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米空軍5世代機を日付変更線より西に配備を [Joint・統合参謀本部]

太平洋軍司令官がグアムを示唆しつつ米空軍に要請中
そういえばアラスカF-35とハワイF-22だけ
岩国に海兵隊F-35があり、F-35艦載空母の出入りはあるが

F-22 F-35.jpg6月24日、Aquilino太平洋軍司令官が講演し、米空軍の第5世代機が日付変更線より西側に配備されていない現状に言及しつつ、配備を要請しているとグアム島を示唆しつつ語りました。

アジア太平洋軍担当エリアに配備されている第5世代機(F-22及びF-35)は、ハワイとアラスカ(Elmendorf–Richardson)に配備されている米空軍F-22と、アラスカ(Eielson)配備の米空軍F-35、更に岩国基地配備の米海兵隊F-35がありますが、米空軍の第5世代機は日付変更線(ハワイとグアムの中間)より西側に配備されていません

Aquilino FDD5.jpgまんぐーすは、中国やロシア近傍に米軍第5世代機を配備することで、電波情報収集などの「餌食」になることを米軍として避けているのか・・・とも考えていましたが、米海兵隊があっさりF-35Bを岩国に配備したことから、米空軍はどうするのかなぁ・・・とぼんやり考えておりました

米空軍に配備要請している第5世代機についてAquilino司令官は、具体的機種や場所について言葉を選んで言及しなかったようですが、司会者との対談形式講演の別の部分でグアム島の戦略的重要性を強調し、同島を360度の脅威から防御するミサイル防衛体制整備の重要性を訴えていたことから、24日付米空軍協会web記事は、配備先はグアム島だろうとの推測をしています

FDDでのAquilino司令官発言の状況


24日付米空軍協会web記事によれば同司令官は
●(5世代機の日付変更線より西側への配備の必要性についての質問に対し、)そのような能力強化については・・・・確かに望ましいことである。強固に防御された空域での作戦において必要な能力である。それがF-22であってもF-35であっても、抑止力強化のために極めて重要なことである
Aquilino FDD2.jpg●より前線に、恒久的な、突破力のある戦力の配備を要請しているところである。そしてその戦力が、地域派遣戦力として活動でき、情勢に応じて必要な場所に展開することをお願いしている。(Wilsbach太平洋空軍司令官は)素晴らしい対応をしてくれている

以上の発言では、具体的な5世代機の配備先について言及を避けていますが、講演全体ではグアム島の重要性と能力強化について強調し、記事はグアムへの配備が念頭にあると推察しています。同司令官は講演の別箇所で・・・

Western Pacific.jpg●グアムは戦力的に見て絶対に重要な要衝である。我々はグアムを拠点に作戦を遂行する必要があり、同時にグアムを防御する必要もある。グアムは多様な戦力の供給拠点であり、有事の作戦支援拠点としても重要な役割を担っている
●中国のロケット軍は継続的にその能力や射程を向上させており、グアムは360度から脅威を受けている。これらのドメインで攻撃を受けることを予期すべきである。

●我々がそれら脅威に対処しつつ作戦遂行する能力を確保することは極めて重要で、グアムの防御とグアムからの戦力投射能力を緊急に強化することは、私にとって極めて重要な任務である
●2023年度予算でペンタゴンは、一連の防御システム整備を提案しており、脅威が弾道や巡航ミサイルであっても、最終段階で回避機動するものであっても、それら脅威に対応できるものである必要がある
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F-22 F-35 2.jpg米空軍が初期型F-22の早期退役を2023年度予算で要望し、米議会調整が難航しているところですから、維持整備が大変で稼働率が低いF-22のグアム島などへの配備は今更考えにくいとすると、F-35をどこに配備するかです。

部隊編成をして配備を宣言しつつ、実質はローテーションを繰り返す「なんちゃって配備」の可能性もありますが、対中国有事の緒戦で作戦機能を喪失する可能性が高いグアムや日本の米軍基地に、5世代機を配備したくないと考えるのはべ軍事的合理性の観点から米空軍として当然のことであり、政治的レベルの判断としてやむなく従うことになるのでしょう。

Aquilino FDD3.jpg今現在、嘉手納や三沢に配備されている米空軍F-15やF-16が、対中国情勢緊迫時にそのまま「座して死を待つ」覚悟で留まるとはまんぐーすは思いません。しかしAquilino司令官の発言は重く、今後の展開に注目いたしましょう

在日米軍は有事にどうするのか?
「嘉手納で統合の航空機避難訓練」→https://holylandtokyo.com/2020/01/24/873/
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「岩田元陸幕長:在日米軍はグアムまで後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09 

沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13

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米陸軍はStryker装輪装甲車にAPSを導入するか? [Joint・統合参謀本部]

2014年の露によるクリミア併合に続き議論再び
対戦車砲や対戦車ミサイルから装甲車を守る防御兵器

APS.jpg6月2日、米陸軍の装甲車両(戦車・兵員装甲車)の防御システム関連イベントで米陸軍の担当大佐が、ウクライナ侵攻事案を受け欧州米陸軍からStryker装輪装甲車用のAPS(Active Protection Systems)装備についての問い合わせが来ており、脅威や最新装備について情報収集や分析を行っていると述べつつも、緊急限定導入は不可能ではないが様々な運用制限が必要で、本格導入にはより詳細で高度な評価分析が必要だと慎重姿勢を示しています

APS(Active Protection Systems)は、装甲車両(戦車・兵員装甲車)を対戦車砲や対戦車ミサイル攻撃から防御する装備で、高速で接近する砲弾やミサイルをミリ波等のセンサーで探知し、装甲車両から迎撃体を射出して装甲車両を防御する装備で、以下のYouTube映像でご紹介するように露米イスラエルなど複数の国や企業が実用化しています

市場にある各国のHard-Kill APS解説動画5分半
アブラハム戦車搭載のイスラエル製Trophy APS systemを含む


米陸軍は2014年のロシアのクリミア半島併合受け、2016年から19年にかけ、M1 Abrams 戦車とBradley歩兵戦闘車両とStryker装輪装甲車に対するAPS(Active Protection Systems)導入を検討しましたが、結局M1 Abrams戦車にイスラエル製Trophyを導入決定しただけで、他の候補装備を含め検討した結果、Bradley歩兵戦闘車両とStryker装輪装甲車には装備化しないことを2019年に決定しています

APS4.jpg当時Stryker装輪装甲車用で検討対象となったのは米国のArtis Corporation社製「Iron Curtain」で、最近はRheinmetall’社製のActive Defense System やM1戦車に装備化されたイスラエルRafael社製Trophy VPSも検討したようですが、どれも装甲車両のすぐそばで迎撃する装備であり、装甲車両周辺を移動する兵士や車両自体へのダメージが大きな懸念材料の一つとなり採用には至っていないと担当大佐が説明しています

その他にも、対処余裕時間がないため全自動で運用することになるAPSの車両による操作システムの成熟度や、APSが攻撃兵器を探知するために発するミリ波などが敵に察知される恐れ、鳥などの誤目標へのAPS作動等も指摘されており、最近米陸軍はレーザーによる飛来脅威探知センサー開発を目指し、ロッキード社と2021年2月に契約を結び、上記3車両等への搭載を構想しているようです

Jane’s社作成のAPS解説動画4分半(語り解説)


いずれにしても米陸軍の現在のAPSに対する基本スタンスは、上で述べた「装甲車両周辺を移動する兵士や車両自体へのダメージ」等々の課題が完全に解決されなくとも、前線からのニーズが強ければ、何らかの運用制限をかけたり、関連の対策を行って限定的に部隊配備することは可能であるが、全車両に標準装備する決定を下すためには、より詳細な評価や様々な場面を想定した試験が必要だ、とSBCT(ストライカー戦闘旅団チーム)担当のWilliam Venable大佐は講演で説明したようです

また米陸軍として、2022年には20億円程度の予算を確保していたが、2023年度予算案にAPS評価やテスト用の予算は含まれていないとのことです
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APS6.jpg重箱の隅をつつくような話題でしたが、高度で安価な攻撃用兵器が拡散する世界において、信頼に足る防御装備を開発することは難しいこと、そして、様々な限界を抱える一般的に高価な防御装備を搭載する防備は絞り込まざるを得ず、無人機を含む多様なセンサー情報を融合し、先手を打って敵を撃破し、攻撃を受けないような作戦運用を目指す方向にあると無理やり理解してかまわないのでは・・・とも考えております

ウクライナ侵略関連で話題の兵器
「大活躍スティンガー携帯防空ミサイルの後継選定」→https://holylandtokyo.com/2022/04/14/3123/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/

ウクライナの教訓関連
「米陸軍首脳が証言」→https://holylandtokyo.com/2022/06/01/3245/
「陸軍訓練センターに教訓反映」→https://holylandtokyo.com/2022/05/12/3156/
「ウクライナ侵略は日本への警告」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-25
「露空軍に対する米空軍幹部や専門家の見方」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「中国への影響は?CIAやDIAが」→https://holylandtokyo.com/2022/03/14/2826/

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ウクライナのアジア太平洋への教訓は兵站能力 [Joint・統合参謀本部]

隣国へ侵攻の露が苦労も、西太平洋で米国はより困難
ハワイの巨大燃料貯蔵施設が閉鎖決定で危機感更に

Hicks3.jpg6月13日、Kathleen Hicks国防副長官がDefenseOneのイベントで講演し、露のウクライナ侵攻がアジア太平洋地域に改めて突き付けた極めて大きな課題(very hard lesson)は、米本土から離れた西太平洋戦域への燃料、水、食料、弾薬、部品等の物資輸送と事前集積などの兵站問題だと危機感を訴えました

そして同副長官は、「ロシアは自らが国境を接している国を侵略したにもかかわらず、大きな兵站支援問題に直面している。米国が太平洋をまたいで活動しようとするなら、より一層大きな兵站上の課題を抱えることになり、化石燃料への依存がそれを更に悪化させるだろう」、「ロシアの教訓から兵站の課題を理解し、それを西太平洋に移して立ち向かわねばならない」と述べています

PACOM logi.jpg副長官は「グアムやハワイや南洋諸島には、米軍戦力が作戦遂行に必要な化石燃料資源は全く存在せず、西太平洋で米軍基地を受け入れているホスト国も輸入原油に依存している状態だ」と現状を憂い、大平洋軍指揮官も「太平洋戦域で有事に、弾薬補給や燃料補給を行う能力が不足している」と警鐘を鳴らしています

このような状態を受け、国防省も太平洋軍要望として、2027年までを対象とした兵站や装備の維持整備能力強化や装備の事前集積強化のため、PDI(Pacific Deterrence Initiative)構想実現のため3.2兆円規模の予算要求を2023年度予算要求として持ち出し、「兵站態勢や前線の作戦を支援する体制が、強固に防御された戦域を支えるには不十分だ」と訴えています

Red Hill Bulk.jpgこの現状について、元太平洋軍上級顧問でAEI研究員であるEric Sayers氏は、貯蔵燃料の地下水汚染問題で閉鎖が決定したハワイ真珠湾の「Red Hill Bulk」燃料貯蔵所の代替施設構想もない状態で、西太平洋戦域の兵站事情は悪化し続けていると懸念し、

「ウクライナ侵略は我々に、米国艦隊や大規模空輸を支える給油能力なしでは、米軍戦力の投射が単純に不可能なことを改めて思い知ららせてくれた」、「端的に言えば、米議会は艦艇規模や戦闘機数の増強を考えるなら、同レベルでアジア太平洋地域での燃料供給など兵站問題にも目を向けるべきだ」と訴えています
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PACOM logi2.jpg中国の台湾侵攻など中国の西太平洋進出に際しては、「容易に回復できない既成事実化:a fait accompli」を許さないように米国や日本は対処する必要があると言われ、そのような作戦構想がWar-Game等を通じて検討されていると認識しているのですが、米国や西側諸国はどの程度戦いを継続可能なのでしょうか?

また仮に、中国がロシアのように、前線兵士の犠牲を苦にせず、3か月以上のネバネバ中期戦に出た場合、どのような状態になるのでしょうか? ウクライナではドイツやポーランドなど陸続きの周辺国が支援物資の輸送拠点になりますが、西太平洋ではどうなるのでしょうか・・・・・? 不安しかありません

兵站支援関連の記事
「ウクライナへの補給物資輸送拠点」→https://holylandtokyo.com/2022/05/11/3197/
「米空軍改善提案の最優秀:燃料と水輸送負担軽減策」→https://holylandtokyo.com/2022/05/06/2781/
「ウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/

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米陸軍首脳がウクライナの教訓を語る [Joint・統合参謀本部]

長射程兵器とインテル活動の統合レベル連携
無人機活用と対処兵器の開発導入
同盟国等との大規模な機動を伴う演習
歩兵と戦車&装甲車部隊の連携で対戦車兵器対処
米陸軍予算要求に役立つ部分を強調した感もあるが

Wormuth7.jpg5月12日、Christine Wormuth陸軍長官とJames McConville陸軍参謀総長が下院軍事委員会でウクライナの教訓と米陸軍能力向上策について証言し、冒頭で取り上げたテーマを中心に米陸軍がウクライナから学んで対処すべき事項について説明しています

我々が目にする報道からも断片的な話は聞こえてきていますが、数百キロにわたるウクライナ東部戦線の全体像をメディアがどこまで把握して描けているかは疑問で、このような形で軍首脳が議会で行う証言は貴重な情報源だと思います

以下では、米軍事メディアの短い記事から、冒頭にあげた項目に関する米陸軍幹部の証言概要をご紹介します

12日付Defense-News記事によれば同長官と参謀総長は
McConville4.jpg●長射程精密攻撃が極めて重要だと訴え、ウクライナ軍が敵情に関する戦術情報を有効に活用し、カギとなるロシア軍指揮官や指揮システム及び重要装備に打撃の大きい攻撃を与えている様子を間接的に示唆しつつ、「艦艇を撃沈したり、敵の指揮所を攻撃する能力の価値を再認識させられている」と語った
●米国防省は否定しているが、NYT紙は米側がウクライナにロシア軍指揮官や指揮所に関するリアルタイム情報を提供したことが、12名以上のロシア軍将軍の戦死につながっていると報じている

ukuraine UAV.jpg●無人機の重要性は強調しても強調しきれないほどで、軍用に開発された無人機の他、市販商用品を改良した無人機が入り乱れ、双方から爆撃のリアルな映像が提供されてウクライナの状況が如実に語っている。参謀総長は「速度、レンジ、カバー範囲など、様々な要素を組み合わせて統合で前線に投入され、極めて巧みな運用が日々改良されながら行われている」と証言している
●陸軍長官は無人機対処装備の重要性にも触れ、「米陸軍も無人機対処に投資している」と証言し、その重要性を強調している

●長官と参謀総長は共に、大規模な機動展開を含む同盟国等との統合演習の重要性を強調し、「ウクライナ軍の主力旅団の75%が米軍計画の大規模な演習を経験した部隊であり、その効果を目の当たりにしている」、「このような演習をやればやるほど、同盟国、パートナー国、友好国の能力は確実に向上する」と重要性を訴えた

Javelin FMG-148.jpg●ロシア軍が歩兵部隊と戦車や装甲車両部隊の連携を怠ったことで、ウクライナの対戦車ミサイルから大打撃を受けているが、これは前線における極めて重要な戦術的教訓である。
●参謀総長は「米陸軍は最高の戦車や装甲車を装備しているが、正しく運用することの重要性を再認識する必要がある。米陸軍は対戦車兵器に対応するactive protective systems導入に取り組んでおり、ロシア軍より進んでいる」と説明した
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National Training Center.jpg先日の記事では、米陸軍が加州の「National Training Center」で実施しているウクライナの教訓を生かした6000名規模の演習をご紹介し、敵側がSNSへの迅速な画像映像投稿で印象操作を行ったり、初期段階で侵略計画が破綻した敵側が無差別都市攻撃に出る想定などを取り込んだ訓練を取り上げましたが、実戦は教訓の宝庫です

日本でいえば、まず「無人機の導入&活用」でしょう。特に航空自衛隊の戦闘機命派の皆様には、よーーーーく考えて頂きたく、ゲーツ国防長官が米空軍と戦って無人機導入を推進した約15年前の模様を語った2011年の発言をご紹介しておきます

ロバート・ゲーツ語録12
(ゲーツ語録はhttps://holylandtokyo.com/2022/03/26/2046/
gates.jpg→私がCIA長官の時、イスラエルが無人機を有効使用することを知った。そこで米空軍と共同出資で無人機の導入を働きかけたが1992年に米空軍は拒否した。そして私は3年前、今度は無人機導入のため牙をむいて4軍と立ち向かった→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07

米陸軍の話題
「ウクライナの教訓で大演習」→https://holylandtokyo.com/2022/05/12/3156/
「軽戦車MPFの選定ほぼ終了」→https://holylandtokyo.com/2022/03/29/2914/
「50KW防空レーザー装備の装甲車導入へ」→https://holylandtokyo.com/2022/01/21/2623/
「Project Convergence5つの教訓」→https://holylandtokyo.com/2021/12/21/2514/
「大国との本格紛争で近接戦闘も重視」→https://holylandtokyo.com/2021/11/09/2388/
「極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holylandtokyo.com/2021/10/18/2342/
「2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holylandtokyo.com/2020/09/11/478/
「射程1000nmの砲開発に慎重姿勢見せる」→https://holylandtokyo.com/2021/03/17/163/

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米陸軍が射程1000マイルの巨砲開発中止 [Joint・統合参謀本部]

東京から上海を攻撃可能な長射程砲構想だったが
他開発案件との重複回避や費用対効果の観点から
2021年3月から外部有識者評価待ち開発中断中

Strategic Long4.jpg5月23日付Defense-Newsは、米陸軍が2019年1月に開発中と明らかにしていた射程1000nmの大砲「SLRC:Strategic Long-Range Cannon」プログラムについて、米陸軍報道官から「米議会からの指示や予算の最適分配や装備開発の重複を避けるため、開発中断を決断した」との連絡を受けたと報じました

この東京から上海の目標を攻撃可能な射程1000nmの大砲SLRC開発は、中国A2AD網の範囲拡大を受け、米陸軍の遠方攻撃能力強化のため当時のエスパー陸軍長官が明らかにしたものです。

McConville2.jpgただ発表当時においてもMcConville米陸軍参謀総長は、「SLRCが開発成功すれば、(極超音速兵器のように)1発何億もせず、1発4-5000万円程度に収まると考えられる。コストがポイントで、そこが気になっている。コストが課題だ。陸軍は革新を追求しているが、段階ごとに成果を確認し、目標が達成できなければ進めない」と、費用対効果のトレードオフに着目していると語っていたところです

その後2021年の3月に米陸軍は、2021年中に外部有識者がまとめる予定だった「National Academy of Sciences report」におけるSLRCの実現可能性等に関する分析評価を待って、SLRC開発の継続を判断するとし、開発を一時中断すると発表しました。

PrSM3.jpgただ、2020年9月開始の「National Academy・・・」関連会議は、2021年1月に5回目の検討会議を行った後は動きがなく、2021年中予定だったレポートも発表されていない状態が続いていたようです

米陸軍は重視する長射程兵器開発において、SLRC以外にも2023年部隊配備を狙って4つのプロジェクト(Extended Range Cannon Artillery (ERCA)、Long-Range Hypersonic Weapon (LRHW),、Mid-Range anti-ship Missile (MRC) 、Precision Strike Missile (PrSM))を走らせており、米議会からも2022年度予算議論の過程でSLRCは中止すべきと勧告を受けていたところでした

また5月16日の週の下院予算関連委員会でも、米陸軍省の開発担当次官が、「装備品開発の重複」と「コスト予想」を踏まえてSLRC開発を中止すると証言していた模様です

5月23日付Defense-News記事によれば陸軍報道官は
(20日付の文書でDefense-Newsに回答)
Strategic Long.jpg●潜在的な装備の重複を避け、装備近代化に税金を効率的に使用すべきとの観点から、科学技術面からの検討で実現可能との判断が出た場合でも、当該装備の製造や調達や部隊編成に数千億円を投じる必要が生じるSLRCを中止することを決定した

●当初SLRCに予算配分されていた予算については、陸軍開発担当次官室との調整を経て、他の継続する科学技術開発プロジェクトに再配分する
●科学技術開発フェーズ段階では、必要総コストの詳細な見積もりまでは行わないが、SLRC計画を陸軍長官が中止判断するに必要なコスト見積もりは行われている
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Strategic Long2.jpg米陸軍はSLRCの基礎技術調査や技術開発や関連試験に、2021年度に約75億円を使用した後、2022年以降は投資していないとのことです

2019年10月に、当時のMcConville米陸軍参謀総長による「(極超音速兵器のように)1発何億もせず、1発4-5000万円程度に収まると考えられる。コストがポイント」との発言から類推すれば、1発4-5000万円程度に収まらなかったのかなぁ・・・・と邪推いたしております

Strategic Long3.jpgまたは、1発4-5000万円程度に収まったとしても、米陸軍予算全体のやりくりから、開発継続が困難になったものと推測いたします。これまでに開発&確認された技術が、いつかどこかで再利用されることを祈念しつつ・・・

米陸軍の夢?SLRC関連の記事
「射程1000nm砲に慎重姿勢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-10
「射程1000nm砲の第一関門」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-15
「射程1000nmの砲開発」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1

米陸軍の遠方攻撃志向
「INFの呪縛を解かれ米陸軍PrSMが射程500㎞越え」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-23
「極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-14
「米陸軍トップが長射程攻撃やSEADに意欲満々」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-12
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09

「海兵隊も2つの長射程ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06

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感涙:極東米海兵隊は「stand-in force」作戦を検討中 [Joint・統合参謀本部]

2021年12月発表「A Concept for Stand-In Forces」基に
同盟国等と共に中国A2AD域内で頑張る姿勢をセミナーで語る
まんぐーすは知りませんでした。てっきり長射程兵器のみ重視かと
でも構想の「Stand-in Forces」の実態からすると・・

Concept for Stand-In.jpg5月11日、米海兵隊関連イベントで太平洋軍海兵隊や日本に拠点を置く第3海兵機動展開部隊(III MEF)幹部が、米軍の他軍種が「Stand-off Forces」的に中国A2AD圏外の安全な場所からの長距離攻撃に注力する中でも、アジア太平洋の海兵隊部隊は「Stand-in Forces」だと語り、様々な取り組みと装備品要望を行い、大きなカギとなる地域同盟国との協力強化も重要と語っています

まんぐーすは知りませんでしたが、米海兵隊は2021年12月に「A Concept for Stand-In Forces」を発表し、アジア太平洋地域の海兵隊が取り組んできた第1列島線内部に陣取り作戦を遂行するスタイルや、開発導入すべき新技術や新装備を明確に示したようです。

Concept for Stand-In3.jpg具体的イメージとしては、中国A2AD領域内に進出又は強靭に陣取り、隠密裏に行動する海兵隊兵士が中国艦艇の位置を特定し、ネットワーク化されたタブレット等の情報端末で1000マイル離れて陣取る味方の長距離攻撃部隊に伝えるというもので、豪州やフィリピン軍を巻き込んでの訓練も始まっているようです

米空軍は言うに及ばず、米陸軍も海兵隊もこぞって「遠方攻撃兵器」に注力する現実に、軍事的合理性から致し方ないと思いつつも、暗い気分になっていたまんぐーすは、記事のタイトルを見て単純に「目頭が熱くなった」わけですが、よく読むと「Stand-in Forces」は敵情を把握する「ほんの一部」であるような雰囲気も漂っており、同盟国対策のアピールかとも勘繰りたくなりますが、以下では関連海兵隊幹部のイベントでの発言を紹介いたします

5月18日付Defense-New記事によれば
Concept for Stand-In6.jpg●太平洋軍海兵隊のStephen Fiscus副戦力開発チーム長(大佐)は、「過去約20年間、中国が造成した強力なA2AD能力を前に、米軍の多くはA2AD圏外の安全な場所からのstand off攻撃で対処しようとしている。しかし太平洋軍の海兵隊部隊はstand inだ。その配置、体制、能力、地域国との関係などを最大限に活用して中国から守る。中国のWEZ内(weapons engagement zone)で我らのWEZを構築する方程式を取り戻す」と熱く語り、
●同大佐はまた「日本が拠点の「III MEF」は既にstand in戦力で、フィリピンや韓国で訓練を行っている。しかしstand inコンセプトは更に、地上や海上目標情報を、時間や空間的余裕を確保しつつ米統合戦力に伝達して海上戦を遂行することを求めており、追加の新規装備を必要としている」と訴えた

Concept for Stand-In7.jpg●Joseph Clearfield太平洋軍海兵隊副司令官(准将)は将来像の具体的イメージを表現し、「ヘリコプターからタブレットを持った兵士が展開潜入し、見晴らしの良い半島の先端に設けた隠蔽された拠点から敵の動きを監視する。敵を発見したらタブレットを使用し、その位置や関連情報を1000マイル離れた統合の長距離攻撃部隊に知らせるのだ」と説明した
●新設された「第3沿岸連隊」は今年後半に、上記のようなデジタル化作戦遂行に不足する能力(ギャップ)を特定する任務を付与されている。通信能力、キルチェーンweb連接、センサーとの連接等が課題である

Concept for Stand-In4.jpg●具体的取り組み例では、Naval Strike Missileを無人発射車両に搭載して艦艇から発射するNMESIS system(Navy/Marine Corps Expeditionary Ship Interdiction System)試験が4月に実施され、2023年から配備が予定されている
●また沿岸戦闘艦LCSから、地上目標攻撃のため「AGM-114L Longbow Hellfire missiles」を発射する試験が5月12日にLCS- Montgomeryから実施され、この際は無人機MQ-9からの目標情報を基に数マイル先の目標攻撃であったが、構想では前述の「第3沿岸連隊」のような部隊が目標情報を収集・発信することが期待されている。海上配備兵器で地上目標を攻撃することで火力支援能力を強化する方向である

Concept for Stand-In5.jpg●前述の副司令官(准将)は、このコンセプトを前進させ膨大なアジア太平洋地域をカバーするには同盟国等との協力が重要なカギだと語り、豪州とフィリピンが既に「第3沿岸連隊」のような敵情を収集して敵を妨害する部隊を編成したと語っている
●米軍内でも、例えば加州所在で長年中東での作戦に従事し、中東任務撤退後に縮小されていた「Southern California Marines」を再充足し、「Marine Air-Ground Task Force」として再編しつつあり、その一つの部隊を既に豪州ダーウィンに展開させていると同准将は説明している

marine infantry2.jpg●副司令官はまた、日本が拠点の「III MEF」が第1列島線でのstand in作戦を担う一方で、加州を拠点とする「I MEF:第1海兵機動展開部隊」は「outer regions of Southeast Asia」を担当し、伝統的な着上陸や新たな沿岸からの作戦手法を用い、迅速な機動展開で作戦支援する部隊と考えていると説明した
●また日本駐留の「III MEF」が在ダーウィンのローテーション部隊を構成するのに対し、「I MEF」は豪州が乾季の6か月間は北部豪州にローテーション展開し、残りの半年をアジアの他の同盟国等で活動する可能性を検討して模索しているとも同副司令官は語った
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Marine-okinawa.jpg記事のタイトル「Pacific Marines move to formalize role as the stand-in force」を目にし、記事の太平洋軍海兵隊幹部の皆さんの発言を一読した時点で、最近涙もろいまんぐーすは海兵隊の皆さんの心意気に「目頭が熱く」なりましたが、結局「III MEF」のstand in戦力は打撃力を行使しない少数の隠密偵察部隊なのかな??・・・と思い始め、涙も乾いてしまいました。

もちろん、本国から遠く離れた極東の地で、リスクを負って前線に身を投じる覚悟の米海兵隊の皆様に何ら不満はなく感謝の言葉しかありませんし、軍事的合理性に基づき作戦コンセプトを練り、同盟国等への配慮一杯に抑止力向上のため同コンセプトと遂行状況を対外アピールされる姿には崇高なものさえ感じますが、ウクライナ東部住民の心境に少し近づいた気も致します

concept for stand-in9.jpgついでに在日米海兵隊の「削減」に関する防衛省の説明ぶりを防衛白書内で探してみると、令和3年版285ページに「沖縄に所在する第3海兵機動展開部隊(ⅢMEF)の司令部要素をグアムへ移転する計画だったが、2012年4月に変更し、司令部・陸空&後方支援部隊で構成される海兵空地任務部隊(M Marine Air Ground Task ForceAGTF)を日本、グアム及びハワイに置くとともに豪州へローテーション展開させることとした」と訳の分からない説明になっています

「A Concept for Stand-In Forces」の現物32ページ
https://www.hqmc.marines.mil/Portals/142/Users/183/35/4535/211201_A%20Concept%20for%20Stand-In%20Forces.pdf?ver=EIdvoO4fwI2OaJDSB5gDDA%3d%3d

遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「スタンドオフ重視を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06

令和3年版防衛白書のPDF
https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2021/pdf/wp2021_JP_Full_01.pdf

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米陸軍訓練センターがウクライナ教訓生かした演習 [Joint・統合参謀本部]

敵役部隊はSNSにすぐ映像を上げ印象操作
都市制圧に無差別都市攻撃を行う敵部隊を想定
1350名の敵役部隊が4500名の精鋭訓練部隊を鍛える

National Training Center.jpg4月17日付Military.com記事は、米陸軍が加州の「National Training Center」でウクライナの教訓を生かした6000名規模の演習を実施している様子を取り上げ、敵側がSNSへの迅速な画像映像投稿で印象操作を行ったり、初期段階で侵略計画が破綻した敵側が無差別都市攻撃に出る想定の訓練を紹介しています

Christine Wormuth陸軍長官が2日間に渡って同訓練センターを視察し、「国防省等で将来戦について過去約5年間議論してきたが、今まさにウクライナで生起している事象から米陸軍は必死に学んでいる」、「世界中が目撃しているSNSなど情報ドメインの重要性(ロシア側とゼレンスキー大統領の毎日の発信などを例示)」や「装備近代化方向へのフィードバックの必要性」に言及しています

National Training4.jpg同記事は、米陸軍精鋭部隊4500名が2週間に渡り訓練する様子を紹介していますが、その後はすぐに別の部隊が入れ替わりで訓練センターを訪れ、ロシア語を使用する敵役の1350名規模部隊と、更に新たな戦訓を取り入れた演習を行うことになっているようです。

予算案の議会審議のタイミングでもあり、米陸軍による国民や議会向けアピールの入った対外情報発信の一環でしょうが、6000名規模の演習には長期間の準備が必要であり、記事からはロシアや北朝鮮を意識した寒冷地訓練を実施しているとの記載もあり、興味深いのでご紹介してきます

4月17日付Military.com記事によれば
National Training6.jpg●同訓練センター司令官Curt Taylor准将は、同訓練センタースタッフはロシア軍の教科書を擦り切れるほど読み込み、米軍兵士がロシア軍などと戦っても勝利できるよう日々努力していると語り、情勢に応じて迅速にカリキュラムを変更すると説明した
●例えば、同訓練センターやルイジアナ州にある訓練センターでは、イラクやアフガンでの活動が盛んな時は対テロ重視にシフトし、米軍の焦点変化に伴い、ロシアや北朝鮮を意識して寒冷地での行動訓練にも焦点をあて、ウクライナの緊張が高まるといち早く様々な新たな想定を訓練に取り入れている

National Training7.jpg●現在は第1騎兵師団の4500名が訓練部隊で、対抗部隊を同センター所属の第11機甲化騎兵連隊Blackhorseなど1350名が演じている。しかし対抗部隊は実際の敵がやりそうなことは全て展示可能で、通信妨害、電子妨害から非正規作戦やプロパガンダ作戦まであらゆる手法を駆使して敵を演じ、スマホ片手に利用可能な場面や映像を素早くSNS上にアップする体制でも臨んでいる
●訓練部隊指揮官の一人である大佐は、演習では敵味方とも多数の無人機を偵察&攻撃用に使用しており、上空の無人機から発見されないように部隊を隠すことに神経を使うと語り、その他さまざまなトラブルが発生する前線でSNSやツイッターを気にする余裕はないと語っている

National Training2.jpg●Taylor訓練センター司令官は、現在のウクライナの情勢を踏まえ、無差別に火砲を発射して社会インフラを破壊する敵を相手の都市戦闘シナリオを米軍訓練に提供しており、どのような状況にあっても、味方の他部隊と連携を図って行動する重要性を強調していると説明している
●Wormuth陸軍長官は別の視点で、例えば戦車の今後を考える際、欧州では地盤が柔らかく、中東で必要だった重戦車ではなく軽戦車が重宝しており、戦車に求める機動性や防御力や破壊力をどの程度にするかなどの論点も明らかになっている、と同センター視察時に語っている
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National Training5.jpg中東想定の対テロ作戦重視からロシアや北朝鮮想定の寒冷地作戦重視に移行し、今度は都市に無差別攻撃を行う敵を想定しての訓練を重視する・・・・そんなに次々と重視項目を変えられるのか???とも思いますが、実際にロシア軍を演じてみて疑問点を明らかにし、ウクライナ前線での情報活動に生かすのかもしれません

2014年当時の高度なハイブリッド戦を想定していたら、20世紀を想起させる地上戦が目の前で繰り広げらる様子に、米軍も興味津々なのでしょう。ロシア側の部隊通信も筒抜けで、驚くほどロシア軍の混乱ぶりや戦いぶりが把握されているのかもしれません。分析ネタがありすぎて困惑・・・ぐらいなのかもしれませんねぇ・・・

ウクライナ侵略に関する記事
「ウクライナ新緑は日本への警告だ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-25
「露空軍に対する米空軍幹部や専門家の見方」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「中国への影響は?CIAやDIAが」→https://holylandtokyo.com/2022/03/14/2826/
「なぜイスラエルが仲介に?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-08
「ウ軍のトルコ製無人攻撃機20機が活躍」→https://holylandtokyo.com/2022/03/05/2787/
「ロシア兵捕虜への「両親作戦」」→https://holylandtokyo.com/2022/03/03/2776/
「欧州諸国からウクライナへの武器提供」→https://holylandtokyo.com/2022/03/02/2772/
「ウ軍のレジスタンス戦は功を奏するか?」→https://holylandtokyo.com/2022/02/28/2763/

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グアム島配備の米潜水艦が2隻から5隻体制に [Joint・統合参謀本部]

2021年11月の2隻体制から、3月末には5隻体制へ増強完了
対中国で優越な数少ない分野の潜水艦力強化
バージニア級でなく旧式のロサンゼルス級3隻増ですが
バージニア級増強は施設整備もあり2026年とか・・・

Annapolis guam.JPG4月15日付Defense-Newsが、米海軍がアジア太平洋地域の潜水艦能力を強化するため、グアム島配備の潜水艦を、従来の2隻から5隻体制に増強完了したと報じています。

グアム島潜水艦体制の強化については、2021年11月にJeffrey Jablon太平洋海軍潜水艦隊司令官(少将)が表明していたものですが、表明時点で2隻のロサンゼルス級潜水艦体制だったものを、2021年12月にハワイから1隻増強し、追加で2022年3月にハワイと加州からの各1隻を加え、計5隻のロサンゼルス級潜水艦体制を確立しました

Springfield guam.jpg本当であれば、2000年代から導入が開始され、既に19隻が任務に就いているバージニア級潜水艦を増強したいところでしょうが、受け入れ施設等の関係もあり、バージニア級は2026年配備予定だそうです。

増強した3隻の内、2隻がハワイからグアムへの移動であり、その実際の効果がどの程度かは不明ですが、対中国で西側軍事力が優越状態にあると言い切れる数少ない分野でもあり、「AUKUS」で豪州に攻撃型原潜を提供する決断もあり、現時点で対応可能な所で手を打ったのでしょう

【ご参考事項】
対中国における潜水艦分野での米国や西側優位に関する発言など

元太平洋軍作戦部長(2022年3月)
Virginia-class2.jpg●中国は台湾の海上封鎖を試みるだろうが、西側は潜水艦戦力や戦術で優位な立場にあり、この利点を生かすため西太平洋への攻撃原潜配備数を増やす必要がある
●太平洋軍はグアムに3隻の攻撃原潜を配備しているが、これを6隻に増強するため、ロサンゼルス級の延命を進め、バージニア級の増産(年2隻から3隻へ)体制を構築する必要がある。また豪州に米潜水艦基地を設ける必要がある

米国防省「中国の軍事力2021」レポート(2021年11月)
Annapolis guam2.jpg●中国の西側潜水艦への対処能力(anti-submarine warfare)は、依然としてレベルが低く、アキレス腱となっている。
●中国はこの欠点を改善するため、中国空母や中国潜水艦防御のために水上艦艇を2030年までに460隻に増強する計画
●中国の現在の潜水艦戦力は、戦略原潜を4隻と攻撃型ディーゼル潜水艦50隻の体制

戦略家エドワード・ルトワック氏
(「ラストエンペラー習近平」2021年7月刊 奥山真司訳より)
Luttwak5.jpg●ISRやAI情報処理能力の発展で、水上艦艇の脆弱性は過去20年間で20倍になったと考えるべき。平時からグレーゾーン事態では水上艦にも役割は残されているが、戦闘状態に入ったら格好の潜水艦の餌食である
●対中国の軍事作戦を考える時、中国の大規模艦隊は世界最大の「標的」となるともいえる。米海軍の攻撃型原潜が一つの鍵になる。西側の優位性を最大限に生かすべきである

日米が協力すべき軍事技術分野4つ
Los Angeles-class2.jpg(Atlantic Councilレポート2020年4月)
●中国は過去10年にわたり、有人及び無人潜水艦へ膨大な投資を行っている。
●米国も本分野への投資を始め、日本ではIHIが独自に無人水中艇開発を行ったが、防衛省としてこの分野への参画決断はない状態である。論理的に見て協力が望まれる分野である

CSBA報告書
米海軍に提言:大型艦艇中心では戦えない(2020年1月)
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Los Angeles-class.jpg上記の「元太平洋軍作戦部長」が要望している「6隻」体制なら、常に南シナ海も含む第一列島線内に、米海軍攻撃型原子力潜水艦を1隻ローテーション配備できるのかもしれません。(基礎知識皆無ですので完全な邪推です

最新の「中国の軍事力2021」レポートが、「中国の西側潜水艦への対処能力は、依然としてレベルが低く、アキレス腱だ」と言うのですから、水中無人艇への投資も含めて日本も協力し、この分野を「梃子」に対中国抑止力を高めたいものです。 

既に始まっている攻撃原潜の後継検討
「戦略原潜設計チームを次期攻撃原潜にも投入へ」→https://holylandtokyo.com/2021/11/04/2333/

攻撃原潜への極超音速兵器の搭載時期は
「バージニア級へは2028年以降」→https://holylandtokyo.com/2021/11/26/2450/

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米陸軍が前線での電力消費増に対応戦略検討 [Joint・統合参謀本部]

「Operational Energy戦略」を年末までに
前線兵士や前線指揮所での電子デバイス増に対応
気候変動対処に電気自動車導入推進などのため

Energy strategy.jpg4月12日付Defense-Newsが、米陸軍が前線での電力消費量増加や気候変動対処のための電気自動車導入に対処するため、2022年末までに「作戦運用エネルギー戦略:Operational Energy Strategy」をまとめて産業界とも共有し、最新技術導入を促進し、技術革新方向を示して協力を得ようとしていると紹介しています

米国防省の気候変動対処戦略CAPを受け、2月8日に米陸軍も「climate strategy」を発表し、2035年までに全陸軍基地に「自給自足のミニ総合発電施設:microgrids」を設置し、また同年に戦術車両にハイブリッド車を、そして2050年までに全電動戦術車両を導入する方針を明らかにしています

Energy strategy2.jpg米陸軍「climate strategy」を受け、前線の作戦運用部隊でのより具体的なエネルギー調達や分配や管理要領や技術開発方針を打ち出す「作戦運用エネルギー戦略:Operational Energy Strategy」を、2022年末までに作成することになっており、その概要方向を記事は紹介しています

考え方が古いまんぐーすにとって、前線で各兵士が持ち運ぶ電子デバイス増に対応する電源確保は理解できるにしても、戦闘車両の電動化については燃料輸送や維持整備負担軽減、更に車両静粛化とのメリットがあるとは理解しつつも、本当に施策を推進する動機が働くのか「?」です

Wormuth7.jpgですがChristine Wormuth陸軍長官(女性・前政策担当国防次官)は、「多くの資源を投入したくなる取り組みであり、このシステム改革を前線に届けるために必要な労力を忘れるほどの強い魅力がある」と語って米陸軍としてのやる気をアピールしています

そんな「Operational Energy戦略」が包含する分野は幅広く、従来の化石燃料から再生可能エネルギーへの移行や、展開先同盟国等からのエネルギー調達までを含む内容になるそうですが、本日は記事が断片的に取り上げている、ミニ総合発電施設Microgrids、バッテリー、バッテリー充電、産業界の動向等についてご紹介します

4月12日付Defense-News記事によれば
Energy strategy4.jpg●ミニ総合発電施設Microgrids
米海軍が加州ミラマー航空基地で導入しているシステムを、米陸軍基地に導入する企業提案の検討などが行われている
また前線や機動展開先で利用可能な、移動式発電機とも呼べる「mobile microgrid system」の検討も進められており、装置の更なる小型化が追求されている

●発電機
既に、発電効率を高めつつ信頼性を向上させ、かつ多様な発電機との部品相互融通性を高めた発電機の部隊配備が始まっているが、これに蓄電能力を加えて前線での有効性を高める挑戦が続いている
また兵士が着用可能な「wearable solar panels」や、持ち運び可能な「燃料電池fuel cells」の開発動向に注目している
ミニ総合発電施設Microgridsも発電機も、前線兵士が個々に保有して使用する電子デバイス用の「wearable batteries」充電や電動車両の充電に不可欠な装備である

●バッテリー
Energy strategy5.jpgリチウムイオンバッテリーの持続性や迅速な充電を求めた改良に取り組んでおり、「silicon anode」技術の活用などを検討している。
また、使用機材個々に特化した多様なバッテリーが前線に混在し、ロジ面での大きな負担となっている現状を改善するため、バッテリーの共通化標準化に取り組んでい

●バッテリー充電
バッテリーの共通化標準化に合わせ、バッテリー充電機の共通化標準化にも取り組んでいる
また、戦闘車両BradleyやStryker内に充電装置を付加し、移動中に兵士着用の「CWB:conformal wearable battery」や電子デバイスに充電可能にする試験が昨年夏から行われている
トレーラーの荷台に積載可能なコンテナサイズの充電器開発及び更なる小型化にも取り組んでいる

●産業界との連携
Energy strategy3.jpgバッテリーの蓄電量増加や前線でのバッテリー充電能力確保は依然として大きな課題であり、産業界からは米陸軍のインフラが圧倒的に不足しているとの指摘もあるが、数年前と比較して、社会全体での電気自動車普及の動きもあり、商用ベースでの充電設備の研究開発は飛躍的に進んでいる

Microgridsやバッテリー開発も企業側での競争原理も働いており、国防省や陸軍の気候変動対処戦略発表を受け、国防分野での需要拡大への期待感も企業側で膨らんでおり、win-win関係を構築する機運が高まっている

米陸軍幹部は、企業との取り組みのベクトルをそろえるためにも「Operational Energy戦略」が重要だとしており、産業界側にも同戦略の必要性重要性を語る関係者が多い。特に新たな参入企業を期待する場合には、要求を明確にすることが重要である
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Wormuth3.jpg過去記事でご紹介している米国や英国の取り組みは本格的なもので、なかなか「腹落ちしない」まんぐーすの時代追随能力の限界を感じております

ウクライナ侵略でエネルギーコストや消費財全般の価格が上昇しており、国防予算を圧迫しており、本政策の優先順位をどうするかで米国防省や各軍種の本気度を見てまいりましょう

排出ゼロや気候変動への取組み関連
「米空軍が航空燃料消費削減を開始」→https://holylandtokyo.com/2022/02/16/2691/
「米国防省は電気自動車&ハイブリット車導入推進」→https://holylandtokyo.com/2021/11/15/2423/
「米国防省が気候変動対処構想発表」→https://holylandtokyo.com/2021/10/11/2318/
「米陸軍が電動戦闘車両導入の本格検討へ」→https://holylandtokyo.com/2020/09/25/487/

「英空軍トップが熱く語る」→https://holylandtokyo.com/2021/12/03/2474/
「英空軍が非化石合成燃料でギネス認定初飛行」→https://holylandtokyo.com/2021/11/19/2444/
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07

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大活躍スティンガー携帯防空ミサイルの後継選定 [Joint・統合参謀本部]

後継機開発とスティンガー増産との兼ね合いが悩み
選定・試用・修正経て2027年に製造開始
無人機対処重視で関連兵器やレーザー兵器に関心の中

Stinger SAM.jpg4月7日付Defense-Newsが、世界各国がウクライナ支援のため多数提供している大活躍中の携帯型対空ミサイルStingerについて、米陸軍が延命措置も行いつつ計画通りに企業に情報要求書RFIを最近発出し、後継選定作業を本格開始したと報じています

Stingerミサイルは1981年から使用されている兵器で、米陸軍は約5900セットの同兵器を有効活用すべく、2019年度予算から内臓半導体や経年劣化する部材を交換等する延命措置を開始しており、2022年6月には終了する予定になっていますが、後継機種選定計画を2022年度予算案に盛り込んで今次発出したRFIの準備を進めていたところです

Stinger SAM2.jpgStingerは、主目標を低空低速飛行のヘリや対地攻撃機、低空飛行中の戦闘機や輸送機や巡航ミサイルなどとする赤外線追尾方式の兵器で、射程も数km範囲の限定的能力の兵器で、ウクライナ情勢緊迫からストライカー戦闘車両への搭載改修も急遽行われていますが、米軍の考える「大国との本格紛争」想定では、重視されている兵器ではありません

米陸軍など地上部隊にとっては、近年急速に発展し、安価なため様々な国が開発し導入している「無人機」対策が一番大きな課題と認識され、そのためのレーザー兵器や電子妨害装置、飛行場や市街地でも使用可能な非破壊性の捕獲ネットなど様々な「新兵器」アイディアを評価している段階で、正直なところウクライナ事案でStingerに急に注目が集まっていることに困惑もありましょう

実際議会からは、ウクライナの要請で縮小傾向にあったStinger製造ラインの拡大投資を始めたばかりの中、同時に後継兵器開発への投資が増加することに対し、優先順位をよく考えるべきとの「一旦停止」意見も出ており、微妙な立ち位置にある後継兵器開発でもあります

4月7日付Defense-Newsによれば
SHORAD.jpg●短射程防空能力(SHORAD:Short-Range Air Defense capability)システム開発の一環として、2022年度予算から本格化したStingerミサイル後継検討に関する情報提供要求書RFIによれば、次期システムには「目標補足能力」「破壊力」「射程距離」向上が求められており、戦闘車両用に搭載可能な発射機にも引きつづき対応可能なことも要求されている

●開発・導入の時程としては
・ 2022年末に候補機種等を絞り込んで契約
・ 2023年度に技術確認デモンストレーションを行い、2026年度の実射による能力確認等の作戦運用デモンストレーションを経て、2027年度には計1万セットの製造を段階的に開始して、2028年夏まで製造品の完成度合いを継続アセスメントすることになっている

Stinger SAM3.jpg●また、先ほど述べた「目標補足能力」「破壊力」「射程距離」向上以外にも、技術開発状況に応じて近接信管能力(Proximity Fuze (PROX) capability)付与も考えられており、様々な空からの脅威対処に能力強化を狙っている後継選定である
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ロシアによるウクライナ侵略が発生したとしたら、高度なハイブリッド戦が宇宙ドメインも巻き込んで生起し・・・と言った予想はことごとく外れ、20世紀的な地上部隊の作戦が主流の中、突然脚光を浴びることになったStingerミサイルや対戦車ミサイルですが、2023年度予算案を議会に説明する米軍幹部にとっては、正直なところ「困ったスポットライト」なのでしょう

Ukrainian forces2.jpgKendall空軍長官以下の米空軍幹部が、ロシア軍のことを聞かれても「China」脅威を訴える対応を繰り返す中、ウクライナ侵略が2023年度予算案にどのような影響を与えるかを見る一つの試金石事業がStinger後継事業です

米陸軍の短射程防空能力(SHORAD)整備
「米議会がレーザー兵器開発に懸念で調査要求へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-08
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器搭載装甲車両契約」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-05

ロシア脅威認識は変化なし。本丸は依然中国だ
「米空軍幹部と専門家がロシア空軍について語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-03-16
「米空軍幹部と専門家がロシア空軍について語る」→https://holylandtokyo.com/2022/03/17/2929/

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沿岸警備隊司令官候補に初の女性推挙 [Joint・統合参謀本部]

米国の6軍トップに初の女性誕生へ
1985年沿岸警備隊アカデミー卒の現副司令官
娘さんも沿岸警備隊の若手士官とか

Fagan.jpg4月5日、米国政府は次の沿岸警備隊司令官に、現在副司令官を務めるLinda Fagan沿岸警備隊大将を推挙すると発表しました。5月に退官するKarl Schultz現司令官の後任者として上院で承認されれば、女性初の米6軍(陸海空宇宙軍、海兵隊、沿岸警備隊)トップとなります

ただ、沿岸警備隊司令官は5軍のトップの一人ですが、「Joint Chiefs of Staff:統合参謀本部」構成員ながら完全な「投票権」を保有していないメンバーです。また6軍の中では唯一、国防省ではなく、国土安全保障省(Department of Homeland Security)管轄の組織トップとの位置づけになります

Fagan4.jpg近年の米本土安全保障の重要性と任務増大から、沿岸警備隊司令官を投票権のある正式な「Joint Chiefs of Staff」にするべく法改正案が昨年超党派の議員団から提出され、残念ながら成立しませんでしたが、法改正は時間の問題だろうとの雰囲気にあるようです

以下では、推挙発表が国土安全保障省からあったLinda Fagan沿岸警備隊大将について、ご紹介します

4月5日付Military.com記事から候補者をご紹介
Fagan3.JPG●1985年沿岸警備隊士官学校卒(推定60歳)(現司令官は83年卒)で、2021年7月に女性として初めて沿岸警備隊大将に昇進し、同時に副司令官に就任。女性として副司令官に就任したのは3例目(沿岸警備隊の任務拡充等により、5年前に副司令官ポストが大将に格上げ)

●沿岸警備隊では「Marine Safety Officer」としてキャリアをスタートさせ、海上事故調査、商用洋上交通の監視監督、航海支援設備管理、海洋運航者へのライセンス付与、海洋安全施策推進などの業務で若手から中堅時代の経験を積む
●また、40年近いキャリアの中で海洋監察官職を15年勤め、大型砕氷艦Polar Starでの勤務も経験している。末尾の経歴表によれば、東京勤務もある模様

Fagan2.jpg●副司令官就任時に「CBS This Morning」に出演して沿岸警備隊の任務説明した際は、「homeland security」, 「maintaining a global presence」, 「supporting and training the coast guards of other countries」, 「enforcing drug laws and fishing regulations」,「protecting the supply chain」を上げている
●そして特に強調して、「沿岸警備隊は世界中で活動している。人々は誤解している。沿岸警備隊は沿岸でのみ活動していると考えがちだ。米海軍の仲間がプレゼンスを示し、法を執行するために武器使用を議論するのと同じように、我々は米本土防衛のために存在している」と表現している

Fagan5.jpg●Fagan大将は同インタビューで沿岸警備隊の変革にも触れ、「diversityとinclusion」や「女性の活躍」について語り、「我々が使える米国社会を表現するような人的戦力構成を目指し、女性の登用などdiversityとinclusionに焦点を当てて変革に取り組んでいる」と述べ、マイノリティー採用を増やしていると説明している
●ちなみにFagan大将の娘の一人であるAileen Faganは、沿岸警備隊の士官(少尉)としてキャリアをスタートさせている

●現司令官のKarl Schultz大将は次期司令官候補のFagan大将を表し、「沿岸警備隊の作戦運用、政策策定、他軍種との統合運用や他政府機関との連携経験が豊富で、歴史的転換点にある沿岸警備隊をリードするにふさわしい人物だ」と語っている
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Fagan6.jpg米国の沿岸警備隊について取り上げたことがほとんどありませんが、「グレーゾーン」事案への対応がより重要になる最近の安全保障環境の中で、「平時の第一線」であることは間違いありません。

また、ほとんど顧みられなかった「砕氷船」が北極海の氷減少でにわかに脚光を浴びる中、実質的な稼働席数が「わずか1隻」との厳しい現実にも向き合っていただくことになるのでしょう。ご検討を祈念申し上げます

Linda Fagan沿岸警備隊大将のご経歴
https://www.uscg.mil/Biographies/Display/Article/1391225/admiral-linda-l-fagan/

女性徴兵制度がある国
「前線にも:イスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27
「究極の平等目指し:ノルウェー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「社会福祉業務選択肢もオーストリア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22

沿岸警備隊関連(砕氷艦)の記事
「唯一の大型稼働砕氷艦が火災で運行不能」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-26
「大統領が米砕氷艦計画の再評価指示」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-15
「トランプ:空母削って砕氷艦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-19
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02

軍での女性を考える記事
「初の女性空母艦長が出撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-05
「技術開発担当国防次官に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-23
「初の女性月面着陸目指す」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-20
「黒人女性が初めて米海軍戦闘操縦コース卒業」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-12
「初の米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-20
「GAO指摘:女性の活用不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-20
「初の歩兵師団長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-10
「超優秀なはずの女性少将がクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「3軍長官が士官学校性暴力を討議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「上院議員が空軍時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空自初:女性戦闘機操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19
「米国防省:全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「ある女性特殊部隊員の死」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11

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MDA長官がグアムMD整備の状況と困難を語る [Joint・統合参謀本部]

注ぎ込んでも限界のあるミサイル防衛にどこまで投資するか?
グアムのミサイル防衛体制整備の現在位置

Hill.jpg2023年度国防予算案公表に伴い、米ミサイル防衛庁MDA長官のJon Hill海軍中将などが、太平洋軍最優先要求事項の一つで「2026年までに絶対運用開始」の「グアム島のミサイル防衛強化」について発言していますので、現在の大まかな状況と課題部分についてご紹介します

グアム島は、改めて申し上げるまでもなく対中国作戦の起点となる西太平洋の数少ない作戦基盤であり、海軍艦艇・潜水艦への弾薬補給、空軍作戦機の一大発進基地&燃料弾薬補給などなど、重要な役割を担っています

Guam MD.jpg中国も米軍にとっての重要性を認識し、グアム島攻撃用の航空機発射巡航ミサイルや弾道ミサイルの整備を着々と進めていますが、ご丁寧に最新型H-6大型爆撃機に搭載した巡航ミサイルで、グアムのアンダーセン基地を攻撃するシュミレーション映像まで公開しています

米太平洋軍は2013年にTHAADミサイル防衛システムをグアムに配備していますが、太平洋軍は更なるMD装備の拡充を優先要望事項にあげており、要望を受けたミサイル防衛庁が2026年配備完了に向け、完成形態の最終設計を2023年度中に終了すべく予算要求をしています

ちなみに2022年度予算では約95億円の設計&調査費と約50億円の先行調達費を当初要求しましたが、米議会が追加で約90億円を上乗せしています

3月30日付Defense-News記事によれば
Guam MD2.JPG●2023年度予算案でMDAは、グアムのMD整備用に約660億円を要求し、多層なミサイル防衛体制に必要なシステムや配備装備設計の検討、配備場所の調査、レーダーや兵器用部品調達費用にしたい考えである
●28日にMDA幹部は予算案説明会で、「現状のMDシステムは北朝鮮からの弾道ミサイル対処能力はあるが、中国からのミサイルを含む脅威は日進月歩の勢いで変化している」と予算への理解を求めた

●MDAのHill長官は、ルーマニアやポーランド配備のAegis Ashoreのような固定システムだけではなく、分散型システムも検討しており、移動式ランチャー活用にも関心を持っていると語った
●そして、能力が現時点で確認されている米海軍のSM-3やSM-6、PAC-3、そして現有のTHAADの組み合わせを基本とするが、米陸軍が2023年に配備予定の「Mid-Range Capability missile」などの将来装備も可能になったタイミングで組み入れることも検討すると述べた

Guam MD3.jpg●また、上述のシステムは指揮統制システムとして米陸軍の「Integrated Battle Command System」で連接されるが、「イージスシステムの火器管制能力」も活用するとも同長官は語っている
●現時点では、弾道ミサイルと極超音速兵器対処に取り組んでいるが、その後にPAC-3の持つ優れた巡航ミサイル対処能力を米陸軍C2システムを通して融合させる

●同長官は課題として、グアム島でミサイル防衛システムに使用可能な土地が限られていることを上げ、「高低の変化が激しいグアム島の中の、利用可能な限られた地籍に大きなAegis Ashoreシステムや関連センサー用の場所を見出し、他システムとの連接を確保する事は、他の場所での知見を活かせるような単純な作業ではない」、「この課題のため、過去数年間に膨大な検討を行ってきた」と語った

Guam MD4.jpg●また例えば、グアムで検討している巡航ミサイル対処要領については、米本土防衛用にも応用可能となろう。既存センサーの活用は、宇宙センサーを含めた融合にも発展させる方向で、発射機も同様に、新たなミサイルが導入されればMDシステムへの取り込みを考え、進化発展を考えていくと同長官は説明している
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グアム島各所に先住民の方にとっての「神聖な場所」が存在し、その場所を米軍施設や観光開発から隔離することが大前提となっています

ミサイル防衛整備以前から、米海空軍受け入れ能力強化のための施設工事が色々と進んでいますが、その度に先住民の方々との調整が難航しています

Hill MDA.jpgそれでなくても、サンゴ礁でできた島ですので、MD用に適当なまとまった土地を見つけてレーダーやセンサー覆域等々を考えると、非常に難しいパズルを解く必要があるのでしょう。

「2026年運用開始がマスト」との厳しい事業ですが、その進捗を見守りましょう

関連の記事
「イージスアショアは分散&機動展開可能型へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-21
「太平洋軍司令官がグアムミサイル防衛一押し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-23
「上下院軍事委員長が対中国抑止PDI推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-29
「太平洋軍が今年も追加要望事項レポート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-03

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米陸軍が軽戦車MPFの選定ほぼ終了 [Joint・統合参謀本部]

MPF:Mobile Protected Firepowerとの歩兵用軽戦車
General DynamicsがBAEに勝利との報道あり

MPF GD3.jpg3月11日付Defense-Newsは、3月のJanes Defense誌が報じた米陸軍軽戦車(正確にはMPF:Mobile Protected Firepower)機種選定で「General DynamicsがBAEに勝利した」との情報をフォローする記事を掲載し、関連米陸軍幹部の「機種選定に満足している」との言葉を紹介しつつ、7月予定の正式発表にサプライズは無いとの感触を伝えています

この米陸軍軽戦車MPFは、歩兵部隊に「防護プラットフォーム」、「圧倒的な精密火力」、「様々な地形条件での高い機動力」提供を目的とするもので、「現在の欠落能力を補完」するため2026年夏に最初の部隊への配備を予定しています

MPF GD.jpg2018年12月に最終候補をBAE Systems社(緑色)とGeneral Dynamics Land Systems(GDLS:茶色)社の2社に絞り、各社に12両のプロトタイプを製造させ、まず米陸軍で全ての基本性能が要求値を満たしているかを試験し、

その後、MPFの基本運用コンセプトを作成した第82空挺師団の選抜兵士による「ユーザー確認試験」が行われ、現場の様々な角度からの意見が聴取され、製造企業側にもフィードバックされ、現在最終結果取りまとめが行われている段階にあるようです

MPF BAE2.jpg2つの提案は、同じ提案要求書から作成されたものですが、2社の提案は大きく異なっており、GD社は軽量車体に高性能装甲装置と先進サスペンションを搭載し、火器管制装置やタレットにはM1A!戦車の最新型バージョンのシステムを搭載している模様です

一方でBAE社は、コロナの影響でプロトタイプ提供がGD社より1か月遅れたようですが、M8 Buford装甲ガンシステムに新たな能力やサブシステムを搭載したデザインで選定に臨み、2021年8月にはおおむね終了した模様です。「ユーザー確認試験」を経た第82空挺師団兵士からのフィードバックには、両社とも「非常に貴重な現場意見が得られた」と感謝の意を表しています

MPF BAE.jpg機種選定と並行し、米陸軍内では量産に向けた「Requirements Oversight Council による審査」も行われ、具体的な配備先部隊を調達数にまで踏み込んだ議論が複数回行われ、煮詰まってきているようです

正式には今年7月(2022年度第4四半期)と言われる選定結果発表後は、勝者が26両を製造(オプションで26両追加製造)し、更に米陸軍内の様々な意見を踏まえ、量産用最終改良型を8両製造して量産形態を確定する予定となっています
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2018年に2企業に絞られた際、米陸軍担当幹部はMPFについて、「歩兵が徒歩や簡易装甲車両ハンヴィーで移動していた際に、敵の拠点や車両に出くわした場合、今は全て停止を余儀なくされている」、「しかしもしMPFがあれば、米陸軍部隊はそれらを突破することができるだろう」とその必要性を語っています。

MPF GD4.jpg要求性能でMPFは105mm砲と7.62mm同軸機銃で武装し、重量はM1AI戦車より軽量な40トン以下、そして機動力もM!A!戦車を超えることを目指しており、この点で「欠落能力の補完」と言うことなのでしょう

中東での対テロ戦では用途がありそうですし、ウクライナ軍に提供してあげたい装備ですが、対中国で活躍の場があるとは考えにくく、どの程度の数量が調達されるのか気になるところです

米陸軍の話題
「50KW防空レーザー装備の装甲車導入へ」→https://holylandtokyo.com/2022/01/21/2623/
「Project Convergence5つの教訓」→https://holylandtokyo.com/2021/12/21/2514/
「大国との本格紛争で近接戦闘も重視」→https://holylandtokyo.com/2021/11/09/2388/

「極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holylandtokyo.com/2021/10/18/2342/
「2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holylandtokyo.com/2020/09/11/478/
「射程1000nmの砲開発に慎重姿勢見せる」→https://holylandtokyo.com/2021/03/17/163/

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THAADシステムに最新型PAC-3発射機連接し迎撃成功 [Joint・統合参謀本部]

THAAD高性能レーダー情報でPAC-3使用可
PAC-3の指揮統制システム不要、発射機のみ連接
きっかけは朝鮮半島の移動部隊からの緊急要請

THAAD PAC-3.jpg3月9日ロッキード社が声明を発表し、2月24日に米ミサイル防衛庁MDAがTHAADシステムに最新型PAC-3のMSE(Missile Segment Enhanced)を連接した射撃試験をホワイトサンズ射撃場で実施し、THAADシステムのレーダーで捕捉した目標を、PAC-3MSE発射機から発射されたミサイルで迎撃に成功(実際はヒット直前で迎撃体を自爆措置)したと明らかにしました

この試験は、THAADのレーダーと指揮等統制装置にPAC-3MSE発射機を繋いで行われ、PAC-3システムより捜索範囲の広いTHAADレーダーで捕捉した目標に対し、THAAD指揮統制装置から出された指示に従ってPAC-3MSE発射機から迎撃ミサイルを発射する形で行われました

THAAD PAC-34.jpgつまり、THAADシステムに、THAADミサイル発射機とPAC-3MSE発射機を同時に接続し、目標の飛行諸元や脅威度や友軍の応戦状況に応じて、迎撃手段を前線の指揮統制装置内で高高度広範囲対応のTHAADミサイルと低高度拠点対応のPAC-3MSEから選択可能になるということです

米陸軍とミサイル防衛庁MDAは、朝鮮半島展開の移動部隊からの差し迫った要求に応えるため、数年前から重層的なミサイル防衛網構築を目指してTHAADとPAC-3融合に急いで取り組んできた模様で

THAAD PAC-35.jpg融合試験当初は、THAADシステムにPAC-3指揮統制装置を含む全システムを連接していたようですが、よりシンプルな形を追求し、2月24日のPAC-3発射機のみを連接する形にまで深化させた様です

米軍内でPAC-3を運用する陸軍は、将来的にPAC-3を「new integrated air and missile defense system」に置き換える計画を進めているようですが、残ったPAC-3発射機と迎撃ミサイルを、THAADシステムに連接して重層的な防御網構築をオプションとして持つ方向なのかもしれません(邪推です)

9日、発表同日にワシントンDCで講演したMDA長官のJon Hill海軍中将は、「作戦運用上の緊急要請に応え、間もなく成果を前線に届けることができることに喜びを感じ興奮している」と語っています
/////////////////////////////////////////

Hill MDA.jpgTHAADシステムとPAC-3発射機との連接要領がよくわかりませんが、THAADレーダーとPAC-3システムの連接組み合わせは可能なのでしょうか?

ニーズはともかくとして、日本にあるTHAADレーダーとPAC-3システムが遠隔連接できれば、青森県や京都府の日本海側になる米軍のTHAADレーダー情報を、日本各地に展開するPAC-3部隊に提供できれば、広範囲の戦況を把握できて良いことがあるかもしれません(ないかな? JADGEシステムとの連接で十分かな?)

THAAD関連の記事
「UAEでTHAADが初実戦迎撃成功」→https://holylandtokyo.com/2022/01/24/2640/
「グアムには陸上配備イージスアショアが必要」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-23
「CSISが時代遅れの米国IAMDに提言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-01-27-2

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南シナ海海没のF-35Cを僅か37日で回収完了 [Joint・統合参謀本部]

第7艦隊が総力を挙げ、中国に盗まれないよう早期回収
水深約4000mの深海から無人水中艇を使用し
昨年の地中海でのF-35B回収経験も活かした模様

F-35C Sink2.jpg3月3日付米海軍協会研究所web記事等は、1月24日に空母カールビンソンへの着艦に失敗してフィリピン沖の南シナ海に海没したF-35C型機を、米海軍第7艦隊や海軍システムコマンドが総力を挙げ、3月2日に水深約4000m(12,400 feet)の海底から引き揚げることに成功したと報じました。

同機はカールビンソンが空母リンカーンと同海域で共同訓練中に着艦に失敗したもので、同空母乗員(士官1名、下士官4名)が流出させ処分を受けた事故時の映像や写真によれば、高度不足で着艦アプローチに失敗して空母端に胴体を接触させ、甲板上を180度回転しながら滑って海中に落下したようです

F-35C salvage.jpg回収作業は、第7艦隊の水中特殊任務を担当する「CTF75:Task Force 75」と、海軍Sea Systems Commandのサルベージ専門官のチームで行われ、水中作業支援船「Picasso」から発進した約3トンの遠隔操作水中作業艇「CURV-21」が海底のF-35に引き揚げ用ワイヤーを取り付け、支援船「Picasso」のクレーンで引き揚げたようです

同様の引き揚げ作業は、昨年、地中海で英空母エリザベスからの離陸に失敗して海没した英軍F-35B型機にも行われた様で、米英伊軍の協力で実施されたその際のノウハウも、南シナ海での迅速な引き上げ作業につながったようです

めでたし・めでたしですが、本件絡みで要観察事項2つ

Carl Vinson.jpg●1月24日の海没事故の際、短期間で5件連続事故続きだった空母カールビンソン艦長が「わずか45分で着艦を再開できた。共に訓練していた空母リンカーにも一部艦載機を緊急着艦させるなど、不足事態への乗員の対応は素晴らしかった」と強気の発言を行っていましたが、
●「空母艦載機増加で運用リスク増」「緊張を強いられる対中国示威任務」「コロナ対策で乗員のストレス蓄積」などが事故多発や、乗員による事故映像リークの背景では・・・と、米空母の将来を勝手にまんぐーすは心配しております

「対中国特化米空母の苦悩」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-15

F-35C Sink4.jpg●もう一つ気になっているのは、この引き上げ成功を最初に報じた3月3日付米海軍協会研究所web記事が、「米海軍は中国やロシアへの情報漏洩を恐れ、F-35Cの海没&改修作業場所を非公開としていたのに、日本の海上保安庁が公示した」と批判的に報じている点です
●海上保安庁は、国際機関から当該海域における航海注意情報を世界に発信する役割を命じられており、「淡々と」サルベージ作業地点情報を事務的に世界に向け公示しただけですが、「配慮不足」を指摘される形となっています。海上保安庁が日本政府と事前に相談したとは思えず、このあたりの対応には今後注意が必要かもしれません

「日本の海保がF-35C海没場所公示」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-01

3月13日の北京冬季パラリンピック終了までは、南シナ海や東シナ海は少し静かでしょうが、その後には不安しかない今日この頃です・・・

事故続発・米空母カールビンソンの苦しい航海
「対中国特化米空母の苦悩」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-15
「南シナ海の米空母でF-35着陸失敗等事故5件相次ぐ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-26
「日本の海保がF-35C海没場所公示」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-01

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