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再び「玉音放送」を読む [ふと考えること]

8月16日までは夏休みで更新なしです。不定期更新はあるかも

8年前の記事ですが・・・この季節にあらためて・・・
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Termination_War1.jpg本日は、終戦の詔勅たる「玉音放送」(1945年(昭和20年)8月15日正午)の全文を改めて嚙み締めたいと思います。「原文」、「口語訳」、「英文訳」の対比でご覧ください
恥ずかしながら、まんぐーすは全文を通して読んだことがありませんでした。高尚な表現で綴られており、原文を読んでも理解できなかったと思いますが・・・。

そんな中、本年8月号のAirforce Magazineが「Hirohito’s “Jewel Voice Broadcast”」とのタイトルで英語版の「玉音放送」全文を掲載し、事前録音されていたレコード盤を陸軍一部が奪取粉砕を試みたこと、レコード盤を洗濯物の中に隠して難を逃れたこと等の逸話と共に紹介しつつ、その出来栄えを「傑作」(a masterpiece of understatement)と表現しています

米国に言われたからではありませんが、「口語訳」を頼りに読んでみると、いろいろご意見は御座いましょうが、改めてその素晴らしさが胸にしみます。「堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ」の部分だけがよく取り上げられますが、全体を是非、ご覧ください

なお英語版は、国際放送(ラジオ・トウキョウ)で平川唯一が厳格な文語体による英語訳文書を朗読し、国外向けに放送したようで、この放送は米国側でも受信され、1945年8月15日付のニューヨーク・タイムズ紙が全文を掲載しました。

口語訳:塚原キヨ子 「満州引き揚げ回想記」より 
 → http://homepage1.nifty.com/tukahara/manshu/syusensyousyo.htm
英語訳:Airforce Magazine「Hirohito’s “Jewel Voice Broadcast”」
 → http://www.airforce-magazine.com/MagazineArchive/Pages/2012/August%202012/0812keeper.aspx
ウィキペディア「玉音放送」解説
 → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8E%89%E9%9F%B3%E6%94%BE%E9%80%81
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朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク 朕ハ帝國政府ヲシテ米英支蘇四國ニ對シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ

Termination_War2.jpg私は、深く世界の大勢と日本国の現状とを振返り、非常の措置をもって時局を収拾しようと思い、ここに忠実かつ善良なあなたがた国民に申し伝える。私は、日本国政府から米、英、中、ソの四国に対して、それらの共同宣言(ポツダム宣言)を受諾することを通告するよう下命した。
After pondering deeply the general trends of the world and the actual conditions obtaining to our empire today, we have decided to effect a settlement of the present situation by resorting to an extraordinary measure.
We have ordered our government to communicate to the governments of the United States, Great Britain, China, and the Soviet Union that our empire accepts the provisions of their Joint Declaration.


抑ゝ帝國臣民ノ康寧ヲ圖リ萬邦共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ皇祖皇宗ノ遺範ニシテ朕ノ拳々措カサル所曩ニ米英二國ニ宣戰セル所以モ亦實ニ帝國ノ自存ト東亞ノ安定トヲ庶幾スルニ出テ他國ノ主權ヲ排シ領土ヲ侵スカ如キハ固ヨリ朕カ志ニアラス

そもそも日本国民の平穏無事を図って世界繁栄の喜びを共有することは、代々天皇が伝えてきた理念であり、私が常々大切にしてきたことである。先に米英二国に対して宣戦した理由も、本来日本の自立と東アジア諸国の安定とを望み願う思いから出たものであり、他国の主権を排除して領土を侵すようなことは、もとから私の望むところではない。
To strive for the common prosperity and happiness of all nations as well as the security and well-being of our subjects is the solemn obligation which has been handed down by our imperial ancestors, and which we lay close to heart. Indeed, we declared war on America and Britain out of our sincere desire to ensure Japan’s self-preservation and the stabilization of East Asia, it being far from our thought either to infringe upon the sovereignty of other nations or to embark upon territorial aggrandizement.


然ルニ交戰已ニ四歳ヲ閲シ朕カ陸海將兵ノ勇戰朕カ百僚有司ノ勵精朕カ一億衆庶ノ奉公各ゝ最善ヲ盡セルニ拘ラス戰局必スシモ好轉セス世界ノ大勢亦我ニ利アラス加之敵ハ新ニ殘虐ナル爆彈ヲ使用シテ頻ニ無辜ヲ殺傷シ慘害ノ及フ所眞ニ測ルヘカラサルニ至ル

ところが交戦はもう四年を経て、我が陸海将兵の勇敢な戦いも、我が多くの公職者の奮励努力も、我が一億国民の無私の尽力も、それぞれ最善を尽くしたにもかかわらず、戦局は必ずしも好転していないし、世界の大勢もまた我国に有利をもたらしていない。それどころか、敵は新たに残虐な爆弾(原爆)を使用して、しきりに無実の人々までをも殺傷しており、惨澹たる被害がどこまで及ぶのか全く予測できないまでに至った。
But now the war has lasted for nearly four years. Despite the best that has been done by everyone—the gallant fighting of the military and naval forces, the diligence and assiduity of our servants of the state, and the devoted service of our 100 million people—the war situation has developed not necessarily to Japan’s advantage, while the general trends of the world have all turned against her interest.
Moreover, the enemy has begun to employ a new and most cruel bomb, the power of which to damage is indeed incalculable, taking the toll of many innocent lives.


而モ尚交戰ヲ繼續セムカ終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招來スルノミナラス延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ斯ノ如クムハ朕何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ皇祖皇宗ノ神靈ニ謝セムヤ是レ朕カ帝國政府ヲシテ共同宣言ニ應セシムルニ至レル所以ナリ

Termination_War3.jpgなのにまだ戦争を継続するならば、ついには我が民族の滅亡を招くだけでなく、ひいては人類の文明をも破滅しかねないであろう。このようなことでは、私は一体どうやって多くの愛すべき国民を守り、代々の天皇の御霊に謝罪したら良いというのか。これこそが、私が日本国政府に対し共同宣言を受諾(無条件降伏)するよう下命するに至った理由なのである。
Should we continue to fight, it would not only result in an ultimate collapse and obliteration of the Japanese nation, but also it would lead to the total extinction of human civilization.
Such being the case, how are we to save the millions of our subjects or to atone ourselves before the hallowed spirits of our imperial ancestors? This is the reason why we have ordered the acceptance of the provisions of the Joint Declaration of the Powers. 


朕ハ帝國ト共ニ終始東亞ノ解放ニ協力セル諸盟邦ニ對シ遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス帝國臣民ニシテ戰陣ニ死シ職域ニ殉シ非命ニ斃レタル者及其ノ遺族ニ想ヲ致セハ五内爲ニ裂ク且戰傷ヲ負ヒ災禍ヲ蒙リ家業ヲ失ヒタル者ノ厚生ニ至リテハ朕ノ深ク軫念スル所ナリ

私は、日本と共に終始東アジア諸国の解放に協力してくれた同盟諸国に対しては遺憾の意を表せざるを得ない。日本国民であって前線で戦死した者、公務にて殉職した者、戦災に倒れた者、さらにはその遺族の気持ちに想いを寄せると、我が身を引き裂かれる思いである。また戦傷を負ったり、災禍を被って家財職業を失った人々の再起については、私が深く心を痛めているところである。
We cannot but express the deepest sense of regret to our allied nations of East Asia, who have consistently co-operated with the empire towards the emancipation of East Asia. The thought of those officers and men as well as others who have fallen in the fields of battle, those who died at their posts of duty, or those who met with untimely death and all their bereaved families, pains our heart day and night.
The welfare of the wounded and the war sufferers, and of those who have lost their homes and livelihood, are the objects of our profound solicitude.


惟フニ今後帝國ノ受クヘキ苦難ハ固ヨリ尋常ニアラス爾臣民ノ衷情モ朕善ク之ヲ知ル然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ萬世ノ爲ニ太平ヲ開カムト欲ス

考えれば、今後日本国の受けるべき苦難はきっと並大抵のことではなかろう。あなたがた国民の本心も私はよく理解している。しかしながら、私は時の巡り合せに逆らわず、堪えがたくまた忍びがたい思いを乗り越えて、未来永劫のために平和な世界を切り開こうと思うのである。
The hardships and sufferings to which our nation is to be subjected hereafter will certainly be great. We are keenly aware of the inmost feelings of all you, our subjects.
However, it is according to the dictate of time and fate that we have resolved to pave the way for a grand peace for all the generations to come by enduring the unendurable and suffering what is insufferable.


朕ハ茲ニ國體ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ若シ夫レ情ノ激スル所濫ニ事端ヲ滋クシ或ハ同胞排擠互ニ時局ヲ亂リ爲ニ大道ヲ誤リ信義ヲ世界ニ失フカ如キハ朕最モ之ヲ戒ム

私は、ここに国としての形を維持し得れば、善良なあなたがた国民の真心を拠所として、常にあなたがた国民と共に過ごすことができる。もしだれかが感情の高ぶりからむやみやたらに事件を起したり、あるいは仲間を陥れたりして互いに時勢の成り行きを混乱させ、そのために進むべき正しい道を誤って世界の国々から信頼を失うようなことは、私が最も強く警戒するところである。
Having been able to safeguard and maintain the structure of the imperial state, we are always with you, our good and loyal subjects, relying upon your sincerity and integrity. Beware most strictly of any outbursts of emotion which may engender needless complications, or any fraternal contention and strife which may create confusion, lead you astray, and cause you to lose the confidence of the world.


宜シク擧國一家子孫相傳ヘ確ク神州ノ不滅ヲ信シ任重クシテ道遠キヲ念ヒ總力ヲ將來ノ建設ニ傾ケ道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ國體ノ精華ヲ發揚シ世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ 爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ體セヨ

Termination_War4.jpgぜひとも国を挙げて一家の子孫にまで語り伝え、誇るべき自国の不滅を確信し、責任は重くかつ復興への道のりは遠いことを覚悟し、総力を将来の建設に傾け、正しい道を常に忘れずその心を堅持し、誓って国のあるべき姿の真髄を発揚し、世界の流れに遅れを取らぬよう決意しなければならない。
あなたがた国民は、これら私の意をよく理解して行動せよ。
Let the entire nation continue as one family from generation to generation, ever firm in its faith of the imperishableness of its divine land, and mindful of its heavy responsibilities, and the long road before it.
Unite your total strength to be devoted to the construction for the future. Cultivate the ways of rectitude; foster nobility of spirit; and work with resolution so that you may enhance the innate glory of the imperial state and keep pace with the progress of the world.
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爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ體セヨ(あなたがた国民は、これら私の意をよく理解して行動せよ)
→この部分の英訳にあたる部分は見当たりませんでした。

なお、この玉音放送で終わりを迎えた戦争の、日本国としての正式名称は未だ未確定です。
毎年8月15日に武道館で開催の戦没者追悼式で、天皇陛下や総理が「先の大戦」と表現をするのはこのためです。詳しくは下記の記事で

「あの戦争」をなんと呼ぶべき→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-26

英霊の安らかならんことを祈念しつつ・・・

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「あの戦争」をなんと呼ぶべき・・・ [ふと考えること]

約10年前の記事ですが、状況に変化なし・・・
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「開戦から70 年、真珠湾攻撃以降の戦争呼称は分裂のまま」

syouji.jpg呼称に関する現在の政府の見解は、質問主意書に対する答弁書で明らかにされており、「大東亜戦争」、「太平洋戦争」共に戦後法令上の定義・根拠はないとされている
●その結果、天皇陛下の「お言葉」、総理大臣の演説・談話など公的な場では、「先の大戦」、「過去の戦争」、「あの戦争」など曖昧な表現が使われている

防衛省防衛研究所、定期的にwebサイトに掲載する「ブリーフィング・メモ」に、同研究所で戦史部門のトップを務める庄司潤一郞氏(2011年当時)が「表題」の一考察を寄稿されています。
A4に4ページ余りの内容ですが、如何にも歴史に積み残された課題のような気がしますので、年末にじっくり考えてみたいテーマとして取り上げました。

はじめに前振り
●開戦時の戦争目的の不統一、戦後の米国による占領政策、そしてその後の日本国内における戦争を中心とする近現代史に関する歴史認識の「政治化」の影響を受け、呼称が統一されていない。
PacificWar.jpg●「太平洋戦争」、「大東亜戦争」、「15 年戦争」、「アジア・太平洋戦争」など様々な呼称が使用され、いまだ決着がついていないのが現状である
●現在、一般には「太平洋戦争」が新聞・雑誌、教科書など広く普及しているものの、近年、学界や識者の間においては、呼称の使用に関して注目すべき変化が見られる。それは、「アジア・太平洋戦争」の台頭、「大東亜戦争」の「復活」と、それにともなう、「太平洋戦争」の衰退である。
●それは、「太平洋戦争」が、戦争の実体を、特に地域面から考慮した場合、やはり致命的な問題を抱えているからであろう

「アジア・太平洋戦争」
pacificwar3.jpg●昭和60 年、木坂順一郎が正式に提唱したことにより、広まっていった。木坂は、「太平洋戦争」は米国が命名したもので中国戦線の比重を過小評価する恐れがあり、「大東亜戦争」は日本の侵略を正当化するため、二つの呼称を回避した。
●「東アジアと東南アジアおよび太平洋を戦場とし、第二次世界大戦の一環としてたたかわれた戦争という意味と、日本が引き起こした無謀な侵略戦争への反省をこめた
●近年では、特に「進歩派」を中心として、「太平洋戦争」や「15 年戦争」から「アジア・太平洋戦争」に変更する例が見られる。

この呼称についての議論は、
まず、アジアでの戦いと米国との太平洋の戦いは一体・密接不可分な関係にあったとの「連続性」を強調する呼称である、
第2に、アジア及び太平洋における日本の政策の「連続性(一貫性)」と「侵略」を強調する歴史観が含蓄されている点への違和感、
第3に、しかしアジアはちょっと広すぎないか?アフガニスタンやトルコまで戦域だったわけではない、との意見があるため、浸透していない面がある

「大東亞戦争」
PacificWar2.jpg●「大東亜戦争」使用の根拠は多岐にわたるが、主なものは第一に、「大東亜戦争」が、閣議(大本営政府連絡会議)決定という「合法性」を有している日本の正式な呼称であるという点である。さらに、GHQ の「神道指令」による「大東亜戦争」の禁止もポツダム宣言受諾で無効になったとの解釈もある。
第2に、第二に、「大東亜戦争」には、大東亜新秩序の建設といったイデオロギー的含蓄はなく、単なる地理的呼称で、地域的に戦争の実態によく適合しているとの主張である

この呼称への感情の背景には、戦争目的をめぐる混迷も存在していた。すなわち、戦争目的は自存自衛で、「大東亜戦争」は当時海軍が提案した「太平洋戦争」と同様に地域的呼称なのか、はたまた大東亜新秩序建設こそが戦争目的なのかといった議論である。

興味深いことに、欧米の研究者の間では、「大東亜戦争」に対する抵抗感は少ない。米の歴史家は、「地域的観点から、「第二次世界大戦」はあまりに広く、「太平洋戦争」は狭いため、「いささかきまり悪いものの、『大東亜戦争』という用語がやはり、日本がインド洋や太平洋、東アジアおよび東南アジアで繰り広げようとした戦争を最も正確に表現している」と指摘している。

おわりに
Bouken.JPG●「大東亜戦争」の由来が、「大東亜新秩序の建設」という政治目的ではなく、単なる地理的呼称であるとするならば、批判と対立の根拠であったイデオロギー色のない呼称ということになる
●『大東亜』をたんなる戦域と読みかえ、例えば東南アジア研究者の倉沢愛子、田原総一朗、長谷川煕、日本外交史研究者の松浦正孝など、肯定論とは異なる立場から「大東亜戦争」を使用する識者が目立っている
●肯定論という戦争観ではなく、歴史的用語として「大東亜戦争」は復権しているのであろうか
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最近余り考えなかった話題ですが、忘れてはいけない課題です。

軍事力のあり方・適用法
「不同意の共有が第一歩」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-22
「軍事力使用の3原則」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-07
「米外交の軍事化を警告」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-15-1
「軍事と外交が一丸となって」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-03
「禅の思想で対テロやCOINを」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-31

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今も米軍の戦史教材である日系人部隊442連隊 [ふと考えること]

4年半前の記事ですが
今も米軍の歴史の教材である日系人部隊442連隊を学ぶ
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Abe-Obama2.jpg2016年12月28日朝、安倍首相とオバマ大統領がそろって真珠湾を訪れ、それぞれの所信を語って同盟関係の発展を期す契機としました。

私が約10年前に戦艦アリゾナメモリアルを訪れた際も多くの人が訪れており、船で慰霊施設に渡るのに時間によっては2~3時間待ちが普通だと伺いました
陸地側の施設には真珠湾攻撃の展示資料館が設置されていましたが、淡々と史実を伝え、攻撃した日本軍側の事も驚くほど丁寧に紹介していたことが印象に残っています

今回の安倍総理の訪問を通じ、当時のハワイ在住日系人が遭遇した運命や厳しい現実を伝える報道も行われましたが、同時に現在のハワイ州知事が日系人であることなど、日系人の活躍が紹介されたのは良い相乗効果と言えましょう

Abe-Obama.jpgただ、既に両国首脳の真珠湾訪問への思いは大きく報じられていますが、オバマ大統領が政治の道を志すに至った過程で、少なからぬ影響を与えたのが日系人であったことはほとんど知られていないと思います

本日は、真珠湾攻撃や太平洋戦争が生んだ米国内「日系人」社会の現実と日系人だけで編制された伝説の442連隊、そして同連隊に所属して片腕を失いながらも日系人の上院議員を50年以上務め、多くの米国人から尊敬を集め、オバマ大統領に多大な影響を与えた「ダニエル・イノウエ氏」を振り返りつつ、「伝説の日系人部隊」第442連隊を再び学びます
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過去記事
故イノウエ上院議員を偲び、442連隊を学ぶ
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-19

442Inoue2.jpg2012年12月17日、ハワイ選出の上院議員、ダニエル・イノウエ氏が88歳で亡くなりました
第2次世界大戦時には、日系人のみで編成された「伝説」の第442連隊員で欧州を転戦し、片腕を失った人物でもあります。

その後今日まで50年間上院議員を務め、日米関係の発展に尽力し、米国防省の退役軍人施策にも心血を注いだ、日米双方の安全保障関係者に取って忘れ難い存在でした。

訃報が伝えられて以来、各方面からその死を悼むメッセージが出されていますが本日はオバマ大統領(涙ぐみながら)、パネッタ国防長官とデンプシー参謀総長の追悼の言葉を紹介したいと思います。
そしてまた、442連隊について語らせて下さい・・

パネッタ国防長官は・・
Panettatexas.jpgアメリカンドリームと偉大なる時代のヒーローの姿を体現した人である。
伝説の第442連隊員として壮絶な打ち合いの中で彼が見せたリーダーシップと熱情は、彼の片腕を奪い、名誉勲章を与えた。しかしその後の彼のリハビリへの取り組みと彼の職歴は、現在の負傷兵をも勇気づけている

●上院議員として、彼は最も頼りになる国防省の応援者のひとりであり、いつの時代にも前線兵士を勇気づけてきた。私はクリントン及びオバマ政権下で彼と緊密に連携を取りながら仕事ができたことを誇りに感じている
●彼のお陰で成し得た米軍兵士やその家族、更にハワイの人々の生活の向上は永遠に語り継がれるだろう

デンプシー統合参謀本部議長は・・
DempseyCapstone.jpg●偉大なる世代の一員として、彼は人生で最も良い時期を欧州の専制政治に立ち向かうため捧げた名声轟く第442連隊の一員として。
●彼は戦いで片腕を失い、国家への奉仕を十分に努めたが、国家への貢献はそれだけに止まらなかった
●(上院議員として)彼が行ってきた退役軍人への絶え間ない支援、特に教育や医療分野への努力は、無数の兵士やその家族に今後も多大なる貢献をするだろう

23日、ハワイでの葬儀にオバマ大統領も F-22初の追悼飛行も
Obama Inoue2.jpgF-22 Missing Formation2.jpg








21日、ワシントンDCの教会でオバマ大統領は・・
●私が初めてイノウエ上院議員を見たのは11歳の時、ウォーターゲート事件の審議をテレビで見ていた時です。
●白人の母と黒人の父の間に生まれた私は、インドネシアとハワイで育ち、この世で生きていくことがそう単純でないことに気づき始めていました

obama-inoue.jpgそんな時です、彼を見たのは。この上院議員は力強く、業績を積んだ人物でしたが、当時一般的に考えられていた上院議員像とは異なりました
●そして彼が全米から尊敬を集める様子から、私は私の人生で何が成し得るかのヒントを与えてくれました

●この人物は10代で自ら志願して国に命を捧げる覚悟をしました。それも仲間である日系米国人が敵性外国人扱いされる中で・・・。この人物は米国を信じました。米国政府が必ずしも彼を信頼していない時にさえ・・。
●このことは私に何かを伝えてくれました。力強い何か・・当時は言葉に出来なかった・・強い希望の感覚です。イノウエ氏こそが、私に初めて政治的なインスピレーションを与えた人物と言って間違いありません。
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イノウエ議員を語るに欠くことができない史実・
「第442連隊」について語らせて下さい

442Battle.jpg第442連隊は「Nisei(二世)」と呼ばれる日系人で構成されていた部隊です。第2次対大戦中、米本土内では差別的な扱いを受け強制収容所に送られていた日系人ですが、彼らは「米国人たる日本人」の存在を示すため志願して戦時下の米軍に入隊しました。

当初は米軍幹部も扱いに迷ったようですが、その優秀さから欧州戦線で大活躍し、トルーマン大統領自らが7枚目となる「大統領感状」を授与に赴くまでに至った伝説の部隊です。
その戦いの激しさは死傷率314%、つまり定員約3千人の部隊で述べ9500人の死傷者を記録したほどで、米軍内では抜き出た部隊でした。

442連隊の奮闘が米国中に知られ、同時に米国内での日系人に対する差別的処遇が明らかになり、ルーズベルト大統領が過ちを公式スピーチで謝罪して442連隊の奮闘を讃えました。442連隊は、まさに「体を張って」日系人の名誉回復に大いに寄与しました。
しつこいですが・・・死傷率312%・・米国陸軍史上最大の勲章数を誇る部隊です。
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映画「442 日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍」紹介文より
2010年11月に日本公開の映画)
442F.jpg第2次世界大戦時に日系人で編成された部隊・アメリカ陸軍442連隊に迫るドキュメンタリー。人種差別と戦いながら、父母の祖国・日本と戦う苦悩と葛藤(かっとう)を抱えた兵士たちの揺れる心を、当事者たちの証言でつづっていく。名誉のために命を懸け、偏見と戦った兵士たちの真実に注目だ。

本作は、2010年マウイ・フィルム・フェスティバル<観客特別賞>を受賞した。7月末ロサンゼルスでの公開以来驚異的な動員数を記録し、現在も全米各地で上映が続いている。

YouTube予告編http://www.youtube.com/watch?v=tbO6K_Ig7Y4
Yahooコメント欄http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id337918/
紹介サイトhttp://navicon.jp/news/9842/
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第2次大戦後、60年以上が経過したある日・
2011年11月2日、442連隊へ米国民最高の「議会勲章」授与

442Mullen.jpg2011年11月2日、第2次大戦中の10大戦闘に数えられる「失われた大隊(Lost Battalion)救出作戦」の65周年記念行事がヒューストンで行われ、救出された141連隊の兵士と救出した「米国陸軍史上最大の勲章数」を誇る442連隊戦闘団の面々が集いました。
写真のようにマレン統合参謀本部長議長(当時)も参加し、その栄誉をたたえました。

「失われた大隊救出作戦」とは・・
1944年10月25日、ドイツ軍に包囲されて孤立した約230名の141連隊を救出せよとの命令が時のルーズベルト大統領から出され、これに応じた442連隊戦闘団がフランス東部ボージュの森で800名余りの犠牲者を出しながらも、同30日に任務を達成したとの話です。

442smile.jpg救出後の歓喜の中で、救出された側の少佐が軽い気持ちで「ジャップ部隊なのか」と言ったため、442部隊の少尉が「俺たちはアメリカ陸軍442部隊だ。言い直せ」と掴みかかり、少佐は謝罪して敬礼したという逸話が残されています。
なおこの作戦は、第2次大戦の10大戦闘として米陸軍で今も教育されています。

他にも、イタリア戦線で数カ月かかっても他部隊が攻略できなかった山岳要塞を僅か20時間余りで攻略した逸話、激闘と活躍を聞いた将軍が442連隊を訪問して激励の言葉を述べようとしたが、負傷者が多くて中隊規模の兵士しか整列できず将軍が絶句した話、60年以上が経過して今もなお、解放してもらったフランスの町が毎年兵士を読んで記念行事を行っていること等々・・・話は尽きません

442GoForB.jpg戦争中に442連隊は18000個もの勲章を授与されており、その数自体が他を圧倒しているのですが、戦後日本への感情を廃して見直しがなされ、多くの勲章格上げがなされたとのことです。
連隊ワッペンに記されたGo for brokeは「当たって砕けろ」の意味だそうです。まさにそのとおりの働きでした。
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マレン統参議長は授与式スピーチで・・
442MullenSp.jpg●442連隊の逸話は、聞く人全てを奮い立たせ、私に多くのことを教えてくれる。
●彼ら日系米国人兵士は、その家族を米国により収容所送りにされながら、愛国心を示し、証明しようとしたのである。
激烈な肉弾戦は塹壕一つ一つを奪いあう熾烈なもので、それが最終的な敵の混乱散乱に繋がっている。

●私は、これらを可能にした442連隊兵士の心中を察するとき、真に謙虚になって皆さんとこの教訓を学び、共にしたいと思う。
●あらゆる側面に置いて、我々は米国建国の理念である、豊かで多様性に溢れた国作りを追求していかなければならない。
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442Inoue.jpgイノウエ議員は上で紹介した映画に、主要な語り部として登場しています
淡々と当時を振り返りつつ、聞き手の質問に丁寧に答えるのですが、インタビューの最後にスタッフを見送る際、イノウエ議員をよく知らない観客は「片腕がない」ことにはじめて気づきます

劇場内に「あっ・・」と言う悲鳴にならない声が上がったことを覚えています。合掌

第442歩兵連隊を描いた70分のドキュメンタリー映像
https://www.youtube.com/watch?v=IpjaQ8lJqmY

日系人と442連隊
「イノウエ議員と442連隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-19
「映画公開と442部隊の魂」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-03
「米軍トップが最敬礼」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-04
「空軍輸送機にイノウエ議員の名を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-28-2

米国防省で日系人が活躍
「女性カトウ大佐が核戦争下の通信装置を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-29
「日系女性が国防省ITを統括」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-30
「普天間担当:日系ナツハラ氏」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-13-1

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ヘリ操縦者養成から初等固定翼練習機を外す試行へ [米空軍]

疲れたので、8月16日までは不定期更新になります

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ヘリ操縦者養成からT-6をなくし、固定翼操縦者養成に充当
パイロット養成改革「Pilot Training Next」の一環というが

HH-60G 2.jpeg4日付米空軍協会web記事は、米空軍の新人操縦者養成を担う第19空軍司令官Craig D. Wills少将へのインタビューを紹介し、米空軍が今週から、ヘリコプター操縦者養成の最初の段階で経験させてきた固定翼練習機の訓練削除を試行すると語り、ヘリ操縦者の養成期間を短縮してパイロット不足緩和につなげたいと語りました

今週にも始まるのは8名の操縦訓練生による「試行クラス」で、その結果を見て本当にヘリ操縦者養成コースのカリキュラム変更が可能かを見極めるようです

米空軍はパイロットの民間航空会社への流出等によるパイロット1割以上不足に悩まされており、ヘリ操縦者以外の戦闘機操縦者なども含めたパイロット養成の効率化や期間の短縮に取り組んでおり、「Pilot Training Next」とのプロジェクト名でバーチャルリアリティーの積極活用、AI活用などの効率的地上教育導入、各操縦学生の能力や特性に応じた訓練期間短縮など、様々な取り組みを行っています

T-6 USAF.jpegまた、ボーナスアップからキャリア管理見直し、勤務場所周辺の子供の教育環境改善、女性獲得のための「身長制限」の緩和や上下別の飛行服開発など、涙ぐましい細かな対策がここ数年試行錯誤で行われています

その一環の「固定翼:T-6練習機」訓練削除案ですが、Wills少将の発言の端々に、ヘリ操縦訓練生に使用されなくなった分のT-6を固定翼操縦者養成に活用してパイロット養成数を増やしたいとの願望がにじみ出ており米空軍のヘリ操縦者(HH-60G Pave Hawks、UH-1N Huey、CV-22オスプレイ)が乱暴に扱われているような気がしてなりません

何と言っても、固定翼T-6操縦訓練がなくなった期間、民間のヘリ操縦教育機関に送って空軍ヘリ操縦者の第一歩を歩ませるという「試行」案には、現役のヘリ操縦者から文句の一つも出そうな気がします

4日付米空軍協会web記事によれば
CV-22 2.jpeg7月30日にWills少将は、8名の小集団による試行が今週(3日の週)米陸軍Fort Ruckerで開始され、現在契約手続き中の民間機関によるヘリ操縦教育が9月に開始される予定であると語った
過去約20年間のヘリ操縦者養成教育は、まず固定翼T-6操縦訓練を受けて「飛ぶ」ことや航空法関連など空の基本的ルールを体で覚え、その後機種が決定され、ヘリに進む場合は米陸軍Fort Ruckerで基礎教育を受け、卒業後に各機種(HH-60G Pave Hawks、UH-1N Huey、CV-22オスプレイ)に分かれる流れであった

それ以前はやはり固定翼機の経験なく直接ヘリ教育を受けていたことから、今回の固定翼削除「試行」を「back-to-the-future plan」と呼ぶ者もいる
Wills少将は今回の試行の目的を「ヘリコプター経験だけでは世界標準の優秀なヘリ操縦者を育成できないのか?」との疑問に答えることだと述べ、同少将は「ヘリ教育だけで優秀な操縦者を育成できる」と考え、試行を実施するのだと語った

Heli Pilot Training2.jpeg具体的に同少将は試行について、民間ヘリ養成機関で50時間のヘリ訓練をまず行い、残りのヘリ訓練を米陸軍Fort Ruckerで行う計画だと述べ、民間機関での訓練開始は9月中旬になるだろうと語った
これにより、従来17-18ヵ月の訓練期間から、9-11ヵ月に養成期間を短縮できる可能性があると同少将は述べ、T-6の空き時間は固定翼操縦者養成数の増加に活用したいとも付け加えた

操縦者不足対処の「Pilot Training Next」計画の一環として、昨年米空軍は「Project DaVinci」実験を行い、操縦者訓練生の小集団にシミュレーションやバーチャル訓練を増加したカリキュラムを与え、6名の訓練生全員が6週間も通常より早く課程を修了した
Heli Pilot Training3.jpegこのコンセプトを活用し、ヘリ教育を28週間から14週間に短縮し、年間養成数を倍の120名にする目標を掲げている。米空軍教育訓練コマンド幹部たちは今回の試行に自信を持っているが、「この小集団試行テストでよく確認したい」、「世界レベルのヘリ操縦者が育成できることを証明したい」と述べつつ、「まだ完成したものではない」と慎重な姿勢も見せている
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最初の「空」を民間のヘリ操縦教育機関で迎えるヘリ操縦者を、米空軍は育てるのでしょうか? 戦闘機操縦者をそのように扱うことは決してないでしょうに・・・。なんかですねぇ・・

Heli Pilot Training4.jpeg民間のヘリ操縦教育学校も、米空軍OBが多数を在籍する組織であるような気がしますが・・・、バーチャル訓練もAI活用の知識学習もどんどん取り入れればよいと思いますが・・・、何かちょっと違うような・・・との年寄りの独り言でした

それよりも大きなうねりとして、これだけミサイルや無人機が発達する中、誰しも大空への憧れは持つものの、空軍パイロットになりたいとの夢を持つ者の数が減少する流れには逆らえない気がします

米空軍パイロット不足関連
「米空軍がパイロット募集の身長基準を廃止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-23
「Fly-only管理の募集中止」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-15
「5年連続養成目標数を未達成」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-19
「採用の身長基準を緩和」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-18
「操縦者不足緩和?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-12
「操縦者養成3割増に向けて」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-21-1
「下士官パイロットは考えず」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-19-3
「F-35操縦者養成部隊の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12-3
「下士官パイロット任務拡大?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-22
「仮想敵機部隊も民間委託へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-09-1
「さらに深刻化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-10

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海兵隊非公式マニュアル:無人機に偵察されたら [Joint・統合参謀本部]

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戦場で敵無人機を見かけたらどう行動すべきか
有志による対処法のまとめ冊子96ページ
超改革志向の海兵隊の草の根活動

UAV対処.jpg7月29日付Military.comが、海兵隊関係者が非公式に開設しているwebサイトに、「敵の無人機から如何に身を隠すか:カモフラージュ手順」との冊子が公開されていると紹介し、安価で高性能で誰もが入手可能な無人機が地上部隊にとって大きな脅威になっている現状を踏まえ、「公式」レベルに成熟させる前段階として、関係者が手探りの努力を続けている様子を紹介しています

6月末にwebサイト上で公開された冊子は、11名の経験豊富な現役及び退役海兵隊員の協力によりまとめられたもので、冊子のタイトル通り、地上部隊が敵無人機から発見されないようにするにはどのように行動すべきかについて、よくある質問や基本的な行動指針をまとめた「SOP:standard operating procedure」形式となっています

David Berger海兵隊司令官は「超改革派」として知られ、「戦車部隊の廃止」や「2種類の長射程対艦対地ミサイル(地上発射トマホークとNaval Strike Missileの地上発射版)導入を最優先事業とする」など、海兵隊の在り方を根本的に見直す勢いですが、「草の根」の動きもご紹介いたします

7月29日付Military.com記事によれば
marine.jpeg米海兵隊は、まだこの種のマニュアルを公式にまとめていないが、本非公式マニュアルの著者の一人である米海兵隊のWalker Mills大尉は、このような流れはよくあることだと述べ、自身が小隊長時代に参加した、無人機RQ-11を敵の偵察無人機として見立てた部隊演習の教訓を踏まえて執筆したと語っている
同大尉は演習経験を振り返り、安価で小型無人機センサーによる偵察に対し、地上部隊が如何に脆弱かを身を染みて痛感したと語り、「無人機は地上の海兵隊員を本当に簡単に発見できる」、「無人機からの位置情報を使えば、迫撃砲で簡単に攻撃できる」と述べ

冊子作成の中心人物であるBrendan McBreen退役海兵隊中佐が、Mills大尉や海兵隊の基礎訓練学校の教官などに声をかけ、同中佐の問題意識に共感した彼らは積極的に自らの考えをまとめて提供し
戦いの様相が目まぐるしく変化する現状において、海兵隊員全員が準拠すべき公式マニュアルを定めることに米海兵隊は極めて慎重にならざるを得ず、その点を寄稿したMills大尉らも理解している

●同冊子の記載内容は、例えば・・・
marine2.jpeg--- 部隊員が無人機を発見した際、仲間にそのことを伝える「暗号:隠語」を準備しておけ。また、無人機から身を隠すカモフラージュ実施を部隊に命じる暗号や、無人機を攻撃する暗号も準備しておけ
--- 効果的なカモフラージュ法→ 従来から実施しているヘルメットに草を模した偽装をしたり、車両に偽装ネットをかけるのに加え、熱源放出防止の措置などを実施

--- 各隊員が携行する小銃にも色を塗って偽装し、車両は分散して駐車せよ
--- テントは単に偽装ネットで隠すだけでなく形が上空から確認できないように注意し、熱源法主防止シートを使用することにも着意せよ。等々
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公開されている非公式Webサイトは
→ 2ndbn5thmar.com で

同サイト内の96ページの冊子現物は
→ http://www.2ndbn5thmar.com/camouflage/SIGMAN%20Camouflage%20SOP%20200630.pdf 

Berger.jpg無人機を撃退する兵器の開発が盛んですが、このような兵士の基本動作から見直すこともおろそかにはできません。前海兵隊司令官は、対テロ任務ばかりの20年間で、海兵隊部隊からカムフラージュ(偽装・欺まん)のノウハウが失われたと嘆き、野戦指揮所のカモフラージュもきちんとできない現状を嘆いていたところです

David Berger海兵隊司令官の「超改革」姿勢が前線部隊の若手士官らを刺激し、このような「草の根」活動を呼び起こしていることに組織としての「胎動」を感じます。やっぱり組織のリーダーが熱くないと、組織は動きませんね!!!

米海兵隊の変革関連
「米海兵隊は戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「前司令官:基本的な防御手段を復習せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-10

無人機撃退兵器
「ドローン対処を3-5種類に絞り込む」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-14

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防衛研究所メモ「サイバー傭兵の動向」 [サイバーと宇宙]

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「サイバー傭兵」の事例をイラン・露・中から
更に「開発と攻撃者の分業化・専業化」の視点から

hacktivist.jpeg防衛研究所が定期的に出す「ブリーフィングメモ」として、小野圭司・特別研究官による「サイバー傭兵の動向」との興味深い4ページの論考が掲載されサイバー攻撃を支える「傭兵」とも考えられるハクティビスト(行動主義的なハッカー集団)の動向が紹介されています

ハクティビスト(行動主義的なハッカー集団)が生まれる背景には、まず、ソフトウェア開発が極めて知識集約的であることから、優秀なハッカーが個人や小集団で十分に世界をまたにかける競争力を獲得し得ることまた、サイバー人材は世界で400万人不足しているといわれるほど人材不足状態が続いており、自前で優秀な人材を確保することが難しく「外注化」が広がっておりサイバー攻撃でも同様の傾向が表れていることがあるようです

小野圭司 防研.jpeg技量に優れハクティビストの主要プレーヤーとなるハッカー達は、権威や常識にとらわれず、組織の枠にも収まらないで行動する傾向が強くサイバー攻撃で得た多額の報酬で豪華な生活を送っていることをSNS上でアピールする者もいるようですが

一方で「アノニマス」に参加するハクティビストのように、社会的・政治的正義感から無償でサイバー攻撃に加わる特性も同時に備えるものも多く、このような者達がサイバー攻撃に参加する動機として、報酬以外の比重(自己顕示や達成感、正義感)が大きい場合が少なくなく、問題を複雑にしているようです

以下では、まず「サイバー傭兵」の事例をイラン・ロシア・中国の例で確認し、次に最近のサイバー攻撃の特徴をなしている「開発と攻撃者の分業化・専業化」の視点から、「傭兵」たちの生態に迫りたいと思います

サイバー傭兵の事例
hacktivist2.jpegイランでは軍のサイバー軍設立(2006年)以前から、民間の技術者がハッカー集団(5-10名)を形成し米国のNASAや金融機関への侵入を行っていたが、イラン政府の依頼や指示でも活動するようになり、イラン情報機関への教育を担当したりもしていた。米政府も、イラン政府の依頼を受けたハッカー集団の攻撃を受けたことを公表しており、小組織が「競争力を有する」ことを証明した事例である

2007年4月にエストニア政府機関サイトが攻撃を受けた事案では、ロシア下院議員が、自身の関係者がプーチン政権支持のサイバー技術者と共にDoS/DDoS攻撃を行ったことを認めており、ハクティビスト関与の事例である
2008年の南オセチア事案でも、ロシア政府が犯罪者である民間人技術者が DoS/DDoS 攻撃に動員したと見られている。ロシアが犯罪者を非合法的な活動に従事させるのはソ連時代からの伝統で、例えば 2017 年には露保安庁(FSB)がサイバー犯罪者を使って、政府・報道・金融・交通関係企業者の個人情報をフィッシングしたことが明らかになっている

hacktivist3.jpeg中国でハッカー達は、国家に対して危険を及ばさない限り容認され、一部は国の支援を受けており、数万人から100 万人存在すると見られている
四川省のNCPH(Network Crack Program Hacker)に代表される大学生集団の中には、政府関係機関と密接な関係を有しているものがあり、例えば、2006 年の米国防省を含む米国政府機関への侵入は NCPH が行っている。これらハッカー集団は、中国では「サイバー民兵」や「情報専門民兵」と呼ばれており、2004 年の中国国防白書で初めてその存在を公式に認めている
中国は民間企業主体のサイバー民兵も組織しており背景にはサイバー防衛・セキュリティ需要の急増がある。中国のサイバー防衛市場規模は 2011年には 28 億ドルだったものが、2016 年には 48 億、2021 年には 132億ドルを超えるものと予測されている。代表例の南昊科技公司は、ソフトウェア開発やスキャナなど電子機器製造企業だが、解放軍のサイバー民兵として、また解放軍のサイバー戦要員教育も請け負っている

「開発と攻撃者の分業・専業化」から見る「傭兵」たちの今
hacktivist4.jpeg最近頻発しているランサムウェアのサイバー攻撃(身代金要求型)では、開発と攻撃者の分業化・専業化が指摘されている。かつてランサムウェアの開発者は自ら攻撃を行って収益を得ていたが、ファイル暗号化型ランサムウェアが台頭した 2013 年頃からRaaS(Ransomware-as-a-Service)と呼ばれるサイバー攻撃の請負・代行が確認されるようになった
RaaS では支払われた身代金を、開発者とサイバー攻撃請負・代行者の間で分配する。この仕組みにより、サイバー攻撃請負・代行者はランサムウェアを開発する手間を省いて簡便に金銭目当ての攻撃を行うことができ、逆に RaaS の提供者は自分の手を汚すことなく収益を上げることができる。収益の配分は開発者3-4割、攻撃者が6-7割と言われている

現在では、マルウェアに様々な形式の暗号化や圧縮を行って表面上のコードが異なる「亜種」を作成することで、サイバー防衛側による検出を回避することが常套化しており、また、サイバー攻撃請負・代行者の収益分配率を高くすることで、不特定のサイバー攻撃者を多数動員することが可能になっていると見られている
hacktivist5.jpegかつては、攻撃企画側は報酬用資金を事前に準備する必要があったが、資金力が無くてもソフトウェアの開発能力に優れる者は、ランサムウェアで身代金を獲ることができるので、それを前提にサイバー攻撃の請負・代行者(傭兵)を集めることも可能となる。このようにランサムウェアの普及で、サイバー傭兵の活用やサイバー攻撃代行に新しい傾向(元手は必ずしも必要ない)が生じたと言えよう

IT・サイバー技術者(ハッカー)は「権威や常識にとらわれず、組織の枠にも、はまらない」と述べたが、彼等は自由な情報交換と知識の共有のため非合理的な官僚主義を忌避し、政府や体制に対する批判勢力を形成することがある。その代表的なものの 1 つが、ウィキリークス(WikiLeaks)である
この運動が攻撃代行的なサイバー傭兵と大きく異なるのは、経済的利益(報酬)の追求が動機ではない点にある。つまり彼等は報酬を得ることを目的としておらず、主に行政機関や大企業を対象に、不正や理不尽に関する情報入手し、ネット上で世に告発するという懲悪義賊的な社会貢献を目指していた

注目を集めている集団に、「アノニマス」がある。これは不特定多数のハッカーが、「抽象的ではあるが誰もが賛同しやすい大義」の下に即興的に集まったもので、主にDoS/DDoS 攻撃を実行する。その中核ハッカーの技量は相当高いと見なされるが、不特定多数のハッカーを即興的に集めることから、長期的・計画的な攻撃には向いていない。DoS/DDoS攻撃は攻撃手順も単純で、調整負担も軽くて済むので、即興的組織に適している

付和雷同型のハクティビスト集団は、膨大な人数が徒党を組むことがある。この性質を有する彼等を自らの思う方向に利用した世論の誘導・世論工作も行われている
hacktivist6.jpeg欧米のハクティビストの多くは自由主義的な反体制の政治思想を共有しているが、中国の場合には、特に 2000 年前後に活発に活動した集団(「中国紅客連盟」や「中国鷹派連盟」等)は愛国主義的な傾向を持ち、中国政府もその限りにおいて、外国に対するサイバー攻撃を行う彼等を泳がせていた。その活動が中国の大衆から支持され、「英雄」として祭り上げられたことも、活動の動機として大きな比重を占めていた

ハクティビスト集団は一般に、「不正・理不尽」を正すとの正義感を持っており、中国の集団も、外国は誤っており理不尽だと考えている。ただこの「不正・理不尽」の判断は各ハッカーが独自に行うので、集団の中でこの判断の差異が顕在化すると、集団そのものが瓦解する危険がある。実際にアノニマスも、内部では派閥争いが絶えず生じている。このため中国も習近平政権になってからは、ハクティビストへの監視・管理を強め始めたと言われている
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基礎知識が薄い分野ですので、長々と引用してしまいました。サイバーと宇宙については、なじみの少ない方が多いと思うので、防衛研究所には発信の頻度を上げていただきたいものです

Cyber-new.jpg「ハクティビスト集団」は信用できるのでしょうか? 2重スパイ・3重スパイ的に動き回る者や、ブローカー的な輩が暗躍しないかと心配になります

でもこのような人たちが、クリック一つで社会を混乱させることが可能な世界って何なんでしょうか?抑止の議論が可能なんでしょうか???

「ダークウェブ」との、闇の深い世界のお話でした

防衛研究所webサイト
http://www.nids.mod.go.jp/

サイバー関連の記事
「過去最大のサイバー演習を完全リモート環境で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-22
「海兵隊サイバー隊が艦艇初展開」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-08
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07
「米国務省のサイバー対策はデタラメ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-27
「やっとサイバー部隊に職務規定が」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-13
「喫緊の脅威は中露からではない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-16
「ハイブリッド情報戦に備えて」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-05
「ドキュメント誘導工作」を読む→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-22-1
「サイバー攻撃に即時ミサイル反撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-11-1
「NATOが選挙妨害サイバー演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-13
「サイバーとISR部隊が統合して大統領選挙対策に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「ナカソネ初代司令官が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-17
「大活躍整備員から転換サイバー戦士」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-3
「サイバー戦略がもたらすもの」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-02
「市販UAVの使用停止へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-07-1
「サイバーコマンドの課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-04
「サイバー時代の核兵器管理」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-02

「人材集めの苦悩」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-31
「米空軍ネットをハッカーがチェック」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-23
「米国政府サイバー予算の9割は攻撃用!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-31
「装備品のサイバー脆弱性に対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-02

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米空軍が間もなく250機目のF-35A受領で機種別3位へ [亡国のF-35]

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共同開発国別の受領数もお知らせ
FMS国については発注数や購入予定数をご紹介

misawa Elephant.jpg7月6日付米空軍協会web記事が、米空軍のF-35A受領数が9月前には250機となり、機種別機数で第3位の規模になると報じ、来春には第2位になる見込みだと「順調な」導入状況をアピールしています

また併せて、共同開発国の受領機数と、FMS国の発注機数や購入予定数を紹介しています

相変わらず維持経費の高止まり(第4世代機の2-3倍)と兵站情報システムALIS後継システム等の問題はそのままで、最近はコロナの関連で部品調達に支障があり、加えて酸素生成装置関連の問題発覚で「雷雲から25マイル以上離れて飛行」との制限が課せられている状況ですが、機数に関する現状の全体像をご紹介しておきます

6日付米空軍協会web記事によれば
●米空軍の状況
--- 合計で1763機を購入予定で、6月11日時点でで241機目受領
--- 毎月5機受領で、9月前には250機に到達し、機種別機数で第3位に
(米軍全体では、現在375機受領)
--- 米空軍の機種別保有機数
  1位F-16 938機、2位A-10 281機、3位F-35A 241機、4位F-15E 218機

●米海軍と海兵隊
--- 米海軍と海兵隊合計で693機を調達予定
--- 米海兵隊は現時点で、B型93機、C型13機
--- 米海軍は現在、C型28機

共同開発国の受領済機数
--- 豪州 A型26機、ノルウェー A型25機、英国 B型18機
--- オランダ A型10機、イタリア A型12機 B型3機

--- トルコ 米国内に6機所在も機体の扱い未定
     露製のS-400導入でF-35計画から排除されたが
     2022年までは133個の部品を引き続き製造担当
--- カナダ 88機購入予定だったが、策士の首相が決定引き延ばし中

●FMS国の発注機数や購入予定数 
 (国別機数は非公開も、現時点で59機を各国に提供済み
--- 日本 A型105機 B型35機
--- イスラエル 50機
--- 韓国 40機+α
--- ベルギー 34機
--- ポーランド 32機
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なお、トルコ用に製造し既にトルコ人操縦者や整備員要請に使用されていた、または製造中だった8機のF-35Aについては、米空軍が購入することが7月20日に明らかになりました。厳密にいうと約20機が何らかの製造段階に含まれていたようですが、8機については米空軍仕様にする改修費も確保されるとのことです

misawa Elephant 3.jpgご紹介している写真は、6月22日に三沢基地で実施された日米両空軍の戦闘機による大規模地上行進「Elephant Walk」の様子です

例年は、同基地に所属の米空軍だけで実施していたものですが、今年は12機の米空軍F-16やMC-130、海軍のEA-18GやP-8などに加え、航空自衛隊から12機のF-35Aが加わって大規模に行われました

中国に押されっぱなしですから、何とか「Show of Force」したかったのかもしれませんね

コロナの影響を受け、世界経済が縮小する中、各国のF-35購入数は、いつまで計画通りに進むのでしょうか? とりあえず2020年7月6日時点での統計でした

最近のF-35記事
「B型とC型が超音速飛行制限甘受」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-27
「元凶:ALISとその後継ODINの現在位置」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-17
「ボルトの誤使用:調査もせず放置へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-29
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03
「維持費削減:F-35計画室長語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-03
「同上:米空軍参謀総長が」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02
      
2015年にすでに明確に認識されていた部品不足問題
「ト大統領が部品製造国内回帰主張」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-13
「国防省F-35室長が問題視」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-10-1
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17

米トルコ関係
「トルコの代わりに米で部品製造」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-27
「トルコをF-35計画から除外」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17
「S-400がトルコに到着」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14
「米がトルコに最後通牒」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-09

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米戦略軍司令官が中露の軍事力増強と抑止を語る [Joint・統合参謀本部]

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ロシアは全戦力近代化を7割完了
中国は2020年代末には米国と同レベルに
中露それぞれに別々の抑止戦略が必要だとも

Richard2.jpeg7月30日、米空軍協会ミッチェル研究所でのオンラインイベントに米戦略軍司令官Charles A. Richard海軍大将が登場し中国やロシアの急速な軍事増強と近代化の状況を端的に紹介しつつ、中露それぞれに異なる抑止対処を迫られ、サイバーや宇宙での戦いも交えた抑止概念の再構築が求められていると語りました

同司令官は中国やロシアの軍事増強と近代化状況を非常に直感的にわかりやすく説明し、それに伴い戦略軍が担ってきた「抑止」の概念を、武力紛争に至る直前の「グレーゾーン」領域のとらえ方等を巡り、整理しなおす必要がある点を強調しています

DF-41.jpg「21世紀の抑止」が如何にあるべきかについては長く議論が続いており、この場でご紹介しただけでも4年ぐらい遡ることができます。しかし、だれが何を行っているのかさえ把握と立証が困難なサイバーや宇宙ドメインの重要性が高まり、SNS上での平時からの情報戦をも含めれば、国家目標を達成する手段の多様化とその抑止の考え方は極めて複雑になりつつあり、簡単に結論が出そうな雰囲気はありません

7月30日付米空軍協会web記事によれば同司令官は
●ロシアの戦力近代化について
--- ロシアは過去15年以上に渡りロシア軍のすべての側面の近代化を進めており、その範囲は、兵器など戦力の近代化に留まらず、ドクトリン、指揮統制、警報体制、訓練演習、即応体制の在り方等々にまで及んでいる

Russia-Navy1.jpg--- 同大将は「簡単に言えば、ロシアがどの分野で軍の近代化に取り組んできたかを説明するのは難しい。あまりにもその範囲が広範で多岐にわたることから、近代化を進めていない分野を挙げる方が容易だとも表現できる。基本的に全分野で近代化が進んでいるのだ」と語った
--- そして「ロシア軍の近代化は、トータルで約70%完了したと評価しており、米国に脅威を与える点で全側面にわたるステップアップがあったとみることができる」とも表現した

●中国は米国と肩を並べる勢い
--- 中国は2020年代末までには米国と戦略的対等レベルに至る道を進んでいる(on a track to become a strategic peer to the United States)
parade.jpg--- 中国は「息をのむほどの」軍事力増強を急速に進めてきており、2013年までは沿岸警備部隊を保有する決定さえしていなかったのに、今では255隻もの大艦隊を保有するに至っており、武力紛争未満での争いを勝ち抜く「完璧な装備」とも呼ぶべき戦力を整えている

--- 中国が今後取り組むリストには、核戦力、戦略的能力の強化がある中国は空中発射能力の導入を図ることで核兵器の3本柱を完成させつつある。また地上のサイロ式ICBMや移動式ICBM能力の近代化に投資している
--- 中国の急速な戦力整備は驚くべきものであり、常に米国よりも迅速に進めている。彼らはミニマムレベルの核抑止戦力保持方針を掲げているが、戦力の実態は、方針の言葉をそのまま信じられない規模である

●今後の抑止を考える上で
--- 米国の抑止戦略の基本に変化はなく、敵が得る利益よりも大きなコストを敵に負わせる体制の維持を目標としている。しかし、抑止戦力の使用や使用の可能性については変化しつつある。この変化をどのように把握し理解すべきかに取り組んでいる
Richard1.jpeg--- 米国は遠くない将来、2つの異なる同レベルの核兵器保有国と対峙することになるだろから、2つの異なる抑止策を考える必要に迫られるだろう。戦略コマンドはまた、サイバーと宇宙ドメインを抑止にどう組み込んでいくかについて、両ドメインへの戦略攻撃をどう定義するかについてと共に検討しているところである

--- 国はこのような状況に直面した経験がない。戦略軍は他の米軍と共にこの状況を分析している。しかし戦略レベルでの作戦は、通常戦力による作戦に影響を受けるものであり、武力紛争に発展する直前までのグレーゾーンまでを踏まえよく考える必要がある
--- (グレーゾーン付近は、)単純に階段を上るようには考えにくい。階段が壊れていたり、非線形であると考えなければならない。敵の意思決定における複雑な算段が、すぐさま我に影響を与え、危機状況においてはそれが顕著だろうと考えられる。米軍は統合戦力として、これについて共通認識を持てるよう取り組んでいるところである
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サイバーや宇宙ドメインへの影響は、発信源特定が困難でありながら、社会・金融・通信等インフラに甚大な混乱を引き起こす可能性を秘めており、民主主義社会の対処は意思決定プロセスを含め考えるだけで困難な状況が想定できます

一方で、市民社会を顧みる必要のない中国やロシアにとって、サイバーや宇宙ドメインは、いかにも手が出しやすい・操りやすいツールともいえましょう

senkaku4.jpgこれを日本から見ると事態はさらに複雑で深刻で差し迫っています。中国が尖閣を確保した場合に米国が動けるかに関する「尖閣デカップリング」とか「尖閣ジレンマ」とか呼ばれる(?)戦略問題に、日本は明日にでも直面する可能性があります。すぐそこのある危機ですよ・・・。Clear and Present Dangerです

21世紀の抑止概念を目指す
「米議会で専門家を交え中国抑止を議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-17
「3本柱はほんとに必要か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-22
「米戦略軍も新たな抑止議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「21世紀の抑止と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03
「新STASRT条約は延長の危機」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-21

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

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