存在し、分散にも限界があることを肝に銘じ、軍事戦術・戦略を見直す必要があるでしょう。空中戦しか頭にない「戦闘機命」・「実質戦闘機だけに投資」からの脱却は、「1丁目1番地」にある喫緊の課題です

「1/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「概要海空軍トップのASB論文」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19

「脅威の変化を語らせて」http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08
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米陸軍もAir-Sea Battle文書を [Air-Sea Battle Concept]

army.jpg9月30日付「Washington Times」が、米陸軍が間もなく「陸軍が如何にAir-Sea Battleを遂行するかのメモを発表する」と報じました。

記事からすると、陸軍関係者の「見捨てられるのでは」との懸念払しょくを意図した文書のようですが、長らくAir-Sea Battle(以下ASB)について触れていませんでしたので、ご紹介します
また、陸軍関係者の懸念払しょくを図るデンプシー議長の発言も併せてご紹介です

記事「地上の兵士が新たなASBの道をゆく」の概要
army2.jpg米陸軍は、国防省の焦点が中東や欧州から海空活動が大部分のアジア太平洋地域へ向かう中で、公式にASBコンセプトに加わる準備を進めている
3年前に検討が開始され地上部隊が排除されているように見えるASBだが、海空海兵隊に沿うように、陸軍は間もなく如何にASBを遂行するかについてのメモを発出する予定

●このニュースは、陸軍が今後の統合作戦の中核となるASBとの関与を失い、アフガン後の人的削減の大部分を吸収することを懸念している陸軍関係者を慰めるものである
●陸軍は日本韓国からアラスカ・ハワイ、更にサモアからマリアナ諸島にかけてのアジア太平洋地域に、約5万8千人の予備役や州軍を含む人員を展開している。

BechtelASB.jpg●国防省のASB検討室で米陸軍分野を担当するPeter Bechtel氏は、「陸軍には、A2AD脅威下での軍事衝突ぼっ発の前にも後にもやるべきことがたくさんある」、また「陸軍兵士やその防空・ミサイル防衛システムは、第一線で米軍アセットを防御する役割を担う」と述べている
●また陸軍は、如何に装備品をアジア太平洋地域で移動させるかを検討しなければならない。太平洋やインド洋に所在する資材のことである
●更に陸軍は、被害状況下での作戦遂行についても準備しなければならない。例えば通信システムが被害を受けた状況などである。

CSISのハムレ理事長は、「米軍はASBの一般国民への説明に苦労している。それが何なのか理解できない国民がいる。我々も説明しようとしていない部分がある。米国人は一般に、ASBコンセプトではなく、目的・目標やその方向性を知りたがる」とASBの状況を語っている
●国防省関係者はコンセプトは既にある、と語っており、昨年11月には4軍のASB推進を調整する部署も設けられた

9月19日空軍協会総会でデンプシー議長は
dempsy3.jpg全ての軍種にASBコンセプトで担うべき役割がある。ASBは統合のアクセス作戦において多軍種アプローチをとるものである
●ASBとの言葉が明らかになって以降、陸軍は統合ドクトリンに沿い、A2AD環境克服に取り組んでいる。
●我々はそれが確実に正しく検討されるよう取り組まなければならない
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予算削減や強制削減(Sequestration)の恐れや不安の中、何とかして4軍一体を守っていこうとする国防省や統合参謀本部の取り組みと見るべきでしょう。
BidenCarter.jpg先日、装甲兵員輸送車両の製造を記念する式典に、副大統領と国防副長官が出席して「陸軍や海兵隊を忘れてはいない」メッセージを発信していましたが、そのような雰囲気の中にある米軍です

脅威の変化に対応するため、陸軍も考えるべきことは多いと思います。被害状況下の作戦や物資の輸送など、プロにしか理解できない重要分野だと思いますので、しっかり検討していただきましょう。
ただし、陸上自衛隊の組織防衛に利用されないよう注意が必要ですが・・・。

「ASBattle検討室はよい話?」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-10-1
「概要海空軍トップのASB論文」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19

「B-52が海上目標攻撃訓練」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-21
「10年ぶり大着上陸演習」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-02
「アフガン撤収資材をアジアに」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-04

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Air-Sea Battle批判に大きな視点で [Air-Sea Battle Concept]

O'Hanlon.jpg23日付のワシンポスト紙に、ブルッキングスのオハンロン氏と前国務副長官のスタインバーグ氏が連名で「Air-Sea Battle」に関する意見記事を寄稿しています。

Air-Sea Battle自体が問題ではなく、また完全な解決手段にもなり得ない」との一節で結ばれている小論は、Air-Sea Battleを米中の軍事的対立を扇動する悪玉コンセプトと見るべきではなく、同コンセプトがより広範な政策的戦略の一部であり、当然に進む軍事力近代化の中で、政治および軍事関係者のより活発な対話がより一層重要になる、と主張しています。

Steinberg.jpg本小論の呼びかけ対象は広範です。中国を狙い撃ちするコンセプトだと批判を強める中国政府や軍。中国との経済関係を重視してAir-Sea Battleに眉をひそめる米国内の勢力。Air-Sea Battle推進で予算が削減されると警戒する陸軍等々・・様々です。推進派に対しても、冷静になるよう呼び掛けているように見えます。

また本日紹介する小論とは別に、Air-Sea Battleに関し中国との核戦争を招くのでは・・との批判的な見方も示されるようになっており、これら多様なAir-Sea Battle反対や消極論全体を包むようにヤンワリ反論する論調となっています。

この説明で中国や米国内の批判勢力を説得できるとは思いませんが対中政策全体の中でAir-Sea Battleを説明した主張は正論であり、冷静な理解者が増えることを望みます。

ワシントンポスト紙意見記事の概要は・・・
Air-Sea Battle(以下ASB)は、中東や特に東アジアでの軍事戦略や兵器技術の変化に対応するための「再考」を反映したものである。
政策立案者にとっての課題は、ASBを捨てたり別の何かと入れ替えたりするのではなく、ASBを広範なアジア太平洋安全保障政策の中に適切に位置づけることである。特に地域の安定や米国の利害保護で他と対立すること無しに行うことが求められる

O`Hanlon-2.JPG●中国は世界第2位の軍事大国で、潜水艦、精密な弾道ミサイルや巡航ミサイル、対衛星兵器、ステルス航空機等々に投資しており、米専門家はA2AD戦略と称して地域の米軍に向けられたものだと評価している
●これに対しASBは、中国やイラン等に対応し、指揮統制、精密攻撃、先進のミサイル防衛、無人技術、潜水艦、宇宙ドメインを強調し、現時点では巨大な新兵器を含めずに考えられている。
●米中両国の規模の大きさから、両国はそれぞれの国の戦略計画の中心課題である。両国間の信頼性の欠如や不信感は、両国政策立案者が軍事計画を準備しなければならない理由となるがこれをもめ事や対立の処方箋にしてはならない

中国は米国の約半分の軍事力が、紛争が続く中東など他地域に向けられていることを理解しなければならない。米国は経済的に厳しく、軍のリバランスに取り組んでいるが、米国軍事力が維持してきた世界秩序は、数10年にわたり関係国の利害と一致してきた
中国側はASBが中国を目標としていると懸念し批判しているが、ASBがA2AD脅威や技術の拡散に対応するコンセプトであり、アジア以外にも世界中に適応される点を確認すべきである

●米国にとって中国の台頭は避けられない。しかし中国は依然発展途上であり、国民一人当たりのGDPは1万ドル以下で世界の中レベル。高齢化や環境問題、経済や統治の課題も近い将来大きな課題となる国である
米国の軍事アセットは$3 trillionに換算できるが、中国の軍事アセットはその1割程度である。また中国は近代戦の経験がない

Steinberg2.jpg軍事的革新は広範な政治的戦略の中に包含されていなくてはならない。広範な政治的戦略では、米中の協力関係の利点を確認し、危機発生時のリスクも双方が認識しておくべきである。
●広範な政治戦略においては、当然に進む軍事力近代化の中で、政治および軍事関係者のより活発な対話がより一層重要になる
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読み込み不足で読みにくい記事となりました。冒頭コメントしたように、多方面に呼びかける内容になっており、理解が容易な文章ではありません。
しかし間接的にではありますが、ASBが様々な勢力から「scrutiny and criticism」にさらされている様子が伺えます。

ただし、「scrutiny and criticism」している勢力も、ASB自体の問題よりも、別の目的を秘めている場合が多く、一筋縄ではいかないようです。
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okazaki.jpg中国の核兵器使用をASBが誘発するのでは? ASBをどう位置づけるか? の問題提議が28日付WEDGE岡崎久彦氏の「ASBと米中核戦争の可能性」でありましたが、それはASBだからの課題ではなく、中国の核にどう対応するかの「空白」を埋める議論ですので今後に注目です。

8月28日Wedge「ASBと米中核戦争の可能性」
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2157
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「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「海空軍トップのAS-Battle論文」http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19
「概要海空軍トップのASB論文」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19

「AEIが対中国軍事戦略を」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-01
「1/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1

「B-52が海上目標攻撃訓練」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-21
「10年ぶり大着上陸演習」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-02

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A-10が艦艇を初撃沈 [Air-Sea Battle Concept]

小さなことから「こつこつ」と!

A-10ship.jpgAir-Sea Battleに新たな一歩です。現在実施中の環太平洋合同演習RIMPAC2012の中で、地上の戦車や装甲車等を主な攻撃目標とする米空軍のA-10攻撃機が、初めて艦艇攻撃を行って撃沈させました。
正確に表現すると、海上目標攻撃は史上2回目で、撃沈したのは初めてとのこと。海空アセットが融合し軍種の壁を乗り越えて対中国作戦を遂行するAir-Sea Battleを象徴する成果でした。

14日に撃沈されたのは、間もなく50歳を迎えようとしていた戦闘補給艦「USNS Niagara Falls」ですが、排水量17000トン、全長約180mの大型艦艇です。

24日付Daily-Newsは・・・
USNS Niagara Falls.jpg●攻撃した第47戦闘飛行隊長のトラビス中佐は、「レーザー誘導2000ポンド爆弾が艦首付近を貫通し、徐々に艦は浸水を始めた。その後A-10の30mm機関砲で攻撃した」、「機関砲の水しぶきが海面から目標に向かう様子は、さながら第2次世界大戦の映画を見ているようだった。非常に興奮する瞬間だった」と語っています
●同じく攻撃に参加した第47戦闘飛行隊のマッコール少佐は、「みんなA-10の攻撃力を過小評価していたような気がする。A-10だけじゃ撃沈できないと予想し、他にも攻撃部隊を準備していたようだが、彼らの任務は無くなったんだ」と自慢げに語った。

初の水上目標攻撃は去年のリビア作戦で
(当時の米空軍報道)
A-10ship2.jpg●2011年3月7日、リビアのムスラタ港で周辺の商船へ無差別攻撃を行っていた2隻の小型船舶に対し、A-10攻撃機が30mm機関砲で攻撃し、1隻を破壊し他の1隻の乗員に船を放棄させた。
●米空軍の報道官は、「厳密に過去このような水上目標攻撃が無かったと公式には言えないが、関係者の記憶にはない」と質問に答えてくれた
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このような前線部隊の訓練が、本当に海軍と空軍全体の融合に繋がっていくかは分かりません
小さな一歩に過ぎないとは思いますが、前進していることは確かでしょう。何にも考えていない日本よりは・・・

「B-52が海上目標攻撃訓練」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-21
「10年ぶり大着上陸演習」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-02

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海軍トップが前傾戦略に言及!? [Air-Sea Battle Concept]

GreenertJW.jpg6月27日、海軍トップのグリーナート作戦部長(CNO)が会見を行い、軍備拡張を進める中国をにらんだアジア太平洋地域重視の新国防戦略:DSGを受け2007年10月に定めた海洋戦略(Cooperative Strategy for the 21st Century)を見直すと語りました。

●グリーナート海軍大将は、昨年秋に予算制限法(Budget Control Act)が制定され、予算の強制削減が議論に成って以降、海軍の要求事項は大きく変化しつつあり、正に「inflection point」にあると現状を分析して語った。
●また同大将は、今回の見直しで「海軍力が新国防戦略でどういう役割を果たすか定義したい」と強調する一方で、見直しには6~8ヶ月間必要だと説明した。

GreenertJ.jpg●アジア太平洋地域での「rebalancing」について同大将は、4つの視点を上げその取り組みに言及した。その4つとはforces, capability, intellectual capacity, and basing
--- forcesについては、F-35、P-8、BAMS(海軍型海洋監視グローバルホーク)の配備を進め
--- capabilityについては、Air-Sea Battleをコンセプトに諸計画を進め、今後も継続的に前傾して(continue to lean forward)空対空電子攻撃力、電子戦能力、対潜水艦能力、対艦弾道・巡航ミサイル対処能力の向上を図る
---(intellectual capacityについては細部に触れずも、)basingについては、現在約5割の船が太平洋地域に所属しているが、これを今後6割にする。
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グリーナート作戦部長は「流行の言葉」を使用するのが好きなタイプの方です。
これまでも「チョークポイント」等の言葉を会見で用いてきましたが、今回も「inflection point」との言葉を用いています。

Greenert-BU.jpg一般にオフショア・バランス志向を臭わせる言葉なので政府関係者は使用を避けていると思うのですが、潜水艦乗りの同大将はお構いなしのようです

本会見を伝える国防省web記事のタイトルは「Navy Continues to Lean Forward, Evolve, Greenert Says」ですが、「Lean Forward」にちょっと過激に反応しすぎたでしょうか?
つい先日ご紹介したAEI提唱の「forward-leaning strategy」との関連を勘ぐりましたが、ワシントンDCでは流行の言葉なんでしょうか???

会見トランスクリプト
http://www.defense.gov/transcripts/transcript.aspx?transcriptid=5072

「AEIが対中国軍事戦略を」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-01
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米海空軍トップが連名でAir-Sea Battleやるぞ宣言!
「概要海空軍トップのASB論文」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19
「抄訳海空軍トップのAS-Battle」http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19

過去の主要記事リスト(1100記事記念)を作成しました
http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-25

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AEIが対中国軍事戦略を [Air-Sea Battle Concept]

RIMPAC2010.jpg6月5日付で共和党系有力シンクタンクAEIが、米国の西太平洋軍事戦略に関する提言レポートを公表しています。中身はシンクタンクCSBAが2010年5月に発表したAir-Sea Battleレポート似ている印象ですが、台湾事案も含め議論しているようです。
レポート名は「Asia in the balance: Transforming US military strategy in Asia」です

前傾戦略(forward-leaning)という言葉で、中国軍事力の射程距離や勢力範囲が拡大する中で、これまでとは異なる西太平洋態勢への転換やより特化した戦力配置等を求めています。
斜に構えて見れば、中国の長射程脅威発展に応じて現状の前方展開を見直し、地域の同盟国等にもっと頑張ってもらい、米のみが可能な高度な分野に集中して関与する様な方針に見えます。

本日はまず「Executive Summary」をご紹介

従来の西太平洋における米軍態勢
第2次大戦後、平時有事を問わず米国は、、同盟国基地に展開の戦力や本国から展開する戦力、核戦力、空母機動部隊によってその国益を防御してきた。
しかし中国の組織的なアプローチにより、米国のこのような抑止と戦闘遂行力と同盟国への信頼感確保は浸食されつつある

具体的影響の懸念
andersenGM.jpg●中国軍事力の近代化により具体的には、地域の米同盟国が米国による核抑止から分離する恐れがある(自力での核兵器等獲得に動く恐れ)
●また、中国が同地域の米領土や同盟国に所在の固定基地を破壊する恐れがある。更に、これらにより米国のパワープロジェクション能力の信頼性を犯す
●中国が海、宇宙、サイバー空間でも軍事能力を強化してことに十分対処できていない
●これらを合わせ、中国が米同盟国等を脅迫し、米戦力を脅威下に置き、アジア地域の海洋を支配することを可能にする

本状況への対応
●現状への対処案には、まず情勢が悪化し続けても現状の「幅広な」アプローチを維持する案、次に新孤立主義者に好まれる米国関与と米国の役割縮小を選択する案がある
第3の案は「前傾戦略」で、米軍の脆弱性を減らしつつ、米国の関与を維持するバランスを追求するアプローチである。この戦略では、前方展開基地と遠方からの攻撃能力をうまく組み合わせる。
●この案では、作戦面のリスクと国益の犠牲を防ぐため、現在より専門化・特化した戦力体制を想定する

前傾戦略では
globalhawk.jpg●2本の柱、平素から長期に渡る中国との競争における努力、及び有事に中国が短期に戦闘で勝利を収められない点を中国に認識させる努力の2つが中心となる
●2つの柱のどちらにも重要なのが、同盟国等による貢献の拡大である。軍事的バランスの変化を懸念するのは米国だけではないはず
●米国はこれら他国と緊密に協力し、統合された効果的対処が出来るように準備すべきである。

●財政が厳しい中でも、特に以下の4つは当地域の軍事バランスの変化を踏まえるとhigh leverageで大切。
●4つは、同盟国全体での西太平洋ISR能力、同盟国全体での水中戦能力(対潜水艦作戦能力)、米軍が利用できる基地の範囲拡大、核抑止能力

岡崎氏は「WEDGE」でサマリー以外にも触れ・・
(6月28日付)
●アジアにおける歴史的利益を守りたいなら、米国はより一層努力し、軍事的資源を動員しなければならない。米軍の構造・配置の調整に失敗すれば、米国の関与意欲と実力は大きく乖離する
●政府はアジア関与のコストのみならず、その利益も説明し、米国のプレゼンス拡大に必要な予算を求めていくという政治意思を持つことが重要だ
この政治意思は、同盟国やパートナー国との協働による望ましい米軍の配置を実現するためにも必要

UUV.jpg●今後必要となるのは、紛争時に、台湾周辺の封鎖を突破する力、台湾海峡や東シナ海における機雷除去能力、広域的に対潜作戦や機雷敷設を行う力中国側の指揮統制・通信情報能力を無力化し、レーダーや偵察衛星を破壊する能力など
しかし現状では、掃海艇はほとんどなく、空中からの対潜作戦は日本に大きく依存している。さらに、ステルス・非ステルス両方の飛行機も、数が足りない上に、抗堪性を向上させる必要

●同盟国への要望(特に日本へは)
---飛行場など重要施設の抗堪性の向上
---有事に共同で使える新たな飛行場や港湾施設の確保
---海上自衛隊の対潜能力の維持するための、潜水艦勢力増強や対潜航空機の更新
---南西諸島方面への対艦巡航ミサイルの配備
---豪州、インドとの協力の強化や韓国との軍同士の関係の改善を求める必要
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読めば読むほど、CSBAのレポートと基本的考え方がそっくりですが、CSBAより当然の事ながら現状を踏まえたアプローチを行っています。2年遅れて発表しているのですから当然ですが・・
日本への要求事項など、既に実政策として進行中のモノが並んでいるような・・・

しかしこれで、民主党と共和党の両方のサイドから同様の中国軍事力対処の方向性が示されたと見ることも出来ます。

米国の考え方は、極めて軍事的合理性からして、また米国の立場に立てば自然な選択です。
日本も特異な歴史的経緯や偏狭な憲法議論の呪縛から逃れ、日本の戦略的環境を冷徹に見据えた軍事的対処を「自然体で」考えないと・・。

CSBAレポートの情勢認識と対応
「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「1/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「補足米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-2

Air-Sea Battle関連記事
「海空軍トップのAS-Battle論文」http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19
「概要海空軍トップのASB論文」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19

過去の主要記事リスト(1100記事記念)を作成しました
http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-25

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B-52が海上目標攻撃訓練:Air-Sea Battle準備 [Air-Sea Battle Concept]

過去の主要記事リスト(1100記事記念)を作成しました
http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-25
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B-52BALTOP.jpg6月前半、Air-Sea Battle具現化に向けた動きを象徴するような訓練が、中国から遙か離れた北欧バルト海で行われた模様です。

今回で40周年を迎えたNATO海軍中心の演習「BALTOPS 2012」(Baltic Operationsの略)で、米本土を出撃した2機のB-52が水上目標攻撃訓練を行いました。

米空軍webサイトは・・
B-52.jpgGlobal Strike Commandの演習課長は、この種の演習は、多様な国のチームワークにより地域の安定を増し、平和への脅威を減じ、参加国間の関係を強化するモノであると述べた。
●更に同課長は、米空軍が海上目標の攻撃することで米海軍をサポートする好例であると強調した。
6月10日に行った水上目標攻撃訓練では、25時間以上の連続飛行により訓練目的を達成することが出来た。

BALTOPS 2012-4.jpgBALTOPS 2012には、米の他、Denmark, Estonia, France, Georgia, Germany, Latvia, Lithuania, The Netherlands, Poland, Swedenに加え、ロシアも参加しています。
一般的にBALTOPS演習は、対潜水艦作戦、機雷対処戦、捜索救助、海上阻止作戦、レーダー捜索探知等々を、実世界で想定される危機対処シナリオに沿った形で訓練するものだそうです。
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BALTOPS 2012-3.jpg米海空軍トップのAir-Sea Battle実行宣言論文では、海空融合(integrated)作戦の例として、
●空軍F-22やF-35が、対艦ミサイル基地、潜水艦基地や無人機基地等を攻撃し、我が艦艇の行動を容易にする
●海軍艦艇が発射したトマホークの飛翔プログラムを、飛行中のF-22から変更する

「海空軍トップのAS-Battle論文」http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19

等々を上げていますが、CSBAのレポートには「非ステルス爆撃機で海軍のdistant blockade作戦を支援」と記述されており、空軍大型爆撃機に中国へ向かう海上輸送遮断を期待しているのかもしれません。
「4CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21
「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18

派手さはありませんが、少しづつこのような海空融合の訓練が増えていくのでしょう。機会を捉え、ご紹介したいと思います。
「概要海空軍トップのASB論文」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19

わずか2機のB-52が参加した訓練ですが、米空軍webサイトが大きく取り上げたのは、空軍としての意志を明確に出した重要な位置づけにある訓練だからでしょう

B-52関連過去記事
「50歳B-52は80歳まで」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-21
「グアムB-52が核任務訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-09

「B-52に1機百億円の改修か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-08
「B-52が長距離近接航空支援を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-26-1

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Air-Sea Battle遂行宣言:米海空軍トップの連名論文 [Air-Sea Battle Concept]

ASBConcept.jpg「Air-Sea Battle Concept」は、中国への配慮か、または予算的縛りが原因なのか、2010年QDRで作成着手を明らかにした以降、国防長官が正式にConcept作成完了を表明しないまま今日に至っています。

また、昨年12月に議会が国防省に要求した「Air-Sea Battle」報告書の公開バージョンが、どの程度細部を明らかにするか予想が付きません。

そんなモヤモヤ感のある本年2月、米海軍と空軍のトップ(グリーナート海軍作戦部長とシュワルツ空軍参謀総長)が連名で「Air-Sea Battle」と題する論文を発表しています。
同論文発表後、同論文は軍幹部がASBを説明する際の基準となっており、各種講演(例:5月16日のブルッキングスでのセミナー:両名が揃って登壇)や軍webサイトでも論文の中身に沿ったASBの説明が行われています。

同論文は英語で約4800語27000文字からなる本格的なもので、これ以上の内容の説明が「Air-Sea Battle」に関して公になることは当分無いのでは・・と考えています。抄訳全体は分量が多いので下記の別サイトに掲載しますが、本日は抄訳から抜粋して「さわり」をご紹介します。

抄訳全体は別サイトに
「米軍兵士に語るAir-Sea Battle」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19

論文は一般雑誌「American Interest」に掲載されたものであり、CSBAのレポートのように中国を対象に絞るような記述はありません。また、一般公開用のため作戦運用に関する具体的な言及は限定的ですが、海空軍組織内の抵抗勢力に対する強い警告を発している点で、大いに歴史的価値のある論文だと思います。

発表からかなり時間が経っていますが、同論文が余り日本で話題にならず、一方で防衛大臣が「米国防省はAir-Sea Battleを正式に採用していない」との趣旨の逃げ国会答弁をする事態になっていますので、警告の意味も込め、「脅威の変化」と「意識改革の必要性」を訴える海空軍トップ連名による渾身の論文をご紹介します。


論文「Air-Sea Battle:Promoting Stability in an Era of Uncertainty」の概要

問題認識
ASBM DF-21D.jpg●我々は冷戦後の約20年間、湾岸戦争のような戦力緊急展開による対処で、ボスニア、ユーゴ、アフガン、イラク、リビア等での作戦で成功を収めた。過去約20年間、我々は本モデルで巧みに実行してきたのだ。
●しかし米国の影響力に挑戦しようとする指導者達はこの状況を観察し、旧ソ連の教義に基づき米軍の介入を阻止することが不可能だと悟った。そして我々の弱点を見いだしたと信じ、A2AD戦略を利用し、我々が公海、国際空域、宇宙を合法的に使用するのを妨げようとしている。

●これら軍事的脅威の変化は、冷戦終了後に訪れた変化と何ら変わらない大きな変化である米国への信頼が揺らげば、同盟国等が脅威国との繋がりを求めたり、大量破壊兵器を含む装備の取得を含む行動に出て、地域の安全保障環境に競争対立を持ち込む懸念が生じるAir-Sea Battleはこれらの懸念に答えるモノである

新国防戦略(DSG)とAir-Sea Battle
本年1月5日発表された新国防戦略(DSG:Defense Strategic Guidance)に沿い、部隊を整斉と編成組織して訓練し、装備を整えて地域戦闘コマンドに供しなければならない
Air-Sea Battleは、勃興しつつある脅威、つまり弾道・巡航ミサイル、先進潜水艦、戦闘機、電子戦、機雷等の挑戦に打ち勝つための概念や必要な能力・投資を示してくれるコンセプトである。またAir-Sea Battleは、統合戦力の有効性や信頼性を高めるモノである。更にAir-Sea Battleは、海空軍間の高度な融合(Integration)や緊密な協調作戦を必要とするコンセプトである。

RIMPAC2010-2.jpg●このレベルの高度な融合には、緊密な相互依存を制度化するだけでなく、派遣に備えた軍の管理や準備プロセスの融合も視野に入れる事が必要である。
●更に、効率的な組織、作戦、調達面での戦略も必要となる。世界の海や空、サイバー空間での活動の融合に際しては、他省庁とのより緊密な連携もAir-Sea Battleでは求められる

過去の拒否戦略対処と海空融合作戦
A2ADを巡る戦史として、サラミスの海戦、真珠湾攻撃、ノルマンディー上陸作戦前の状況
海空融合作戦として、日本空襲時の陸海共同、連合軍艦隊援護に陸軍航空、ベルリン封鎖や第4次中東戦争時のイスラエルに空輸で対処

●このようにA2ADを駆使した敵は過去にも存在したが、今日ではより巧妙に国家及び非国家対象が米国の戦力投射妨害に取り組んでいる。長距離精密攻撃力、宇宙やサイバー攻撃力を備えた新興国等が包括的手法をとりつつある。典型的な脅威に、中国の対艦弾道ミサイルDF-21Dや長距離巡航ミサイルDH-10のような長距離精密誘導兵器の開発と蓄積がある。

過去の海軍と空軍の融合努力は、一時的でその場限りの傾向があり、一度脅威が去ると時間を掛けて形成された協力関係も瞬く間に消え去った。しかし現在の我々が直面する複雑な脅威は、より永続的で深く制度に根付いた手法を求めている

米国の対応
GreenertCNO.jpg●Air-Sea Battleは特定の敵対者を対象としたモノではない。また、ASBは我が軍種が組織し、訓練し、装備調達する努力方向を示すモノであり、ASBに沿って立案される作戦計画はペンタゴンではなく、各戦域戦闘コマンド司令官によって作成される
●我々は厳しい予算の中で拒否戦略脅威を撃破するため、従来のように大量のより先進で高価で融通性の少ない艦艇や航空機に期待することは出来ない

●Air-Sea Battleが次世代の海空軍兵士を形成し、例えばISR、EW、指揮統制、更に同盟国等との国際協力関係に構築発展に、かつて無いシナジー効果を発揮することを望む

●Air-Sea Battleが追求する緊密に融合されたドメイン交差作戦の考え方は、「Networked, Integrated Attack-in-Depth 3D(NIA-3D)」と表現できる。この考え方でA2AD脅威を撃破し、将来の投資やドクトリン開発やイノベーションを誘導する
3Dとは、敵のA2AD能力を寸断攪乱・破壊・撃破(3D:disrupt, destroy and defeat)する事を意味する
●Air-Sea Battleに関する海空融合の例(記述省略:一例として海軍艦艇が発射したトマホークの飛翔プログラムを、飛行中のF-22から変更する実験に昨年成功)

SchwartzAF.jpg●Air-Sea Battleを通じ、共通性や相互運用性、更に統合効率性を追求する。単一軍種だけで能力不足部分を埋めるのではなく、統合で不足や過剰部分を探し、必要な重複は確保しつつ、競争の利点も活用して敵に対抗する能力を高める。従って、自らの軍種の利益のためにAir-Sea Battleの旗を掲げて軍種計画を推し進めるようなことは戒めよ

Air-Sea Battle無くともA2AD対処は進むであろう。しかしそれは海空がバラバラに行う対処で、一体感無く極めて非効率であり、伝統的な手法であるがもはや機能しないであろう
我々は官僚的な鎖を断ち切り、偏狭な組織防衛を脇に置き、新たな時代のために協力的な能力開発に取り組まねばならない
Air-Sea Battleは懐疑的な見方や根強い官僚主義との戦いを生き延び、米軍の優位性や我が国の反映と安全を守る重要な努力指針となる

抄訳全体は別サイトに
「米軍兵士に語るAir-Sea Battle」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19
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Waterdrop.jpg「Air-Sea Battle」を採用するか、しないとかの議論は余り意味がないと思います
なぜなら、特殊な作戦をやるわけではなく、両軍トップ論文も指摘しているように「Air-Sea Battle無くともA2AD対処は進むであろう」し、かつ脅威の変化を軍事的合理性を持って見つめれば、自然とその対処は「Air-Sea Battle」の方向に進むと考えられるからです。

しかし、そうであるならば、なぜ「Air-Sea Battle」を強調するのか? それはやはり予算の縛りが厳しく、無駄や軍種間の重複が多い従来の手法では対応できないからだと思われます。そして予算や海空軍の縄張りを巡る争いが激化している現実があるのかも知れません。

「Air-Sea Battle」での海空融合作戦の具体例が示すように、そんなに驚くような新戦術があるわけではありません。これまで以上に重複を廃し、有効に戦力を組み合わせるイメージです。
しかしそこに繋がる予算や新規装備調達の精査には、多くの軍需産業や利害関係者が絡み、軍人も巻き込んだどろどろが潜んでいるわけです。

「1/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「補足米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-2
「対イランのAir-Sea Battle」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-26

「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「2CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20
「3CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20-1
「4CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21
「5CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21-1
「6CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24
「最後CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-30
「番外CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-02-1

「AS-Battleを議会に報告せよ!」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-07
「AS-Battle検討室はよい話?」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-10-1
「Air-Sea Battleに波風の年」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-04

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テニアンで米軍作戦準備強化 [Air-Sea Battle Concept]

HornetCoralArrest.jpg米軍がテニアンで、本格的に「Air-Sea Battle」や「地理的に分散し、作戦面で打たれ強く」の実現に向けた動きを開始しました。持ち運び式の艦載機着陸制止バリアを持ち込み、テニアンで夜間を含む飛行訓練を開始したようです。
また、かつて日本に原爆を投下したB-29爆撃機の発進基地だった空港施設(滑走路を含む)の修復工事に取りかかっているようです。

4日付「Defense Tech」は・
●先月海兵隊は、第2次大戦後ながく殆ど放置されてきたテニアン島にある8000フィートの滑走路1本と歴史的なNorth Field基地施設を修復した。(注:North Fieldには並行して走る4本の滑走路がある)
●更に海兵隊は、空母の着陸降着装置をWest Field基地に設置した。

●最近行われた海兵隊の演習「Geiger Fury 12」は、「Air-Sea Battle」の理論を、この太平洋の島に設けられた荒削りな基地からの作戦で試すように計画されている
F/A-18が夜間West Fieldに着陸し、North Fieldで前線作戦基地準備が進む様子がビデオで公開されている
(下はFA-18ビデオのみ。冒頭にテニアン全体を上空から撮影した場面もあり)

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Air-Sea Battleでは中国の第一撃を如何にしのぎ、中国によるA2AD戦略実行を阻止するかが重要課題であり、西太平洋地域の米軍戦力を「地理的に分散し、作戦面で打たれ強く」しておくことがポイントとなっています。

つまり中国の先制攻撃が間近になれば、戦力を分散して被害をしのぎ、その後も粘り強く生き残った基地基盤から戦う必要に迫られています

この方針は2010年QDRで既に明らかになっており、Air-Sea Battleを引くまでもないのですが、中国の弾道ミサイルや巡航ミサイル能力の向上や配備数増加が顕著な中、軍事的に見れば極めて常識的で自然な流れです

「1/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「補足米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-2

しかし4月18日付時事は以下のピンぼけ報道・・・
ASBM DF-21D.jpg●政府は18日、北マリアナ諸島の米自治領テニアンに自衛隊を駐留させ、米軍との共同訓練や演習を行う方向で検討。
●朝鮮半島情勢の緊迫化や海洋進出を進める中国の動きを念頭に、南西諸島の防衛強化が目的。今月下旬に発表する予定の在日米軍再編見直しの中間報告に盛り込む方向。

●テニアンは、米太平洋軍の主要拠点であるグアムに近い。現在、陸上自衛隊が年1回、米海兵隊とサンディエゴで共同訓練を行っている。
テニアンに拠点を持てば、南西諸島防衛に共同対処する米第3海兵遠征軍(沖縄県うるま市)との訓練が可能になる。
●駐留に伴い、日本側はテニアンにある米軍基地・施設の整備費を一部負担することも検討する。

この日本国内報道は誤解を招く報道で要注意!
●「南西諸島の防衛強化が目的」は誤解を与える表現で、本来の狙いを隠す狙いが
---米軍は、特に中国の弾道ミサイル等の脅威を避けるため、「地理的に分散」の観点からグアムへの一極集中を避け、グアム以外のマリアナ諸島内での分散用基地整備を狙っていました。
---この流れでテニアンに基地基盤を整備するため、日本に資金を提供させるのが目的と見るべきでしょう。

「テニアンは米軍代替基地」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-18

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IISS-2.jpg「頭隠して尻隠さず」
シャングリラ・ダイアログの質疑応答で明確になったように、アジア諸国は米軍のアジア太平洋関与強化に懐疑的です。
パネッタ長官はシャングリラでその懸念払拭に懸命でしたが、このような映像を流すことで、またベトナムのカムラン湾でパフォーマンス的な会見を行ったりで「関与」の信頼性向上に努力しています。

日本も同盟国なんですから、姑息な手法でごまかそうとせず、素直な目で情勢を見つめ、大衆迎合・マスコミ迎合でない、軍事的に真っ当な議論を行いたいものです。

「作戦面で強靱な」を目指す施策
「グアム基地を強固に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-12
「嘉手納基地滑走路の強化」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-09
「米と豪が被害想定演習を」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-02
「グアムで大量死傷者訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-08-1

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「中国」を名指し出来ない中で [Air-Sea Battle Concept]

panettapress.jpg米国の2013年度国防予算案が議会で審議され、激論の末に国防省が不要と判断した航空機や艦艇の削減を議会が認めないという異常事態が発生しています。実態は、削減されると議員地元の雇用が減る等の理由が背景で、安全保障とは別次元の政治圧力です。

そんな予算が決定されれば、限られた予算から真に必要な部分を削減せざるを得ない・・・そんな空しいやり取りが続く最近のワシントンDCです。

そんな一方で、中国との外交関係に配慮して、中国の脅威やどのような対中危機を想定しているのか明確にしないと、今後の戦略戦術や装備の議論が煮詰まらないとの意見も見られるようになっています。
岡崎久彦氏の「世界潮流を読む」や軍事サイトの関連記事を織り交ぜて。。。

米海軍大学Holmes氏は・・・
●米政府は、アジアに軸足を移すと言っているが、「中国」という言葉を使わないために、何のために何をするのかはっきりしない正直に言った上で具体的な戦略を考えるべきだ。
仮想敵に対して率直であることは、友人や同盟国に対して率直であると同じように重要なことだ。
●米軍の接近拒否を企む中国を打ち破ることのほかに、中国が外に出てくるのを抑える戦略も必要。例えば米軍の対艦ミサイル部隊を南西諸島に配備する案がある。

15日付「DODBuzz」は・・・
chinaFlag.jpg海空戦力の「integration」推進が叫ばれ、色んな例を聞かされるが、一体どのようなシナリオを想定しているのかが判然としないため、「integration」のイメージに問題が生じている
首都DCで中国軍の脅威を訴える人達も、彼らの考える将来危機を訴えるより、顔をしかめたり、眉を「へ」の字にして口ごもりがちだ
珊瑚海海戦を中国海軍と戦うのか、A2ADミサイルや潜水艦で防御された排除ライン突破を考慮するのか、台湾侵攻を排除するのか、中国大陸攻撃を意図するのか・・・等々の疑問が湧いてくる

これに対し岡崎久彦氏は・・・
●外国との平和的関係を持ちながら、有事に備えるのは、古来から外交安全保障のディレンマ
日本の戦後の基盤的防衛力構想、つまり、ソ連脅威は絶頂だったが、仮想敵はないとしつつ一通りの武力は揃えておくという発想。また、1907年の対ドイツの英仏露三国協商も、ドイツという言葉は一言も使っていない。
●麻生氏の「自由と繁栄の弧」や、クリントンの「アジア復帰」にしても、中国包囲網に類する言葉は一切使っていない。しかし、言わんとすることは、中国の脅威に備えるということ。

一方で中国は南シナ海でより狡猾に・・・
米海軍大学のHolmesとYoshihara氏は
HolmesYoshihara.jpg●先頃、フィリピンと中国が南シナ海の砂州を巡って睨み合いをした際、中国は従来のように海軍艦船を送り込まず、沿岸警備や海洋監視の船を派遣する新手の巧妙な手法をとった
●中国は、2010年にその不器用な戦術で周辺諸国を脅し、これら周辺国と米国との間に反中という共通利害を生む間違いを犯した。
●その間違いから立派に学び、「小さな警棒」外交、つまり、海軍艦船ではなく、軽武装ないし非武装の船を使って目的を達し始めた

●強く打つと相手を団結させるが、弱いと動揺・分散させる。軍艦を繰り出すと外国との係争を認めることになるが、警察力だと国内の法執行で外交とは無関係だと主張も可能
●もともと周辺国の海軍力など微力で、米国も本格的に手を出すつもりはなく、航行の自由の維持のみを主張する程度
●非軍事力を使う限り、問題をローカルな問題に留めておけるクラウゼヴィッツもきっと満足するだろう巧妙な戦術
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SouthChinaSea2.jpg脅威や危機のシナリオを具体的に示せ・・・全体像が示されないと議論が出来ない・・・は「仕事したくない」や「組織防衛」の際にでる典型的な決まり文句でもあります。

Air-Sea Battleの具体化を巡る米軍内の議論で、どうも4軍種間の「縄張り争い」、「既得権維持」、「利益誘導」等の動きのために紛糾の兆しが出ているようで、上記の背景にはそんな軍種間のつばぜり合いがあるのかもしれません。
関係者のAir-Sea Battleに関する最近の公式発言が、「縄張り争い」、「既得権維持」、「利益誘導」を止めよ、とのメッセージが前面に出ている事がそれを示唆しています。

「戦わずして勝つ」の孫子の教えを引くまでもなく、狡猾さを増す中国は、民主主義の悪しき側面の突く巧みさを学び始めたようです。
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GreenertCNO.jpg16日、ブルッキングス研究所がグリーナート海軍作戦部長とシュワルツ空軍参謀総長を迎え、Air-Sea Battle講演会を行ったようですが、「軍種間の相互運用性向上」、「装備品の重複回避」、「旧来の効果を別手法で」等々の抽象的な表現が続いたようです

両軍トップの話の概要の概要は(17日記事)
Air-Sea Battleは、海空軍を前例のないレベルの協力共同関係にし、必要な場所へのアクセスを確保するモノである。海軍兵士と空軍兵士が縦割りで別々に思考することはもはや考えられない
●究極のゴールは、相互運用性のある海空軍によりNIA-3D(networked, integrated attacks in-depth to disrupt, destroy, and defeat) an adversary's A2AD capabilitiesである。
●中国など特定の国やシナリオに支配された考えではない。特定の地域に限定することは近視眼的である。将来の多様な状況を想定し、陸海空宇宙サイバーの各ドメインを交差する作戦を考えたい。

Schwartz.jpgAir-Sea Battleは、新装備の開発や調達をすることではない。現有の能力を、より良い手段や方法で最大限に活用することを確実にすることである。またAir-Sea Battleは、我々が組織し、訓練し、装備して努力する枠組みである

●勿論、長距離爆撃機やデータリンク、空中給油機、対艦対地兵器の重要性についてAir-Sea Battleは訴える。例えばデータリンクでは、潜水艦と空軍無人機の通信や、潜水艦が発射したトマホークのプログラムをF-22が空中から修正すること(昨年試験済み)、空軍E-3と海軍E-2のデータ共有等々も考えられる。
●また敵防空網の制圧に、潜水艦やEWやサイバー戦で対処することも想定できる

ただしここでも、海軍と空軍それぞれが持つ「部族意識」が変化の妨げに成る可能性があり、これを防ぐために「Air-Sea Battle」を制度化して海空軍を結びつけなければならない、と両軍トップが最後を結んでいます。

O`Hanlon-2.JPGまた軍事サイト記事は、「ブルッキングスのホールを満席にした聴衆は「Air-Sea Battle」に関する理解を深めて帰路に就いたが、予算削減の中、「Air-Sea Battle」が実現できるのか、どのように、との問いへの答えは見つけられなかった・・」と結んでいます。

このブルッキングスのイベントを仕切ったオハンロン上級研究員らが、来週日本で米国防政策とアジア太平洋への影響に関するセミナーを開催するそうです。
ご参加の方には、興味深い点や面白い発言がありましたらご教授いただきたくお願いする次第です。

「新国防戦略とoffshore balancing」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-27
「パネッタ長官のアジアツアー」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-22
「中国南シナ海進出を如何に防ぐ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-07

「1/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1

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Air-Sea Battleを日本に説明!? [Air-Sea Battle Concept]

3月23日付の時事通信電子版が、米国防省筋が明らかにしたとして、本年1月から2月にかけて米国で開催された日米協議で、米側が「Air-Sea Battle(ASB)」を正式に説明したと報じました。
既にネット上で記事をご覧になった方も多いとは思いますが、久々の「ASB」ネタですのでご紹介します。
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前ぶりで最近のASB動向を復習
ASBConcept.jpg昨年11月9日、匿名で3名の国防省高官が会見を行い、陸軍関係者も含めた15名程度のAir-Sea Battle検討室を立ち上げると表明
陸海空海兵隊からそれぞれ最低2名の佐官クラス又は同等の文民職員を派遣してもらい、ASBコンセプト専門の検討室を立ち上げる。陸軍もチームに入れる。
●検討室はA2AD戦略により生ずる課題に対処するため、各軍種のA2AD対応の取り組みを集約し、ASBコンセプト開発・遂行、訓練、装備取得、人材育成に関わる軍種間や機関間のコーディネートを行う。

●海空軍が案をまとめ、パネッタ長官の承認を得るだけになっていたとの過去の説明との関連について、9日のブリーフィングでは明確に触れることなく、ブリーファーの一人が「パネッタ長官はASBを認知し、前進させるよう我々に青信号を送った」と説明した。
●しかし、本当にパネッタ長官が承認して検討室が出来たのか、拒絶されて検討室が出来るのか判然としなかった

●検討室は「コンセプトを普及宣伝するシンプルな役割を持つ」との回答もあったが、全体に何が言いたいのか、記者達は頭をひねりながら聞いていた
移ろいやすいAir-Sea Battleは今、官僚機構の中に軌跡を向けようとしている。文書が出るか出ないか、具体的な検討期限や時間的計画は全く示されなかった
    ↓      ↓     ↓
「今ごろASB検討室設置!?」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-10-1

Lieberman.jpg昨年12月1日、米民主党のリーバーマン上院議員が音頭を執り、2012年度予算に関する法案に「国防長官はAir-Sea Battleについて報告せよ」、との付帯条項を付け加えた修正法案が上院で成立しました。
●付帯条項は、180日以内に公開及び非公開の報告書を提出するよう求めており、報告書に含まれるべき事項まで細かく既定する厳しい内容となっています。単純計算するとその期限は本年5月27日までに成ります。
●その付帯条項Amendment1332が要求する具体的報告事項は以下の過去記事で・
    ↓      ↓     ↓
「ASBattleを議会に報告せよ!」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-07
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そんな中で時事通信の報道は・
CSBA2ndjasbc.jpg米国防省が中国の脅威を念頭に打ち出した、空軍と海軍の統合作戦戦略「エアシーバトル構想」について、戦略概念と具体化に当たっての同盟国との連携の重要性を防衛省に公式の場で説明していたことが3月22日、分かった。国防省筋が明らかにした
●米側は説明で、自衛隊との情報共有と相互運用性を重視していることを伝えた。国防省は今後、紛争時に中国のA2AD作戦への対処や、対北朝鮮を含めた多層的なミサイル防衛網の構築などについて、具体的な有事のシナリオに基づき、同盟国と協議を進める。
●同省は同戦略を予算要求することを踏まえ、アジア太平洋の主要同盟国への説明を開始日本には1月17日、2月21日と29日に国防省での日米協議で説明したという。
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時事通信の記事は「2013年度予算要求するので説明した」と背景を述べていますが、2月末の説明2回は、恐らく上院の要求を受けて取りまとめ中の中身説明と協力要請ではないかと推測します。
米側からの説明を受けての「東アジア戦略概観2012」何でしょうが、聞きたい部分だけ記録した・・なんてことがないことを祈ります。

それから・・・以前の記事で、軍種間の対立で話が進まない、また中国を刺激したくないとの政策的配慮からASBの概要文書も発表されない等の「噂」を取り上げましたが、もう一つ予算強制削減(Sequestration)の影響も添えましょう。

「Air-Sea Battleに波風」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-04
「久々にAir-Sea Battle」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-16-1
「1/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「補足米中衝突シナリオを基礎に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-2
「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
Air-Sea Battleカテゴリー記事
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/archive/c2301176212-1
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中国軍の脅威を誤解するな [Air-Sea Battle Concept]

AndrewEricksonUSNWC.jpg3月27日付「Defense Tech」が米海軍大学Andrew S. Erickson準教授による中国海軍の脅威に関する論文「遠洋海軍ではなく近海における対海軍能力が脅威の中核:Near Seas “Anti-Navy” Capabilities, not Nascent Blue Water Fleet, Constitute China’s Core Challenge to U.S. and Regional Militaries」(3月7日発表)の概要を掲載しています。

軍関係者や軍需産業に深く根付いた旧思考の戦いでなく、中国は中国近海に於いて、彼らの利点を最大限に生かす非対称な手法で利益を追い求める、との主張に同意です。
また、中国は中国軍が重視する非対称手法に極めて脆弱だと指摘している部分に、我が意を得たりのヒザたたきです。

中国の脅威を誤解するな
中国海軍が「遠洋海軍:blue water navy」になるとの懸念は、米国やその同盟国にとって、中期的観点における中国軍の状況への根本的誤解から生じている
●コスト面でも中国の近海能力からしても、中国軍の近海におけるA2AD能力と遠洋における希薄なプレゼンスを、分析者は混同して考えてはいけない中国海軍の遠洋海軍化にはまだまだ時間が必要

SeaNearFar.jpg●少なくとも高烈度のキネチック戦において、米国とその同盟国は軍事的に多様で有効なオプションを将来も保持するだろう
●例えば中国軍自身は、彼ら自身が重視するミサイル攻撃など非対称手法に極めて脆弱であり、中国の海外における利害拡大につれ、協力の余地が多く拡大しつつある。
●具体的に中国は、地球全体の大部分を占める地域では、米国が提唱する「defense of the global system」によるホルムズ海峡の海路安全確保のような枠組みに、「ただ乗り」する姿勢を慎重ながら見せつつある。

●米国にとっての問題は、中国近海に於いて、中国が航行の自由や種々の国際規範を著しく阻害するような戦略的影響力行使に取り組んでいる点にある。なぜなら中国現有のA2AD能力は既に、中国近海地域で米国の安全保障利害を著しく損なう潜在能力を持っているからである。
中国弾道ミサイル部隊や対衛星能力、サイバー戦能力を伴い、このA2AD能力は中国海軍を遙かに超えた米海洋戦力への脅威であり、急激に強化されているキネティック対処が困難な脅威である。対応に時間を掛けている余裕はない

中国は近海・非対称に力点を
Waterdrop.jpg石を水に落とすと波紋が広がる。波紋は外側に行くほど低く弱くなる。中国近海では中国軍の能力は急激に高まっているが、遠方では進捗は遅い。しかし宇宙とサーバー分野は例外である。
宇宙とサイバー分野での能力は、通常の武器と異なり両方の分野で効力を発揮するダイナミックさを持っている。中国の軍事力を性格付ける時、別々に考えると大きな誤解を招く

中国の外洋海軍構築を誇張することは誤り。中国は、近距離兵器や対地対空対艦ミサイルや水中アセットの開発ほど、戦力投射用の外洋海軍構築を急いでいない。
●同様に、遠洋海軍構築が抑制的であるからと言って、近海兵器の開発も抑制的であると考えるのは間違いである。中国の軍事や外交動向を見れば、その逆であることは明らか

中国軍の力を過小評価する人達のように、米軍戦力と対応させて個々に都合のよい尺度で比較することは、冷戦時代の思考で米中対決のシナリオを想定しない限り意味がない
●むしろ中国は、中国は中国近海に於いて、彼らの利点を最大限に生かす非対称な手法を追求することで利益を追い求める。
////////////////////////////////////

BMrange.jpg元来この小論は軍事予算削減に警告を発する為に書かれたようですが、同時に旧思考の典型である「戦闘機VS戦闘機、空母艦艇VS空母艦艇」の戦いばかりを夢見て自身の領分を死守しようとする人達への警告ともなっています。

これら旧思考派の皆様には、「今後我々に立ち向かおうとする相手は、我に有利な戦闘機同士や艦艇同士の戦いを選択し、破産する道を選ぶだろうか?」、又は「非対称兵器が安価に入手できるこの時代に、敵は米国と通常戦で対決するのは馬鹿馬鹿しいと思うのでは?」とのシンプルな問いを捧げます

また、「中国もまた非対称戦法に脆弱」との指摘は極めて重要です。政治体制はともかく、近代的なインフラを基礎に経済発展を続ける中国の弱点を冷静に分析し、小国たる日本は有効な抑止力構築に資源を集中すべきと考えます。長距離ミサイル、無人攻撃機、サイバー攻撃、対宇宙アセット、非公然工作等々・・何でもどん欲に取り組まないと。

年金や教育費の削減は軍事力発揮の兵站基盤を破壊します。限られた投資で力を付けるには、戦闘機の質量精査や陸自の態勢見直しは喫緊の課題でしょう。

「1/2米中衝突シナリオを基に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基に」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「日本に中距離弾道ミサイルを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-07-1

「Balanced Strategy再確認」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-27
「バランスのとれた軍を」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-09

「空軍士官候補生へ最終講義」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
「RANDが中国空軍戦略を」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-29
「前半陸軍士官学校で最終講義」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-1
「海軍海兵隊とも全面対決へ」 http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-04-1
「(追加)海軍海兵隊とも全面対決へ」 http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-07

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