米空軍オスプレイ飛行停止も海軍海兵隊は継続運用中:9月2日に飛行再開指示 [Joint・統合参謀本部]
米空軍特殊作戦軍がオスプレイ飛行再開指示
飛行停止から約18日後の9月2日(金)に、3日又は4日に飛行再開と発表
離陸後すぐにフルパワーにするのではなく、クラッチ滑りがないことを確認するため 2 秒間のホバリング確認を指示
飛行停止にしていない米海兵隊が以前から行っていたと同様の確認手順を追加して飛行再開へ
クラッチにスリップが発生する根本原因は依然不明も・・・
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エンジンとプロペラを繋ぐクラッチのスリップ問題
2010年以降15件の同事案発生も、最近6週間で2件空軍で
過去大事故や負傷者なしで、10件発生の海兵隊は対処徹底済と
8月17日に米空軍が空軍特殊作戦軍保有のオスプレイ(CV-22)全52機に対し、エンジン動力をプロペラに伝える「クラッチ:clutch」関連のスリップ(slip)トラブルが過去6週間で2件連続して発生したことを受け、飛行停止を命じたのに対し、
オスプレイ(MV-22)を296機保有する米海兵隊は、同問題を2020年から把握して対応要領を十分教育等しているので飛行停止にはしないと同18日に明らかにしました。なお、同トラブル発生経験がない米海軍(約40機輸送機CMV-22Bとして保有)も継続飛行すると明らかにしています
このオスプレイのクラッチトラブルは、エンジンの回転をプロペラに伝えるギアボックス内のクラッチにスリップが発生して動力が十分にプロペラに伝わらない現象で、発生時にはもう一つの正常なエンジンに動力源が自動的に切り替わって墜落を防止するように設計されていますが、トラブル発生時には直ちに安全な場所に緊急着陸するよう運用マニュアルが定めています
18日の発表で米海兵隊は、2010年から同事案を把握しており、米軍全体で過去に15件同事案が発生して内10件が海兵隊保有機で発生していると明らかにしましたが、いずれも緊急着陸して対処し、機体の破損や死傷者の発生はありません
オスプレイの米軍全体での総飛行時間は約68万時間で、その内53万時間を米海兵隊機が占めており、海兵隊はこれまでの経験から「同事象の2/3は離陸直後に発生」「米海兵隊が定める、離陸直後に高度約10mのホバリング状態で行う機体チェックで兆候察知が重要」「事象発生時の対処要領を十分教育訓練している」とし、
更に「海兵隊機(海軍機も)は、離陸後直ちに艦艇や空母周辺の比較的安全な地域での洋上飛行になることが多く、空軍特殊作戦軍機が脅威に近接した地域で運用されるのとは使用環境が異なる」等の理由で飛行停止にしないと海軍報道官等が説明しているようです
一方の米空軍は、17日の飛行停止発表で「2017年以降、同事象を把握している」と述べ、米海兵隊の認識(2010年から把握)とずれていると記者団から突っ込まれているようですが、何時まで飛行停止するのか? 飛行停止をしてどのような措置を行うか等について明らかにしていません。
ただ、飛行継続を決定した海兵隊も同事象を放置しているわけではなく、追加で同事象発生を早期に搭乗員に知らせるアラームを今後数年かけて装備する検討を進めており、海空軍とも以前から緊密にオスプレイの状況については情報共有を図っているとしています
ちなみに同事象が発生した場合、トラブル程度によりギアボックスやエンジンの交換を行う必要があり、最低でも3億円が修理に必要になるということです。
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垂直離着陸を行う回転翼機は、機体振動が大く、機体にねじれトルクがかかることもあり極めてデリケートです。本事象の陸上自衛隊保有機(現状9機、計17機導入予定)への影響が気になるところです
導入時にあれだけ「空飛ぶ棺桶」等と揶揄されたオスプレイですが、運用開始後は安定した飛行を継続しており、今年3月に4名、6月に5名の死亡事故が発生して海兵隊は1日飛行停止にして安全教育を再徹底したところですが、人的ミスが原因らしく、装備安全性の面では「優等生」だと思います。
既に計400機以上が納入され、68万時間以上の飛行実績があるオスプレイですから、そろそろ「クラッチのスリップ」問題にも根本的対策が打たれるよう願うところです。
2015年以前のオスプレイ関連記事
「海兵隊:オスプレイ需要急増」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2015-08-19
「オスプレイと空中給油」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-12
「空軍は救難には活用せず」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-03
「海軍もオスプレイ導入へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-17-1
「ミサイル発射試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-14
「日本がオスプレイ導入決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-19
「オスプレイ整備拠点で日韓対決」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-14
「イスラエルへ海外初輸出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-02
「少なくとも100機海外で売る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-19
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飛行停止から約18日後の9月2日(金)に、3日又は4日に飛行再開と発表
離陸後すぐにフルパワーにするのではなく、クラッチ滑りがないことを確認するため 2 秒間のホバリング確認を指示
飛行停止にしていない米海兵隊が以前から行っていたと同様の確認手順を追加して飛行再開へ
クラッチにスリップが発生する根本原因は依然不明も・・・
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エンジンとプロペラを繋ぐクラッチのスリップ問題
2010年以降15件の同事案発生も、最近6週間で2件空軍で
過去大事故や負傷者なしで、10件発生の海兵隊は対処徹底済と

オスプレイ(MV-22)を296機保有する米海兵隊は、同問題を2020年から把握して対応要領を十分教育等しているので飛行停止にはしないと同18日に明らかにしました。なお、同トラブル発生経験がない米海軍(約40機輸送機CMV-22Bとして保有)も継続飛行すると明らかにしています
18日の発表で米海兵隊は、2010年から同事案を把握しており、米軍全体で過去に15件同事案が発生して内10件が海兵隊保有機で発生していると明らかにしましたが、いずれも緊急着陸して対処し、機体の破損や死傷者の発生はありません

更に「海兵隊機(海軍機も)は、離陸後直ちに艦艇や空母周辺の比較的安全な地域での洋上飛行になることが多く、空軍特殊作戦軍機が脅威に近接した地域で運用されるのとは使用環境が異なる」等の理由で飛行停止にしないと海軍報道官等が説明しているようです
ただ、飛行継続を決定した海兵隊も同事象を放置しているわけではなく、追加で同事象発生を早期に搭乗員に知らせるアラームを今後数年かけて装備する検討を進めており、海空軍とも以前から緊密にオスプレイの状況については情報共有を図っているとしています
ちなみに同事象が発生した場合、トラブル程度によりギアボックスやエンジンの交換を行う必要があり、最低でも3億円が修理に必要になるということです。
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導入時にあれだけ「空飛ぶ棺桶」等と揶揄されたオスプレイですが、運用開始後は安定した飛行を継続しており、今年3月に4名、6月に5名の死亡事故が発生して海兵隊は1日飛行停止にして安全教育を再徹底したところですが、人的ミスが原因らしく、装備安全性の面では「優等生」だと思います。
既に計400機以上が納入され、68万時間以上の飛行実績があるオスプレイですから、そろそろ「クラッチのスリップ」問題にも根本的対策が打たれるよう願うところです。
2015年以前のオスプレイ関連記事
「海兵隊:オスプレイ需要急増」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2015-08-19
「オスプレイと空中給油」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-12
「空軍は救難には活用せず」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-03
「海軍もオスプレイ導入へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-17-1
「ミサイル発射試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-14
「日本がオスプレイ導入決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-19
「オスプレイ整備拠点で日韓対決」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-14
「イスラエルへ海外初輸出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-02
「少なくとも100機海外で売る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-19
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米海兵隊stand-in force構想実現に3MLRが奮闘中 [Joint・統合参謀本部]
2023年9月の運用態勢確立に向けRIMPACで訓練
センサー、通信機能、対空兵器、打撃力等をセットで「In」
米空母打撃軍の進出を支援するため敵艦艇を撃破など
約2000名体制で任務に応じて派遣部隊をチョイス
8月10日付Defense-Newsは、2021年12月発表の「A Concept for Stand-In Forces」に基づき米海兵隊が新たに編成した「Stand-In」部隊3MLR(第3沿岸海兵旅団:3rd Marine Littoral Regiment)が、2023年9月の初期運用態勢確立IOCに向け、組織編制や装備品選定や運用要領確立のための訓練や検討を精力的に進めている様子を紹介しています
この「Stand-In Forces」構想に基づく第3MLRは、通常の海兵隊部隊が有事に一番乗りで敵の戦力域内WEZ(weapons engagement zone)に乗り込む構想なのに対し、第一列島線上を想定した敵WEZ内に存在して敵情をリアルタイムで味方と共有するほか、「sea-denialやsea-control」作戦を行い、味方統合戦力部隊の進出を助けるイメージの部隊です
記事は典型的な運用例として、米空母戦闘群CSGが通峡するような場合に、第3MLRからの派遣部隊がWEZ内の島の沿岸部に位置し、自ら探知又はネットワークから入手した敵艦艇を攻撃するパターンを、6月末から8月4日まで実施されていたRIMPACで訓練したと伝えています
2022年3月に約2000名で仮編制されたばかりの第3MLRは、この任務を遂行するため多様な機能を指揮官である大佐の下に機能的に編成することを目指していますが、検討すべき事項も多く残されており、どの機能にどの程度の装備と人員を保有するかや、どのような新装備を導入すべきか、またどのような状況でどの程度の派遣部隊を編成するかを今後の演習とを通じて検証していくとのことです。
対中国作戦で、遠方からの極超音速兵器や長射程精密誘導ミサイルや巡航ミサイルなどの攻撃能力強化ばかりが話題になる米軍にあって、数少ない前線密着部隊ですので、近況を断点的ながらご紹介しておきます
8月10日付Defense-News記事によれば
●第3MLR 内に、2022年2月に対空監視から味方部隊の航空管制までも担当する「対空大隊」を編成し、6月には攻撃能力を担う「第3沿岸戦闘チーム」や文字通りの「戦闘兵站大隊」が再編成され、RIMPACでも訓練に参加した
●2023年9月の初期運用態勢確立に向けては、軽着上陸用艦艇の「stern landing vessel」や、長距離運航が可能な「unmanned surface vessel」導入が重要なカギとなるが、無人艦艇に関しては検討チームの調査が夏に開始される。このように「stand-in force」の迅速かつ適時の機動展開に向けた検討も佳境を迎える
●2022年秋には、第3MLRの打撃力強化の大きな柱である、前述の「第3沿岸戦闘チーム」の下に「Medium Missile部隊」が編成される予定である
●2023年2月には、米海兵隊が第3MLRのための大規模演習を南部加州で計画し、その成果を踏まえてフィリピンでの「Balikatan演習」に臨む予定である。フィリピンは西太平洋の同盟国の中でも第3MLRに関心の高い国の一つで、似たような機能の部隊を自国で編成しており、同盟国との連携強化面でも米国として重要な演習となる
●そして2023年秋には太平洋軍米海兵隊として大規模な演習を行い、第3MLR以外の米海兵隊の多様な能力との連携も披露し、第3MLRの初期運用態勢確立につなげる計画となっている
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記事では上で紹介した以外に、目標情報をはじめとする各種情報のリアルタイム共有方法や、同盟国等も含めたセンサー情報や攻撃力の融合運用など、様々な課題の存在を示唆しています。
「stand-in force」なのですが、任務に応じて適切な派遣部隊を編成して展開させる・・・とのイメージで説明されており、また、3MLR(第3沿岸海兵旅団:3rd Marine Littoral Regiment)の部隊や本部がハワイに所在する実態からも、「stand-in force」の意味するところを慎重に理解する必要がありそうです
自衛隊との連携も密になると考えられる部隊ですので、「3rd Marine Littoral Regiment」をよく覚えておきましょう
2022年5月時点でのstand-in force構想進捗
「米海兵隊のstand-in force構想」→https://holylandtokyo.com/2022/05/25/3264/
「A Concept for Stand-In Forces」の現物32ページ
→https://www.hqmc.marines.mil/Portals/142/Users/183/35/4535/211201_A%20Concept%20for%20Stand-In%20Forces.pdf?ver=EIdvoO4fwI2OaJDSB5gDDA%3d%3d
遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「スタンドオフ重視を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
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センサー、通信機能、対空兵器、打撃力等をセットで「In」
米空母打撃軍の進出を支援するため敵艦艇を撃破など
約2000名体制で任務に応じて派遣部隊をチョイス


記事は典型的な運用例として、米空母戦闘群CSGが通峡するような場合に、第3MLRからの派遣部隊がWEZ内の島の沿岸部に位置し、自ら探知又はネットワークから入手した敵艦艇を攻撃するパターンを、6月末から8月4日まで実施されていたRIMPACで訓練したと伝えています
対中国作戦で、遠方からの極超音速兵器や長射程精密誘導ミサイルや巡航ミサイルなどの攻撃能力強化ばかりが話題になる米軍にあって、数少ない前線密着部隊ですので、近況を断点的ながらご紹介しておきます
8月10日付Defense-News記事によれば
●2023年9月の初期運用態勢確立に向けては、軽着上陸用艦艇の「stern landing vessel」や、長距離運航が可能な「unmanned surface vessel」導入が重要なカギとなるが、無人艦艇に関しては検討チームの調査が夏に開始される。このように「stand-in force」の迅速かつ適時の機動展開に向けた検討も佳境を迎える
●2023年2月には、米海兵隊が第3MLRのための大規模演習を南部加州で計画し、その成果を踏まえてフィリピンでの「Balikatan演習」に臨む予定である。フィリピンは西太平洋の同盟国の中でも第3MLRに関心の高い国の一つで、似たような機能の部隊を自国で編成しており、同盟国との連携強化面でも米国として重要な演習となる
●そして2023年秋には太平洋軍米海兵隊として大規模な演習を行い、第3MLR以外の米海兵隊の多様な能力との連携も披露し、第3MLRの初期運用態勢確立につなげる計画となっている
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「stand-in force」なのですが、任務に応じて適切な派遣部隊を編成して展開させる・・・とのイメージで説明されており、また、3MLR(第3沿岸海兵旅団:3rd Marine Littoral Regiment)の部隊や本部がハワイに所在する実態からも、「stand-in force」の意味するところを慎重に理解する必要がありそうです
自衛隊との連携も密になると考えられる部隊ですので、「3rd Marine Littoral Regiment」をよく覚えておきましょう
2022年5月時点でのstand-in force構想進捗
「米海兵隊のstand-in force構想」→https://holylandtokyo.com/2022/05/25/3264/
「A Concept for Stand-In Forces」の現物32ページ
→https://www.hqmc.marines.mil/Portals/142/Users/183/35/4535/211201_A%20Concept%20for%20Stand-In%20Forces.pdf?ver=EIdvoO4fwI2OaJDSB5gDDA%3d%3d
遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
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「スタンドオフ重視を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
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米陸軍が機動性&生存性の高い前線指揮所を求め [Joint・統合参謀本部]
MASCP:Mobile And Survivable Command Post project本格化
機動性、アンテナ性能、強靭データ貯蔵、隠蔽性、発電力など追求
7月27日付Defense-Newsが、米陸軍が開始した将来前線指揮所の在り方検討MASCP(Mobile And Survivable Command Post)projectについてレポートし、本格紛争に備え、様々な専門家や技術者と新たな候補装備品を今年夏にも試験している様子を紹介しています。
米陸軍はこの前線指揮所改革を陸軍の指揮統制改革プロジェクト「Project Convergence」と連携させ、最終的には国防省のJADC2(統合全ドメイン指揮統制プロジェクト)との一体化も2026-27年頃に目指したいとする取り組みですが、現状の前線指揮所が持つ、輸送が大変で、多量の熱や音や電磁波を放出して敵に発見されやすく脆弱で、通信能力が限定的で、最新デジタル技術に追随不十分だ等々の弱点を改善する方向を目指しているようです
技術分野で革新を目指している分野には、機動性改善、より遠方と接続可能なアンテナ性能、強靭なデータ貯蔵能力、指揮所のカモフラージュ技術や素材開発、自立可能な自家発電力確保、指揮所全体の物理的防御要領(banking)などが含まれ、プロジェクト責任者Tyler Barton氏は「現状の脆弱性を克服し、本格的脅威に対峙する生存性確保が大きな課題だ」と語っています
今年の夏には、New Jersey州で実施されたNetModX (Network Modernization Experiment)に、MASCP project用の新装備候補がいくつも持ち込まれ、特に今年は機動性確保と熱・音・電磁波放射の抑制に主眼が置かれたテストだったようで、来年は更に対象を拡大して数週間のNetModXに臨む計画だそうです
Barton氏は「送信機やセンサーを高所に配置するタワーなどなど、様々な新インフラ試行導入でチャレンジングなテストを行うことができたが、様々な関係者のチームワークが素晴らしかった」と、様々な産業界の専門家や技術者の支援も得てテストが行われた様子を紹介し、MASCP project初期段階の成果に手ごたえを感じていると語っています
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極めて地道な取り組みながら、極めて重要なプロジェクトだと思います。対テロ戦から本格紛争への頭の切り替えに際し、とても大事なパーツです。以下の話が良くその点を表現しています。
2016年8月の講演で当時のNeller海兵隊司令官は自虐的に
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-16
●最近のある海兵隊演習で、展開先での前線司令部設置訓練を行い、仮設指揮所に大きなカモフラージュ用ネットが被せられた。敵の航空攻撃を想定する必要が無かった最近の実戦では、あまりやらなかった訓練だ。
●ネットの偽装効果確認のため上空からの映像で検証すると、仮設指揮所の周りの様々な通信ケーブルやワイヤーが太陽光を反射し、敵なら容易に重要な施設が中心に隠されていることが発見できる状態だった。そしてその欠陥に部隊の誰も気付いていなかったのだ
●これまでの対テロ戦の敵とは、異なる相手と本格紛争では対峙する現実を直視し、自分自身の姿を見直し、考え方を変えなければダメだと教育している
米海兵隊の前線指揮所カモフラージュ能力低下の衝撃
「海兵隊司令官が嘆く現状」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-16
Project Convergenceについて
「2021年末までの教訓」→https://holylandtokyo.com/2021/12/21/2514/
「米陸軍と海兵隊F-35が情報共有演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-13
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機動性、アンテナ性能、強靭データ貯蔵、隠蔽性、発電力など追求

米陸軍はこの前線指揮所改革を陸軍の指揮統制改革プロジェクト「Project Convergence」と連携させ、最終的には国防省のJADC2(統合全ドメイン指揮統制プロジェクト)との一体化も2026-27年頃に目指したいとする取り組みですが、現状の前線指揮所が持つ、輸送が大変で、多量の熱や音や電磁波を放出して敵に発見されやすく脆弱で、通信能力が限定的で、最新デジタル技術に追随不十分だ等々の弱点を改善する方向を目指しているようです

今年の夏には、New Jersey州で実施されたNetModX (Network Modernization Experiment)に、MASCP project用の新装備候補がいくつも持ち込まれ、特に今年は機動性確保と熱・音・電磁波放射の抑制に主眼が置かれたテストだったようで、来年は更に対象を拡大して数週間のNetModXに臨む計画だそうです

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極めて地道な取り組みながら、極めて重要なプロジェクトだと思います。対テロ戦から本格紛争への頭の切り替えに際し、とても大事なパーツです。以下の話が良くその点を表現しています。
2016年8月の講演で当時のNeller海兵隊司令官は自虐的に
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-16

●ネットの偽装効果確認のため上空からの映像で検証すると、仮設指揮所の周りの様々な通信ケーブルやワイヤーが太陽光を反射し、敵なら容易に重要な施設が中心に隠されていることが発見できる状態だった。そしてその欠陥に部隊の誰も気付いていなかったのだ
●これまでの対テロ戦の敵とは、異なる相手と本格紛争では対峙する現実を直視し、自分自身の姿を見直し、考え方を変えなければダメだと教育している
米海兵隊の前線指揮所カモフラージュ能力低下の衝撃
「海兵隊司令官が嘆く現状」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-16
Project Convergenceについて
「2021年末までの教訓」→https://holylandtokyo.com/2021/12/21/2514/
「米陸軍と海兵隊F-35が情報共有演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-13
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米海軍Blue Angelsに初の女性パイロット [Joint・統合参謀本部]
76年の歴史を持つアクロバット飛行チームに
下士官から士官に、そして海軍操縦者になった異色の経歴
Amanda Lee大尉のご活躍に期待
7月18日、米海軍アクロバット飛行チームBlue Angelsが、9月から同飛行隊に所属する新メンバーを発表し、同飛行隊が1946年に編制されて以来初めて、演技飛行を行う機体(FA-18 Super Hornets)のパイロットに女性が選ばれたことが明らかになりました。
Blue Angelsは、米海軍航空部隊の存在を広く世に知らしめるため、当時米海軍トップだったChester Nimitz提督により1946年に編成され76年の歴史を誇っていますが、55年前に地上勤務要員として同飛行隊への女性受け入れが始まり、2015年にはKatie Cook少佐が同部隊所属の空中給油機KC-130パイロットとしてBlue Angels所属となっていましたが、主役のアクロバット機パイロットへの女性配置は初めてとなるようです
史上初として選ばれたのはAmanda Lee大尉で、少し変わったご経歴です。2007年に下士官として米海軍に入隊し、航空機搭載電子機器整備員としてキャリアをスタートしますが、下士官から士官を登用する制度(通称:水兵を提督に計画:Seaman-to-Admiral program (STA-21))により2013年に士官になり、操縦教育カリキュラムを経て2016年4月に米海軍操縦者に認定された経歴の持ち主です
米海軍初の女性パイロットは、1974年に当時のRosemary Mariner大尉ら6名が選ばれていますが、1993年までは戦闘任務部隊への配属は認められず飛行教育部隊のみの配置でした。
しかし同大尉はその後1982年に女性初の空母艦載機パイロットとなり、艦上攻撃機A-7コルセアなどを操縦、1992年からの湾岸戦争時には女性初の空母艦載飛行隊長(VAQ-34)として活躍しています。なおMariner氏は24年の米海軍勤務を終え、1997年に大佐で退役されています(故人)
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米海軍Blue Angelsは、高度なアクロバット飛行や編隊飛行を披露する部隊ですので、パイロットとして操縦技量が高くないと選ばれることはありませんが、米海軍のみならず米軍全体でパイロット志願者が激減し、軍操縦者の民間航空会社への流出が止まらない中、Amanda Lee大尉が選抜された背景には、「下士官から士官への登用制度出身者」&「女性初」とのアピールポイントがあるのだろうと邪推しています
映画「トップガン・マーベリック」の大ヒットで、1986年公開の初代「トップガン」当時に米海軍パイロット志願者が10倍になった「2匹目のどじょう」を狙う米海軍ですが、Blue Angelsへの「女性初」のインパクトはいかほどでしょうか。
誤解なきよう、最後に申し上げますが、下士官から花形ポストBlue Angelsメンバーに選ばれたAmanda Lee大尉には、敬意と尊敬と称賛の思いしかありません。ご活躍と飛行安全を心よりご祈念申し上げます
軍での女性を考える記事
「沿岸警備隊司令官に女性が」→https://holylandtokyo.com/2022/04/07/3112/
「初の女性空母艦長が出撃」→https://holylandtokyo.com/2022/01/07/2587/
「技術開発担当国防次官に」→https://holylandtokyo.com/2022/01/26/2649/
「初の女性月面着陸目指す」→https://holylandtokyo.com/2021/07/05/1935/
「黒人女性が初めて米海軍戦闘操縦コース卒業」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-12
「初の米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-20
「GAO指摘:女性の活用不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-20
「初の歩兵師団長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-10
「超優秀なはずの女性少将がクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「3軍長官が士官学校性暴力を討議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「上院議員が空軍時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空自初:女性戦闘機操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19
「米国防省:全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「ある女性特殊部隊員の死」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11
女性徴兵制度がある国
「前線にも:イスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27
「究極の平等目指し:ノルウェー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「社会福祉業務選択肢もオーストリア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22
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下士官から士官に、そして海軍操縦者になった異色の経歴
Amanda Lee大尉のご活躍に期待



米海軍初の女性パイロットは、1974年に当時のRosemary Mariner大尉ら6名が選ばれていますが、1993年までは戦闘任務部隊への配属は認められず飛行教育部隊のみの配置でした。

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米海軍Blue Angelsは、高度なアクロバット飛行や編隊飛行を披露する部隊ですので、パイロットとして操縦技量が高くないと選ばれることはありませんが、米海軍のみならず米軍全体でパイロット志願者が激減し、軍操縦者の民間航空会社への流出が止まらない中、Amanda Lee大尉が選抜された背景には、「下士官から士官への登用制度出身者」&「女性初」とのアピールポイントがあるのだろうと邪推しています

誤解なきよう、最後に申し上げますが、下士官から花形ポストBlue Angelsメンバーに選ばれたAmanda Lee大尉には、敬意と尊敬と称賛の思いしかありません。ご活躍と飛行安全を心よりご祈念申し上げます
軍での女性を考える記事
「沿岸警備隊司令官に女性が」→https://holylandtokyo.com/2022/04/07/3112/
「初の女性空母艦長が出撃」→https://holylandtokyo.com/2022/01/07/2587/
「技術開発担当国防次官に」→https://holylandtokyo.com/2022/01/26/2649/
「初の女性月面着陸目指す」→https://holylandtokyo.com/2021/07/05/1935/
「黒人女性が初めて米海軍戦闘操縦コース卒業」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-12
「初の米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-20
「GAO指摘:女性の活用不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-20
「初の歩兵師団長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-10
「超優秀なはずの女性少将がクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「3軍長官が士官学校性暴力を討議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「上院議員が空軍時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空自初:女性戦闘機操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19
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大平洋軍に予算投入増も米軍の統合運用進まず [Joint・統合参謀本部]
グアムや周辺にインフラ予算急増も
移動艦艇攻撃能力や弾薬備蓄の不足は20年間変化なし
4軍は各軍の利害優先で統合作戦煮詰まらず
6月23日付米空軍協会web記事が、2023年度予算に米議会で対中国予算の施設整備などが追加され、グアムかハワイにJTF(joint task force)を追加創設する検討が指示されるなどの動きがあり、大平洋軍部隊にも統合作戦訓練をアピールするなどの動きがみられるが、移動艦艇攻撃力や弾薬備蓄不足の課題は20年前から変わらず、各軍種の統合訓練意欲は低いままで各軍種が我が道を突き進んでいる状態だと専門家の強い懸念を紹介しています
今年10月以降の2023年度予算審議が米議会で山を迎える中、米軍各軍種首脳による「予算お願い」発言も活発化していますが、大平洋軍スタッフ経験者やシンクタンク研究者は、冷徹に実態が伴っていないことに警鐘を鳴らしています
先日の記事でも、分散運用準備がグアムやハワイ周辺だけでしか進まず、中国に傾きがちなアジア諸国との連携が進んでいない点や、燃料備蓄や貯蔵施設がハワイ施設の閉鎖にもかかわらずほとんど進んでいない点など深刻な状況を指摘しましたが、その続編のような内容です
まず前向きに見える報道
●2023年度国防授権法に、ウクライナで抑止が失敗したことを教訓に、大平洋軍のインフラ整備や資材備蓄予算が約1200億円積み増しされる
●グアムかハワイにjoint task force (JTF)を増設する検討を議会が法令指示へ
●太平洋空軍司令官は、2022年度予算にもACE構想を支える事前集積資材調達費や分散運用飛行場の施設整備費が含まれており、
●2023年度予算案にはチモール、Wake島などの施設整備が含まれ、特にテニアンには、離着陸・駐機支援、給油支援能力を新たに整備する計画が含まれていると説明
●米陸軍に対しては、グアム島などでの米空軍飛行場の防空体制を増強してほしいと太平洋空軍司令官は要望している
●6月3日には、ハワイの航空作戦センターで太平洋軍司令官を迎え、4軍の統合演習を行い、4軍が有機的に作戦遂行可能な能力を示した
強い懸念を持つミッチェル研究所Deptula退役中将
●太平洋軍は本当に南シナ海で戦う備えを真剣に行っているか? 真の統合作戦を本当に追求している証拠はどこにあるのか?
●20年前に太平洋軍幕僚として勤務した当時の問題、水上移動艦艇の攻撃能力や大規模作戦を遂行する弾薬の不足など、何も解決されていない現状に青ざめる
●グアムの航空機格納庫の強化が必要なのに、MDAによるミサイル防衛整備しか進んでいない
●Wilsbach太平洋空軍司令官はこれら問題を真剣に考えようとしているが、他軍種の首脳が同じように考えて行動しているとは言えない
統合への姿勢に疑問を持つCSISのJohn Schaus研究員
●各軍種がアジア太平洋地域での統合作戦運用を考えているとは言えない。どの軍種も自分たちの訓練ばかりを優先し、統合作戦にどのように貢献すべきかを考えていない
●統合演習が計画された場合も、自軍種の訓練になると思えば参加するが、他軍種の支援的な訓練ならば、極めて消極的な姿勢を見せている。こんなことばかりやっているから、統合運用が進まないのだ
////////////////////////////////////////////////
ミッチェル研究所Deptula退役中将は、湾岸戦争時の統合航空作戦を組み上げた中心人物で、対中国の作戦準備の状況や米軍統合作戦準備状況に、真に軍事合理性の観点から強い懸念を持っています。
先日の記事では、分散運用準備がグアムやハワイ周辺だけでしか進まず、中国に傾きがちなアジア諸国との連携が進んでいない点を強く懸念するDeptula氏の発言をご紹介しましたが、状況は危ういようです
各軍種はパイが増えない中、熾烈な予算獲得競争をペンタゴン内で繰り広げているわけですが、前線司令部までその影響を受けてはいけませんねぇ・・・どの軍隊でも極めてありがちですが・・・
対中国軍事作戦準備に大きな懸念
「生みの親・太平洋空軍司令官がACE構想の現状を語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
陸軍と海兵隊の遠方攻撃傾倒
「米陸軍トップが長射程攻撃やSEADに意欲満々」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-12
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「海兵隊も2つの長射程ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「射程1000nm砲に慎重姿勢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-10
「射程1000nm砲の第一関門」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15
米空軍による陸&海兵隊批判
「米空軍トップが批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「空軍ACC司令官が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「空軍大将が米陸軍を厳しく批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-03
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移動艦艇攻撃能力や弾薬備蓄の不足は20年間変化なし
4軍は各軍の利害優先で統合作戦煮詰まらず

今年10月以降の2023年度予算審議が米議会で山を迎える中、米軍各軍種首脳による「予算お願い」発言も活発化していますが、大平洋軍スタッフ経験者やシンクタンク研究者は、冷徹に実態が伴っていないことに警鐘を鳴らしています
先日の記事でも、分散運用準備がグアムやハワイ周辺だけでしか進まず、中国に傾きがちなアジア諸国との連携が進んでいない点や、燃料備蓄や貯蔵施設がハワイ施設の閉鎖にもかかわらずほとんど進んでいない点など深刻な状況を指摘しましたが、その続編のような内容です
まず前向きに見える報道

●グアムかハワイにjoint task force (JTF)を増設する検討を議会が法令指示へ
●太平洋空軍司令官は、2022年度予算にもACE構想を支える事前集積資材調達費や分散運用飛行場の施設整備費が含まれており、

●米陸軍に対しては、グアム島などでの米空軍飛行場の防空体制を増強してほしいと太平洋空軍司令官は要望している
●6月3日には、ハワイの航空作戦センターで太平洋軍司令官を迎え、4軍の統合演習を行い、4軍が有機的に作戦遂行可能な能力を示した
強い懸念を持つミッチェル研究所Deptula退役中将

●20年前に太平洋軍幕僚として勤務した当時の問題、水上移動艦艇の攻撃能力や大規模作戦を遂行する弾薬の不足など、何も解決されていない現状に青ざめる
●グアムの航空機格納庫の強化が必要なのに、MDAによるミサイル防衛整備しか進んでいない
●Wilsbach太平洋空軍司令官はこれら問題を真剣に考えようとしているが、他軍種の首脳が同じように考えて行動しているとは言えない
統合への姿勢に疑問を持つCSISのJohn Schaus研究員

●統合演習が計画された場合も、自軍種の訓練になると思えば参加するが、他軍種の支援的な訓練ならば、極めて消極的な姿勢を見せている。こんなことばかりやっているから、統合運用が進まないのだ
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ミッチェル研究所Deptula退役中将は、湾岸戦争時の統合航空作戦を組み上げた中心人物で、対中国の作戦準備の状況や米軍統合作戦準備状況に、真に軍事合理性の観点から強い懸念を持っています。
各軍種はパイが増えない中、熾烈な予算獲得競争をペンタゴン内で繰り広げているわけですが、前線司令部までその影響を受けてはいけませんねぇ・・・どの軍隊でも極めてありがちですが・・・
対中国軍事作戦準備に大きな懸念
「生みの親・太平洋空軍司令官がACE構想の現状を語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/24/3374/
陸軍と海兵隊の遠方攻撃傾倒
「米陸軍トップが長射程攻撃やSEADに意欲満々」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-12
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米空軍による陸&海兵隊批判
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米空軍5世代機を日付変更線より西に配備を [Joint・統合参謀本部]
太平洋軍司令官がグアムを示唆しつつ米空軍に要請中
そういえばアラスカF-35とハワイF-22だけ
岩国に海兵隊F-35があり、F-35艦載空母の出入りはあるが
6月24日、Aquilino太平洋軍司令官が講演し、米空軍の第5世代機が日付変更線より西側に配備されていない現状に言及しつつ、配備を要請しているとグアム島を示唆しつつ語りました。
アジア太平洋軍担当エリアに配備されている第5世代機(F-22及びF-35)は、ハワイとアラスカ(Elmendorf–Richardson)に配備されている米空軍F-22と、アラスカ(Eielson)配備の米空軍F-35、更に岩国基地配備の米海兵隊F-35がありますが、米空軍の第5世代機は日付変更線(ハワイとグアムの中間)より西側に配備されていません
まんぐーすは、中国やロシア近傍に米軍第5世代機を配備することで、電波情報収集などの「餌食」になることを米軍として避けているのか・・・とも考えていましたが、米海兵隊があっさりF-35Bを岩国に配備したことから、米空軍はどうするのかなぁ・・・とぼんやり考えておりました
米空軍に配備要請している第5世代機についてAquilino司令官は、具体的機種や場所について言葉を選んで言及しなかったようですが、司会者との対談形式講演の別の部分でグアム島の戦略的重要性を強調し、同島を360度の脅威から防御するミサイル防衛体制整備の重要性を訴えていたことから、24日付米空軍協会web記事は、配備先はグアム島だろうとの推測をしています
FDDでのAquilino司令官発言の状況
24日付米空軍協会web記事によれば同司令官は
●(5世代機の日付変更線より西側への配備の必要性についての質問に対し、)そのような能力強化については・・・・確かに望ましいことである。強固に防御された空域での作戦において必要な能力である。それがF-22であってもF-35であっても、抑止力強化のために極めて重要なことである
●より前線に、恒久的な、突破力のある戦力の配備を要請しているところである。そしてその戦力が、地域派遣戦力として活動でき、情勢に応じて必要な場所に展開することをお願いしている。(Wilsbach太平洋空軍司令官は)素晴らしい対応をしてくれている
以上の発言では、具体的な5世代機の配備先について言及を避けていますが、講演全体ではグアム島の重要性と能力強化について強調し、記事はグアムへの配備が念頭にあると推察しています。同司令官は講演の別箇所で・・・
●グアムは戦力的に見て絶対に重要な要衝である。我々はグアムを拠点に作戦を遂行する必要があり、同時にグアムを防御する必要もある。グアムは多様な戦力の供給拠点であり、有事の作戦支援拠点としても重要な役割を担っている
●中国のロケット軍は継続的にその能力や射程を向上させており、グアムは360度から脅威を受けている。これらのドメインで攻撃を受けることを予期すべきである。
●我々がそれら脅威に対処しつつ作戦遂行する能力を確保することは極めて重要で、グアムの防御とグアムからの戦力投射能力を緊急に強化することは、私にとって極めて重要な任務である
●2023年度予算でペンタゴンは、一連の防御システム整備を提案しており、脅威が弾道や巡航ミサイルであっても、最終段階で回避機動するものであっても、それら脅威に対応できるものである必要がある
///////////////////////////////////////////////
米空軍が初期型F-22の早期退役を2023年度予算で要望し、米議会調整が難航しているところですから、維持整備が大変で稼働率が低いF-22のグアム島などへの配備は今更考えにくいとすると、F-35をどこに配備するかです。
部隊編成をして配備を宣言しつつ、実質はローテーションを繰り返す「なんちゃって配備」の可能性もありますが、対中国有事の緒戦で作戦機能を喪失する可能性が高いグアムや日本の米軍基地に、5世代機を配備したくないと考えるのはべ軍事的合理性の観点から米空軍として当然のことであり、政治的レベルの判断としてやむなく従うことになるのでしょう。
今現在、嘉手納や三沢に配備されている米空軍F-15やF-16が、対中国情勢緊迫時にそのまま「座して死を待つ」覚悟で留まるとはまんぐーすは思いません。しかしAquilino司令官の発言は重く、今後の展開に注目いたしましょう
在日米軍は有事にどうするのか?
「嘉手納で統合の航空機避難訓練」→https://holylandtokyo.com/2020/01/24/873/
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「岩田元陸幕長:在日米軍はグアムまで後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09
沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
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そういえばアラスカF-35とハワイF-22だけ
岩国に海兵隊F-35があり、F-35艦載空母の出入りはあるが

アジア太平洋軍担当エリアに配備されている第5世代機(F-22及びF-35)は、ハワイとアラスカ(Elmendorf–Richardson)に配備されている米空軍F-22と、アラスカ(Eielson)配備の米空軍F-35、更に岩国基地配備の米海兵隊F-35がありますが、米空軍の第5世代機は日付変更線(ハワイとグアムの中間)より西側に配備されていません

米空軍に配備要請している第5世代機についてAquilino司令官は、具体的機種や場所について言葉を選んで言及しなかったようですが、司会者との対談形式講演の別の部分でグアム島の戦略的重要性を強調し、同島を360度の脅威から防御するミサイル防衛体制整備の重要性を訴えていたことから、24日付米空軍協会web記事は、配備先はグアム島だろうとの推測をしています
FDDでのAquilino司令官発言の状況
24日付米空軍協会web記事によれば同司令官は
●(5世代機の日付変更線より西側への配備の必要性についての質問に対し、)そのような能力強化については・・・・確かに望ましいことである。強固に防御された空域での作戦において必要な能力である。それがF-22であってもF-35であっても、抑止力強化のために極めて重要なことである

以上の発言では、具体的な5世代機の配備先について言及を避けていますが、講演全体ではグアム島の重要性と能力強化について強調し、記事はグアムへの配備が念頭にあると推察しています。同司令官は講演の別箇所で・・・

●中国のロケット軍は継続的にその能力や射程を向上させており、グアムは360度から脅威を受けている。これらのドメインで攻撃を受けることを予期すべきである。
●我々がそれら脅威に対処しつつ作戦遂行する能力を確保することは極めて重要で、グアムの防御とグアムからの戦力投射能力を緊急に強化することは、私にとって極めて重要な任務である
●2023年度予算でペンタゴンは、一連の防御システム整備を提案しており、脅威が弾道や巡航ミサイルであっても、最終段階で回避機動するものであっても、それら脅威に対応できるものである必要がある
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部隊編成をして配備を宣言しつつ、実質はローテーションを繰り返す「なんちゃって配備」の可能性もありますが、対中国有事の緒戦で作戦機能を喪失する可能性が高いグアムや日本の米軍基地に、5世代機を配備したくないと考えるのはべ軍事的合理性の観点から米空軍として当然のことであり、政治的レベルの判断としてやむなく従うことになるのでしょう。

在日米軍は有事にどうするのか?
「嘉手納で統合の航空機避難訓練」→https://holylandtokyo.com/2020/01/24/873/
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「岩田元陸幕長:在日米軍はグアムまで後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09
沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
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米陸軍はStryker装輪装甲車にAPSを導入するか? [Joint・統合参謀本部]
2014年の露によるクリミア併合に続き議論再び
対戦車砲や対戦車ミサイルから装甲車を守る防御兵器
6月2日、米陸軍の装甲車両(戦車・兵員装甲車)の防御システム関連イベントで米陸軍の担当大佐が、ウクライナ侵攻事案を受け欧州米陸軍からStryker装輪装甲車用のAPS(Active Protection Systems)装備についての問い合わせが来ており、脅威や最新装備について情報収集や分析を行っていると述べつつも、緊急限定導入は不可能ではないが様々な運用制限が必要で、本格導入にはより詳細で高度な評価分析が必要だと慎重姿勢を示しています
APS(Active Protection Systems)は、装甲車両(戦車・兵員装甲車)を対戦車砲や対戦車ミサイル攻撃から防御する装備で、高速で接近する砲弾やミサイルをミリ波等のセンサーで探知し、装甲車両から迎撃体を射出して装甲車両を防御する装備で、以下のYouTube映像でご紹介するように露米イスラエルなど複数の国や企業が実用化しています
市場にある各国のHard-Kill APS解説動画5分半
アブラハム戦車搭載のイスラエル製Trophy APS systemを含む
米陸軍は2014年のロシアのクリミア半島併合受け、2016年から19年にかけ、M1 Abrams 戦車とBradley歩兵戦闘車両とStryker装輪装甲車に対するAPS(Active Protection Systems)導入を検討しましたが、結局M1 Abrams戦車にイスラエル製Trophyを導入決定しただけで、他の候補装備を含め検討した結果、Bradley歩兵戦闘車両とStryker装輪装甲車には装備化しないことを2019年に決定しています
当時Stryker装輪装甲車用で検討対象となったのは米国のArtis Corporation社製「Iron Curtain」で、最近はRheinmetall’社製のActive Defense System やM1戦車に装備化されたイスラエルRafael社製Trophy VPSも検討したようですが、どれも装甲車両のすぐそばで迎撃する装備であり、装甲車両周辺を移動する兵士や車両自体へのダメージが大きな懸念材料の一つとなり採用には至っていないと担当大佐が説明しています
その他にも、対処余裕時間がないため全自動で運用することになるAPSの車両による操作システムの成熟度や、APSが攻撃兵器を探知するために発するミリ波などが敵に察知される恐れ、鳥などの誤目標へのAPS作動等も指摘されており、最近米陸軍はレーザーによる飛来脅威探知センサー開発を目指し、ロッキード社と2021年2月に契約を結び、上記3車両等への搭載を構想しているようです
Jane’s社作成のAPS解説動画4分半(語り解説)
いずれにしても米陸軍の現在のAPSに対する基本スタンスは、上で述べた「装甲車両周辺を移動する兵士や車両自体へのダメージ」等々の課題が完全に解決されなくとも、前線からのニーズが強ければ、何らかの運用制限をかけたり、関連の対策を行って限定的に部隊配備することは可能であるが、全車両に標準装備する決定を下すためには、より詳細な評価や様々な場面を想定した試験が必要だ、とSBCT(ストライカー戦闘旅団チーム)担当のWilliam Venable大佐は講演で説明したようです
また米陸軍として、2022年には20億円程度の予算を確保していたが、2023年度予算案にAPS評価やテスト用の予算は含まれていないとのことです
//////////////////////////////////////////////
重箱の隅をつつくような話題でしたが、高度で安価な攻撃用兵器が拡散する世界において、信頼に足る防御装備を開発することは難しいこと、そして、様々な限界を抱える一般的に高価な防御装備を搭載する防備は絞り込まざるを得ず、無人機を含む多様なセンサー情報を融合し、先手を打って敵を撃破し、攻撃を受けないような作戦運用を目指す方向にあると無理やり理解してかまわないのでは・・・とも考えております
ウクライナ侵略関連で話題の兵器
「大活躍スティンガー携帯防空ミサイルの後継選定」→https://holylandtokyo.com/2022/04/14/3123/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/
ウクライナの教訓関連
「米陸軍首脳が証言」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245/
「陸軍訓練センターに教訓反映」→https://holylandtokyo.com/2022/05/12/3156/
「ウクライナ侵略は日本への警告」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-25
「露空軍に対する米空軍幹部や専門家の見方」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「中国への影響は?CIAやDIAが」→https://holylandtokyo.com/2022/03/14/2826/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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対戦車砲や対戦車ミサイルから装甲車を守る防御兵器

APS(Active Protection Systems)は、装甲車両(戦車・兵員装甲車)を対戦車砲や対戦車ミサイル攻撃から防御する装備で、高速で接近する砲弾やミサイルをミリ波等のセンサーで探知し、装甲車両から迎撃体を射出して装甲車両を防御する装備で、以下のYouTube映像でご紹介するように露米イスラエルなど複数の国や企業が実用化しています
市場にある各国のHard-Kill APS解説動画5分半
アブラハム戦車搭載のイスラエル製Trophy APS systemを含む
米陸軍は2014年のロシアのクリミア半島併合受け、2016年から19年にかけ、M1 Abrams 戦車とBradley歩兵戦闘車両とStryker装輪装甲車に対するAPS(Active Protection Systems)導入を検討しましたが、結局M1 Abrams戦車にイスラエル製Trophyを導入決定しただけで、他の候補装備を含め検討した結果、Bradley歩兵戦闘車両とStryker装輪装甲車には装備化しないことを2019年に決定しています

その他にも、対処余裕時間がないため全自動で運用することになるAPSの車両による操作システムの成熟度や、APSが攻撃兵器を探知するために発するミリ波などが敵に察知される恐れ、鳥などの誤目標へのAPS作動等も指摘されており、最近米陸軍はレーザーによる飛来脅威探知センサー開発を目指し、ロッキード社と2021年2月に契約を結び、上記3車両等への搭載を構想しているようです
Jane’s社作成のAPS解説動画4分半(語り解説)
いずれにしても米陸軍の現在のAPSに対する基本スタンスは、上で述べた「装甲車両周辺を移動する兵士や車両自体へのダメージ」等々の課題が完全に解決されなくとも、前線からのニーズが強ければ、何らかの運用制限をかけたり、関連の対策を行って限定的に部隊配備することは可能であるが、全車両に標準装備する決定を下すためには、より詳細な評価や様々な場面を想定した試験が必要だ、とSBCT(ストライカー戦闘旅団チーム)担当のWilliam Venable大佐は講演で説明したようです
また米陸軍として、2022年には20億円程度の予算を確保していたが、2023年度予算案にAPS評価やテスト用の予算は含まれていないとのことです
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ウクライナ侵略関連で話題の兵器
「大活躍スティンガー携帯防空ミサイルの後継選定」→https://holylandtokyo.com/2022/04/14/3123/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/
ウクライナの教訓関連
「米陸軍首脳が証言」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245/
「陸軍訓練センターに教訓反映」→https://holylandtokyo.com/2022/05/12/3156/
「ウクライナ侵略は日本への警告」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-25
「露空軍に対する米空軍幹部や専門家の見方」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「中国への影響は?CIAやDIAが」→https://holylandtokyo.com/2022/03/14/2826/
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ウクライナのアジア太平洋への教訓は兵站能力 [Joint・統合参謀本部]
隣国へ侵攻の露が苦労も、西太平洋で米国はより困難
ハワイの巨大燃料貯蔵施設が閉鎖決定で危機感更に
6月13日、Kathleen Hicks国防副長官がDefenseOneのイベントで講演し、露のウクライナ侵攻がアジア太平洋地域に改めて突き付けた極めて大きな課題(very hard lesson)は、米本土から離れた西太平洋戦域への燃料、水、食料、弾薬、部品等の物資輸送と事前集積などの兵站問題だと危機感を訴えました
そして同副長官は、「ロシアは自らが国境を接している国を侵略したにもかかわらず、大きな兵站支援問題に直面している。米国が太平洋をまたいで活動しようとするなら、より一層大きな兵站上の課題を抱えることになり、化石燃料への依存がそれを更に悪化させるだろう」、「ロシアの教訓から兵站の課題を理解し、それを西太平洋に移して立ち向かわねばならない」と述べています
副長官は「グアムやハワイや南洋諸島には、米軍戦力が作戦遂行に必要な化石燃料資源は全く存在せず、西太平洋で米軍基地を受け入れているホスト国も輸入原油に依存している状態だ」と現状を憂い、大平洋軍指揮官も「太平洋戦域で有事に、弾薬補給や燃料補給を行う能力が不足している」と警鐘を鳴らしています
このような状態を受け、国防省も太平洋軍要望として、2027年までを対象とした兵站や装備の維持整備能力強化や装備の事前集積強化のため、PDI(Pacific Deterrence Initiative)構想実現のため3.2兆円規模の予算要求を2023年度予算要求として持ち出し、「兵站態勢や前線の作戦を支援する体制が、強固に防御された戦域を支えるには不十分だ」と訴えています
この現状について、元太平洋軍上級顧問でAEI研究員であるEric Sayers氏は、貯蔵燃料の地下水汚染問題で閉鎖が決定したハワイ真珠湾の「Red Hill Bulk」燃料貯蔵所の代替施設構想もない状態で、西太平洋戦域の兵站事情は悪化し続けていると懸念し、
「ウクライナ侵略は我々に、米国艦隊や大規模空輸を支える給油能力なしでは、米軍戦力の投射が単純に不可能なことを改めて思い知ららせてくれた」、「端的に言えば、米議会は艦艇規模や戦闘機数の増強を考えるなら、同レベルでアジア太平洋地域での燃料供給など兵站問題にも目を向けるべきだ」と訴えています
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中国の台湾侵攻など中国の西太平洋進出に際しては、「容易に回復できない既成事実化:a fait accompli」を許さないように米国や日本は対処する必要があると言われ、そのような作戦構想がWar-Game等を通じて検討されていると認識しているのですが、米国や西側諸国はどの程度戦いを継続可能なのでしょうか?
また仮に、中国がロシアのように、前線兵士の犠牲を苦にせず、3か月以上のネバネバ中期戦に出た場合、どのような状態になるのでしょうか? ウクライナではドイツやポーランドなど陸続きの周辺国が支援物資の輸送拠点になりますが、西太平洋ではどうなるのでしょうか・・・・・? 不安しかありません
兵站支援関連の記事
「ウクライナへの補給物資輸送拠点」→https://holylandtokyo.com/2022/05/11/3197/
「米空軍改善提案の最優秀:燃料と水輸送負担軽減策」→https://holylandtokyo.com/2022/05/06/2781/
「ウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/
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ハワイの巨大燃料貯蔵施設が閉鎖決定で危機感更に

そして同副長官は、「ロシアは自らが国境を接している国を侵略したにもかかわらず、大きな兵站支援問題に直面している。米国が太平洋をまたいで活動しようとするなら、より一層大きな兵站上の課題を抱えることになり、化石燃料への依存がそれを更に悪化させるだろう」、「ロシアの教訓から兵站の課題を理解し、それを西太平洋に移して立ち向かわねばならない」と述べています

このような状態を受け、国防省も太平洋軍要望として、2027年までを対象とした兵站や装備の維持整備能力強化や装備の事前集積強化のため、PDI(Pacific Deterrence Initiative)構想実現のため3.2兆円規模の予算要求を2023年度予算要求として持ち出し、「兵站態勢や前線の作戦を支援する体制が、強固に防御された戦域を支えるには不十分だ」と訴えています

「ウクライナ侵略は我々に、米国艦隊や大規模空輸を支える給油能力なしでは、米軍戦力の投射が単純に不可能なことを改めて思い知ららせてくれた」、「端的に言えば、米議会は艦艇規模や戦闘機数の増強を考えるなら、同レベルでアジア太平洋地域での燃料供給など兵站問題にも目を向けるべきだ」と訴えています
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また仮に、中国がロシアのように、前線兵士の犠牲を苦にせず、3か月以上のネバネバ中期戦に出た場合、どのような状態になるのでしょうか? ウクライナではドイツやポーランドなど陸続きの周辺国が支援物資の輸送拠点になりますが、西太平洋ではどうなるのでしょうか・・・・・? 不安しかありません
兵站支援関連の記事
「ウクライナへの補給物資輸送拠点」→https://holylandtokyo.com/2022/05/11/3197/
「米空軍改善提案の最優秀:燃料と水輸送負担軽減策」→https://holylandtokyo.com/2022/05/06/2781/
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米陸軍首脳がウクライナの教訓を語る [Joint・統合参謀本部]
長射程兵器とインテル活動の統合レベル連携
無人機活用と対処兵器の開発導入
同盟国等との大規模な機動を伴う演習
歩兵と戦車&装甲車部隊の連携で対戦車兵器対処
米陸軍予算要求に役立つ部分を強調した感もあるが
5月12日、Christine Wormuth陸軍長官とJames McConville陸軍参謀総長が下院軍事委員会でウクライナの教訓と米陸軍能力向上策について証言し、冒頭で取り上げたテーマを中心に米陸軍がウクライナから学んで対処すべき事項について説明しています
我々が目にする報道からも断片的な話は聞こえてきていますが、数百キロにわたるウクライナ東部戦線の全体像をメディアがどこまで把握して描けているかは疑問で、このような形で軍首脳が議会で行う証言は貴重な情報源だと思います
以下では、米軍事メディアの短い記事から、冒頭にあげた項目に関する米陸軍幹部の証言概要をご紹介します
12日付Defense-News記事によれば同長官と参謀総長は
●長射程精密攻撃が極めて重要だと訴え、ウクライナ軍が敵情に関する戦術情報を有効に活用し、カギとなるロシア軍指揮官や指揮システム及び重要装備に打撃の大きい攻撃を与えている様子を間接的に示唆しつつ、「艦艇を撃沈したり、敵の指揮所を攻撃する能力の価値を再認識させられている」と語った
●米国防省は否定しているが、NYT紙は米側がウクライナにロシア軍指揮官や指揮所に関するリアルタイム情報を提供したことが、12名以上のロシア軍将軍の戦死につながっていると報じている
●無人機の重要性は強調しても強調しきれないほどで、軍用に開発された無人機の他、市販商用品を改良した無人機が入り乱れ、双方から爆撃のリアルな映像が提供されてウクライナの状況が如実に語っている。参謀総長は「速度、レンジ、カバー範囲など、様々な要素を組み合わせて統合で前線に投入され、極めて巧みな運用が日々改良されながら行われている」と証言している
●陸軍長官は無人機対処装備の重要性にも触れ、「米陸軍も無人機対処に投資している」と証言し、その重要性を強調している
●長官と参謀総長は共に、大規模な機動展開を含む同盟国等との統合演習の重要性を強調し、「ウクライナ軍の主力旅団の75%が米軍計画の大規模な演習を経験した部隊であり、その効果を目の当たりにしている」、「このような演習をやればやるほど、同盟国、パートナー国、友好国の能力は確実に向上する」と重要性を訴えた
●ロシア軍が歩兵部隊と戦車や装甲車両部隊の連携を怠ったことで、ウクライナの対戦車ミサイルから大打撃を受けているが、これは前線における極めて重要な戦術的教訓である。
●参謀総長は「米陸軍は最高の戦車や装甲車を装備しているが、正しく運用することの重要性を再認識する必要がある。米陸軍は対戦車兵器に対応するactive protective systems導入に取り組んでおり、ロシア軍より進んでいる」と説明した
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先日の記事では、米陸軍が加州の「National Training Center」で実施しているウクライナの教訓を生かした6000名規模の演習をご紹介し、敵側がSNSへの迅速な画像映像投稿で印象操作を行ったり、初期段階で侵略計画が破綻した敵側が無差別都市攻撃に出る想定などを取り込んだ訓練を取り上げましたが、実戦は教訓の宝庫です
日本でいえば、まず「無人機の導入&活用」でしょう。特に航空自衛隊の戦闘機命派の皆様には、よーーーーく考えて頂きたく、ゲーツ国防長官が米空軍と戦って無人機導入を推進した約15年前の模様を語った2011年の発言をご紹介しておきます
ロバート・ゲーツ語録12
(ゲーツ語録はhttps://holylandtokyo.com/2022/03/26/2046/)
→私がCIA長官の時、イスラエルが無人機を有効使用することを知った。そこで米空軍と共同出資で無人機の導入を働きかけたが1992年に米空軍は拒否した。そして私は3年前、今度は無人機導入のため牙をむいて4軍と立ち向かった→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
米陸軍の話題
「ウクライナの教訓で大演習」→https://holylandtokyo.com/2022/05/12/3156/
「軽戦車MPFの選定ほぼ終了」→https://holylandtokyo.com/2022/03/29/2914/
「50KW防空レーザー装備の装甲車導入へ」→https://holylandtokyo.com/2022/01/21/2623/
「Project Convergence5つの教訓」→https://holylandtokyo.com/2021/12/21/2514/
「大国との本格紛争で近接戦闘も重視」→https://holylandtokyo.com/2021/11/09/2388/
「極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holylandtokyo.com/2021/10/18/2342/
「2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holylandtokyo.com/2020/09/11/478/
「射程1000nmの砲開発に慎重姿勢見せる」→https://holylandtokyo.com/2021/03/17/163/
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無人機活用と対処兵器の開発導入
同盟国等との大規模な機動を伴う演習
歩兵と戦車&装甲車部隊の連携で対戦車兵器対処
米陸軍予算要求に役立つ部分を強調した感もあるが

我々が目にする報道からも断片的な話は聞こえてきていますが、数百キロにわたるウクライナ東部戦線の全体像をメディアがどこまで把握して描けているかは疑問で、このような形で軍首脳が議会で行う証言は貴重な情報源だと思います
以下では、米軍事メディアの短い記事から、冒頭にあげた項目に関する米陸軍幹部の証言概要をご紹介します
12日付Defense-News記事によれば同長官と参謀総長は

●米国防省は否定しているが、NYT紙は米側がウクライナにロシア軍指揮官や指揮所に関するリアルタイム情報を提供したことが、12名以上のロシア軍将軍の戦死につながっていると報じている

●陸軍長官は無人機対処装備の重要性にも触れ、「米陸軍も無人機対処に投資している」と証言し、その重要性を強調している
●長官と参謀総長は共に、大規模な機動展開を含む同盟国等との統合演習の重要性を強調し、「ウクライナ軍の主力旅団の75%が米軍計画の大規模な演習を経験した部隊であり、その効果を目の当たりにしている」、「このような演習をやればやるほど、同盟国、パートナー国、友好国の能力は確実に向上する」と重要性を訴えた

●参謀総長は「米陸軍は最高の戦車や装甲車を装備しているが、正しく運用することの重要性を再認識する必要がある。米陸軍は対戦車兵器に対応するactive protective systems導入に取り組んでおり、ロシア軍より進んでいる」と説明した
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日本でいえば、まず「無人機の導入&活用」でしょう。特に航空自衛隊の戦闘機命派の皆様には、よーーーーく考えて頂きたく、ゲーツ国防長官が米空軍と戦って無人機導入を推進した約15年前の模様を語った2011年の発言をご紹介しておきます
ロバート・ゲーツ語録12
(ゲーツ語録はhttps://holylandtokyo.com/2022/03/26/2046/)

米陸軍の話題
「ウクライナの教訓で大演習」→https://holylandtokyo.com/2022/05/12/3156/
「軽戦車MPFの選定ほぼ終了」→https://holylandtokyo.com/2022/03/29/2914/
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「大国との本格紛争で近接戦闘も重視」→https://holylandtokyo.com/2021/11/09/2388/
「極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holylandtokyo.com/2021/10/18/2342/
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米陸軍が射程1000マイルの巨砲開発中止 [Joint・統合参謀本部]
東京から上海を攻撃可能な長射程砲構想だったが
他開発案件との重複回避や費用対効果の観点から
2021年3月から外部有識者評価待ち開発中断中
5月23日付Defense-Newsは、米陸軍が2019年1月に開発中と明らかにしていた射程1000nmの大砲「SLRC:Strategic Long-Range Cannon」プログラムについて、米陸軍報道官から「米議会からの指示や予算の最適分配や装備開発の重複を避けるため、開発中断を決断した」との連絡を受けたと報じました
この東京から上海の目標を攻撃可能な射程1000nmの大砲SLRC開発は、中国A2AD網の範囲拡大を受け、米陸軍の遠方攻撃能力強化のため当時のエスパー陸軍長官が明らかにしたものです。
ただ発表当時においてもMcConville米陸軍参謀総長は、「SLRCが開発成功すれば、(極超音速兵器のように)1発何億もせず、1発4-5000万円程度に収まると考えられる。コストがポイントで、そこが気になっている。コストが課題だ。陸軍は革新を追求しているが、段階ごとに成果を確認し、目標が達成できなければ進めない」と、費用対効果のトレードオフに着目していると語っていたところです
その後2021年の3月に米陸軍は、2021年中に外部有識者がまとめる予定だった「National Academy of Sciences report」におけるSLRCの実現可能性等に関する分析評価を待って、SLRC開発の継続を判断するとし、開発を一時中断すると発表しました。
ただ、2020年9月開始の「National Academy・・・」関連会議は、2021年1月に5回目の検討会議を行った後は動きがなく、2021年中予定だったレポートも発表されていない状態が続いていたようです
米陸軍は重視する長射程兵器開発において、SLRC以外にも2023年部隊配備を狙って4つのプロジェクト(Extended Range Cannon Artillery (ERCA)、Long-Range Hypersonic Weapon (LRHW),、Mid-Range anti-ship Missile (MRC) 、Precision Strike Missile (PrSM))を走らせており、米議会からも2022年度予算議論の過程でSLRCは中止すべきと勧告を受けていたところでした
また5月16日の週の下院予算関連委員会でも、米陸軍省の開発担当次官が、「装備品開発の重複」と「コスト予想」を踏まえてSLRC開発を中止すると証言していた模様です
5月23日付Defense-News記事によれば陸軍報道官は
(20日付の文書でDefense-Newsに回答)
●潜在的な装備の重複を避け、装備近代化に税金を効率的に使用すべきとの観点から、科学技術面からの検討で実現可能との判断が出た場合でも、当該装備の製造や調達や部隊編成に数千億円を投じる必要が生じるSLRCを中止することを決定した
●当初SLRCに予算配分されていた予算については、陸軍開発担当次官室との調整を経て、他の継続する科学技術開発プロジェクトに再配分する
●科学技術開発フェーズ段階では、必要総コストの詳細な見積もりまでは行わないが、SLRC計画を陸軍長官が中止判断するに必要なコスト見積もりは行われている
////////////////////////////////////////////////
米陸軍はSLRCの基礎技術調査や技術開発や関連試験に、2021年度に約75億円を使用した後、2022年以降は投資していないとのことです
2019年10月に、当時のMcConville米陸軍参謀総長による「(極超音速兵器のように)1発何億もせず、1発4-5000万円程度に収まると考えられる。コストがポイント」との発言から類推すれば、1発4-5000万円程度に収まらなかったのかなぁ・・・・と邪推いたしております
または、1発4-5000万円程度に収まったとしても、米陸軍予算全体のやりくりから、開発継続が困難になったものと推測いたします。これまでに開発&確認された技術が、いつかどこかで再利用されることを祈念しつつ・・・
米陸軍の夢?SLRC関連の記事
「射程1000nm砲に慎重姿勢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-10
「射程1000nm砲の第一関門」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15
「射程1000nmの砲開発」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
米陸軍の遠方攻撃志向
「INFの呪縛を解かれ米陸軍PrSMが射程500㎞越え」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-23
「極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-14
「米陸軍トップが長射程攻撃やSEADに意欲満々」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-12
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「海兵隊も2つの長射程ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
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→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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他開発案件との重複回避や費用対効果の観点から
2021年3月から外部有識者評価待ち開発中断中

この東京から上海の目標を攻撃可能な射程1000nmの大砲SLRC開発は、中国A2AD網の範囲拡大を受け、米陸軍の遠方攻撃能力強化のため当時のエスパー陸軍長官が明らかにしたものです。

その後2021年の3月に米陸軍は、2021年中に外部有識者がまとめる予定だった「National Academy of Sciences report」におけるSLRCの実現可能性等に関する分析評価を待って、SLRC開発の継続を判断するとし、開発を一時中断すると発表しました。

米陸軍は重視する長射程兵器開発において、SLRC以外にも2023年部隊配備を狙って4つのプロジェクト(Extended Range Cannon Artillery (ERCA)、Long-Range Hypersonic Weapon (LRHW),、Mid-Range anti-ship Missile (MRC) 、Precision Strike Missile (PrSM))を走らせており、米議会からも2022年度予算議論の過程でSLRCは中止すべきと勧告を受けていたところでした
また5月16日の週の下院予算関連委員会でも、米陸軍省の開発担当次官が、「装備品開発の重複」と「コスト予想」を踏まえてSLRC開発を中止すると証言していた模様です
5月23日付Defense-News記事によれば陸軍報道官は
(20日付の文書でDefense-Newsに回答)

●当初SLRCに予算配分されていた予算については、陸軍開発担当次官室との調整を経て、他の継続する科学技術開発プロジェクトに再配分する
●科学技術開発フェーズ段階では、必要総コストの詳細な見積もりまでは行わないが、SLRC計画を陸軍長官が中止判断するに必要なコスト見積もりは行われている
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2019年10月に、当時のMcConville米陸軍参謀総長による「(極超音速兵器のように)1発何億もせず、1発4-5000万円程度に収まると考えられる。コストがポイント」との発言から類推すれば、1発4-5000万円程度に収まらなかったのかなぁ・・・・と邪推いたしております

米陸軍の夢?SLRC関連の記事
「射程1000nm砲に慎重姿勢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-10
「射程1000nm砲の第一関門」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15
「射程1000nmの砲開発」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
米陸軍の遠方攻撃志向
「INFの呪縛を解かれ米陸軍PrSMが射程500㎞越え」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-23
「極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-14
「米陸軍トップが長射程攻撃やSEADに意欲満々」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-12
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「海兵隊も2つの長射程ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
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感涙:極東米海兵隊は「stand-in force」作戦を検討中 [Joint・統合参謀本部]
2021年12月発表「A Concept for Stand-In Forces」基に
同盟国等と共に中国A2AD域内で頑張る姿勢をセミナーで語る
まんぐーすは知りませんでした。てっきり長射程兵器のみ重視かと
でも構想の「Stand-in Forces」の実態からすると・・
5月11日、米海兵隊関連イベントで太平洋軍海兵隊や日本に拠点を置く第3海兵機動展開部隊(III MEF)幹部が、米軍の他軍種が「Stand-off Forces」的に中国A2AD圏外の安全な場所からの長距離攻撃に注力する中でも、アジア太平洋の海兵隊部隊は「Stand-in Forces」だと語り、様々な取り組みと装備品要望を行い、大きなカギとなる地域同盟国との協力強化も重要と語っています
まんぐーすは知りませんでしたが、米海兵隊は2021年12月に「A Concept for Stand-In Forces」を発表し、アジア太平洋地域の海兵隊が取り組んできた第1列島線内部に陣取り作戦を遂行するスタイルや、開発導入すべき新技術や新装備を明確に示したようです。
具体的イメージとしては、中国A2AD領域内に進出又は強靭に陣取り、隠密裏に行動する海兵隊兵士が中国艦艇の位置を特定し、ネットワーク化されたタブレット等の情報端末で1000マイル離れて陣取る味方の長距離攻撃部隊に伝えるというもので、豪州やフィリピン軍を巻き込んでの訓練も始まっているようです
米空軍は言うに及ばず、米陸軍も海兵隊もこぞって「遠方攻撃兵器」に注力する現実に、軍事的合理性から致し方ないと思いつつも、暗い気分になっていたまんぐーすは、記事のタイトルを見て単純に「目頭が熱くなった」わけですが、よく読むと「Stand-in Forces」は敵情を把握する「ほんの一部」であるような雰囲気も漂っており、同盟国対策のアピールかとも勘繰りたくなりますが、以下では関連海兵隊幹部のイベントでの発言を紹介いたします
5月18日付Defense-New記事によれば
●太平洋軍海兵隊のStephen Fiscus副戦力開発チーム長(大佐)は、「過去約20年間、中国が造成した強力なA2AD能力を前に、米軍の多くはA2AD圏外の安全な場所からのstand off攻撃で対処しようとしている。しかし太平洋軍の海兵隊部隊はstand inだ。その配置、体制、能力、地域国との関係などを最大限に活用して中国から守る。中国のWEZ内(weapons engagement zone)で我らのWEZを構築する方程式を取り戻す」と熱く語り、
●同大佐はまた「日本が拠点の「III MEF」は既にstand in戦力で、フィリピンや韓国で訓練を行っている。しかしstand inコンセプトは更に、地上や海上目標情報を、時間や空間的余裕を確保しつつ米統合戦力に伝達して海上戦を遂行することを求めており、追加の新規装備を必要としている」と訴えた
●Joseph Clearfield太平洋軍海兵隊副司令官(准将)は将来像の具体的イメージを表現し、「ヘリコプターからタブレットを持った兵士が展開潜入し、見晴らしの良い半島の先端に設けた隠蔽された拠点から敵の動きを監視する。敵を発見したらタブレットを使用し、その位置や関連情報を1000マイル離れた統合の長距離攻撃部隊に知らせるのだ」と説明した
●新設された「第3沿岸連隊」は今年後半に、上記のようなデジタル化作戦遂行に不足する能力(ギャップ)を特定する任務を付与されている。通信能力、キルチェーンweb連接、センサーとの連接等が課題である
●具体的取り組み例では、Naval Strike Missileを無人発射車両に搭載して艦艇から発射するNMESIS system(Navy/Marine Corps Expeditionary Ship Interdiction System)試験が4月に実施され、2023年から配備が予定されている
●また沿岸戦闘艦LCSから、地上目標攻撃のため「AGM-114L Longbow Hellfire missiles」を発射する試験が5月12日にLCS- Montgomeryから実施され、この際は無人機MQ-9からの目標情報を基に数マイル先の目標攻撃であったが、構想では前述の「第3沿岸連隊」のような部隊が目標情報を収集・発信することが期待されている。海上配備兵器で地上目標を攻撃することで火力支援能力を強化する方向である
●前述の副司令官(准将)は、このコンセプトを前進させ膨大なアジア太平洋地域をカバーするには同盟国等との協力が重要なカギだと語り、豪州とフィリピンが既に「第3沿岸連隊」のような敵情を収集して敵を妨害する部隊を編成したと語っている
●米軍内でも、例えば加州所在で長年中東での作戦に従事し、中東任務撤退後に縮小されていた「Southern California Marines」を再充足し、「Marine Air-Ground Task Force」として再編しつつあり、その一つの部隊を既に豪州ダーウィンに展開させていると同准将は説明している
●副司令官はまた、日本が拠点の「III MEF」が第1列島線でのstand in作戦を担う一方で、加州を拠点とする「I MEF:第1海兵機動展開部隊」は「outer regions of Southeast Asia」を担当し、伝統的な着上陸や新たな沿岸からの作戦手法を用い、迅速な機動展開で作戦支援する部隊と考えていると説明した
●また日本駐留の「III MEF」が在ダーウィンのローテーション部隊を構成するのに対し、「I MEF」は豪州が乾季の6か月間は北部豪州にローテーション展開し、残りの半年をアジアの他の同盟国等で活動する可能性を検討して模索しているとも同副司令官は語った
////////////////////////////////////////////////
記事のタイトル「Pacific Marines move to formalize role as the stand-in force」を目にし、記事の太平洋軍海兵隊幹部の皆さんの発言を一読した時点で、最近涙もろいまんぐーすは海兵隊の皆さんの心意気に「目頭が熱く」なりましたが、結局「III MEF」のstand in戦力は打撃力を行使しない少数の隠密偵察部隊なのかな??・・・と思い始め、涙も乾いてしまいました。
もちろん、本国から遠く離れた極東の地で、リスクを負って前線に身を投じる覚悟の米海兵隊の皆様に何ら不満はなく感謝の言葉しかありませんし、軍事的合理性に基づき作戦コンセプトを練り、同盟国等への配慮一杯に抑止力向上のため同コンセプトと遂行状況を対外アピールされる姿には崇高なものさえ感じますが、ウクライナ東部住民の心境に少し近づいた気も致します
ついでに在日米海兵隊の「削減」に関する防衛省の説明ぶりを防衛白書内で探してみると、令和3年版285ページに「沖縄に所在する第3海兵機動展開部隊(ⅢMEF)の司令部要素をグアムへ移転する計画だったが、2012年4月に変更し、司令部・陸空&後方支援部隊で構成される海兵空地任務部隊(M Marine Air Ground Task ForceAGTF)を日本、グアム及びハワイに置くとともに豪州へローテーション展開させることとした」と訳の分からない説明になっています
「A Concept for Stand-In Forces」の現物32ページ
→https://www.hqmc.marines.mil/Portals/142/Users/183/35/4535/211201_A%20Concept%20for%20Stand-In%20Forces.pdf?ver=EIdvoO4fwI2OaJDSB5gDDA%3d%3d
遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「スタンドオフ重視を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
令和3年版防衛白書のPDF
→https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2021/pdf/wp2021_JP_Full_01.pdf
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
同盟国等と共に中国A2AD域内で頑張る姿勢をセミナーで語る
まんぐーすは知りませんでした。てっきり長射程兵器のみ重視かと
でも構想の「Stand-in Forces」の実態からすると・・

まんぐーすは知りませんでしたが、米海兵隊は2021年12月に「A Concept for Stand-In Forces」を発表し、アジア太平洋地域の海兵隊が取り組んできた第1列島線内部に陣取り作戦を遂行するスタイルや、開発導入すべき新技術や新装備を明確に示したようです。

米空軍は言うに及ばず、米陸軍も海兵隊もこぞって「遠方攻撃兵器」に注力する現実に、軍事的合理性から致し方ないと思いつつも、暗い気分になっていたまんぐーすは、記事のタイトルを見て単純に「目頭が熱くなった」わけですが、よく読むと「Stand-in Forces」は敵情を把握する「ほんの一部」であるような雰囲気も漂っており、同盟国対策のアピールかとも勘繰りたくなりますが、以下では関連海兵隊幹部のイベントでの発言を紹介いたします
5月18日付Defense-New記事によれば

●同大佐はまた「日本が拠点の「III MEF」は既にstand in戦力で、フィリピンや韓国で訓練を行っている。しかしstand inコンセプトは更に、地上や海上目標情報を、時間や空間的余裕を確保しつつ米統合戦力に伝達して海上戦を遂行することを求めており、追加の新規装備を必要としている」と訴えた

●新設された「第3沿岸連隊」は今年後半に、上記のようなデジタル化作戦遂行に不足する能力(ギャップ)を特定する任務を付与されている。通信能力、キルチェーンweb連接、センサーとの連接等が課題である

●また沿岸戦闘艦LCSから、地上目標攻撃のため「AGM-114L Longbow Hellfire missiles」を発射する試験が5月12日にLCS- Montgomeryから実施され、この際は無人機MQ-9からの目標情報を基に数マイル先の目標攻撃であったが、構想では前述の「第3沿岸連隊」のような部隊が目標情報を収集・発信することが期待されている。海上配備兵器で地上目標を攻撃することで火力支援能力を強化する方向である

●米軍内でも、例えば加州所在で長年中東での作戦に従事し、中東任務撤退後に縮小されていた「Southern California Marines」を再充足し、「Marine Air-Ground Task Force」として再編しつつあり、その一つの部隊を既に豪州ダーウィンに展開させていると同准将は説明している

●また日本駐留の「III MEF」が在ダーウィンのローテーション部隊を構成するのに対し、「I MEF」は豪州が乾季の6か月間は北部豪州にローテーション展開し、残りの半年をアジアの他の同盟国等で活動する可能性を検討して模索しているとも同副司令官は語った
////////////////////////////////////////////////

もちろん、本国から遠く離れた極東の地で、リスクを負って前線に身を投じる覚悟の米海兵隊の皆様に何ら不満はなく感謝の言葉しかありませんし、軍事的合理性に基づき作戦コンセプトを練り、同盟国等への配慮一杯に抑止力向上のため同コンセプトと遂行状況を対外アピールされる姿には崇高なものさえ感じますが、ウクライナ東部住民の心境に少し近づいた気も致します

「A Concept for Stand-In Forces」の現物32ページ
→https://www.hqmc.marines.mil/Portals/142/Users/183/35/4535/211201_A%20Concept%20for%20Stand-In%20Forces.pdf?ver=EIdvoO4fwI2OaJDSB5gDDA%3d%3d
遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「スタンドオフ重視を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
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米陸軍訓練センターがウクライナ教訓生かした演習 [Joint・統合参謀本部]
敵役部隊はSNSにすぐ映像を上げ印象操作
都市制圧に無差別都市攻撃を行う敵部隊を想定
1350名の敵役部隊が4500名の精鋭訓練部隊を鍛える
4月17日付Military.com記事は、米陸軍が加州の「National Training Center」でウクライナの教訓を生かした6000名規模の演習を実施している様子を取り上げ、敵側がSNSへの迅速な画像映像投稿で印象操作を行ったり、初期段階で侵略計画が破綻した敵側が無差別都市攻撃に出る想定の訓練を紹介しています。
Christine Wormuth陸軍長官が2日間に渡って同訓練センターを視察し、「国防省等で将来戦について過去約5年間議論してきたが、今まさにウクライナで生起している事象から米陸軍は必死に学んでいる」、「世界中が目撃しているSNSなど情報ドメインの重要性(ロシア側とゼレンスキー大統領の毎日の発信などを例示)」や「装備近代化方向へのフィードバックの必要性」に言及しています
同記事は、米陸軍精鋭部隊4500名が2週間に渡り訓練する様子を紹介していますが、その後はすぐに別の部隊が入れ替わりで訓練センターを訪れ、ロシア語を使用する敵役の1350名規模部隊と、更に新たな戦訓を取り入れた演習を行うことになっているようです。
予算案の議会審議のタイミングでもあり、米陸軍による国民や議会向けアピールの入った対外情報発信の一環でしょうが、6000名規模の演習には長期間の準備が必要であり、記事からはロシアや北朝鮮を意識した寒冷地訓練を実施しているとの記載もあり、興味深いのでご紹介してきます
4月17日付Military.com記事によれば
●同訓練センター司令官Curt Taylor准将は、同訓練センタースタッフはロシア軍の教科書を擦り切れるほど読み込み、米軍兵士がロシア軍などと戦っても勝利できるよう日々努力していると語り、情勢に応じて迅速にカリキュラムを変更すると説明した
●例えば、同訓練センターやルイジアナ州にある訓練センターでは、イラクやアフガンでの活動が盛んな時は対テロ重視にシフトし、米軍の焦点変化に伴い、ロシアや北朝鮮を意識して寒冷地での行動訓練にも焦点をあて、ウクライナの緊張が高まるといち早く様々な新たな想定を訓練に取り入れている
●現在は第1騎兵師団の4500名が訓練部隊で、対抗部隊を同センター所属の第11機甲化騎兵連隊Blackhorseなど1350名が演じている。しかし対抗部隊は実際の敵がやりそうなことは全て展示可能で、通信妨害、電子妨害から非正規作戦やプロパガンダ作戦まであらゆる手法を駆使して敵を演じ、スマホ片手に利用可能な場面や映像を素早くSNS上にアップする体制でも臨んでいる
●訓練部隊指揮官の一人である大佐は、演習では敵味方とも多数の無人機を偵察&攻撃用に使用しており、上空の無人機から発見されないように部隊を隠すことに神経を使うと語り、その他さまざまなトラブルが発生する前線でSNSやツイッターを気にする余裕はないと語っている
●Taylor訓練センター司令官は、現在のウクライナの情勢を踏まえ、無差別に火砲を発射して社会インフラを破壊する敵を相手の都市戦闘シナリオを米軍訓練に提供しており、どのような状況にあっても、味方の他部隊と連携を図って行動する重要性を強調していると説明している
●Wormuth陸軍長官は別の視点で、例えば戦車の今後を考える際、欧州では地盤が柔らかく、中東で必要だった重戦車ではなく軽戦車が重宝しており、戦車に求める機動性や防御力や破壊力をどの程度にするかなどの論点も明らかになっている、と同センター視察時に語っている
/////////////////////////////////////////////
中東想定の対テロ作戦重視からロシアや北朝鮮想定の寒冷地作戦重視に移行し、今度は都市に無差別攻撃を行う敵を想定しての訓練を重視する・・・・そんなに次々と重視項目を変えられるのか???とも思いますが、実際にロシア軍を演じてみて疑問点を明らかにし、ウクライナ前線での情報活動に生かすのかもしれません。
2014年当時の高度なハイブリッド戦を想定していたら、20世紀を想起させる地上戦が目の前で繰り広げらる様子に、米軍も興味津々なのでしょう。ロシア側の部隊通信も筒抜けで、驚くほどロシア軍の混乱ぶりや戦いぶりが把握されているのかもしれません。分析ネタがありすぎて困惑・・・ぐらいなのかもしれませんねぇ・・・
ウクライナ侵略に関する記事
「ウクライナ新緑は日本への警告だ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-25
「露空軍に対する米空軍幹部や専門家の見方」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「中国への影響は?CIAやDIAが」→https://holylandtokyo.com/2022/03/14/2826/
「なぜイスラエルが仲介に?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-08
「ウ軍のトルコ製無人攻撃機20機が活躍」→https://holylandtokyo.com/2022/03/05/2787/
「ロシア兵捕虜への「両親作戦」」→https://holylandtokyo.com/2022/03/03/2776/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/28/2763/
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都市制圧に無差別都市攻撃を行う敵部隊を想定
1350名の敵役部隊が4500名の精鋭訓練部隊を鍛える

Christine Wormuth陸軍長官が2日間に渡って同訓練センターを視察し、「国防省等で将来戦について過去約5年間議論してきたが、今まさにウクライナで生起している事象から米陸軍は必死に学んでいる」、「世界中が目撃しているSNSなど情報ドメインの重要性(ロシア側とゼレンスキー大統領の毎日の発信などを例示)」や「装備近代化方向へのフィードバックの必要性」に言及しています

予算案の議会審議のタイミングでもあり、米陸軍による国民や議会向けアピールの入った対外情報発信の一環でしょうが、6000名規模の演習には長期間の準備が必要であり、記事からはロシアや北朝鮮を意識した寒冷地訓練を実施しているとの記載もあり、興味深いのでご紹介してきます
4月17日付Military.com記事によれば

●例えば、同訓練センターやルイジアナ州にある訓練センターでは、イラクやアフガンでの活動が盛んな時は対テロ重視にシフトし、米軍の焦点変化に伴い、ロシアや北朝鮮を意識して寒冷地での行動訓練にも焦点をあて、ウクライナの緊張が高まるといち早く様々な新たな想定を訓練に取り入れている

●訓練部隊指揮官の一人である大佐は、演習では敵味方とも多数の無人機を偵察&攻撃用に使用しており、上空の無人機から発見されないように部隊を隠すことに神経を使うと語り、その他さまざまなトラブルが発生する前線でSNSやツイッターを気にする余裕はないと語っている

●Wormuth陸軍長官は別の視点で、例えば戦車の今後を考える際、欧州では地盤が柔らかく、中東で必要だった重戦車ではなく軽戦車が重宝しており、戦車に求める機動性や防御力や破壊力をどの程度にするかなどの論点も明らかになっている、と同センター視察時に語っている
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2014年当時の高度なハイブリッド戦を想定していたら、20世紀を想起させる地上戦が目の前で繰り広げらる様子に、米軍も興味津々なのでしょう。ロシア側の部隊通信も筒抜けで、驚くほどロシア軍の混乱ぶりや戦いぶりが把握されているのかもしれません。分析ネタがありすぎて困惑・・・ぐらいなのかもしれませんねぇ・・・
ウクライナ侵略に関する記事
「ウクライナ新緑は日本への警告だ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-25
「露空軍に対する米空軍幹部や専門家の見方」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「中国への影響は?CIAやDIAが」→https://holylandtokyo.com/2022/03/14/2826/
「なぜイスラエルが仲介に?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-08
「ウ軍のトルコ製無人攻撃機20機が活躍」→https://holylandtokyo.com/2022/03/05/2787/
「ロシア兵捕虜への「両親作戦」」→https://holylandtokyo.com/2022/03/03/2776/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/
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グアム島配備の米潜水艦が2隻から5隻体制に [Joint・統合参謀本部]
2021年11月の2隻体制から、3月末には5隻体制へ増強完了
対中国で優越な数少ない分野の潜水艦力強化
バージニア級でなく旧式のロサンゼルス級3隻増ですが
バージニア級増強は施設整備もあり2026年とか・・・
4月15日付Defense-Newsが、米海軍がアジア太平洋地域の潜水艦能力を強化するため、グアム島配備の潜水艦を、従来の2隻から5隻体制に増強完了したと報じています。
グアム島潜水艦体制の強化については、2021年11月にJeffrey Jablon太平洋海軍潜水艦隊司令官(少将)が表明していたものですが、表明時点で2隻のロサンゼルス級潜水艦体制だったものを、2021年12月にハワイから1隻増強し、追加で2022年3月にハワイと加州からの各1隻を加え、計5隻のロサンゼルス級潜水艦体制を確立しました
本当であれば、2000年代から導入が開始され、既に19隻が任務に就いているバージニア級潜水艦を増強したいところでしょうが、受け入れ施設等の関係もあり、バージニア級は2026年配備予定だそうです。
増強した3隻の内、2隻がハワイからグアムへの移動であり、その実際の効果がどの程度かは不明ですが、対中国で西側軍事力が優越状態にあると言い切れる数少ない分野でもあり、「AUKUS」で豪州に攻撃型原潜を提供する決断もあり、現時点で対応可能な所で手を打ったのでしょう。
【ご参考事項】
対中国における潜水艦分野での米国や西側優位に関する発言など
元太平洋軍作戦部長(2022年3月)
●中国は台湾の海上封鎖を試みるだろうが、西側は潜水艦戦力や戦術で優位な立場にあり、この利点を生かすため西太平洋への攻撃原潜配備数を増やす必要がある
●太平洋軍はグアムに3隻の攻撃原潜を配備しているが、これを6隻に増強するため、ロサンゼルス級の延命を進め、バージニア級の増産(年2隻から3隻へ)体制を構築する必要がある。また豪州に米潜水艦基地を設ける必要がある
米国防省「中国の軍事力2021」レポート(2021年11月)
●中国の西側潜水艦への対処能力(anti-submarine warfare)は、依然としてレベルが低く、アキレス腱となっている。
●中国はこの欠点を改善するため、中国空母や中国潜水艦防御のために水上艦艇を2030年までに460隻に増強する計画
●中国の現在の潜水艦戦力は、戦略原潜を4隻と攻撃型ディーゼル潜水艦50隻の体制
戦略家エドワード・ルトワック氏
(「ラストエンペラー習近平」2021年7月刊 奥山真司訳より)
●ISRやAI情報処理能力の発展で、水上艦艇の脆弱性は過去20年間で20倍になったと考えるべき。平時からグレーゾーン事態では水上艦にも役割は残されているが、戦闘状態に入ったら格好の潜水艦の餌食である
●対中国の軍事作戦を考える時、中国の大規模艦隊は世界最大の「標的」となるともいえる。米海軍の攻撃型原潜が一つの鍵になる。西側の優位性を最大限に生かすべきである
日米が協力すべき軍事技術分野4つ
(Atlantic Councilレポート2020年4月)
●中国は過去10年にわたり、有人及び無人潜水艦へ膨大な投資を行っている。
●米国も本分野への投資を始め、日本ではIHIが独自に無人水中艇開発を行ったが、防衛省としてこの分野への参画決断はない状態である。論理的に見て協力が望まれる分野である
CSBA報告書
米海軍に提言:大型艦艇中心では戦えない(2020年1月)
///////////////////////////////////////////////////////////
上記の「元太平洋軍作戦部長」が要望している「6隻」体制なら、常に南シナ海も含む第一列島線内に、米海軍攻撃型原子力潜水艦を1隻ローテーション配備できるのかもしれません。(基礎知識皆無ですので完全な邪推です)
最新の「中国の軍事力2021」レポートが、「中国の西側潜水艦への対処能力は、依然としてレベルが低く、アキレス腱だ」と言うのですから、水中無人艇への投資も含めて日本も協力し、この分野を「梃子」に対中国抑止力を高めたいものです。
既に始まっている攻撃原潜の後継検討
「戦略原潜設計チームを次期攻撃原潜にも投入へ」→https://holylandtokyo.com/2021/11/04/2333/
攻撃原潜への極超音速兵器の搭載時期は
「バージニア級へは2028年以降」→https://holylandtokyo.com/2021/11/26/2450/
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対中国で優越な数少ない分野の潜水艦力強化
バージニア級でなく旧式のロサンゼルス級3隻増ですが
バージニア級増強は施設整備もあり2026年とか・・・
グアム島潜水艦体制の強化については、2021年11月にJeffrey Jablon太平洋海軍潜水艦隊司令官(少将)が表明していたものですが、表明時点で2隻のロサンゼルス級潜水艦体制だったものを、2021年12月にハワイから1隻増強し、追加で2022年3月にハワイと加州からの各1隻を加え、計5隻のロサンゼルス級潜水艦体制を確立しました

増強した3隻の内、2隻がハワイからグアムへの移動であり、その実際の効果がどの程度かは不明ですが、対中国で西側軍事力が優越状態にあると言い切れる数少ない分野でもあり、「AUKUS」で豪州に攻撃型原潜を提供する決断もあり、現時点で対応可能な所で手を打ったのでしょう。
【ご参考事項】
対中国における潜水艦分野での米国や西側優位に関する発言など
元太平洋軍作戦部長(2022年3月)

●太平洋軍はグアムに3隻の攻撃原潜を配備しているが、これを6隻に増強するため、ロサンゼルス級の延命を進め、バージニア級の増産(年2隻から3隻へ)体制を構築する必要がある。また豪州に米潜水艦基地を設ける必要がある
米国防省「中国の軍事力2021」レポート(2021年11月)

●中国はこの欠点を改善するため、中国空母や中国潜水艦防御のために水上艦艇を2030年までに460隻に増強する計画
●中国の現在の潜水艦戦力は、戦略原潜を4隻と攻撃型ディーゼル潜水艦50隻の体制
戦略家エドワード・ルトワック氏
(「ラストエンペラー習近平」2021年7月刊 奥山真司訳より)

●対中国の軍事作戦を考える時、中国の大規模艦隊は世界最大の「標的」となるともいえる。米海軍の攻撃型原潜が一つの鍵になる。西側の優位性を最大限に生かすべきである
日米が協力すべき軍事技術分野4つ

●中国は過去10年にわたり、有人及び無人潜水艦へ膨大な投資を行っている。
●米国も本分野への投資を始め、日本ではIHIが独自に無人水中艇開発を行ったが、防衛省としてこの分野への参画決断はない状態である。論理的に見て協力が望まれる分野である
CSBA報告書
米海軍に提言:大型艦艇中心では戦えない(2020年1月)
///////////////////////////////////////////////////////////

最新の「中国の軍事力2021」レポートが、「中国の西側潜水艦への対処能力は、依然としてレベルが低く、アキレス腱だ」と言うのですから、水中無人艇への投資も含めて日本も協力し、この分野を「梃子」に対中国抑止力を高めたいものです。
既に始まっている攻撃原潜の後継検討
「戦略原潜設計チームを次期攻撃原潜にも投入へ」→https://holylandtokyo.com/2021/11/04/2333/
攻撃原潜への極超音速兵器の搭載時期は
「バージニア級へは2028年以降」→https://holylandtokyo.com/2021/11/26/2450/
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米陸軍が前線での電力消費増に対応戦略検討 [Joint・統合参謀本部]
「Operational Energy戦略」を年末までに
前線兵士や前線指揮所での電子デバイス増に対応
気候変動対処に電気自動車導入推進などのため
4月12日付Defense-Newsが、米陸軍が前線での電力消費量増加や気候変動対処のための電気自動車導入に対処するため、2022年末までに「作戦運用エネルギー戦略:Operational Energy Strategy」をまとめて産業界とも共有し、最新技術導入を促進し、技術革新方向を示して協力を得ようとしていると紹介しています
米国防省の気候変動対処戦略CAPを受け、2月8日に米陸軍も「climate strategy」を発表し、2035年までに全陸軍基地に「自給自足のミニ総合発電施設:microgrids」を設置し、また同年に戦術車両にハイブリッド車を、そして2050年までに全電動戦術車両を導入する方針を明らかにしています
米陸軍「climate strategy」を受け、前線の作戦運用部隊でのより具体的なエネルギー調達や分配や管理要領や技術開発方針を打ち出す「作戦運用エネルギー戦略:Operational Energy Strategy」を、2022年末までに作成することになっており、その概要方向を記事は紹介しています
考え方が古いまんぐーすにとって、前線で各兵士が持ち運ぶ電子デバイス増に対応する電源確保は理解できるにしても、戦闘車両の電動化については燃料輸送や維持整備負担軽減、更に車両静粛化とのメリットがあるとは理解しつつも、本当に施策を推進する動機が働くのか「?」です
ですがChristine Wormuth陸軍長官(女性・前政策担当国防次官)は、「多くの資源を投入したくなる取り組みであり、このシステム改革を前線に届けるために必要な労力を忘れるほどの強い魅力がある」と語って米陸軍としてのやる気をアピールしています
そんな「Operational Energy戦略」が包含する分野は幅広く、従来の化石燃料から再生可能エネルギーへの移行や、展開先同盟国等からのエネルギー調達までを含む内容になるそうですが、本日は記事が断片的に取り上げている、ミニ総合発電施設Microgrids、バッテリー、バッテリー充電、産業界の動向等についてご紹介します
4月12日付Defense-News記事によれば
●ミニ総合発電施設Microgrids
米海軍が加州ミラマー航空基地で導入しているシステムを、米陸軍基地に導入する企業提案の検討などが行われている
また前線や機動展開先で利用可能な、移動式発電機とも呼べる「mobile microgrid system」の検討も進められており、装置の更なる小型化が追求されている
●発電機
既に、発電効率を高めつつ信頼性を向上させ、かつ多様な発電機との部品相互融通性を高めた発電機の部隊配備が始まっているが、これに蓄電能力を加えて前線での有効性を高める挑戦が続いている
また兵士が着用可能な「wearable solar panels」や、持ち運び可能な「燃料電池fuel cells」の開発動向に注目している
ミニ総合発電施設Microgridsも発電機も、前線兵士が個々に保有して使用する電子デバイス用の「wearable batteries」充電や電動車両の充電に不可欠な装備である
●バッテリー
リチウムイオンバッテリーの持続性や迅速な充電を求めた改良に取り組んでおり、「silicon anode」技術の活用などを検討している。
また、使用機材個々に特化した多様なバッテリーが前線に混在し、ロジ面での大きな負担となっている現状を改善するため、バッテリーの共通化標準化に取り組んでいる
●バッテリー充電
バッテリーの共通化標準化に合わせ、バッテリー充電機の共通化標準化にも取り組んでいる
また、戦闘車両BradleyやStryker内に充電装置を付加し、移動中に兵士着用の「CWB:conformal wearable battery」や電子デバイスに充電可能にする試験が昨年夏から行われている
トレーラーの荷台に積載可能なコンテナサイズの充電器開発及び更なる小型化にも取り組んでいる
●産業界との連携
バッテリーの蓄電量増加や前線でのバッテリー充電能力確保は依然として大きな課題であり、産業界からは米陸軍のインフラが圧倒的に不足しているとの指摘もあるが、数年前と比較して、社会全体での電気自動車普及の動きもあり、商用ベースでの充電設備の研究開発は飛躍的に進んでいる
Microgridsやバッテリー開発も企業側での競争原理も働いており、国防省や陸軍の気候変動対処戦略発表を受け、国防分野での需要拡大への期待感も企業側で膨らんでおり、win-win関係を構築する機運が高まっている
米陸軍幹部は、企業との取り組みのベクトルをそろえるためにも「Operational Energy戦略」が重要だとしており、産業界側にも同戦略の必要性重要性を語る関係者が多い。特に新たな参入企業を期待する場合には、要求を明確にすることが重要である
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過去記事でご紹介している米国や英国の取り組みは本格的なもので、なかなか「腹落ちしない」まんぐーすの時代追随能力の限界を感じております
ウクライナ侵略でエネルギーコストや消費財全般の価格が上昇しており、国防予算を圧迫しており、本政策の優先順位をどうするかで米国防省や各軍種の本気度を見てまいりましょう
排出ゼロや気候変動への取組み関連
「米空軍が航空燃料消費削減を開始」→https://holylandtokyo.com/2022/02/16/2691/
「米国防省は電気自動車&ハイブリット車導入推進」→https://holylandtokyo.com/2021/11/15/2423/
「米国防省が気候変動対処構想発表」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/
「米陸軍が電動戦闘車両導入の本格検討へ」→https://holylandtokyo.com/2020/09/25/487/
「英空軍トップが熱く語る」→https://holylandtokyo.com/2021/12/03/2474/
「英空軍が非化石合成燃料でギネス認定初飛行」→https://holylandtokyo.com/2021/11/19/2444/
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07
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前線兵士や前線指揮所での電子デバイス増に対応
気候変動対処に電気自動車導入推進などのため

米国防省の気候変動対処戦略CAPを受け、2月8日に米陸軍も「climate strategy」を発表し、2035年までに全陸軍基地に「自給自足のミニ総合発電施設:microgrids」を設置し、また同年に戦術車両にハイブリッド車を、そして2050年までに全電動戦術車両を導入する方針を明らかにしています

考え方が古いまんぐーすにとって、前線で各兵士が持ち運ぶ電子デバイス増に対応する電源確保は理解できるにしても、戦闘車両の電動化については燃料輸送や維持整備負担軽減、更に車両静粛化とのメリットがあるとは理解しつつも、本当に施策を推進する動機が働くのか「?」です

そんな「Operational Energy戦略」が包含する分野は幅広く、従来の化石燃料から再生可能エネルギーへの移行や、展開先同盟国等からのエネルギー調達までを含む内容になるそうですが、本日は記事が断片的に取り上げている、ミニ総合発電施設Microgrids、バッテリー、バッテリー充電、産業界の動向等についてご紹介します
4月12日付Defense-News記事によれば

米海軍が加州ミラマー航空基地で導入しているシステムを、米陸軍基地に導入する企業提案の検討などが行われている
また前線や機動展開先で利用可能な、移動式発電機とも呼べる「mobile microgrid system」の検討も進められており、装置の更なる小型化が追求されている
●発電機
既に、発電効率を高めつつ信頼性を向上させ、かつ多様な発電機との部品相互融通性を高めた発電機の部隊配備が始まっているが、これに蓄電能力を加えて前線での有効性を高める挑戦が続いている
また兵士が着用可能な「wearable solar panels」や、持ち運び可能な「燃料電池fuel cells」の開発動向に注目している
ミニ総合発電施設Microgridsも発電機も、前線兵士が個々に保有して使用する電子デバイス用の「wearable batteries」充電や電動車両の充電に不可欠な装備である
●バッテリー

また、使用機材個々に特化した多様なバッテリーが前線に混在し、ロジ面での大きな負担となっている現状を改善するため、バッテリーの共通化標準化に取り組んでいる
●バッテリー充電
バッテリーの共通化標準化に合わせ、バッテリー充電機の共通化標準化にも取り組んでいる
また、戦闘車両BradleyやStryker内に充電装置を付加し、移動中に兵士着用の「CWB:conformal wearable battery」や電子デバイスに充電可能にする試験が昨年夏から行われている
トレーラーの荷台に積載可能なコンテナサイズの充電器開発及び更なる小型化にも取り組んでいる
●産業界との連携

Microgridsやバッテリー開発も企業側での競争原理も働いており、国防省や陸軍の気候変動対処戦略発表を受け、国防分野での需要拡大への期待感も企業側で膨らんでおり、win-win関係を構築する機運が高まっている
米陸軍幹部は、企業との取り組みのベクトルをそろえるためにも「Operational Energy戦略」が重要だとしており、産業界側にも同戦略の必要性重要性を語る関係者が多い。特に新たな参入企業を期待する場合には、要求を明確にすることが重要である
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ウクライナ侵略でエネルギーコストや消費財全般の価格が上昇しており、国防予算を圧迫しており、本政策の優先順位をどうするかで米国防省や各軍種の本気度を見てまいりましょう
排出ゼロや気候変動への取組み関連
「米空軍が航空燃料消費削減を開始」→https://holylandtokyo.com/2022/02/16/2691/
「米国防省は電気自動車&ハイブリット車導入推進」→https://holylandtokyo.com/2021/11/15/2423/
「米国防省が気候変動対処構想発表」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/
「米陸軍が電動戦闘車両導入の本格検討へ」→https://holylandtokyo.com/2020/09/25/487/
「英空軍トップが熱く語る」→https://holylandtokyo.com/2021/12/03/2474/
「英空軍が非化石合成燃料でギネス認定初飛行」→https://holylandtokyo.com/2021/11/19/2444/
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07
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大活躍スティンガー携帯防空ミサイルの後継選定 [Joint・統合参謀本部]
後継機開発とスティンガー増産との兼ね合いが悩み
選定・試用・修正経て2027年に製造開始
無人機対処重視で関連兵器やレーザー兵器に関心の中
4月7日付Defense-Newsが、世界各国がウクライナ支援のため多数提供している大活躍中の携帯型対空ミサイルStingerについて、米陸軍が延命措置も行いつつ計画通りに企業に情報要求書RFIを最近発出し、後継選定作業を本格開始したと報じています
Stingerミサイルは1981年から使用されている兵器で、米陸軍は約5900セットの同兵器を有効活用すべく、2019年度予算から内臓半導体や経年劣化する部材を交換等する延命措置を開始しており、2022年6月には終了する予定になっていますが、後継機種選定計画を2022年度予算案に盛り込んで今次発出したRFIの準備を進めていたところです
Stingerは、主目標を低空低速飛行のヘリや対地攻撃機、低空飛行中の戦闘機や輸送機や巡航ミサイルなどとする赤外線追尾方式の兵器で、射程も数km範囲の限定的能力の兵器で、ウクライナ情勢緊迫からストライカー戦闘車両への搭載改修も急遽行われていますが、米軍の考える「大国との本格紛争」想定では、重視されている兵器ではありません
米陸軍など地上部隊にとっては、近年急速に発展し、安価なため様々な国が開発し導入している「無人機」対策が一番大きな課題と認識され、そのためのレーザー兵器や電子妨害装置、飛行場や市街地でも使用可能な非破壊性の捕獲ネットなど様々な「新兵器」アイディアを評価している段階で、正直なところウクライナ事案でStingerに急に注目が集まっていることに困惑もありましょう
実際議会からは、ウクライナの要請で縮小傾向にあったStinger製造ラインの拡大投資を始めたばかりの中、同時に後継兵器開発への投資が増加することに対し、優先順位をよく考えるべきとの「一旦停止」意見も出ており、微妙な立ち位置にある後継兵器開発でもあります
4月7日付Defense-Newsによれば
●短射程防空能力(SHORAD:Short-Range Air Defense capability)システム開発の一環として、2022年度予算から本格化したStingerミサイル後継検討に関する情報提供要求書RFIによれば、次期システムには「目標補足能力」「破壊力」「射程距離」向上が求められており、戦闘車両用に搭載可能な発射機にも引きつづき対応可能なことも要求されている
●開発・導入の時程としては
・ 2022年末に候補機種等を絞り込んで契約
・ 2023年度に技術確認デモンストレーションを行い、2026年度の実射による能力確認等の作戦運用デモンストレーションを経て、2027年度には計1万セットの製造を段階的に開始して、2028年夏まで製造品の完成度合いを継続アセスメントすることになっている
●また、先ほど述べた「目標補足能力」「破壊力」「射程距離」向上以外にも、技術開発状況に応じて近接信管能力(Proximity Fuze (PROX) capability)付与も考えられており、様々な空からの脅威対処に能力強化を狙っている後継選定である
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ロシアによるウクライナ侵略が発生したとしたら、高度なハイブリッド戦が宇宙ドメインも巻き込んで生起し・・・と言った予想はことごとく外れ、20世紀的な地上部隊の作戦が主流の中、突然脚光を浴びることになったStingerミサイルや対戦車ミサイルですが、2023年度予算案を議会に説明する米軍幹部にとっては、正直なところ「困ったスポットライト」なのでしょう
Kendall空軍長官以下の米空軍幹部が、ロシア軍のことを聞かれても「China」脅威を訴える対応を繰り返す中、ウクライナ侵略が2023年度予算案にどのような影響を与えるかを見る一つの試金石事業がStinger後継事業です
米陸軍の短射程防空能力(SHORAD)整備
「米議会がレーザー兵器開発に懸念で調査要求へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-08
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器搭載装甲車両契約」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-05
ロシア脅威認識は変化なし。本丸は依然中国だ
「米空軍幹部と専門家がロシア空軍について語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「米空軍幹部と専門家がロシア空軍について語る」→https://holylandtokyo.com/2022/03/17/2929/
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選定・試用・修正経て2027年に製造開始
無人機対処重視で関連兵器やレーザー兵器に関心の中

Stingerミサイルは1981年から使用されている兵器で、米陸軍は約5900セットの同兵器を有効活用すべく、2019年度予算から内臓半導体や経年劣化する部材を交換等する延命措置を開始しており、2022年6月には終了する予定になっていますが、後継機種選定計画を2022年度予算案に盛り込んで今次発出したRFIの準備を進めていたところです

米陸軍など地上部隊にとっては、近年急速に発展し、安価なため様々な国が開発し導入している「無人機」対策が一番大きな課題と認識され、そのためのレーザー兵器や電子妨害装置、飛行場や市街地でも使用可能な非破壊性の捕獲ネットなど様々な「新兵器」アイディアを評価している段階で、正直なところウクライナ事案でStingerに急に注目が集まっていることに困惑もありましょう
実際議会からは、ウクライナの要請で縮小傾向にあったStinger製造ラインの拡大投資を始めたばかりの中、同時に後継兵器開発への投資が増加することに対し、優先順位をよく考えるべきとの「一旦停止」意見も出ており、微妙な立ち位置にある後継兵器開発でもあります
4月7日付Defense-Newsによれば

●開発・導入の時程としては
・ 2022年末に候補機種等を絞り込んで契約
・ 2023年度に技術確認デモンストレーションを行い、2026年度の実射による能力確認等の作戦運用デモンストレーションを経て、2027年度には計1万セットの製造を段階的に開始して、2028年夏まで製造品の完成度合いを継続アセスメントすることになっている

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ロシアによるウクライナ侵略が発生したとしたら、高度なハイブリッド戦が宇宙ドメインも巻き込んで生起し・・・と言った予想はことごとく外れ、20世紀的な地上部隊の作戦が主流の中、突然脚光を浴びることになったStingerミサイルや対戦車ミサイルですが、2023年度予算案を議会に説明する米軍幹部にとっては、正直なところ「困ったスポットライト」なのでしょう

米陸軍の短射程防空能力(SHORAD)整備
「米議会がレーザー兵器開発に懸念で調査要求へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-08
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器搭載装甲車両契約」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-05
ロシア脅威認識は変化なし。本丸は依然中国だ
「米空軍幹部と専門家がロシア空軍について語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「米空軍幹部と専門家がロシア空軍について語る」→https://holylandtokyo.com/2022/03/17/2929/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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