予算案公開を前に国防長官が省内にメッセージ [オースチン国防長官]
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就任から3年目に臨むオースチン長官の情勢認識
予算の重視事項や国防省の抱える課題を概観するために
3月2日、就任から2年を経て3年目に入るオースチン国防長官が、2024年度国防省予算案を議会提出して公になる約2週間前のタイミングで、全国防省員と全米軍に充てた3ページのメッセージを発刊し、国際情勢を受けた国防予算要求での重視事項や、国防省や米軍が抱える問題への対処への所信を述べています
正直に申し上げて、「あまり目立たない国防長官」とのイメージをまんぐーすは持っており、過去2年間に同長官を取り上げたことは数えるほどしかありませんし、未だにフロノイ女史がなるべきだったとは思いますが、政権として多様性を求める観点や、産軍複合体の「闇」の動きもあっての就任ですから、今更ここでグタグタ述べるつもりもありません
メッセージは、同長官が就任以来掲げてきた3つの重視分野「国防DEFEND THE NATION」、「国防省&米軍勤務者のケアTAKING CARE OF OUR PEOPLE」、「多方面のチームワークSUCCEED THROUGH TEAMWORK」の大項目から構成され、各大項目に3~4個の小項目がぶら下がる構成となっており、米国防省の取り組みや課題を多角的に概観する良い機会ですので、官僚的文書ではありますがご紹介しておきます
「国防DEFEND THE NATION」
●Prioritize China as the "Pacing Challenge.
我々の時代が抱える課題が対中国。米政府機関や議会との垣根を排し、関係国と協力し、統合や相互運用性を高め、アジア太平洋での抑止体制を強化する。我々は、nuclear triad, space, cyberspace, long-range fires, and next-generation capabilities in fighter aircraft and undersea warfare、そして全ドメイン指揮統制に大規模投資を行う
●Tackle the Acute Russian Threat.
ロシアの不法なウクライナ侵略は1945年以降維持されてきた国際秩序への攻撃であり、プーチンの戦争選択に引きずり込まれることなく、我々はNATO領土を1インチも譲らないとの強い決意の元、同盟国と緊密に連携してNATO東正面を強化する
●Address Advanced and Persistent Threats
北朝鮮やイランや国際テロ組織からの脅威への警戒を怠らない。我が領土や部隊を脅かす無人システムに対処し、遠方からの対テロ対処能力を洗練させていく。最近ISISやアルカイダ指導者を排除したように、ソマリアでのプレゼンス維持拡大などにも取り組む
●Innovate and Modernize
我がダイナミズムは米国優位の根源であり、新たな脅威に対処するため、我が統合戦力を「from hypersonic weapons to our Joint Warfighting Concept」分野、「from data analysis to artificial intelligence」分野など多様な領域で近代化し、最新技術開発にも「歴史的な国防投資」し、「once-in-a-generation investmentを造船&艦艇修理所と弾薬製造軍需基盤」に投入して臨む
●Meet the Climate Crisis.
気候変動がもたらす安全保障課題を我が戦略は反映しており、強固に防御された作戦域での兵站支援への影響局限に取り組んでいる。また厳しい気象現象がもたらすリスクを削減し、任務遂行能力の強靭さを向上させることに取り組む
「国防省&米軍勤務者ケアTAKING CARE OF OUR PEOPLE」
●Grow Our Talent
世界最強の軍を維持するため、米国最優秀な愛国者人材を募集採用し軍内に留める必要があり、米国の優秀な大学との連携を強化し、教育訓練に投資し、科学・技術・工学・数学分野への奨学金制度を創設し、更に従来に比して例外的な機会提供を通じてプロ育成に取り組む
●Build Resilience and Readiness
省員や米軍人やその家族の生活の質改善のため、昨年大きな投資を行い、引っ越し支援、子弟支援、配偶者就職支援等々に取り組んできたが、まだまだ実施すべきことが残されており、メンタルケアや自殺防止、健康維持管理システム強化や住居の質向上にも取り組んでいく
●Ensure Accountable Leadership
全国防省勤務者の健康や安全や福祉を悪化させるような行為には、国防省として厳しく対処する。性的襲撃対策には、私の就任第1日目から独立の特別評議会を立ち上げて対処してきたし、その提言の実行に取り組んでいる。大統領府や議会とも連携し、性的襲撃への対処法令や規則強化にも取り組み、この種の犯罪への捜査・対処を強化し、同時に関連する犯罪防止策にも引き続き取り組んでいく
「多方面のチームワークSUCCEED THROUGH TEAMWORK」
●Join Forces with Our Allies and Partners
米国の同盟国等とのネットワークは比類なき強みであり戦略アセットである。ウクライナ事案が明示したように、引き続き関係を緊密にし維持する。NATOと同憲章5条へのコミットは強固である。アジア太平洋地域でも、相互運用性や情報共有や統合計画を強化し、より複雑な演習訓練に取り組む。歴史的な豪英米initiativeを遂行していく
●Strengthen Partnerships Across America.
米国内の各州や各自治体や部族との関係は、軍事施設に所在する軍人や家族支援に極めて重要であり、逆に地域にお世話になる軍人たちは自然災害やパンデミック等の地域の危機に際して地域を支えて行く。米議会とは必要資源の確保上で重要なパートナーであり、軍需産業も技術革新の推進役として、また軍の強靭性を維持する上での重要パートナーである
●Build Unity Within the Department.
国防省内に勤務する全ての文民と軍人が活発に協力してこそ時期に即した迅速な決定が可能となる。国防省内の意思決定層でのパートナーシップ精神を組織全体に見せることで、国防省勤務者全体への協力精神拡散を期待したい
/////////////////////////////////////////////
取り組みを強化する部分や重視する分野の背景には、今そこにある課題が存在するわけで、例えば大項目「国防省&米軍勤務者ケアTAKING CARE OF OUR PEOPLE」には、現在の国防省や米軍が抱える根幹部分に関する課題が反映されています。
また、最後の「Build Unity Within the Department」の小項目に、「国防省内の意思決定層でのパートナーシップ(協力)精神を組織全体に見せることで・・・」と書かれていますが、裏返せば、厳しい予算や増え続ける任務を背景に、国防省や米軍の指導層レベルで、予算確保や業務分担を巡りドロドロの争いが続いているということでしょう。様々な視点で国防長官メッセージをご覧ください・・・
3ページの全国防省&米軍への国防長官メッセージ
→https://media.defense.gov/2023/Mar/02/2003171462/-1/-1/1/MESSAGE-TO-THE-FORCE.PDF
過去2年間でわずか11本のオースチン長官記事一覧
→https://holylandtokyo.com/category/%e3%82%aa%e3%83%bc%e3%82%b9%e3%83%81%e3%83%b3%e5%9b%bd%e9%98%b2%e9%95%b7%e5%ae%98/
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正直に申し上げて、「あまり目立たない国防長官」とのイメージをまんぐーすは持っており、過去2年間に同長官を取り上げたことは数えるほどしかありませんし、未だにフロノイ女史がなるべきだったとは思いますが、政権として多様性を求める観点や、産軍複合体の「闇」の動きもあっての就任ですから、今更ここでグタグタ述べるつもりもありません
メッセージは、同長官が就任以来掲げてきた3つの重視分野「国防DEFEND THE NATION」、「国防省&米軍勤務者のケアTAKING CARE OF OUR PEOPLE」、「多方面のチームワークSUCCEED THROUGH TEAMWORK」の大項目から構成され、各大項目に3~4個の小項目がぶら下がる構成となっており、米国防省の取り組みや課題を多角的に概観する良い機会ですので、官僚的文書ではありますがご紹介しておきます
「国防DEFEND THE NATION」
●Prioritize China as the "Pacing Challenge.
我々の時代が抱える課題が対中国。米政府機関や議会との垣根を排し、関係国と協力し、統合や相互運用性を高め、アジア太平洋での抑止体制を強化する。我々は、nuclear triad, space, cyberspace, long-range fires, and next-generation capabilities in fighter aircraft and undersea warfare、そして全ドメイン指揮統制に大規模投資を行う
●Tackle the Acute Russian Threat.
ロシアの不法なウクライナ侵略は1945年以降維持されてきた国際秩序への攻撃であり、プーチンの戦争選択に引きずり込まれることなく、我々はNATO領土を1インチも譲らないとの強い決意の元、同盟国と緊密に連携してNATO東正面を強化する
●Address Advanced and Persistent Threats
北朝鮮やイランや国際テロ組織からの脅威への警戒を怠らない。我が領土や部隊を脅かす無人システムに対処し、遠方からの対テロ対処能力を洗練させていく。最近ISISやアルカイダ指導者を排除したように、ソマリアでのプレゼンス維持拡大などにも取り組む
●Innovate and Modernize
我がダイナミズムは米国優位の根源であり、新たな脅威に対処するため、我が統合戦力を「from hypersonic weapons to our Joint Warfighting Concept」分野、「from data analysis to artificial intelligence」分野など多様な領域で近代化し、最新技術開発にも「歴史的な国防投資」し、「once-in-a-generation investmentを造船&艦艇修理所と弾薬製造軍需基盤」に投入して臨む
●Meet the Climate Crisis.
気候変動がもたらす安全保障課題を我が戦略は反映しており、強固に防御された作戦域での兵站支援への影響局限に取り組んでいる。また厳しい気象現象がもたらすリスクを削減し、任務遂行能力の強靭さを向上させることに取り組む
「国防省&米軍勤務者ケアTAKING CARE OF OUR PEOPLE」
●Grow Our Talent
世界最強の軍を維持するため、米国最優秀な愛国者人材を募集採用し軍内に留める必要があり、米国の優秀な大学との連携を強化し、教育訓練に投資し、科学・技術・工学・数学分野への奨学金制度を創設し、更に従来に比して例外的な機会提供を通じてプロ育成に取り組む
●Build Resilience and Readiness
省員や米軍人やその家族の生活の質改善のため、昨年大きな投資を行い、引っ越し支援、子弟支援、配偶者就職支援等々に取り組んできたが、まだまだ実施すべきことが残されており、メンタルケアや自殺防止、健康維持管理システム強化や住居の質向上にも取り組んでいく
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米国の同盟国等とのネットワークは比類なき強みであり戦略アセットである。ウクライナ事案が明示したように、引き続き関係を緊密にし維持する。NATOと同憲章5条へのコミットは強固である。アジア太平洋地域でも、相互運用性や情報共有や統合計画を強化し、より複雑な演習訓練に取り組む。歴史的な豪英米initiativeを遂行していく
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国防省内に勤務する全ての文民と軍人が活発に協力してこそ時期に即した迅速な決定が可能となる。国防省内の意思決定層でのパートナーシップ精神を組織全体に見せることで、国防省勤務者全体への協力精神拡散を期待したい
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取り組みを強化する部分や重視する分野の背景には、今そこにある課題が存在するわけで、例えば大項目「国防省&米軍勤務者ケアTAKING CARE OF OUR PEOPLE」には、現在の国防省や米軍が抱える根幹部分に関する課題が反映されています。
また、最後の「Build Unity Within the Department」の小項目に、「国防省内の意思決定層でのパートナーシップ(協力)精神を組織全体に見せることで・・・」と書かれていますが、裏返せば、厳しい予算や増え続ける任務を背景に、国防省や米軍の指導層レベルで、予算確保や業務分担を巡りドロドロの争いが続いているということでしょう。様々な視点で国防長官メッセージをご覧ください・・・
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米空軍がE-7A初号機を2027年納入契約 [米空軍]
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計26機調達を予定し、2032年までに24機導入
稼働率崩壊の既存E-3の約半数15機を今年退役へ
2月28日、米空軍はボーイング社とE-7A戦闘管理指揮統制機(E-7A battle management and command-and-control aircraft)(E-3は早期警戒管制機でしたが)の初号機納入契約を価格上限1600億円で結んだと発表し、同機を計26機調達予定だと明らかにしました。
老朽化が著しく稼働率が6割を割り込み、稼働機確保に部品共食いなどを繰り返す現場整備員から、米空軍や部隊指揮官に対する強い不平不満がメディアを通じて報じられて問題となったE-3の後継に、豪州用に開発され英空軍も導入し、韓国とトルコも発注しているE-7Aが2022年4月に決定しましたが、具体的な調達計画をボーイング社と煮詰めて契約発表との運びとなったようです
今回の契約は、米空軍の細部要求性能を満たす米国製システムを既存のE-7Aに搭載して確認する「rapid prototyping」と呼ばれる初号機で、既導入の豪州や英国E-7Aとの相互運用性等の確認も目的とした機体で、2025年から製造に着手し、2027年納入を予定するものです
その後は2032年までに計24機をボーイングから米空軍が受領し、最終的には26機体制で米空軍は同機を運用するとのことです。一方で稼働率低下で困難な運用を迫られているE-3は、現有機の約半数に当たる15機を2023年中に退役させ、残りの機体でE-7Aが導入されるまでの期間の早期警戒管制と戦場管理任務を引き続き担うことになります。
E-3の15機2023年退役については、米議会から「能力ギャップ」が生じると懸念の声が出ていますが、B-737をベースとするE-7Aの調達速度をこれ以上早めることはB-737機体確保上から不可能で、E-3については現役機として維持していても維持整備費がかさむだけで全体の稼働率向上が難しいことから、退役させて部品取り用に活用した方が得策との本音が裏にはあるようで、「体裁をつくろっている余裕はない」のが現状と思われます
申し送れましたが米空軍は28日の契約発表で、E-7Aには「その優れた空中目標の探知、識別、追尾、情報提供能力と地上移動目標探知追尾能力を持って、統合作戦における戦闘管理、指揮統制強化と、先進多用途レーダーを用いた空中戦闘管制能力による遠方攻撃支援能力の強化にも期待している」と説明しているところです
E-3老朽化が顕著で部隊運用に支障をきたしていることが明らかな中でE-7A導入決定が遅れた背景には、米空軍が早期警戒管制機に代り、衛星による地上目標や空中目標の探知追尾システム構築を当初目指していたためで、開発中の衛星システムが予算面でも技術成熟面でも間に合わず、仕方なく「つなぎ」のような位置づけで遅まきながらE-7A導入が決定したためです
/////////////////////////////////////////////
現有E-3の方がE-7Aより、レーダーが大きく回転して死角が少なく性能がよさそうに見えるのは「素人」だからでしょうか・・・。
米空軍がE-7Aを導入決定した際にも思いましたが、日本が保有するE-3タイプのレーダーシステムを搭載した「E-767」の維持整備は今後大丈夫なんでしょうか???
平均年齢44 歳のE-3と後継機の話題
「E-7導入を正式発表」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
「予算案通過なら2023年から退役へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/01/3074/
「後継機検討のRFI」→https://holylandtokyo.com/2022/03/01/2711/
「急にE-3後継機が大きな話題に」→https://holylandtokyo.com/2022/01/31/2669/
「米空軍航空機は依然高齢です」→https://holylandtokyo.com/2021/12/08/2475/
「空軍長官が7つの優先事項を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-12
「PACAF司令官:E-7ほしい発言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-27
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計26機調達を予定し、2032年までに24機導入
稼働率崩壊の既存E-3の約半数15機を今年退役へ
2月28日、米空軍はボーイング社とE-7A戦闘管理指揮統制機(E-7A battle management and command-and-control aircraft)(E-3は早期警戒管制機でしたが)の初号機納入契約を価格上限1600億円で結んだと発表し、同機を計26機調達予定だと明らかにしました。
老朽化が著しく稼働率が6割を割り込み、稼働機確保に部品共食いなどを繰り返す現場整備員から、米空軍や部隊指揮官に対する強い不平不満がメディアを通じて報じられて問題となったE-3の後継に、豪州用に開発され英空軍も導入し、韓国とトルコも発注しているE-7Aが2022年4月に決定しましたが、具体的な調達計画をボーイング社と煮詰めて契約発表との運びとなったようです
今回の契約は、米空軍の細部要求性能を満たす米国製システムを既存のE-7Aに搭載して確認する「rapid prototyping」と呼ばれる初号機で、既導入の豪州や英国E-7Aとの相互運用性等の確認も目的とした機体で、2025年から製造に着手し、2027年納入を予定するものです
その後は2032年までに計24機をボーイングから米空軍が受領し、最終的には26機体制で米空軍は同機を運用するとのことです。一方で稼働率低下で困難な運用を迫られているE-3は、現有機の約半数に当たる15機を2023年中に退役させ、残りの機体でE-7Aが導入されるまでの期間の早期警戒管制と戦場管理任務を引き続き担うことになります。
E-3の15機2023年退役については、米議会から「能力ギャップ」が生じると懸念の声が出ていますが、B-737をベースとするE-7Aの調達速度をこれ以上早めることはB-737機体確保上から不可能で、E-3については現役機として維持していても維持整備費がかさむだけで全体の稼働率向上が難しいことから、退役させて部品取り用に活用した方が得策との本音が裏にはあるようで、「体裁をつくろっている余裕はない」のが現状と思われます
申し送れましたが米空軍は28日の契約発表で、E-7Aには「その優れた空中目標の探知、識別、追尾、情報提供能力と地上移動目標探知追尾能力を持って、統合作戦における戦闘管理、指揮統制強化と、先進多用途レーダーを用いた空中戦闘管制能力による遠方攻撃支援能力の強化にも期待している」と説明しているところです
E-3老朽化が顕著で部隊運用に支障をきたしていることが明らかな中でE-7A導入決定が遅れた背景には、米空軍が早期警戒管制機に代り、衛星による地上目標や空中目標の探知追尾システム構築を当初目指していたためで、開発中の衛星システムが予算面でも技術成熟面でも間に合わず、仕方なく「つなぎ」のような位置づけで遅まきながらE-7A導入が決定したためです
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現有E-3の方がE-7Aより、レーダーが大きく回転して死角が少なく性能がよさそうに見えるのは「素人」だからでしょうか・・・。
米空軍がE-7Aを導入決定した際にも思いましたが、日本が保有するE-3タイプのレーダーシステムを搭載した「E-767」の維持整備は今後大丈夫なんでしょうか???
平均年齢44 歳のE-3と後継機の話題
「E-7導入を正式発表」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
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全世界のF-35エンジン改修へ:事故から2か月でF-35エンジン供給再開へ [亡国のF-35]
【追記情報!】
3月2日、米国防省F-35計画室は、90日以内に全世界のF-35(890機以上)のエンジンの改修(retrofit)を行うよう「期限付技術指令TCTD:Time Compliance Technical Directive」を発表
改修は「安価で負担少ない inexpensive and non-intrusive」と
改修は各部隊で4-8時間で可能と説明
12月の「共振」は60万時間使用で初の稀ケースと
「誰が」改修費用負担するかJPOは語らず・・・
/////////////////////////////////////////
12月受入試験時の事故原因は「高周波共振」
極めて稀なケースとの判断で注意指示を出し飛行も再開へ
2月24日、米国防省F-35計画室JPOが、12月15日の新造機体受け入れ飛行試験でパイロットが緊急脱出するに至った事故を受け、F135エンジン受け入れと新造機等の受け入れ飛行試験を中止(少数の部隊配備機体飛行を含む)した件について、事故原因が「稀にしか発生しないエンジン内の高周波共振」で対策も見つかったので、近々エンジン供給と関係機体の飛行が再開されると声明を出しました
12月15日の事故は、ロッキード社から提供された新造F-35B型機の完成確認飛行試験をFort Worth工場の飛行場で行った際、低空ホバリング状態から機体が急降下して滑走路でバウンドし、機首と翼を地面にぶつけて機体がスピンし、パイロットが射出座席で脱出して軽傷を負った事故で、その直後から新造機及び一部機体が飛行禁止になり、12月27日からF135エンジン提供停止措置が取られ現在に至っています
偶然民間人が撮影していた事故映像(約90秒)
事故当初は高圧燃料チューブの破損が原因ではとの情報が流れましたが、まもなく同チューブには問題がなかったと明らかになり、その後2月9日頃から、「稀に発生する高周波共振:a rare harmonic resonance problem」が原因との発言がエンジン製造のP&W社等から聞かれるようになっていました
2月24日の声明でF-35計画室JPOは、「政府機関と関連企業チームが議論している対策を講じることで、F135エンジンに稀に発生する事象の影響を確実に局限することができ、影響を受けている機体の飛行を再開できるだろう」と明らかにしています。
またF-35計画室JPOは、「現在政府は、飛行停止になっている(一部の少数機を保有する)部隊と(新造機の飛行試験を中断している)ロッキードに対する、安全な飛行再開のための指示事項を取りまとめている」と声明で述べ、関係者は今後1-2週間で関連飛行が再開されるだろうと語っているようです
米空軍報道官は2月中旬に、米空軍の保有F-35で飛行停止指示を受けている機体は無いが、初期型エンジン搭載機体の燃料スロットルバルブの生産に影響があるとのニュアンスで語っていたようですが、主に米空軍部隊用の新造機が出荷停止措置を受け、2月中旬現在で、ロッキード社工場内で21機が出荷待ち状態だそうです。
米空軍はP&W社製F135エンジンの耐久性問題解決やエンジンの能力向上を狙い、次世代エンジンAETPのF-35搭載を決断するよう国防省に要望していますが、AETPエンジンはP&W社とGE社が開発を競っていることもあり、「稀に発生する高周波共振」問題は様々な方面を「揺り動かす」可能性を秘めています。
2月28日にP&W社が会見をやるそうで、追加情報があれば冒頭に追記します。
F-35のエンジン換装問題
「GE社とP&W社が異なる主張」→https://holylandtokyo.com/2022/09/29/3681/
「AETP採用なら調達機数削減!覚悟?」→https://holylandtokyo.com/2022/09/13/3644/
「AETP採用しないと産業基盤崩壊訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/08/24/3562/
「空軍長官:国防省に下駄預ける」→https://holylandtokyo.com/2022/08/09/3515/
「空軍長官:数か月で決着すべき」→https://holylandtokyo.com/2022/05/26/3260/
「上院で議論」→https://holylandtokyo.com/2022/05/18/3223/
「下院軍事委員長がAETPに関心」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/
次期制空機NGAD用のAETPエンジン開発
「プロトタイプ開発契約に機体メーカーも」→https://holylandtokyo.com/2022/09/01/3581/
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3月2日、米国防省F-35計画室は、90日以内に全世界のF-35(890機以上)のエンジンの改修(retrofit)を行うよう「期限付技術指令TCTD:Time Compliance Technical Directive」を発表
改修は「安価で負担少ない inexpensive and non-intrusive」と
改修は各部隊で4-8時間で可能と説明
12月の「共振」は60万時間使用で初の稀ケースと
「誰が」改修費用負担するかJPOは語らず・・・
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12月受入試験時の事故原因は「高周波共振」
極めて稀なケースとの判断で注意指示を出し飛行も再開へ
2月24日、米国防省F-35計画室JPOが、12月15日の新造機体受け入れ飛行試験でパイロットが緊急脱出するに至った事故を受け、F135エンジン受け入れと新造機等の受け入れ飛行試験を中止(少数の部隊配備機体飛行を含む)した件について、事故原因が「稀にしか発生しないエンジン内の高周波共振」で対策も見つかったので、近々エンジン供給と関係機体の飛行が再開されると声明を出しました
12月15日の事故は、ロッキード社から提供された新造F-35B型機の完成確認飛行試験をFort Worth工場の飛行場で行った際、低空ホバリング状態から機体が急降下して滑走路でバウンドし、機首と翼を地面にぶつけて機体がスピンし、パイロットが射出座席で脱出して軽傷を負った事故で、その直後から新造機及び一部機体が飛行禁止になり、12月27日からF135エンジン提供停止措置が取られ現在に至っています
偶然民間人が撮影していた事故映像(約90秒)
事故当初は高圧燃料チューブの破損が原因ではとの情報が流れましたが、まもなく同チューブには問題がなかったと明らかになり、その後2月9日頃から、「稀に発生する高周波共振:a rare harmonic resonance problem」が原因との発言がエンジン製造のP&W社等から聞かれるようになっていました
2月24日の声明でF-35計画室JPOは、「政府機関と関連企業チームが議論している対策を講じることで、F135エンジンに稀に発生する事象の影響を確実に局限することができ、影響を受けている機体の飛行を再開できるだろう」と明らかにしています。
またF-35計画室JPOは、「現在政府は、飛行停止になっている(一部の少数機を保有する)部隊と(新造機の飛行試験を中断している)ロッキードに対する、安全な飛行再開のための指示事項を取りまとめている」と声明で述べ、関係者は今後1-2週間で関連飛行が再開されるだろうと語っているようです
米空軍報道官は2月中旬に、米空軍の保有F-35で飛行停止指示を受けている機体は無いが、初期型エンジン搭載機体の燃料スロットルバルブの生産に影響があるとのニュアンスで語っていたようですが、主に米空軍部隊用の新造機が出荷停止措置を受け、2月中旬現在で、ロッキード社工場内で21機が出荷待ち状態だそうです。
米空軍はP&W社製F135エンジンの耐久性問題解決やエンジンの能力向上を狙い、次世代エンジンAETPのF-35搭載を決断するよう国防省に要望していますが、AETPエンジンはP&W社とGE社が開発を競っていることもあり、「稀に発生する高周波共振」問題は様々な方面を「揺り動かす」可能性を秘めています。
2月28日にP&W社が会見をやるそうで、追加情報があれば冒頭に追記します。
F-35のエンジン換装問題
「GE社とP&W社が異なる主張」→https://holylandtokyo.com/2022/09/29/3681/
「AETP採用なら調達機数削減!覚悟?」→https://holylandtokyo.com/2022/09/13/3644/
「AETP採用しないと産業基盤崩壊訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/08/24/3562/
「空軍長官:国防省に下駄預ける」→https://holylandtokyo.com/2022/08/09/3515/
「空軍長官:数か月で決着すべき」→https://holylandtokyo.com/2022/05/26/3260/
「上院で議論」→https://holylandtokyo.com/2022/05/18/3223/
「下院軍事委員長がAETPに関心」→https://holylandtokyo.com/2021/09/09/2184/
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/
次期制空機NGAD用のAETPエンジン開発
「プロトタイプ開発契約に機体メーカーも」→https://holylandtokyo.com/2022/09/01/3581/
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米国の対中国攻勢:Cobra Gold演習が最大規模で [安全保障全般]
タイ米国関係が微妙でも、コロナ前規模が復活
オブザーバ国含め30か国7400名規模の大演習
気球、半導体、コロナ中国起源説など米の対中国攻勢
2月28日、タイ軍と米軍が共同開催する世界最大の軍事演習の一つで、コロナ前の規模に戻った30か国参加の「Cobra Gold」演習で開始式典が行われ、約2週間にわたる「実動演習」「指揮所演習」「人道支援演習」の主要3分野演習に計約7400名が参加する訓練がスタートしました
時あたかも、不動産バブル崩壊に端を発する中国経済低迷や共産党統治の「ほころび」が指摘され始め、米国がこの機に乗じて「気球」「半導体」「コロナ中国起源説」などの対中国攻勢を矢継ぎ早に持ち出し、中国への圧力を強めるタイミングであることから、(毎年定期開催の演習ながら)軍事面での包囲網示威活動として注目を浴びています
演習開始式典を報じる一部の米軍事メディアには、米国が2014年のタイ軍事クーデターを厳しく非難してきたことで、タイ軍内に米軍に対する「怒り」や「恨み」が根強く残る中での微妙な開催だと指摘する論調も見られますが、米軍4000名とタイ軍3000名が中心となる7400名規模の大規模での同演習規模復活は、欧州からの参加国(英仏独スウェーデンギリシャ)も含めた対中姿勢を打ち出す役割を十分に果たしていると思います(中国も参加国との心の広い演習ですが・・・)
1982年にタイ米の海洋演習として始まった演習は、地上活動を主体とする統合演習に発展し、中国の関与が深い地域特性を反映して「軍事ゴリゴリ」演習ではなく、広く参加が得やすい人道支援や救難救助や「contingencies other than war」も大きな柱になっている演習ですが、確実に実績を上げてきた演習で、日本はフルスケール参加国5か国(他はSingapore, Indonesia, South Korea、Malaysia)として最近貢献しています
また今回の「Cobra Gold 23」演習では、初めて宇宙ドメイン指揮所演習が組み込まれ、「太陽嵐:solar storms」などの宇宙空間現象が、通信や衛星にインパクトを与え軍事活動に影響が出るシナリオを共有体験&対処する想定が含まれているようです
開始式典の挨拶や訓示では
●タイ駐在米国大使が「本演習は未来に焦点を当てている。どの国も単独では成し得ない複雑な問題を解決すべく、世界中から30か国もの国が集まった」、「このような協力を持ってのみ、我々はこのような課題に対処でき、それぞれの国民の安寧を維持できる」と挨拶し、
●John Aquilino太平洋軍司令官は「本演習を通じ、自由で開かれたインド太平洋地域を維持し、全ての国家が平和で安定的に反映できるような環境を、共に守っていくとの決意を示す」と抱負を述べています
28日付Military.com記事から演習概要ご紹介
●「実同演習:Field training」では、着上陸、戦略的空挺訓練、非戦闘員避難、実弾射撃を実施
●「人道支援演習」では、6か所での学校建設工事を含む活動実施
●「指揮所演習」では、宇宙現象対処、自然災害対処、救難救助、緊急事態対処、患者後方輸送、化学物質流出対処、火災対処を実施
参加30か国の内訳は・・・
●共同主催国2か国 :タイと米国
●フルスケール参加国5か国
Singapore, Japan, Indonesia, South Korea and Malaysia
●人道支援演習のみ3か国
中国、インド、豪州
●小規模緊急事態対処訓練のみ10か国
Bangladesh, Canada, France, Mongolia, Nepal, New Zealand, the Philippines, Fiji, the United Kingdom and Brunei
●オブザーバー参加10か国
Cambodia, Laos, Brazil, Pakistan, Vietnam, Germany, Sweden, Greece, Kuwait, and Sri Lanka
米国防省の特設Cobra Gold演習広報webページ
→https://www.dvidshub.net/feature/CobraGold
////////////////////////////////////////////////////
米国は中国国内情勢の混乱を察知し、タイミングを合わせたように「気球」「半導体」「コロナ中国起源説」などを持ち出し、国際包囲網で中国締め付けに乗り出したような気がします。
中国報道官の米国やその同盟国への最近の厳しい発言も、なんとなく中国国内の困難振りを暗示しているような気もします。中国に進出中の日本企業は、早めに退却した方が良いと思います・・・
タイと米国関係の関連
「対中国で分散作戦演習JPMRC」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/
「タイが中国戦車追加購入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-04-05
「タイが中国潜水艦購入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2015-07-13
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オブザーバ国含め30か国7400名規模の大演習
気球、半導体、コロナ中国起源説など米の対中国攻勢
2月28日、タイ軍と米軍が共同開催する世界最大の軍事演習の一つで、コロナ前の規模に戻った30か国参加の「Cobra Gold」演習で開始式典が行われ、約2週間にわたる「実動演習」「指揮所演習」「人道支援演習」の主要3分野演習に計約7400名が参加する訓練がスタートしました
時あたかも、不動産バブル崩壊に端を発する中国経済低迷や共産党統治の「ほころび」が指摘され始め、米国がこの機に乗じて「気球」「半導体」「コロナ中国起源説」などの対中国攻勢を矢継ぎ早に持ち出し、中国への圧力を強めるタイミングであることから、(毎年定期開催の演習ながら)軍事面での包囲網示威活動として注目を浴びています
演習開始式典を報じる一部の米軍事メディアには、米国が2014年のタイ軍事クーデターを厳しく非難してきたことで、タイ軍内に米軍に対する「怒り」や「恨み」が根強く残る中での微妙な開催だと指摘する論調も見られますが、米軍4000名とタイ軍3000名が中心となる7400名規模の大規模での同演習規模復活は、欧州からの参加国(英仏独スウェーデンギリシャ)も含めた対中姿勢を打ち出す役割を十分に果たしていると思います(中国も参加国との心の広い演習ですが・・・)
1982年にタイ米の海洋演習として始まった演習は、地上活動を主体とする統合演習に発展し、中国の関与が深い地域特性を反映して「軍事ゴリゴリ」演習ではなく、広く参加が得やすい人道支援や救難救助や「contingencies other than war」も大きな柱になっている演習ですが、確実に実績を上げてきた演習で、日本はフルスケール参加国5か国(他はSingapore, Indonesia, South Korea、Malaysia)として最近貢献しています
また今回の「Cobra Gold 23」演習では、初めて宇宙ドメイン指揮所演習が組み込まれ、「太陽嵐:solar storms」などの宇宙空間現象が、通信や衛星にインパクトを与え軍事活動に影響が出るシナリオを共有体験&対処する想定が含まれているようです
開始式典の挨拶や訓示では
●タイ駐在米国大使が「本演習は未来に焦点を当てている。どの国も単独では成し得ない複雑な問題を解決すべく、世界中から30か国もの国が集まった」、「このような協力を持ってのみ、我々はこのような課題に対処でき、それぞれの国民の安寧を維持できる」と挨拶し、
●John Aquilino太平洋軍司令官は「本演習を通じ、自由で開かれたインド太平洋地域を維持し、全ての国家が平和で安定的に反映できるような環境を、共に守っていくとの決意を示す」と抱負を述べています
28日付Military.com記事から演習概要ご紹介
●「実同演習:Field training」では、着上陸、戦略的空挺訓練、非戦闘員避難、実弾射撃を実施
●「人道支援演習」では、6か所での学校建設工事を含む活動実施
●「指揮所演習」では、宇宙現象対処、自然災害対処、救難救助、緊急事態対処、患者後方輸送、化学物質流出対処、火災対処を実施
参加30か国の内訳は・・・
●共同主催国2か国 :タイと米国
●フルスケール参加国5か国
Singapore, Japan, Indonesia, South Korea and Malaysia
●人道支援演習のみ3か国
中国、インド、豪州
●小規模緊急事態対処訓練のみ10か国
Bangladesh, Canada, France, Mongolia, Nepal, New Zealand, the Philippines, Fiji, the United Kingdom and Brunei
●オブザーバー参加10か国
Cambodia, Laos, Brazil, Pakistan, Vietnam, Germany, Sweden, Greece, Kuwait, and Sri Lanka
米国防省の特設Cobra Gold演習広報webページ
→https://www.dvidshub.net/feature/CobraGold
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米国は中国国内情勢の混乱を察知し、タイミングを合わせたように「気球」「半導体」「コロナ中国起源説」などを持ち出し、国際包囲網で中国締め付けに乗り出したような気がします。
中国報道官の米国やその同盟国への最近の厳しい発言も、なんとなく中国国内の困難振りを暗示しているような気もします。中国に進出中の日本企業は、早めに退却した方が良いと思います・・・
タイと米国関係の関連
「対中国で分散作戦演習JPMRC」→https://holylandtokyo.com/2022/11/14/3900/
「タイが中国戦車追加購入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-04-05
「タイが中国潜水艦購入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2015-07-13
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
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宇宙軍が衛星への軌道上補給に企業活用へ [サイバーと宇宙]
必要性に迫られ、懸命に民間企業との連携模索
昨年立ち上げた専門部署中心に、議会の理解も得て
2月22日付Defense-Newsは、米宇宙軍で衛星の延命や機動性確保が喫緊の課題となる中、軍内に専門部署を立ち上げ、民間企業が進める衛星への燃料補給や維持整備提供サービスの情報を収集しつつ、軍内受けれ体制整備構築や具体的手順等を宇宙軍が思案中だと報じています
末尾にご紹介している様々な過去記事で、宇宙ゴミや敵衛星を避けるために衛星に機動性を持たせるニーズの高まりや、搭載装備は健全でも電源切れで機能停止に至る高価な衛星が多いこと等を課題としてご紹介し、民間通信衛星や地上観測衛星とドッキングして燃料補給や軌道修正や維持整備を行う民間企業が生まれつつある様子も取り上げてきましたが、ニーズに迫られた宇宙軍が「救いの手」を関連企業に求め始めたということです
具体的には、昨年8月に宇宙軍内に衛星軌道&維持支援(director of operations for servicing and maneuver)部署に大佐が任命され、監督する少将も指名されています。そして昨年9月には衛星支援関連の企業を集めたイベントを開催し、民間企業が持つ技術の情報収集を行っています
担当少将はインタビューで事の緊急性に触れ、「対処を早急に迫られている課題であり、何が必要で、利用可能などのような技術が存在し、どのように宇宙軍に導入するかを至急見分ける必要がある」、「宇宙軍内の担当人員の確保や企業との各種契約に至るまでの調整体制構築」、「衛星に軌道上で燃料や維持整備支援を受けられるハード面での整備も必要」等々と語り、予算を確保出来次第取り掛かりたいと述べています
予算面では、米空軍時代から宇宙軍創設当時は、国防省内や米議会の理解を十分得ることができなかったが、最近やっと米議会の応援を得られるようになり約40億円の追加予算を獲得し、NASAや国防省DIUとも協力しつつ、衛星維持整備技術や宇宙ゴミ対処技術を有する一般企業との連携を模索しているとも説明しています
ただ、いずれの取り組みも宇宙軍の具体的ニーズや企業への要求事項をしっかり固める段階にも至っておらず、2月21日の関連イベントで宇宙軍幹部は正直に、「世にある技術を取り組むには時間がかかるだろう:will likely take slow steps toward embracing these capabilities」、「我々はまだまだよちよち歩きの段階:We are taking baby steps.」とも語っています
/////////////////////////////////////////
末尾の過去記事でもご紹介しているように、2020年2月末に、民間企業がインテルサット通信衛星に別の衛星をドッキングさせ、地球周回軌道の高度を上げる等して通信衛星寿命を約5年延命する画期的手法に成功したとご紹介しましたが、米軍衛星へのこのような技術導入はまだまだ時間が必要なようです
2022年年9月には、国防省・宇宙軍・空軍や関連企業の関係者有志250名が一堂に会し、「日進月歩の民間技術を迅速に大規模に導入可能にすべき」との提言をまとめていますが、予算制約や官僚機構や法令面での難しさ等も多く立ちはだかっているのでしょう。
衛星に機動性を求める米国防省の取り組み
「宇宙軍は衛星のSM&L重視」→https://holylandtokyo.com/2023/01/18/4130/
「国防省宇宙軍有志が民間企業大量導入訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/09/16/3609/
「小型衛星核推進装置を求め企業募集」→https://holylandtokyo.com/2021/09/28/2233/
「核熱推進システム設計を3企業と」→https://holylandtokyo.com/2021/04/20/111/
衛星の延命や機動性付与技術
「衛星用の熱核推進システム推奨」→https://holylandtokyo.com/2022/01/27/2622/
「衛星延命に企業と連携」→https://holylandtokyo.com/2021/11/10/2350/
「画期的:推進力衛星とドッキングで延命へ」→https://holylandtokyo.com/2020/02/28/839/
「米国防省が国防宇宙戦略を発表」→https://holylandtokyo.com/2020/06/23/629/
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→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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昨年立ち上げた専門部署中心に、議会の理解も得て
2月22日付Defense-Newsは、米宇宙軍で衛星の延命や機動性確保が喫緊の課題となる中、軍内に専門部署を立ち上げ、民間企業が進める衛星への燃料補給や維持整備提供サービスの情報を収集しつつ、軍内受けれ体制整備構築や具体的手順等を宇宙軍が思案中だと報じています
末尾にご紹介している様々な過去記事で、宇宙ゴミや敵衛星を避けるために衛星に機動性を持たせるニーズの高まりや、搭載装備は健全でも電源切れで機能停止に至る高価な衛星が多いこと等を課題としてご紹介し、民間通信衛星や地上観測衛星とドッキングして燃料補給や軌道修正や維持整備を行う民間企業が生まれつつある様子も取り上げてきましたが、ニーズに迫られた宇宙軍が「救いの手」を関連企業に求め始めたということです
具体的には、昨年8月に宇宙軍内に衛星軌道&維持支援(director of operations for servicing and maneuver)部署に大佐が任命され、監督する少将も指名されています。そして昨年9月には衛星支援関連の企業を集めたイベントを開催し、民間企業が持つ技術の情報収集を行っています
担当少将はインタビューで事の緊急性に触れ、「対処を早急に迫られている課題であり、何が必要で、利用可能などのような技術が存在し、どのように宇宙軍に導入するかを至急見分ける必要がある」、「宇宙軍内の担当人員の確保や企業との各種契約に至るまでの調整体制構築」、「衛星に軌道上で燃料や維持整備支援を受けられるハード面での整備も必要」等々と語り、予算を確保出来次第取り掛かりたいと述べています
予算面では、米空軍時代から宇宙軍創設当時は、国防省内や米議会の理解を十分得ることができなかったが、最近やっと米議会の応援を得られるようになり約40億円の追加予算を獲得し、NASAや国防省DIUとも協力しつつ、衛星維持整備技術や宇宙ゴミ対処技術を有する一般企業との連携を模索しているとも説明しています
ただ、いずれの取り組みも宇宙軍の具体的ニーズや企業への要求事項をしっかり固める段階にも至っておらず、2月21日の関連イベントで宇宙軍幹部は正直に、「世にある技術を取り組むには時間がかかるだろう:will likely take slow steps toward embracing these capabilities」、「我々はまだまだよちよち歩きの段階:We are taking baby steps.」とも語っています
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末尾の過去記事でもご紹介しているように、2020年2月末に、民間企業がインテルサット通信衛星に別の衛星をドッキングさせ、地球周回軌道の高度を上げる等して通信衛星寿命を約5年延命する画期的手法に成功したとご紹介しましたが、米軍衛星へのこのような技術導入はまだまだ時間が必要なようです
2022年年9月には、国防省・宇宙軍・空軍や関連企業の関係者有志250名が一堂に会し、「日進月歩の民間技術を迅速に大規模に導入可能にすべき」との提言をまとめていますが、予算制約や官僚機構や法令面での難しさ等も多く立ちはだかっているのでしょう。
衛星に機動性を求める米国防省の取り組み
「宇宙軍は衛星のSM&L重視」→https://holylandtokyo.com/2023/01/18/4130/
「国防省宇宙軍有志が民間企業大量導入訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/09/16/3609/
「小型衛星核推進装置を求め企業募集」→https://holylandtokyo.com/2021/09/28/2233/
「核熱推進システム設計を3企業と」→https://holylandtokyo.com/2021/04/20/111/
衛星の延命や機動性付与技術
「衛星用の熱核推進システム推奨」→https://holylandtokyo.com/2022/01/27/2622/
「衛星延命に企業と連携」→https://holylandtokyo.com/2021/11/10/2350/
「画期的:推進力衛星とドッキングで延命へ」→https://holylandtokyo.com/2020/02/28/839/
「米国防省が国防宇宙戦略を発表」→https://holylandtokyo.com/2020/06/23/629/
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