アフガン空軍機はタリバンに悪用されるのか [安全保障全般]
タリバンが確保した兵器との写真をSNSに拡散中
現地の状況は不明ながら、米国関係者の推測は
8月17日付Defense-Newsが、米国が育てて武器を与えたアフガン空軍の兵器がタリバンの手に渡ったことに関し、その影響や脅威について米空軍や米国専門家の意見を紹介しています。また不確定ながら、アフガン政府が崩壊する前後に、隣国に空軍アセットが避難した可能性についても触れています
全般には、タリバンがたとえ飛行させることができても、維持整備をすることは難しく、また対テロ地上作戦用の初歩的な兵器で米国の脅威となることは無いとの見方ですが、固定翼と回転翼を合わせて約210機の戦力で、戦闘車両や輸送トラックや火器を合わせると、9兆円(原文ママ:$86Bn)とも報じられる兵器群ですのでご紹介しておきます
下記のアフガン軍の装備は、7月末に米会計検査院がまとめた数量ですが、弾薬や爆発物の数量については資料が見つかりませんでした。航空機についてはタリバンによる戦力化は難しいにしても、地上兵器については厄介な気がします
まず7月末現在のアフガン軍の装備
空軍関連
●固定翼 C-130を4機、A-29軽攻撃機を23機、セスナ機38機
●回転翼 旧式Mi-17を33機、UH-60を33機、MD530を43機
地上輸送装備
●装甲車両 Hunveeを2.2万両、装甲兵員輸送車を約950両
●輸送車両 SUVを4.2万両、トラックを8000両、
兵器&装備
●小火器 ピストルを12.6万丁、小銃M16を36万丁、機関銃を6.4万丁
●装備品 夜間暗視ゴーグルを1.6万個、無線を16万個
8月17日付Defense-Newsによれば米側関係者は
●8月16日の会見で米統合参謀本部の担当少将は、米国防省として米国がアフガン軍に供与した装備品がどうなっているかのついて確たる情報はないと述べ、アフガン軍装備がタリバンによって使用されないような手立てについても、何も決まっていないと述べた
●航空アセットの提供やアフガン軍への訓練を担当した関係者は、当面は避難民の国外退避を最優先すべきだが、その後は残置装備がタリバンに使用されないよう破壊作戦をすべきだと主張している。いま装備品破壊作戦を実施すると、タリバンが避難作戦妨害に出る可能性があるからだ
●空軍アセットで最新の攻撃力を備えるのがA-29軽攻撃機だが、米空軍戦闘コマンドのMark Kelly司令官は、ブラジル製の単発プロペラ推進機に、米国製のセンサーや兵器を搭載したもので、タリバンがどうするか不明ながら、
●A-29が米軍を脅かすような最新技術を搭載しているわけではなく、速度や航続距離、コンピュータ能力や兵器搭載能力も限定的だと16日に述べている。初期型のUH-60 Black Hawkを含めても、仮に中国やロシアの手に渡ったとしても、流出を懸念する目新しい技術はないとも同司令官は語っている
●また同司令官は、タリバンが仮に航空機を運用しようとした場合に直面する、厄介な課題を上げ、
・ タリバンは安全に飛行可能な操縦者や必要な整備員など運用支援要員を確保できない
・ 仮に操縦者や整備員を見つけてきたとしても、機体維持上のコストや部品確保はより高いハードルだ
●タリバンが外国勢力の力を借り、航空アセットを使用可能になる可能性は否定できないとの意見もあるが、そもそもアフガン国内でタリバンに対する組織的な抵抗活動がない中、航空アセットの使用必要性は限定的だとの見方もある
アフガンから退避した航空アセット情報
●8月15日夜、タジキスタンの許可を得て、3機の航空機と2機のヘリが、計143名のアフガン軍兵士を乗せてタジキスタンに到着、とNYT紙が報じている
●ウズベキスタンにも退避したとのウズベキスタン検察情報が16日にあり、8月14日と15日に、22機の固定翼機と24機のヘリが、585名のアフガン軍兵士を乗せて移動したと現地通信社が報じている
●またウズベキスタン検察は、別に3機のA-29軽攻撃機が同国に飛来し、エスコートに飛び立ったMig-29戦闘機と1機のA-29が空中衝突したと一時発表したが、16日になって全ての情報を取り消し、その後は沈黙している
////////////////////////////////////////////
アフガン軍用に米国が提供した兵器や装備の動向については、今後様々にメディアが報じるでしょうから、その背景&基礎情報として記事をご紹介しました
このような状況になることを、現地の米国関係者は感じていたのでしょうが・・・・。難しい話です
アフガン関連の記事
「アフガン避難者輸送作戦最初の10日」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-24
「C-17輸送機1機に823名も」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-22
「アフガン語通訳1.8万人を特別移民認定へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-26
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
現地の状況は不明ながら、米国関係者の推測は

全般には、タリバンがたとえ飛行させることができても、維持整備をすることは難しく、また対テロ地上作戦用の初歩的な兵器で米国の脅威となることは無いとの見方ですが、固定翼と回転翼を合わせて約210機の戦力で、戦闘車両や輸送トラックや火器を合わせると、9兆円(原文ママ:$86Bn)とも報じられる兵器群ですのでご紹介しておきます
下記のアフガン軍の装備は、7月末に米会計検査院がまとめた数量ですが、弾薬や爆発物の数量については資料が見つかりませんでした。航空機についてはタリバンによる戦力化は難しいにしても、地上兵器については厄介な気がします
まず7月末現在のアフガン軍の装備
空軍関連
●固定翼 C-130を4機、A-29軽攻撃機を23機、セスナ機38機
●回転翼 旧式Mi-17を33機、UH-60を33機、MD530を43機
地上輸送装備
●装甲車両 Hunveeを2.2万両、装甲兵員輸送車を約950両
●輸送車両 SUVを4.2万両、トラックを8000両、
兵器&装備
●小火器 ピストルを12.6万丁、小銃M16を36万丁、機関銃を6.4万丁
●装備品 夜間暗視ゴーグルを1.6万個、無線を16万個
8月17日付Defense-Newsによれば米側関係者は

●航空アセットの提供やアフガン軍への訓練を担当した関係者は、当面は避難民の国外退避を最優先すべきだが、その後は残置装備がタリバンに使用されないよう破壊作戦をすべきだと主張している。いま装備品破壊作戦を実施すると、タリバンが避難作戦妨害に出る可能性があるからだ

●A-29が米軍を脅かすような最新技術を搭載しているわけではなく、速度や航続距離、コンピュータ能力や兵器搭載能力も限定的だと16日に述べている。初期型のUH-60 Black Hawkを含めても、仮に中国やロシアの手に渡ったとしても、流出を懸念する目新しい技術はないとも同司令官は語っている
●また同司令官は、タリバンが仮に航空機を運用しようとした場合に直面する、厄介な課題を上げ、
・ タリバンは安全に飛行可能な操縦者や必要な整備員など運用支援要員を確保できない
・ 仮に操縦者や整備員を見つけてきたとしても、機体維持上のコストや部品確保はより高いハードルだ
●タリバンが外国勢力の力を借り、航空アセットを使用可能になる可能性は否定できないとの意見もあるが、そもそもアフガン国内でタリバンに対する組織的な抵抗活動がない中、航空アセットの使用必要性は限定的だとの見方もある
アフガンから退避した航空アセット情報

●ウズベキスタンにも退避したとのウズベキスタン検察情報が16日にあり、8月14日と15日に、22機の固定翼機と24機のヘリが、585名のアフガン軍兵士を乗せて移動したと現地通信社が報じている
●またウズベキスタン検察は、別に3機のA-29軽攻撃機が同国に飛来し、エスコートに飛び立ったMig-29戦闘機と1機のA-29が空中衝突したと一時発表したが、16日になって全ての情報を取り消し、その後は沈黙している
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このような状況になることを、現地の米国関係者は感じていたのでしょうが・・・・。難しい話です
アフガン関連の記事
「アフガン避難者輸送作戦最初の10日」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-24
「C-17輸送機1機に823名も」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-22
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米海軍が極超音速兵器の2段目ロケット試験成功 [Joint・統合参謀本部]
細部を把握していませんが重要兵器開発なので
1段目とスラスト・ベクター装置試験にも成功の模様
米海軍艦艇等への配備は2025年頃に遅れそうだが
8月25日、米海軍がユタ州の試験場で極超音速兵器用の固体燃料ロケットモーター「2段目:a second-stage solid rocket motor」試験を行い、成功したと米海軍が26日に発表しました。
25日の試験は、今年5月27日に試験を成功させた「1段目」と組み合わせた形で実施され、同時に同兵器の飛行方向を極超音速飛行状態で変更する「スラスト・ベクターシステム:thrust vector control system」も搭載して行われ、全てがうまく言った模様です
中国やロシアに比して遅れている米国の極超音速兵器開発は、2019年頃から国防省が音頭を取って3軍が協力する体制が動き始め、米陸軍は車両搭載型で2023年頃の導入を、米海軍は艦艇発射型を2023年、潜水艦発射型を2024年、米空軍は空中発射型を2022年に配備する目標を立て、最優先事業として協力しつつそれぞれが取り組んでいます
米空軍は空中発射型でり、兵器の「初速」が確保された状態からの発射で実用化時期が一番早くなっており、陸海は速度ゼロ状態から2段推進ロケットで加速する必要があるため時間をかけ共同開発で取り組む構図となっています
「Glide Body:C-HGB」は3軍共通で、陸海は協力して推進装置を開発し、発射装置は陸海空がそれぞれの搭載装備に併せて独自に開発する強力体制のようですが、細かな分担についてまんぐーすは把握できていません
昨年2020年前半時点では、上記で述べたように、部隊配備が2022年から24年に行われると報道されていましたが、2020年後半になって「広く学会から最新技術の知見を得たい」といった「行き詰まり」状態を示唆する動きも聞かれ始めていました
また今年に入り、4月と7月に2回実施された米空軍の空中発射型の極超音速兵器ARRW(AGM-183A Air-launched Rapid Response Weapon)発射試験が失敗しており、なかなか簡単な容易な道ではないようです。
更に今年7月には米海軍幹部が、艦艇や潜水艦の配備は2025年頃になろうと発言し、当初の艦艇23年・潜水艦24年からの後退に言及しており、何やら「暗雲」が立ち込め始めているところです
最近の流れの簡単な復習
(過去記事もご覧ください:よく理解できていませんが)
●2020年3月20日、3軍が共通で使用を想定する「Common-Hypersonic Glide Body:C-HGB」の試験に成功。後に陸軍長官が、この試験での着弾誤差はわずか20㎝だったと開発の順調さをアピール
●2020年10月に国防省開発担当者が、広く学会にも呼び掛けて関連最新技術情報収集する枠組み構築を発表。同12月には豪州との協力体制合意を発表
●2021年5月27日、陸海が共同開発中の固体ロケット1段目の試験に米海軍が成功
●米空軍のARRW発射試験は、2021年4月と7月に実施されたが、共にエンジン点火等に問題が生じて失敗
●2021年7月22日、米海軍艦隊司令官が、共同開発中の米陸軍は2023年の地上配備を目指しているが、海軍艦艇への発射機の搭載や種々の確認訓練には更なる時間が必要で、バージニア級攻撃原潜への搭載も含め、水上艦艇への搭載は2025年頃になろうと発言
////////////////////////////////////////////////
Web上の写真からすると、地上での試験で、打ち上げ試験ではないようです
CPS(conventional prompt strike)ミサイルとも呼ばれる極超音速兵器は、今後の戦いを考える上で重要な要素ですので、分からないながらに報道をフォローしております。
日本や列島線上への配備の話も当然出てくるでしょうから、ちまちまとご紹介しております
米軍の極超音速兵器開発
「米艦艇搭載は2025年頃か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-24
「豪州とも協力」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-01
「今頃学会と情報収集枠組み」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-28
「3月の極超音速兵器テストは誤差20㎝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-14
「3軍協力で極超音速兵器開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「ボディー試験に成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-22
「空軍開発本格化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-16
「攻防両面で超超音速兵器話題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-08-1
「防御手段無し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-21-1
「宇宙センサー整備が急務」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31
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1段目とスラスト・ベクター装置試験にも成功の模様
米海軍艦艇等への配備は2025年頃に遅れそうだが

25日の試験は、今年5月27日に試験を成功させた「1段目」と組み合わせた形で実施され、同時に同兵器の飛行方向を極超音速飛行状態で変更する「スラスト・ベクターシステム:thrust vector control system」も搭載して行われ、全てがうまく言った模様です
中国やロシアに比して遅れている米国の極超音速兵器開発は、2019年頃から国防省が音頭を取って3軍が協力する体制が動き始め、米陸軍は車両搭載型で2023年頃の導入を、米海軍は艦艇発射型を2023年、潜水艦発射型を2024年、米空軍は空中発射型を2022年に配備する目標を立て、最優先事業として協力しつつそれぞれが取り組んでいます

「Glide Body:C-HGB」は3軍共通で、陸海は協力して推進装置を開発し、発射装置は陸海空がそれぞれの搭載装備に併せて独自に開発する強力体制のようですが、細かな分担についてまんぐーすは把握できていません
昨年2020年前半時点では、上記で述べたように、部隊配備が2022年から24年に行われると報道されていましたが、2020年後半になって「広く学会から最新技術の知見を得たい」といった「行き詰まり」状態を示唆する動きも聞かれ始めていました

更に今年7月には米海軍幹部が、艦艇や潜水艦の配備は2025年頃になろうと発言し、当初の艦艇23年・潜水艦24年からの後退に言及しており、何やら「暗雲」が立ち込め始めているところです
最近の流れの簡単な復習
(過去記事もご覧ください:よく理解できていませんが)

●2020年10月に国防省開発担当者が、広く学会にも呼び掛けて関連最新技術情報収集する枠組み構築を発表。同12月には豪州との協力体制合意を発表
●2021年5月27日、陸海が共同開発中の固体ロケット1段目の試験に米海軍が成功
●米空軍のARRW発射試験は、2021年4月と7月に実施されたが、共にエンジン点火等に問題が生じて失敗

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Web上の写真からすると、地上での試験で、打ち上げ試験ではないようです
CPS(conventional prompt strike)ミサイルとも呼ばれる極超音速兵器は、今後の戦いを考える上で重要な要素ですので、分からないながらに報道をフォローしております。
日本や列島線上への配備の話も当然出てくるでしょうから、ちまちまとご紹介しております
米軍の極超音速兵器開発
「米艦艇搭載は2025年頃か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-24
「豪州とも協力」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-01
「今頃学会と情報収集枠組み」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-28
「3月の極超音速兵器テストは誤差20㎝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-14
「3軍協力で極超音速兵器開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「ボディー試験に成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-22
「空軍開発本格化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-16
「攻防両面で超超音速兵器話題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-08-1
「防御手段無し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-21-1
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DARPAが最新ハッカー対策HACMS披露 [サイバーと宇宙]
既にグーグルやアマゾンも活用
1970年代発想の理論が現代技術で実現可能に
6日、無人機ハッキングへの対策専門イベントで、国防省研究機関DARPAがHACMSとのハッカー対策システムを披露し、「できるものならハッキングしてみろ!」とハッカー達に挑戦状を突き付けたようですが、誰もハッキングに成功せず、HACMSと背景にある「formal methods」の有用性アピールに成功した模様です
DARPA開発のHACMS(High-Assurance Cyber Military Systems)は、1973年に基本理論が提唱された「formal methods」との技術を使用したものらしいですが、発表当時には同技術が「コストや手間が掛かりすぎ」で具現化できなかったものが、最近のIT技術の進展により実用化に目途が立ってきたようです
記事の説明によると「formal methods」を使用したHACMSは、ハッカーがシステム侵入に利用したソフトの「バグ」を数学的(mathematically)に補修して消す役割を果たすようで、ボーイング社はAH-6ヘリを無人化したUH-6ヘリに搭載するようです
民生分野では既に、グーグルやアマゾンやFireFoxが、Webブラウザーやクラウドサービスの重要部分に「formal methods」を大規模に導入し始めたと業界機関誌が7月号で紹介しているようで、その分野の注目技術らしいです
ラスベガスのイベントでは、無人機に「formal methods」活用のハッカー対策システムHACMSを搭載し、DARPAがハッキングを試みて無人機のカメラシステムの操作権を一時奪い取りますが、まず無人機の操縦系統に影響を受けないようにHACMSが機能し、その後遠隔操作システム全体を飛行継続のまま再立ち上げしてカメラ制御権も奪還したとのことです。
以上のようなデモを聴衆の前で披露した後、広くハッカーたちに挑戦を呼びかけたようですが、誰もハッキングに成功できなかったと報じられています。
13日付米空軍協会web記事によれば
●DARPAのInformation Innovation室の担当責任者Raymond Richards氏は、ラスベガスで開催されたイベント(DEF CON Aerospace Village)では誰もハッキングに成功できなかったと振り返り、DARPA内では一応2017年に実証完了した技術であったが、昨今話題となりつつあることを受け、このようなイベントで改めて紹介したと説明した
●同イベントでは、無人機の遠隔操作システムやソフトは極めて脆弱性が高く、ハッキングが極めて容易であることを説明しつつ、種々の対策の重要性や具体的製品が提案されている
●同イベントの性格上、主催者はプロと言われるハッカー達を会場に招待していたが、HACMSのソフトをハッキングして無人機の操作権を奪うことに成功した者は現れなかった。一時的に無人機搭載カメラ操作権をハッカーが奪うことはあったが、他の操作システムへの影響を即座に遮断する機能が働き、ハッカーが常套手段とする一部から全体への浸潤を阻止していた
●DARPAと契約してHACMSに参画しているCollins Aerospace社員は、無人機の一部システムがハッキングされても、無人機自体は操作権を奪われることなく飛行を継続し、空中で本来の操縦者によりリスタートされ元の状態に復帰できると説明した
●DARPAの担当責任者Ray Richards氏は、「ソフトはますます複雑さを増しており、従来の使用試験による問題特定(バグの洗い出しや脆弱性発見)は、非常に時間がかかる割には非効率となりつつある」と表現して、「formal methods」大規模導入の需要がますます高まるだろうと説明した
/////////////////////////////////////////
「formal methods」やHACMSについて、IT技術観点からは全く理解できていませんが、試験による「バグの洗い出しや脆弱性発見」とのアプローチではなく、敵が見つけた「バグ」を無効化したり、乗っ取られた部分を他から切り離し、とりあえず基本機能に影響を与えない状態を保つ等の機能があるような印象を受けました
理論的には分かっていても、当時の技術では実現不可能だったものが、時を経て実現可能になる・・・、IT分野にはそんな種がまだ眠っているのかもしれません。敵が実現しないうちに、味方で実現・活用したいものです
詳しい方がおられましたら、ご教授ください
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1970年代発想の理論が現代技術で実現可能に

DARPA開発のHACMS(High-Assurance Cyber Military Systems)は、1973年に基本理論が提唱された「formal methods」との技術を使用したものらしいですが、発表当時には同技術が「コストや手間が掛かりすぎ」で具現化できなかったものが、最近のIT技術の進展により実用化に目途が立ってきたようです

民生分野では既に、グーグルやアマゾンやFireFoxが、Webブラウザーやクラウドサービスの重要部分に「formal methods」を大規模に導入し始めたと業界機関誌が7月号で紹介しているようで、その分野の注目技術らしいです
ラスベガスのイベントでは、無人機に「formal methods」活用のハッカー対策システムHACMSを搭載し、DARPAがハッキングを試みて無人機のカメラシステムの操作権を一時奪い取りますが、まず無人機の操縦系統に影響を受けないようにHACMSが機能し、その後遠隔操作システム全体を飛行継続のまま再立ち上げしてカメラ制御権も奪還したとのことです。
以上のようなデモを聴衆の前で披露した後、広くハッカーたちに挑戦を呼びかけたようですが、誰もハッキングに成功できなかったと報じられています。
13日付米空軍協会web記事によれば

●同イベントでは、無人機の遠隔操作システムやソフトは極めて脆弱性が高く、ハッキングが極めて容易であることを説明しつつ、種々の対策の重要性や具体的製品が提案されている

●DARPAと契約してHACMSに参画しているCollins Aerospace社員は、無人機の一部システムがハッキングされても、無人機自体は操作権を奪われることなく飛行を継続し、空中で本来の操縦者によりリスタートされ元の状態に復帰できると説明した
●DARPAの担当責任者Ray Richards氏は、「ソフトはますます複雑さを増しており、従来の使用試験による問題特定(バグの洗い出しや脆弱性発見)は、非常に時間がかかる割には非効率となりつつある」と表現して、「formal methods」大規模導入の需要がますます高まるだろうと説明した
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理論的には分かっていても、当時の技術では実現不可能だったものが、時を経て実現可能になる・・・、IT分野にはそんな種がまだ眠っているのかもしれません。敵が実現しないうちに、味方で実現・活用したいものです
詳しい方がおられましたら、ご教授ください
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「サイバー攻撃に即時ミサイル反撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-11-1
「NATOが選挙妨害サイバー演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-13
「サイバーとISR部隊が統合して大統領選挙対策に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「ナカソネ初代司令官が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-17
「大活躍整備員から転換サイバー戦士」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-3
無人機対処にレーザーや電磁波
「HOR:強力電磁波で大量の小型無人機を同時無効化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-22
「カタール配備のC-UASと陸軍のIFPC」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-20
「オプション試験中」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「国防省が小型無人機対処戦略発表」→https://holylandtokyo.com/2021/01/12/295/
「小型ドローン対策に最新技術情報収集」→https://holylandtokyo.com/2020/10/30/445/
「米海兵隊の非公式マニュアル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-31
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米空軍トップが記者クラブで変化の必要性訴え [米空軍]
National Press Clubで国民に問いかける
中国で発見の100個のICBMサイトで目を覚ませ
2035年には中国が軍事優位を奪われる
6日、米空軍参謀総長のBrown大将がNational Press Clubで講演し、7月末にエコノミスト誌が衛星写真で紹介した中国の新しいICBMサイト約100個の事例をあげ、GBSD(新型ICBM)開発に理解を求めるとともに、一部米議員の反対で進まない旧式装備の早期退役と将来装備への予算配分に理解を求めました
Brown大将は普段の軍事記者相手ではなく、プレスクラブとのより一般国民相手に語るチャンスをとらえ、中国が旧式装備から新型装備への入れ替えを積極的に進めていることも取り上げ、現状のままでは2035年頃には軍事力で中国が米国の優位に立つとの危機感をアピールしつつ、選挙区への利益誘導のため老朽装備の早期退役に反対する米議会の姿勢を浮き上がらせる手法で語っています
更に同参謀総長は戦闘機を例に挙げ、装備品の開発ペースが以前に比べ極端に低下していることを紹介しつつ、軍事予算が良くて横ばい状況が続いている状況では、「規模が大きくても空虚な態勢より、小さくても能力の備わった態勢を望む」と語り、その変革を迅速に進める必要があると強調しています
6日付米空軍協会web記事によれば同参謀総長は
●エコノミスト誌が7月31日付で衛星写真を基に、中国の新たなICBMサイロ約100個の設置を報じているが、米国民が敵国の急速な変化を知るうえで良い機会となったと思う。米軍人が訴えても聞き入れてもらうのが難しい事実を、写真で明確に示してくれたことで国民の理解が深まることに有効だと思う
●核抑止3本柱のICBM更新に関し、50年以上使用されているMinuteman IIIの延命使用を主張する議員がいるが、その主張の根拠には、中国の核戦力が大きくないとの仮定がある。しかし中国の新ICBMサイロ画像は中国の核増強姿勢を指摘している
●私が空軍士官になった1984年当時は、2.5年に1機の割合で新型戦闘機開発が行われていたが、それ以後現在まで4機種しか新たに開発されていない状況が示すように、米空軍の変革は停滞しており、このままでは2035年頃には中国に軍事優位を奪われる
●ただ私は、空軍の規模が大きければよいの言っているのではなく、中国を撃退するためには適切な戦力構成が必要だと主張しているのだ。つまり、政治により旧式装備を大規模に保有させられている現状を捨て去らなければ変革は出来ない
●一方で中国は、将来の戦いに関係が少ないと考えた装備を削減し、必要な新装備の導入を積極的に進めている。太平洋正面に最新の航空戦力を増強し、地域最大の通常兵器ミサイル能力を備えるに至っていほか、極超音速兵器部隊の構築も進めている。
●また中国は、南シナ海など緊要地域での基地増設を、目立たないように配慮しつつも着実に進め、中国本土の前進防衛拠点化を進めている
●中国は最新のミサイルや航空機の数量を増強しつつあり、ミサイル射程も延伸しつつある。少なくとも中国と同等のペースで米空軍の変革を進めなければならない
●米国は西太平洋で同盟国や友好国に頼っているが、それらの国に中国は経済的な嫌がらせを強化しており、そのような中で米軍は従来とは異なる不便で設備不十分な基地に分散して戦うことを習得する必要がある
●米空軍は現在、歴史上で最も規模が小さく、かつ平均年齢が高い装備で運用しているが、「規模が大きくて空虚な態勢より、小さくても能力の備わった態勢」を目指すべきであり、その中で中国に対抗できる新技術導入を追求すべきである
●「小さくても能力の備わった態勢」を目指す過程では、A-10など単一任務しか遂行できない老朽装備を早期退役させ、厳しい環境でも多様な任務を遂行可能な新兵器に資源投入すべきである。またセンサーやシューターを繋ぐABMS構築にも精力を注ぐべきだ
//////////////////////////////////////////////////////
Brown参謀総長の率直な語りはいつも各方面と摩擦を生みますが、真実を率直に語ることを信条とする同大将の基本姿勢は不動で、まんぐーすも応援したいところです
ただ、上記の主張が苦しいのは、それでも金食い虫F-35の大量調達(計1768機)姿勢を継続しているからです。
この点(戦闘機が装備調達の中心)に踏み込まないと、米空軍の真の改革は無いと戦闘機パイロット以外の誰もが考えており、これは戦闘機が支配する世界中の空軍に共通の課題です
GBSD関連の記事
バイデン政権関係者やシンクタンクのICBMミニットマンⅢの延命措置提言に、米戦略軍司令官が真っ向反論
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Kendall空軍長官候補が上院で語る
「新空軍長官の情勢認識」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-26-1
米空軍の戦闘機構成議論
「戦闘機の近未来体制は」→https://holylandtokyo.com/2021/05/21/1709/
「戦闘機は7機種から4機種へ」→https://holylandtokyo.com/2021/05/18/1496/
「戦闘機混合比や5世代マイナス機検討」→https://holylandtokyo.com/2021/02/22/266/
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中国で発見の100個のICBMサイトで目を覚ませ
2035年には中国が軍事優位を奪われる


更に同参謀総長は戦闘機を例に挙げ、装備品の開発ペースが以前に比べ極端に低下していることを紹介しつつ、軍事予算が良くて横ばい状況が続いている状況では、「規模が大きくても空虚な態勢より、小さくても能力の備わった態勢を望む」と語り、その変革を迅速に進める必要があると強調しています
6日付米空軍協会web記事によれば同参謀総長は

●核抑止3本柱のICBM更新に関し、50年以上使用されているMinuteman IIIの延命使用を主張する議員がいるが、その主張の根拠には、中国の核戦力が大きくないとの仮定がある。しかし中国の新ICBMサイロ画像は中国の核増強姿勢を指摘している
●私が空軍士官になった1984年当時は、2.5年に1機の割合で新型戦闘機開発が行われていたが、それ以後現在まで4機種しか新たに開発されていない状況が示すように、米空軍の変革は停滞しており、このままでは2035年頃には中国に軍事優位を奪われる

●一方で中国は、将来の戦いに関係が少ないと考えた装備を削減し、必要な新装備の導入を積極的に進めている。太平洋正面に最新の航空戦力を増強し、地域最大の通常兵器ミサイル能力を備えるに至っていほか、極超音速兵器部隊の構築も進めている。
●また中国は、南シナ海など緊要地域での基地増設を、目立たないように配慮しつつも着実に進め、中国本土の前進防衛拠点化を進めている

●米国は西太平洋で同盟国や友好国に頼っているが、それらの国に中国は経済的な嫌がらせを強化しており、そのような中で米軍は従来とは異なる不便で設備不十分な基地に分散して戦うことを習得する必要がある
●米空軍は現在、歴史上で最も規模が小さく、かつ平均年齢が高い装備で運用しているが、「規模が大きくて空虚な態勢より、小さくても能力の備わった態勢」を目指すべきであり、その中で中国に対抗できる新技術導入を追求すべきである
●「小さくても能力の備わった態勢」を目指す過程では、A-10など単一任務しか遂行できない老朽装備を早期退役させ、厳しい環境でも多様な任務を遂行可能な新兵器に資源投入すべきである。またセンサーやシューターを繋ぐABMS構築にも精力を注ぐべきだ
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Brown参謀総長の率直な語りはいつも各方面と摩擦を生みますが、真実を率直に語ることを信条とする同大将の基本姿勢は不動で、まんぐーすも応援したいところです

この点(戦闘機が装備調達の中心)に踏み込まないと、米空軍の真の改革は無いと戦闘機パイロット以外の誰もが考えており、これは戦闘機が支配する世界中の空軍に共通の課題です
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米軍によるアフガン避難民輸送作戦 [Joint・統合参謀本部]
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約200機で14~23日までに3.7万人を国外に空輸
22~23日の24時間で16000名を国外へ
カブール空港での滞在1時間以内で再発進(空中給油)
少なくとも機内で3名出産
23日、米軍輸送コマンド司令官のStephen R. Lyons陸軍大将が記者会見でアフガンからの避難民輸送作戦の状況を説明し、約200機の米軍機や動員した民間機により、8月14日開始から23日時点で避難民計37000名を輸送したと明らかにし、既に機内で3名が出産していると述べました
同司令官は、バイデン大統領やオースチン国防長官から、「許可された全ての避難者を移動させる:every evacuee that is cleared to move can move」との指示を受けていると述べ、米軍や多国籍軍のアフガン作戦に通訳等として協力したアフガン国民やその家族が対象と考えられますが、正確な「輸送許可対象者」が誰なのかをまんぐーすは把握していません
23日夜にアフガンに向け出発した航空自衛隊C-2輸送機や24日に出発する2機のC-130輸送機は、日本人の日本大使館勤務者以外にも、大使館勤務のアフガン人職員や家族を空輸すると報じられていますが、とりあえずカタールに空輸する以外はよくわかりません
細部はさて置き、以下ではLyons米軍輸送コマンド司令官が説明した、アフガン脱出空輸作戦の状況をご紹介しておきます。短時間でこれだけの作戦を実施する能力は大したもんだと思います
23日付米空軍協会web記事によれば同司令官は
●米軍輸送機のほか民間チャーター機も活用し、約200機の航空機を導入して対応しており、8月14日輸送開始以来、計37000名(23日時点)を輸送した
●特に23日までの24時間では、25機のC-17輸送機、3機のC-130、チャーター機61機を投入し、16000名輸送した
●避難者は(カタールや独Ramstein空軍基地など)中継基地にまず輸送され、そこで「screened and processed」手続きを行った後、3時間程度で米本土の4基地(Fort Bliss, Texas, Fort McCoy, Wisc.; Fort Lee, Va.; and Joint Base McGuire-Dix-Lakehurst, N.J.)へ再び空輸されている
●中継基地から米本土4基地への空輸は、「Civil Reserve Air Fleet」との民航機を予備役戦力として動員する枠組みで集めた輸送力で空輸している
●軍用機の運用クルーは機体数の2倍を投入しており、機体が休みなく輸送任務を継続できる態勢をとっている。例えば、カブール国際空港では給油は行わず、着陸後に避難者を搭乗させ1時間以内に再発進する仕組みを構築し、離陸後に空中給油を受けて目的地まで飛行させている
●国防省からは、今後は毎日6000~9000名の避難者が見積もられるとの情報を得ているが、能力的には、今後もカブール国際空港から毎日1万人を空輸できる輸送力を確保するつもりである。
●21日、カブールから独Ramstein空軍基地へ飛行中のC-17輸送機機内で、避難民の妊婦が産気づき、ドイツ到着直前に無事出産して母子ともに健康との報告があったが、これ以外にも2件の機内出産があった。出産の際は、機長が飛行高度を下げて機内気圧を高める等の対応を行った
●輸送機のクルーは疲れているが士気は高く、安全上の問題が生じないよう、また言語の壁からコミュニケーションが困難な中でも、懸命に任務に取り組んでいる
///////////////////////////////////////////
最前線で汗をかく、米軍や多国籍軍兵士の努力に敬意を表しつつ、自衛隊機や派遣隊員約200名の無事を祈念いたします
しかし、米本土の4基地に受け入れた数万人の避難民を、今後どうするのでしょうか? 重い課題です
アフガン避難民関連
「15日には、823名もC-17輸送機に乗せていた!」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-22
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約200機で14~23日までに3.7万人を国外に空輸
22~23日の24時間で16000名を国外へ
カブール空港での滞在1時間以内で再発進(空中給油)
少なくとも機内で3名出産
同司令官は、バイデン大統領やオースチン国防長官から、「許可された全ての避難者を移動させる:every evacuee that is cleared to move can move」との指示を受けていると述べ、米軍や多国籍軍のアフガン作戦に通訳等として協力したアフガン国民やその家族が対象と考えられますが、正確な「輸送許可対象者」が誰なのかをまんぐーすは把握していません

細部はさて置き、以下ではLyons米軍輸送コマンド司令官が説明した、アフガン脱出空輸作戦の状況をご紹介しておきます。短時間でこれだけの作戦を実施する能力は大したもんだと思います
23日付米空軍協会web記事によれば同司令官は

●特に23日までの24時間では、25機のC-17輸送機、3機のC-130、チャーター機61機を投入し、16000名輸送した
●避難者は(カタールや独Ramstein空軍基地など)中継基地にまず輸送され、そこで「screened and processed」手続きを行った後、3時間程度で米本土の4基地(Fort Bliss, Texas, Fort McCoy, Wisc.; Fort Lee, Va.; and Joint Base McGuire-Dix-Lakehurst, N.J.)へ再び空輸されている

●軍用機の運用クルーは機体数の2倍を投入しており、機体が休みなく輸送任務を継続できる態勢をとっている。例えば、カブール国際空港では給油は行わず、着陸後に避難者を搭乗させ1時間以内に再発進する仕組みを構築し、離陸後に空中給油を受けて目的地まで飛行させている
●国防省からは、今後は毎日6000~9000名の避難者が見積もられるとの情報を得ているが、能力的には、今後もカブール国際空港から毎日1万人を空輸できる輸送力を確保するつもりである。

●輸送機のクルーは疲れているが士気は高く、安全上の問題が生じないよう、また言語の壁からコミュニケーションが困難な中でも、懸命に任務に取り組んでいる
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最前線で汗をかく、米軍や多国籍軍兵士の努力に敬意を表しつつ、自衛隊機や派遣隊員約200名の無事を祈念いたします
しかし、米本土の4基地に受け入れた数万人の避難民を、今後どうするのでしょうか? 重い課題です
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キューバ移民の新海軍長官が4つの「C」重視を表明 [Joint・統合参謀本部]
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キューバ移民のシンボル的人物
米海軍と米軍の課題を凝縮したメッセージに注目
10日、キューバ移民として初めて海軍長官に就任(9日)したばかりのCarlos Del Toro氏が、米海軍内に向けたメッセージを発出し、勤務に当たり重視する事項を4つの「C」で表現するとともに、米海軍兵士が現場で直面しているであろう課題にも触れ、全力で取り組むとの決意を表明しています
以前から何度かご紹介していますが、同長官が立ち向かう米海軍には問題山積です。
装備品開発では予算超過と開発計画の遅延、更に完成しても期待の性能が発揮できないケースが沿岸戦闘艦LCSやフォード級空母等々で連続し、部隊運用でも艦艇衝突や火災事故が頻発、艦艇修理も補給処の根深い問題と予算不足で遅延が頻発、更にはシンガポール港湾業者による海軍士官へのワイロ事件などもあり、「何をやらしてもダメな米海軍」との部外評価を海軍トップが認めるほど厳しい状況です。
そんな状況にありながら、トランプ政権4年間では、艦艇事故や空母でのコロナ大発生事案等もあり長官交代が相次ぎ、議会承認を得た長官が2名と臨時長官3名が激しく入れ替わる状態続いていました。また海軍人トップポストも、就任直前だった新トップが身辺調査に引っかかって退役に追い込まれ、予想外の人物が現トップと務めているなど、ゴタゴタのネタは尽きません
そんな中で就任の同長官のご経歴を短く凝縮すると
・1歳でキューバから両親と共にNY移住し
・海軍士官学校卒業後、22年間優秀な米海軍士官として勤務
(最新イージス艦導入艦長&初の女性受け入れ艦長)
・退役後は海軍関連コンサル会社CEOとして実績
・同企業が「2020 Small Business Success Story」賞受賞
・ヒスパニックを代表する100名にも選出
そして、そんな新海軍長官が発出したメッセージには、現在の米海軍や米軍を取り巻く課題が凝縮されていますので、ご紹介しておきます
新長官が4つの「C」で表現した重視事項
●China
中国は米国の軍事優位を削ごうとしているが、そうさせてはならない。中国の侵略を抑止し、国家の安全の守り、平和を維持する。我々の能力や勇気や決意で力と信念を示そう
●Culture
米海軍人は、如何なる人種、性別、宗教、民族であろうとも尊厳をもって扱われるべき。これは米海軍と海兵隊が、才能なる優秀な人材を生かして戦闘態勢を確立するにあたっても極めて重要
●Climate
気候変動は今や、米海軍施設から頻繁な任務出動に至るまで、あらゆるリスクに結びついており、世界中の資源争いにも結び付いている。対処には知見や革新を総動員する必要があり、作戦の完遂と優位性確保と両立させつつ、本課題に取り組む必要がある
●COVID(コロナ)
機会をとらえて、ワクチン接種を推進しなければならない。ワクチン無しでは前線への展開も態勢確立もあり得ない。海軍と海兵隊にワクチン接種を推進するため、迅速に全ての対策を講じる
メッセージ後半では兵士の関心事項に触れ
●諸君の安全と福利厚生は常に私の重要事項であり、目の前の課題解決に向け、最重要課題として全力で取り組んでいく
●また、諸君が現場での成功に必要な装備や訓練が確実に提供されるよう取り組み、維持整備作業の遅れを無くし、あふれる作戦要求を適切に管理し、将来の海軍構築にも取り組んでいく
●私が海軍士官学校生として米海軍生活を始めた時の海軍長官は、私と同じ移民の(メキシコ移民)Edward Hidalgo長官であったが、彼が教えてくれた強い米海軍の必要性を私は肝に銘じている
●何よりも、私が国に奉じていると同時に、Hidalgo長官が私のために勤務することを約束してくれたことを記憶している。そしてその思いは今の私と同じである
//////////////////////////////////////////////
中国以外の「C」に、「Culture」「Climate」が来ているのは今の米国政権の姿勢を強く反映しているものと思われます
「COVID(コロナ)」については意外な気がしましたが、反ワクチン派のキャンペーンで、接種率6割程度から接種が停滞している米国社会を反映し、「デルタ株」対処に米国全体が苦悩する様子が伺えます
(マスゴミの偏向報道のために日本では認知されていませんが、急速なワクチン接種により、日本はいつの間にか世界第5位程度の接種率レベルに達しつつあります。日本のゆがんだ医療体制と医師会の非協力的な体質が、医療ひっ迫を招かなければ、「さざ波」状態です)
「安全と福利厚生」「必要な装備と訓練」「維持整備作業の遅延解消」など、現場の士気を低下させている諸課題も、短いメッセージの中ににじみ出ています
新海軍長官の海軍へのメッセージ原文
→https://www.mynavyhr.navy.mil/Portals/55/Messages/ALNAV/ALN2021/ALN21056.txt?ver=txYQbA38CZWc1ar_66xRsg%3d%3d
Carlos Del Toro新海軍長官のご経歴
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-14
米海軍の課題&問題の一端
「3大近代化事業から1つを選べ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-09
「第1艦隊復活を検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-20
「F-35搭載用強襲揚陸艦火災の衝撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-15
「コロナで艦長と海軍長官更迭の空母」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-27
「空母や艦艇修理の3/4が遅延」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-22
「空母フォード責任者更迭」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-08
「NGADの検討進まず」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-17
「米海軍トップ確定者が急きょ辞退退役へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-09
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
→https://holylandtokyo.com/
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キューバ移民のシンボル的人物
米海軍と米軍の課題を凝縮したメッセージに注目

以前から何度かご紹介していますが、同長官が立ち向かう米海軍には問題山積です。
装備品開発では予算超過と開発計画の遅延、更に完成しても期待の性能が発揮できないケースが沿岸戦闘艦LCSやフォード級空母等々で連続し、部隊運用でも艦艇衝突や火災事故が頻発、艦艇修理も補給処の根深い問題と予算不足で遅延が頻発、更にはシンガポール港湾業者による海軍士官へのワイロ事件などもあり、「何をやらしてもダメな米海軍」との部外評価を海軍トップが認めるほど厳しい状況です。

そんな中で就任の同長官のご経歴を短く凝縮すると
・1歳でキューバから両親と共にNY移住し
・海軍士官学校卒業後、22年間優秀な米海軍士官として勤務
(最新イージス艦導入艦長&初の女性受け入れ艦長)
・退役後は海軍関連コンサル会社CEOとして実績
・同企業が「2020 Small Business Success Story」賞受賞
・ヒスパニックを代表する100名にも選出
そして、そんな新海軍長官が発出したメッセージには、現在の米海軍や米軍を取り巻く課題が凝縮されていますので、ご紹介しておきます
新長官が4つの「C」で表現した重視事項
●China
中国は米国の軍事優位を削ごうとしているが、そうさせてはならない。中国の侵略を抑止し、国家の安全の守り、平和を維持する。我々の能力や勇気や決意で力と信念を示そう
●Culture
米海軍人は、如何なる人種、性別、宗教、民族であろうとも尊厳をもって扱われるべき。これは米海軍と海兵隊が、才能なる優秀な人材を生かして戦闘態勢を確立するにあたっても極めて重要
●Climate
気候変動は今や、米海軍施設から頻繁な任務出動に至るまで、あらゆるリスクに結びついており、世界中の資源争いにも結び付いている。対処には知見や革新を総動員する必要があり、作戦の完遂と優位性確保と両立させつつ、本課題に取り組む必要がある
●COVID(コロナ)
機会をとらえて、ワクチン接種を推進しなければならない。ワクチン無しでは前線への展開も態勢確立もあり得ない。海軍と海兵隊にワクチン接種を推進するため、迅速に全ての対策を講じる
メッセージ後半では兵士の関心事項に触れ

●また、諸君が現場での成功に必要な装備や訓練が確実に提供されるよう取り組み、維持整備作業の遅れを無くし、あふれる作戦要求を適切に管理し、将来の海軍構築にも取り組んでいく
●私が海軍士官学校生として米海軍生活を始めた時の海軍長官は、私と同じ移民の(メキシコ移民)Edward Hidalgo長官であったが、彼が教えてくれた強い米海軍の必要性を私は肝に銘じている
●何よりも、私が国に奉じていると同時に、Hidalgo長官が私のために勤務することを約束してくれたことを記憶している。そしてその思いは今の私と同じである
//////////////////////////////////////////////

「COVID(コロナ)」については意外な気がしましたが、反ワクチン派のキャンペーンで、接種率6割程度から接種が停滞している米国社会を反映し、「デルタ株」対処に米国全体が苦悩する様子が伺えます
(マスゴミの偏向報道のために日本では認知されていませんが、急速なワクチン接種により、日本はいつの間にか世界第5位程度の接種率レベルに達しつつあります。日本のゆがんだ医療体制と医師会の非協力的な体質が、医療ひっ迫を招かなければ、「さざ波」状態です)
「安全と福利厚生」「必要な装備と訓練」「維持整備作業の遅延解消」など、現場の士気を低下させている諸課題も、短いメッセージの中ににじみ出ています
新海軍長官の海軍へのメッセージ原文
→https://www.mynavyhr.navy.mil/Portals/55/Messages/ALNAV/ALN2021/ALN21056.txt?ver=txYQbA38CZWc1ar_66xRsg%3d%3d
Carlos Del Toro新海軍長官のご経歴
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-14
米海軍の課題&問題の一端
「3大近代化事業から1つを選べ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-09
「第1艦隊復活を検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-20
「F-35搭載用強襲揚陸艦火災の衝撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-15
「コロナで艦長と海軍長官更迭の空母」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-27
「空母や艦艇修理の3/4が遅延」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-22
「空母フォード責任者更迭」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-08
「NGADの検討進まず」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-17
「米海軍トップ確定者が急きょ辞退退役へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-09
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イージスアショアは分散&機動展開可能型へ? [米国防省高官]
ポーランドでの2号機事業行き詰まりを受け
グアム配備に向けMDAが分散&機動展開型を模索か?
20日付Defense-Newsは、ポーランドで建設中のAegis Ashoreの2号機が、工事の複雑さからとん挫状態にあり、運用開始予定から3年経過しても完成見込みが立たない状況にあることや、固定式ミサイル防衛システムが持つ脆弱性問題を勘案し、グアム配備装備を「分散&機動展開可能型」にする検討がなされていると関係者の話から報じています
Aegis Ashoreの1号機は2016年からルーマニアのDeveseluで運用開始していますが、2018年に運用開始予定だったポーランドRedzikowo配備の2号機は、95%完成していると言われながら、構造の複雑さから地元建設業者では対応不可な部分があるようで、専門家が細部を吟味中ながら、早くても完成は2022年にずれ込む見込みとなっているようです
また、中国やロシアとの本格紛争を想定すれば、地上固定型ミサイル防衛施設が脆弱だとの議論も今頃になって持ち上がり、グアムへのミサイル防衛装備配備計画を煮詰めるタイミングとも重なり、現在のレーダー装置と指揮統制&ミサイル発射装置の2か所分散固定形態から、レーダー、発射機、指揮統制装置の分散配備&機動展開可能形態追求の話が持ち上がっているようです
Aegis Ashore施設の複雑さは、耐震構造やEMP効果対処構造と言ったところから生じているようで、日本のAegis Ashore計画が「ちゃぶ台返し」になった背景との関連も勘繰りたくなりますが、とりあえず記事をご紹介しておきます
20日付Defense-News記事によれば
●ミサイル防衛庁MDA長官のJon Hill海軍中将はSpace and Missile Defense Symposiumで、ポーランドで入札により工事を請け負った企業が、システムを支える代替の指揮統制、電源、暖冷房等に関する契約履行にに苦労しており、MDAの担当責任者が現地で状況確認を行っていると説明した
●同長官はまた、同担当責任者が現地から戻るまで、今後のポーランド事業の方向性について何も語れないが、稼働中のルーマニアと建設中のポーランドの案件からMDAは多くを学び、将来のAegis Ashoreを恒久的な施設として建設すべきか、短期的な仮設施設で将来の移動を想定した形態にすべきかを決める必要があると述べた
●更に同長官は、機動性を持たせれば、地震への耐久性やEMP攻撃対処性能をそれほど考える必要はなく、恒久施設の複雑性の課題を軽減できることから、移動可能な形態にAegis Ashoreを戻すことを提唱したいと述べた
●そしてAegis Ashoreは元々、米国で製造したものを現地に輸送して組み立てており、基本的にモジュラー構成になっているとしたが、一方で、Aegis Ashoreをどのように展開して構築するかは国防省の決定事項だとし、MDAの権限ではないと語った
●また同長官は、固定配備装備の脆弱性にも結び付け、Aegis Ashoreを現状よりも分散し、センサーとミサイル発射機と指揮統制装置を別々に分散配置することの有効性も主張した
●分散配備に関してはCSISのTom Karako研究員も以前から主張しており、中国やロシアと対峙することを考えれば、各パーツの分散や機動性確保、装備の欺瞞隠蔽はミサイル防衛装備の具備すべき基本要素だとしている
●またKarako氏は、2018年のNDSでも、2019年のMDRでも戦力分散の重要性を指摘しているが、航空&ミサイル防衛装備に関しては直接的な言及を避けていると問題点を指摘している
●いま話題のグアム島ミサイル防衛の検討は、分散及び機動展開性の追求度合いが試されると同研究員は見ている。なお、MDAはグアムのミサイル防衛計画を公表していないが、議会報告用の構想案をまとめ、2023年度予算案に盛り込む方向で、国防省内でMDA案の検討が行われている
//////////////////////////////////////////
中国やロシアによる弾道ミサイルや極超音速兵器の急速な開発・性能向上・配備を目の当たりにし、「ミサイル防衛」の有効性と費用対効果を、もう一度立ち止まって考える必要に迫られているのではないでしょうか。
これは米国防省やMDAだけの課題ではなく、日本にとってより深刻な課題です
以下の過去記事の、専門家による「日本への提言」もご参考にご覧ください
イージスアショアやPDI関連の記事
「太平洋軍司令官が追加要望事項レポート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-03
「同司令官がグアムミサイル防衛要望」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-23
「上下院軍事委員長が対中国抑止PDI推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-29
「イージスアショア撤退の日本に提言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-28
「1年前の太平洋軍要望事項」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-29
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グアム配備に向けMDAが分散&機動展開型を模索か?

Aegis Ashoreの1号機は2016年からルーマニアのDeveseluで運用開始していますが、2018年に運用開始予定だったポーランドRedzikowo配備の2号機は、95%完成していると言われながら、構造の複雑さから地元建設業者では対応不可な部分があるようで、専門家が細部を吟味中ながら、早くても完成は2022年にずれ込む見込みとなっているようです

Aegis Ashore施設の複雑さは、耐震構造やEMP効果対処構造と言ったところから生じているようで、日本のAegis Ashore計画が「ちゃぶ台返し」になった背景との関連も勘繰りたくなりますが、とりあえず記事をご紹介しておきます
20日付Defense-News記事によれば

●同長官はまた、同担当責任者が現地から戻るまで、今後のポーランド事業の方向性について何も語れないが、稼働中のルーマニアと建設中のポーランドの案件からMDAは多くを学び、将来のAegis Ashoreを恒久的な施設として建設すべきか、短期的な仮設施設で将来の移動を想定した形態にすべきかを決める必要があると述べた
●更に同長官は、機動性を持たせれば、地震への耐久性やEMP攻撃対処性能をそれほど考える必要はなく、恒久施設の複雑性の課題を軽減できることから、移動可能な形態にAegis Ashoreを戻すことを提唱したいと述べた
●そしてAegis Ashoreは元々、米国で製造したものを現地に輸送して組み立てており、基本的にモジュラー構成になっているとしたが、一方で、Aegis Ashoreをどのように展開して構築するかは国防省の決定事項だとし、MDAの権限ではないと語った

●分散配備に関してはCSISのTom Karako研究員も以前から主張しており、中国やロシアと対峙することを考えれば、各パーツの分散や機動性確保、装備の欺瞞隠蔽はミサイル防衛装備の具備すべき基本要素だとしている
●またKarako氏は、2018年のNDSでも、2019年のMDRでも戦力分散の重要性を指摘しているが、航空&ミサイル防衛装備に関しては直接的な言及を避けていると問題点を指摘している
●いま話題のグアム島ミサイル防衛の検討は、分散及び機動展開性の追求度合いが試されると同研究員は見ている。なお、MDAはグアムのミサイル防衛計画を公表していないが、議会報告用の構想案をまとめ、2023年度予算案に盛り込む方向で、国防省内でMDA案の検討が行われている
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これは米国防省やMDAだけの課題ではなく、日本にとってより深刻な課題です
以下の過去記事の、専門家による「日本への提言」もご参考にご覧ください
イージスアショアやPDI関連の記事
「太平洋軍司令官が追加要望事項レポート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-03
「同司令官がグアムミサイル防衛要望」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-23
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「イージスアショア撤退の日本に提言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-28
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640名ではなく823名もC-17輸送機は乗せていた! [米空軍]
2013年のマニラ脱出便の670名越えの新記録
当初は640名と発表も、子供183名を追加発表
20日米空軍は、8月15日にアフガン避難民をカブール空港からカタールに輸送したC-17輸送機に搭乗していた人数が、当初発表の640名ではなく、823名だったと訂正発表しました。
コールサイン「Reach 871」で同日の避難民輸送に従事した輸送機機内の画像は、アフガニスタンの混乱状況を示す象徴的な写真として「フェイク版」(左写真は米空軍公式版)も含めてSNS上で拡散されましたが、実際に登場していた人数が従来の記録670名を大幅に上回ったことで、現地の混乱ぶりが伝わってきます
米軍事メディアによれば、当該C-17は多数の避難民を搭乗させる予定ではなかったが、押し寄せる人波に搭乗させるしかないと判断して受け入れたとのことですが、管制塔との交信で「約800名」と機長から伝えられた管制官が「Holy cow!:なんてこった!マジか?」と思わず叫んだとのエピソードも添えられています。
性能上からすると、C-17輸送機の最大搭載量は77トンで、C-130輸送機の19トンや日本製C-2輸送機の35トンよりはるかに大きいですが、戦闘車両3両又は攻撃ヘリ3機、最大兵装の兵士であれば170名搭載可能とカタログ上はなっており、「Reach 871」の機長がどうして離陸可能と判断したかは不明です
米空軍輸送コマンドによる20日の発表によれば、到着地のカタールで避難民をバスで機体から輸送した際、バスの座席計640席で輸送できたので640名と発表していたが、大人の膝の上に乗っていた子供183名をカウントしていなかったとのことで、後に正確に把握して823名となったようです。現場の混乱ぶりが伺えます
ちなみに従来のC-17輸送機の輸送人数記録は、2013年に台風に襲われたフィリピンのマニラから避難民を輸送した670名で、その記録を150名以上更新したことになりました
マニラ便(写真上)とアフガン便の機内写真をご紹介していますが、アフガン発の便の詰め込み具合が尋常でないことを感じていただけると思います
米国から日本に対し、アフガンからの避難民輸送支援の要請があり、自衛隊に丸投げされそうな勢いですが、隊員が万全の体制で安全を確保しつつ行動できる法整備も行わず、世論の圧力を利用する政府や政治家のやり方には怒りを禁じえません。
「640名」との数字が各種メディアで使用されていますが、「823名」が正しいことを速報させていただきます!!!
川崎重工製のC-2がNZ航空ショーで人気!?
アフガンへ邦人脱出空輸のため派遣
「日本製C-2輸送機が海外で人気?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-29-2
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当初は640名と発表も、子供183名を追加発表

コールサイン「Reach 871」で同日の避難民輸送に従事した輸送機機内の画像は、アフガニスタンの混乱状況を示す象徴的な写真として「フェイク版」(左写真は米空軍公式版)も含めてSNS上で拡散されましたが、実際に登場していた人数が従来の記録670名を大幅に上回ったことで、現地の混乱ぶりが伝わってきます
米軍事メディアによれば、当該C-17は多数の避難民を搭乗させる予定ではなかったが、押し寄せる人波に搭乗させるしかないと判断して受け入れたとのことですが、管制塔との交信で「約800名」と機長から伝えられた管制官が「Holy cow!:なんてこった!マジか?」と思わず叫んだとのエピソードも添えられています。

米空軍輸送コマンドによる20日の発表によれば、到着地のカタールで避難民をバスで機体から輸送した際、バスの座席計640席で輸送できたので640名と発表していたが、大人の膝の上に乗っていた子供183名をカウントしていなかったとのことで、後に正確に把握して823名となったようです。現場の混乱ぶりが伺えます

マニラ便(写真上)とアフガン便の機内写真をご紹介していますが、アフガン発の便の詰め込み具合が尋常でないことを感じていただけると思います
米国から日本に対し、アフガンからの避難民輸送支援の要請があり、自衛隊に丸投げされそうな勢いですが、隊員が万全の体制で安全を確保しつつ行動できる法整備も行わず、世論の圧力を利用する政府や政治家のやり方には怒りを禁じえません。
「640名」との数字が各種メディアで使用されていますが、「823名」が正しいことを速報させていただきます!!!
川崎重工製のC-2がNZ航空ショーで人気!?
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米議会が再度F-35酸素供給装置の調査指示へ [亡国のF-35]
2017年頃からくすぶり続ける低酸素症問題
昨年10月のNASA報告書でも残る疑義に再調査要求へ
これまでに40件以上の異常発生報告があり・・・
7月28日、下院軍事委員会が2022年度予算関連法付属書案で、F-35酸素供給装置関連でパイロットに多数発生している低酸素症などの根本原因調査を国防省に求めていることが明らかになりました。同委員会所属議員の補佐官が記者団に明らかにしたものです。
F-35操縦者に発生する低酸素症など生理学的異常事例(physiological episodes)は、2017年にF-35操縦者養成のメッカであるLuke空軍基地で問題になり、5件近くの事例報告があったことから約2週間飛行停止にして調査しましたが理由は判然とせず、海軍や海兵隊でも同様事象の発生が判明しましたが、当時は実質的にはそのまま飛行を再開し、後に酸素供給装置のソフト改修を行って今日に至っています
本件に関しては、2021年度予算関連法でも調査が求められ、NASAが複数の操縦者への聞き取りとF-35地上試験結果を踏まえて2020年11月に報告書を出しましたが、3軍のF-35全てから40件以上の低酸素症のような体調不良発生がレポートされ、操縦者が搭乗時に呼吸回数を増やして機体に対応している様子や、一度酸素不足症状に襲われた操縦者が数日から数か月にもわたり呼吸器官全般に不調を訴えていることなど、「相当な懸念事項が見つかった」ようです
今回の調査指示案は、昨年11月発表のNASA報告を受け、更に調査を深堀する必要があると判断した下院軍事委員会の「Tactical Air and Land Forces小委員会」の要求で、法的な要求事項案になったとのことです
2日付Defense-News記事によれば
●再調査を求めた議員の補佐官は記者団に、「(国防省が本問題を自ら解明する姿勢を見せず、)議会が命ずる形になったことは不幸なことだと思う」と冒頭で述べ、議会が要求した包括的調査により本件の根本的な技術的原因が解明され、国防省がF-35に関する大規模で高価な機体改修を決定する前に、必要な改修策が確定され組み込まれる必要があると訴えた
●我々はF-35に適応するよう強制されているパイロットに成り代わり、酸素供給装置(OBOGS:onboard oxygen-generation system)が本来求められている基準を満たし、操縦者が機内での呼吸に負担を強いられることなく、本来の任務に集中でき環境を提供したいと同補佐官は語った
●同補佐官は、これまでに40件以上の生理学的異常がF-35操縦者からレポートされており、そのうち27件が米空軍用のF-35A型で発生していると述べ、
●中には2020年5月に発生した着陸失敗事故で機体が修理不能になったケースも含まれ、事故報告書が「労力を要するF-35での呼吸で、操縦者の認知能力が低下していたことも副因となった可能性あり」とされたことで、F-35酸素供給装置の問題に再び関心が集まっているとも説明した
●米空軍協会機関紙の調査によれば、2017年に9件確認された事象は、18年には4件、19年に3件、20年に5件と推移している
●今後この調査要求指示法案は、下院軍事委員会で審議され、了承されれば上院ともすり合わせて法案化が決定される
///////////////////////////////////////////
2017年にLuke空軍基地で問題になり飛行再開した際は、「問題が発生した高度帯の飛行を極力避ける」「身体への影響を局限する地上での離陸前手順や地上訓練を追加する」「追加の予備酸素を機体に搭載する」「飛行中の身体データを記憶するセンサーを装着するオプションを提供する」との措置が取られています
F-22も似たような酸素供給装置トラブルを経験してリ、2005年運用開始の3年後から問題が確認され始め、7年後にやっと原因が酸素供給装置の欠陥バルブとフィルターだと特定され対策が打たれたとの経緯があります。
酸素精製装置のソフトが改修された後の現在でも、操縦者が「work too hard at breathing」な状態なら、何とかしてあげてほしいものです。F-35に問題があっても、操縦者に罪はなく、むしろ被害者ですから・・・。
労力を要するF-35内の呼吸による操縦者の認知能力低下も副因の一つの可能性と
「F-35着陸大事故の対策機体改修は秘密」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-24
鬼門のF-35酸素供給装置
「F-35で謎の低酸素症多発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-11
F-22事案を振り返る
「最終的に飛行再開・原因特定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-25
「不沈F-35と低酸素F-22」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-09
「F-22再度飛行停止と再開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-24
「F-22操縦者に謎の症状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-31
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昨年10月のNASA報告書でも残る疑義に再調査要求へ
これまでに40件以上の異常発生報告があり・・・

F-35操縦者に発生する低酸素症など生理学的異常事例(physiological episodes)は、2017年にF-35操縦者養成のメッカであるLuke空軍基地で問題になり、5件近くの事例報告があったことから約2週間飛行停止にして調査しましたが理由は判然とせず、海軍や海兵隊でも同様事象の発生が判明しましたが、当時は実質的にはそのまま飛行を再開し、後に酸素供給装置のソフト改修を行って今日に至っています

今回の調査指示案は、昨年11月発表のNASA報告を受け、更に調査を深堀する必要があると判断した下院軍事委員会の「Tactical Air and Land Forces小委員会」の要求で、法的な要求事項案になったとのことです
2日付Defense-News記事によれば

●我々はF-35に適応するよう強制されているパイロットに成り代わり、酸素供給装置(OBOGS:onboard oxygen-generation system)が本来求められている基準を満たし、操縦者が機内での呼吸に負担を強いられることなく、本来の任務に集中でき環境を提供したいと同補佐官は語った
●同補佐官は、これまでに40件以上の生理学的異常がF-35操縦者からレポートされており、そのうち27件が米空軍用のF-35A型で発生していると述べ、

●米空軍協会機関紙の調査によれば、2017年に9件確認された事象は、18年には4件、19年に3件、20年に5件と推移している
●今後この調査要求指示法案は、下院軍事委員会で審議され、了承されれば上院ともすり合わせて法案化が決定される
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2017年にLuke空軍基地で問題になり飛行再開した際は、「問題が発生した高度帯の飛行を極力避ける」「身体への影響を局限する地上での離陸前手順や地上訓練を追加する」「追加の予備酸素を機体に搭載する」「飛行中の身体データを記憶するセンサーを装着するオプションを提供する」との措置が取られています

酸素精製装置のソフトが改修された後の現在でも、操縦者が「work too hard at breathing」な状態なら、何とかしてあげてほしいものです。F-35に問題があっても、操縦者に罪はなく、むしろ被害者ですから・・・。
労力を要するF-35内の呼吸による操縦者の認知能力低下も副因の一つの可能性と
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鬼門のF-35酸素供給装置
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F-22事案を振り返る
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「不沈F-35と低酸素F-22」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-09
「F-22再度飛行停止と再開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-24
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米空軍がマック5の旅客機開発へ投資発表 [米空軍]
官民両用の応用を狙い、新たな軍需産業掘り起こしも
旅客機から大統領専用機や指揮統制ISR機等にも
5日、米空軍研究開発機関がマック5(音速の5倍)の大型機開発基礎研究を約70億円でスタートアップ企業「Hermeus」と追加契約したと発表し、昨年結んだ同社開発技術の大統領専用機開発への応用検討契約に続く超音速大型機開発投資となりました。
米空軍内で本プロジェクトを担当しているのは大統領専用機検討部署と米空軍研究所で、民間旅客機用の技術研究開発を支援し、極超音速推進システムの関わる産業基盤の拡大を狙ったプロジェクトです。既にスタートアップ企業「Hermeus」は小型の推進システム試験に成功しているようで、具体的な極超音速旅客機実用化時期は不明ですが、期待できるプロジェクトのようです
契約では、同社が構想開発中の「Quarterhorse concept aircraft」3機を使用して、今後3年間で極超音速推進システムの製造&試験を行って技術成熟を図り、その結果を基に米空軍内での将来の具体的活用法を検討することになっているようです
5日付米空軍協会web記事によれば
●担当する米空軍のJason E. Lindsey准将は、「Hermeusのような企業を支援することで、航空機産業や極超音速推進システム企業のすそ野拡大を図ることが狙いの一つ」、「究極的には、商用航空機市場で成熟した技術が、空軍の要人輸送、輸送任務、ISR等々の任務分野でも可能性を持つことを示したい」と発表に際しコメントしている
●Hermeusは既に、小型の極超音速推進システム試験に成功しており、マック5で飛行可能な20人乗り旅客機開発を目指していると明らかにしているが、完成目標時期は明確にしていない
●音速の5倍で飛行すると、現在の旅客機で7時間半必要なニューヨークとパリ間の飛行を30分足らずで可能にできる。他に米空軍は、マック1.7の超音速要人輸送機を開発する企業「Exosonic」にも投資している。
●米空軍は「Vector Initiative」とのプロジェクト名で高速旅客機開発への投資を検討しているが、民間航空会社でも関心が高まっており、例えばユナイテッド航空は2029年に超音速飛行フライトを提供開始する計画だと発表している
●最近米空軍協会のミッチェル研究所が発表したレポートでは、商用の超音速旅客機開発技術が、ABMSの構成要素となる米空軍の空中指揮統制ISR機にも応用可能な潜在性を持っていると指摘している
●同レポート筆者は、「(超音速旅客機技術は、)指揮統制ISR機に対する多くの疑念や懸念への率直な回答につながるものである」、「超音速巡航飛行を航続距離を伴って実現できれば、将来の脅威環境でのC2ISR機作戦運用の道が開ける」、「前線基地に展開する必要がなくなる」と述べている
/////////////////////////////////////////////
民間旅客機の極超音速飛行技術を開発している企業に米空軍が投資し、その技術の成熟が確認出来たら米空軍アセットにも活用しようとの新手法で、併せて閉鎖的な軍需産業界に「新顔」を招き入れようとの試みです。
一昔前は、軍事技術の民生分野への応用が主流でしたが、今や商用技術の迅速な軍事応用がカギと言われている時代ですので、当然と言えば当然の流れですが、とても新鮮に見えます
Hermeus社のwebサイトには、スタイリッシュな機体イメージ図や技術情報が掲載されていますので、ご興味のある方はご覧ください
Hermeus社のwebサイト
→https://www.hermeus.com/
ちょっと異なる使い捨て極超音速兵器開発の話
「海軍艦艇には2025年以降」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-24
「豪州とも協力」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-01
「今頃学会と情報収集枠組み」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-28
「3月の極超音速兵器テストは誤差20㎝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-14
「3軍協力で極超音速兵器開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「ボディー試験に成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-22
「空軍開発本格化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-16
「攻防両面で超超音速兵器話題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-08-1
「防御手段無し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-21-1
「宇宙センサー整備が急務」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
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旅客機から大統領専用機や指揮統制ISR機等にも

米空軍内で本プロジェクトを担当しているのは大統領専用機検討部署と米空軍研究所で、民間旅客機用の技術研究開発を支援し、極超音速推進システムの関わる産業基盤の拡大を狙ったプロジェクトです。既にスタートアップ企業「Hermeus」は小型の推進システム試験に成功しているようで、具体的な極超音速旅客機実用化時期は不明ですが、期待できるプロジェクトのようです
契約では、同社が構想開発中の「Quarterhorse concept aircraft」3機を使用して、今後3年間で極超音速推進システムの製造&試験を行って技術成熟を図り、その結果を基に米空軍内での将来の具体的活用法を検討することになっているようです
5日付米空軍協会web記事によれば

●Hermeusは既に、小型の極超音速推進システム試験に成功しており、マック5で飛行可能な20人乗り旅客機開発を目指していると明らかにしているが、完成目標時期は明確にしていない

●米空軍は「Vector Initiative」とのプロジェクト名で高速旅客機開発への投資を検討しているが、民間航空会社でも関心が高まっており、例えばユナイテッド航空は2029年に超音速飛行フライトを提供開始する計画だと発表している

●同レポート筆者は、「(超音速旅客機技術は、)指揮統制ISR機に対する多くの疑念や懸念への率直な回答につながるものである」、「超音速巡航飛行を航続距離を伴って実現できれば、将来の脅威環境でのC2ISR機作戦運用の道が開ける」、「前線基地に展開する必要がなくなる」と述べている
/////////////////////////////////////////////
民間旅客機の極超音速飛行技術を開発している企業に米空軍が投資し、その技術の成熟が確認出来たら米空軍アセットにも活用しようとの新手法で、併せて閉鎖的な軍需産業界に「新顔」を招き入れようとの試みです。

Hermeus社のwebサイトには、スタイリッシュな機体イメージ図や技術情報が掲載されていますので、ご興味のある方はご覧ください
Hermeus社のwebサイト
→https://www.hermeus.com/
ちょっと異なる使い捨て極超音速兵器開発の話
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「3軍協力で極超音速兵器開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「ボディー試験に成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-22
「空軍開発本格化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-16
「攻防両面で超超音速兵器話題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-08-1
「防御手段無し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-21-1
「宇宙センサー整備が急務」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31
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最初の無人戦闘機(LCAAS)は5世代機の敵役に [米空軍]
米空軍戦闘コマンド司令官が語る
「F-35調達機数削減意見を空軍内で聞いたことがない」
3日、米空軍戦闘コマンドACCのMark Kelly司令官が講演で、開発中の無人戦闘機(LCAAS:low-cost attritable aircraft systems)はまず第5世代機用の仮設敵機として活用することになろうと述べました
無人戦闘機(LCAAS)は無人ウイングマンとも呼ばれ、「Skyborg構想」とのプロジェクト名で2023年頃までにプロトタイプを完成させる予定で、現在3企業が具体的な試作・試験開発を進めているほか、欧州や豪州でも同様の動きがみられます
LCAASの「low-cost attritable」とは、低価格で損耗しても大きな負担にならない無人機の特徴を強調した呼び名ですが、一方で最新の航空技術や人工知能AIを搭載して高度な能力を備えることを目指しており、「あまりに性能が高くて実飛行では十分その能力を訓練できない」悩みを抱える第5世代機(F-22やF-35)の訓練相手としてまず活用しようと米空軍は考えたようです
また同司令官は、F-35の調達機数削減の噂や、戦闘機のサイバー攻撃対処についても質問に答えてコメントしていますので、併せてご紹介しておきます。米空軍内で「戦闘機族のボス」の地位にある同大将の発言ですので、その辺りを勘案しつつご覧ください
3日付米空軍協会web記事によれば
●Kelly司令官は「Life Cycle Industry Days seminar」でオンライン講演を行い、LCAASの最初の活用先は、第5世代機であるF-22やF-35の仮設敵機になるだろうと述べた
●同大将は、「今は第5世代機の訓練相手を十分確保できないが、それは訓練用に同レベルの相手機、つまりF-22やF-35を使用すると大きなコストが発生するからである」、「しかし技術の進歩により、ステルス性や電子妨害能力を備え、かつ耐久性も備えた(無人)機体が入手可能になってきた」「おおよそ有人機の25%のコストで実現可能と見積もっている」と説明した
●(LCAASの完成期待度の高さを感じた聴衆から、空軍における将来の無人機比率を問う質問が出たが、同司令官は、)米空軍はLCAASの能力や役割を見極めている段階にあり、その問いに回答するのは次期尚早である。low-costではあるがコストゼロではないし、敵の機体も開発途上である点に留意すべきであると述べ、LCAASは人命にかかわるようなリスクのある場面の任務において活用される可能性が高いと同司令官は付け加えた
●ただし同司令官は無人機の今後の増加発展は間違いないとし、(ステルス性がない)MQ-9やRQ-170は今後も活用され、無人機は発展産業になると表現した
●第5世代機のサイバー対策問題については、兵站システムが課題だと述べ、PCやネットワークで機体を管理する時代では、機体をネットに接続することで機体データの全てが流出するリスクを抱えているとの認識を示した
●F-35の活躍について同司令官は高く評価し、1年半に渡る中東派遣でも多数の任務を良好にこなしており満足できる状態にある、ただし維持整備コスト高止まりについて対応が求められていると表現した
●F-35調達計画機数については、2001年時点の1763機を削減しようとする動きは米空軍内にないとの認識を同大将は示し、「過去30年間で米空軍は保有戦闘機数を4000機から2000機にまで削減し、しかも対テロ作戦に注力している間に、保有機体の平均年齢は以前の8歳から28歳にまで老朽化が進んでしまっている」、「平均28歳は本格紛争には最適とは言えない状態である」と反論した
●そして、F-35導入は本格紛争に備えた保有機体の若返りに貢献すると同司令官は主張し、「私は、多くの人が限られた予算をバランスよく資源配分すべきと主張していることを承知しているが、国防省内でF-35機数削減に動いている人に出会ったことはない」と語った
13日付米空軍協会web記事によれば
●9月に米空軍は「Blue Force Technologies」と、第5世代機用の仮設敵機として、4機の無人機戦闘機デモ機製造契約を結ぶ
●デモ機は2023年7月に初飛行を予定している
●同無人機にはモジュラー形式で多様な搭載物が可能で、またオープンアーキテクチャーで採用しており、様々なタイプの脅威を演じることが可能となる
●無人機エンジンは推力4000ポンド級で、ビジネスジェットクラスだが、機体が縦横6m前後で、速度はマック0.95、最大荷重9Gで機動性を確保する予定
●飛行時間当たりの維持整備費は、F-22の5万ドルに対し、約4000ドル程度と見積もられている。
//////////////////////////////////////////
少なくともBrown空軍参謀総長はF-35調達数削減に踏み込む必要があると考え、戦闘機構成の分析検討を命じていると思いますし、米空軍の主要幹部の一人として、戦闘族のボスとして、戦闘コマンド司令官自身が資源配分の観点からF-35調達数削減を持ち出すべきと考えます
これだけ中国の軍事力が増し、戦闘機の活用場面が想定しずらくなっている中で、自ら動かず、政治家や国防省や参謀総長に下駄を預けて決断から逃げる姿勢は、見苦しく感じます
無人機の比率についても、米海軍の航空作戦部長が「空母艦載機における無人機の比率を、将来的には5~6割に高めることを検討」と発言しているのと比べ極めて消極的で残念です
米海軍は空母艦載機の無人機比率を
「将来的には2/3を無人機に」→https://holylandtokyo.com/2021/04/06/100/
無人機ウイングマン構想
「頭脳ACSが2機種目で試験飛行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-02
「Skyborg構想の頭脳ACSで初飛行2時間」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-06
「多用途ドローン投下試験成功」→https://holylandtokyo.com/2021/04/09/103/
「Skyborg構想デモ機製造3企業決定」→https://holylandtokyo.com/2020/12/16/344/
「無人ウイングマンのデモ機選定開始」→https://holylandtokyo.com/2020/05/24/679/
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
最近のF-35
「エンジン不足で15%が飛行できず」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-15
「海兵隊C型が完全運用態勢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-08
「スイスが14番目の購入国に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-01
「英国防相がF-35企業に不満をぶちまける」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-24-1
「英国は調達機数半減か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-24
「伊軽空母に海兵隊F-35B展開」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-14-1
「F-35投資はどぶに金を捨てるようなもの」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-06
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-13
「F-35稼働率の状況」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-21
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「F-35調達機数削減意見を空軍内で聞いたことがない」

無人戦闘機(LCAAS)は無人ウイングマンとも呼ばれ、「Skyborg構想」とのプロジェクト名で2023年頃までにプロトタイプを完成させる予定で、現在3企業が具体的な試作・試験開発を進めているほか、欧州や豪州でも同様の動きがみられます

また同司令官は、F-35の調達機数削減の噂や、戦闘機のサイバー攻撃対処についても質問に答えてコメントしていますので、併せてご紹介しておきます。米空軍内で「戦闘機族のボス」の地位にある同大将の発言ですので、その辺りを勘案しつつご覧ください
3日付米空軍協会web記事によれば

●同大将は、「今は第5世代機の訓練相手を十分確保できないが、それは訓練用に同レベルの相手機、つまりF-22やF-35を使用すると大きなコストが発生するからである」、「しかし技術の進歩により、ステルス性や電子妨害能力を備え、かつ耐久性も備えた(無人)機体が入手可能になってきた」「おおよそ有人機の25%のコストで実現可能と見積もっている」と説明した
●(LCAASの完成期待度の高さを感じた聴衆から、空軍における将来の無人機比率を問う質問が出たが、同司令官は、)米空軍はLCAASの能力や役割を見極めている段階にあり、その問いに回答するのは次期尚早である。low-costではあるがコストゼロではないし、敵の機体も開発途上である点に留意すべきであると述べ、LCAASは人命にかかわるようなリスクのある場面の任務において活用される可能性が高いと同司令官は付け加えた
●第5世代機のサイバー対策問題については、兵站システムが課題だと述べ、PCやネットワークで機体を管理する時代では、機体をネットに接続することで機体データの全てが流出するリスクを抱えているとの認識を示した
●F-35の活躍について同司令官は高く評価し、1年半に渡る中東派遣でも多数の任務を良好にこなしており満足できる状態にある、ただし維持整備コスト高止まりについて対応が求められていると表現した

●そして、F-35導入は本格紛争に備えた保有機体の若返りに貢献すると同司令官は主張し、「私は、多くの人が限られた予算をバランスよく資源配分すべきと主張していることを承知しているが、国防省内でF-35機数削減に動いている人に出会ったことはない」と語った
13日付米空軍協会web記事によれば
●9月に米空軍は「Blue Force Technologies」と、第5世代機用の仮設敵機として、4機の無人機戦闘機デモ機製造契約を結ぶ
●デモ機は2023年7月に初飛行を予定している

●無人機エンジンは推力4000ポンド級で、ビジネスジェットクラスだが、機体が縦横6m前後で、速度はマック0.95、最大荷重9Gで機動性を確保する予定
●飛行時間当たりの維持整備費は、F-22の5万ドルに対し、約4000ドル程度と見積もられている。
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少なくともBrown空軍参謀総長はF-35調達数削減に踏み込む必要があると考え、戦闘機構成の分析検討を命じていると思いますし、米空軍の主要幹部の一人として、戦闘族のボスとして、戦闘コマンド司令官自身が資源配分の観点からF-35調達数削減を持ち出すべきと考えます

無人機の比率についても、米海軍の航空作戦部長が「空母艦載機における無人機の比率を、将来的には5~6割に高めることを検討」と発言しているのと比べ極めて消極的で残念です
米海軍は空母艦載機の無人機比率を
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無人機ウイングマン構想
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最近のF-35
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「英国防相がF-35企業に不満をぶちまける」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-24-1
「英国は調達機数半減か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-24
「伊軽空母に海兵隊F-35B展開」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-14-1
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米議会が陸軍に戦闘車両の無人機対策を問いただす [Joint・統合参謀本部]
ミサイルやRPGや迫撃砲対処を優先してきた陸軍へ
アルメニア軍が大損害を受けた衝撃がここにも
世界中の地上部隊共通の課題です
7月28日公表の2022年度予算関連法で米下院が米陸軍に対し、戦闘車両に対する無人機や無人兵器の脅威見積りや対処計画について、関連技術動向も含め2022年1月28日までに報告するよう求めました。
無人機や無人兵器の脅威については、これまでいろいろな側面から米軍の対応をご紹介してきましたが、先日のNHKスペシャル「AI戦争 果てしなき脅威」も取り上げたアルメニア対アゼルバイジャンの紛争で、逃げ惑うアルメニア軍地上部隊や戦車に兵装無人機突入する様子は全世界に衝撃を与えているようで、米議会もその例外ではないようです
米陸軍が保有する主要戦闘車両はAbrams戦車、Bradley歩兵戦闘車両、Stryker戦闘車両ですが、とりあえずの対無人機対処兵器(APS:active protection systems)を搭載できているのはAbrams戦車だけで、Bradley歩兵戦闘車両への搭載は遅れ、Stryker戦闘車両には適当な装備が見当たらずに立ち往生状態にあることが米議会で問題視されているようです。
米陸軍は昨年、ロッキード社と約35億円の契約を結んで車両防御システム(VPS:vehicle protection systems)の検討を開始しており、このシステムは2023年までに上記3種類の戦闘車両全てに搭載可能な形態を、多様な技術要素を広く集めて融合する方式で実現を目指しています
一方でロッキードと契約したVPSは、戦闘車両に向かって飛来するミサイル、RPG、迫撃砲弾等の進路をそらし(deflecting attacks)て自己防御する装備を目指すもので、無人機や無人兵器に対しての能力が不明確(Army has not made it clear)な状態にあることも背景にあり、下院の戦闘車両小委員会が陸軍に見解を問いただす指示を出すことになったようです
7月28日付Defense-News記事によれば
●米議会は近年、戦闘車両への脅威の変化を感じ取り、戦闘車両搭載APS検討用の資金投入を支援してきており、例えば2021年度予算ではBradley歩兵戦闘車両用の装備試験費用18億円を急遽追加で認めたりしている
(この試験は、2021年第3四半期に開始され、2022年第4四半期に終了することとなっている)
●同小委員会は「我が委員会は継続して、戦闘車両の残存性向上と兵士防護のため、米陸軍による能動的並びに受動的なVPSに関する研究開発とシステム融合努力を支援してきた」と無人機及び無人兵器対処の重要性に理解を示しつつも、
●「米陸軍の取り組みが、想定される脅威に対して適切なものなのか確信を持てないでいる」、「本小委員会は米陸軍に対し、無人兵器関連脅威とVPS開発について来年2月22日までに報告するよう命じた」と明らかにし、現在と将来の脅威見通しと、米陸軍による対処兵器開発&導入に関する研究開発状況と技術的成熟度評価を明らかにするよう求めた
●更に同小委員会は、研究開発から実際の装備調達に要する今後5年間のコスト見積もりも提出するよう米陸軍に要求している
////////////////////////////////////////////////////
NHKスペシャル「AI戦争 果てしなき脅威」自体はテーマが迷走して「?」な印象で、缶酎ハイによる睡魔との戦いにも屈して途中で一時「寝落ち」してしまったのですが、逃げ惑うアルメニア兵士や車両に無人攻撃機が突入する様子は衝撃的でした。
高価な精密誘導ミサイルよりも、安価で効果的な無人兵器は間違いなく世界に拡散するでしょうから、米陸軍だけの課題では決してありません。
島嶼作戦なんかにも有効でしょうし、攻防両方の側面で見識を深めることが求められるのでしょう
世界に衝撃を与えた2021年9月の戦い
「アゼルバイジャンの大勝利が世界に衝撃を」→https://holylandtokyo.com/2020/12/22/348/
無人機対処にレーザーや電磁波
「THOR:強力電磁波で大量の小型無人機を同時無効化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-22
「アゼルバイジャンの大勝利が世界に衝撃を」→https://holylandtokyo.com/2020/12/22/348/
「カタール配備のC-UASと陸軍のIFPC」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-20
「オプション試験中」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
「国防省が小型無人機対処戦略発表」→https://holylandtokyo.com/2021/01/12/295/
「小型ドローン対策に最新技術情報収集」→https://holylandtokyo.com/2020/10/30/445/
「米海兵隊の非公式マニュアル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-31
「ドローン対処を3-5種類に絞り込む」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-14
「米軍のエネルギー兵器が続々成熟中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-30-1
「米空軍が無人機撃退用の電磁波兵器を試験投入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-27
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-05
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24
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アルメニア軍が大損害を受けた衝撃がここにも
世界中の地上部隊共通の課題です

無人機や無人兵器の脅威については、これまでいろいろな側面から米軍の対応をご紹介してきましたが、先日のNHKスペシャル「AI戦争 果てしなき脅威」も取り上げたアルメニア対アゼルバイジャンの紛争で、逃げ惑うアルメニア軍地上部隊や戦車に兵装無人機突入する様子は全世界に衝撃を与えているようで、米議会もその例外ではないようです

米陸軍は昨年、ロッキード社と約35億円の契約を結んで車両防御システム(VPS:vehicle protection systems)の検討を開始しており、このシステムは2023年までに上記3種類の戦闘車両全てに搭載可能な形態を、多様な技術要素を広く集めて融合する方式で実現を目指しています
一方でロッキードと契約したVPSは、戦闘車両に向かって飛来するミサイル、RPG、迫撃砲弾等の進路をそらし(deflecting attacks)て自己防御する装備を目指すもので、無人機や無人兵器に対しての能力が不明確(Army has not made it clear)な状態にあることも背景にあり、下院の戦闘車両小委員会が陸軍に見解を問いただす指示を出すことになったようです
7月28日付Defense-News記事によれば

(この試験は、2021年第3四半期に開始され、2022年第4四半期に終了することとなっている)
●同小委員会は「我が委員会は継続して、戦闘車両の残存性向上と兵士防護のため、米陸軍による能動的並びに受動的なVPSに関する研究開発とシステム融合努力を支援してきた」と無人機及び無人兵器対処の重要性に理解を示しつつも、

●更に同小委員会は、研究開発から実際の装備調達に要する今後5年間のコスト見積もりも提出するよう米陸軍に要求している
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高価な精密誘導ミサイルよりも、安価で効果的な無人兵器は間違いなく世界に拡散するでしょうから、米陸軍だけの課題では決してありません。
島嶼作戦なんかにも有効でしょうし、攻防両方の側面で見識を深めることが求められるのでしょう
世界に衝撃を与えた2021年9月の戦い
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無人機対処にレーザーや電磁波
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「オプション試験中」→https://holylandtokyo.com/2021/04/19/110/
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次の在日米軍司令官は輸送機パイロット [Joint・統合参謀本部]
アジアでは嘉手納航空団副司令官や在韓司令官補佐官を
在イスラエル駐在武官経験あり
最近まで米首都防衛を担う空軍司令官
11日、米上院が夏休みを前に国防省や米軍高官の人事審議を行い、次の在日米軍司令官(兼ねて第5空軍司令官)を7月までワシントンDC空軍司令官を務めていたRicky N. Rupp少将(輸送機パイロット)とし、中将に昇任させる案を承認しました。
誠に失礼ながら、在日米軍司令官人事は時により人材の程度は様々で、2015年春から務めたDolan中将は1年半余りで空軍司令部部長職にご栄転されましたが、その前後の司令官は日本勤務を最後に中将で退役するパターンが続いています。
同司令官配置者のアジア経験についても様々で、上述のDolan中将は三沢でF-16操縦者勤務時に緊急脱出して海自の飛行艇に救助された経験の持ち主ですが、2016年から務めたMartinez中将はアジアはおろか海外勤務もほとんどない方でした
指名されたRupp少将も、現在のSchneider中将(戦闘機パイロット)と同期士官任官であることから、日本での勤務が空軍最後の勤務になる可能性が高いと勝手に推察いたしますが、
大佐時に務めた第22空中給油航空団司令官として米空軍から「2013年最優秀航空団司令官:Top Wing Commander」賞を授与(奥様と共に表彰式での写真あり)されたり、初級士官基礎課程SOSを優秀成績者として卒業したりと、目立たないながら優秀な方とお見受けしました
なお、ワシントンDC空軍司令官とは、米国首都の防衛に関わる統合指揮を司る部隊で、併せて首都地域での指揮通信や要人ヘリ空輸や首都での儀式時の警備なども担当しており、特に大統領選挙があった勤務期間中は、通常の部隊勤務とは異なる気苦労の多い任務だったと推察します。ただ、既に7月21日付で同司令官を外れており、日本赴任に向け鋭意準備中と思われます
Rupp次期在日米軍司令官のご紹介
●1988年にSouthwest Texas State大学で経営学を学び卒業。初級士官基礎課程SOSを優秀成績者として卒業
●C-130操縦者として空軍士官勤務を開始し、少佐時にはC-17能力向上要求性能取りまとめを担当、C-17飛行隊長も務める
●中佐時には国防長官室の軍人補佐官として勤務し、大佐時に10か月間のCSIS客員研究員を経験した後、
●2010年6月から、嘉手納の第18航空団(F-15部隊)副司令官(基地の副司令官)を1年間経験
●その後務めた第22空中給油航空団司令官として、「2013最優秀航空団司令官:Top Wing Commander」賞を受賞
●次に2016年6月から約2年、准将として韓国で在韓米軍司令官(兼国連軍司令官)の特別補佐官
●2015年9月から約2年間、在イスラエル駐在武官勤務
●2017年6月から2年間、米輸送コマンドの作戦部長(途中で少将昇任)。2019年7月から2年間、ワシントンDC空軍司令官
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ご経歴を紹介してきてイメージできるのは、メジャーでない大学卒で目立たないながら、頭脳明晰かつ優れた人格で部隊をまとめ、かつ米輸送コマンド作戦部長として中東欧州アジア3正面輸送をコントロールし、円満な人柄で沖縄や韓国やイスラエルや首都ワシントンでのストレス満載の複雑な業務をこなしてきた実務家の姿です
日本政府や自衛隊の皆様におかれましては、まんぐーすのように「多分、横田が最後の勤務地だ」などと先入観たっぷりに見るのではなく、ご紹介したRupp新司令官の経歴等を頼りに大いにコミュニケーションを執っていただき、在日米軍との円滑な意思疎通を行っていただきたいと思います
なお、日米軍司令官を2019年2月から務めているKevin B. Schneider中将(Rupp少将と同期)の処遇については不明で、前任者と同じく退役の可能性ありと邪推いたします
追記ですが、同じく11日には、女性として2番目の地域戦闘コマンド司令官が承認され、Laura Richardson陸軍中将が大将に昇任して南米コマンド司令官になることが決定しました
ちなみに一人目は、太平洋空軍司令官から北米コマンド司令官に就任したLori Robinson空軍大将で、パイロットではなく兵器管制官だったことで話題を呼びました
次の在日米軍司令官のRupp少将のご経歴
→https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/588599/major-general-ricky-n-rupp/
歴代の在日米軍司令官
「2019年2月~アジア極東のベテランF操縦者」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-06
「2016年10月~輸送機P」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-07
「2015年3月~日本が命の恩人」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-21
Robinson空軍大将関連
「上院での承認前証言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-04-23-1
「北米司令官の候補に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-19
「次の空軍トップ候補は?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-14
「驚嘆:女性大将が対中国の指揮を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-03
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在イスラエル駐在武官経験あり
最近まで米首都防衛を担う空軍司令官
誠に失礼ながら、在日米軍司令官人事は時により人材の程度は様々で、2015年春から務めたDolan中将は1年半余りで空軍司令部部長職にご栄転されましたが、その前後の司令官は日本勤務を最後に中将で退役するパターンが続いています。
同司令官配置者のアジア経験についても様々で、上述のDolan中将は三沢でF-16操縦者勤務時に緊急脱出して海自の飛行艇に救助された経験の持ち主ですが、2016年から務めたMartinez中将はアジアはおろか海外勤務もほとんどない方でした
指名されたRupp少将も、現在のSchneider中将(戦闘機パイロット)と同期士官任官であることから、日本での勤務が空軍最後の勤務になる可能性が高いと勝手に推察いたしますが、
なお、ワシントンDC空軍司令官とは、米国首都の防衛に関わる統合指揮を司る部隊で、併せて首都地域での指揮通信や要人ヘリ空輸や首都での儀式時の警備なども担当しており、特に大統領選挙があった勤務期間中は、通常の部隊勤務とは異なる気苦労の多い任務だったと推察します。ただ、既に7月21日付で同司令官を外れており、日本赴任に向け鋭意準備中と思われます
Rupp次期在日米軍司令官のご紹介
●1988年にSouthwest Texas State大学で経営学を学び卒業。初級士官基礎課程SOSを優秀成績者として卒業
●C-130操縦者として空軍士官勤務を開始し、少佐時にはC-17能力向上要求性能取りまとめを担当、C-17飛行隊長も務める
●中佐時には国防長官室の軍人補佐官として勤務し、大佐時に10か月間のCSIS客員研究員を経験した後、
●2010年6月から、嘉手納の第18航空団(F-15部隊)副司令官(基地の副司令官)を1年間経験
●その後務めた第22空中給油航空団司令官として、「2013最優秀航空団司令官:Top Wing Commander」賞を受賞
●次に2016年6月から約2年、准将として韓国で在韓米軍司令官(兼国連軍司令官)の特別補佐官
●2015年9月から約2年間、在イスラエル駐在武官勤務
●2017年6月から2年間、米輸送コマンドの作戦部長(途中で少将昇任)。2019年7月から2年間、ワシントンDC空軍司令官
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日本政府や自衛隊の皆様におかれましては、まんぐーすのように「多分、横田が最後の勤務地だ」などと先入観たっぷりに見るのではなく、ご紹介したRupp新司令官の経歴等を頼りに大いにコミュニケーションを執っていただき、在日米軍との円滑な意思疎通を行っていただきたいと思います
なお、日米軍司令官を2019年2月から務めているKevin B. Schneider中将(Rupp少将と同期)の処遇については不明で、前任者と同じく退役の可能性ありと邪推いたします

ちなみに一人目は、太平洋空軍司令官から北米コマンド司令官に就任したLori Robinson空軍大将で、パイロットではなく兵器管制官だったことで話題を呼びました
次の在日米軍司令官のRupp少将のご経歴
→https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/588599/major-general-ricky-n-rupp/
歴代の在日米軍司令官
「2019年2月~アジア極東のベテランF操縦者」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-06
「2016年10月~輸送機P」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-07
「2015年3月~日本が命の恩人」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-21
Robinson空軍大将関連
「上院での承認前証言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-04-23-1
「北米司令官の候補に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-19
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再掲載:「玉音放送」を読む [ふと考えること]
9年前の記事ですが・・・この季節にあらためて・・・
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本日は、終戦の詔勅たる「玉音放送」(1945年(昭和20年)8月15日正午)の全文を改めて嚙み締めたいと思います。「原文」、「口語訳」、「英文訳」の対比でご覧ください。
恥ずかしながら、まんぐーすは全文を通して読んだことがありませんでした。高尚な表現で綴られており、原文を読んでも理解できなかったと思いますが・・・。
そんな中、本年8月号のAirforce Magazineが「Hirohito’s “Jewel Voice Broadcast”」とのタイトルで英語版の「玉音放送」全文を掲載し、事前録音されていたレコード盤を陸軍一部が奪取粉砕を試みたこと、レコード盤を洗濯物の中に隠して難を逃れたこと等の逸話と共に紹介しつつ、その出来栄えを「傑作」(a masterpiece of understatement)と表現しています。
米国に言われたからではありませんが、「口語訳」を頼りに読んでみると、いろいろご意見は御座いましょうが、改めてその素晴らしさが胸にしみます。「堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ」の部分だけがよく取り上げられますが、全体を是非、ご覧ください。
なお英語版は、国際放送(ラジオ・トウキョウ)で平川唯一が厳格な文語体による英語訳文書を朗読し、国外向けに放送したようで、この放送は米国側でも受信され、1945年8月15日付のニューヨーク・タイムズ紙が全文を掲載しました。
口語訳:塚原キヨ子 「満州引き揚げ回想記」より
→ http://homepage1.nifty.com/tukahara/manshu/syusensyousyo.htm
英語訳:Airforce Magazine「Hirohito’s “Jewel Voice Broadcast”」
→ http://www.airforce-magazine.com/MagazineArchive/Pages/2012/August%202012/0812keeper.aspx
ウィキペディア「玉音放送」解説
→ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8E%89%E9%9F%B3%E6%94%BE%E9%80%81
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●朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク 朕ハ帝國政府ヲシテ米英支蘇四國ニ對シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ
私は、深く世界の大勢と日本国の現状とを振返り、非常の措置をもって時局を収拾しようと思い、ここに忠実かつ善良なあなたがた国民に申し伝える。私は、日本国政府から米、英、中、ソの四国に対して、それらの共同宣言(ポツダム宣言)を受諾することを通告するよう下命した。
After pondering deeply the general trends of the world and the actual conditions obtaining to our empire today, we have decided to effect a settlement of the present situation by resorting to an extraordinary measure.
We have ordered our government to communicate to the governments of the United States, Great Britain, China, and the Soviet Union that our empire accepts the provisions of their Joint Declaration.
●抑ゝ帝國臣民ノ康寧ヲ圖リ萬邦共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ皇祖皇宗ノ遺範ニシテ朕ノ拳々措カサル所曩ニ米英二國ニ宣戰セル所以モ亦實ニ帝國ノ自存ト東亞ノ安定トヲ庶幾スルニ出テ他國ノ主權ヲ排シ領土ヲ侵スカ如キハ固ヨリ朕カ志ニアラス
そもそも日本国民の平穏無事を図って世界繁栄の喜びを共有することは、代々天皇が伝えてきた理念であり、私が常々大切にしてきたことである。先に米英二国に対して宣戦した理由も、本来日本の自立と東アジア諸国の安定とを望み願う思いから出たものであり、他国の主権を排除して領土を侵すようなことは、もとから私の望むところではない。
To strive for the common prosperity and happiness of all nations as well as the security and well-being of our subjects is the solemn obligation which has been handed down by our imperial ancestors, and which we lay close to heart. Indeed, we declared war on America and Britain out of our sincere desire to ensure Japan’s self-preservation and the stabilization of East Asia, it being far from our thought either to infringe upon the sovereignty of other nations or to embark upon territorial aggrandizement.
●然ルニ交戰已ニ四歳ヲ閲シ朕カ陸海將兵ノ勇戰朕カ百僚有司ノ勵精朕カ一億衆庶ノ奉公各ゝ最善ヲ盡セルニ拘ラス戰局必スシモ好轉セス世界ノ大勢亦我ニ利アラス加之敵ハ新ニ殘虐ナル爆彈ヲ使用シテ頻ニ無辜ヲ殺傷シ慘害ノ及フ所眞ニ測ルヘカラサルニ至ル
ところが交戦はもう四年を経て、我が陸海将兵の勇敢な戦いも、我が多くの公職者の奮励努力も、我が一億国民の無私の尽力も、それぞれ最善を尽くしたにもかかわらず、戦局は必ずしも好転していないし、世界の大勢もまた我国に有利をもたらしていない。それどころか、敵は新たに残虐な爆弾(原爆)を使用して、しきりに無実の人々までをも殺傷しており、惨澹たる被害がどこまで及ぶのか全く予測できないまでに至った。
But now the war has lasted for nearly four years. Despite the best that has been done by everyone—the gallant fighting of the military and naval forces, the diligence and assiduity of our servants of the state, and the devoted service of our 100 million people—the war situation has developed not necessarily to Japan’s advantage, while the general trends of the world have all turned against her interest.
Moreover, the enemy has begun to employ a new and most cruel bomb, the power of which to damage is indeed incalculable, taking the toll of many innocent lives.
●而モ尚交戰ヲ繼續セムカ終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招來スルノミナラス延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ斯ノ如クムハ朕何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ皇祖皇宗ノ神靈ニ謝セムヤ是レ朕カ帝國政府ヲシテ共同宣言ニ應セシムルニ至レル所以ナリ
なのにまだ戦争を継続するならば、ついには我が民族の滅亡を招くだけでなく、ひいては人類の文明をも破滅しかねないであろう。このようなことでは、私は一体どうやって多くの愛すべき国民を守り、代々の天皇の御霊に謝罪したら良いというのか。これこそが、私が日本国政府に対し共同宣言を受諾(無条件降伏)するよう下命するに至った理由なのである。
Should we continue to fight, it would not only result in an ultimate collapse and obliteration of the Japanese nation, but also it would lead to the total extinction of human civilization.
Such being the case, how are we to save the millions of our subjects or to atone ourselves before the hallowed spirits of our imperial ancestors? This is the reason why we have ordered the acceptance of the provisions of the Joint Declaration of the Powers.
●朕ハ帝國ト共ニ終始東亞ノ解放ニ協力セル諸盟邦ニ對シ遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス帝國臣民ニシテ戰陣ニ死シ職域ニ殉シ非命ニ斃レタル者及其ノ遺族ニ想ヲ致セハ五内爲ニ裂ク且戰傷ヲ負ヒ災禍ヲ蒙リ家業ヲ失ヒタル者ノ厚生ニ至リテハ朕ノ深ク軫念スル所ナリ
私は、日本と共に終始東アジア諸国の解放に協力してくれた同盟諸国に対しては遺憾の意を表せざるを得ない。日本国民であって前線で戦死した者、公務にて殉職した者、戦災に倒れた者、さらにはその遺族の気持ちに想いを寄せると、我が身を引き裂かれる思いである。また戦傷を負ったり、災禍を被って家財職業を失った人々の再起については、私が深く心を痛めているところである。
We cannot but express the deepest sense of regret to our allied nations of East Asia, who have consistently co-operated with the empire towards the emancipation of East Asia. The thought of those officers and men as well as others who have fallen in the fields of battle, those who died at their posts of duty, or those who met with untimely death and all their bereaved families, pains our heart day and night.
The welfare of the wounded and the war sufferers, and of those who have lost their homes and livelihood, are the objects of our profound solicitude.
●惟フニ今後帝國ノ受クヘキ苦難ハ固ヨリ尋常ニアラス爾臣民ノ衷情モ朕善ク之ヲ知ル然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ萬世ノ爲ニ太平ヲ開カムト欲ス
考えれば、今後日本国の受けるべき苦難はきっと並大抵のことではなかろう。あなたがた国民の本心も私はよく理解している。しかしながら、私は時の巡り合せに逆らわず、堪えがたくまた忍びがたい思いを乗り越えて、未来永劫のために平和な世界を切り開こうと思うのである。
The hardships and sufferings to which our nation is to be subjected hereafter will certainly be great. We are keenly aware of the inmost feelings of all you, our subjects.
However, it is according to the dictate of time and fate that we have resolved to pave the way for a grand peace for all the generations to come by enduring the unendurable and suffering what is insufferable.
●朕ハ茲ニ國體ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ若シ夫レ情ノ激スル所濫ニ事端ヲ滋クシ或ハ同胞排擠互ニ時局ヲ亂リ爲ニ大道ヲ誤リ信義ヲ世界ニ失フカ如キハ朕最モ之ヲ戒ム
私は、ここに国としての形を維持し得れば、善良なあなたがた国民の真心を拠所として、常にあなたがた国民と共に過ごすことができる。もしだれかが感情の高ぶりからむやみやたらに事件を起したり、あるいは仲間を陥れたりして互いに時勢の成り行きを混乱させ、そのために進むべき正しい道を誤って世界の国々から信頼を失うようなことは、私が最も強く警戒するところである。
Having been able to safeguard and maintain the structure of the imperial state, we are always with you, our good and loyal subjects, relying upon your sincerity and integrity. Beware most strictly of any outbursts of emotion which may engender needless complications, or any fraternal contention and strife which may create confusion, lead you astray, and cause you to lose the confidence of the world.
●宜シク擧國一家子孫相傳ヘ確ク神州ノ不滅ヲ信シ任重クシテ道遠キヲ念ヒ總力ヲ將來ノ建設ニ傾ケ道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ國體ノ精華ヲ發揚シ世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ體セヨ
ぜひとも国を挙げて一家の子孫にまで語り伝え、誇るべき自国の不滅を確信し、責任は重くかつ復興への道のりは遠いことを覚悟し、総力を将来の建設に傾け、正しい道を常に忘れずその心を堅持し、誓って国のあるべき姿の真髄を発揚し、世界の流れに遅れを取らぬよう決意しなければならない。
あなたがた国民は、これら私の意をよく理解して行動せよ。
Let the entire nation continue as one family from generation to generation, ever firm in its faith of the imperishableness of its divine land, and mindful of its heavy responsibilities, and the long road before it.
Unite your total strength to be devoted to the construction for the future. Cultivate the ways of rectitude; foster nobility of spirit; and work with resolution so that you may enhance the innate glory of the imperial state and keep pace with the progress of the world.
////////////////////////////////////////////////////
爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ體セヨ(あなたがた国民は、これら私の意をよく理解して行動せよ) →この部分の英訳にあたる部分は見当たりませんでした。
なお、この玉音放送で終わりを迎えた戦争の、日本国としての正式名称は未だ未確定です。
毎年8月15日に武道館で開催の戦没者追悼式で、天皇陛下や総理が「先の大戦」と表現をするのはこのためです。詳しくは下記の記事で
「あの戦争」をなんと呼ぶべき→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-26
英霊の安らかならんことを祈念しつつ・・・
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そんな中、本年8月号のAirforce Magazineが「Hirohito’s “Jewel Voice Broadcast”」とのタイトルで英語版の「玉音放送」全文を掲載し、事前録音されていたレコード盤を陸軍一部が奪取粉砕を試みたこと、レコード盤を洗濯物の中に隠して難を逃れたこと等の逸話と共に紹介しつつ、その出来栄えを「傑作」(a masterpiece of understatement)と表現しています。
米国に言われたからではありませんが、「口語訳」を頼りに読んでみると、いろいろご意見は御座いましょうが、改めてその素晴らしさが胸にしみます。「堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ」の部分だけがよく取り上げられますが、全体を是非、ご覧ください。
なお英語版は、国際放送(ラジオ・トウキョウ)で平川唯一が厳格な文語体による英語訳文書を朗読し、国外向けに放送したようで、この放送は米国側でも受信され、1945年8月15日付のニューヨーク・タイムズ紙が全文を掲載しました。
口語訳:塚原キヨ子 「満州引き揚げ回想記」より
→ http://homepage1.nifty.com/tukahara/manshu/syusensyousyo.htm
英語訳:Airforce Magazine「Hirohito’s “Jewel Voice Broadcast”」
→ http://www.airforce-magazine.com/MagazineArchive/Pages/2012/August%202012/0812keeper.aspx
ウィキペディア「玉音放送」解説
→ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8E%89%E9%9F%B3%E6%94%BE%E9%80%81
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●朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク 朕ハ帝國政府ヲシテ米英支蘇四國ニ對シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ

After pondering deeply the general trends of the world and the actual conditions obtaining to our empire today, we have decided to effect a settlement of the present situation by resorting to an extraordinary measure.
We have ordered our government to communicate to the governments of the United States, Great Britain, China, and the Soviet Union that our empire accepts the provisions of their Joint Declaration.
●抑ゝ帝國臣民ノ康寧ヲ圖リ萬邦共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ皇祖皇宗ノ遺範ニシテ朕ノ拳々措カサル所曩ニ米英二國ニ宣戰セル所以モ亦實ニ帝國ノ自存ト東亞ノ安定トヲ庶幾スルニ出テ他國ノ主權ヲ排シ領土ヲ侵スカ如キハ固ヨリ朕カ志ニアラス
そもそも日本国民の平穏無事を図って世界繁栄の喜びを共有することは、代々天皇が伝えてきた理念であり、私が常々大切にしてきたことである。先に米英二国に対して宣戦した理由も、本来日本の自立と東アジア諸国の安定とを望み願う思いから出たものであり、他国の主権を排除して領土を侵すようなことは、もとから私の望むところではない。
To strive for the common prosperity and happiness of all nations as well as the security and well-being of our subjects is the solemn obligation which has been handed down by our imperial ancestors, and which we lay close to heart. Indeed, we declared war on America and Britain out of our sincere desire to ensure Japan’s self-preservation and the stabilization of East Asia, it being far from our thought either to infringe upon the sovereignty of other nations or to embark upon territorial aggrandizement.
●然ルニ交戰已ニ四歳ヲ閲シ朕カ陸海將兵ノ勇戰朕カ百僚有司ノ勵精朕カ一億衆庶ノ奉公各ゝ最善ヲ盡セルニ拘ラス戰局必スシモ好轉セス世界ノ大勢亦我ニ利アラス加之敵ハ新ニ殘虐ナル爆彈ヲ使用シテ頻ニ無辜ヲ殺傷シ慘害ノ及フ所眞ニ測ルヘカラサルニ至ル
ところが交戦はもう四年を経て、我が陸海将兵の勇敢な戦いも、我が多くの公職者の奮励努力も、我が一億国民の無私の尽力も、それぞれ最善を尽くしたにもかかわらず、戦局は必ずしも好転していないし、世界の大勢もまた我国に有利をもたらしていない。それどころか、敵は新たに残虐な爆弾(原爆)を使用して、しきりに無実の人々までをも殺傷しており、惨澹たる被害がどこまで及ぶのか全く予測できないまでに至った。
But now the war has lasted for nearly four years. Despite the best that has been done by everyone—the gallant fighting of the military and naval forces, the diligence and assiduity of our servants of the state, and the devoted service of our 100 million people—the war situation has developed not necessarily to Japan’s advantage, while the general trends of the world have all turned against her interest.
Moreover, the enemy has begun to employ a new and most cruel bomb, the power of which to damage is indeed incalculable, taking the toll of many innocent lives.
●而モ尚交戰ヲ繼續セムカ終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招來スルノミナラス延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ斯ノ如クムハ朕何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ皇祖皇宗ノ神靈ニ謝セムヤ是レ朕カ帝國政府ヲシテ共同宣言ニ應セシムルニ至レル所以ナリ

Should we continue to fight, it would not only result in an ultimate collapse and obliteration of the Japanese nation, but also it would lead to the total extinction of human civilization.
Such being the case, how are we to save the millions of our subjects or to atone ourselves before the hallowed spirits of our imperial ancestors? This is the reason why we have ordered the acceptance of the provisions of the Joint Declaration of the Powers.
●朕ハ帝國ト共ニ終始東亞ノ解放ニ協力セル諸盟邦ニ對シ遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス帝國臣民ニシテ戰陣ニ死シ職域ニ殉シ非命ニ斃レタル者及其ノ遺族ニ想ヲ致セハ五内爲ニ裂ク且戰傷ヲ負ヒ災禍ヲ蒙リ家業ヲ失ヒタル者ノ厚生ニ至リテハ朕ノ深ク軫念スル所ナリ
私は、日本と共に終始東アジア諸国の解放に協力してくれた同盟諸国に対しては遺憾の意を表せざるを得ない。日本国民であって前線で戦死した者、公務にて殉職した者、戦災に倒れた者、さらにはその遺族の気持ちに想いを寄せると、我が身を引き裂かれる思いである。また戦傷を負ったり、災禍を被って家財職業を失った人々の再起については、私が深く心を痛めているところである。
We cannot but express the deepest sense of regret to our allied nations of East Asia, who have consistently co-operated with the empire towards the emancipation of East Asia. The thought of those officers and men as well as others who have fallen in the fields of battle, those who died at their posts of duty, or those who met with untimely death and all their bereaved families, pains our heart day and night.
The welfare of the wounded and the war sufferers, and of those who have lost their homes and livelihood, are the objects of our profound solicitude.
●惟フニ今後帝國ノ受クヘキ苦難ハ固ヨリ尋常ニアラス爾臣民ノ衷情モ朕善ク之ヲ知ル然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ萬世ノ爲ニ太平ヲ開カムト欲ス
考えれば、今後日本国の受けるべき苦難はきっと並大抵のことではなかろう。あなたがた国民の本心も私はよく理解している。しかしながら、私は時の巡り合せに逆らわず、堪えがたくまた忍びがたい思いを乗り越えて、未来永劫のために平和な世界を切り開こうと思うのである。
The hardships and sufferings to which our nation is to be subjected hereafter will certainly be great. We are keenly aware of the inmost feelings of all you, our subjects.
However, it is according to the dictate of time and fate that we have resolved to pave the way for a grand peace for all the generations to come by enduring the unendurable and suffering what is insufferable.
●朕ハ茲ニ國體ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ若シ夫レ情ノ激スル所濫ニ事端ヲ滋クシ或ハ同胞排擠互ニ時局ヲ亂リ爲ニ大道ヲ誤リ信義ヲ世界ニ失フカ如キハ朕最モ之ヲ戒ム
私は、ここに国としての形を維持し得れば、善良なあなたがた国民の真心を拠所として、常にあなたがた国民と共に過ごすことができる。もしだれかが感情の高ぶりからむやみやたらに事件を起したり、あるいは仲間を陥れたりして互いに時勢の成り行きを混乱させ、そのために進むべき正しい道を誤って世界の国々から信頼を失うようなことは、私が最も強く警戒するところである。
Having been able to safeguard and maintain the structure of the imperial state, we are always with you, our good and loyal subjects, relying upon your sincerity and integrity. Beware most strictly of any outbursts of emotion which may engender needless complications, or any fraternal contention and strife which may create confusion, lead you astray, and cause you to lose the confidence of the world.
●宜シク擧國一家子孫相傳ヘ確ク神州ノ不滅ヲ信シ任重クシテ道遠キヲ念ヒ總力ヲ將來ノ建設ニ傾ケ道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ國體ノ精華ヲ發揚シ世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ體セヨ

あなたがた国民は、これら私の意をよく理解して行動せよ。
Let the entire nation continue as one family from generation to generation, ever firm in its faith of the imperishableness of its divine land, and mindful of its heavy responsibilities, and the long road before it.
Unite your total strength to be devoted to the construction for the future. Cultivate the ways of rectitude; foster nobility of spirit; and work with resolution so that you may enhance the innate glory of the imperial state and keep pace with the progress of the world.
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爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ體セヨ(あなたがた国民は、これら私の意をよく理解して行動せよ) →この部分の英訳にあたる部分は見当たりませんでした。
なお、この玉音放送で終わりを迎えた戦争の、日本国としての正式名称は未だ未確定です。
毎年8月15日に武道館で開催の戦没者追悼式で、天皇陛下や総理が「先の大戦」と表現をするのはこのためです。詳しくは下記の記事で
「あの戦争」をなんと呼ぶべき→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-26
英霊の安らかならんことを祈念しつつ・・・
ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
再掲載:「先の大戦」「あの戦争」を何と呼ぶべきか [ふと考えること]
約10年前の記事ですが、状況に変化なし・・・
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開戦から80 年、真珠湾攻撃以降の戦争呼称は分裂のまま、今では議論さえもなく・・・
●・・・呼称に関する現在の政府の見解は、質問主意書に対する答弁書で明らかにされており、「大東亜戦争」、「太平洋戦争」共に戦後法令上の定義・根拠はないとされている
●その結果、天皇陛下の「お言葉」、総理大臣の演説・談話など公的な場では、「先の大戦」、「過去の戦争」、「あの戦争」など曖昧な表現が使われている・・・
防衛省防衛研究所が、定期的にwebサイトに掲載する「ブリーフィング・メモ」(2011年12月)に、同研究所で戦史部門のトップを務める庄司潤一郞氏(2011年当時)が「表題」の一考察を寄稿されています。
A4に4ページ余りの内容ですが、如何にも歴史に積み残された課題のような気がしますので、この季節に考えるべきテーマとして取り上げました。
はじめに前振り
●開戦時の戦争目的の不統一、戦後の米国による占領政策、そしてその後の日本国内における戦争を中心とする近現代史に関する歴史認識の「政治化」の影響を受け、呼称が統一されていない。
●「太平洋戦争」、「大東亜戦争」、「15 年戦争」、「アジア・太平洋戦争」など様々な呼称が使用され、いまだ決着がついていないのが現状である
●現在、一般には「太平洋戦争」が新聞・雑誌、教科書など広く普及しているものの、近年、学界や識者の間においては、呼称の使用に関して注目すべき変化が見られる。それは、「アジア・太平洋戦争」の台頭、「大東亜戦争」の「復活」と、それにともなう、「太平洋戦争」の衰退である。
●それは、「太平洋戦争」が、戦争の実体を、特に地域面から考慮した場合、やはり致命的な問題を抱えているからであろう
「アジア・太平洋戦争」
●昭和60 年、木坂順一郎が正式に提唱したことにより、広まっていった。木坂は、「太平洋戦争」は米国が命名したもので中国戦線の比重を過小評価する恐れがあり、「大東亜戦争」は日本の侵略を正当化するため、二つの呼称を回避した。
●「東アジアと東南アジアおよび太平洋を戦場とし、第二次世界大戦の一環としてたたかわれた戦争という意味と、日本が引き起こした無謀な侵略戦争への反省をこめた。
●近年では、特に「進歩派」を中心として、「太平洋戦争」や「15 年戦争」から「アジア・太平洋戦争」に変更する例が見られる。
●この呼称についての議論は、
まず、アジアでの戦いと米国との太平洋の戦いは一体・密接不可分な関係にあったとの「連続性」を強調する呼称である、
第2に、アジア及び太平洋における日本の政策の「連続性(一貫性)」と「侵略」を強調する歴史観が含蓄されている点への違和感、
第3に、しかしアジアはちょっと広すぎないか?アフガニスタンやトルコまで戦域だったわけではない、との意見があるため、浸透していない面がある
「大東亞戦争」
●「大東亜戦争」使用の根拠は多岐にわたるが、主なものは第一に、「大東亜戦争」が、閣議(大本営政府連絡会議)決定という「合法性」を有している日本の正式な呼称であるという点である。さらに、GHQ の「神道指令」による「大東亜戦争」の禁止もポツダム宣言受諾で無効になったとの解釈もある。
●第2に、第二に、「大東亜戦争」には、大東亜新秩序の建設といったイデオロギー的含蓄はなく、単なる地理的呼称で、地域的に戦争の実態によく適合しているとの主張である
●この呼称への感情の背景には、戦争目的をめぐる混迷も存在していた。すなわち、戦争目的は自存自衛で、「大東亜戦争」は当時海軍が提案した「太平洋戦争」と同様に地域的呼称なのか、はたまた大東亜新秩序建設こそが戦争目的なのかといった議論である。
●興味深いことに、欧米の研究者の間では、「大東亜戦争」に対する抵抗感は少ない。米の歴史家は、「地域的観点から、「第二次世界大戦」はあまりに広く、「太平洋戦争」は狭いため、「いささかきまり悪いものの、『大東亜戦争』という用語がやはり、日本がインド洋や太平洋、東アジアおよび東南アジアで繰り広げようとした戦争を最も正確に表現している」と指摘している。
おわりに
●「大東亜戦争」の由来が、「大東亜新秩序の建設」という政治目的ではなく、単なる地理的呼称であるとするならば、批判と対立の根拠であったイデオロギー色のない呼称ということになる
●『大東亜』をたんなる戦域と読みかえ、例えば東南アジア研究者の倉沢愛子、田原総一朗、長谷川煕、日本外交史研究者の松浦正孝など、肯定論とは異なる立場から「大東亜戦争」を使用する識者が目立っている。
●肯定論という戦争観ではなく、歴史的用語として「大東亜戦争」は復権しているのであろうか
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庄司氏の「ブリーフィングメモ」原文(4ページ)
→http://www.nids.mod.go.jp/publication/briefing/pdf/2011/briefing_1601.pdf
戦後80年、このまま放置されてよいものなのでしょうか・・・。忘れてはいけない課題です。
軍事力のあり方・適用法
「不同意の共有が第一歩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-22
「軍事力使用の3原則」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-07
「米外交の軍事化を警告」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-15-1
「軍事と外交が一丸となって」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-03
「禅の思想で対テロやCOINを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-31
ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
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開戦から80 年、真珠湾攻撃以降の戦争呼称は分裂のまま、今では議論さえもなく・・・

●その結果、天皇陛下の「お言葉」、総理大臣の演説・談話など公的な場では、「先の大戦」、「過去の戦争」、「あの戦争」など曖昧な表現が使われている・・・
防衛省防衛研究所が、定期的にwebサイトに掲載する「ブリーフィング・メモ」(2011年12月)に、同研究所で戦史部門のトップを務める庄司潤一郞氏(2011年当時)が「表題」の一考察を寄稿されています。
A4に4ページ余りの内容ですが、如何にも歴史に積み残された課題のような気がしますので、この季節に考えるべきテーマとして取り上げました。
はじめに前振り
●開戦時の戦争目的の不統一、戦後の米国による占領政策、そしてその後の日本国内における戦争を中心とする近現代史に関する歴史認識の「政治化」の影響を受け、呼称が統一されていない。

●現在、一般には「太平洋戦争」が新聞・雑誌、教科書など広く普及しているものの、近年、学界や識者の間においては、呼称の使用に関して注目すべき変化が見られる。それは、「アジア・太平洋戦争」の台頭、「大東亜戦争」の「復活」と、それにともなう、「太平洋戦争」の衰退である。
●それは、「太平洋戦争」が、戦争の実体を、特に地域面から考慮した場合、やはり致命的な問題を抱えているからであろう
「アジア・太平洋戦争」

●「東アジアと東南アジアおよび太平洋を戦場とし、第二次世界大戦の一環としてたたかわれた戦争という意味と、日本が引き起こした無謀な侵略戦争への反省をこめた。
●近年では、特に「進歩派」を中心として、「太平洋戦争」や「15 年戦争」から「アジア・太平洋戦争」に変更する例が見られる。
●この呼称についての議論は、
まず、アジアでの戦いと米国との太平洋の戦いは一体・密接不可分な関係にあったとの「連続性」を強調する呼称である、
第2に、アジア及び太平洋における日本の政策の「連続性(一貫性)」と「侵略」を強調する歴史観が含蓄されている点への違和感、
第3に、しかしアジアはちょっと広すぎないか?アフガニスタンやトルコまで戦域だったわけではない、との意見があるため、浸透していない面がある
「大東亞戦争」

●第2に、第二に、「大東亜戦争」には、大東亜新秩序の建設といったイデオロギー的含蓄はなく、単なる地理的呼称で、地域的に戦争の実態によく適合しているとの主張である
●この呼称への感情の背景には、戦争目的をめぐる混迷も存在していた。すなわち、戦争目的は自存自衛で、「大東亜戦争」は当時海軍が提案した「太平洋戦争」と同様に地域的呼称なのか、はたまた大東亜新秩序建設こそが戦争目的なのかといった議論である。
●興味深いことに、欧米の研究者の間では、「大東亜戦争」に対する抵抗感は少ない。米の歴史家は、「地域的観点から、「第二次世界大戦」はあまりに広く、「太平洋戦争」は狭いため、「いささかきまり悪いものの、『大東亜戦争』という用語がやはり、日本がインド洋や太平洋、東アジアおよび東南アジアで繰り広げようとした戦争を最も正確に表現している」と指摘している。
おわりに
●『大東亜』をたんなる戦域と読みかえ、例えば東南アジア研究者の倉沢愛子、田原総一朗、長谷川煕、日本外交史研究者の松浦正孝など、肯定論とは異なる立場から「大東亜戦争」を使用する識者が目立っている。
●肯定論という戦争観ではなく、歴史的用語として「大東亜戦争」は復権しているのであろうか
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庄司氏の「ブリーフィングメモ」原文(4ページ)
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戦後80年、このまま放置されてよいものなのでしょうか・・・。忘れてはいけない課題です。
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再掲載:日本戦前の南洋諸島進出を学び中国を警戒 [ふと考えること]
終戦の日を前に、「先の大戦」を静かに振り返りたい
「松江春治」と「南洋興発」、日本人なら覚えておきたい名前です
2020年3月末に、防衛研究所の庄司潤一郎(研究幹事)が「日本の南進と南洋興発-中国の太平洋進出への示唆」との本文6ページの論考を「NIDSコメンタリー」として発表し、太平洋戦争準備のため、日本軍が南洋諸島で民間企業を正面に据えて拠点建設等にあたった歴史を振り返り、現在の中国が南太平洋の島嶼国家にアプローチする様子を見る資として提供しています
ここでの南洋諸島とは、マリアナ諸島(サイパン、テニアンなど)、カロリン諸島(パラオ、ポナペ、トラックなど)、マーシャル諸島(クエゼリン、ルオットなど)を指します。
第一次大戦後、米国との決戦に備え、「現状維持」を定めたワシントン海軍軍縮条約の制約の下で、欧米から「軍事作戦の準備をしている」とたびたび警戒されながら、拠点整備の前面に立った「南洋興発(南洋興発株式会社:松江春治社長)」の活動を通じ、1941年12月の開戦直後の日本軍の快進撃を支えた拠点づくりを振り返りたいと思います
同論考の最後に筆者が触れているように、今日の中国の大きな経済力を考えれば、南太平洋の島々への影響を排除することは不可能であり、戦前日本の状況との単純な比較は難しいですが、現在、豪州の専門家の間で「ナンヨーコーハツ」(南洋興発)が関心を呼んでいるということなので、近代史に弱い日本人として、外国との議論で恥をかかないように、南洋興発を取り巻く歴史を学んでおきましょう
「日本の南進と南洋興発-中国の太平洋進出への示唆」によれば
●1914年6月第一次世界大戦の勃発とともに、日本はドイツに対して宣戦を布告、日本海軍の南遣支隊は、1914年 10 月中旬までにドイツ領の南洋群島を占領、守備隊(司令部:トラック)が置かれ、軍政が敷かれた
●1920年12月、日本は国際連盟から、軍事基地建設禁止を条件として南洋群島の委任統治を任された。1922 年4月に日本は軍隊を撤退させ、新たに南洋庁をパラオに設置、民政に移管。
●1922年のワシントン海軍軍縮条約で日本は、主力艦艇建造量の制約を受け入れる代わりに、米国にも南洋諸島での軍事施設の「現状維持」を約束させることを選択
●1923年、「帝国国防方針」を定め、米国との戦いを予期して、南洋諸島で前哨戦を、小笠原諸島で決戦を挑む方向での準備を進めることとした
●1930年から、民間企業である「南洋興発」を前面に立て、農業や漁業のための施設建設や開拓を理由に、有事に軍事転用可能な施設の準備するため、基礎測量などを軍の協力も得て開始
●1933年3月に国際連盟脱退を通告。1934年にワシントン海軍軍縮条約の破棄も通告し、2年後の1936年に同条約の縛りがなくなると、1937年の日中戦争開始や1939年のWW2開始を受け、本格的な軍事拠点(港湾、飛行場、水上離着陸場など)の建設に入る。
●この頃、南洋興発の松江春治社長と、米海軍の嶋田軍令部次長、山本五十六海軍次官、永野修身聯合艦隊司令長官、米内光政や野村吉三郎(のちの駐米大使)などなどが、たびたび意見交換したり、現地訪問したりしており、同社長の実行力と構想は、軍側幹部を魅了していたと伝えれれている。実際、オランダの会社と合弁企業を設立して事業を進めるなど、国際情勢が日本に厳しい中でも同社長は辣腕を発揮した
●工事が最盛期の1939年には約1万人が現場の作業に従事しており、軍はその秘匿に苦心していた模様である。そして1941年12月の開戦までに、陸上と水上機用の航空基地が南洋諸島で18か所完成
●ただ、滑走路や燃料施設は完成したが、防御用火砲陣地やレーダー設備は不十分なまま開戦を迎えた。それでも南洋諸島の各拠点は緒戦での日本軍の迅速な南方制圧に大きく貢献し、フィリピン作戦の拠点としても重要な役割を果たした
●この日本の戦前準備は、まず南洋諸島の地政学的戦略的緊要性や石油・天然ガスなど資源面での重要性を再認識させる。また、平時における民間企業を前面に据えた拠点構築の事例として興味深い。更に、列強ひしめく中、当時のポルトガル領チモールのような位置的に緊要だが脆弱な国が翻弄される様子は、中国と米豪の間で揺らめく現在の南洋諸島の立場と重なって見える
●一方で、当時の日本と異なり、中国はすでに世界第2位の経済大国として南洋諸島に大きな影響力を持っており、中国の進出を食い止めることは不可能と考えられる。この観点から豪州な研究者からは、西側からの援助などで中国の影響力を南太平洋から排除するのは困難であり、「戦時に中国軍の基地を無力化する軍事力を構築する方がコストが低い」との主張がなされている
/////////////////////////////////////////////////////////
ほとんど細部に触れることなく、歴史年表の抜き書きのような、概要の概要紹介になってしまいましたが、庄司理事の論考は豊富な資料を基に、南洋興発の活動を興味深く説明しており、なかなか目に触れることがないながら、今日的意味を持つ近代史の重要な1ページですので、ぜひ一度ご覧ください。6ページですから
同論考によれば、「最近でも、ソロモンの中央州政府が、中国の複合企業「中国森田」にツラギ島を 75 年間貸与する契約を結んだことが問題化し、米豪などの強い反発で「無効」とされた。ツラギ島は天然の良港があり、大東亜戦争中日本海軍の根拠地が置かれていた。その他、パプアニューギニアの北東部マヌス島での中国の支援による港湾拡張計画・幹線道路の建設やバヌアツにおける中国企業による埠頭や空港の建設などの動きが、中国による海軍基地建設として報じられている」らしいです。
まんぐーすもそうですが、日本人の中で、南洋諸島とかつて呼ばれた島々の位置と名前を言える人が何人いるでしょうか・・・。グアムの海に「なまこ」が多いことぐらいしか知らない自身を振り返ると、先人の知恵と努力を前に、アジア太平洋を語る資格などないような気がしてきます。更に、今の若い人にとっては、一層遠くなってしまった島々です
庄司氏の「NIDSコメンタリー」原文
→http://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary113.pdf
数少ない関連の記事
「対中国で米軍配置再検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-16-1
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「アジア認識を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-07
ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
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「松江春治」と「南洋興発」、日本人なら覚えておきたい名前です

ここでの南洋諸島とは、マリアナ諸島(サイパン、テニアンなど)、カロリン諸島(パラオ、ポナペ、トラックなど)、マーシャル諸島(クエゼリン、ルオットなど)を指します。

同論考の最後に筆者が触れているように、今日の中国の大きな経済力を考えれば、南太平洋の島々への影響を排除することは不可能であり、戦前日本の状況との単純な比較は難しいですが、現在、豪州の専門家の間で「ナンヨーコーハツ」(南洋興発)が関心を呼んでいるということなので、近代史に弱い日本人として、外国との議論で恥をかかないように、南洋興発を取り巻く歴史を学んでおきましょう
「日本の南進と南洋興発-中国の太平洋進出への示唆」によれば
●1914年6月第一次世界大戦の勃発とともに、日本はドイツに対して宣戦を布告、日本海軍の南遣支隊は、1914年 10 月中旬までにドイツ領の南洋群島を占領、守備隊(司令部:トラック)が置かれ、軍政が敷かれた
●1920年12月、日本は国際連盟から、軍事基地建設禁止を条件として南洋群島の委任統治を任された。1922 年4月に日本は軍隊を撤退させ、新たに南洋庁をパラオに設置、民政に移管。

●1923年、「帝国国防方針」を定め、米国との戦いを予期して、南洋諸島で前哨戦を、小笠原諸島で決戦を挑む方向での準備を進めることとした
●1930年から、民間企業である「南洋興発」を前面に立て、農業や漁業のための施設建設や開拓を理由に、有事に軍事転用可能な施設の準備するため、基礎測量などを軍の協力も得て開始
●1933年3月に国際連盟脱退を通告。1934年にワシントン海軍軍縮条約の破棄も通告し、2年後の1936年に同条約の縛りがなくなると、1937年の日中戦争開始や1939年のWW2開始を受け、本格的な軍事拠点(港湾、飛行場、水上離着陸場など)の建設に入る。
●この頃、南洋興発の松江春治社長と、米海軍の嶋田軍令部次長、山本五十六海軍次官、永野修身聯合艦隊司令長官、米内光政や野村吉三郎(のちの駐米大使)などなどが、たびたび意見交換したり、現地訪問したりしており、同社長の実行力と構想は、軍側幹部を魅了していたと伝えれれている。実際、オランダの会社と合弁企業を設立して事業を進めるなど、国際情勢が日本に厳しい中でも同社長は辣腕を発揮した
●工事が最盛期の1939年には約1万人が現場の作業に従事しており、軍はその秘匿に苦心していた模様である。そして1941年12月の開戦までに、陸上と水上機用の航空基地が南洋諸島で18か所完成
●ただ、滑走路や燃料施設は完成したが、防御用火砲陣地やレーダー設備は不十分なまま開戦を迎えた。それでも南洋諸島の各拠点は緒戦での日本軍の迅速な南方制圧に大きく貢献し、フィリピン作戦の拠点としても重要な役割を果たした

●一方で、当時の日本と異なり、中国はすでに世界第2位の経済大国として南洋諸島に大きな影響力を持っており、中国の進出を食い止めることは不可能と考えられる。この観点から豪州な研究者からは、西側からの援助などで中国の影響力を南太平洋から排除するのは困難であり、「戦時に中国軍の基地を無力化する軍事力を構築する方がコストが低い」との主張がなされている
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ほとんど細部に触れることなく、歴史年表の抜き書きのような、概要の概要紹介になってしまいましたが、庄司理事の論考は豊富な資料を基に、南洋興発の活動を興味深く説明しており、なかなか目に触れることがないながら、今日的意味を持つ近代史の重要な1ページですので、ぜひ一度ご覧ください。6ページですから
同論考によれば、「最近でも、ソロモンの中央州政府が、中国の複合企業「中国森田」にツラギ島を 75 年間貸与する契約を結んだことが問題化し、米豪などの強い反発で「無効」とされた。ツラギ島は天然の良港があり、大東亜戦争中日本海軍の根拠地が置かれていた。その他、パプアニューギニアの北東部マヌス島での中国の支援による港湾拡張計画・幹線道路の建設やバヌアツにおける中国企業による埠頭や空港の建設などの動きが、中国による海軍基地建設として報じられている」らしいです。

庄司氏の「NIDSコメンタリー」原文
→http://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary113.pdf
数少ない関連の記事
「対中国で米軍配置再検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-16-1
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「アジア認識を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-07
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