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南シナ海の海南島で中国海軍基地増殖中 [中国要人・軍事]

新しい潜水艦桟橋が建設中
既に空母用桟橋完成でドライドックも建設中
南シナ海を核ミサイル原潜の聖域へ

Yulin naval base4.jpg9月21日付Defense-Newsが商用衛星画像(Maxar Technologies 7月31日撮影)を取り上げ、中国南端で南シナ海の入り口に浮かぶ「海南島:Hainan Island」で中国海軍施設の増強が進んでいると報じ、今年2月時点では確認できなかった潜水艦用桟橋2つが建造中だと紹介しています

衛星画像は、海南島の南端に位置する中国南海艦隊Yulin naval baseの様子を撮影したものですが、同基地には6隻のType 094, Jin級の戦略原潜のほか、Type 093, Shang級の攻撃原潜が配備されており、南シナ海を戦略原潜の「聖域」「海の要塞」にしようとする中国海軍の一大根拠基地です

Yulin naval base3.jpg写真では、既に存在する4本の桟橋に、3隻のJin級戦略原潜と1隻のShang級の攻撃原潜が停泊している様子が確認できるほか、4本の桟橋の上下(南北)には、今年2月の衛星画像では確認できなかった長さ約170m・幅約20mの桟橋が新たに2本建設中であることが確認できます。なお北の桟橋建設場所付近には浚渫船も写っているほか、既にや沿岸の山腹をくりぬいたトンネル潜水艦格納庫も完成しているようです

また記事によれば、同基地には空母も停泊可能な桟橋が既に建設済で、現在は空母や水上艦艇用ドックが建設中で、空母山東(Shandong)や空母群艦艇を迎え入れ母港とする準備が着実に進んでいるようです。

Yulin naval base5.jpg更に記事は、同基地の近傍都市周辺のヘリコプター基地が最近リノベーションされ、新しい駐機場や滑走路の新舗装工事が完了していると紹介しています。

なお南海艦隊は、中国が台湾に侵攻する際の中核戦力であり、急速に拡大しつつある強襲着上陸艦艇群(Type 075 helicopter carrier1番艦や大部分のType 071 landing platform docks)が配備されている部隊です
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Yulin naval base.jpg
日本のメディアが、国葬反対や旧統一教会の話ばかりを垂れ流している間にも、「中国バブル崩壊」との話が聞こえてくる中でも、粛々と着実に、中国軍は大増強を進めています

関連の中国記事
「Shang級の新型巡航ミサイル原潜か?」→https://holylandtokyo.com/2022/05/19/3254/
「カンボジア海軍基地へ進出」→https://holylandtokyo.com/2022/06/15/3354/
「海没のF-35Cを37日で回収」→https://holylandtokyo.com/2022/03/07/2794/
「中国の軍事力レポート2021年版」→https://holylandtokyo.com/2021/11/08/2409/

最近の中国関連カテゴリー記事25本
https://holylandtokyo.com/category/%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e8%a6%81%e4%ba%ba%e3%83%bb%e8%bb%8d%e4%ba%8b/

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宇宙監視望遠鏡SSTの米から豪への移設順調 [サイバーと宇宙]

2013年に米豪でSST移設合意
2027年にニューメキシコ州から移設後、試験経てIOC宣言
完全な運用態勢確立は2023年に
南半球への設置で切れ目ない宇宙監視網SSN構築へ

SST4.jpg9月末、2017年に米国ニューメキシコ州から豪州西部に移設されたDARPAとMITが共同開発した宇宙監視望遠鏡(SST:Space Surveillance Telescope)について、所要の調整や試験を経て初期運用態勢を確立したと米宇宙軍が発表しました。なお移設場所は西部豪州とのみ報道されており、細部位置は不明です

この宇宙望遠鏡SSTの移設は、2012年の米豪2+2での議論を経て2013年に両国で合意されたもので、合意には宇宙望遠鏡移設のほか、カリブ海島国アンティグア(Antigua)の米空軍施設に配備していた宇宙監視レーダー「C-Band ground-based radar system」を2014年に豪州西部に移設することも含む、宇宙監視ネットワークSSN強化全体を目指したものです

SST7.jpgただSSTの性能については、2012年に初めて取り上げた時点から一貫して「従来宇宙望遠鏡に比し桁違いの能力を有し、広範な視野と小さな物体を遠方でも探知追尾でき、物体の写真撮影が可能である」とのみ公表されているのみで、細部は不明です。豪州に設置することにより、静止軌道上の宇宙物体をより多く監視できるようです

北米大陸から南半球への監視センサーの移動は、地球の裏側にセンサーを移して監視網を拡大充実させようとの試みですが、既に移設されている「C-Band」宇宙監視レーダーは、アジアからのロケットやミサイル発射を追尾することが可能な点で中国や北朝鮮への監視強化効果も期待されています

SST6.jpgこれら宇宙監視ネットワーク強化による宇宙状況認識能力への取り組みへの背景には、例えば4月に発表された「懸念する科学者連合:Union of Concerned Scientists」による推計によると、宇宙軌道上に存在する衛星の数が、2015年に1400個だったものが、2022年4月時点で5500個に急増し、今後10年間で58000個まで爆発的に増えるとの見積もりがあり、

また9月29日付の米会計検査院GAOレポートが、増加する衛星が通信やネットワーク接続性向上に大きく貢献する一方で、衛星や宇宙ゴミの増加による物理的衝突リスクの増加のほか、衛星や宇宙ゴミからの電磁波放射や太陽光反射の増加による通信や天文学への悪影響を強く懸念し、その影響には予測不可能なものもある現実があります

SST5.jpgまた関連で米宇宙軍No2のDavid Thompson副作戦部長は、機能停止した衛星の破棄等に関する国際的な基準やルールの設定の重要性を訴え、GAOも同様のルールや基準設定のオプションを4例示し、国際的な議論を活性化すべきと米政府や関係機関に呼び掛けています
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「機能停止した衛星の破棄等に関する国際的な基準やルールの設定」や「国際的議論の活性化」は、現在の国際情勢を見ると絶望的な感がしますが、「宇宙兵器の制限」と合わせ、このような問題に地道に取り組む米国には頭が下がります。

SST10.jpg引き続き「宇宙」に関しては基礎知識が絶対的に不足しているまんぐーすですが、日本のJAXAや航空自衛隊のレーダーで、宇宙監視に協力する検討があったと思うのですが、どの程度進んでいるのでしょうか・・・。最近は防衛省の概算要求資料を見るのもサボっていますので、反省しております

2012年当時の米豪協議関連記事
「米軍が豪に宇宙監視レーダー移設」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2012-11-15

宇宙兵器問題への取り組み
「民間衛星を守る国際規範を」→https://holylandtokyo.com/2022/09/05/3601/
「国防宇宙戦略を発表」→https://holylandtokyo.com/2020/06/23/629/
「提案:宇宙兵器の6分類」→https://holylandtokyo.com/2020/06/01/611/

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元グーグルCEOがAI作成の生物兵器に危機感 [安全保障全般]

国家安全保障評議会の共同議長として訴える
自身で創設の技術動向シンクタンクでの研究など紹介

Eric Schmidt5.jpg9月12日、元グーグルCEOで国家安全保障評議会(National Security Commission)の共同議長を務めるEric Schmidt氏が記者団に、彼が同評議会メンバー有志をメンバーに立ち上げたシンクタンクの研究レポートに言及し、AIが生物学や化学データーベースを利用して生物兵器開発に使用された場合、毒性の高い新たな病原体やウイルスや生み出される懸念が近未来にリスクとして顕在化すると訴えました

レポート「Mid-Decade Challenges to National Competitiveness」では、生物学者も製薬会社も安全保障関係者もあまり意識していないが、最近の生物学とAI技術の発展により、悪意ある者が生物&化学データベースとAIを結び付け、人類を傷つける新たなものを生み出す可能性が高まっていることに警鐘を鳴らしているようです

Eric Schmidt4.jpg一例としてSchmidt氏の発言を紹介した12日付Defense-Newsは、最近製薬会社「Collaborations Pharmaceuticals」が、新薬開発時に毒性を排除するために作成されたAIアルゴリズムを改良し、毒物を生み出すようなアルゴリズムに変更して走らせてみると、製薬会社担当者たちが驚くほど容易に危険物質を生み出すことが可能だと判明したと報じています

実際に担当した製薬会社技術者たちは、病原菌や毒物を生み出す危険性をぼんやりとしか意識していなかったが、化学兵器や生物兵器問題を議論する会議に招待されたことを契機に上記のようなAI「逆利用」を試み、大変危険な悪用の可能性を秘めていることに改めて気づかされたと吐露し、

Eric Schmidt3.jpg「我々はエボラ出血熱など危険なプロジェクトに関与していながら、意識が薄かった」とか、「市販のAIアルゴリズムを少し改良し、公に利用可能な分子データベースと組み合わせ、20世紀最強の神経ガスと呼ばれるVX生成に取り組んだところ、6時間以内に基準レベルの分子40,000 moleculesをサーバー内で生成し、その中には既知の化学兵器物質の他、より毒性の強い可能性が分子も含まれていた」と述べています

別の視点としてSchmidt氏らのレポートは、生物学データベースの強化と同時に、管理を強化することの必要性も訴えています。

Eric Schmidt2.jpg例えば、米国防省の「統合病原菌センター」は、数十年蓄積した世界で最も広範な病理細胞サンプルを保管貯蔵していますが、現在これらをデジタル化し、AIにより診断や治療方針決定に利用するプロジェクトが進められている中で、このデジタルデータベースの強化&活用と同時に、セキュリティー強化も重視されているようです
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新型コロナウイルスの起源については全く議論が煮詰まっていませんが、その影響の大きさについては全人類が身に染みて感じたところです。

Eric Schmidt.jpgそんな中でのAI活用による新たな生物兵器や化学兵器の開発話に、ぞっとする思いがいたしました。なお厳密には、Schmidt氏は「biological warfare」や「biological conflict」との言葉を使っているので、生物兵器「biological weapons」より意味するところが広いのかもしれません。

でも元グーグルCEOのEric Schmidt氏はえらいですね。現在67歳で、ご経歴からすると十二分に悠々自適な暮らしができる余裕のある方でしょうが、今も最前線の課題にリーダーとして挑まれている姿に感心いたします。

生物化学兵器関連
「化学生物兵器を無効化するX線爆弾開発!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-07-08-2
「弾頭7.6万ポンド以上で化学兵器飛散を防止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-04-21
「朝鮮半島の戦いは「汚い戦争」に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-02-10
「NKはB兵器保有か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-16-1

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米空軍幹部が中国の次世代戦闘機開発を語る [米空軍]

飛躍的なステルス性・情報処理・センサー能力等
米空軍追及のNGADと同方向だと表現
一方でNGADがEMD段階入りとの発言は不正確

Kelly AFA.JPG9月21日、米空軍戦闘コマンドACC司令官Mark Kelly大将が記者団に対し、中国による次世代戦闘機開発について慎重ながら言及し、米空軍が開発中のNGADと同様に「a family of systems」としての運用を想定し、現在の中国戦闘機より「exponential:飛躍的に」ステルス性・情報処理・センサー能力等が向上したものを中国が目指していると語りました

更に同司令官は、中国が市場技術を迅速に取り入れて常に最新装備として維持することに着意し、決して次世代制空機の必要性を議論しているような段階ではなく、中国は確固たる計画に基づき開発を進めている点については明確に断言できると表現しています

Kelly AFA2.jpgまた、米国と中国の次世代機開発のアプローチの違いについて、米国は次世代機開発で一気に大きな飛躍を遂げようとするが、中国は例えば第4世代機を例にすると、ロシア製フランカーを少しずつ能力向上を図りながら、SU-27→SU-30→J-16→SU-35へと次第に国産レベルを上げ、最終的なSU-35は「5世代機のアビオや速度性能を備えた非常に優れた4世代機」で、次世代戦闘機への足掛かりになっていると語っています

Kelly AFA3.jpgそしてKelly司令官は、中国の次世代戦闘機の完成時期については言及しませんでしたが、「我々は、中国や他の潜在的敵対国より、少なくとも1か月は先んじて6世代制空機を手に入れなければならない」、「我々は彼ら(中国や敵対国)よりも早く達成する必要がある。さもなければ好ましい結末は得られない」と訴えました

なお同司令官は関連で、NGADが配備される2030年頃まで、F-22を信頼できる戦力として維持しておくことの必要性も同時に訴えたようです

一方でKendall空軍長官はNGAD開発状況について・・・
 
Kendall AFA7.jpg9月19日、Kelly司令官と同じ米空軍協会航空宇宙サイバー会議の会場で、Kendall空軍長官が記者団に対し、6月に自身が「NGADが基礎研究&確認段階を終え、EMD(engineering, manufacturing and development)フェーズに入った」と語ったことに関し発言を後退させ、公式には、EMDに入る前に必要な「Milestone Bレビュー」はまだ行われておらず、EMDフェーズに入っていないと述べました

6月の同長官による「EMDフェーズに入った」発言は米会計検査院GAOの関心も呼び、GAOが「現状を確認する」との姿勢を示すなど波紋を広げていたこともあり、9月7日にはDefense-Newsの取材に「事前の設計段階や基礎確認と同時に、EMD関連にも取り組んでいるとの認識を表現したものだ」と6月発言を修正することを示唆していたところでした

Kendall AFA2.jpg19日に同長官は本件に関し更に明確に、「NGAは依然基礎設計段階にあり、EMDフェーズに入ったとの表現は会話の中での表現」と述べ、EMDフェーズに入る前段階の「Milestone B」決定は公式にはなされていないと訂正しました

この一連のKendall長官の発言に対し航空専門家は辛らつな反応を見せ、共に元米空軍戦闘機パイロットであるヘリテージ財団のJohn Venable研究員やミッチェル研究所のHeather Penney研究員は、「2030年までにNGADが量産段階に入る可能性は極めて低い」、「無人機等とa family of systemsとして機能するための試験や確認には多くの時間が必要なはず」「1機数百億円と同長官が語ったNGADが円滑に導入可能とは考えにくい」等々と疑問を投げかけています

Kendall AFA4.jpgそして両研究員は、「NGADが初期運用態勢を確立するのは2030年代にかなり入ってからになると考えるべき」、「我々の悲観的な見通しが誤っていれば、米空軍にとっては良いのだが・・・」とコメントしています
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剛腕で知られるKendall空軍長官には期待するところ大ですが、最近の「F-35エンジンのAETP換装」や「NGAD進捗」に関する前のめりな発言が、国防省内や米議会において米空軍の立場を高める方向に作用しているのか疑問です。

Kendall AFA.jpgなお、Kelly司令官は中国次世代制空機開発について事柄の性質から細部に言及しませんでしたが、「National Air and Space Intelligence Center」のレポート等によれば・・・との表現で語ったようです

中国の次世代戦闘機開発については取り上げたことが無かったので、ご紹介しました

問題のKendall長官の6月発言
「NGADはEMD phaseに入った」→https://holylandtokyo.com/2022/06/03/3315/

最近のNGAD関連記事
「次期制空機NGADは1機が数百億円」→https://holylandtokyo.com/2022/05/09/3193/
「NGADの無人随伴機開発は」→https://holylandtokyo.com/2022/03/24/2938/
「NGADに発言相次ぐ」→https://holylandtokyo.com/2021/11/11/2376/
「戦闘機族ボスが少し語る」→https://holylandtokyo.com/2021/09/16/2211/
「戦闘機族ボスがNGADへの危機感」→https://holylandtokyo.com/2021/03/05/154/

AETPエンジン関連
「F-35へのAETP搭載にGEとP&W社の意見対立」→https://holylandtokyo.com/2022/09/29/3681/
「AETP採用なら調達機数削減!覚悟?」→https://holylandtokyo.com/2022/09/13/3644/
「AETP採用しないと産業基盤崩壊訴え」→https://holylandtokyo.com/2022/08/24/3562/
「空軍長官:国防省に下駄預ける」→https://holylandtokyo.com/2022/08/09/3515/
「空軍長官:数か月で決着すべき」→https://holylandtokyo.com/2022/05/26/3260/

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