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(やっと)日英伊戦闘機GCAP開発の管理体制に合意 [安全保障全般]

2022年12月の3か国共同開発合意から1年かけ決定
本部を英国に設置、CEO2名(政府代表と企業代表)が並立リード
政府代表CEOに日本人、企業代表CEOを伊から

GIGO.jpg12月14日、2022年12月に日英伊3か国が共同開発で基本合意した次世代戦闘機GCAP(Global Combat Air Program)に関し、1年間の長きにわたる協議を経て、プロジェクト組織の大枠となる「GIGO:GCAP International Government Organization」を規定した合意文書に、3か国国防相が東京で署名しました

プロジェクト組織を示したGIGOの細部は報道からは不明ですが、英国に置かれるGIGOの2つの本部(headquarters)は2名のCEOによって率いられ、2名のCEOはそれぞれ「政府組織:governments’ GCAP organization」と「軍需産業組織:industrials’ GCAP organization」を並列の関係で統括するとのことです

GIGO2.jpgそして「政府組織CEO」は日本が差し出し、「軍需産業CEO」はイタリアが差し出すことに決定したとの声明文が出された模様です。ただし、具体的に英国の何処に2つの本部(headquarters)が置かれるのか(別々の場所なのか、同居なのか)、誰が2名のCEOに就任するかなどは発表に一切触れておらず、戦闘機と言う大きな金が動き軍需産業界への広がりも大きい共同開発プロジェクトが、一筋縄では進まない重いプロジェクトであることを伺わせます

2022年12月に基本合意し、2035年までに次世代戦闘機GCAP(以前は英伊スウェーデンによるTEMPEST計画と呼称も、スウェーデンは2023年初に脱退し、現在はGCAPと呼称)を開発配備する予定の本プロジェクトですが、2023年3月の3か国協議前には、英と伊国防相が日本に対し、「一度決めた以上、やり通せ」「開始後におじけ付いて逃げるな」「政治的にも、誰かが抜けることはできない」等々と記者団の前で語るなど、やくざ世界の様相を呈しています

GCAP Industry.jpg今回の組織(GIGO)合意では、「政府組織」に関する発表はほとんどないようですが、「軍需産業組織」については、英BAE Systems, 伊Leonardo と日本の三菱重工が中核企業となってリードすることが規定され、9月に決定された企業協力合意に基づき「将来のGCAP開発製造にかかわる企業連合に関する協議は継続中」「MHIとBAEが東京で最近協議を行った」と発表された様ですが、既に約1000社&9000名以上が関与することが現時点で判明しているようです。

また不確かながら、日英伊の3か国以外にも共同開発国を広げる可能性もささやかれており、2023年初にはサウジ加入の可能性が報道された様ですが、これに対しては日本が拒否反応を示していると当該記事は伝えていたようです
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GCAP2.jpg今回のGIGO合意に関し英国防省は、「共同開発フェーズ:joint development phaseは2025年に開始する予定だ」との声明を出しており、プロジェクトが本格稼働するまでに、2024年1年間かけてまだまだ詰めるべき点が「山積み」であることが伺えますが、このような「海千山千」のロビイストやコンサルタントや政治屋や政治家が暗躍しそうな「魑魅魍魎」の世界に日本が首を突っ込み、貴重な人材を投入する意味が戦闘機にはあるのでしょうか?

2月に当時の英国防相が「政治家と、軍人と、軍需産業関係者が共に協力して取り組むことが不可欠である。あらゆる機会をとらえて3者が一堂に会して協議することが不可欠」と日本に釘を刺していましたが、公明党が今ごろになって共同開発に反対姿勢を露わにし、早くも国内体制の足元が揺らぎ始めているグダグダですが、「政府組織」を束ねる日本人CEOのご苦労を生暖かく見守らさせていただきます。

英伊+日本のGCAS開発
2023年3月:日本で3か国協議
「英伊が日本恫喝:逃げるなよ!」→https://holylandtokyo.com/2023/02/14/4299/
2022年12月:英伊日3か国でGCAP(Global Combat Air Program)合意
「伊が訪日し協議」→https://holylandtokyo.com/2022/09/27/3699/
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11

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研究者投稿:極超音速兵器を過大評価するな [安全保障全般]

「Masaoさん」による極超音速兵器探知センサー検討
CSIS研究員が12月18日発表の同兵器対処宇宙センサー検討

極超音速物体の表面が高温の空気流と反応し放出される「イオン、ガス、粒子、その他の化学副産物の航跡」を検出する高周波電磁波センサーや紫外線センサー
https://www.airandspaceforces.com/hypersonic-missiles-tracking-space-sensor/
レポート現物→https://www.csis.org/analysis/getting-track
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終末の大幅減速でPAC-3やSM-6で迎撃可能性大
同兵器の迎撃回避機動は大減速と射程減を伴う
技術未成熟&開発製造高価で費用対効果を要再考

Hypersonic Glide B3.jpg12月8日付Defense-Newsが、極超音速兵器に関するMITとスタンフォード大学研究者2名の意見投稿を掲載し、同兵器装備化のための開発や同兵器迎撃システム開発に多額の経費が投入され、今後も更なる投資が予期されているが、シミュレーション分析では同兵器終末段階の大幅減速でPAC-3やSM-3で迎撃可能性が高く、迎撃を難しくする同兵器の機動性も速度や射程の大きな代償を伴うものであると、世間一般の「過剰評価」を戒める投稿内容を紹介しています

更に2名の投稿者は、同兵器の飛翔速度維持し射程距離を延ばすためのスクラムジェット技術には未成熟部分が多く、同推進装置に必要なエンジンと燃料は同兵器全体を大型にして重量を増やし、発射時のブースターを更に大型化する必要があるなど、兵器全体の信頼性確保を困難にする要素にあふれており、また更なる高速化は兵器の耐熱性向上の課題も抱えることになることから開発費高騰も予期され、同兵器関連の費用対効果を再検討する必要があると主張しています

Army hypersonic4.jpg寄稿者の一人であるMITのDavid Wright客員研究員(物理学博士)による意見投稿は、5月末にもDefense-Newsに掲載され末尾の記事でご紹介していますが、今回はスタンフォード大学のCameron Tracy研究員(材料工学博士)も加わって、シミュレーション試験や各種分析を加え、巨額投資の費用対効果を疑問視し、MaRVs弾道ミサイルが多くのシナリオ下で費用対効果で上回ると訴えています

8日付Defense-News掲載の寄稿の概要
●音速の 5 倍以上で大気中を滑空する極超音速兵器開発推進の主な動機は、相手のミサイル防衛装備システムへの対応である。国防省高官の中には「南シナ海で活動する米海軍艦艇は中国の同兵器に対し無防備に等しい」と警鐘を鳴らしている一方で、3月には国防省が「最新装備のイージス艦は同兵器に一定程度対処可能だ」とも発言している。我々は、何が真実で現実なのか、何が可能で不可能なのか理解する必要がある

HAWC3.jpg●例えば我々の最近の分析によれば、一般に流布する情報とは異なり、同兵器が飛翔途中でMach 10-12に加速しても、最終段階で地上目標に大気中をダイブする際の空気との摩擦で大幅に減速し、最新の米軍PAC-3やSM-3で十分に迎撃可能な状態になる。この点はウクライナに提供されたPAC-3が、露製の極超音速兵器Kinzhalの迎撃に多数成功している結果からも証明されている。
●南シナ海上の米海軍艦艇も、最新のイージスシステムを装備していればウクライナ軍と同様の発見・追尾・迎撃対処が可能であり、米ミサイル防衛庁が公開している艦艇MDシステム解説アニメ映像(https://www.dvidshub.net/video/801628/mda-hypersonic-concept)でも、SM-6で迎撃可能なことを説明している

ARRW.jpg●同兵器の迎撃を困難にするためには、更に同兵器の飛翔速度を上げる必要があるが、これ以上の飛翔速度アップは同兵器の大気との摩擦熱を増大させることになり、同兵器製造上の大きなネックとなる可能性が高い
●また同兵器は、飛翔途中に大気中で柔軟に飛翔コースを変更可能で、敵の迎撃を困難にすると吹聴されているが、我々の分析では、仮にマック10の同兵器が30度進路を変更するだけで、速度がマック6まで大気摩擦で減速し、射程距離も4割以上ダウンすることが計算で示されている。つまり、軌道上の進路変更は、迎撃側に有利に働く可能性が高い

HAWC5.jpg●最終段階での同兵器の飛翔速度を確保するため、同兵器にスクラムジェットを搭載したタイプの開発も進められているが、スクラムジェットは未成熟な技術である。また、同兵器の弾頭部に付加するスクラムジェット(エンジンと燃料タンクで構成)は兵器重量を増やし構造を複雑化させ、また発射時にスクラムジェット点火に必要な初速を稼ぐブースター部の大型化も必要なことから、同兵器全体の信頼性リスクも増え、開発費用も含め高リスクな開発案件となる

●極超音速兵器と弾道ミサイルを比較すると、弾道ミサイルは極超音速兵器と同等かより早く発射準備が可能で、弾頭に終末段階で機動可能なMaRVs(maneuverable reentry vehicles)を用いれば、大気圏突入後に数百キロ単位の目標修正も可能で、極超音速兵器と同程度の誘導精度も確保できる
GPI MDA2.jpg●我々は、多くのシナリオにおいて、また多くの評価側面で、極超音速兵器よりMaRVs弾道ミサイルが優れていると評価している。最近の米議会Budget Officeの分析でも、MaRVs弾道ミサイルは1/3の予算で極超音速兵器の効果を確保できるとの結果が示されている

●極超音速兵器を巡り、中露等との軍拡競争の緊張が高まったり、同兵器開発や迎撃システム開発予算が膨らむ傾向にあるが、一般に吹聴されているような性能・能力・効果を同兵器がもたらさず、国家安全保障や国益確保につながらないと我々は考える。米国は同兵器への多額の投資の費用対効果について、事実と現実に目を向け、再考すべきである
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GPI MDA3.jpg今年3月15日に、米ミサイル防衛庁MDAのJon Hill長官が講演で、極超音速兵器の滑空段階での迎撃ミサイル(GPI:Glide Phase Interceptor)開発のため、日米共同開発に成功した弾道ミサイル防衛迎撃ミサイル「SM-3 block IIA」の経験を活かし、日本との共同開発が可能かどうか日本側と協議を開始していると語っており、その後どうなったか把握していませんが、とっても心配です

グローバルホークRQ-4やオスプレイ、そして日本の戦闘機族の下支えもあって引き受けたF-35も含め、日米同盟の負の側面となっている装備に続くことが無いよう、中露の脅威の動向も冷徹ににらみつつ、極超音速兵器の滑空段階での迎撃ミサイル開発には対応して頂きたいと思います

同筆者による5月末の寄稿紹介記事
「被撃墜事例相次ぐ極超音速兵器を過信するな」→https://holylandtokyo.com/2023/06/01/4695/

米軍の極超音速兵器開発
「米陸軍の最終確認試験&配備は来年に持ち越し」→https://holylandtokyo.com/2023/11/15/5224/
「空軍がARRW配備断念」→https://holylandtokyo.com/2023/04/05/4478/
「バカ高い極超音速兵器」→https://holylandtokyo.com/2023/02/08/4261/

迎撃兵器システム開発関連
「迎撃兵器を日米共同開発で」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/
「迎撃兵器開発を2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/

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台湾総統「中国は大規模な台湾侵攻を考える状態にはない」 [安全保障全般]

中国の課題を「国内の経済と金融、それに政治的なもの」と分析

Taiwan Sai.jpg11月29日、台湾の蔡英文総統がNYT紙主催のイベントにリモート参加し、参加者からの「中国の台湾侵攻可能性についてどう考えられるか」と問われ、「現在、中国の指導部は内部の課題への対応に追われている。大規模な台湾侵攻を考える時ではないだろう」と述べました

イベント参加者の質問に対し蔡英文総統はまず、「(中国による台湾侵攻の)可能性に関するタイムスケジュールを、議論したり話題にしたがる人が多いことは知っているが、習氏は、最近のバイデン大統領との会談で答えを出している」と表現し、11月15日にバイデン・習近平会談で「2027年や2035年に中国が軍事作戦を行う計画はない」と習氏が発言したとされている事を示唆しました

Taiwan Sai2.jpgそして蔡英文総統は中国情勢について、「現在、中国の指導部は内部の課題への対応に追われている。大規模な台湾侵攻を考える時ではないだろう」と述べ、中国の指導部が直面している課題として「主に国内の経済と金融、それに政治的なものだ」と指摘ました。

この発言を聞いて、2022年2月のロシア侵略直前にウクライナのゼレンスキー大統領が「ロシアによるウクライナ侵攻可能性は低い」と発言していたことを持ち出し、有事や有事への備えに関する蔡英文総統の考えの甘さを指摘する人もいるでしょうが、蔡英文総統がその程度の指導者だとはまんぐーすは思いません

Biden.jpg中国との軍事力の圧倒的な差、中国からの絶え間ないサイバー攻撃や情報戦、中国海空戦力による示威活動のエスカレート傾向等々を十分に把握しつつ、限界がある中で可能な範囲の有事体制強化を水面下で全力で進めつつ、一方で「中国による台湾侵攻の恐れ」による外国資本の台湾から国外への流出や外国から台湾への投資の減少を抑えるため、あえて誤解を恐れず正直に、現時点までに収集した情報から自然と導かれる情勢判断を披露したものと考えます

繰り返しになりますが、可能性が低下しつつある有事に備えた準備は淡々と進めつつ、一方で台湾経済維持の重要性を踏まえ、国家指導者として必要だと考える客観的な情報に基づく情勢認識を披露したものだと考えます

Biden2.jpg米国は、米国内のインフレ抑制だけでなく、中国通貨の暴落を狙った「利上げ状態維持」政策を継続しており、中国への貿易規制などと併せて、超党派の態勢で「中国潰し」に全力投球しており、ある意味で中国に「戦わずして勝つ(軍事的な戦いに至る前に、経済的に破綻させる)」ことに光明を見出しつつあると思います

「中国の不動産バブル崩壊」は「中国金融制度崩壊」を導きつつあり、中国経済や中国の国家としての形が今後どのような道をたどるのか、その影響が世界にどう及ぶのか不安で仕方ありませんが、軍事的脅威だけを声高に叫んでいては、片手落ちだと思う今日この頃です

大変残念な防衛研究所の『中国安保レポ2024』
「中国経済崩壊に言及ゼロの」→https://holylandtokyo.com/2023/11/28/5299/

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2024年夏に独仏西の戦闘機等が大挙アジア訓練ツアー計画 [安全保障全般]

他の戦闘機開発グループの英と伊も加わる可能性
RIMPAC→日→豪→ネシア→インドへ戦闘機30機以上で
アジアでの米国負担軽減で欧州関与を側面支援とか

German AF Asia6.jpg11月27日付Defense-Newsが独国防省や独空軍情報を基に、2024年の7月から8月にかけ、欧州主要国(FCAS次期戦闘機開発でチームを組む独仏スペインを中心に、英と伊も参加可能性大)が戦闘機30機以上と輸送機等で、中国と対峙するアジア太平洋諸国を巡回し、「RIMPAC2024」や豪での「Pitch Black」や印での「Tarang Shakti」演習に参加し、日本にも数日間立ち寄ると報じています

同報道の雰囲気や、2022年にドイツ空軍がアジア太平洋地域への24時間での緊急展開訓練として、6機のEurofighters、4機のA400M輸送機、3機のA330空中給油機でシンガポールにまず展開し、アジア諸国を回って日本にも飛来して空自機と共同訓練した実績からすると、2024年夏の大規模欧州諸国軍機のアジアツアーはドイツ空軍主導で計画されている模様です。

German AF Asia.jpg現時点で既に少なくとも30機の戦闘機(Eurofighters(独8機、スペイン4機)、トーネード独12機、ラファール仏6機)のほか、A400M輸送機8機(独4機、仏スペイン4機)、更にA330空中給油機7機(独3機、仏等3機)も含む大規模編成なっていますが、FCAS国以外からも、「アジア太平洋での米国負担軽減」と「欧州での米支援の支援」趣旨を受け、他の次期戦闘機GCAS開発グループ国(日本も参加!)である英や伊軍機の参加可能性大と、記事は伝えています

German AF Asia5.jpg独空軍によれば、2024年夏の展開に際しては、欧州航空戦力群は北大西洋と北米大陸を横断してアラスカにまず移動し、その後ハワイを中心に7月下旬に開催予定の環太平洋演習RIMPAC2024に参加して艦艇群との連携も演練し、次に日本に数日間立ち寄って日本編隊と飛行訓練を行い、その後は豪州に足を延ばして「Pitch Black」演習に参加予定となっています。

豪での演習後は、インドネシア又はマレーシアに展開して地域完熟訓練と展開国軍との連携を深め、最後にインドに移動して同国主催の国際演習「Tarang Shakti」への参加を調整中だとのことです
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German AF Asia2.jpg記事は、ドイツ空軍が次期戦闘機FCAS開発グループ国である仏スペインとともにアジア訓練ツアーを計画中で、「恐らく英軍とイタリア軍航空機も道中で参加するだろう:possibly also involving aircraft from the U.K. and Italy along the way」と表現しており、FCASグループでないGCAS開発グループである英や伊は、FCASグループが欧州大陸からアラスカへの移動時にのみ、「European face」との欧州諸国の取り組みの一環として参加するだけかもしれません

German AF Asia3.jpg次期戦闘機FCAS(Future Combat Air System)開発のアピールが背景にあると、なんとなく「うさん臭い」アジア訓練ツアー感も漂いますが、「RIMPAC2024」「Pitch Black」「Tarang Shakti」演習参加と日本への立ち寄りもある大変力の入った取り組みですので、歓迎したいと思います

ただドイツは現在、左翼系連合政権による「原発全廃」や「EV過剰推進」等の負の影響をもろに受け、エネルギー価格高騰や世界からの投資一斉撤退で経済が崩壊方向にまっしぐら状態です。ドイツ空軍の元気印「Ingo Gerhartz独空軍参謀総長(冒頭写真)」のご奮闘を祈るばかりです

2022年ドイツ空軍の初アジアツアーなど
「独戦闘機6機がアジア豪星日韓へ」→https://holylandtokyo.com/2022/08/18/3566/
「独で冷戦後最大の航空演習」→https://holylandtokyo.com/2023/05/01/4515/
「独が戦術核共有にF-35導入へ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/16/2920/

【ご参考:欧州の戦闘機開発2グループ】
●「独仏スペイン」のFCAS(Future Combat Air System)
→独Airbus, 仏Dassault, スペインIndra、仏Thales, 仏MBDA and 仏Safranなど

●「英伊スウェーデン+日本」のGCAS(Global Combat Air System)
「TEMPEST」計画とも呼ばれる
→英BAE、英ロールスロイス、スウェSaab、日MHI、伊Leonardoなど

仏独スペインのFCAS開発
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2
「ベルギーが関与希望か」→https://holylandtokyo.com/2023/06/26/4766/
英スウェ伊+日本のGCAS開発
「英伊が日本恫喝:逃げるなよ!」→https://holylandtokyo.com/2023/02/14/4299/
「伊が訪日し協議」→https://holylandtokyo.com/2022/09/27/3699/
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11

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NATOもE-3後継にE-7導入決定 [安全保障全般]

2031年までに6機で運用態勢確立へ:追加可能性も
2月導入決定の米に続き、豪、韓、トルコ、英と運用仲間に
現保有14機のE-3は2035年までに退役予定

E-7 NATO.jpg11月15日、NATOが現在14機保有(独空軍基地を拠点に運用)して加盟国で共同運用しているE-3早期警戒管制機の後継機としてボーイング製のE-7を選定し、2031年までにとりあえず初度の6機をFMS契約で導入して、運用態勢を確立すると発表しました

NATOは高価なアセットを加盟国で共同購入し、運用要員を各国から差し出して混合編成で運用する方式をE-3や輸送機で実施しており、今回のE-7購入はNSPA(NATO Support and Procurement Agency:7か国:ベルギー、独、ルクセンブルグ、蘭、ノルウェー、ルーマニア、米で構成)により、Saab Global EyeとBombardier Global 6500とNorthrop Grumman E-2Dを比較対象として、2022年下旬から選定作業を行ってきた結果とのことです

E-7 NATO2.jpgNATOが独Geilenkirchen基地を主拠点に14機運用中のE-3は、1980年代に導入されNATOの主要作戦で活躍中で、2011年の911同時多発テロ時には7機が7か月間米本土に派遣され多国籍搭乗クルー編成で運用されたほか、中東での対ISIS作戦や最近のロシアによるウクライナ侵略でも東欧国境の監視に投入されています

E-7はB-737をベースとした機体にNorthrop Grumman製レーダーを搭載したボーイング製で、2010年に豪州で運用を開始し、韓国、トルコ、英国が運用中または発注済です。最近では2023年2月に米空軍が26機導入決定を発表し、2025年のプロトタイプ機を経て、27年に初号機を受領し、32年までに26機全機での運用態勢確立を予定している「世界標準の早期警戒管制機」となりつつある機体です

E-7 NATO3.jpgNATO関係者はE-7選出理由として、(米、英、豪、トルコなど)NATO関係国で既に運用され相互運用性があり、基本的な性能に加え将来的な能力拡張性があるほか、製造ラインが稼働中で入手容易、航続距離や在空性能、搭乗人員数等々の設計面でNATO側の要求を満たし、新規開発リスクが無い点を挙げています

NATOは米軍と同様に、E-3が担っていた空中&地上移動目標監視追尾任務を、将来的には宇宙アセットを中心に、RQ-4無人ISR機や地上&海上配備レーダーで補完しつつ、クラウド使用のマルチドメイン指揮統制システムで連携統制運用する姿を描いていますが、実現にはまだまだ時間と経費が必要なことから、E-7導入機数が「とりあえず」導入決定の6機から増加する可能性を示唆しているようです
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E-767.jpg下の過去記事でご紹介しているように、E-7の今後の能力向上や効率的維持整備のため、米英豪がタッグを組むことを今夏に発表しており、「宇宙アセットによる監視体制確立の夢」はあるものの、実態的には今後数十年間はE-7が「世界標準の空中&地上移動目標監視追尾アセット」となることが確実でしょう。

つまり、日本しか運用していないE-767は今後の維持に益々苦労が増えるということです・・・残念ながら。F-35大量「引き受け」導入や、RQ-4やオスプレイ強制導入などと並び、「日米同盟の負の側面」を象徴する装備品となる可能性大です。KC-46もかな・・・

11月15日のNATO発表
https://www.nato.int/cps/en/natohq/news_219907.htm?selectedLocale=en

米軍とE-7導入関連の記事
「今後の能力向上を米英豪共同で」→https://holylandtokyo.com/2023/07/21/4871/
「E-7とE-3違いを概観」→https://holylandtokyo.com/2023/03/30/4447/
「初号機を2027年納入契約」→https://holylandtokyo.com/2023/03/06/4358/
「導入を正式発表」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
「E-3は2023年から退役へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/01/3074/
「後継機検討のRFI」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711

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日米韓空軍が初の3か国共同訓練 [安全保障全般]

夏の3か国首脳会談@Camp David受け共同訓練加速

Trilateral Air Ex.jpg10月22日、8月の日米韓キャンプデービッド首脳会談で合意された「複数ドメインにまたがる本格的3か国軍事演習の毎年開催:annual, named, multi-domain trilateral exercises」のプロローグでしょうか、日米韓空軍が「史上初めて」3か国空軍機の編隊飛行訓練などの空軍演習を、韓国南部で九州西方の両国ADIZが重なる空域で実施しました。

米空軍からは韓国に約30年ぶりの着陸(10月18日)を果たしたB-52爆撃機とF-16戦闘機、韓国空軍からはF-15K戦闘機、そして航空自衛隊からはF-2戦闘機が参加して、傘型編隊飛行を行った空中写真が公開されています。

Trilateral Camp David.jpg日韓関係は、日本国民や韓国国民目線から見ると決して改善したとは言い難く、慰安婦や竹島や徴用工や通貨スワップ等々の政治マターだけでなく、サッカー代表チームの試合結果を巡る韓国報道などに至るまで、まんぐーすも含めた大半の日本国民からすると「韓国とは関わりたくない」との思いがあふれ出そうな毎日ですが、

中国や北朝鮮を巡る地域安保情勢を踏まえれば、米国ならずとも日米韓でしっかりスクラムを組まないと「話にならない」現実があり、韓国にユン・ソンニョル大統領(尹錫悦)政権が「首の皮一枚」で存在している間に、韓国経済が崩壊の淵に立っている現状でも、日韓関係は改善の方向に進まなければ両国の国益にはつながりません

Trilateral Navy Ex.jpgそんな中、10月10日前後には米空母Ronald Reaganも交え、韓国済州島南方海上で日米韓3か国海軍の共同演習が実施され、北朝鮮対処を念頭に置いた(弾道ミサイルの)探知追尾対処訓練が行われて8月のキャンプデービット3か国首脳会談の勢いを繋いでいましたが、その勢いそのままに、今回、日米韓が「初めて」の3か国空軍演習を行ったとのことです。

これまでは、例えば米空軍爆撃機が飛来すると、まず航空自衛隊機と共同訓練して編隊飛行写真を公開し、次に韓国空軍との2ショット写真が公開される流れでしたが、これが3か国機が一堂に空中集合するだけで諸調整が大変だったと思います

Korea and Japan ADIZ.JPG23日付米空軍協会web記事によれば、韓国空軍が同訓練が「韓国と日本のADIZ(防空識別圏)が重なるエリアで実施された」と発表したようで、共同訓練の場所選定にあたっては3か国間で様々な「駆け引き」があったことが伺えます

まんぐーす的には、いっそのこと「3か国がF-35を持ち寄って」編隊飛行写真を撮ったら・・・などと野次馬的な発想しか浮かびませんが、「22日の日曜日」に訓練を実施した関係スタッフの皆さんは相当ご苦労されたと思います。改めてここに敬意を表したいと思います

日韓関係関連の記事
「韓国の弾道ミサイル性能制限撤廃に米国同意」→https://holylandtokyo.com/2021/05/27/1785/
「米会計検査院による日本と韓国駐留への評価」→https://holylandtokyo.com/2021/03/23/167/
「同盟国支援下の戦いの厳しさを教えてくれた韓国の巨星没す」→https://holylandtokyo.com/2020/07/14/571/

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豪州が北部重要港湾の中国へのリース継続決定 [安全保障全般]

豪中親密時の2015年に締結の99年リース契約
豪州政権交代で再検討も結論は契約継続
7年ぶり豪首相の中国訪問前に(米訪問もあるが)

Darwin Port2.jpg10月20日、豪州政府は2015年に当時の保守系自由党政権が中国企業と締結した北部の重要港湾ダーウィン港の99年間リース契約について、労働党への政権交代を機に契約継続の是非について再検討を行ってきましたが、安全保障上の問題はないと結論付け契約を継続すると発表しました

契約は山東省に拠点を置く港湾施設企業「山東Landbridge Group」と結ばれていますが、ダーウィン港を管轄する地方政府(Northern Territory政府)が多額の負債を抱えた状態で港湾施設老朽化が問題となっていたタイミングで、かつ中国と豪州関係が最も緊密だった時期に締結され、同中国企業は豪州内投資家を圧倒する約480億円の港湾施設改修投資も約束して「ダーウィン港99年間リース契約」を獲得しています

Darwin Port5.jpg2015年当時の豪州は保守系自由党のターンブル首相政権で、クワッド体制や日本の安保法制整備を強く支持し、中国の南シナ海埋め立てに強い反対姿勢を示していましたが、一方で「豪州の国益を棄損しない限り中国の台頭を歓迎する“現実主義的”親中の立場」からダーウィン港のリースを推進し、当時のオバマ米大統領から「なぜ事前に相談しなかった」と苦言を呈されています

その後、当時の対中蜜月関係は悪化の一途をたどり、2022年の総選挙を経て、当時「ダーウィン港のリース」に反対した中道左派の労働党がアルバニーズ首相の元で政権を担っており、昨年の政権交代後に同契約の再チェックを同首相が指示しましたが、結局10月20日に改めて契約継続方針が示されることとなりました

Darwin Port7.jpg折しも、アルバニーズ豪首相は23日の週に訪米&バイデン大統領との首脳会談を控え、更にその後11月に豪州首相として7年ぶりの中国訪問が計画されている中での決定で、豪首相としても容易な決定ではなかったであろうと想像できますが、これが現在の豪州政府の立ち位置です

豪州国防省や豪州情報機関は、「ダーウィン港のリース」による中国企業活動は、豪政府が確認済の規定に沿って行われ、安全保障上のリスクには当たらないとの公式見解を出していますが、

Darwin Port3.jpg豪州シンクタンク研究者は「(対中国を見据えた米国など同盟国戦力の展開拠点となる北部豪州の重要輸送インフラである)ダーウィン港に中国企業が存在していることで、豪中関係に緊張が高まった場合にどのような影響が出るかは予想もできないリスク要因であり、そのようなリスクを受け入れるべきではない」と主張しています
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2015年当時、中道左派野党の労働党が中国系企業の関与に反対する中、保守系の自由党政権が米国の反対を押し切って実現した信じがたい99年間のリース契約で、自由党のターンブル首相の息子が中国共産党幹部の娘と結婚するような当時の状況も併せて考えると、たった8年前のこととは信じがたい時代です

Darwin Port8.jpg中国経済が崩壊する中、今後中国と仲良くしても良いことはないと思うのですが、豪州産ワインへの220%関税の見直しを中国が発表したようです。労働党アルバニーズ豪首相は岸田首相のように、とりあえず目先の安定や利益だけを考えて決断したのでしょうか?

豪州関連の記事
「一時はB-21ステルス爆撃機導入検討」→https://holylandtokyo.com/2023/05/15/4588/
「豪米が豪で史上最大の兵站演習」→https://holylandtokyo.com/2023/04/14/4506/
「サイバー能力大拡大計画」→https://holylandtokyo.com/2022/11/16/3911/
「米がMQ-9B輸出許可」→https://holylandtokyo.com/2021/04/29/119/

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一つの鍵:北朝鮮からハマスへの武器提供 [安全保障全般]

対戦車ミサイルや対ヘリ攻撃RPGなど
ハマス奇襲攻撃等の映像・画像で専門家指摘

NK Hamas.jpg10月21日付米空軍協会web記事が、7日にハマスがイスラエル奇襲攻撃を行った映像やその後のハマス公開映像・画像から、ハマスが北朝鮮製のRPG(F-7 rocket-propelled grenades)や122㎜砲弾や対戦車ミサイルを入手し使用している模様だと、西側メディアや米国専門家が指摘していると報じていま

本件に関し、ホワイトハウスのKirby戦略報道官は19日に「報道の真偽は確認できていない」と述べ、北朝鮮も国営メディアでイスラエルの行動を非難しつつも北朝鮮製兵器の関与を否定していますが、北朝鮮は1990年代頃から外貨獲得のため北朝鮮製兵器の密輸を行っており、その輸出先は広く世界中の西側民主主義国と対峙している国々です。

NK Hamas2.jpg例えば国連安全保障理事会は、北朝鮮が中東であればEgypt, Iran, Libya, Syria、UAEなどに武器や核関連技術を売却していると指摘し、2009年には北朝鮮が準備した輸送機に35トンものRPGやロケット弾などの兵器が搭載されハマスやヒズボラに輸送途中、タイの空港で摘発された事例等を上げています

RAND研究所のBruce Bennett研究員は、北朝鮮製兵器をハマスが使用していても驚きはなく、北朝鮮から海路や空路でいったんイランに運ばれ、その後エジプトに輸送された後、エジプトから(地下トンネル等を利用して)ガザ地区に持ち込まれた可能性が高いと語る一方で、

NK Hamas3.jpgこの輸送経路上では第3国の艦船や航空機が使用されることから、密輸を輸送中に摘発することは極めて難しいとの見方を示していますが、一つの可能性として、2003年に創設されて106か国が参加しているPSI(Proliferation Security Initiative)賛同国の協力を得ての取り締まり強化を提言しています

北朝鮮絡みのPSIによる密輸摘発実績としては、2014年に砂糖の輸送船に隠して、キューバから北朝鮮へ北朝鮮製兵器を整備のため輸送中の北朝鮮船がパナマ政府によって発見された事例があるようです。

NK Hamas4.jpg今回関連映像や画像でハマスによる使用が疑われている兵器のインパクトに関し、米空軍協会ミッチェル研究所のLarry Stutzriem退役空軍少将は、「game-changersとまでは言えないが、RPGヘリ迎撃用兵器として、また対戦車ミサイルはイスラエル軍の装甲車や戦車の大きな脅威であり、どのくらいの量をハマスが保有しているかがイスラエル軍にとって気になるところだろう」とコメントしています

北朝鮮の核兵器の拡散については、金正恩の昨年2022年の関連発言から、金正恩は核技術の国外提供については慎重な姿勢だが、核弾頭を200-500発程度国内用に確保したなら、輸出にも手を伸ばす可能性があると指摘する前述のBennett研究員は指摘し、RAND研究所は2027年までに北朝鮮が200発の核弾頭を保有すると予測しています
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NK Hamas6.jpg「イスラエルとハマスの戦争」に関し、連日NHKが朝夕の報道番組でTOPニュース扱いし、ガザ地区内の状況や必要性が疑われる現地特派員の「イスラエルの戦車が集結しています」レポートを延々と垂れ流していますが、もう少し全体像や背景など、多角的な視点の報道ができないものでしょうか?

今回の中東情勢混乱の中で日本のマスゴミは、中国経済崩壊の報道を極限まで避け、逆に三菱自動車のEV関連中国撤退を大きく取り上げるなど、中国国営メディアと同列の報道姿勢を隠そうともしていません。恐ろしい時代になりました・・・

PSI(Proliferation Security Initiative)のwebサイト
https://www.psi-online.info/

外務省のPSI解説
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fukaku_j/psi/index.html

イスラエル・ハマス戦争関連
「米国のイスラエル支援状況は」→https://holylandtokyo.com/2023/10/17/5142/

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イスラエルへの米軍派遣戦力や支援物資は・・ [安全保障全般]

とりあえず12日付Defense-News記事で
概要の概要ですが

hamas israel war.jpg10月7日のハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃を受け、イスラエルが予備役兵を招集し、ガザ地区北部を中心とした地上侵攻に備えて周辺に地上戦力を集結させ、近く陸海空戦力を投入した大規模作戦を開始する模様ですが、早々にイスラエル支持と支援を表明した米国の軍事支援動向について、12日付Defense-News記事で概要の概要をご紹介します

基本的に米国はバイデン政権の方針として、米国人がハマスの人質となっている現状でも、人質解放に向けた各種軍事的助言を中心に緊急派遣されたとされている米軍特殊作戦部隊を含め、戦闘に米軍部隊が参加することは認めないとしており、同時にイスラエル政府側も米軍の直接的関与を現時点で求めていないと米国報道官は説明しています

弾薬の提供
Iron Dome6.jpg●数千発の安価なロケット弾による「飽和攻撃」で対処の限界を露呈した形になったイスラエル自慢の「アイアンドーム:Iron Dome」であるが、同迎撃ミサイルシステム10セットを保有するイスラエル軍に、米国内のレイセオン社で大部分が製造されているIron Dome迎撃ミサイル(または関連部品)を、緊急提供した模様。同システムを米陸軍も2セット試験導入しており、米陸軍保有分も多少提供した可能性あり
●誘導装置の無い重量投下型爆弾に装着し、簡易精密誘導爆弾にグレードアップ可能なJDAMキットを緊急提供した模様。また周辺への被害を局限できる高口径爆弾SDB(small diameter bomb)も提供した模様

空母2隻の派遣
Ford CV2.jpg●地中海で実施されたイタリア軍との演習を終え、ローテーション派遣期間が終了する予定だった新型空母フォード級の一番艦空母フォード(F-35C型搭載)を、8日にイスラエル沖に派遣すると米国政府が発表
●更に、ローテーション派遣で同地域に派遣予定だった空母アイゼンハワーを、予定を少し早めて東地中海に派遣し、空母フォードと2隻体制を確立。オースチン国防長官は「イスラエルに対する更なる敵対行動や、ハマス奇襲攻撃に乗じて同地域での紛争拡大を狙う企てを抑止する一連の対処の一つだ」と説明

●空母の戦力としての意味
Eisenhower.jpg・完備した指揮統制システムを活用した「臨時指揮所」機能の提供
・E-2D早期警戒機の海空監視及び情報収集能力、またその連続在空能力からくる通信中継機能や空母指揮所からの指示を伝える機能。また空母搭載各種アセットやセンサーを活用したと「情報戦:information warfare」の拠点としての役割

・FA-18による航空打撃力の提供
・空母の持つ病院機能(集中治療室ICUを完備)。また艦載ヘリによる物資輸送や救命救助機能能力を利用した人道支援能力

●米空軍の航空アセット
・展開先は不明確ながら、7日の奇襲攻撃を受け、既にA-10、F-15、F-16をイスラエル周辺に新規派遣し、同時に対シリア作戦を主任務に既に同地域に展開中のローテーション航空アセットについて、帰国時期を遅らせて戦力増強状態を維持

●その他(英軍の動き含む)
RFA Lyme Bay.jpg・イスラエルとの定期的な軍事演習準備のためイスラエルに展開していた米軍兵士の内、今回の事態対処に直接関与しない要員のC-17による緊急帰国と、特殊作戦軍要員などの事態対処要員の緊急派遣
・英軍は、P-8哨戒機、3機のヘリ、中隊規模の海兵隊を派遣。16日の週には強襲揚陸艦や病院船を含む英海軍タスクフォースが地中海に到着。NATO任務で在地中海のミサイル駆逐艦の動向にも注目。なお英空軍は、キプロス島に英空軍最大の海外基地を持ち、同時に電波情報収集拠点も設置している
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mass media.jpgイスラエル軍によるガザ地区への大規模侵攻が開始された場合は、「イランとして対処せざるを得ない」とイラン軍の司令官が語るなど、緊迫の度が高まっており、この記事を掲載するタイミングでどのような情勢なっているかわかりませんが、基礎的な状況把握の一環として、米軍の動きをご紹介しました

ウクライナのケースでもそうですが、「日本のメディアの劣化」や「偏向された立ち位置」が改めて白日の下に暴かれ、「専門家もどき」が淘汰され、真に地道に研究を積み重ねてこられた地域の専門家が活躍される機会となることを祈っております

イスラエル関連の記事
「Iron Domeをウに提供せず」→https://holylandtokyo.com/2023/08/01/4880/
「米イが8500名規模の巨大統合演習」→https://holylandtokyo.com/2023/01/30/4216/
「なぜ露とウの仲介をイスラエルが?」→https://holylandtokyo.com/2022/03/09/2802/
「4機のKC-46給油機導入発表」→https://holylandtokyo.com/2022/09/06/3629/
「イが中央軍管轄に」→https://holylandtokyo.com/2021/01/19/301/
「イがUAEへのF-35に事実上合意」→https://holylandtokyo.com/2020/10/27/442/

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露軍需産業の象徴?音沙汰無しS-500防空システム [安全保障全般]

2018年にプーチンが生産開始指示との報道
2021年モスクワ圏納入も音沙汰無し
2022年量産型出荷の契約だが・・・

S-500 Prometheus3.jpg10月5日付Defense-News記事が、極超音速兵器迎撃も視野と言われてきたロシア企業Almaz-Antey製の新型防空ミサイルシステムS-500(通称Prometheus)に関する「音沙汰無し」状況について報じ、ウクライナ侵略や西側からの経済制裁によって疲弊する、ロシア軍事産業の象徴するかのような「尻すぼみ」状態を紹介しています

S-500は、現有S-400システムが射程約400㎞と言われる中で、射程約600㎞で高度200㎞の目標にも対処可能なシステムで、極超音速兵器にも対応可能との触れ込みで開発が進められ、2010年に開発が開始、2011年には専用の2工場建設に着手し2016年に完成、プーチン大統領が2018年には量産開始を要請したと報道されていた新兵器です。

S-500 Prometheus.jpgこの新兵器には複数のミサイル(航空機や巡航ミサイル用の40N6Mと、弾道ミサイル対処用の77N6シリーズ)が搭載可能で開発され、その性能は米国のTHAADを上回り、なおかつS-400より小型で機動展開等が容易だと西側研究機関や専門家は分析していました

実際にS-500は2019年に製造開始され、2021年には首都モスクワ周辺防空を専任担当する部隊に納入されたと報道されました。同時に、2022年納入予定で10個大隊用製造の契約が企業と締結されたとも報道され、その後の動向に西側軍事筋が注目していました。

S-500 Prometheus2.jpgしかしその後はS-500に関する高官の言及や報道が無くなり、製造企業のAlmaz-Antey社を含むロシア軍需産業全体に、西側による経済制裁による電子部品を中心とした部品不足や製造機器の維持困難が伝えられ、ロシア軍によるウクライナ侵略後には、ロシア軍需産業における労働力不足も報じられるようになります

少ないながら漏れ聞こえてくる「匿名のロシア軍やロシア軍需産業関係者の話」によると、防空ミサイルの増産大号令をかけているロシア国防省は配備済S-400用のミサイル48N6シリーズに注力し、ウクライナ戦線で必要のないS-500開発を後回しにしているとか、2021年に首都防空専門部隊に初納入されたS-500は「極超音速兵器対処能力を備えていないミサイルを配分されている」状態で、

S-500 Prometheus4.jpg現状では好意的に見ても、S-400よりは部分的に優れているが、現在提供されているミサイルでは射程も400㎞程度とS-400レベルで、大気圏外目標対処能力(exoatmospheric)はなくTHAAD以下の能力だと見られているようです。また極超音速兵器対処能力については、テストの実施はなく、極超音速兵器を模擬する模擬目標もない状態だと伝えられているようです

またコスト面でも、1個のS-500システム(発射機8台)で、当初は1100億円程度だったものが、2023年時点では3500億円程度にまで跳ね上がっている模様で、今のロシア政府の財政状況からしても、近い将来に大きな進展がありそうな予感が無い状況だと記事は伝えています

2023年1月の記事:ロシアの新兵器?
「大改良新型TU-160M2爆撃機開発前進!?」→https://holylandtokyo.com/2023/01/20/4170/

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米国が拿捕のイラン製弾薬100万発をウ支援に [安全保障全般]

昨年12月にイエメンへの密輸船を拿捕押収した弾薬武器
「ウ」支援予算が未承認の中、米国苦心の支援策

Iran Houthi3.jpg10月4日付Defense-Newsは、2024年度米国予算が45日間の「つなぎ予算」だけ承認され、ウクライナ支援予算が未承認の中、昨年12月に米海軍によって拿捕&捕獲された、イランからイエメン反政府組織Houthiへの密輸途中の武器弾薬を、数か月間の交渉の末にウクライナ支援品として活用する許可を米国政府が獲得し、現在ウクライナに向け輸送中だと報じました

具体的な「拿捕&捕獲」場所は非公開ですが、米海軍艦艇によりダウ船「MARWAN」から昨年末に拿捕された密負弾薬兵器には、9000丁以上のライフル銃、284丁の機関銃、194のロケットランチャー、70発の対戦車誘導ミサイル、70万発の弾薬、100万発以上の7.62㎜小銃弾が含まれ、中央軍担当エリア内の倉庫に保管されていたとのことですが、少なくとも100万発以上の7.63㎜弾は現在ウクライナに向け移送中とのことです

Iran Houthi.jpgウクライナ支援により米国保有の武器弾薬の在庫急減少が懸念される中、またウクライナ支援予算確保を巡り米議会内の与野党の摩擦が増す中、バイデン政権は昨年12月の「拿捕&捕獲」した武器弾薬の「米国による押収」許可を数か月間交渉し、7月にやっと許可が下り、品質確認や法的手続きを経てやっとウクライナへ移送が開始されたとのことです

2024年度米国予算を巡っては米議会の機能不全が露呈し、9月30日夜にウクライナ支援予算を含めないことを条件に、約6週間分の「つなぎ予算」がギリギリ暫定成立して「政府機関の閉鎖」や「兵士への賃金未払い」が「寸止め」されましたが、下院議長が辞任するなど、今後6週間で正規の2024年度予算が成立する見通しは立っていません

Iran Houthi2.jpgこの混乱により、米国によるウクライナ支援オプションは限定的となり、上記のような「押収品の提供」との情けない形しかなく、ウクライナ支援で現有武器弾薬を提供した際の、「穴埋め補給予算」が確保できない苦しい状態が11月半ばまで続くとのことです

米国防省報道官は「我々はもう少しの期間だけ、ウクライナ支援を維持することができるが、(その先のために)米議会の行動が必須だ」と訴えていますが、当面は米国の機能不全が続きそうです・・・

2024年度予算巡る泥仕合
「国防長官の年俸1ドル案提出」→https://holylandtokyo.com/2023/10/02/5089/

ウ支援で弾薬不足懸念加速
「CSIS弾薬問題レポート」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/4212/
「上院軍事委員長:弾薬が最大教訓」→https://holylandtokyo.com/2023/02/10/4288/
「米軍は弾薬にもっと予算配分を」→https://holylandtokyo.com/2022/12/02/3990/
「弾薬不足:産業基盤育成から」→https://holylandtokyo.com/2022/10/19/3758/

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台湾の新型国産潜水艦が西側支援を受け完成&進水 [安全保障全般]

老朽4隻に代わるディーゼル電気潜水艦を8隻導入計画
2500トン規模で浅い海での活動を想定した特徴
米国潜水艦搭載の各種装備を搭載

taiwan Hai Kun.jpg9月28日、台湾海軍の新型国産ディーゼル電気潜水艦(diesel-electric attack submarine)の1番艦が、中国神話の海中生物にちなんで「ハイクン:Hai Kun」と命名され、台湾南部の高雄市にあるCSBC造船所で、蔡英文総統も臨席する形で進水式を迎えました。

台湾海軍は現在4隻の潜水艦を保有していますが、第二次世界大戦中に建造された旧米海軍の潜水艦2隻と、1980年代後半に取得した旧オランダ海軍の潜水艦2隻で構成されており、老朽化が大きな問題となっていましたが、「ハイクン」は海上試験を経て2025年に台湾海軍で任務就役する予定となっています

taiwan Hai Kun2.jpgこの「ハイクン」型ディーゼル電気潜水艦(推定排水量は約2,500トン、長さは70メートル)を台湾は8隻導入する計画ですが、9月29日付Defense-News記事によれば、進水式の写真から、浅海での作戦用にX舵構成を持ち、一対の小さな水平フィンが追加されていることが確認できたということです。

また同記事は、同潜水艦部品の4割は国産であるが、多大な外国援助を受けており、支援には米海軍原潜で使用されているAN/BYG-1潜水艦戦闘管理システムの台湾版や、デジタルソナー、統合戦闘システム、潜望鏡などの補助装備が含まれている模様です

taiwan Hai Kun3.jpg更に、英国政府は(英国)企業に、約300億円相当の潜水艦技術と部品を台湾に輸出する許可を与え、日本の三菱重工業と川崎重工業の退職技術者が技術支援を行ったと言われています。またロイターによれば、2021年11月に、台湾が米国、英国、オーストラリア、韓国、インド、スペイン、カナダから技術者と退役した潜水艦乗組員を採用し、潜水艦の建造と運用について台湾海軍に助言していると報じています
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進水式典の様子(3分40秒)


taiwan Hai Kun4.jpg潜水艦についても素人に近いまんぐーすですが、海上自衛隊の潜水艦が2750~3000トンで全長80m前後であり、今回進水した「ハイクン」型(約2,500トン、70m)と同規模です。なお米海軍攻撃原潜のバージニア級は、7800トンの115mです

正面切って、中国の大規模艦艇群や大量の対艦ミサイルと、台湾海軍が対峙するのは無茶な話であり、このように隠密性の高い潜水艦戦などで対抗していくのが「あるべき道」だと思いますが、1番艦が今進水とは、気の長い話です・・・

台湾関連の記事
「2024年台湾総統選挙の情勢」→https://holylandtokyo.com/2023/08/28/4987/
「台湾製のドローン探知レーダーが話題」→https://holylandtokyo.com/2023/03/13/4335/
「CSISが台湾軍に非対称戦術迫る」→https://holylandtokyo.com/2023/01/16/4160/
「台湾有事のWargame結果を異例公開」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/
「徴兵期間を4か月から再び1年間に」→https://holylandtokyo.com/2023/01/04/4103/
「台湾が統合強化と権限分散の軍改革へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/26/1705/
「台湾軍の対中国体制に危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/08/155/

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NZ海軍がほぼ全艦艇の同時更新へ [安全保障全般]

1隻の補給艦を除く、他全8隻の更新提案を募集開始
8隻が2030年代半ばに耐用年数を迎えるとか
単なる更新ではなく、体制・作戦運用・支援体制の変革追及

Royal NZN4.jpg9月7日、ニュージーランド国防省は同国海軍Royal New Zealand Navy (RNZN)が保有する艦艇9隻のうち、就航3年の最新型補給艦(HMNZS Aotearoa)を除く他の8隻が2030年半ばに耐用年数を迎えることから、11月15日を期限に情報提供要求(RFI:request for information)を発出しました

Royal NZN.jpg比較的脅威が薄いニュージーランドの戦略環境を背景に、海洋国家でありながら海軍が全9隻体制とは驚きですが、2019年に同国政府が発表している「Defence Capability Plan」で、既に海軍の「体制や運用全部見直し」が予告されていたようです

まず現在のNZ海軍戦力を確認しておくと

〇更新対象外
1隻2020年就航の最新型補給艦(HMNZS Aotearoa:全長約170m)

〇更新検討対象
2隻のフリゲート艦Anzac級(全長約115m):就航1997年と99年
2隻の沿岸パトロール艦(全長55m):就航2009年
2隻の遠洋パトロール艦(全長85m):就航2010年

1隻の輸送艦HMNZS Canterbury(全長約130m):就航2007年
1隻の水路調査船HMNZS Manawanui(全長約83m):就航2019年
    (元は海底油田支援船で2003年就航)

Royal NZN3.jpg同海軍はRFI発出に伴うプレス発表で、「個々の艦艇をそのまま更新するlike for like approachではなく、このユニークなタイミングを海軍全体の艦艇構成や作戦運用や艦艇支援体制を見直す機会ととらえている」と述べています。

ただし、2019年発表の「Defence Capability Plan」は2024年までを対象に、同国軍全体の投資方向を詳細に記述している模様ですが、ニュージーランドでは10月に総選挙が予定されており、結果次第では同計画の方向性に影響が出る可能性があるようです
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Royal NZN5.jpg以下の8月の「国防見直し」発表報道のように、中国から9000㎞離れたニュージーランドでも中国の脅威を強く意識しているようですが、10月14日の総選挙に向けた政治情勢は与野党伯仲の混戦模様で、総選挙終了まで、全てが様子見になっているようです

具体的には、アーダーン前首相(美人!)の個人的人気を追い風に6年前に政権奪還を果たした労働党ですが、足下では物価高、治安情勢、住宅価格への対応を理由に支持率は低下傾向が続いています。政党別支持率では国民党が労働党を上回る推移で、差が開く傾向だそうですが、首相候補の人気では現職の労働党ヒプキンス首相が僅差で国民党のラクソン党首を上回るなど、国民党は決め手を欠く状況が続いているようです

8月4日付のロイター「国防見直し」発表報道によれば
NZ GEL.jpg●ニュージーランド(NZ)政府は同日公表の「国防見直し」で、大国間の対立が激化する中、ここ数十年で最も困難な戦略的環境に直面しているとした上で、軍備は将来の課題に適した水準ではないとの分析を表明したが、改善への具体的計画は示さず
●同政府は「国防見直し」に合わせ、初の「国家安全保障戦略」を発表。気候変動や欧米と中国・ロシアの間の戦略的競争といった課題に対応するために、軍事費増額とインド太平洋諸国との関係強化が必要と強調

NZ GEL2.jpg●「国防見直し」発表に際し、ブリッジマン国防長官は「直面する脅威はより複雑化より困難に」と表明。「当面は現軍隊で対応するが、新たな未来と進化する状況を見据える必要あり」、「強大になる中国は、既存の国際的ルールや規範に挑戦する形で、手段を行使している」との情勢認識を示したが、
●現時点でGDP約1%を占める国防予算の増額や装備の刷新決定は、2024年の追加文書発表までは行われない、とも述べた。

最近のNZ関連記事
「米空軍史上最大の空輸演習@西太平洋」→https://holylandtokyo.com/2023/07/13/4852/
「Talisman Sabreを過去最大の兵站演習に」→https://holylandtokyo.com/2023/04/14/4506/
「7か国で宇宙作戦ビジョン2031」→https://holylandtokyo.com/2022/02/25/2753/

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寒冷地での攻撃ドローン試験とニーズの高まり [安全保障全般]

イスラエル企業が北欧東欧諸国の要望を受け
「Uvision」社が「Hero」シリーズの極地試験を

Hero-120.jpg8月16日付Defense-Newsは、イスラエルの無人攻撃ドローン企業「Uvision」社が北欧及び東欧諸国の要望を受け、今年に入って北極圏環境下で同社製攻撃ドローン「Hero-120」の運用試験を行っていると紹介し、気温マイナス20度Cでの運用や保管&輸送に耐えられるか確認したと報じています

具体的な試験の場所や関心を持っている国名は明らかになっていませんが、「極地での運用に関心を持つseveral defense forces」が試験に立ち会い、画像撮影や赤外線センサーなどを搭載して性能確認試験が行われたとのことで、北極圏国家だけでなく広く厳しい冬での運用が必要となる「北欧や東欧のニーズ」が高まっていると記事は紹介しています。

Hero-120 4.jpg記事は、北欧諸国で現在イスラエル製の無人機「Hero」シリーズを使用している国はないが、同地域とイスラエル軍需企業の関係は深く、例えばフィンランドは最近、独イスラエル共同開発の対戦車ミサイルをEurospike社から導入し、防空&ミサイル防衛システム「David’s Sling」の購入許可を得たところで、ノルウェーも小型戦術無人機の導入協議を1月に開始したところだとも紹介しています

「Uvision」社関係者は、「わが社はHero-120だけでなく、様々なタイプの無人機で構成される「Hero」シリーズ全体の北極圏寒冷地への適応を研究開発計画の中に組み込んでいる」と語っており、またドローン本体だけでなく「ドローンの保管や輸送」など兵站分野に至るまで具体的導入を想定した確認を並行して行っており、顧客の要望に対応できる態勢を整えているとアピールしています
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Hero-120 2.jpgウクライナでの戦いで、2022年から23年にかけての「冬の戦い」を経験したことから、寒冷地への装備品適応確認に注目が集まっているのかもしれません。ロシアの脅威を目の当たりにした北欧や東欧諸国にとっては切実な問題でしょうから。

イスラエルは、ロシアとの関係に配慮し、ウクライナへの防空システム「アイアン・ドーム」提供を拒んでいるようですが、直接の紛争当事国でない北欧や東欧諸国への無人機提供については柔軟な姿勢を見せているようです。

イスラエル関連の記事
「アイアン・ドームをウに提供せず」→https://holylandtokyo.com/2023/08/01/4880/
「米イが8500名規模の巨大統合演習」→https://holylandtokyo.com/2023/01/30/4216/
「なぜ露とウの仲介をイスラエルが?」→https://holylandtokyo.com/2022/03/09/2802/
「4機のKC-46給油機導入発表」→https://holylandtokyo.com/2022/09/06/3629/
「イが中央軍管轄に」→https://holylandtokyo.com/2021/01/19/301/

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1月の台湾総統選挙前に親中派国民党支持が1/3に [安全保障全般]

独立派の与党民進党支持率は国民党の3倍に
2022年秋の地方選挙で大敗の与党民進党が大復活
中国経済崩壊+習近平体制弱体化で親中派衰退顕著

Taiwan 2024 2.jpg8月25日付YouTubeチャンネル「朝香豊の日本再考」が、2023年1月13日に迫った台湾総統選挙に向けた各政党の候補者支持率を取り上げ、2022年11月末の台湾地方選挙で大敗した与党で独立派の民進党候補が支持率を大幅に伸ばし、昨年末には10ポイント以上差を付けられていた親中派の国民党候補に対し、現時点では3倍の支持率を確保し、その差が最近1か月で急激に拡大していると紹介しています

Taiwan 2024.jpgそしてこの急激な政党支持率の変化の背景について朝香氏は、「中国の不動産バブル崩壊」や「コロナロックダウンによる中小企業倒産と海外企業撤退」に端を発する、「中国の輸出・消費・投資のトリプル急降下」、「金融システムの破綻」、「4割を超える若者失業率」等々の形で表面化している「中国の崩壊」を目にした台湾国民が、中国頼りの野党国民党を「見限った」結果だと端的に指摘し、この傾向は今後全世界に拡大すると述べています

独立派の与党民進党と親中派の野党国民党の支持率の変化
          2022年末 2023年春 2023年7月 
独立派の与党民進党 29%   36%  44%
親中派の野党国民党 39%   20%  14%弱 

Taiwan 2024 4.jpg独立派の与党民進党が政権を握る台湾に対し、中国は様々な貿易障壁を設けて「いやがらせ」を繰り返してきましたが、台湾も対抗策として、輸出入の相手先を従来の中国中心から、米国のほか、ASEANや南アジアや中東やアフリカ方面へ多様化する「南向制作」に取り組み、コロナ禍を経て徐々に着実に成果を上げており、ここ最近の「中国経済大減速」を受け、その方向性がますます加速すると言われているようです

そして朝香氏は、この台湾の急激な国民意識の変化は、「中国の崩壊」を様々な情報ルートを通じて身近に肌身に染みて感じる台湾ならではの迅速さであるが、時間がたてば世界中に拡散する変化を象徴するものになろうと語っています。

Taiwan 2024 3.jpg朝香氏は「自身の願望」も踏まえた可能性だとしながらも、「金の切れ目が縁の切れ目」との言葉通り、親中派である台湾国民党への支持率が急減しているように、世界中の「親中派」は、その親中主張の拠り所を失い、又は中国からの直接又は間接的な支援を失い、「紆余曲折」を繰り返しながらも、衰退方向に向かうであろうとも語っています
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ちょっと癖のあるおじさん朝香豊氏ですが・・・
8月25日付YouTubeチャンネル「朝香豊の日本再考」


日本の「マスゴミ」は、「中国経済の大失速」や「北京や河北省での大水害」を全くと言って良いほど報道せず、一方で福島原発の「処理水」海洋放出に関し、中国の主張や「補償金まみれの老害漁協」の声ばかりを繰り返し報道して「風評被害」をまき散らしていますが、

Mass-Gomi.jpg「コロナ」、「東京五輪」、「安倍総理国葬」等の騒ぎを通じて化けの皮がはがれ始め、急速に顕在化しつつある「中国経済の崩壊」プロセスと並行する形で、消滅方向に向かうのでしょう・・・・。歴史的なその崩壊の様子を、「中国共産党崩壊と共に」生暖かく見守りたいと思います

台湾関連の記事
「CSISが台湾軍に非対称戦術迫る」→https://holylandtokyo.com/2023/01/16/4160/
「台湾有事のWargame結果を異例公開」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/
「徴兵期間を4か月から再び1年間に」→https://holylandtokyo.com/2023/01/04/4103/
「台湾が統合強化と権限分散の軍改革へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/26/1705/
「台湾軍の対中国体制に危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/08/155/

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