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4段階で35兆円削減に挑む [ゲーツ前国防長官]

gatesmullenbgt.jpg18日、ゲーツ国防長官とマレン統合参謀本部議長が記者会見に臨み、4月13日にオバマ大統領が宣言した2025年までの間に安全保障関係予算を約35兆円($400billion)削減する件に関しする国防省の検討方針を明らかにしました。

19日付「DODBuzz」記事より また トランスクリプトも

●まず第一に・・
昨年始めた国防省の業務の効率性を更に高める方向で更に努力を続ける。この段階では、軍事的能力への影響を最小限にとどめることが出来る。さらに貪欲に官僚機構的無駄や余計な経費にメスを入れることが、根本的な国家戦略や軍事能力に手をつける前に成される必要がある。(additional efficiencies, continuing the efforts we launched last year)

●次の段階として・・・
第一段階で十分な削減額が弾き出せない場合には、国防予算の増加の大きな原因となっている既存の政策、計画、手順や規定事項に手をつけることになる。医療費、軍人への各種補償、退役者への便宜供与、施設維持費や各種サービス経費が視野の一部にある。(serious examination of established policies, programs, processes and mandates)

●第3段階として・・
まれなケースや活用する場面が限られコストのかかるような能力や任務付与を縮減又は削除し、経費を浮かせる。現在国防省が実施中のミッションでも、優先度が低く中核的とは言えない任務を対象とする。(reduce or eliminate marginal missions and marginal capabilities)

●最終第4段階として・・・
戦略的に最も困難な段階であるが、QDRに示された戦略を修正し、現戦略を遂行するのに必要な戦力構造や能力を削減する。(alternative modifications to the QDR strategy that translate into options for reductions in force structure or capability needed to execute the strategy)

gatesmullenbgt2.jpgこのプロセス全ては大統領や議会にオプションとして周知しなければ成らず、国家として予算削減のリスクを甘受する意志が示される必要がある。これら見直しのプロセスは、政策担当国防次官、統合参謀本部議長、そしてコスト管理計画評価局長による共同作業で行われる。

ゲーツ長官は、給与や手当、医療費にまで言及したが、次期空中給油機、F-35、次期戦略原潜についてはあえて検討対象とは言及しなかった。言及しなかったから「聖域」とは保障できないが・・・。
2つの大規模紛争対処の前提を外すのか、欧州の空軍や陸軍を削減か、陸軍と海兵隊規模への影響は、部外契約業務や各諸省のなわばり、官僚機能にどの程度メスを入れられるのだろうか。
marginal missions」とは何を意味するのだろう・・・
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「the hardest category strategically — and I would say also intellectually — will be specific alternative modifications to the QDR strategy that translate into options for reductions in force structure or capability needed to execute the strategy」

最も困難なカテゴリー、知的に表現すれば、・・・・・戦力や能力削減とも表現できるQDR戦略の微修正という代替案・・。ゲーツ長官の精一杯のジョークなんでしょうか

35兆円削減宣言と対応姿勢
「オバマ35兆円削減宣言」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-05
「更なる削減要求に備え」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-23

ゲーツ長官の過去の削減策
「14兆円精査案で政府議会と」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-07
「ゲーツの取得開発改革指針」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-15-1
「国防省と議会にも宣戦布告」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-09
「アイゼンハワー・ライブラリ演説」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-11

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ゲーツ長官の引用名言に名訳を! [ゲーツ前国防長官]

うまい日本語訳が出来ないか、皆様のお知恵を

gatesNDSU.jpgゲーツ長官は、13日にオクラホマ大学、14日にノースダコタ州立大学の卒業式にゲストスピーカーとして招待され、ジョークを飛ばしつつ、公に尽くすことや公務のやりがいや重要性について語りました。

これまでの何回か卒業式スピーチをご紹介しましたので全体はご紹介しませんが、ゲーツ長官の卒業式スピーチに頻繁に引用される著名人の英語の言葉に、うまい日本語訳が出来ないか、皆様のお知恵を拝借したくお願いする次第です

スピーチ原稿 オクラホマ大学 ノースダコタ州立大学

もちろん全てにでなくて結構ですので、お気に入り(そうな気がする)モノだけで結構ですので、アイディアがあればコメント欄にご記入お願いします
スピーチの流れも訳に影響すると思いますので、流れの概要をご紹介しながら英文引用をピックアップしていきます。
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両大学でのスピーチの流れ(オクラホマは少し違いますが・・)

ご父兄のみなさま。おめでとうございます。もうご子息のために小切手を切る必要がないと考え、その分の使い道を考えておられるならば、2人の子を大学まで出した経験から申し上げましょう。
間違いなく、パパ・ママ銀行は今後もご子息のために営業を続ける必要があると・・・。
卒業生の諸君、おめでとう。式の後のパーティーに向けた最後の障害物であることを十分承知しているので、なるべく早くスピーチは終わる

●皆さんは、私が成功の秘訣を教えてくれると期待しているだろう。ならば億万長者J. Paul Gettyの金持ちになる秘訣を語った言葉を授けよう。
(引用1)Rise early, work late, strike oil.

●また、映画監督のヒッチコックAlfred Hitchcockはこう表現した。
(引用2)There’s nothing to winning really. That is if you happen to be blessed with a keen eye, an agile mind, and no scruples whatsoever. 注:scrupleは良心のとがめ、疑念、ためらいの意味

●それじゃ別に、私からの言葉として2人の女優さんの言葉をアドバイスとして授けよう。一人は有名なオペラ歌手Beverly Sills
(引用3)There are no short cuts to any place worth going.

●もう一人は女優のキャサリン・ヘップバーンKatherine Hepburn
(引用4)Life is to be lived. If you have to support yourself, you had bloody well find some way that is going to be interesting. And you don’t do that by sitting around wondering about yourself

gatesoklahoma2.jpg(その後、米国が内向きに成りつつあることに懸念を表明し、歴史上、米国は内向きになることを繰り返したが、そのたびに大きな代償を払うことになった。内政や経済への欲求不満を理由に、世界から目を背け、挑戦や脅威に対処する決意を失うことは破滅的な結果をもたらすことを20世紀前半の欧州や911で学んだ、と語ります。)

我々は、強い必要性の世界に生きています。国内の深刻な問題からは逃げられず、世界のリーダーたる責任からも逃れられません

オバマ大統領が言ったように、
(引用5)put your foot firmly into the current of history.
もしあなた方がそのようにするならば、素晴らしいことが我が国や世界に起こりうるでしょう。

公務や公に尽くすことのすばらしさがあまり評価されず、その実態も知らされていないと懸念しています。私はCIAの職員から現在まで、多種多様な公務に就く人々を見てきましたが、米国の公務に就く人ほど献身的で能力があり、誠実で正直な公僕を知りません。

誰もがCIAのスパイや海軍SEALsの兵士になって前線に潜入し、悪名高いテロリストに最後の正義を下す必要はないのです。企業に勤めても企業を通じ、また地域社会の活動のなかで社会に貢献する手段は幾らでもあることを忘れないで欲しい。

gatesoklahoma.jpg公に尽くすことの重要性を忘れず、自由と正義の息づく社会を保つために、市民としての役目を皆で担うことが民主主義の基本であることを心にとめ、次の世代の優秀な人達に語り継がなければならない。
特に皆さんのような賢明で優れた若者は、時にそのことをリフレッシュして心に置かねばならないし、また自らそうしなければならない。

John Adamsはその息子であるThomas Adamsに手紙でこう諭した。
(引用6)Public business, my son, must always be done by somebody. It will be done by somebody or another. If wise men decline it, others will not; if honest men refuse it, others will not.

2011年度卒業の皆さん、私は訪ねたい。皆さんの中の賢明で誠実な誰かが、ともにアメリカのために働いてくれるか? 卒業おめでとう。
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引用1から6まで、お好きなのをどうぞ!!
もちろん、複数または全部に挑戦も歓迎します。

学生の卒業式や少年への講演
「米国の将来を悲観するな」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-09
「CIAでの失敗を高校で」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-25
「大学で「公への奉仕を」」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-22
「ボーイスカウトの精神を」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-29
「ROTC学生へ 4軍が抵抗」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07
「空軍は単に飛んでいたいのか」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02

士官候補生への最後の講義
「空軍士官候補生へ最終講義」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
「前:陸軍士官候補生へ最終講義」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-1
「後:陸軍士官候補生へ最終講義」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-2

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米国の将来を悲観するな [ゲーツ前国防長官]

gatesWSUV2.jpg7日、自身が引退後を過ごそうと考えている米国北西部ワシントン州にあるワシントン州立大学の卒業式に出席したゲーツ国防長官は、「米国の将来を悲観しないで欲しい」、また「公に尽くすことを忘れないで欲しい」と訴えました。
これまで何度か各種高校大学でのスピーチをご紹介してきましたので、重複するジョークや例え話は避け、まんぐーすにとって新しい部分のみ概要をご紹介します。

米国の将来を悲観するなかれ
●10年に及ぶ戦い、不安定な経済情勢、そして累積する国家債務を前に、君たちの多くが米国の将来に悲観的な見方を持っているのではないか。世間一般のムードがそうだから仕方ないことかも知れない。
しかし私が学生の時だって悲観論が蔓延していた私が高校1年生の時は、ソ連がスプートニクを打ち上げたことで衝撃を受け、宇宙開発や果てはミサイル競争でも米国が後塵を拝するのではと皆が悲観的になっていた。
1970年代、ベトナム戦の後遺症が残る中、OPECによる石油の禁輸が発表され、追い打ちをかけるように猛烈なインフレと金利の高騰が襲いかかった。この時も米国は将来に疑問を持った。
そして1980年代、財政と貿易の双子の赤字に苦しむ中、日本に追い抜かれるのではとの懸念が国を覆った。

gatesWSUV.jpg●いずれの時代をも過ごしてきた証人として言えば、いずれの時代でも米国民は国が負のスパイラルに入ると確信を持って悲観していた。しかし、いずれの困難な時代にも我が国はそれを乗り越え、そしてよりたくましい国へと生まれ変わった。私はもう一度これが出来ると確信している。
●しかしこのように財政が厳しいとき、我々は何らかの革新的解決策を持ち込まなければいけない。そして国が困難なときは、優秀で聡明な若者が前に出て、その才能と斬新な視点を国難の解決に提供せねばならない。

●君たちには、自分を駆り立てるモノが何かを見つけてもらいたいし、その熱情を向ける何かに全勢力を傾けて取り組んでもらいたい。しかし同時に諸君には、その過程において少なくともその一部で、公のために尽くすことを考えておいてもらいたい。
●現代において、公務に就くことがそれほど魅力を放っていないことを私は感じている。しかし公務のやり甲斐について、ほとんど知られていないのではないかとも危惧してもいる。

21世紀の米国も、自由や正義や法の秩序、更に人権を守る力でありたいと思うなら、能力があり理想を持った若者が前に出てその負担を担わなければならないのだ。
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gatesWSUV3.jpgちなみに、ゲーツ長官はCIA長官時代クリントン政権下で対日経済政策立案にも関わったそうです。2年前の来日時「13年前と比較して、米日関係は見違えるほど改善した」と述べ、その当時がいかに険悪だったかを伺わせました。

またワシントン州立大学は、ゲーツ長官の奥様ベッキーさんの母校であり、息子さんの母校でもあるそうです。
それにしても・・・この記事の最後は、「ゲーツ長官はワシントン州で引退後を過ごす計画である」で結ばれています。その時が刻一刻と迫っているのですねぇ・・・(遠目涙目再び

卒業式や一般学生への講演
「CIAでの失敗を高校で」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-25
「大学で「公への奉仕を」」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-22
「ボーイスカウトの精神を」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-29
「ROTC学生へ 4軍が抵抗」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07
「DUKE大学での講演」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02
「特殊部隊にもっと女性が」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02-1

士官候補生への最後の講義
「空軍士官候補生へ最終講義」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
「前:陸軍士官候補生へ最終講義」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-1
「後:陸軍士官候補生へ最終講義」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-2

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不確さが柔軟性を求める [ゲーツ前国防長官]

「ベトナム戦争以来、次にどこで軍事力を使用するかの予想において、我が国の指導者は完璧な記録を更新している。つまり完璧に外し続けているのだ」

6日ゲーツ国防長官はF-15Eストライクイーグルを保有するSeymour Johnson空軍基地を訪問し、約450名の兵士の前で「不確実性の中に求められる柔軟性」について語りました。

ゲーツ長官は続けて・・・他の話題と質疑応答も含むトランスクリプトはこちら
gateF-15E-2.jpg●我々はただ単に知ることが出来ないのだ。だから我々は(多様な事態に)準備しなければならないのだ
●このような完全な記録保持者である我々は、購入する装備や研究開発する能力は多様な事態を想定したモノであるべきである特に財政状況が厳しい時、我々は可能な限り多様な紛争に対処できるような、最大限に柔軟性を備えた能力(装備)を導入しなければならない。

●例えば2008年の秋、当時のコンドリーサ・ライス国務長官は私にこんな調子で話してくれた・・「海賊?海賊って・・そんなのがまだいるの?
●ライス長官が悪いのではない。国防長官で海賊対処に当たったのはトーマス・ジェファーソン以来だからだ(場内爆笑)。

20世紀において我が国は4回大規模な軍縮を行った。第1次と対2次大戦後、ベトナム戦後そして冷戦終了後である。いずれも当時の人々は「世界が変わった」「脅威は去った」と考えたのだ。
しかし人間は変わらなかった常に落とし穴はあり、侵略者や専制君主はいつの時代にも現れた。どのような未来が待ち受けているか知るよしもないのだから、将来に向けても米国は軍事力を維持しなければならない。

gateF-15E.jpg●国家財政の負債は大きな問題である。国防省は負債削減のために役割を果たさなければならない。そしてより節約しなければならない。特に施設面や医療費関連分野で
議会とホワイトハウスには、シナリオに沿ったオプションを提示し、どこにリスクが伴うかを理解した上で判断してもらえるように検討を実施したい。単なる帳尻あわせではあっては成らない
●提示するオプションは現実的で、これだけ削減するならこの前提を変えなければ、またはこれだけのリスクを引き受ける覚悟が必要等々を明らかにすべきである。米国はこれらを知的に行うべきであり、国防省は国家安全保障を低下させることの無いよう、自らに与えられた検討を行う。
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1967年1月4日に空軍少尉に任官して以来、私は空軍の我が国安全保障に対する素晴らしい貢献を見つめてきた・・・とゲーツ長官は語りかけ、労をねぎらっています。
gatesnavyIND.jpgまた同日海軍基地に空母インディペンデンスも訪問し、兵士に語りかけています。「私の国防長官としての最後の海軍訪問である・・」と・・

「do it intelligently」・・知的に行うべき・・の反対は「政治力」「裏工作」「メディアへのリーク」「軍種のエゴ」「政軍の癒着」等々が絡まない、国を思う信念に支えられた検討なのでしょう。

「更なる予算削減に備えて」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-23
「オバマ35兆円削減宣言」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-05
「14兆円精査案で政府議会と」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-07
「ゲーツの取得開発改革指針」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-15-1

「本ブログ過去の主要記事一覧」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-23

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英国との血の同盟を確認 [ゲーツ前国防長官]

約70年間に渡る米国と英国の特別な関係、そして血を流して鍛えられた両国軍間の絆(special bond forged in blood)は、この世界において恒久とも思われる力であった。この困難な時に、両国の協議が両国関係を更に前進させたことをうれしく思う。」(ゲーツ長官)

gatesUKDM.jpgイラクとアフガンに加えてソマリアの海賊、更には新たなリビア戦線に関する米英国防相協議が26日ワシントンにおいて開催されました。
3時間に渡る協議に昼食会を加え、さぞかし突っ込んだ議論が行われたものと思われます。明るい話題が無い中(ウイリアム王子の結婚ぐらいですか・・・)、記者会見で語られたのは、ほんの一部でしょうが、西側の軍事を引っ張る両国の協議ですからフォローしておきましょう。米国防省HP記事より

英国のFox国防相は・・
リビアにおいて、ここ数日でNATO側は勢いを増している。ミスラタで進展を見せ、政府側は後退を余儀なくされている。カダフィー側のゲームは終わりに近づきつつある。今日か又は近日中に。
米国が無人機プレデターを参戦させてくれたことを感謝している。
現在中東は転換点を迎えつつあり、そんな中、平和的に要求を述べ反対運動を行う民衆への暴力は許容できない。
●米国が10万人を派遣し、英国が約9千名を派遣しいるアフガンについても話し合った。軍事的なコントロールエリアを確保する中で、どのように政治的統治移管を進めるかについて議論した。政治的な空白を埋めることの重要性で一致した。

ゲーツ国防長官は・・
gatesUKDM3.jpg●米国は引き続きNATO主導でアラブ諸国も参加する作戦を支援し続ける。人々の経済的困窮や政治的不遇に抗議する平和的な運動の意味や価値は、全ての国に共通の価値である。
●(一方で、)米国の対応はその国その国の状況に応じて個々に適切に調整されるべきであり、米国はそうしてきた。リビアでは、アラブ連合が外交的なアプローチをカダフィーに試み、湾岸諸国会議も動く用意があるようだ。
●米国はNATOによるカダフィー住居の空爆は、それが指揮統制の拠点である点で合法的な目標である。
●英米両国はともに直面する財政的な制約について状況共有し意見交換した
ソマリア沖の海賊対処についても話し合った。
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gatesUKDM2.jpg協議には、マレン統合参謀本部議長と英陸軍のジャクソン大将も参加しています。
政治家と軍人が一体となって安全保障問題を議論する場を持っている点で、民主主義国の一つの見本でしょう。中身のまとまり度や実行可能性はともかくも、成熟している2国間関係の一つの型です。

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更なる大幅予算削減に備えて [ゲーツ前国防長官]

gatebugetcut.jpg4月13日のオバマ大統領発表:「変わりゆく世界における米国の任務、必要能力及び役割を根本的に見直し、2023年までの間の安全保障予算を約35兆円削減する」の衝撃以降初めて、ゲーツ国防長官が初の記者会見に臨みました。

巷の報道は「国防省は、大統領の発言が意味するところを理解できていない」等と伝えています。約35兆円のどれだけを国防省が担うかも依然はっきりしないようですが、既にかなり思い切った議論が行われているとのネット情報も見られます。週明けのごたごたの前に・・・。

21日の会見でゲーツ長官は・・・
何でもありのこの世の中でも、私にとって最悪なのは、国防省がかつて1970年代や1990年代に経験した、全ての分野に渡る一律「X%カット」である。
●私は間もなく開始する包括的な見直しにより、更なる国防予算削減が及ぼす影響や結果をきちんと整理した上で判断を行いたいと考えている。

gatescutbudg2.jpg●私は削減のオプションとその結果、そしてその国家安全保障に与えるリスクを、最初に大統領へ、次に議会に提示したいと思う。もしあなたがこれだけ予算を削減したいなら、これだけの能力を削り、このような結果をもたらすであろう兵力構成になる等々である。
●予算の大幅な見直しには分析に基づいたプロセスが必要である。そこでは、将来の国家安全保障への脅威や挑戦、更には選挙民によって選ばれた代表者が決定する成すべき任務と不必要な役割等を踏まえたリスク管理が行われるべきである。

●我々は本件に関し、予算見直しの手法を議論する会議を一度持ったばかりである、どのようなアプローチを取るかは未定であるQDR策定の手順を参考にして、任務の縮小や兵力規模削減の影響を分析するとの考え方もある。
●我々にはどうしても行わなければならない投資がある。空中給油機、12年以上延命している水上艦艇、核戦略装備の更新、爆撃機、戦略原潜、地上発射ミサイルなどである。
●米国民には選択をお願いしなければならない。私は選択の枠組みを準備し、皆さんに戦略的な国家安全保障リスクや結果を理解いただいた上で選択願いたい

同席のカートライト統合参謀本部副議長は・・・
●見直し検討には、重大な量及び質に関する戦略的思慮が求められる。
●長期にわたる見積もりや前提の変更を迫るもので、国防省が考える2つの地域紛争への同時対処も検討の対象になろう。
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carterash3.jpg20日にカーター国防次官(取得技術兵站担当)ヘリテージ財団で行った講演でも、「他省庁に先んじて、国防省は既に大幅に経費縮減を行っており、根本的に前提や任務を変更しない限り絞れる部分はない」とのトーンになっています。

もし噂通り7月にゲーツ長官が引退するとしたら・・・再び「一律X%カット」の「悪夢」繰り返しになるのでしょうか。

経費縮減関連
「14兆円精査案で政府議会と」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-07
「兵士と将来に9兆円捻出」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-29
「11万人削減案を長官へ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-26
「国防省コストカット」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-30-1
「ゲーツの取得開発改革指針」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-15-1
「ゲーツ改革のまとめ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17

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米国の理想と世界の現実:妥協の歴史 [ゲーツ前国防長官]

gateswashingtonLB.jpg14日、ジョージ・ワシントン大統領研究図書館の開館式にゲストスピーカーとして招待され、自身が座右の銘としてきたワシントンの言葉やエピソードを交えつつ、今日も変わらず米国が直面する課題、すなわち米国の理想と世界の現実の乖離にどう向き合って対応していくかについて語りました。

ゲーツ長官のこのようなスピーチを初めて読みました大統領候補に担がれる可能性も否定できないと感じる内容です。国防省HP記事スピーチ原稿
ズバリ主題は、中東・北アフリカで最近数ヶ月盛り上がりを見せている、変化を求める民衆暴動と米国の対応です。

長年、米国が地域安全保障の要として友好関係を築いてきた国が直面する、「民主化」や「国民参加」を求める国民の叫びを前に、米国はどう対応すべきなのか・・・。結論は、そう慌てないで、じっくり構えて長い目で見ていきましょう、のようです。

非常に慎重で婉曲的な表現が続くのですが、まんぐーすの独断でまとめると・・
gatesQatar.jpg米国は、その掲げる「自由」や「平等」の信念を忘れてはならない。テログループやならず者国家に対する時、苦しい時こそ、その理想が生む価値を信じてともに進まなければならない。
一方で、我々の理想と相容れない国があり、そして変革を求める民衆の動きに直面している場合でも、米国はその国を厳しく批判する前に、自身が現在に至るまでの長い道のりを振り返らねばならない。フランス革命に背を向け、奴隷制度を維持した国が、アフリカ系米国人大統領を持つまでに至った長い道のりを・・・。
●同時に我々は、完全な理想型が限定的な場合にしか実現できないことを肝に銘じつつも、理想の追求を捨てることは許されない。
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格調高いスピーチですので、後は使用されたエピソードをランダムにつまみ食いさせていただきます。

●建国間もない米国で、過激な民衆運動のフランス革命を支持するか、英国等を支持するかで国論が2分されたことがあった。その際ワシントンは、フランスには中立の立場を取り、英国との平和条約に進んだ。建国の理想を捨てるのか、との激しい非難をワシントンは浴びたが、脆弱な米国経済基盤を考慮した末の決断だった。

gatesSTART2.jpg●理想主義と現実主義のバランスを取った決断であった。今日オバマ大統領は同じ問題に直面しているのである。ワシントンが直面したジレンマは、米国が持つ民主主義の理想と願望、それと他国との関係をどのように折り合い付けていくかにあり、今日もそのジレンマは変わらない。

●同様の図書館をニューヨークに設けたルーズベルト大統領はこう述べた。「過去から学ぶ能力の容量によって、どれだけ未来を切り開いていけるかが決まる

●1778年、ワシントンは当時の議会の状況を次のように描写した。「政党内外のごたごたや個人間の言い争いが主要な仕事になってしまっている。一方で膨大な負債が累積し、財政は破綻し掛かり、通貨の価値が下がり、信用が低下している。しかしこのような課題の解決は、日々、毎週、それがまるで素晴らしいことであるかのように先延ばしされている

●ワシントンが大統領当時の初代国防相ノックスは、当時最大の課題であった海賊対処のため、米海軍初となる艦艇6隻の建造を進めた。しかし利害渦巻く議会との交渉の末、6隻を、6つの異なる州の、6つの異なる造船所で建造することになった。ものごとはそう簡単には変わらない・・今でも。

gatesKansas3.jpg●独立戦争さなかでも、ワシントンは自身の戦争指揮に関する意見を聞く機会を定期的に設けた。そして反対意見や批判が出るのを抑えようとは決してしなかった。彼は「私は、私が犯したミスや失敗を聞くことに堪えることが出来る。他人の意見に向き合いたい向き合えると願う者はそうしなければならない。なぜならそうすることで人は誤りを正すことが出来るからだ。」

●私は国防長官として、ワシントンの信念を胸に刻んでいる。「平和を保つため、戦争に備えなければならない
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まんぐーすは「米国大好き」で本ページをやってるのではありません。「他人の振り見て、我が振り直せ」でやってます。念のため。

ゲーツ長官の外交関連講演や会見
「米国の理想と世界の現実」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-16
「他国はなぜ米国と付き合うか」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-02
「米外交の軍事化を警告」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-15-1

学生の卒業式や少年への講演
「CIAでの失敗を高校で」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-25
「大学で「公への奉仕を」」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-22
「ボーイスカウトの精神を」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-29
「ROTC学生へ 4軍が抵抗」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07
「空軍は単に飛んでいたいのか」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02

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新陸軍参謀総長に与える課題 [ゲーツ前国防長官]

armDempsey2.jpg11日、新しい陸軍参謀総長が誕生しました。訓練ドクトリンコマンド(TRADOC)司令官だったデンプシー大将(General Marty Dempsey)がケーシー大将の退役に伴い就任しました。
ワシントン郊外の陸軍基地で行われた就任式で、ゲーツ国防長官は新参謀総長の持つ戦略的ビジョン、鋭い視点や静かな自信を讃えるとともに、互いに確認し解決策の検討を命じた課題を明らかにしました。
就任式でのスピーチ原稿より

まずデンプシー大将の経歴を讃え・・・
名門デューク大学で英語学を修め、陸軍士官学校で英語学の教鞭を執った文武両道の武人である。
●しかしその能力は前線でより発揮された。イラク戦争の際は、最も困難な闘いに直面した第1装甲師団長として活躍した後、多国籍の任務移管業務の指揮を取ってイラク軍や警察の育成に尽力し、その結果がサージの成功を導いた。
ArmDempsey.jpg●2008年には中央軍司令官(大将ポスト)の臨時代理に中将で就任し、作戦全般の見直し時期にあって新戦略や作戦計画立案をやり遂げた
●前職のTRADOC司令官として、イラク・アフガンの教訓整理や教訓を生かした若手士官や兵士の今後の育成指針作成に着手した。また将来の陸軍のあり方検討にも取り組んだ。

共に確認した取り組むべき課題
●同大将をオバマ大統領に推薦する前、私は彼と面談し、先日陸軍士官学校で取り上げたのと同じ質問を投げかけた。
一つは、イラク及びアフガン後、これらの戦いで得た貴重な経験を継承しつつ、如何に将来の脅威に対応する適切なサイズの陸軍にするか
もう一つは、実戦で鍛えられた士官が戦場から戻った後、どのようにして優秀な彼らを動機付け任務を与えて陸軍にとどめ、陸軍の将来をリードする人材として育てるか、である。

同大将への期待は大きく・・
●訓練ドクトリンコマンド司令官時代に同大将が始めた「陸軍戦力デザイン研究」は、私が挙げた課題への回答を必ずや見つけてくれるものと確信している。
●同大将は、将来の複雑で予想不可能な世界が、より柔軟で打たれ強い若き士官を求めていることを良く理解している。
●言い換えれば陸軍は、若い兵士の人格と専門能力を伸ばすことに、継続して取り組まねばならないのである。デンプシー大将は、これまでの経歴で示した情熱を、陸軍の次世代育成と陸軍の変革にも向けてくれるであろう。

●「マーティー(同大将のこと)、君は正にsoldier’s soldier(兵士のための兵士)である。陸軍はその力があるものの手にゆだねられたんだ。」
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armdempsey3.jpgゲーツ長官はデンプシー大将をとても高く評価しているようです。奥様(写真中の中央)も品があってすてきな方のようですね・・・。
しかし・・「soldier’s soldier」とはなかなか素敵なほめ言葉ですね。

スピーチの中でゲーツ長官が触れたウエストポイントでのスピーチについては、以下の過去記事をご覧下さい。
「前:陸軍士官候補生へ最終講義」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-1
「後:陸軍士官候補生へ最終講義」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-2

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バランスの取れた軍を [ゲーツ前国防長官]

空軍の歴史の大部分は空中戦と爆撃機の能力で彩られているが、ベトナム戦争以来、空軍パイロットは空中戦で相手から撃墜されていない
我々は統合で調達することがほとんど無い

Iraqlunch.jpg7日からサウジ、UAE、イラクを歴訪しているゲーツ長官ですが、8日イラク北部のモスルに駐留する米陸軍の第4助言支援旅団(AAB:Advise and Assist Brigade)を訪れ、兵士たちに語りかけました。身近な話と軍の将来を憂いて・・・。久々のゲーツ節を米国防省HP記事からご覧下さい。

ちなみに、この助言支援旅団、イラク軍や治安機関が一人立ちできるように教育訓練する事を担当する部隊のことですが、「敵を殲滅することだけを訓練してきた部隊に、相手をなだめてほめて育てることが可能か?」とのゲーツ長官の肝いりで、2008~09年に設けられた新時代のバランスある軍の姿を象徴する部隊です。

まず、兵士に取っての直近問題
●海外派遣と海外派遣の間に本国の部隊で過ごす期間(dwell time)を、今年も末までに2年間に延長したいと考えている。
●これにより、ここ10年間の頻繁な国外駐留によって犠牲になってきた多用な訓練が可能になり、家族等と共に過ごす時間も増えるだろう。

米軍の目指す方向
Iraqtalk.jpg●私が皆と確認しておきたいのは、イラクから、またアフガンから撤退した後も、そこで学んだことを忘れてはならないと言うことである。そしてまた、戦車や大砲を用いた訓練にも取り組まなければならない。
海軍は空母が支配し、戦闘機と爆撃機が空軍を支配し、戦車が陸軍を、そして着上陸用車両が海兵隊を支配しているのが実態である。
皆に気づいて欲しいのは、21世紀には、例えばフルだ・ギャップを侵攻するソ連軍のような敵と対峙することは起こりそうもないことである。陸軍は全てのスペクトラムの能力を備え、異なる全ての任務に対応しなければならないのである。

別の例を挙げよう。空軍の歴史の大部分は空中戦と爆撃機の能力で彩られているが、ベトナム戦争以来、空軍パイロットは空中戦で相手から撃墜されていない
●一方、米空軍は昨年アフガンで37000ソーティーの戦闘支援飛行を行っている。そして傷ついた9700名の陸空海兵隊兵士を前線から救出している。これは極めて重要な任務である。
空軍には忘れないでいてもらいたい。空中戦能力や爆撃機も重要だろう。しかし戦闘支援任務も忘れるなと言いたい。全ての任務を遂行できるバランスのとれた能力を備えよと。

Iraqpress.jpg●これらバランスのとれた能力を備えることの重要性と同時に、それを如何に統合で進めるかが又重要である。
●ここイラクやアフガンでは、米軍史上無かった統合運用が行われている。しかし調達面での統合が進んでいない。我々は統合で調達することがほとんど無い。厳しい予算状況の中、調達分野でも統合を進めなくてはならない。
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米軍の目指す方向に関しては、2009年Jan/Febのフォーリンアフェアーズ誌に掲載されたゲーツ長官の論文「A Balanced Strategy」を是非ご覧下さい。
それと・・本ブログの「ゲーツ国防長官」カテゴリー(特に、各種講演やスピーチ)をクリックして確認してください。

それにしてもアメリカの国防長官は多忙です。

ゲーツ長官改革関連
「ゲーツ改革のまとめ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17

「Transformerゲーツ長官」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-17-1
「ゲーツ長官が空軍へ最後通牒」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-17
「空軍は単に飛んでいたいのか」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02
「海軍海兵隊とも全面対決へ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-04-1
「(追加)海軍海兵隊とも全面対決へ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-07
「14兆円精査案で政府議会と」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-07
「兵士と将来に9兆円捻出」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-29

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対リビア作戦を議会で語る [ゲーツ前国防長官]

libyagates.jpg31日、ゲーツ国防長官とマレン統合参謀本部議長は上院軍事委員会の丸一日審議で証言し、対リビア作戦の状況と見通しについて語りました。米国防省HP記事より

対リビア作戦については最終的に幾つかの結果が考えられ、その一つが民主的な国家である。その選択はリビア国民にゆだねられるべきであり、米国が追うべき責任ではない。また他にリードをとる国があるだろう。」と述べ、国家再建ミッションに関与すべきでないとの姿勢を明確にしました。

また同時に、「アフガンの他に、日本でも1.8万人が任務に就いており、現状でも予算について議会の協力が必要な状況である」と苦しい台所事情を議会重鎮に訴えることを忘れませんでした。

軍事関連の重鎮が居並ぶ軍事委員会で・・・
libyasanate.jpg●NATOが作戦の指揮を執ることになっても、引き続き米空軍機は要請があればいつでも出撃できる態勢にある。ここ2日間は、悪天候のため航空作戦を実施できなかったため、カダフィー側が地上で反撃を試みている恐れはある。
●米軍のリビアでのミッションは、緊急避難的に、カダフィーによるリビア市民攻撃から国民の生命を守ることにあって、この部分の作戦は完了し成功した。

アラブ諸国を含む20カ国以上の参加を得た多国籍軍は、国連決議1973を遂行するために作戦に参加し、米国軍が欧州や中東諸国軍と良好な関係を維持していることを示した。またスウェーデン等が今後の参加に前向きである

マレン議長は、「どの国もどの軍も、このような作戦を一国では実施できない」、「これは意志ある者の集まりでなく、能力を備えた者の(全ての)集まりである」と米一国の作戦でない事を強調しました。またNATOに指揮が移っても、作戦に影響を与えることは全くない、と断言しました。

作戦の拡大に関与しない
libyamullen.jpg反政府側を支援することは新たな決断を要する作戦である。我々は少しばかり反政府の指導者を承知しているが、彼らがどれほど反カダフィーに取り組んでいるかに次いで十分知らない
●また反政府側に武器を提供したり、組織的訓練や指揮統制の支援をすることはより複雑な判断を必要とすることである。私とオバマ大統領は、そのつもりはない

●議会の皆さんは何度も作戦拡大の可能性について質問されるが、私もマレン議長にもリビア政治体制の変更にまでミッションを拡大する考えはない。我々はカダフィー軍への空爆を続け、補給を断ち、逃げ出すしかないと思わせるように攻撃を続ける

私はリビアで作戦を逐次拡大することがないよう、肝に命じている。「我々は今、財政上の問題を抱えている。これ以上を依頼されたら本国に問題を持ち込むことになる。」、「アフガンの他に、日本でも1.8万人が任務に就いており、現状でも予算について議会の協力が必要な状況である

カダフィー後が一番の課題
libyatomahawk.jpgリビアでの本当のチャレンジは、カダフィー後にリビアがどのような状況になるかである。米国とNATOは、リビアへの影響力について過信すべきでない
●「対リビア作戦については最終的に幾つかの結果が考えられ、その一つが民主的な国家である。その選択はリビア国民にゆだねられるべきであり、米国が追うべき責任ではない。また他にリードをとる国があるだろう。」
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libyaavianoitaly.jpgベトナム戦以後、米国は次に起こる戦いを予期できたことは一度もない・・・と語り、多様な戦いへの備えを主張、「もう一度湾岸戦争型の通常戦争を」と夢見る軍人を治療不可能な「次の戦争狂」と切り捨ててはばからないゲーツ長官の議会証言でした。
写真左は、イタリアのAviano空軍基地に展開した米兵士の体育館宿舎

写真下左:作戦参加のカタール軍機 下右:出撃準備のハリアー攻撃機
libyaqatar.jpglibyaharrier.jpg






libyachart.jpg

統合参謀本部による対リビア作戦の会見模様


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露海軍大学でCIAの思い出を [ゲーツ前国防長官]

gates-Russia.jpg中東歴訪前の21日、ゲーツ国防長官はロシアを訪問してメドベージェフ大統領等と会談した後、サンクトペテルブルグのロシア海軍アカデミーの学生を対象とした講演を行いました。
ロシア軍への主要なメッセージは、アフガン物資輸送陸上ルート(NDN)の活性化、対イラン政策での協調、新START条約の相互履行、各種軍事交流の更なる促進に関する呼びかけでした。

しかし、まんぐーすが興味を持ったのは、講演冒頭のCIA長官時のエリツィン大統領とのやりとり回想部分や、巨大な官僚組織である軍組織を改革していく難しさをセルジュコフ国防相と共有したとの下りです。
軍組織は、放置すると昔ながらの心地よい習慣に回帰する」と述べ、変化を拒む軍事組織を嘆き、そして警告を発しています。 久々のゲーツ節をお楽しみ下さい。
トランスクリプト米国防省HP記事からです。

エリツィン大統領との思い出
1992年にCIA長官として当地を訪問して以来のサンクトペテルスブルグである。
●92年に訪問の際、1970年代に米国が巨費を投入し、敵潜水艦の能力調査のために必死で引き上げた当時最新の露ゴルフⅡ級潜水艦から発見された6名のソ連海軍乗員の遺体と国旗、加えて海底の映像にソ連国歌を加え、25年ぶりに祖国のエリツィン大統領に手渡した。映像は数ヶ月後にロシアのTVで放映された。
92年の訪問は、厳しい冷戦時の対立から、ロシア情報機関とCIAとの新たな脅威に立ち向かうための協力関係を模索するモノであった。
●対テロ、兵器の拡散防止、麻薬流通阻止等々が話題であったが、20年後の今、それらの課題が現実のものとなっている。

共に21世紀の軍事組織を考察
AcademyRussia.JPG●また、米露両国軍が、20世紀の脅威でなく、21世紀の脅威に対応できるよう変化するために厳しい取り組みを行っている点でも同じである。
21世紀の軍事組織は、機敏で全スペクトラムの脅威に対処できるように柔軟でなければならない。ならず者国家やテロリストは、これまでの手段によらず、戦争法規を守らず、一般市民の命に配慮無い相手であり、先のモスクワ空港爆破犯のような者たちである。

●米国防長官として、私は全軍を不正規戦や非対称戦に対応できるように全力で取り組んできたが、一度この戦いが終われば、この巨大な軍事官僚組織が、昔ながらの心地よい習慣に回帰するのではないかと懸念している。
●また軍事官僚制の2つの病巣、つまり兵器システムの継続的価格高騰と納期の遅延、を危惧する点でも、セルジュコフ国防相と意見が一致したところである。

安保の課題と両国の協力
●両国が直面する21世紀の安保上の課題は、両国軍に同方向の変化をもたらすのみならず、新たな協力機会を生み出している。例えば・・・
--アフガンへの地上物資輸送を促進するため、北部物資輸送ルート(NDN: Northern Distribution Network)での協力拡大
--制裁や交渉を通じて、イランによる核兵器追求の阻止
--新START条約を実効あるものとするため、検証と透明性確保に双方が努力
--昨年9月にワシントンでセルジュコフ国防相と合意した国防関連ワーキンググループの枠組み関連。軍の教育訓練、IED(簡易仕掛け爆弾)対処、NDN協力強化、海洋活動や海賊対処の協力等々
--ミサイル防衛分野での透明性確保、演習への取り組み

「米露が関係改善へ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-16
「ロシアの動きを見極めて」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-22

最後に・・・
gates-russiaPR.JPG●将来の軍を担う皆さん、仮に私がCIAに入った1967年頃、私の最後の仕事の一つがロシアとの関係強化に尽力することになろうとは夢にも思わなかったし、世界中で米国の4軍が現在行っていることを想像することなど到底出来なかった。
●将来の軍事組織は皆さんに掛かっている。皆さんの努力と決断が歴史を作っていく
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米国内で米軍の改革に向け孤軍奮闘のゲーツ長官は、かつての宿敵ロシア軍の将来のリーダーたちに自らの考えを訴え、改革への取り組みと協力を求めたのでした
トランスクリプトを読んで、しばし地震の惨状からリリーフされました。

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後半:陸軍士官学校で最終講義 [ゲーツ前国防長官]

現場で多くの部下の命を預かり、また裁量範囲の広い現地プロジェクトに取り組んだ発想豊かな若手士官が、本国で過去のパワポの微修正や事務的な恒常業務をやらされている現実が私を震撼させる

westgates2.jpg昨日に引き続き、2月25日にゲーツ国防長官が陸軍士官学校で行った「最後の講義」の後半をスピーチ原稿からご紹介します。
昨日は、「どう訓練し何を装備するか」と「陸軍の文化を現実の戦略環境に如何に適応」について、本日は「最大の懸念、昇任や補職制度を変えられるか」と「士官候補生に激励と感謝を」の部分です。

3:最大の懸念、昇任や補職制度を変えられるか
●私の最大の懸念は陸軍の凝り固まった官僚的で制度的な人材配置と評価制度を、戦場経験豊かな若くて優れた人材を育てるべく、陸軍自らが改革していくことが出来るかにある

陸軍はイラクやアフガンへの部隊のローテーションに手一杯であり、若手士官も目前の任務を遂行するのみ精一杯である。
westgates.JPG●また一方で、現場で多くの部下の命を預かり自身の采配をふるった現場や多額の資金を自ら運用して現地プロジェクトに取り組んだ経験を持つ若手士官が、本国の部隊で過去のパワポスライドの微修正や事務的な恒常業務をやらされている現実は私を震撼させる
●あるレポートによると、現場から帰国した中堅若手士官が陸軍を去る大きな原因の一つは、個人の業績を評価せず、皆を同一に評価するやり方にあるという。

●数十年間に渡り公的機関を率いた経験からすると、組織の上位2割と下位2割に注意を特に払う必要がある上位2割には責任とチャンスを、下位2割には適切に評価され淘汰(transition out)されるよう注意しなければならない。
●大組織にはびこりがちなリスクを回避し過ちを避ける文化と戦うため、より改善改革を評価し、個人に注目する士官の評価制度が求められている

陸軍の文化を変えるには、「経歴管理や昇任評価基準を変えるのが一番効果的」との研究がイラク戦争経験者によって成されているし、アフガン米陸軍の指揮官からも「グーグルと人材獲得を競い合って優秀な人材を確保するには、陸軍の評価システムを改革することがmust doである」との意見が提出されている。

士官候補生に激励と感謝を
●ここまで陸軍が抱える課題や若手士官の欲求不満について触れたが、それでも私は、君たちが陸軍士官の道を選んだことが正しい決断だったと信じている
westgates3.JPG困難や苦悩、犠牲は現実のものであろう。しかし君たちには限りなく大きい機会が与えられる。それは多くの人命を預かると言ったことだけではなく、その任務や決断が歴史の方向をも変えうる点である。
●また、君たちが指揮しリーダーシップを発揮し、責任を負い、自己を抑制する時、君たちの可能と思う領域は更に拡大されるのである。

より安全で、より快適な、そしてより高給な職ではなく、陸軍士官の道を志してくれたことに感謝する。私が国防長官である限り、私は君たちが誇りを持って任務に就き、無事帰国することを唯一の祈りとし、最善を尽くす。
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「空軍士官候補生へ最終講義」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
「陸軍の明日を指揮幕僚大学で」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-08

「前:陸軍士官候補生へ最終講義」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-1

現在のペンタゴンや各軍種の参謀本部は、主に戦争準備のための機構になっており、戦争遂行用にはなっていない」と士官候補生の前で言い切るゲーツ長官ですが、困難な時代に志願して難関の士官候補生になった若者へのメッセージには「凛」とした使命感と責任感が漂っています。

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前半:陸軍士官学校で最終講義 [ゲーツ前国防長官]

最も可能性のあるハイエンドの紛争が生起したら、それは主に海軍と空軍が関与する交戦になるであろう現実に、陸軍は向き合うべきだ
仮に、アジアや中東やアフリカへ、大規模な地上部隊を派遣するよう大統領に進言する国防長官が将来現れたら、頭の検査を受けさせるべきだと個人的に思う

westgates.jpg紹介が遅くなりましたが、2月25日ゲーツ国防長官がウエストポイントの陸軍士官学校で「最後の講義」を行いました。
昨日ご紹介した空軍士官学校に先立って行われたモノですが、究極的に変化を促進する姿勢に代わりはありませんが、地上で10年以上実戦に従事している陸軍士官候補生には、ひと味違ったアプローチでした。

かなりの量のスピーチですので、本日と明日の2回に分けてスピーチ原稿からご紹介します。本日は「どう訓練し何を装備するか」と「陸軍の文化を現実の戦略環境に如何に適応」について、明日は「最大の懸念、昇任や補職制度を変えられるか」と「士官候補生に激励と感謝を」の部分です。

前振り
●陸軍には膨大な課題と日々取り組んでいる。それは家族のケアであり、負傷兵士のケアであり、PTSへの対処であり、兵士の素行問題であり、下士官の強化であり、将来に備えた訓練と装備品の獲得と予算の確保でもある。
●本日は、、今の戦いによって最も変革し、君たちが卒業後所属する陸軍の3つのチャレンジについて話をする

1:どう訓練し何を装備するか
陸軍の官僚的機構は、将来のハイエンドな紛争に備えるために前世紀の教訓から学ぼうとする傾向がある。
●我々は将来の紛争が、複雑で予期不可能であることを知っている。しかし我々は将来の紛争を具体的に知ることが出来ない。実際、ベトナム戦以降で我々が将来の紛争を予期できたことは一度もない。グレダナ、パナマ、ソマリア、ハイチ、クゥート、イラクでは、その1年前でも夢にも考えなかった。

westgates2.jpg●最も起こりえそうなハイエンドの紛争が生起したならば、それは主に海軍と空軍が関与する状況になるであろう現実に、陸軍は向き合うべきだ
●もし仮に、アジアや中東やアフリカに大規模な地上部隊を派遣するよう大統領に進言する国防長官が将来現れたら、頭の検査を受けさせるべきだと個人的に思う。

決して国家建設部隊やゲリラ対処部隊になれと言っているのではない。しかし、大規模作戦を前提とした現装備定数や規模については、ペンタゴンや議会での議論の対象になるだろう。
●重要なのは、地域の問題をコストの掛かる米軍の介入を必要とするような大規模紛争に発展させないことである。

2:陸軍の文化を現実の戦略環境に如何に適応
●イラクやアフガン戦争の初期から、現場の兵士や若手士官はネットやSNSを用いて情報や教訓を共有し、更に本国の準備部隊と意見交換した。このような創造的な姿勢により、AAB(Advise and Assist Brigades)のドクトリンは数ヶ月で完成した。
●しかし、これはペンタゴンや米本土部隊では時間の掛かることである。今後、陸軍を多様な事態や環境に適応できるよう教育訓練するには、どのようにすべきであろうか。外国軍の教育を米陸軍部隊のドクトリンとどのように関連づけるべきであろうか

westgates3.jpg陸軍には起業家的精神を持ったリーダーが必要である。そしてそのようなリーダーのみが、新時代のフルスペクトラム紛争を勝ち抜くことが出来る。
●そのため君たちは、これまでの「約束された道(beaten path)」だけでなく、陸軍は勧めないかも知れないがシンクタンク、議会フェロー、他省庁等の勤務を目指す事も考えるべきだ。他の言語習得も私は勧める。

●君たちのすぐ先輩の若手や中堅士官は、歴史上最も実戦経験豊富な士官たちであり、イラクやアフガンが「大尉による戦い」と言われるように、彼らの上級者より経験が豊かな面もある。これら若い世代の多様な経験は、今世紀の複雑な紛争への対処に欠くことが出来ない
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明日は「最大の懸念、昇任や補職制度を変えられるか」と「士官候補生に激励と感謝を」の部分です。
「後:陸軍士官候補生へ最終講義」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-2

しかしこのスピーチ、かなりのインパクトがあったようで、3月4日の空軍士官学校でのスピーチの冒頭では「陸軍士官学校での話を誤解している人がいる」との切り出しから話が始まっています。

「空軍士官候補生へ最終講義」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
「陸軍の明日を指揮幕僚大学で」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-08

「ゲーツ改革のまとめ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17
「Transformerゲーツ長官」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-17-1

「読売も社説:陸自削減を」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-21
「国防より組織防衛」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-16

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空軍士官学校で最終講義 [ゲーツ前国防長官]

私が国防長官を辞したら、「空軍の本来の姿に戻れる」と考えている者が一部にいる。しかし、決してそうはならない。

AFAgates2.jpg4日、ゲーツ国防長官は空軍士官学校で「最後の講義となる」と明言し、これまでの主張を総括する形で将来の空軍リーダー候補生達に語りかけました。
先月25日には陸軍士官学校で同様の講義を行っており、近々海軍士官学校でも行われるのでしょう。米国防省HP記事及びスピーチ原稿より

本ブログの読者の皆様には聞き慣れたフレーズが並びますが、久しぶりにゲーツ節を「ご堪能」頂きましょう

現状をどう見るか
4軍全てに、20世紀の世界観が根強く残っており、変化を妨げている。変化はどのような大きな組織にとっても容易いモノではないが、最近10年間の戦いが伝統的な戦力にフィットしていないことは明らかである。
●米軍は戦闘で40年間航空機を失っておらず、朝鮮戦争以来、敵の攻撃を受けていない。しかし、21世紀の制空権はこれまで米軍が当然と考えてきたモノとは全く異なるであろう。
米空軍は、空対空戦闘と戦略爆撃に捕らわれすぎており、他の重要な任務や能力を無視しがちである。
●ある意味で空軍は、その成功の犠牲者とも言える。

新たな能力への抵抗
AFAgates3.jpg例えば私がCIA長官だった1990年代前半、私はイスラエルが無人機を偵察等に有効に使用していることを見聞きしていた。そこで私は、空軍と共同出資で柔軟性があり可能性も持った無人機の導入を働きかけたが、1992年に米空軍はこれを拒んだ
●しかし私は3年前、無人機をISR等アセットとして導入するため、今回は牙をむいて4軍と立ち向かった
私は無人機によるリモコン戦争が将来の戦いを決するなどとは考えていない。時代にあった最適なバランスを、柔軟に追求すべきだと述べているのだ。

空軍の新たな緊要分野
●2010年、CASは前年から2割増加した。また無人機ISR飛行は07年の3倍、08年の2倍となった。物資の空中投下は09年の2倍となり、これらへの現場指揮官の要求は日々増加し続けている。
人命救助(PR:personnel recovery)のため、昨年は9700ソーティーの飛行が行われ、生存に直結する負傷後1時間以内での病院への搬送が地上部隊を支えている。
私が国防長官を辞したら、「空軍の本来の姿に戻れる」と考えている者が一部にいる。しかし、決してそうはならない。現場のニーズや世界情勢を考えれば、それは自明であろう。ISR、CAS、PR、空中投下や空軍兵士が地上で行っている多様な任務は、今の戦いを越えて求められるモノだろう。
●また、サイバーや宇宙と言った分野の重要性を、将来の軍のリーダーはしっかり理解しなければならない。

拒否戦略への対応(A2AD対応)
中国のように、対艦を含む多様な弾道ミサイルによる長距離精密攻撃力、強固な防空組織、静粛な潜水艦をそなえた国や、これに続くイランや北朝鮮などの国が冷戦以来の米国の移動や戦力投射能力の優位性を脅かそうとしている
●空軍は米国の優位性維持をリードする役割を担っている。海軍とともに検討されているAir-Sea Battle Conceptは、21世紀前半の抑止力たる潜在力を持っており、統合力の発揮が期待されている。例えば、海軍が空軍基地の防空に当たり、空軍爆撃機が潜水艦の作戦を支援するなどである。

AFAgates.jpg厳しい財政下でも、2012年度予算案に大統領は、長距離攻撃能力(a joint portfolio of long-range strike systems,including a new, optionally manned, nuclear-capable, penetrating Air Force bomber)に投資している。
●またF-22にはF-35の技術を利用して妨害に強いレーダー技術で近代化を計画し、F-15のレーダーも改善を計画している。航空戦力の屋台骨となる2400機のF-35には25兆円をも投資するのだ。
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2月25日の陸軍士官学校での講演を読んでるうちに、空軍士官学校でも講演がありました。花粉症との戦いの中、この精力的なペースにはついていけません

陸軍士官学校に関する米国防省HP記事には、「今年後半に退任することから、今回が最後の講演」との記述がありました。2012年度予算が落ち着くまでは頑張ってもらえるようです。
陸軍士官学校での講演には、新たな視点も述べられていますので、後ほどご紹介しましょう。いつになるやら・・・

士官候補生への講演
「海軍士官候補生には・・・」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-09
「士官候補生に語るシリーズ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-10
「空軍士官候補生に厳しく語る」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-06

学生の卒業式や少年への講演
「CIAでの失敗を高校で」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-25
「大学で「公への奉仕を」」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-22
「ボーイスカウトの精神を」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-29
「ROTC学生へ 4軍が抵抗」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07
「空軍は単に飛んでいたいのか」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02
「特殊部隊にもっと女性が」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02-1

「Air-Sea Battleの状況」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-23-1 「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18 「Air-Sea Battleの起源」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-24-1
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12年度どころか11年度の議論 [ゲーツ前国防長官]

gates2012BGT.jpgオバマ大統領による2012年度予算案の提出を受け、14日午後2時(日本時間15日午前5時)からゲーツ国防長官が国防省分の予算案について説明する会見が行われました。

しかししかし・・・。ゲーツ長官の口から出たのは「2011年度予算の不足」の訴えと「F-35の第2エンジン絶対阻止」の決意表明でした。
トランスクリプトはこちら

2011年度予算の不十分な配分について
●オバマ大統領は2011年度国防予算に5490億ドルを要求したが、議会による決議(continuing resolution)により、現状のままでは5260億ドルしか国防省に配分されないことになってしまう。
●もう既に新年度に入り5ヶ月が経過した段階で、230億ドルもの削減は任務遂行に破滅的な影響を及ぼす。厳しい経済状況から全額は困難としても、せめて5400億ドル無いと国家安全保障や世界各地における国益維持が危機にさらされる。

●今日この問題を取り上げたのは、最近、現実世界からかけ離れた単純な数式に基づく国防予算の大幅削減論がまかり通っているからだ。軍の能力維持やリスク、国益維持に必要な能力に関する真剣な考察無しに進む議論に強い懸念を覚えるからだ。

F-35の第2エンジン問題
●昨年5月28日オバマ大統領が発出した声明にあるように、必要のないF-35第2エンジン研究開発の中止を議会に求める大統領は拒否権を発動することを明確に表明している。
F-35BDT.jpg●議会の曖昧な指示により、納税者の貴重な税金が毎月2800万ドルもこの開発につぎ込まれているのだ。
私はあらゆる法的手段を用いてもこのエンジン開発を中止させたいと考えている。そうでなければ30億ドルもの税金が無駄になり、優先度の高い事業が行えなくなる。
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BGTbrief.jpg正直なところ、2011年度予算に関する部分はよく理解していません。米国の予算制度を十分理解していないので・・・
2012年度予算に関しては、ゲーツ長官の後で担当の国防省幹部と中将が補足会見を行っています。その内容がはっきりしないのでこの辺でご勘弁を。

経費縮減関連
「14兆円精査案で政府議会と」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-07
「兵士と将来に9兆円捻出」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-29
「11万人削減案を長官へ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-26
「国防省コストカット」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-30-1

「ゲーツの取得開発改革指針」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-15-1
「ゲーツ改革のまとめ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17

「ゲーツ長官が国防省と議会にも宣戦布告」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-09
「(補足)アイゼンハワー・ライブラリ演説」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-11

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