CNAS:米軍は弾薬にもっと予算を配分せよ [安全保障全般]
最近の紛争事例から急激な弾薬ミサイル消耗に着目
目立つ装備ばかりでなく、いつも後回しの弾薬備蓄に警鐘
11月17日、シンクタンクCNASの女性研究者2名が「Precision and Posture」とのレポートを発表し、対中国作戦の予想様相やウクライナなど近年の紛争の事例も踏まえ、米国防省2023年度予算や5か年計画における弾薬調達予算配分が不十分だと警鐘を鳴らしています
弾薬の備蓄や製造にかかわる軍需産業基盤の弱体化問題は、長引く露によるウクライナ侵略への米国の兵器支援によって顕在化し、例えばJavelin対戦車ミサイルの米国備蓄の半分以上8500発をウクライナに提供した結果、その穴埋めには現状だと12年が必要との衝撃的数字が明らかになるなどして問題化し、対中国でも対艦精密誘導ミサイル「LRASM」の深刻な備蓄状態などを複数回取り上げてきたところです
そんな中でのCNASレポートは、より広範な事例から米国の弾薬事情について取り上げ、紛争のたびに問題が顕在化しているのに、一向に改善が進まない状況を指摘していますので、レポートの断片的な「つまみ食い」説明を試みたいと思います
レポート「Precision and Posture」は・・・
●対中国では中国による迅速な勝利を阻止し、米国や同盟国は粘りづよく反撃して膨大な攻撃目標に対処する必要があり、同時に中国の強固な防空網に我の兵器の一部が迎撃されることも考慮して弾薬の確保を今から準備する必要がある。ただ現在でも緊急にやるべきことが米国防省には多く残されており、現状の予算計画では不十分だ
●2023年度予算におけるICBMやSLBMを含めたミサイル予算は3兆5千億円程度にまで伸びているが、対中国で不足が叫ばれている対艦精密誘導ミサイルなどの予算は8000億円程度で増えていないのが現状である
●過去においても同様の問題が発生し、例えば2014年から17年に遂行された対ISIS作戦では、連合国の空爆で11万5千発の精密誘導兵器を多数含む弾薬が消費され現代戦の様相を呈したが、JDAMとレーザー誘導ミサイルの備蓄が枯渇して、需要に対応する軍需産業基盤の重要性が叫ばれた
●しかしウクライナ支援でも弾薬備蓄や製造能力不足が露呈し、米国は例えば韓国から155mm砲弾を購入してウクライナ支援に充てようとしている。ただこの窮状は米国に限らず、ウクライナを侵略しているロシアも、北朝鮮にまで弾薬補充を頼る状況に至っていると米国関係者は分析している
●対中国作戦で考えてみると、例えば中国海軍艦艇は高度な地対空ミサイルを装備し、同時に「おとり艦艇」等で欺まんする可能性が高く、米軍の対艦ミサイルLRASM(Long Range Air to Ship Missile)の一部が迎撃されたり、誤目標攻撃に消耗させられる可能性を予期する必要があり、余分にLRASMを保有しておく必要がある
(LRASMは対中国作戦で800~1200発必要と言われているが、現有200発のみで、毎年の調達数はここ数年は38発たらず。2023年予算は88発導入を計画も、このペースでも1000発確保に10年は必要)
●重要な弾薬備蓄と弾薬製造基盤育成への投資不足に関してはこのCNASレポート以外にも、9月のForeign Affairs誌で、フロノイ元政策担当国防次官とMichael Brown前国防省DIU局長が、対中国で必要な弾薬種と必要な数量見積もりを踏まえ、厳しい現実を改善するために必要な措置が緊急に望まれると主張している
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CNASレポートをうまく紹介できていませんが、レポート内では重要な弾薬が「戦闘機や艦艇や戦闘車両など主要装備に予算が割り当てられた後、残予算で言い訳程度に調達されてきた経緯」なども説明されており、軍組織と軍人の硬直性を厳しく指摘しているようです
日本の自衛隊も同じような状況だと考えられ、「たまに撃つ、弾が無いのが、たまにきず」と自虐的に笑っている状況ではないのが今現在です。
レポート現物45ページ
→ https://s3.us-east-1.amazonaws.com/files.cnas.org/documents/Budget2022_Final.pdf?mtime=20221116160642&focal=none
弾薬量の圧倒的不足
「賛否交錯:輸送機からミサイル投下」→https://holylandtokyo.com/2022/11/15/3936/
「弾薬不足:産業基盤育成から」→https://holylandtokyo.com/2022/10/19/3758/
「ウ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/
「Stand-inとoffのバランス不可欠」→https://holylandtokyo.com/2020/07/01/562/
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目立つ装備ばかりでなく、いつも後回しの弾薬備蓄に警鐘

弾薬の備蓄や製造にかかわる軍需産業基盤の弱体化問題は、長引く露によるウクライナ侵略への米国の兵器支援によって顕在化し、例えばJavelin対戦車ミサイルの米国備蓄の半分以上8500発をウクライナに提供した結果、その穴埋めには現状だと12年が必要との衝撃的数字が明らかになるなどして問題化し、対中国でも対艦精密誘導ミサイル「LRASM」の深刻な備蓄状態などを複数回取り上げてきたところです
そんな中でのCNASレポートは、より広範な事例から米国の弾薬事情について取り上げ、紛争のたびに問題が顕在化しているのに、一向に改善が進まない状況を指摘していますので、レポートの断片的な「つまみ食い」説明を試みたいと思います
レポート「Precision and Posture」は・・・

●2023年度予算におけるICBMやSLBMを含めたミサイル予算は3兆5千億円程度にまで伸びているが、対中国で不足が叫ばれている対艦精密誘導ミサイルなどの予算は8000億円程度で増えていないのが現状である

●しかしウクライナ支援でも弾薬備蓄や製造能力不足が露呈し、米国は例えば韓国から155mm砲弾を購入してウクライナ支援に充てようとしている。ただこの窮状は米国に限らず、ウクライナを侵略しているロシアも、北朝鮮にまで弾薬補充を頼る状況に至っていると米国関係者は分析している

(LRASMは対中国作戦で800~1200発必要と言われているが、現有200発のみで、毎年の調達数はここ数年は38発たらず。2023年予算は88発導入を計画も、このペースでも1000発確保に10年は必要)

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CNASレポートをうまく紹介できていませんが、レポート内では重要な弾薬が「戦闘機や艦艇や戦闘車両など主要装備に予算が割り当てられた後、残予算で言い訳程度に調達されてきた経緯」なども説明されており、軍組織と軍人の硬直性を厳しく指摘しているようです
日本の自衛隊も同じような状況だと考えられ、「たまに撃つ、弾が無いのが、たまにきず」と自虐的に笑っている状況ではないのが今現在です。
レポート現物45ページ
→ https://s3.us-east-1.amazonaws.com/files.cnas.org/documents/Budget2022_Final.pdf?mtime=20221116160642&focal=none
弾薬量の圧倒的不足
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「弾薬不足:産業基盤育成から」→https://holylandtokyo.com/2022/10/19/3758/
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「世界の火薬庫」バルカン半島にも無人機大量流入 [安全保障全般]
コソボと対立のセルビアが無人機大国へ
中国製やイスラエル製や自国製が増殖中とか
イラン製を発注との情報も・・・
11月21日付Defense-Newsは、「世界の火薬庫」バルカン半島でコソボとの緊張が再び高まるセルビアが、2019年にバルカン半島国家第1位の軍事費を投入し、輸入無人機と自国製の無人機を組み合わせ、半島最大の無人機保有国になっていると紹介しています
セルビアは元々民間機分野(composite aircraft)で航空機産業基盤があるらしく、自国製のISR無人機Vrabacを運用して展示会に出品したりしているようですが、同時に中国やイスラエル等からの輸入無人機も導入運用し、イラン製にも興味を示しているとイラン政府関係者がメディアに語っているようです
同時にコソボ軍との緊張が高まる中、セルビア大統領が最近、「飛行禁止空域」に進入したり、軍事施設に接近するドローンをすべて撃墜せよと命じるなど、周辺国からの無人機の脅威にもセルビアは直面しており、「脅威の変化を最前線で体感している国」とも言える状態にセルビアは置かれています
2020年秋、アゼルバイジャンとアルメニア軍の戦いにおいて、ロシア製兵器で防御するアルメニア軍を、イスラエルやトルコ製の無人機で圧倒したアゼルバイジャン軍の記憶が生々しい中、今年秋には「遅まきながら」無人機の有用性に気付いたロシア軍が、イラン製無人機を急遽導入してウクライナ発電所などエネルギーインフラに大打撃を与える様子が世界に発信されるなど、安価な無人機の「脅威」が「やばい」と広く認識され始めた中での動きです
同記事からセルビア軍の無人機には
●最新無人機としては2020年6月に導入された中型の中国製攻撃無人機CH-92A(行動半径250㎞)
●セルビア製ISR無人機「Vrabac」
●上記「Vrabac」を改良し武装可能にした無人機(40㎜弾薬6発搭載)
●セルビア製空中待機型攻撃無人機「Gavran」(搭載15㎏、30分在空待機可)
●セルビア製偵察無人機Silac 750C
●イスラエル製ISR無人機「Orbiter 1」などなど
(そのほか噂では、ウクライナ軍使用で緒戦で話題になったトルコ製TB2の導入希望を繰り返しセルビアは公言しているが、イラン政府幹部がセルビアはイラン製無人機導入に手を上げている22か国のうちの一つであると発言した以降、TB2の話は立ち消えになった模様)
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いつもにも増して「断片的」な情報でしたが、セルビアのような中小国にとって、「無人機」は軍事作戦に革命・革新をもたらす兵器だとの直感に基づき、無人機活用に邁進する様子をご紹介しました
そしてこんなところから、軍事作戦の大きな変革の波は訪れるのだろうと思います。大国は変化が難しいです。
急速に脚光を浴びる無人機
「イラン製無人兵器がウで猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「アゼルバイジャン大勝利」→https://holylandtokyo.com/2020/12/22/348/
「Asia/Africaへの中国無人機の売込に警鐘」→https://holylandtokyo.com/2022/06/16/3339/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/
無人機対処にレーザーや電磁波
「対処用のエネルギー兵器動向」→https://holylandtokyo.com/2022/07/14/3432/
「JCOが小型無人機対処3機種吟味」→https://holylandtokyo.com/2022/05/17/3233/
「2回目:安価で携帯可能な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/10/08/2280/
「カタール配備のC-UASと陸軍のIFPC」→https://holylandtokyo.com/2021/06/02/1708/
「1回目:副次的被害小な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「国防省が小型無人機対処戦略発表」→https://holylandtokyo.com/2021/01/12/295/
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中国製やイスラエル製や自国製が増殖中とか
イラン製を発注との情報も・・・

セルビアは元々民間機分野(composite aircraft)で航空機産業基盤があるらしく、自国製のISR無人機Vrabacを運用して展示会に出品したりしているようですが、同時に中国やイスラエル等からの輸入無人機も導入運用し、イラン製にも興味を示しているとイラン政府関係者がメディアに語っているようです

2020年秋、アゼルバイジャンとアルメニア軍の戦いにおいて、ロシア製兵器で防御するアルメニア軍を、イスラエルやトルコ製の無人機で圧倒したアゼルバイジャン軍の記憶が生々しい中、今年秋には「遅まきながら」無人機の有用性に気付いたロシア軍が、イラン製無人機を急遽導入してウクライナ発電所などエネルギーインフラに大打撃を与える様子が世界に発信されるなど、安価な無人機の「脅威」が「やばい」と広く認識され始めた中での動きです
同記事からセルビア軍の無人機には

●セルビア製ISR無人機「Vrabac」
●上記「Vrabac」を改良し武装可能にした無人機(40㎜弾薬6発搭載)
●セルビア製空中待機型攻撃無人機「Gavran」(搭載15㎏、30分在空待機可)
●セルビア製偵察無人機Silac 750C
●イスラエル製ISR無人機「Orbiter 1」などなど

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いつもにも増して「断片的」な情報でしたが、セルビアのような中小国にとって、「無人機」は軍事作戦に革命・革新をもたらす兵器だとの直感に基づき、無人機活用に邁進する様子をご紹介しました
そしてこんなところから、軍事作戦の大きな変革の波は訪れるのだろうと思います。大国は変化が難しいです。
急速に脚光を浴びる無人機
「イラン製無人兵器がウで猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「アゼルバイジャン大勝利」→https://holylandtokyo.com/2020/12/22/348/
「Asia/Africaへの中国無人機の売込に警鐘」→https://holylandtokyo.com/2022/06/16/3339/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/
無人機対処にレーザーや電磁波
「対処用のエネルギー兵器動向」→https://holylandtokyo.com/2022/07/14/3432/
「JCOが小型無人機対処3機種吟味」→https://holylandtokyo.com/2022/05/17/3233/
「2回目:安価で携帯可能な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/10/08/2280/
「カタール配備のC-UASと陸軍のIFPC」→https://holylandtokyo.com/2021/06/02/1708/
「1回目:副次的被害小な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「国防省が小型無人機対処戦略発表」→https://holylandtokyo.com/2021/01/12/295/
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人権や原油価格で緊張感も米B-52をサウジ戦闘機が護衛 [安全保障全般]
イランがサウジ攻撃を計画との警戒情報の中
イスラエル含む13か国がB-52の中東飛行を支援
11月10日、飛行ルートなど細部は不明も、2機のB-52爆撃機が「BTF:Bomber task forces」任務で中東地域を示威飛行し、イスラエルやサウジを含む13か国が何らかの形でこの飛行に関与したと米中央軍が明らかにしました。このような飛行は今年4月と9月にも行われています。
米中央軍は具体的に13か国の国名など細部に一切言及していませんが、イスラエル空軍はイスラエル領空内で同空軍F-35I型2機がB-52をエスコート飛行したとTwitterで発表し、サウジアラビアも同じくTwitterで各2機のF-15とTyphoon戦闘機がサウジ上空でB-52と共に飛行する写真を公表しています
中東でも定期的になりつつある米空軍大型爆撃機による「BTF」飛行ですが、今回は米国とサウジ情報機関がイランによるサウジ攻撃計画の可能性をつかんでいるとのメディア報道が出たばかりのタイミングであり、注目を集めています
4月にB-52による中東「BTF」飛行をご紹介した際は、9か国が戦闘機で護衛したと表明していますが、今回はそれを上回った可能性もあり、ウクライナ情勢や中国情勢に隠れて日本で話題にならない中東情勢ですが、アラブ中東諸国のイランとイラン親派組織への警戒感は相当に高まっているものと推測されます
また、2020年9月に成立した「アブラハム合意」(イスラエルとUAE&バーレーンの国交樹立)を受け、イスラエルとアラブ諸国との壁が急速に低下し、対イラン姿勢で協力気運が少しづつ高まる方向に変化がないことも伺えます
日本で報道を見る限り、米国とサウジの関係は、人権重視のバイデン政権と原油高を支えるサウジの姿勢もあり停滞もしくは悪化方向との印象ですが、サウジ国防省がSNSで大々的に米空軍爆撃機とサウジ戦闘機の編隊飛行写真をアピールし、「両国軍の協力は地域の安定と安全保障に貢献する」との声明を出す辺りは、「底堅い両国関係」を伺わせます
10日のB-52周回飛行に先立ち、11月7日までの約1週間、米国とサウジは「Nautical Defender」との海軍演習を英国も交えてアラビア海で実施しており、まさに西側とサウジの軍事協力を11月に入って強力にイランや世界に向け発信している状況です。
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イスラエル軍の護衛飛行ツイッター発表
→ https://twitter.com/idf/status/1590739568797835264?s=61&t=G4ZZEsquqC2rIgO2xopxAw
サウジ軍の護衛飛行ツイッター発表
→ https://twitter.com/modgovksa/status/1591736910908723201?s=61&t=G4ZZEsquqC2rIgO2xopxAw
世界は動いています。日本のTVや日本語報道を見ていると、頭が世界から遠ざかっていきますよ・・・皆様、ご注意を!
B-52による中東関係国と連携した示威飛行
「4月9か国戦闘機とアラビア半島周回」→https://holylandtokyo.com/2022/04/06/3105/
アブラハム合意の関連記事
「イスラエルが欧州軍から中央軍管轄に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-16
「イスラエルがUAEへのF-35に事実上合意」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-26
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イスラエル含む13か国がB-52の中東飛行を支援

米中央軍は具体的に13か国の国名など細部に一切言及していませんが、イスラエル空軍はイスラエル領空内で同空軍F-35I型2機がB-52をエスコート飛行したとTwitterで発表し、サウジアラビアも同じくTwitterで各2機のF-15とTyphoon戦闘機がサウジ上空でB-52と共に飛行する写真を公表しています

4月にB-52による中東「BTF」飛行をご紹介した際は、9か国が戦闘機で護衛したと表明していますが、今回はそれを上回った可能性もあり、ウクライナ情勢や中国情勢に隠れて日本で話題にならない中東情勢ですが、アラブ中東諸国のイランとイラン親派組織への警戒感は相当に高まっているものと推測されます

日本で報道を見る限り、米国とサウジの関係は、人権重視のバイデン政権と原油高を支えるサウジの姿勢もあり停滞もしくは悪化方向との印象ですが、サウジ国防省がSNSで大々的に米空軍爆撃機とサウジ戦闘機の編隊飛行写真をアピールし、「両国軍の協力は地域の安定と安全保障に貢献する」との声明を出す辺りは、「底堅い両国関係」を伺わせます

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イスラエル軍の護衛飛行ツイッター発表
→ https://twitter.com/idf/status/1590739568797835264?s=61&t=G4ZZEsquqC2rIgO2xopxAw
サウジ軍の護衛飛行ツイッター発表
→ https://twitter.com/modgovksa/status/1591736910908723201?s=61&t=G4ZZEsquqC2rIgO2xopxAw
世界は動いています。日本のTVや日本語報道を見ていると、頭が世界から遠ざかっていきますよ・・・皆様、ご注意を!
B-52による中東関係国と連携した示威飛行
「4月9か国戦闘機とアラビア半島周回」→https://holylandtokyo.com/2022/04/06/3105/
アブラハム合意の関連記事
「イスラエルが欧州軍から中央軍管轄に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-16
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嘉手納からの米空軍F-15撤退を軍事的合理性から考える [安全保障全般]
11月4日と5日に、嘉手納基地へ計8機のF-22戦闘機がアラスカの米空軍基地から展開しました。
今回のローテーション派遣の期間は不明ですが、稼働率5割(2021年度実績)で米軍戦闘機最低のF-22の今後の活動に注目!
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日本の有識者の皆さんの楽観論にあえて言う
米軍は嘉手納基地に有事期待していない
日本はいつまで戦闘機に期待し続けるの?(ため息100回)
11月3日付米空軍協会webは、「Air Force magazine」編集長でこの道35年の著名な航空宇宙ジャーナリストJohn A. Tirpak氏による、嘉手納F-15撤退後の穴埋め戦力に関する記事を掲載し、アラスカ配備のF-22によるローテーション派遣をとりあえず行うだろうが、その後の長期的な対応として国防省高官は、ドイツやイタリア配備の米空軍F-16を展開させる案も検討していると紹介しています
ただ、ドイツのSpangdahlem基地とイタリアのAviano基地のF-16部隊を合併し、極東アジアに移転させる「欧州F-16転用案」は2021年には存在していたものの、国際情勢を受け国防省の「米軍態勢見直し:Global Posture Review」で廃案になった経緯があり、ウクライナ危機で欧州がロシア脅威に直面する中、欧州F-16の極東への移転は感覚的に難しいだろうと示唆しています
また世間で噂の新型第4世代機F-15EXを嘉手納に展開させる案についてもTirpak氏は、導入機数が当初計画の144機から80機にまで削減され、2022年から24年まで毎年24機程度しか予算要求されず、米本土防空用F-15C退役後を支えるのに精いっぱいだろうから、短期的なローテーション派遣がないことはないだろうが、嘉手納への恒常的な展開は考えにくいとコメントしています
更にTirpak氏は、米空軍報道官の「米空軍は嘉手納F-15の穴埋め(backfill)の責任を負っているが、計画についてはコメントしないし、戦力の展開計画についても、機体が展開先に到着するまで触れないのが米空軍のスタンスだ」との発言に合わせ、「他軍種の戦闘機を嘉手納F-15の補填にすることはない」との公式発言を伝えています
そして記事はDavid A. Deptula米空軍協会ミッチェル研究所長による本件に関する以下のコメントを取り上げ・・・
「これは米空軍が予算不足で国家安全保障戦略や国家防衛戦略を適切に遂行できない状態にあることを示す兆候だ。前方展開戦力は両戦略の基礎だが、戦力が無ければ実行できないのだ」、「状況は悪化する。米空軍は2027年までに数百機から千機を退役させようとしている(240機F-15、120機F-16、70機A-10など)」
更に「嘉手納は対中国有事の際、疑いなく数百の中国軍の精密誘導ミサイル攻撃を受けるので、嘉手納基地の航空機は危機が迫れば他基地に避難する可能性が高いが、前方プレゼンス維持、同盟国への関与維持、ISR活動の必要性等から嘉手納を捨てることはないだろうが・・」・・・を紹介しています
また併せて記事は、地上移動目標を探知追尾する専門機E-8C Joint STARSが9月に嘉手納から撤退し、この後継機に相当する機体の配備予定はないとも伝え、嘉手納F-15の段階的撤退に関し、米議員が特別ブリーフィングを米空軍に求めていると伝えています
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F-22に期待する声もありますが、所詮平時のプレゼンスであり、稼働率が米空軍戦闘機の中でずば抜けて低い5割程度で、2030年頃から退役が始まる維持運用が難しい機体です。米空軍司令部Hinote計画部長の言葉(2021年5月)を借りれば「F-22は1991年に開発が始まった機体で、中国脅威から台湾や日本やフィリピン等を守るには適切な装備ではなくなるだろう」とのアセットです。
前述のようにF-16にもF-15EXにも期待できませんし、F-35は噂にもならない点からすると、性能等が中国に知られないよう、米空軍は中国正面に平時から置きたくないのかもしれません
Deptulaミッチェル研究所長の言葉を引用するまでもなく、嘉手納航空戦力は危機が迫れば、座して死を待つことなく、遠方に退避します。沖縄より中国から遠いグアム配備戦力でも、サイパンやテニアンや南洋諸島の島自前へ避難し、そこからの「分散運用」を追求します。これが米空軍が全世界で取り組むACE(agile combat employment)構想で、太平洋空軍司令官から現在の空軍参謀総長に就任したBrown大将の信念です
中国正面の第一列島線上はもちろんのこと、第2列島線上の航空基地も有事には破壊される恐れが高いことから、米空軍は次世代の戦闘機検討で発想の大転換を迫られています。
例えば2021年2月27日に米空軍主要幹部や軍需産業関係者を前に、米空軍戦闘機族のボスである空軍戦闘コマンド司令官Mike Holmes大将は、「今現在の戦闘機に関する考え方は、例えば航続距離、搭載兵器、展開距離などについては、欧州線域ではそのまま将来も通用するが、太平洋線域では距離の問題が克服できない」と課題の本質に触れ、
「太平洋戦域では、次世代制空機(NGAD)検討において従来の戦闘機のような装備のニーズは必ずしも生まれない。距離と搭載量のトレードオフを迫るような機体は求められない」と明確に述べています。
米軍や米空軍は、同盟国日本への配慮から嘉手納の脆弱性や嘉手納の有事の役割減少について対外的には発言しませんが、嘉手納基地から有事に戦闘機や作戦機が発進するイメージなど持ち合わせていません。
日本の防衛省や航空自衛隊幹部はこのことを明確に認識しているはずです。恐らく日米で実施するウォーゲームや机上演習で、その現実を以前から突き付けられているはずです
2009年1&2月号のForeign Affairs誌に掲載された「A Balanced Strategy」との論文で、当時のゲーツ国防長官は、中国やロシアや新興脅威国の台頭を念頭に「足の短い戦闘機の役割は小さくなる」喝破しました。そしてそのころからチマチマと「戦闘機命派」を批判してきたのですが、力及ばず今日に至るまんぐーすです。
10年前からチマチマ訴えてきたのですが・・・
「脅威の変化を語らせて下さい」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08
「中国軍事脅威の本質を考えよう」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2012-12-30
米空軍の戦闘機構成検討関連
「近未来の米空軍戦闘機構想」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/
「戦闘機混合比や5世代マイナス機検討」→https://holylandtokyo.com/2021/02/22/266/
「米空軍戦闘機の稼働率2021年」→https://holylandtokyo.com/2021/12/07/2465/
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→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
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日本の有識者の皆さんの楽観論にあえて言う
米軍は嘉手納基地に有事期待していない
日本はいつまで戦闘機に期待し続けるの?(ため息100回)
ただ、ドイツのSpangdahlem基地とイタリアのAviano基地のF-16部隊を合併し、極東アジアに移転させる「欧州F-16転用案」は2021年には存在していたものの、国際情勢を受け国防省の「米軍態勢見直し:Global Posture Review」で廃案になった経緯があり、ウクライナ危機で欧州がロシア脅威に直面する中、欧州F-16の極東への移転は感覚的に難しいだろうと示唆しています

更にTirpak氏は、米空軍報道官の「米空軍は嘉手納F-15の穴埋め(backfill)の責任を負っているが、計画についてはコメントしないし、戦力の展開計画についても、機体が展開先に到着するまで触れないのが米空軍のスタンスだ」との発言に合わせ、「他軍種の戦闘機を嘉手納F-15の補填にすることはない」との公式発言を伝えています

「これは米空軍が予算不足で国家安全保障戦略や国家防衛戦略を適切に遂行できない状態にあることを示す兆候だ。前方展開戦力は両戦略の基礎だが、戦力が無ければ実行できないのだ」、「状況は悪化する。米空軍は2027年までに数百機から千機を退役させようとしている(240機F-15、120機F-16、70機A-10など)」

また併せて記事は、地上移動目標を探知追尾する専門機E-8C Joint STARSが9月に嘉手納から撤退し、この後継機に相当する機体の配備予定はないとも伝え、嘉手納F-15の段階的撤退に関し、米議員が特別ブリーフィングを米空軍に求めていると伝えています
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前述のようにF-16にもF-15EXにも期待できませんし、F-35は噂にもならない点からすると、性能等が中国に知られないよう、米空軍は中国正面に平時から置きたくないのかもしれません

中国正面の第一列島線上はもちろんのこと、第2列島線上の航空基地も有事には破壊される恐れが高いことから、米空軍は次世代の戦闘機検討で発想の大転換を迫られています。

「太平洋戦域では、次世代制空機(NGAD)検討において従来の戦闘機のような装備のニーズは必ずしも生まれない。距離と搭載量のトレードオフを迫るような機体は求められない」と明確に述べています。

日本の防衛省や航空自衛隊幹部はこのことを明確に認識しているはずです。恐らく日米で実施するウォーゲームや机上演習で、その現実を以前から突き付けられているはずです

10年前からチマチマ訴えてきたのですが・・・
「脅威の変化を語らせて下さい」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08
「中国軍事脅威の本質を考えよう」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2012-12-30
米空軍の戦闘機構成検討関連
「近未来の米空軍戦闘機構想」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/
「戦闘機混合比や5世代マイナス機検討」→https://holylandtokyo.com/2021/02/22/266/
「米空軍戦闘機の稼働率2021年」→https://holylandtokyo.com/2021/12/07/2465/
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米軍人の外国政府ポストへの再就職 [安全保障全般]
豪州政府から年収10億円越えオファーの例も
2015年以降、約500名がコンサルタント等で
10月18日付ワシントンポスト紙が、退役米軍人の外国政府機関等への再就職状況について報じ、法律に基づき米議会の許可を得て仕事を得たものが2015年以降で約500名にのぼり、億を超える高額報酬のケースもあるほか、人権上の問題から問題視されることが多いサウジなど中東やアフリカ諸国に集中していると紹介しています
「Emoluments Clause Restrictions」との米国規定によると、20年以上の米軍勤務経験者(年金受給資格者)は、米議会の承認なしに外国政府からポストや仕事やコンサルタント業務を請け負ってはならないことになっていますが、2015年以降で申請した約500名の95%が承認を得て外国政府等のために働いているとのことです。なお本規定違反の罰則は定められていません
WP紙は、米軍大将の基本給年額の最高額が2800万円弱なのに対し、豪州政府から退役海軍幹部に年俸14億円越えのオファーがあったとか、アゼルバイジャンから米空軍退役将官に日当70万円オファーの例を上げているほか、反政府ジャーナリストが皇太子の指示で殺害されたと非難されているサウジアラビア国防省にも、少なくとも15名の退役米軍将軍が採用されていると報じており、年俸3500万円程度とも伝えています
2つの軍事コンサルタント会社を経営するオバマ政権時の国家安全保障担当大統領補佐官を務めたJames L. Jones退役海兵隊大将はWP紙のインタビューに応え、サウジ政府と4つの契約を結んでおり、計53名の米国人をリアドに派遣していると述べ、8名は元米軍将官で、32名は下位階級の退役軍人だと説明しています。
そしてJones氏は、「誰も我々に、サウジからの撤退を考えるべきだと忠告する者はいない」、「我々が撤退したら、後はどうなると思う? 中国やロシアにサウジ政府がなびく可能性が考えられるが、それが良いことだと思わない」と語っています
ただ、Jones退役大将のコンサル会社からサウジに派遣されているCharles Wald退役空軍大将はWP紙に対し、「(反政府ジャーナリスト殺害後、)サウジから撤退すべきではないかとの議論が社内で巻き起こった。自問自答し、サウジ政府支援を続けるべきか考え、留まることを決定した」と葛藤があったと語っています
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20年以上勤務の退役軍人が外国から金品を受け取って罰せられたケースでは、トランプ政権時の安全保障担当大統領補佐官であったMichael Flynn退役陸軍中将が、退役1年後の2015年にロシアとトルコ筋から6000万円を受け取った件で、FBI捜査に虚偽証言をしたと有罪判決を受けた例があります
Jones将軍の「我々が去れば、中国やロシアが来るだけ」との言葉が言い表しているように、報酬の高低だけがメディアやSNS上で話題になって済む話ではないと思います。
現役時代に知り得た米軍の秘密情報を提供する行為は戒められるべきですが、現役ができない必要な支援を外国に提供することは、OBの役割として期待してよいのではと思います
全く別の視点ですが
「米軍退役軍人の1/3が警察や刑務所のお世話になる現実」→https://holylandtokyo.com/2022/08/31/3597/
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2015年以降、約500名がコンサルタント等で

「Emoluments Clause Restrictions」との米国規定によると、20年以上の米軍勤務経験者(年金受給資格者)は、米議会の承認なしに外国政府からポストや仕事やコンサルタント業務を請け負ってはならないことになっていますが、2015年以降で申請した約500名の95%が承認を得て外国政府等のために働いているとのことです。なお本規定違反の罰則は定められていません

2つの軍事コンサルタント会社を経営するオバマ政権時の国家安全保障担当大統領補佐官を務めたJames L. Jones退役海兵隊大将はWP紙のインタビューに応え、サウジ政府と4つの契約を結んでおり、計53名の米国人をリアドに派遣していると述べ、8名は元米軍将官で、32名は下位階級の退役軍人だと説明しています。

ただ、Jones退役大将のコンサル会社からサウジに派遣されているCharles Wald退役空軍大将はWP紙に対し、「(反政府ジャーナリスト殺害後、)サウジから撤退すべきではないかとの議論が社内で巻き起こった。自問自答し、サウジ政府支援を続けるべきか考え、留まることを決定した」と葛藤があったと語っています
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Jones将軍の「我々が去れば、中国やロシアが来るだけ」との言葉が言い表しているように、報酬の高低だけがメディアやSNS上で話題になって済む話ではないと思います。
現役時代に知り得た米軍の秘密情報を提供する行為は戒められるべきですが、現役ができない必要な支援を外国に提供することは、OBの役割として期待してよいのではと思います
全く別の視点ですが
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安価なイラン製自爆無人機がウクライナで猛威 [安全保障全般]
【21日、追加情報】
米国政府がクリミアでのイラン人運用支援を強く批判
10月20日、ホワイトハウスのKirby報道担当補佐官が、当初ロシア兵による「SHAHED-136」操作が失敗したことを受け、イラン人支援要員がクリミア半島に入って、ロシア軍を支援していると厳しく非難
将来、イラン製地対地ミサイルの導入可能性も示唆し、イランの支援を否定するロシアとイラン側の主張を真っ向から否定
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「貧者の巡航ミサイル」と呼ばれる安価兵器が「ウ」に打撃
目標到達率5割程度もソフト目標に威力発揮
士気や市民生活への影響大で懸念広がる
10月18日付Military.comが、9月下旬からロシアがウクライナ攻撃に投入開始したイラン製自爆攻撃無人機「SHAHED-136」の概要と効果について取り上げ、単純構造で安価で破壊力も突破力も限定的な兵器ながら、対処の難しさから大量投入で社会インフラや防御の薄い軍事目標攻撃に成果を上げ、停電など市民生活に影響を与えるなど恐怖感を与えるテロ兵器として猛威を振るっていると報じています
小型無人機の脅威や対処法検討について、これまでも様々にご紹介してきましたが、分かり易い形で表面化してしまった「貧者の巡航ミサイル」とも呼ばれる自爆型無人機の脅威を、どの程度の数量が使用されたのかなど細かな部分は不明な点も多いのですが、本事例から考えたるべくご紹介いたします。
イラン製自爆攻撃無人機「SHAHED-136」の概要
●長さ380㎝、幅250㎝、重量200㎏で、5~40㎏の弾頭を搭載でき、プロペラ推進の速度185㎞/hで射程距離は1000㎞と言われている。
●プリプログラムされた目標位置にGPS利用で自力進出し、搭載カメラで目標を確認した後、地上からの無線指令で最終的に目標に突入する運用の模様
●「無人機の群れ」として飛行する高度な無人機間の連携能力はなく、単に同時複数発射で敵防空網を飽和させる運用が主流
●価格は1発300万円以下で、代表的なロシア軍巡航ミサイル「Kalibr」(弾頭480㎏)の1発約1億4000万円と比較すると極めて安価。
米やウクライナ専門家の見方
●射程は1000㎞以上と言われるものの、通信覆域が限られ通信妨害に脆弱であることから、ロシア軍はより目標に近い場所の車両搭載発射機から射出して使用している
●低空を飛翔するため、防空レーダーや対空ミサイルでの対処が困難だが、騒音が大きく低速であるため、例えば10月10日の攻撃では、発射された75発の内、55%に当たる41発がウクライナ側により撃墜されている
●ロシアは「SHAHED-136」の被撃墜率が高いことを考慮し、防空カバーの弱い軍事目標や社会インフラ(発電所など)を攻撃目標にしており、首都キーウで停電が発生するなどウクライナ国民の「士気をくじく」「不安をあおる」点で特に効果を上げている。軍事的な影響については良くわからない
●ウクライナ側は迎撃兵器として米国に対し、米海軍艦艇が自己防御用に搭載しているレーダーと機関砲を組み合わせた防空システム「ファランクス」を要望している模様
●ウクライナ国防省は、露が既に精密誘導兵器をほとんど打ち尽くしており、ロシアが今後、このような外国製無人攻撃機に依存する可能性を示唆している。
●ただし、安価ながらイランからの輸送費用や、制裁下にあるイランが「SHAHED-136」に使用する搭載カメラなどの部品の質が低く、ロシア側で交換して使用しているとの話もある。
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イラン製のSHAHED-136解説映像(約6分:90秒から性能解説)
ゼレンスキー大統領は「昼夜を分かたぬ市民へのテロ攻撃をロシアは行っている」と国際社会に訴えていますが、ウクライナの国立戦略研究所のBielieskov氏は「対処法をわきまえた前線部隊は半数以上を迎撃しているため、ロシア側は一般市民を目標にしている」と非難しつつ、「この攻撃が増加しても、ウクライナの前線での攻勢を覆すことはできないだろう」とコメントしています
攻撃を受けているウクライナ国民の苦悩から目を背けるわけにはいきませんが、自爆型無人機による一般市民や社会インフラに対する攻撃が大規模にメディアで報じられ、軍事作戦を大きく変えそうなこの無人機兵器の恐ろしさが認識される一つの機会だと考えます
自国製巡航ミサイル等が「底をつく」状態にあるらしいロシアが、経済制裁下のイランからどの程度この種の兵器を導入できるのか不明ですが、注目したいと思います
無人機対処にレーザーや電磁波
「対処用のエネルギー兵器動向」→https://holylandtokyo.com/2022/07/14/3432/
「JCOが小型無人機対処3機種吟味」→https://holylandtokyo.com/2022/05/17/3233/
「2回目:安価で携帯可能な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/10/08/2280/
「カタール配備のC-UASと陸軍のIFPC」→https://holylandtokyo.com/2021/06/02/1708/
「1回目:副次的被害小な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「国防省が小型無人機対処戦略発表」→https://holylandtokyo.com/2021/01/12/295/
「小型ドローン対策に最新技術情報収集」→https://holylandtokyo.com/2020/10/30/445/
「米海兵隊の非公式マニュアル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-31
「ドローン対処を3-5種類に絞り込む」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-14
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米国政府がクリミアでのイラン人運用支援を強く批判
10月20日、ホワイトハウスのKirby報道担当補佐官が、当初ロシア兵による「SHAHED-136」操作が失敗したことを受け、イラン人支援要員がクリミア半島に入って、ロシア軍を支援していると厳しく非難
将来、イラン製地対地ミサイルの導入可能性も示唆し、イランの支援を否定するロシアとイラン側の主張を真っ向から否定
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「貧者の巡航ミサイル」と呼ばれる安価兵器が「ウ」に打撃
目標到達率5割程度もソフト目標に威力発揮
士気や市民生活への影響大で懸念広がる

小型無人機の脅威や対処法検討について、これまでも様々にご紹介してきましたが、分かり易い形で表面化してしまった「貧者の巡航ミサイル」とも呼ばれる自爆型無人機の脅威を、どの程度の数量が使用されたのかなど細かな部分は不明な点も多いのですが、本事例から考えたるべくご紹介いたします。
イラン製自爆攻撃無人機「SHAHED-136」の概要

●プリプログラムされた目標位置にGPS利用で自力進出し、搭載カメラで目標を確認した後、地上からの無線指令で最終的に目標に突入する運用の模様
●「無人機の群れ」として飛行する高度な無人機間の連携能力はなく、単に同時複数発射で敵防空網を飽和させる運用が主流
●価格は1発300万円以下で、代表的なロシア軍巡航ミサイル「Kalibr」(弾頭480㎏)の1発約1億4000万円と比較すると極めて安価。
米やウクライナ専門家の見方

●低空を飛翔するため、防空レーダーや対空ミサイルでの対処が困難だが、騒音が大きく低速であるため、例えば10月10日の攻撃では、発射された75発の内、55%に当たる41発がウクライナ側により撃墜されている
●ロシアは「SHAHED-136」の被撃墜率が高いことを考慮し、防空カバーの弱い軍事目標や社会インフラ(発電所など)を攻撃目標にしており、首都キーウで停電が発生するなどウクライナ国民の「士気をくじく」「不安をあおる」点で特に効果を上げている。軍事的な影響については良くわからない

●ウクライナ国防省は、露が既に精密誘導兵器をほとんど打ち尽くしており、ロシアが今後、このような外国製無人攻撃機に依存する可能性を示唆している。
●ただし、安価ながらイランからの輸送費用や、制裁下にあるイランが「SHAHED-136」に使用する搭載カメラなどの部品の質が低く、ロシア側で交換して使用しているとの話もある。
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イラン製のSHAHED-136解説映像(約6分:90秒から性能解説)
ゼレンスキー大統領は「昼夜を分かたぬ市民へのテロ攻撃をロシアは行っている」と国際社会に訴えていますが、ウクライナの国立戦略研究所のBielieskov氏は「対処法をわきまえた前線部隊は半数以上を迎撃しているため、ロシア側は一般市民を目標にしている」と非難しつつ、「この攻撃が増加しても、ウクライナの前線での攻勢を覆すことはできないだろう」とコメントしています

自国製巡航ミサイル等が「底をつく」状態にあるらしいロシアが、経済制裁下のイランからどの程度この種の兵器を導入できるのか不明ですが、注目したいと思います
無人機対処にレーザーや電磁波
「対処用のエネルギー兵器動向」→https://holylandtokyo.com/2022/07/14/3432/
「JCOが小型無人機対処3機種吟味」→https://holylandtokyo.com/2022/05/17/3233/
「2回目:安価で携帯可能な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/10/08/2280/
「カタール配備のC-UASと陸軍のIFPC」→https://holylandtokyo.com/2021/06/02/1708/
「1回目:副次的被害小な兵器試験」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「国防省が小型無人機対処戦略発表」→https://holylandtokyo.com/2021/01/12/295/
「小型ドローン対策に最新技術情報収集」→https://holylandtokyo.com/2020/10/30/445/
「米海兵隊の非公式マニュアル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-31
「ドローン対処を3-5種類に絞り込む」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-14
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米軍喫緊の課題:弾薬確保を産業基盤育成から [安全保障全般]
退役軍人研究者が心もとない現状を取り上げ
政府・議会・米軍・同盟国を含めた対応を訴え
ウへ提供の対戦車ミサイルは米軍保有の半分以上で補填に12年
10月12日付Defense-Newsが、元太平洋軍作戦部長(J3:2017年退役海軍少将)とシンクタンク研究者(陸軍士官学校助教授:元Black Hawkパイロット)による寄稿を掲載し、米国は同盟国とも協力して、早急に弾薬の製造産業基盤の育成や備蓄量増に取り掛かるべきだとの訴えを紹介しています
このお二人の寄稿は今年3月、「ウクライナ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ」とのタイトルのものを一度取り上げていますが、その中でも一番に訴えていたのが「対艦ミサイルLRASM発射母機と同ミサイルを多数準備せよ」で、今回の寄稿にも通じるものがあります
中身は、ウクライナ支援で露呈した米軍の関連弾薬や兵器の備蓄量や製造基盤の弱体振りや、対中国でカギになる対艦ミサイルが同様の問題を抱えていることを紹介し、政府・議会・同盟国も巻き込んだ産業基盤政策と弾薬調達予算が急務だとの訴えです。特に備蓄量や製造能力に一部具体的数字が出ており、興味深いのでご紹介します
2名による寄稿の概要は・・・
●長年にわたり、米国防省と米議会は米国の弾薬製造基盤と調達数の問題を無視し続けてきた。航空機や艦艇や戦闘車両を重視し、弾薬については余った予算枠で調達するような状態を続け、結果として弾薬製造企業が最低限生存できる程度の調達を細々と続けてきたのが実態である
●そして今、我々はウクライナの現状や台湾に迫る危機に直面する中で、この弾薬問題をこれ以上放置することができないぎりぎりのタイミングにある
事例で見る現在の弾薬製造能力
●このような弾薬問題は、例えばウクライナ支援でもクローズアップされることになった。約8500発のJavelin対戦車ミサイルをこれまでに提供しているが、これは米軍が保有する同ミサイル約15000発の半分以上に相当する。また同ミサイルの最大製造能力が年675発であることから、ウクライナ提供分の補填には今後12年を要するのが実態である
●この事態を受け、国防省と議会は遅ればせながら動き始め、関連軍需産業は同ミサイルの製造能力を2倍にしようと検討を始めているが、実際に動き始めてから製造能力拡大が完成するまで2-3年は必要である
●また台湾への中国侵攻リスクが高まる中、世界最大規模の中国艦艇部隊への抑止と対処が重要となるが、このための主要兵器となる対艦ミサイルが大きく不足している
●例えば、代表的な空対艦ミサイルLRASM(Long Range Anti-Ship Missile、海空軍機に搭載可)は、最近のシミュレーションでは800-1200発必要とされているが、現実には200発しか保有していないし、毎年の調達数はここ数年僅か38発でしかない。
●国防省は2023年度予算要求で年88発を要求しているが、このペースが守られても、1000発確保するのに2032年までかかることになり、中国による台湾危機への対処準備の重要性が叫ばれる中、現実との乖離があまりにも著しい
解決への方向性
●このような状態への解決策は、政治的な意思次第で極めてシンプルであり、まず米議会が現在の最大弾薬製造能力分を調達可能な予算を配分し、次のステップとして最大製造能力を拡大できるように更に予算を拡大させていく事である
●この過程で議会は、弾薬に関する複数年購入合意を可能にし、関連軍需産業が将来を見通して製造現場の専門作業者や技術者を確保&養成できる態勢の基礎づくりを支援すべきである
●米国政府は国内政策に加え、同盟国に働きかけ、米国の製造能力拡充に合わせて、米軍や米国納税者の負担を軽減するため、同盟国へのカギとなる弾薬売却を推進すべきである。豪州・日本・英国などはLRASMやSM-6などの将来調達数をレビューすべきである
●この過程で、同盟国との弾薬の共同生産合意も追求すべきである。多国間の協力体制で可能な、より大きな製造能力を年月をかけて構築することで、より抑止力の高い一体となった軍事力を構成可能となる
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この問題は米国に限らず、欧州でも日本でも同じだと思います。かつてリビア支援作戦を米国が欧州に委ねたところ、僅かな期間で欧州諸国の弾薬が底をつき、米国に泣きついた事例があり、当時のゲーツ国防長官が激怒したり、「戦闘機ばかりに投資しないで、弾薬のことも考えろ」と国際問題担当次官補が怒りをあらわにする場面があったりですから・・・
欧州やアジアの同盟国を叱る
「同盟国等へ:米軍の弾薬を今後頼りにするな」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-11-21-1
「警告する、NATOの2極化を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-12
日本も決して例外ではありませんし、豪州や英国と並んで、名指しで協力しろと言われていますので、早めに対処が必要だと思います。老婆心ながら・・・
統合作戦準備が進まず
「大平洋軍や米軍の統合運用進まず」→https://holylandtokyo.com/2022/07/06/3396/
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政府・議会・米軍・同盟国を含めた対応を訴え
ウへ提供の対戦車ミサイルは米軍保有の半分以上で補填に12年


中身は、ウクライナ支援で露呈した米軍の関連弾薬や兵器の備蓄量や製造基盤の弱体振りや、対中国でカギになる対艦ミサイルが同様の問題を抱えていることを紹介し、政府・議会・同盟国も巻き込んだ産業基盤政策と弾薬調達予算が急務だとの訴えです。特に備蓄量や製造能力に一部具体的数字が出ており、興味深いのでご紹介します
2名による寄稿の概要は・・・

●そして今、我々はウクライナの現状や台湾に迫る危機に直面する中で、この弾薬問題をこれ以上放置することができないぎりぎりのタイミングにある
事例で見る現在の弾薬製造能力

●この事態を受け、国防省と議会は遅ればせながら動き始め、関連軍需産業は同ミサイルの製造能力を2倍にしようと検討を始めているが、実際に動き始めてから製造能力拡大が完成するまで2-3年は必要である
●また台湾への中国侵攻リスクが高まる中、世界最大規模の中国艦艇部隊への抑止と対処が重要となるが、このための主要兵器となる対艦ミサイルが大きく不足している

●国防省は2023年度予算要求で年88発を要求しているが、このペースが守られても、1000発確保するのに2032年までかかることになり、中国による台湾危機への対処準備の重要性が叫ばれる中、現実との乖離があまりにも著しい
解決への方向性

●この過程で議会は、弾薬に関する複数年購入合意を可能にし、関連軍需産業が将来を見通して製造現場の専門作業者や技術者を確保&養成できる態勢の基礎づくりを支援すべきである
●米国政府は国内政策に加え、同盟国に働きかけ、米国の製造能力拡充に合わせて、米軍や米国納税者の負担を軽減するため、同盟国へのカギとなる弾薬売却を推進すべきである。豪州・日本・英国などはLRASMやSM-6などの将来調達数をレビューすべきである
●この過程で、同盟国との弾薬の共同生産合意も追求すべきである。多国間の協力体制で可能な、より大きな製造能力を年月をかけて構築することで、より抑止力の高い一体となった軍事力を構成可能となる
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欧州やアジアの同盟国を叱る
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「警告する、NATOの2極化を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-12
日本も決して例外ではありませんし、豪州や英国と並んで、名指しで協力しろと言われていますので、早めに対処が必要だと思います。老婆心ながら・・・
統合作戦準備が進まず
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バイデン政権が国家安全保障戦略NSSを発表 [安全保障全般]
2020年代を将来を左右する「decisive decade」と表現
2021年春の暫定版からロシアによる「ウ」侵略で修正
10月12日、バイデン政権が政権誕生2年目で「国家安全保障戦略:NSS:National Security Strategy」の「公開版」(約48ページ)を発表し、昨年春の暫定版から、ロシアのウクライナ侵略を阻止できなかった反省を踏まえた修正を行い、改めて攻勢的で経済力をつけた中国や、危険なロシアと対峙するため、米国民に投資し、同盟国と共に民主主義と自由市場を守っていく姿勢を示しました
また発表されたNSSは、その下部文書となる「NDS:National Defense Strategy」、「NPR:Nuclear Posture Review」、「MDR:Missile Defense Review」もまもなく発表されることを示すものと理解されています。
NSSは「国家安全保障」に関する文書でそのカバーする範囲は広く、中国やロシア問題を中心として、北極や南極を含む世界全体への姿勢、宇宙やサイバーへの姿勢、更に漁業問題などにも及んでおり、公開版48ページを紹介するのは至難の業ですが、12日付米空軍協会web記事を参考に、「限定的でいい加減なつまみ食い」紹介をさせていただきます
ロシア関連
●ロシアは、無謀なウクライナ侵攻により、中国やインドや日本と比較したステータスを減少させ、外交的な影響力を衰退させ、エネルギーの兵器化で自身に火をつけている。またウクライナ侵略でロシア軍は兵士と装備に大きな犠牲を出して弱体化し、ますます核兵器への依存度を増すことになろう。しかし米国は、ロシアを含むいかなる国も、核兵器の恫喝や使用で目的を達成させない
(なお、NSS発表会見でJake Sullivan安全保障担当大統領補佐官は、トランプ政権時代からカギとなる変化として、国家戦略における核兵器の役割を減少させていく事を、NSS暫定版に続き継承していく事を強調しています)
●米国は同盟国等と共に、ロシアによるウクライナ侵略を戦略的に失敗させるため、軍需民需両方の経済面で締め上げ、ロシアによる多国主権の侵害や多国間体制の弱体化を阻止する。また欧州諸国の、エネルギー面でのロシア離れを支援する
●今後のウクライナ情勢により米国の政策は変化の可能性があるが、米国は引き続きウクライナのEU加盟を支持する(ただし、NATOへの加盟については言及せず)
●ロシアが再び、建設的な役割を担って主要な大国として国際舞台に立てるかは、ロシア国民自らが決断しなければならない
中国関連
●中国は世界で唯一、世界秩序を再編する意図と、それを成し遂げる潜在的な経済力と軍事力を備えた国家であり、米国は対抗して米国内の革新や競争力強化や強靭性強化に投資し、併せて同盟国等との結束を強化しなければならない
●中国対処を考える時、我々は「inflection point」に立っており、時間こそがカギである。今後10年間が「decisive decade」で、我々の選択や対策の優先度設定が、長期的な将来に渡る我が国の競争力を決定づけることになろう
●米国は、信頼できる戦いうる米軍を構築すべく投資優先を的確にし、アジア太平洋地域の同盟国等への中国の侵略を抑止し、同盟国等の自国防衛能力強化を支援していく
●米国は、台湾海峡の平和と安定維持にコミットし、如何なる一方的な現状変更にも反対し、台湾に対する嫌がらせ(coerce)や武力行使に対する台湾の防衛能力強化を支援していく事にコミットする
その他の地域や分野について
●近年ロシアとの接近傾向が見られたトルコと、NATOや西側諸国との関係強化に取り組んでいく
●中東への姿勢はほとんど変化なく、アラブ諸国にイスラエルとの関係正常化を働きかける
●北極圏での中国とロシアのプレゼンス強化傾向にはあまり危機感を強調せず、「必要に応じ」プレゼンスを強化し、不必要なエスカレーションを防止する
●中国やロシアやイランによる、南アメリカ諸国への嫌がらせに対して対抗していく
●環境保護を支援し、国際法や国際規範を顧みない自然環境への破壊的な遠洋漁業の撲滅を図る。また南極を平穏で科学的な保護された大陸として維持する
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様々に報道され、専門家の方の分析が日本のメディアにも出ると思いますので、ご関心の分野にご注目ください
原文は、グラフや図や写真の全くない48ページの文書ですが、のぞいてみてください
ホワイトハウスのNSS紹介Webページ
→ https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/10/12/fact-sheet-the-biden-harris-administrations-national-security-strategy/
NSS現物へのリンク(48ページ)
→ https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2022/10/Biden-Harris-Administrations-National-Security-Strategy-10.2022.pdf
トランプ政権での国家安全保障戦略NSSと関連文書
「国家安全保障政策を概観」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-23-1
「NDS:国家防衛戦略」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-01-20
「リーク版NPR」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-13
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2021年春の暫定版からロシアによる「ウ」侵略で修正

また発表されたNSSは、その下部文書となる「NDS:National Defense Strategy」、「NPR:Nuclear Posture Review」、「MDR:Missile Defense Review」もまもなく発表されることを示すものと理解されています。

ロシア関連
●ロシアは、無謀なウクライナ侵攻により、中国やインドや日本と比較したステータスを減少させ、外交的な影響力を衰退させ、エネルギーの兵器化で自身に火をつけている。またウクライナ侵略でロシア軍は兵士と装備に大きな犠牲を出して弱体化し、ますます核兵器への依存度を増すことになろう。しかし米国は、ロシアを含むいかなる国も、核兵器の恫喝や使用で目的を達成させない

●米国は同盟国等と共に、ロシアによるウクライナ侵略を戦略的に失敗させるため、軍需民需両方の経済面で締め上げ、ロシアによる多国主権の侵害や多国間体制の弱体化を阻止する。また欧州諸国の、エネルギー面でのロシア離れを支援する
●今後のウクライナ情勢により米国の政策は変化の可能性があるが、米国は引き続きウクライナのEU加盟を支持する(ただし、NATOへの加盟については言及せず)
●ロシアが再び、建設的な役割を担って主要な大国として国際舞台に立てるかは、ロシア国民自らが決断しなければならない
中国関連

●中国対処を考える時、我々は「inflection point」に立っており、時間こそがカギである。今後10年間が「decisive decade」で、我々の選択や対策の優先度設定が、長期的な将来に渡る我が国の競争力を決定づけることになろう
●米国は、信頼できる戦いうる米軍を構築すべく投資優先を的確にし、アジア太平洋地域の同盟国等への中国の侵略を抑止し、同盟国等の自国防衛能力強化を支援していく
●米国は、台湾海峡の平和と安定維持にコミットし、如何なる一方的な現状変更にも反対し、台湾に対する嫌がらせ(coerce)や武力行使に対する台湾の防衛能力強化を支援していく事にコミットする
その他の地域や分野について

●中東への姿勢はほとんど変化なく、アラブ諸国にイスラエルとの関係正常化を働きかける
●北極圏での中国とロシアのプレゼンス強化傾向にはあまり危機感を強調せず、「必要に応じ」プレゼンスを強化し、不必要なエスカレーションを防止する
●中国やロシアやイランによる、南アメリカ諸国への嫌がらせに対して対抗していく
●環境保護を支援し、国際法や国際規範を顧みない自然環境への破壊的な遠洋漁業の撲滅を図る。また南極を平穏で科学的な保護された大陸として維持する
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原文は、グラフや図や写真の全くない48ページの文書ですが、のぞいてみてください
ホワイトハウスのNSS紹介Webページ
→ https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/10/12/fact-sheet-the-biden-harris-administrations-national-security-strategy/
NSS現物へのリンク(48ページ)
→ https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2022/10/Biden-Harris-Administrations-National-Security-Strategy-10.2022.pdf
トランプ政権での国家安全保障戦略NSSと関連文書
「国家安全保障政策を概観」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-23-1
「NDS:国家防衛戦略」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-01-20
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NATOが「毎年恒例」の核兵器演習へ [安全保障全般]
10月17日の週に約1週間:戦術核訓練など
NATO加盟30か国中の14ヵ国が参加
恒例の演習を淡々と行うことが誤解や誤判断防止と
10月11日、NATO事務総長のJens Stoltenberg氏がNATO国防相会合前日の記者会見で、ロシアのウクライナ侵略が発生する以前から計画され、毎年実施してきた「恒例の」NATO核兵器演習「Steadfast Noon」を、予定通り10月17日の週に、NATO加盟30か国中の14ヵ国が参加して実施すると説明しました
折しも、ウクライナ侵略で劣勢が伝えられるロシアのプーチン大統領が「ロシア領土を守るため、全ての手段の利用を躊躇しない」と核兵器使用も辞さない姿勢を明確にし始めている中ですが、同事務総長は「定期的に行っている、以前から計画されている演習を突然中止することは、極めて重大で誤ったシグナルを送ることになる」、「NATOの確固たる予期できる行動と軍事力を示すことが、エスカレーションを防ぐ1番の方法だ」と演習実施を説明しています
NATO関係者によれば、「Steadfast Noon」には参加国保有の戦術核兵器搭載可能機による模擬核爆弾投下訓練や、関連する偵察・空中給油などなどの訓練が含まれ、主な訓練はロシア本土から1000㎞以上離れた地域で行われるとのことです
またNATO関係者は、同演習に先立ち、欧州NATO諸国で保管されている核兵器を厳格に管理する役割を担っているNATOの「Nuclear Planning Group」3か国(英米仏)の国防相が13日に会合を行い、本演習の目的や必要な定例事項について確認すると説明し、ロシア側の「misunderstandingsや miscalculations」を招かないよう配慮しているとも認識されています
Stoltenberg事務総長は会見で、プーチン大統領による核兵器使用も辞さないとの示唆に関し、「危険で向こう見ず:dangerous and reckless」な発言だと非難し、「ロシアが核兵器を使用するならば、ロシアに極めて大きな結果をもたらす」と警告するとともに、現状に関し「ロシアの核兵器部隊を厳重に監視しているが、ロシア側部隊の態勢に変化は見られない。引き続き警戒監視を厳にする」と語っています
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ロシアとクリミア半島を結ぶ重要なロシア部隊への補給路「クリミア大橋」が何者かに爆破され、これに激怒したプーチンが、ウクライナ首都への無差別とも言えるミサイル攻撃を行っていますが、ロシア側の手詰まり状態を自らさらけ出しているようにも見えます
NATO事務総長の発言にある通り「NATOの確固たる予期できる行動と軍事力を示すことが、エスカレーションを防ぐ1番の方法」だと思いますが、追い詰められたように見えるプーチン大統領が、果たして「正常な判断ができる合理的なゲームのプレーヤーなのか?」との疑問が頭から離れません・・・心配です。
露がベラルーシに核兵器提供へ
→https://holylandtokyo.com/2022/06/30/3416/
ドイツの核兵器共有の後継機問題
「独がF-35導入へ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/16/2920/
「問題の整理:独新政権が核兵器共有継続」→https://holylandtokyo.com/2022/01/19/2614/
「独3機種混合案検討を認める」→https://holylandtokyo.com/2020/05/09/667/
「独トーネード後継を3機種混合で?」→https://holylandtokyo.com/2020/04/08/719/
「トーネード後継でFA-18優位?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08
「独の戦闘機選定:核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28
戦術核兵器とF-35等
「F-35への戦術核搭載へ第一歩」→https://holylandtokyo.com/2021/10/07/2313/
「米空軍に追加の戦術核は不要」→https://holylandtokyo.com/2020/12/17/345/
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06
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NATO加盟30か国中の14ヵ国が参加
恒例の演習を淡々と行うことが誤解や誤判断防止と



またNATO関係者は、同演習に先立ち、欧州NATO諸国で保管されている核兵器を厳格に管理する役割を担っているNATOの「Nuclear Planning Group」3か国(英米仏)の国防相が13日に会合を行い、本演習の目的や必要な定例事項について確認すると説明し、ロシア側の「misunderstandingsや miscalculations」を招かないよう配慮しているとも認識されています

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ロシアとクリミア半島を結ぶ重要なロシア部隊への補給路「クリミア大橋」が何者かに爆破され、これに激怒したプーチンが、ウクライナ首都への無差別とも言えるミサイル攻撃を行っていますが、ロシア側の手詰まり状態を自らさらけ出しているようにも見えます

露がベラルーシに核兵器提供へ
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ドイツの核兵器共有の後継機問題
「独がF-35導入へ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/16/2920/
「問題の整理:独新政権が核兵器共有継続」→https://holylandtokyo.com/2022/01/19/2614/
「独3機種混合案検討を認める」→https://holylandtokyo.com/2020/05/09/667/
「独トーネード後継を3機種混合で?」→https://holylandtokyo.com/2020/04/08/719/
「トーネード後継でFA-18優位?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08
「独の戦闘機選定:核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28
戦術核兵器とF-35等
「F-35への戦術核搭載へ第一歩」→https://holylandtokyo.com/2021/10/07/2313/
「米空軍に追加の戦術核は不要」→https://holylandtokyo.com/2020/12/17/345/
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
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フロノイ女史が中国抑止を再び語る [安全保障全般]
Austinじゃなくてフロノイのはずだったのに・・・
CNAS共同創設者が再び中国抑止を語ります
元国防省No3の政策担当次官(2009-12)
10月6日、バイデン政権の国防長官候補ダントツNo1だったMichèle Flournoy女史が、Atlantic Council主催で「いかに中国を抑止するか」とのテーマで登場し、米国や西側同盟が軍事力強化を一定レベルに強化完了する2030年までに中国は台湾侵攻を企てる恐れが高いことから、誰も真剣に考えていない2030年までに専従する担当幹部を配置し、最新技術を既存装備と結び付ける施策に注力する必要性&重要性などを訴えています。
Flournoy女史は国防省No3の政策担当次官を2009年から約3年間勤め、それ以前の国防省経験も含め複数回のQDR等政策文書とりまとめに従事した「プロ」で、バイデン政権誕生時には9割以上の専門家が「次期国防長官確実」と予想していた人物ですが、結果的には「米産軍複合体の闇を感じる」と噂された最終盤でのドンデン返しで、全く存在感がない現在のAustin国防長官が誕生した経緯を経験した人材です。
昨年4月に同テーマでの発言をご紹介(末尾の過去記事参照)して以来のブログ「東京の郊外より」登場ですが、まんぐーす的には非常に興味深い視点だと感じましたので、久々にFlournoy節を取り上げさせていただきます
Michèle Flournoy女史はWeb講演で
●米国防省や各軍種の新たな装備品や能力造成計画の大半は、2030年代戦力化を目指しているが、習近平は米国や西側同盟国が完全に新戦力体系を手にする前ならば、中国による台湾侵攻の「可能性の窓」が開いていると見なす可能性がある
●米国防省は、2020年代後半に中国による台湾侵攻可能性が高いことを強く認識し、この中期的大課題に専従する人材を配置することから始めるべきである
●このような中国にとっての「可能性の窓」が生まれる背景には、国防省や各軍種参謀総長が2030年以降を見据えた長期的戦力造成を考えている一方で、最前線の地域戦闘コマンド司令官が2-3年先の短期的視点に集中する傾向があるからで、結果的に2020年代後半の中期的問題を誰も日常的に考えていない状態に陥っている
●この中期的課題に専従担当する人材を配置したら、国防省は「アポロ13号対処」に学んで取り組むべきだ。つまりアポロ13号事故の際、皆が知恵を出し合い、宇宙船内に存在するものだけを活用して乗員3名を無事地球に帰還させたように、開発中の将来技術を待つのではなく、現存する技術を最大限に活用して最大限の能力を獲得し、習近平中国を抑止&撃退することを考えるべきだ
●具体的には、西太平洋や中国近傍の戦闘エリアで圧倒的な戦力数的不利に米軍は直面するが、有人機と安価な無人機を組み合わせた一体運用(Kendall空軍長官がCCA:ollaborative combat aircraftと呼称する安価な無人機ウイングマンの活用)などにより、近未来でも数的不利のギャップを埋めることが可能になるだろう
●この際、ウクライナでのロシア軍の「役立たずぶり」を見て、実戦経験のない中国軍を「ロシア軍と同じく役立たず」と楽観視したくなる誘惑に負けてはならない。中国軍は多くの問題を抱え、困難にも直面しているが、同時に彼らは過去10年、驚くべきペースで軍の近代化を成し遂げ、プロ集団になりつつある。決して過小評価してはならない
///////////////////////////////////////////
Michèle Flournoy氏のパネル討議(7分頃から発言・計62分)
国防省や各軍種上層部は長期での戦力造成を中心に考え、前線指揮官は2-3年後を念頭に置いており、結果として中期的な視点での対応をけん引する者が存在しない・・・ここ最近の国防省や各軍種の動きと、前線部隊指揮官の発言を振り返ると、ひざを叩きたくなるご指摘です。
さすがに、国防省での実務担当者とシンクタンクでの研究者の両方で、大きな足跡を残してきたFlournoy女史ならではの視点です。「アポロ13号的対処」の意味がピンとこない方は、ぜひトム・ハンクス主演の映画「アポロ13号」をご覧ください
フロノイ女史の思考
「中国抑止を考える」→https://holylandtokyo.com/2021/04/05/99/
「必要な国防政策を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/08/17/526/
「米議会で中国抑止を議論」→https://holylandtokyo.com/2020/01/22/871/
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CNAS共同創設者が再び中国抑止を語ります
元国防省No3の政策担当次官(2009-12)


昨年4月に同テーマでの発言をご紹介(末尾の過去記事参照)して以来のブログ「東京の郊外より」登場ですが、まんぐーす的には非常に興味深い視点だと感じましたので、久々にFlournoy節を取り上げさせていただきます
Michèle Flournoy女史はWeb講演で

●米国防省は、2020年代後半に中国による台湾侵攻可能性が高いことを強く認識し、この中期的大課題に専従する人材を配置することから始めるべきである

●この中期的課題に専従担当する人材を配置したら、国防省は「アポロ13号対処」に学んで取り組むべきだ。つまりアポロ13号事故の際、皆が知恵を出し合い、宇宙船内に存在するものだけを活用して乗員3名を無事地球に帰還させたように、開発中の将来技術を待つのではなく、現存する技術を最大限に活用して最大限の能力を獲得し、習近平中国を抑止&撃退することを考えるべきだ

●この際、ウクライナでのロシア軍の「役立たずぶり」を見て、実戦経験のない中国軍を「ロシア軍と同じく役立たず」と楽観視したくなる誘惑に負けてはならない。中国軍は多くの問題を抱え、困難にも直面しているが、同時に彼らは過去10年、驚くべきペースで軍の近代化を成し遂げ、プロ集団になりつつある。決して過小評価してはならない
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Michèle Flournoy氏のパネル討議(7分頃から発言・計62分)
国防省や各軍種上層部は長期での戦力造成を中心に考え、前線指揮官は2-3年後を念頭に置いており、結果として中期的な視点での対応をけん引する者が存在しない・・・ここ最近の国防省や各軍種の動きと、前線部隊指揮官の発言を振り返ると、ひざを叩きたくなるご指摘です。
さすがに、国防省での実務担当者とシンクタンクでの研究者の両方で、大きな足跡を残してきたFlournoy女史ならではの視点です。「アポロ13号的対処」の意味がピンとこない方は、ぜひトム・ハンクス主演の映画「アポロ13号」をご覧ください
フロノイ女史の思考
「中国抑止を考える」→https://holylandtokyo.com/2021/04/05/99/
「必要な国防政策を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/08/17/526/
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20年ぶりにロシア人を米国ロケットで宇宙へ [安全保障全般]
若田さんも搭乗のSpaceXロケットで
初の米国原住民女性を含む4名で国際宇宙ステーションへ
米露関係が悪化の一途をたどる中で・・・
10月5日、フロリダ州からSpaceX社のFalcon-9ロケットが国際宇宙ステーションに向けた打ち上げに成功し、ウクライナ侵略で米露関係が最悪の状態にある中、20年ぶりにロシア人宇宙飛行士(Anna Kikina:冒頭写真右端)が搭乗員4名の一人として米国から飛び立ったと話題になっています。
更に、NASA長官のBill Nelson氏は打ち上げ直前、国際宇宙ステーションISSで米国人とロシア人が継続して同時に活動している状態を維持するため、米露それぞれのロケット打ち上げに失敗があっても大丈夫なように、ロシア人宇宙飛行士を米国ロケットで、米国人飛行士を露ロケットで交換打ち上げすることに今夏合意し、次回の交換打ち上げは来春だと発表し、今の米ロ関係の中で大きな話題になっています
なおロシアのソユーズロケットによる打ち上げで、約2週間前に米国人Frank Rubio宇宙飛行士がカザフスタンの発射場から既にISSに到着しているとのことです。
また、4名の搭乗員の一人が「初の女性Native American」(Nicole Mann海兵隊大佐:冒頭写真左から2人目女性)で、Native American男性が最初に宇宙滞在した2002年以来の「Native American」宇宙飛行士誕生でも話題になっています
そして日本人として誇らしいのが、4名の中で唯一の宇宙飛行経験者で、今回5回目のISS滞在となる若田光一さんの搭乗で、もう一人の男性宇宙飛行士Josh Cassada米海軍大佐と力を合わせ、現在の米国人とイタリア人クルーから任務を引き継ぎ、来年3月までISSでの活動を予定しています
今回の打ち上げは、米国史上最大のハリケーン被害とも言われている「Hurricane Ian」の襲来により延期されていましたが、クルーのリーダーである若田さんは「この打ち上げ、で少しでもフロリダの空を明るくできれば」との言葉を打ち上げ直前に残して出発しました
なおロシアは今年に入り、2020年代中にロシア製宇宙ステーションを軌道上に配置して国際宇宙ステーションから撤退すると発表していましたが、今週に入り少なくとも2024年まではISSにコミットし、「ロシア製宇宙基地はすぐには実現しない。それまでは米露はともにISSで飛行する」と関係幹部が語ったと報じられています
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ウクライナ情勢は「核兵器」も絡んで緊迫の度を深め、米露関係は悪化の一途ですが、ロシアのISS活動への当面コミット発言が、世界の空を少しでも明るくしてくれることを期待し、5日付Military.com記事をご紹介しました
これまでISSを取り上げた際は、ロシアの衛星破壊兵器実験でISSが危険な状態に置かれた・・・等の暗いニュースでしたが、今後に期待したいと思います
関連の記事
「露の衛星破壊兵器実験でISSが危険に」→https://holylandtokyo.com/2021/11/17/2435/
「ロシア衛星がなどの物体射出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-24
「怪しげなロシア衛星問題提起」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-04
女性と宇宙
「初の女性月面着陸を目指し」→https://holylandtokyo.com/2021/07/05/1935/
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初の米国原住民女性を含む4名で国際宇宙ステーションへ
米露関係が悪化の一途をたどる中で・・・

更に、NASA長官のBill Nelson氏は打ち上げ直前、国際宇宙ステーションISSで米国人とロシア人が継続して同時に活動している状態を維持するため、米露それぞれのロケット打ち上げに失敗があっても大丈夫なように、ロシア人宇宙飛行士を米国ロケットで、米国人飛行士を露ロケットで交換打ち上げすることに今夏合意し、次回の交換打ち上げは来春だと発表し、今の米ロ関係の中で大きな話題になっています

また、4名の搭乗員の一人が「初の女性Native American」(Nicole Mann海兵隊大佐:冒頭写真左から2人目女性)で、Native American男性が最初に宇宙滞在した2002年以来の「Native American」宇宙飛行士誕生でも話題になっています

今回の打ち上げは、米国史上最大のハリケーン被害とも言われている「Hurricane Ian」の襲来により延期されていましたが、クルーのリーダーである若田さんは「この打ち上げ、で少しでもフロリダの空を明るくできれば」との言葉を打ち上げ直前に残して出発しました

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ウクライナ情勢は「核兵器」も絡んで緊迫の度を深め、米露関係は悪化の一途ですが、ロシアのISS活動への当面コミット発言が、世界の空を少しでも明るくしてくれることを期待し、5日付Military.com記事をご紹介しました

関連の記事
「露の衛星破壊兵器実験でISSが危険に」→https://holylandtokyo.com/2021/11/17/2435/
「ロシア衛星がなどの物体射出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-24
「怪しげなロシア衛星問題提起」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-04
女性と宇宙
「初の女性月面着陸を目指し」→https://holylandtokyo.com/2021/07/05/1935/
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元グーグルCEOがAI作成の生物兵器に危機感 [安全保障全般]
国家安全保障評議会の共同議長として訴える
自身で創設の技術動向シンクタンクでの研究など紹介
9月12日、元グーグルCEOで国家安全保障評議会(National Security Commission)の共同議長を務めるEric Schmidt氏が記者団に、彼が同評議会メンバー有志をメンバーに立ち上げたシンクタンクの研究レポートに言及し、AIが生物学や化学データーベースを利用して生物兵器開発に使用された場合、毒性の高い新たな病原体やウイルスや生み出される懸念が近未来にリスクとして顕在化すると訴えました
レポート「Mid-Decade Challenges to National Competitiveness」では、生物学者も製薬会社も安全保障関係者もあまり意識していないが、最近の生物学とAI技術の発展により、悪意ある者が生物&化学データベースとAIを結び付け、人類を傷つける新たなものを生み出す可能性が高まっていることに警鐘を鳴らしているようです
一例としてSchmidt氏の発言を紹介した12日付Defense-Newsは、最近製薬会社「Collaborations Pharmaceuticals」が、新薬開発時に毒性を排除するために作成されたAIアルゴリズムを改良し、毒物を生み出すようなアルゴリズムに変更して走らせてみると、製薬会社担当者たちが驚くほど容易に危険物質を生み出すことが可能だと判明したと報じています
実際に担当した製薬会社技術者たちは、病原菌や毒物を生み出す危険性をぼんやりとしか意識していなかったが、化学兵器や生物兵器問題を議論する会議に招待されたことを契機に上記のようなAI「逆利用」を試み、大変危険な悪用の可能性を秘めていることに改めて気づかされたと吐露し、
「我々はエボラ出血熱など危険なプロジェクトに関与していながら、意識が薄かった」とか、「市販のAIアルゴリズムを少し改良し、公に利用可能な分子データベースと組み合わせ、20世紀最強の神経ガスと呼ばれるVX生成に取り組んだところ、6時間以内に基準レベルの分子40,000 moleculesをサーバー内で生成し、その中には既知の化学兵器物質の他、より毒性の強い可能性が分子も含まれていた」と述べています
別の視点としてSchmidt氏らのレポートは、生物学データベースの強化と同時に、管理を強化することの必要性も訴えています。
例えば、米国防省の「統合病原菌センター」は、数十年蓄積した世界で最も広範な病理細胞サンプルを保管貯蔵していますが、現在これらをデジタル化し、AIにより診断や治療方針決定に利用するプロジェクトが進められている中で、このデジタルデータベースの強化&活用と同時に、セキュリティー強化も重視されているようです
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新型コロナウイルスの起源については全く議論が煮詰まっていませんが、その影響の大きさについては全人類が身に染みて感じたところです。
そんな中でのAI活用による新たな生物兵器や化学兵器の開発話に、ぞっとする思いがいたしました。なお厳密には、Schmidt氏は「biological warfare」や「biological conflict」との言葉を使っているので、生物兵器「biological weapons」より意味するところが広いのかもしれません。
でも元グーグルCEOのEric Schmidt氏はえらいですね。現在67歳で、ご経歴からすると十二分に悠々自適な暮らしができる余裕のある方でしょうが、今も最前線の課題にリーダーとして挑まれている姿に感心いたします。
生物化学兵器関連
「化学生物兵器を無効化するX線爆弾開発!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-07-08-2
「弾頭7.6万ポンド以上で化学兵器飛散を防止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-04-21
「朝鮮半島の戦いは「汚い戦争」に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-02-10
「NKはB兵器保有か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-16-1
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自身で創設の技術動向シンクタンクでの研究など紹介

レポート「Mid-Decade Challenges to National Competitiveness」では、生物学者も製薬会社も安全保障関係者もあまり意識していないが、最近の生物学とAI技術の発展により、悪意ある者が生物&化学データベースとAIを結び付け、人類を傷つける新たなものを生み出す可能性が高まっていることに警鐘を鳴らしているようです

実際に担当した製薬会社技術者たちは、病原菌や毒物を生み出す危険性をぼんやりとしか意識していなかったが、化学兵器や生物兵器問題を議論する会議に招待されたことを契機に上記のようなAI「逆利用」を試み、大変危険な悪用の可能性を秘めていることに改めて気づかされたと吐露し、

別の視点としてSchmidt氏らのレポートは、生物学データベースの強化と同時に、管理を強化することの必要性も訴えています。

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新型コロナウイルスの起源については全く議論が煮詰まっていませんが、その影響の大きさについては全人類が身に染みて感じたところです。

でも元グーグルCEOのEric Schmidt氏はえらいですね。現在67歳で、ご経歴からすると十二分に悠々自適な暮らしができる余裕のある方でしょうが、今も最前線の課題にリーダーとして挑まれている姿に感心いたします。
生物化学兵器関連
「化学生物兵器を無効化するX線爆弾開発!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-07-08-2
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10月伊空軍トップが来日し次期戦闘機協力協議へ [安全保障全般]
Defense Newsにイタリア空軍参謀総長が語る
英伊スウェーデン開発の将来戦闘機とF-2後継機の協力
微妙な技術協力範囲の調整が重要と示唆
欧州での次期戦闘機開発の一本化の可能性も
9月22日付Defense-Newsが、10月に日本の招待で来日予定のLuca Gorettiイタリア空軍参謀総長へのインタビュー記事を掲載し、英伊スウェーデンが共同開発中の次期戦闘機TEMPEST(FCAS:Future Combat Air System)計画と、航空自衛隊のF-2後継機開発における技術シェア可能分野を話し合う機会にもなるとのコメントを紹介しています
欧州の次世代戦闘機開発は、共に2018年頃からスタートした、英伊スウェーデンによるTEMPEST(FCAS)計画と、独仏スペインのFCAS計画がありますが、日本は三菱製の国産F-2支援戦闘機の後継機開発に英国との協力を模索して、日英企業間のエンジンやセンサー開発協力に「のろし」を上げているところです
更に7月の英国Farnborough航空ショーで英国防相が、英国イタリア日本で次期戦闘機に関する「joint concept analysis」を進めており、年内に協力して何が出来るかを取りまとめることになっていると語っていましたが、この協議の一環と考えると、イタリア空軍参謀総長の来日とインタビュー発言が結びつきます
以下では、記事からGorettiイタリア空軍参謀総長の言葉をご紹介しますが、欧州と日本での運用環境や脅威環境の違いや、技術をオープンに出来る範囲など、協力関係の根本にかかわる重い課題が残されていることが示唆されています。
インタビューでイタリア空軍参謀総長は・・・
●10月に航空幕僚長の招待を受け訪日するが、共通のプログラムに関し、ビジョンを共有し、ビジョンの共通しているところを確認する機会になろう。日本は彼らのF-X計画(F-2後継機計画)に導入可能な技術を、TEMPEST計画から得ることが可能になるかもしれないので、我々それぞれの軍需産業が何が何時出来るかについて、理解を深めることになろう
●(日本がTEMPEST計画に参画する可能性もあると示唆しつつ、)仮に日本のような国がTEMPEST計画に加われば、関係国それぞれが持つ(技術の)現実を知る良い機会になるだろう
●(ただし、)我々はNATO諸国として、地中海や欧州がメインの焦点であり、FCAS計画(TEMPEST計画の別称)はNATOの安全保障規定に違反しないよう、技術交換に関し厳格に様々な側面から管理されている。
●NATOと日本はそれぞれに異なった戦略上の関心を持っていることから、専門家により如何に作戦コンセプトを共有して安全に技術情報協力が行えるか協議を進めている
欧州での次期戦闘機開発について
●(英伊スウェーデンとは別に、仏独スペインも次世代戦闘機開発計画を進めているが、仏Dassault社と独Airbus社の主導権争いで紛糾している状況に関連し、)TEMPEST計画と仏独チームの開発計画が合体する可能性はまだ残されていると思う。
●戦闘機開発は巨大な投資を必要とし、単一国では行えない。欧州各国は投資コストを抑えたいと思っており、トーネードやユーロファイターの時と同じようなことが起こる得る。
●仏独は異なる道を進んでいるが、欧州で2つのプラットフォーム開発を同時に進めることは経済的に持続可能ではない。各国が要求事項を取りまとめ、一つのプラットフォームにまとまる可能性は十分あると思う
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9月上旬まで豪州北部で行われた対中国を強く意識したPitch Black演習には、はるばる欧州から英仏独蘭4か国から戦闘機が参加しましたが、戦闘機開発と言う産業政策までを含む大きなお金の動くプロジェクトとなると、欧州とアジアの間には、まだ越えなければならない大きな壁があることを、イタリア空軍参謀総長の発言から感じました(邪推ですが・・・)
ウクライナ関連で、欧州諸国は米国との関係も無視できないでしょうから・・・・。考えれば考えるほどハードルが高そうな気がしますが・・・
同参謀総長は1962年5月生まれの60歳で、2021年11月から同職についており、どれだけ任期が残っているのかわかりませんが、自国も参画している戦闘機プロジェクトに関し、他プロジェクトとの「合体」の可能性を示唆するとは、お国柄の違いというか、自由と言うか、日本での発言に注目(期待)したいと思います・・・。誰も注目せず、報道されないでしょうけど・・・。
英国の戦闘機関連話題
「2027年までにデモ機を作成発表」→https://holylandtokyo.com/2022/07/22/3480/
「英国がTyphoonレーダー換装推進」→https://holylandtokyo.com/2022/06/10/3303/
「英空軍トップが語る」→https://holylandtokyo.com/2021/05/19/1493/
「英国の138機F-35購入計画は多くて60-72機へ!?」→https://holylandtokyo.com/2021/03/31/174/
欧州の戦闘機開発
「英戦闘機開発にイタリアも参加へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-11
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2
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英伊スウェーデン開発の将来戦闘機とF-2後継機の協力
微妙な技術協力範囲の調整が重要と示唆
欧州での次期戦闘機開発の一本化の可能性も

欧州の次世代戦闘機開発は、共に2018年頃からスタートした、英伊スウェーデンによるTEMPEST(FCAS)計画と、独仏スペインのFCAS計画がありますが、日本は三菱製の国産F-2支援戦闘機の後継機開発に英国との協力を模索して、日英企業間のエンジンやセンサー開発協力に「のろし」を上げているところです

以下では、記事からGorettiイタリア空軍参謀総長の言葉をご紹介しますが、欧州と日本での運用環境や脅威環境の違いや、技術をオープンに出来る範囲など、協力関係の根本にかかわる重い課題が残されていることが示唆されています。
インタビューでイタリア空軍参謀総長は・・・

●(日本がTEMPEST計画に参画する可能性もあると示唆しつつ、)仮に日本のような国がTEMPEST計画に加われば、関係国それぞれが持つ(技術の)現実を知る良い機会になるだろう

●NATOと日本はそれぞれに異なった戦略上の関心を持っていることから、専門家により如何に作戦コンセプトを共有して安全に技術情報協力が行えるか協議を進めている
欧州での次期戦闘機開発について
●(英伊スウェーデンとは別に、仏独スペインも次世代戦闘機開発計画を進めているが、仏Dassault社と独Airbus社の主導権争いで紛糾している状況に関連し、)TEMPEST計画と仏独チームの開発計画が合体する可能性はまだ残されていると思う。

●仏独は異なる道を進んでいるが、欧州で2つのプラットフォーム開発を同時に進めることは経済的に持続可能ではない。各国が要求事項を取りまとめ、一つのプラットフォームにまとまる可能性は十分あると思う
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9月上旬まで豪州北部で行われた対中国を強く意識したPitch Black演習には、はるばる欧州から英仏独蘭4か国から戦闘機が参加しましたが、戦闘機開発と言う産業政策までを含む大きなお金の動くプロジェクトとなると、欧州とアジアの間には、まだ越えなければならない大きな壁があることを、イタリア空軍参謀総長の発言から感じました(邪推ですが・・・)

同参謀総長は1962年5月生まれの60歳で、2021年11月から同職についており、どれだけ任期が残っているのかわかりませんが、自国も参画している戦闘機プロジェクトに関し、他プロジェクトとの「合体」の可能性を示唆するとは、お国柄の違いというか、自由と言うか、日本での発言に注目(期待)したいと思います・・・。誰も注目せず、報道されないでしょうけど・・・。
英国の戦闘機関連話題
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欧州の戦闘機開発
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シンガポールはF-35B導入承認済もA型にも興味 [安全保障全般]
2020年にB型4機導入承認を米政府から得ているが
A型とB型が参加したPitch Black演習でA型も吟味
少佐を長とするチームが機種選定を担当する「若い」組織
9月6日付Defense-Newsが、2020年に米国防省からF-35B型(短距離離着陸型)の購入承認を得ているシンガポール空軍が、豪州で実施されたPitch Black演習(8/19~9/9)などの機会を利用してA型(通常離着陸型)の情報も収集中で、同国担当幹部が「B型以外を選択するオプションは残されている」と語ったと紹介しています
シンガポールは現在60機の能力向上改修を終えたF-16C/D型を保有していますが、2030年には機体寿命からF-16の退役が始まるようで、少佐(!)をリーダーとする5名のチームで次期戦闘機の選定を進めており、2020年1月に米国製兵器輸出許可の窓口である米国務省から、追加で8機導入オプションが付いた4機のF-35B型機調達許可を得ており、2026年から機体を受領することとなっています
そんな中ですが、シンガポール機種選定チームリーダーであるZhang Jian Wei少佐が、F-35A型(豪州空軍)とB型(米海兵隊:岩国基地所属)の両方が参加している豪州主催のPitch Black演習を準備段階から精力的に見て回る中で、記者団に具体的な機種選定決定時期については言及を避けつつ「更なる決断は可能になった段階で行う」と述べ、人口570万人ながら「したたかな」小国シンガポールの存在感を示したようです
同国は2020年にF-35B型導入承認を米国から得て、F-35の細部情報へのアクセスが可能になると同時に精力的にF-35細部情報収集を開始し、米軍の他、既に導入を開始している欧州やアジア各国ともコンタクトして、導入準備や「B型以外」のオプション検討を進めて来たようです
同少佐らはPitch Black演習で、F-35A型とB型がF-15、16、Su-30、Eurofighterなどと共に訓練し、F-35が参加した初の大規模航空作戦演習におけるF-35の「force multiplier」ぶりを豪州空軍や米海兵隊F-35部隊に密着して確認し、併せて維持整備部門ともコンタクトしてF-35導入(型式選定も含め)準備を進めているようです
ちなみに、国土の狭いシンガポールは、米国アリゾナ州Luke空軍基地にシンガポール空軍F-16訓練飛行隊を置いて操縦者等養成していますが、F-35への機種変更に伴い、F-16訓練部隊は2023年にアーカンサス州に移り、Lule基地には機体受領に併せてF-35訓練飛行隊が配置されるとのことです
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シンガポールは東京23区と同程度の面積に約570万人の人口ですが、その国がF-16を60機と最新のF-15を40機、ヘリ70機や輸送機15機、E-2C4機など多様な装備を保有し、空軍13000名程度で運用していることに驚かされます
シンガポール空軍はトップが40代後半で、次期戦闘機選定の実務を少佐がリーダーで行っている「若さ」あふれる国です。
小規模な国で世界最先端を目指すため、社会統制や規律が厳しく、「豊かで明るい北朝鮮」とも表現される国ですが、F-35導入を巡る「身のこなし」からもその「しっかり者感」が伝わってきます
シンガポール関連の記事
「F-35B売却許可」→https://holylandtokyo.com/2020/01/15/866/
「2021年シャングリラ会合中止&過去の同会合」→https://holylandtokyo.com/2021/06/04/1783/
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A型とB型が参加したPitch Black演習でA型も吟味
少佐を長とするチームが機種選定を担当する「若い」組織

シンガポールは現在60機の能力向上改修を終えたF-16C/D型を保有していますが、2030年には機体寿命からF-16の退役が始まるようで、少佐(!)をリーダーとする5名のチームで次期戦闘機の選定を進めており、2020年1月に米国製兵器輸出許可の窓口である米国務省から、追加で8機導入オプションが付いた4機のF-35B型機調達許可を得ており、2026年から機体を受領することとなっています

同国は2020年にF-35B型導入承認を米国から得て、F-35の細部情報へのアクセスが可能になると同時に精力的にF-35細部情報収集を開始し、米軍の他、既に導入を開始している欧州やアジア各国ともコンタクトして、導入準備や「B型以外」のオプション検討を進めて来たようです

ちなみに、国土の狭いシンガポールは、米国アリゾナ州Luke空軍基地にシンガポール空軍F-16訓練飛行隊を置いて操縦者等養成していますが、F-35への機種変更に伴い、F-16訓練部隊は2023年にアーカンサス州に移り、Lule基地には機体受領に併せてF-35訓練飛行隊が配置されるとのことです
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シンガポール空軍はトップが40代後半で、次期戦闘機選定の実務を少佐がリーダーで行っている「若さ」あふれる国です。
小規模な国で世界最先端を目指すため、社会統制や規律が厳しく、「豊かで明るい北朝鮮」とも表現される国ですが、F-35導入を巡る「身のこなし」からもその「しっかり者感」が伝わってきます
シンガポール関連の記事
「F-35B売却許可」→https://holylandtokyo.com/2020/01/15/866/
「2021年シャングリラ会合中止&過去の同会合」→https://holylandtokyo.com/2021/06/04/1783/
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Pitch Black演習で空中給油機外交が花盛り [安全保障全般]
豪、米、仏、シンガポール、NATO、韓国の給油機参加
韓国以外は他国作戦機に給油して連携強化図る
米KC-130J以外は全てA330 MRTTですが・・・
欧州とアジア諸国の対中国連携の象徴として
9月8日付Defense-Newsが、8月19日から9月9日の間に豪州北部で実施された大規模空軍演習Pitch Blackに、欧州を含む国から過去最大規模の空中給油機が参加し、他国の参加機に給油を行うなど多国間大規模演習ならでは有意義な訓練が実施されたと報じています
同演習には、主催国である豪州以外に16か国(米英仏独日韓印加蘭NZシンガポール、インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシア、UAE)から約2500名と航空機100機が参加し、うち空中給油機は7か国合計9機(豪2機と英仏NATO韓シンガポールは各1機A330MRTT、米海兵隊2機KC-130)が参加したとのことです
7か国から参加した9機の給油機の内、韓国の給油機は自国航空機へのみ給油を行ったということですが、他の6か国給油機は以下に記載するように、他国の参加機に空中給油を行って連携強化を図った模様です。なお給油機は駐機するスペースが不足したことから、北部豪州の豪空軍Darwin基地とTindal基地、更に2000NM離れたAmberley基地に分散して展開したとのことです
参加各国空中給油機による給油訓練実績(記事記載部分)
●NATO給油機A330MRTT(オランダ登録も演習では独が運用)
豪州EA-18G電子戦機とF-35A戦闘機に給油
●シンガポール給油機A330MRTT
豪州F-35Aと米海兵隊F-35B、仏ラファール、英タイフーン、豪州EA-18GとA330給油機へ給油
更にDarwin基地の滑走路一時閉鎖の際に、緊急給油を独ユーロファイターに実施
●仏給油機A330MRTT
シンガポールF-16、インドSu-30、豪州F-35A、豪州C-17輸送機とP-8対潜哨戒機へ給油
●英給油機A330MRTT
仏ラファールと米F-35Bに給油
●米海兵隊給油機KC-130J(岩国所属)
英ユーロファイターに給油
尚記事によると、9機の給油機の内、最大で5機が同時に在空して演習に参加していたとのことです
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対中国の戦いでは、第一列島線上や西太平洋の島々にしか西側飛行場がなく、しかも航空戦力を中国のミサイル攻撃に備えて分散運用させる方針であることから、空中給油機の役割は極めて大なるものがあり、本演習での多国間給油訓練は非常に意義深いものであるはずです
そんな重要な訓練にも関わらず、米空軍と日本のみが使用するKC-46A空中給油機が参加していない点が気になり、同時に、改めて西側主要国の大半(米日イスラエルを除く。サウジとUAEも採用)がA330MRTT給油機を採用している現実に気付かされます
米軍戦力依存ではなく、同盟国の力を示す機会なのかもしれませんが、KC-46の重大不具合が未解決で作戦投入許可が出ていない影響かもしれません。日本から参加のF-2戦闘機は、本演習に参加するため豪州A330MRTT給油機にわざわざ日本へ来てもらい、同給油機から給油する訓練までしてもらってやっと本演習に参加している次第ですから。
別の視点で、シンガポール給油機が存在感を発揮している点に注目です。小国ではありますが、国家の柔軟性と現場の努力により、「きらりと光る」ものを見せています
豪州主催Pitch Black空軍演習の関連
「シンガポールはA型にも興味」→https://holylandtokyo.com/2022/09//3638/
「ドイツ戦闘機が初参加で日本にも飛来」→https://holylandtokyo.com/2022/08/18/3566/
「豪州KC-30A給油機と空自F-2の給油適合試験」→https://holylandtokyo.com/2022/05/10/3211/
KC-46のゴタゴタ具合
「空軍長官:KC-46の固定価格契約は誤り」→https://holylandtokyo.com/2022/06/06/3323/
「RVS改修案にやっと合意:完了は2024年以降」→https://holylandtokyo.com/2022/04/27/3181/
「50機目受領も恒久対策未定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-11
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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韓国以外は他国作戦機に給油して連携強化図る
米KC-130J以外は全てA330 MRTTですが・・・
欧州とアジア諸国の対中国連携の象徴として

同演習には、主催国である豪州以外に16か国(米英仏独日韓印加蘭NZシンガポール、インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシア、UAE)から約2500名と航空機100機が参加し、うち空中給油機は7か国合計9機(豪2機と英仏NATO韓シンガポールは各1機A330MRTT、米海兵隊2機KC-130)が参加したとのことです

参加各国空中給油機による給油訓練実績(記事記載部分)
●NATO給油機A330MRTT(オランダ登録も演習では独が運用)
豪州EA-18G電子戦機とF-35A戦闘機に給油
●シンガポール給油機A330MRTT
豪州F-35Aと米海兵隊F-35B、仏ラファール、英タイフーン、豪州EA-18GとA330給油機へ給油
更にDarwin基地の滑走路一時閉鎖の際に、緊急給油を独ユーロファイターに実施
●仏給油機A330MRTT
シンガポールF-16、インドSu-30、豪州F-35A、豪州C-17輸送機とP-8対潜哨戒機へ給油
●英給油機A330MRTT
仏ラファールと米F-35Bに給油
●米海兵隊給油機KC-130J(岩国所属)
英ユーロファイターに給油
尚記事によると、9機の給油機の内、最大で5機が同時に在空して演習に参加していたとのことです
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そんな重要な訓練にも関わらず、米空軍と日本のみが使用するKC-46A空中給油機が参加していない点が気になり、同時に、改めて西側主要国の大半(米日イスラエルを除く。サウジとUAEも採用)がA330MRTT給油機を採用している現実に気付かされます

別の視点で、シンガポール給油機が存在感を発揮している点に注目です。小国ではありますが、国家の柔軟性と現場の努力により、「きらりと光る」ものを見せています
豪州主催Pitch Black空軍演習の関連
「シンガポールはA型にも興味」→https://holylandtokyo.com/2022/09//3638/
「ドイツ戦闘機が初参加で日本にも飛来」→https://holylandtokyo.com/2022/08/18/3566/
「豪州KC-30A給油機と空自F-2の給油適合試験」→https://holylandtokyo.com/2022/05/10/3211/
KC-46のゴタゴタ具合
「空軍長官:KC-46の固定価格契約は誤り」→https://holylandtokyo.com/2022/06/06/3323/
「RVS改修案にやっと合意:完了は2024年以降」→https://holylandtokyo.com/2022/04/27/3181/
「50機目受領も恒久対策未定」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-11
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