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対中国作戦指揮官はトップガンパイロットへ [Joint・統合参謀本部]

次の太平洋軍司令官候補を大統領が推挙
太平洋海軍を率いるアジア太平洋を熟知する海軍大将

Aquilino4.jpg3日、トランプ大統領が次の太平洋軍司令官(第26代目:U.S. Indo-Pacific Commander)に、現在太平洋海軍(U.S. Pacific Fleet)司令官を務めるJohn C. Aquilino海軍大将を推挙すると発表しました。現在のPhilip S. Davidson太平洋軍司令官は、60歳との年齢から恐らく退役すると思われます

太平洋軍司令官は、対中国有事の際、米軍指揮系統で大統領直属の指揮官となり、中国との戦いの米軍(おそらく有志国連合の指揮官も兼ねる)作戦を遂行する人物で、米軍内の様々な指揮官職の中でも、有事の責任が最も重い指揮官職と考えてよいでしょう

Aquilino3.jpg候補となったAquilino海軍大将は、米中央軍海軍司令官から2018年5月に太平洋海軍司令官に就任し、2年以上インドーアジア太平洋作戦地域の情勢を見てきた人物です。現在のDavidson司令官も同じ2018年5月に太平洋軍司令官に就任していることから、前任者の様子を直属部下として見取り稽古してきた人物でもあります

以下では、空母艦載機F-14やFA-18の優秀なパイロットであるJohn C. Aquilino海軍大将のご経歴をご紹介しておきます

3日付各種報道や公式バイオによれば
John Christopher Aquilino海軍大将は、1962年12月16日ニューヨーク生まれ&育ち(まもなく58歳)で、1984年に海軍士官学校を卒業
Aquilino.jpgその後、空母艦載機のパイロットコースに進み、映画トップガンの部隊となっていたF-14「Navy Fighter Weapons School」を卒業した優秀な艦載機パイロット。F-18C/E/Fの操縦経験もあり、総飛行時間は5100時間以上、空母への着艦回数1150回を数える

空母艦載機のパイロットとしての部隊勤務や指揮官勤務以外に、A-4、F-5、F-16などで編成される仮設敵機部隊(アグレッサー)の教官パイロットや、上記「Weapons School」の運用幹部も務めた
米海軍司令部では米海軍No2(副作戦部長)副官や米艦載機部隊訓練課長、国防長官室の兵器システム開発特別補佐官も経験している

Aquilino2.jpg将官になってからは、今は無いU.S. Joint Forces Commandの戦略政策担当部長、統合参謀本部の副作戦調整部長、米海軍司令部の作戦計画部長、米中央軍海軍司令官を経て、2018年5月から現在の太平洋艦隊司令官を務めている
海軍士官学校で物理学学士、統合幕僚大学卒、ハーバード大ケネディースクール上級国際安全保障コース履修
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2018年5月にAquilino大将やDavidson司令官が太平洋軍内に着任した当時は、2017年に連続して発生した第7艦隊艦艇の複数の衝突事故(計17名の海軍兵士が死亡)や、シンガポールの港湾役務企業絡みの汚職事件等で米海軍幹部が多数更迭され、伝統的に海軍人が務めてきた太平洋軍司令官ポストに空軍大将が最有力候補とまで言われた時期でした

今も米海軍は、コロンビア級SSBNやフォード級空母、相次ぐ艦艇火災やコロナ感染など明るい話題が少ないですが、Davidson現司令官がアジア太平洋経験ほぼゼロで着任したのとは異なり、米議会で承認されれば2年半以上の経験を持った新司令官の誕生となります

米海軍司令部の作戦計画部長時代には、米海軍と英海軍と海上自衛隊との協力協定を合意に導いており、2016年10月当時の関連インタビュー映像が以下ですが、しっかりした方の印象です


Aquilino海軍大将のご経歴
https://www.cpf.navy.mil/leaders/john-aquilino/

太平洋海軍トップに就任直後のAquilino海軍大将の記事
「RIMPAC2018の開始式で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-07-01

今のDavidson司令官関連の記事
「グアムにイージスアショア配備熱望」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-23
「司令官として米議会に要望」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-29
「太平洋軍が対中で兵力配備再検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-16-1

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米軍人トップ:現実を見よ、予算増加は見込めない! [Joint・統合参謀本部]

「reality check:現実を見よ」との言葉で現実の厳しさを訴え
大幅減少(decline significantly)が理性的な見方と

Milley3.jpg2日、米軍人トップのMark Milley統合参謀本部議長がブリッキングス研究所主催イベントで講演し、国防予算の実質的増加を予期すべきではないし、コロナ感染対処で国家として重視すべき事項が国防費以外にも列をなしている状況を認識し、2022年度予算検討では真に米国の防衛や安全保障に影響するものかを厳しく精査していると率直に語りました

この発言を受け国防省筋は、同盟国やパートナー国への事前警告だとコメントし、演習経費の削減は避けられないとコメントしているようです。このような見方は、これまでも国防専門家や各方面関係者から漏れ聞こえてきたことですが、Milley統合参謀本部議長が発言ぶりが極めて率直ではっきりしたものだったので、多くのメディアが取り上げています

下手な説明や解説より、説得力があると思いますので、Milley大将の発言をストレートにご紹介いたします

2日付Defense-News記事によれば
Milley2.jpg軍事メディアが11月30日に、米国防省は2022年度予算案の検討前提として、2021年比で2%増の実質前年比レベル据え置き予算を前提としているとスクープ報道をしていたが、Milley統合参謀本部議長は「現実の世界では、3-5%の予算増が物価上昇等を勘案すれば実質的な国防予算増には必要で、装備近代化や即応体制維持には欠かせない」と述べつつ
「必ずしもそのようなことは期待できないし、私自身は予期していない。国防省に勤務する軍人も文民職員も、国家予算や国防費がどのような現実に直面するか現実を良く直視すべきである」、「経済情勢と米国情勢を俯瞰的に見つめ、何が起こるか考えれば、良くて国防費は横ばいで、大幅に減少する(decline significantly)と考えるのが理性的な見方であろう」とも同大将はブリッキングスで語った

Milley4.jpg更に「米国防省は限られた予算で、どこで、何をなすかを厳しく精査しなくてはいけない」、「米国は海外への展開や基地や作戦に多くを出費しているが、それが本当に米国の防衛に、米国の安全保障に必要なのか? その演習は本当に重要なのかを考える時だ
「私は真剣に取り組んでいる。何が必要で重要かを厳しく精査している」、「できる範囲で全力で考え、それに従って米軍を導くことに何の迷いもない」と語った

そしてMilley統合参謀本部議長はコロナ感染の国家への影響の大きさを諭すように、「私は強くて能力の高い米軍を持つべきだと信じている。しかし同時に強い国家経済も必要だし、打たれ強い国家である必要もある。優れた教育体制も必要だし、社会インフラも欠かせない。全てが国防省の裁量の範囲外にある事項だ」
Milley5.jpg「米軍は国家経済の上に存在するものだ。今コロナ感染の嵐の中にあり、国家経済は下降状態にある。失業率は高く、すべてが厳しい状況だ。今最も必要なのはコロナ対処であり、経済に新たな力を投入する必要がある。それが実現できたなら、後に国防や軍備に新たな投資が注ぐことができるだろう」と語った
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軍種間の予算獲得争いを戒める意味も込めた発言かと思いますが、何しろ米軍トップで、大統領に対して軍事的助言を行う最高責任者としての発言ですので重みが違います

普通なら、コロナ厳しき中でも、中国やロシアの動向を訴え、国防費は今こそ重要だ!・・・と訴えることろでしょうが、そこをあえて「現実直視」を訴えるあたりは、予算獲得のパワーゲームになれば、政治家やロビイストの力関係に影響されてしまえば、限られた予算の中で米軍の体制が危ういとの強い危機感があるからでしょう・・

危機感ひしひしです・・・・

バイデン政権の国防政策予想
「必要な国防政策を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-12
「米議会で中国抑止を議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-17
「バイデン政権で国防政策はどう変わるのか」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-09

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Austin元大将が国防長官になる為の高いハードル [ふと考えること]

退役後7年以上経過が必要で、この規定除外は困難との見方
いずれにしても、新大統領就任段階では国防長官不在だろうと

Austin3.jpg各種軍事メディアが、バイデン政権の国防長官候補最有力だと言われていたMichèle Flournoy元政策担当国防次官が、軍需産業との関係を嫌った民主党議員グループの反対に直面して難しいとの見方が広まり、代わりに元中央軍司令官のLloyd Austin退役陸軍大将の名前が急浮上していると報じています

一方で元軍人の場合は、国防長官に就任するには退役後7年以上経過(陸海空軍長官に就任するにも5年以上)していることが必要で、Lloyd Austin元大将がこの規定を満たしていないため、国防長官に就任するには、上下院の過半数の賛成と大統領署名が必要な「waiver:法律の適応除外」承認が求められるが、議会がそれを許す雰囲気にはないと紹介しています

ランプ政権の初代国防長官だったマティス氏は、この「waiver:法律の適応除外」承認を得てトランプ大統領就任日から職務を開始できましたが、現在の議会情勢では「waiver:法律の適応除外」承認を得ることも、大統領就任日に国防長官職を開始することも難しいだろうと米メディアは推測しています

11月30日付Defense-News記事によれば
Flournoy.jpeg国防長官最有力で初の女性国防長官誕生かと期待されていたFlournoy女史は、軍需産業の幹部を務めた過去や政策担当国防次官当時の姿勢から、民主党の一部議員から反対されており、Jeh Johnson元国土安全保障長官や元軍人のTammy Duckworth上院議員の名前が浮上していた
そんな中、2016年に中央軍司令官を最後に退役したLloyd Austin元陸軍大将(陸軍士官学校卒)が有力だとのバイデン筋情報が報じられ、大きな話題となっている。一方で、マティス氏のように退役後7年経過の「waiver:法律の適応除外」承認を得ることは難しいだろうと言われている

Mattis4.jpgマティス氏が「例外」を認められたのは、米議会から人物見識とも申し分ない人物だとの高い評価を得ていた例外的人物であったことに加え、トランプ大統領が安全保障に関して「素人」であることから、マティス氏が必要だとの雰囲気が醸成されたからである
それでも「例外」承認投票では、上院で81-17ながら、下院では民主党議員が36名しか賛成しない268-151で認められた経緯があり、民主党重鎮が「今回だけだ」または「シビリアンコントロールを冒すもので許容できない」などの声を当時上げており、トランプ政権で文民ポストに元軍人が多数配置されたことを批判してきた民主党が、再び「例外」を認める可能性は低いと見られている

Austin.jpgまた次期政権の国防長官人事に関し専門家は、マティス氏がトランプ大統領就任日に「例外」認証を得て国防長官に就任できたのは、共和党が両院で過半数を確保していたことが大きく、バイデン大統領が就任日に国防長官候補者を議会に推薦することになろう状況とは環境が全く異なるとコメントしている
国防省の機構上は、統合参謀本部から制服組の意見を吸い上げ、国防長官室の文民官僚が総合的に判断して政策を立案遂行する形になっているが、マティス国防長官は制服組の意見をに耳を傾ける傾向が強かったこともあり、また国防長官室に元軍人が増えてシビリアンコントルールが危ういとの声が各方面で大きくなっている
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ほぼ全ての次期政権閣僚予想で国防長官最有力候補だったMichèle Flournoy元政策担当国防次官が、今になって「危うい」状態になっているのには驚きですが、大統領選挙を通じて生じた政党内の「貸し借り」など、様々な要因が絡む政治の裏側を感じさせます

Austin2.jpgちなみにLloyd Austin元中央軍司令官は、約50億円を投入した対ISのためのシリア反政府勢力教育訓練を米軍として担った当時の中央軍司令官でしたが、当時のマケイン上院議員に「結果として、養成した要員が何名ぐらい前線でISと戦っているのか?」と質問され、「4-5人です」と正直に回答してマケイン議員から「30年上院軍事委員会にいて、こんなにばかげた話を聞いたことがない」と酷評され大きく報じられた方です

ちなみにまんぐーすは、Lloyd Austin元中央軍司令官を信念をもって前線の現実を語った勇気ある人物だと思いますが、それ以上は知りません。また元軍人が国防省内で増えても、それが直ちにシビリアンコントロールの問題だとは思いませんが

バイデン政権の国防長官最有力候補フロノイ女史の思考
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5月のF-35着陸事故の対策機体改修は「秘密」 [亡国のF-35]

作戦運用上のセキュリティー漏洩につながるからとか
機体全損・パイロット大けがレベルの事故では異例の非公開

F-35 accident.jpg11月23日米国防省F-35計画室は、5月19日のエグリン基地夜間着陸時に発生した機体全損・パイロット重症の重大事故に関し、作戦運用上の必要性からハード対策の内容については非公開とすると発表しましたが、機体のソフトやハードが関係する大事故にもかかわらず、対策が非公開との異例の対応に驚きの声が上がっているようです

事故調査報告書が10月上旬に発表され、主因と副因が明らかとなっていますが、全世界で585機が運用中で合計33万時間以上の飛行時間を記録しているF-35でも未だに未解明だったソフトバグや機材不具合があったと報告されていますが、その上で対策が非公開との対応に、敵が悪用可能な弱点がありそうな雰囲気です

またこの事故関連の対策費を、米国防省とロッキードのどちらが負担するのかについても「非公開」となっており、なにやら「闇」を感じさせる事故事例となりそうです

当該事故の概要
F-35 accident2.jpg2020年5月19日、学生訓練を指導した教官パイロット操縦のF-35Aが夜間着陸を行う際、規定速度より50ノットも早い202ノット、着陸時の機首上げ角度も既定の13度より少ない5.2度で着陸た。
この規定外の着陸姿勢速度にも警告音は出なかったが、パイロットは着地直後に異常を感じ、アフターバーナーで再離陸のため機首上げを試みたが、機首下げモードに機体が反応したことから、操縦者はベイルアウトを選択した

操縦者が脱出後、機体は1回転して大破し修理不能となり、パイロットも脱出時にキャノピー等の破片で目や体に傷を負い、背骨も負傷し、命に別状はないが重傷を負った
事故の主因は、着陸時の速度設定を誤ったことと事故報告書は指摘しているが、複数の副因が主因に関連して事故を誘発したと報告書は指摘している

当該事故の副因
F-35 accident3.jpg浅い角度の着陸で全輪が同時に着地する特殊な状況下で、パイロットが回復操作や再離陸動作を行ったことで機体コンピュータの処理が飽和し、機首下げをコンピュータが操縦者指示にオーバーライドして命じたが、着地後3-5秒間のこの機体反応は、操縦マニュアルやシミュレータにも反映されておらず、未知の機体反応だった

また、操縦者はHMDが今までに経験がない「誤表示:misalignment」を示し、更に「green glow」して周辺を目視で十分確認できず、修正が間に合わずに低高度で着陸侵入したと証言し、HMDの改修指示が出された
もともとF-35での計器飛行着陸は難しいと言われているが、F-35の酸素供給装置は呼吸に体力を要し(to work too hard at breathing)、他機種と比較し格段に疲労による認知能力の低下(ognitive degradation)を招いた
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F-35 2.jpg10月に報告書が出た際、記者団は国防省F-35計画室に質問を出しましたが、同計画室は調査チームが所属した米空軍教育訓練コマンドに聞いてくれと対応し、逆に質問を振られた米空軍教育訓練コマンドは、報告を受け対策を決定するのは同計画室だからそちらに聞いてくれと「たらいまわし」状態を生み出し、自ら傷口に塩を刷り込んだ黒歴史を誇っています

教官パイロットが事故を起こしたこともあり、非常にインパクトが大きかった事故ですが、最後まで話題を提供してくれています

当該操縦者のご回復と今後のF-35無事故を祈念し、紹介とさせていただきます

最近のF-35
「ODIN提供開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-24
「中東でかく戦えり」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「機種別機数が第3位に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-07
「B型とC型が超音速飛行制限甘受」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-27
「ボルトの誤使用:調査もせず放置へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-29
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

鬼門の戦闘機酸素供給装置
「F-35で謎の低酸素症多発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-11

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米空軍が「つなぎ」の空中給油機KC-Yに着手へ [米空軍]

KC-46Aが「KC-X」で、つなぎ機が「KC-Y」で
本格次世代給油機が恐らくステルス性のある「KC-Z」
つなぎ機はまた、KC-46とA330で対決!?
年末には関連企業に情報提供要求RFI発出か

KC-46A9.jpg10月27日、米空軍輸送コマンド司令官Jacqueline Van Ovost大将がオンライン講演で、KC-46A空中給油機と現在検討中の次世代給油機の間を埋める「つなぎ給油機:bridge tanker」の要求性能を検討中であるが、開発を伴わない商用機をベースとし、民間委託で国内給油訓練用に使用するとの考えを明らかにしました

米空軍の給油機は、179機が2027年までに製造されるKC-46を「KC-X」、「つなぎ給油機:bridge tanker」を「KC-Y」、そして将来の環境に備えたステルスや無人・自律性を追求する可能性がある次世代給油機「KC-Z」との体形で整備される方向となっており、「つなぎ」の「KC-Y」は、KC-46が製造を修了する2027年頃から、運用70年となる老朽KC-135の後継として導入が想定されている給油機です

A330 MRTT4.jpgKC-46製造終了後から、老朽KC-135の代替として導入を開始するためには、2022年度予算に具体的経費を盛り込む必要があり、そのためには今年2020年末にも関連企業に情報提供要求RFIを出すタイミングにあるようで、年末に向けて動きがありそうです

報道によれば、米空軍の構想する「つなぎ機」の対象となりえるのは、「KC-X」を巡って数回機種選定をやり直す泥沼を戦ったボーイングのKC-46Aと、ロッキード&エアバス社提案のA330 MRTTを多少改修した機体になりそうで、胸騒ぎの予感です

繰り返しますが、「KC-Y」の「つなぎ給油機:bridge tanker」は実戦投入しない国内での米軍機訓練用で、民間業者にその運用を委託する空中給油機です

3日付米空軍協会web記事によれば
Ovost3.JPG10月27日、空輸空中給油協会のイベントで講演したOvost米空軍輸送コマンド司令官は、老朽化が進むKC-135給油機の後継としての位置づけで、「KC-Y」とも言われる「つなぎ給油機:bridge tanker」を「完全にオープンな競争入札方式」で選定する方針で、「KC-Z」と言われる次世代空中給油機までの「つなぎ」として考えていると語った
同司令官は「空軍長官も空中給油機部隊への継続的な投資にコミットしており、我々はつなぎ給油機獲得に向け、機種選定作業に進む」と述べ、まもなく運用開始から70年を迎え維持整備費が高騰しているKC-135の後継としてつなぎ機を考えていると説明した

「つなぎ機」について輸送コマンド報道官は、新たな開発を伴わない既存の証明済みの航空機で、KC-46Aの製造終了後から直ちに導入可能なスケジュールに対応可能な機体を求めていると説明しており、KC-46製造が終了する2027年から「つなぎ機」導入を目指すこととなるだろう
このような米空軍の要求に対応可能な給油機は、KC-46AとA330 MRTT(Multi-Role Tanker Transport)をベースとしたものしか実質存在せず、ボーイングとロッキード&エアバス社チームはこれら既存機体を米空軍の要求に応じ改良して提案することを予期してい

KC-135 4.jpg米空軍は、つなぎ機の後の次世代給油機「KC-Z」の検討も行っており、同司令官は「自立性、パイロットの在り方、ステルス性の必要性など基本要求事項について検討している」と述べる一方で、「つなぎ機」は老朽給油機の後継となる全く別の狙いを持っていると説明している
「つなぎ機」について同司令官は、「実戦展開はなく、米国内での訓練を担い、給油を受ける米軍航空機が即応態勢を維持するために貢献する」と説明している

「KC-X」の座を巡って2011年前後でKC-46とA330 MRTTが争い、KC-46が選定された際は、A330は機体が大きく、多様な基地での受け入れが難しいことも要因となっていたが、大型の機体で輸送力も同時に確保したいとの希望も根強くあり、大型機KC-10の後釜として期待する声も空軍内には存在する
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KC-46 Boom4.jpg最近米空軍では、仮設敵機部隊(通称アグレッサー)の運用も一部民間委託を始めており、兵士の増員が期待できない中で「民間委託」分野が広がっています

泥沼の機種選定を3回もやり直したKC-46AとA330 MRTTをベースとした機体で再び機種選定を行うとの見通しですが、大丈夫なんでしょうか??? 米空軍のことながら、心配になります

2016年当時のKC-X,Y,Zの考え方
「空中給油機後継プラン」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-09-22

選定やり直し3回:KC-46機種選定の泥沼
「KC-X決定!泥沼回避可能か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25

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