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36日連続飛行を記録:Zephyr太陽光無人機 [ちょっとお得な話]

エアバス社が開発製造の高高度長期在空無人機
成層圏を飛行し昼間は太陽光発電でバッテリーに充電
夜間は高性能バッテリーからの電力で飛行継続

Zephyr-S4.jpg7月22日、エアバス社製の太陽光発電エネルギーで飛行する高高度無人機「Zephyr-8 又はS」が、2018年の連続飛行記録26日間を更新する、36日間連続飛行を更新して飛行を継続中だと、同機の運用可能性試験をしている米陸軍Futures Command(将来戦コマンド)が発表しました

太陽光発電電力を動力源として、雲や天候の影響を受けず、民間航空機の飛行高度の約2倍以上の7万フィート以上の成層圏を飛行する「Zephyr」シリーズは、昼間に太陽光発電電力をリチウムイオン電池に蓄え、夜間も連続して飛行可能な無人機で、2003年に当初英国企業が開発をはじめ、英国防省が常続的な通信中継や監視&偵察活動への応用を最初に試験していました

Zephyr-S3.jpg「Zephyr」シリーズの最新型で今回記録を更新した「Zephyr-8 (又はS)」は、横幅25mの太陽光パネルを搭載した大きな翼をもつものの、24㎏のバッテリーを搭載しても総重量75㎏程度の軽量で、Web情報によれば5㎏のセンサー等を搭載可能で、例えば20X30km範囲を可視光監視するセンサーなどが使用出来るようです

この特異な性能に米軍も関心を持ち始め、今回の連続飛行記録更新は、Army Futures CommandのAPNT/Space CFチーム(Assured Positioning, Navigation and Timing/Space Cross-Functional Team)の計画した実験で達成されましたが、最終的に何日間連続飛行を継続したかは、7月25日時点で不明です

Zephyr-S.jpgただ米陸軍チームの発表によれば、今回の飛行はアリゾナ州で6月15日に始まり、7月22日の時点までで、初の公海上の国際空域飛行を成功させ、衛星通信経由の管制下での連続飛行記録も更新したとのことです。

また米陸軍によれば、数週間後には次なる試験に臨み、その際は太平洋上空を複数の米軍地域コマンドをまたがって飛行し、様々な装備の搭載試験も実施するようです

米陸軍担当チームのMichael Monteleoneリーダーは、「この試験を通じ、多様な搭載装備をデモし、成層圏使用無人機の軍事使用を探り、遠方監視による偵察や目標照準、強靭な通信確立を検討する資を得ることができた」、「Ultra-long在空能力のある無人機は、極めて大きな軍事利用の可能性を持っている」とコメントを出しています
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Zephyr-S2.jpg長期間連続在空型の無人機は、軍用だけでなく、政府機関や民間分野でも様々な可能性がありそうな気もしますが、搭載重量の限界か、搭載装備への電力供給量の限界か、衛星でカバーできるからか、20年近くの開発を経ても本格的な利用は始まっていないようです

ただ、非常に興味深い分野で、蚊トンボのような華奢な機体が空に浮かんでいる様子は好奇心をそそるので、今後も話題になった際はフォローしたいと思っています

長時間在空世界記録Zephyr関連の記事
「英国防省が太陽光無人機Zephyrを試験へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-02-18
「冬の南半球で連続11日飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-29-1

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米陸軍が機動性&生存性の高い前線指揮所を求め [Joint・統合参謀本部]

MASCP:Mobile And Survivable Command Post project本格化
機動性、アンテナ性能、強靭データ貯蔵、隠蔽性、発電力など追

MASCP2.jpg7月27日付Defense-Newsが、米陸軍が開始した将来前線指揮所の在り方検討MASCP(Mobile And Survivable Command Post)projectについてレポートし、本格紛争に備え、様々な専門家や技術者と新たな候補装備品を今年夏にも試験している様子を紹介しています。

米陸軍はこの前線指揮所改革を陸軍の指揮統制改革プロジェクト「Project Convergence」と連携させ、最終的には国防省のJADC2(統合全ドメイン指揮統制プロジェクト)との一体化も2026-27年頃に目指したいとする取り組みですが、現状の前線指揮所が持つ、輸送が大変で、多量の熱や音や電磁波を放出して敵に発見されやすく脆弱で、通信能力が限定的で、最新デジタル技術に追随不十分だ等々の弱点を改善する方向を目指しているようです

MASCP.jpg技術分野で革新を目指している分野には、機動性改善、より遠方と接続可能なアンテナ性能、強靭なデータ貯蔵能力、指揮所のカモフラージュ技術や素材開発、自立可能な自家発電力確保、指揮所全体の物理的防御要領(banking)などが含まれ、プロジェクト責任者Tyler Barton氏は「現状の脆弱性を克服し、本格的脅威に対峙する生存性確保が大きな課題だ」と語っています

今年の夏には、New Jersey州で実施されたNetModX (Network Modernization Experiment)に、MASCP project用の新装備候補がいくつも持ち込まれ、特に今年は機動性確保と熱・音・電磁波放射の抑制に主眼が置かれたテストだったようで、来年は更に対象を拡大して数週間のNetModXに臨む計画だそうです

MASCP3.jpgBarton氏は「送信機やセンサーを高所に配置するタワーなどなど、様々な新インフラ試行導入でチャレンジングなテストを行うことができたが、様々な関係者のチームワークが素晴らしかった」と、様々な産業界の専門家や技術者の支援も得てテストが行われた様子を紹介し、MASCP project初期段階の成果に手ごたえを感じていると語っています
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極めて地道な取り組みながら、極めて重要なプロジェクトだと思います。対テロ戦から本格紛争への頭の切り替えに際し、とても大事なパーツです。以下の話が良くその点を表現しています。

2016年8月の講演で当時のNeller海兵隊司令官は自虐的に
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-16
Neller6.jpg●最近のある海兵隊演習で、展開先での前線司令部設置訓練を行い、仮設指揮所に大きなカモフラージュ用ネットが被せられた。敵の航空攻撃を想定する必要が無かった最近の実戦では、あまりやらなかった訓練だ。
●ネットの偽装効果確認のため上空からの映像で検証すると、仮設指揮所の周りの様々な通信ケーブルやワイヤーが太陽光を反射し、敵なら容易に重要な施設が中心に隠されていることが発見できる状態だった。そしてその欠陥に部隊の誰も気付いていなかったのだ
●これまでの対テロ戦の敵とは、異なる相手と本格紛争では対峙する現実を直視し、自分自身の姿を見直し、考え方を変えなければダメだと教育している

米海兵隊の前線指揮所カモフラージュ能力低下の衝撃
「海兵隊司令官が嘆く現状」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-16

Project Convergenceについて
「2021年末までの教訓」→https://holylandtokyo.com/2021/12/21/2514/
「米陸軍と海兵隊F-35が情報共有演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-13

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