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輸送機が新データリンクで数百倍データ通信高速化、でも [米空軍]

新データリンク試験でリアルタイム情報共有可能に
今までなかったのが不思議です・・・
今後これを普及させるのかは・・・

C-17 data link.jpg米空軍輸送コマンドの能力開発チーム長がインタビューに答え、6月6日に2機のC-17輸送機が参加した新型データリンクシステムの試験で従来との比較で「数百倍速い:hundreds of times faster」情報共有に成功し、米空軍が中心となり統合作戦のカギとして取り組む「統合全ドメイン指揮統制(JADC2:Joint All-Domain Command and Control)推進に乗り遅れないよう一歩前進したと語りました

6月6日の試験は、厳しい作戦環境下で地上部隊兵士を2機のC-17輸送機から降下させる想定で行われ、従来であれば作戦遂行の約20分前に無線交信で入手していた現場周辺の最新の敵情や作戦全体の進行状況を、移動中も継続的にデータリンク経由で入手できたようです

C-17 data link2.jpg新たなデータリンクの詳細は不明ですが、「商用衛星通信を使用した」、「高い周波数帯の使用で見通し外通信:through high bandwidth」、「少し異なったプロトコールで送信」、「高速データ処理のため搭載コンピュータを更新した」との変化で、「数百倍速い:hundreds of times faster」情報共有に成功したとのことです

今後は、より前線密着の空中給油機にもこの新型データリンクを搭載し、空軍輸送コマンドとして「JADC2」や「ABMS」に食い込んでいく計画のようです

2日付C4ISRNET記事によれば
米空軍輸送コマンドの能力開発チーム長Bradley Rueter中佐は、6月6日に試験した新型データリンクについて「輸送機搭乗員の状況認識を飛躍的に向上させたgamechangerだ」と表現した
C-17 data link3.jpg加州の州空軍が試験演習に参加した2機のC-17の搭乗員たちは、地上部隊兵士を降下させる任務遂行地点に向かう間も、戦闘地域での状況の変化を高い情報レートの通信によって継続的に把握することができた

Reuter中佐は、新データリンクにより「搭乗員は敵がどのように我々の任務遂行を阻害しようとしているかや、他の味方の行動や作戦の推移を的確に把握することができた」と試験演習を振り返った
また「試験に参加した搭乗員の中には、同様の演習想定で過去8回訓練した経験者がいたが、今回の演習では過去に経験がないレベルで状況把握ができた、と新データリンクの絶大な効果を振り返る者もいた」との証言も紹介した

一方で、新データリンク導入により新たな問題も明らかになっており、同中佐は高速のデータ通信が可能になったことにより、搭乗員が使用する「interface:情報表示装置?」が多量に入手した情報を適切に扱う設計になっていない問題が明らかになったと教訓を語った
C-17 data link4.jpg今後について同中佐は、米空軍が推進して統合で取り組んでいるJADC2に一歩近づくことができたが、来年はKC-135s, KC-46s 及びC-130s.でも搭載試験を行うと明らかにし、より大きなABMS(Advanced Battle Management System)構想に食い込んで行けるように進めたいと説明した

米空軍輸送コマンド司令官のMaryanne Miller大将は、「戦闘機が存在する場所には空中給油機(や輸送機)が必ず存在するが、我々のアセットも戦闘機と同じようなネットワークの恩恵を受けられるべきだし、我がアセットからもネットワークに有用な情報提供が可能になるべきだ」と述べている
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今年1月に空中給油機に通信中継装置を搭載して活用する検討についてご紹介しましたが、ハード面では問題がなく、予算面でもそれほど負担のかかりそうもない構想なのに、米空軍や統合作戦全体の中で煮詰まっていかない「いらだち」を米輸送コマンド関係者が吐露していました

今回の輸送機への新型データリンク搭載試験も、「JADC2」や「ABMS」との言葉は登場するものの、空軍輸送コマンド以外の「絡み」の部分が聞こえてこず、戦闘機を中心とする戦闘コマンドと、輸送機や給油機を運用する輸送コマンドの間には、依然として厚い壁があるような気がしてなりません

「遠方攻撃」を巡り、地上部隊と空軍の間に「すり合わせ」が全くない驚きの現状が明らかになって以来、米軍に関する心配は募るばかりです

「構想:空中給油機が通信中継ハブへ」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-11

全ドメイン指揮統制連接実験演習:ABMSとJADC2関連
「今後の統合連接C2演習は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-08-1
「連接演習2回目と3回目は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28
「米空軍の夢をCSBAが応援!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-24
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「空軍資源再配分の焦点は連接性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-08
「マルチドメイン指揮統制MDC2に必要なのは?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-24

遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「射程1000㎞の砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「中国対処に海兵隊が戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16

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新型空母フォードの計画責任者更迭 [Joint・統合参謀本部]

海軍長官に続き、史上最高価格の不調艦艇の犠牲者か
当初2018年運用開始予定が、今では2023年とも

Rutan.jpg7月1日、新型フォード級空母の1番艦空母フォードの空母プログラム責任者であったRon Rutan大佐が「職務パフォーマンス不良」を理由に更迭され、Brian Metcalf,海軍大佐が新たな責任者に任命されました

新型空母フォードは、米海軍艦艇としては史上最高の1兆5千億円もの建造費をかけた空母ですが、専門家が「多くの新技術を盛り込もうとし過ぎた」と評価する背景もあり、当初2018年に運用開始を予定していたものの数々のトラブルに悩まされて運用開始が大きく遅れています

それでも無理やり、F-35も搭載できず、弾薬運搬用のエレベーター装備の多くが非稼働状態でも、運用開始を宣言しようと準備を進めていましたが、大規模な航空部隊を搭載した「お披露目」的な6月頭の演習で、目玉である電磁カタパルトEMALSが故障して訓練中止を余儀なくされるなど、空母削減議論が進む中で厳しい状態に直面しています

Ford Navy3.jpg特にトランプ大統領がフォード級空母に厳しい視線を向け、過去2回「電磁カタパルトはだめだ。止めるように海軍に言っている」と発言し、2019年1月には「2019年夏までに兵器エレベーターを使用可能にしなければ海軍長官をクビニする」と告げ、実際にRichard Spencer前海軍長官を更迭しています

空母ルーズベルトのコロナ感染問題で辞任したThomas Modly前臨時海軍長官も、トランプ大統領から空母フォード問題を厳しく指摘されている様子を、「大統領は空母フォードに強い関心を持っており、大統領の懸念はもっともである。この空母はvery, very高価格で、稼働させる必要がある」、「数々の涙の果てに現在の状況があるのだが、史上最も高価なアセットは、今や米海軍は何をやっても駄目だとの象徴になってしまったいる」と語って危機感を表現していたところです

7日付Defense-News記事によれば
1日、空母フォードで新型空母「Program Manager」を務めていたRon Rutan大佐が、「職務パフォーマンス不良:performance over time」を理由に更迭され、「Naval Sea Systems Command」スタッフへの転勤を命ぜられた
Ford Navy.jpg米海軍の関連声明では「リーダーの交代時期に完璧なタイミングはないが、この困難な時期に、空母フォードチームをリードする新たなエネルギーが必要であると判断した。後任のMetcalf大佐は開発プログラム管理に熟達しており、空母フォードにとって大きな力となるだろう」と説明している

退役海軍大佐でコンサルタント会社の軍事専門家Jerry Hendrix氏は、「2005年に同空母建造が始まって以来に抱える多数の技術的問題と時間的遅れは、一つの新造艦艇にあまりに多くの新技術や装備を盛り込もうとしたことから生じているが、Rutan大佐の更迭は、同空母の問題が依然として混乱した状態にあることを示している」とコメントしている
更にHendrix氏は、「明らかに同空母が抱える問題は、空母乗艦の大佐一人の管理の範囲をはるかに超えており、米海軍としては新たなアプローチを期待してのことだろう」、「空母フォードの問題はあまりにも大きすぎる」と述べている
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記事は空母フォードの運用開始時期について、「2023年までに運用開始するとは考えにくい:but now will likely not deploy until 2023」と表現しています

Modly.jpg空母ルーズベルトのコロナ問題で退任させられたModly海軍長官の言葉、「(空母フォードは)今や、米海軍は何をやっても駄目だとの象徴になってしまったいる: a metaphor for why the Navy can’t do anything right」との言葉が重く響きます・・・

米海軍はどうなるのか・・・

フォード級など米空母関連
「お披露目演習でEMALS故障」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-12
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇案!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「半年かけて空母の将来像を至急検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-12
「レーザー兵器搭載に自信」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-05
「国防次官が空母1隻とミサイル2000発の効果比較」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-20
「空母フォード:3年遅れで米海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-03
「米海軍真っ青?トランプ「EMALSはだめ」」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-13
「空母を値切って砕氷艦を!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-19

「フォード級空母を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20
「解説:電磁カタパルトEMALS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10

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F-35新型シム装置で他基地他機種ともシム訓練可能に [亡国のF-35]

現時点でF-35、F-22、F-15、F-16、E-3が参加可能
米海軍、海兵隊、英空軍も導入方向もNetwork相違がネック

DMT.jpg1日、ロッキード社のF-35訓練担当副社長Chauncey McIntosh氏が会見し、F-35用の新たなシム訓練装置DMT(Distributed Mission Training system)をネリス空軍基地に正式納入し、これまでの同一基地内4つのシム装置しか連接できなかった状態から、他基地のF-35のほか、F-22、F-15、F-16、E-3シム装置も連接して、本格的な厳しい環境を想定した大規模訓練がバーチャル環境で可能になったと発表しました

本来なら4月に納入予定がコロナの影響で準備が遅れ、6月18日にネリス基地のF-35シム装置と複数の他基地のF-22、F-16及びE-3シム装置を連接した試験に成功し、6月22日に米空軍戦闘コマンドACCに正式納入できたとの事です

DMT3.jpg過去記事の話も総合すると、DMT導入により、他の各基地から最大4機分のシム装置が連接可能で、連接可能基地はネットワークがつながる限り制限はないようです。ただし、連接できる機種は現時点でF-35、F-22、F-15、F-16、E-3のみで、今後対応可能機種の拡大に取り組むようです

McIntosh副社長によれば、次のステップとして、共に加州にある米海軍のNaval Air Station LemooreにDMTを今年秋、海兵隊のMiramar基地には来年春に納入する計画で、英国も導入の方向です

一方、昨年12月の時点で同副社長は、「米空軍以外は各軍種や国ごとにネットワークの仕組みが異なることから、米空軍のシュミレータと他軍種のシュミレータを現時点で連接はできないが、国防省F-35計画室とロッキード社は、更なる連接範囲拡大に向けたスケジュール検討を行っている」と述べており、この点に関する対応も並行的に進んでいると推測します
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DMT2.jpg米空軍のネリス以外の基地にもDMT関連装備を今後整備する必要があるのか、今の状態で米空軍既存ネットワークを介して他基地他機種のシム装置と連接可能か等々、疑問もたくさんあるのですが、調べる気力がなく、このあたりで・・

F-35の飛行時間当り維持費が、第4世代機の2-3倍ということですので、実飛行訓練のシュミレータ訓練への置き換えが加速すると予想しますが、日本はどうなんでしょうか?

また、あまりにF-35の能力が高いため、実環境で訓練環境を準備できない問題も長く議論されており、その点でもDMTへの期待は大きいものがあります

5世代機とバーチャル訓練
「DMT構想について」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-06
「米空軍が人工知能シム訓練アイディア募集」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-26
「5世代機のため訓練エリア拡大要望」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-12-09-1
「5世代機の訓練はシムと実機併用で」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-11-24-1
「シム訓練でF-22飛行時間削減へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-11-1
「F-35SIM連接の課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-05
「移動簡易F-35用シミュレーター」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-02
「5世代機はバーチャル訓練で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-28-1

F-35維持費の削減は極めて困難
「国防省F-35計画室長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-03
「米空軍参謀総長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1

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米海軍が就航約10年の沿岸戦闘艦4隻を格納保管へ [Joint・統合参謀本部]

鳴り物入りで導入の沿岸戦闘艦を経費節減で退役へ
初期型で大規模紛争仕様への改修が高価で断念

LCS-2ship3.jpg6月20日付の米海軍作戦部長(米海軍制服トップ)名の文書で米海軍は鳴り物入りで導入した沿岸戦闘艦LCS(littoral combat ship)の1番艦から4番艦を、費用対効果や経費節減のため、2021年3月31日をもって非稼働状態として保管体制(mothball)に置くと明らかにしました

海軍の新造初期艦の使用要領に熟知していませんが、初期型の艦艇は乗組員の必要数など運用の細部を煮詰めるため、または量産型の細部仕様を具体的に検討する試験艦的な性格を持つことから、今後も試験用途で使用されるものと考えられていましたが、今後予期される本格紛争に投入するレベルに改修する投資が高価になることから、このような決断に至ったということです

LCS-2ship2.jpgしかしそれでもです、1番艦から4番艦は、就航からそれぞれ12年、10年、8年、6年しか使用しておらずイージス艦より小型(3000トン級)で安価(700億円程度)とは言え、ちょっとそれは・・・と多方面から待ったがかかりそうな決定です

沿岸戦闘艦LCSは導入までのゴタゴタで、それでなくても「いわくつき」装備品です。機種選定で散々もめた挙句、2機種(2艦首)とも採用するという前代未聞の決定がなされ、General Dynamics社の「Independence型」とLockheed Martin社の「Freedom型」が、計55隻導入の構想で、それぞれ10隻程度納入済です

更に、1番艦が就航したのが2008年8月(Freedom型)ですが、この頃から中国の脅威が叫ばれ始め、LCSのような小型で小回りの利く多用途任務艦艇(掃海、対潜水艦、対艦任務など)では本格紛争に耐えられないとして、3000トンクラスの船に追加装備を行うなど当初の構想とは違う方向に進んで価格が高騰していることも踏まえ、総調達隻数の削減が何度も話題に上ってる艦艇です

1日付Defense-News記事によれば
LCS-Inde-Free.jpg米海軍の予算担当次官補代理であるRandy Crites少将は、4隻(Freedom, Independence, Fort Worth and Coronado)を任務から外して格納保管することで、維持費や他の同型艦レベルへの改修経費を削減し、他の装備近代化や艦艇建造費に充てると説明した

「これら4隻は、乗員数や整備所要見積もりなどの艦艇運用に関する諸元を煮詰めるための艦艇で、5番艦以降の艦艇ほどには搭載装備品が充実していない。そのため他の艦艇と戦闘システムや構造を同レベルにするには高価すぎる」と述べた
「この4隻は、その後に続いて建造されたLCSの成熟に重要な役割を果たした。しかし、これら4隻に改修費を投資することは費用対効果的に適切でなく、他の分野にその資金を回す決定を行った」とCrites少将は語った
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LCSindep.jpgこれが海軍世界で「よくあること」なのかどうか承知していませんが、6~12年しか使用していない戦闘艦艇をモスボール保管とは、米海軍の厳しい台所を象徴する決断と言えましょう

米議会とか、専門家等から色々出るでしょうから、眺めておきましょう。米空軍にもありますねぇ・・・初期型のF-35とかF-22とか

沿岸戦闘艦LCS関連の記事
「LCSに前倒しで衝撃耐久テスト」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-06-17
「国防長官がLCS当面削減指示」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2015-12-18
「LCS調達隻数を巡る激論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-20
「LCS批判に反論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-23
「F-35化する沿岸戦闘艦LCS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-09

「星国防相がLCS配備検討を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-10
「LCS機種選定泥沼」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-24
「次世代の米艦艇LCS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-31

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トランプ大統領が米砕氷艦計画の再評価指示 [安全保障全般]

蒸し暑いので、涼しげな話題を
北極圏への覇権争い激化の中で
実質稼働砕氷船が1隻しかない米国が露中に対応

polar security cutters3.jfif6月9日、トランプ大統領が関係省庁(国防、国務、国土安全保障、商務省と予算管理室)に、現在進みつつある3隻の大型砕氷艦(PSC:polar security cutters)建造計画に関し、予想される様々な任務を踏まえ、本当に現在の計画が最適かどうか60日間で見直すように「Memo」を発出した模様です

北極海の氷減少に伴い、ロシアのみならず中国までもが北極圏での活動を強化し始め、ロシアが原子力推進6隻を含む10隻程度の外洋航行砕氷船(合計では50隻との統計も)を、プーチンの大号令の下、20隻体制に増強を進める一方で、米国は建造から40年以上経過した老朽の大型砕氷船「Polar Star」と中型の科学調査用砕氷船「Healy」しか保有がなく、共に2029年には廃艦予定で、実質唯一使用可の「Polar Star」も年間6か月間の稼働が精いっぱいのなさけない状態です

Arctic ship.jpgそんな中、沿岸警備隊やアラスカ選出議員の長年にわたる砕氷艦建造要望が少し実を結び、2019年4月には40年ぶりに大型砕氷船(PSC:polar security cutters)を約810億円で契約し、2021年度予算にも2隻目を要求して3隻建造計画がスタートしたところです

トランプ政権は北極海への関心を最近強めているといわれ、大統領は空母を減らして砕氷艦だと沿岸警備隊士官学校卒業式で述べたこともありました。「Memo」の背景がどこにあるのかは細部不明ですが、砕氷艦の話題は2017年以来放置していましたので取り上げます

9日付Defense-News記事によれば
9日付の大統領からの「Memo」は、まだ契約に至っていない大型や中型のPSCが備えるべき能力と必要なコストに関する、より広範な視点からのアセスメントを求めており、60日間で行うよう要求している
polar security cutters.jfifそして「Memo」は、現在計画されている3隻の中型PSC計画に関する変更を示唆しており、北極圏の資源探査や開発、海底ケーブルの敷設や維持整備などを含むより広範な安保&経済任務を想定した整備体制見直しを求めており、中型PSCだけでなく大型PSCでのケース分析も期待している模様である

いろいろケースでの分析を踏まえ、「Memo」は最適なPSCタイプの組み合わせや数量を見極めるよう求め、北極圏での永続的なプレゼンス維持と、南極圏での活用も視野に入れた方向性を追求しようとしている
「Memo」はまた、米国砕氷艦の拠点として米国内2か所と国外2か所の選定を求めており、今年度の国防授権法で求められている北極圏内1か所選定に続く拠点整備の動きである

polar security cutters2.jfif現在の砕氷艦3隻体制構築計画は、現有の2隻の砕氷艦が廃艦になる20209年完成を目指しているが、トランプ政権の危機感は、ロシアだけでなく、特に中国が北極圏に強い関心を示し始めていることから来ていると、カーネギー国際平和研究所のErik Brattberg欧州部長は見ている

砕氷艦をリースで借りる手法についても繰り返し話題になるが、現時点で候補国としてCanada, Finland、Swedenの3か国があり、各国が対応可能とのシグナルを出しているが、特定の一時的な任務を想定したレンタルなら利用可能性があるが、様々な任務と環境が想定される中では、現実的な選択肢ではないし、費用面でも高価になるとして、沿岸警備隊関係者は反対してい
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ロシアの20隻体制と比べると、米国の3隻体制は寂しい限りですが、これが現実、現在位置です

Arctic2.jfif中国は砕氷艦の建造以外に、「一帯一路」構想の下、北極圏周辺地域に経済進出を試みており、例えば欧州の主要港湾の10%mの貨物スペースは中国企業が抑え、デンマークからの独立運動が起こりつつあるグリーンランドのかつて米軍基地だった土地への入札や飛行場建設入札に中国企業が食い込んだりと、油断も隙もありません

加えて、昨今のコロナ&人種問題に端を発する米国内の混乱に乗じ、様々に侵食を試みていることでしょう・・・・

北極に関する話題
「グリーランドに中国企業」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08-4
「北極航路ブームは幻想?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-13

北極圏:米国防省と米軍の動き
「米空軍2トップの寄稿;北極圏と米空軍」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-13
「トランプ:空母削って砕氷艦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-19
「米国砕氷船実質1隻の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-16-1
「米軍北極部隊削減と米露の戦力差」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-02
「米軍C-17が極地能力強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-02
「北極海での通信とMUOS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-25-1
「米国防省の北極戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-23-1
「米海軍が北極対応を検討中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-20

ロシアの北極圏活動
「ロシアが北極圏の新しい軍基地公開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-30
「露軍が北極に部隊増強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04-1
「露が北極基地建設を加速」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-09
「ロシア軍が北方領土に地対艦ミサイル配備へ」 →http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-26

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戦闘機用自己防御レーザーから事実上撤退か? [米空軍]

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当初計画では2021年に飛行試験予定を2023年に
当初から小型化(出力)と振動対処が課題で克服困難か
無人機対処レーザー兵器が優先課題の模様です

SHiELD2.jpg6月30日付Defense-Newsは、米空軍研究所が進める戦闘機に自己防御用レーザー兵器を搭載するる「SHiELD」計画について、当初は2021年に初の飛行試験(F-15で)を行う予定だったが、コロナの影響や技術的課題から、2023年まで遅れるとの開発責任者の発言を報じました

一方、開発責任者が単に「遅れる」と述べたのに対し、米空軍の新装備調達を仕切る高官が、レーザーを含むエネルギー兵器の活用法については再考が必要で、戦闘機への搭載に消極的な発言をしていることから、「計画消滅」の雰囲気さえ出てきました

戦闘機に自己防御レーザー兵器を搭載する「SHiELD」計画(Self-Protect High Energy Laser Demonstrator)は、2016年ころから本格化し、2019年には地上からの発射で飛翔するミサイルの迎撃試験に成功したとのニュースで盛り上がりましたが、その時点でも、必要な出力のレーザー兵器の小型化と、戦闘機の振動の中でのレーザー生成や照準が依然として大きな課題であると言われていました

SHiELD.jpgレーザーを含むエネルギー兵器には比較的安定した予算確保が出来ており、「SHiELD」計画では、レーザー生成をロッキードが、ビーム制御をNorthrop Grummanが、そして戦闘機(試験ではF-15使用予定だった)搭載用のポッドをボーイングが担当する強力な体制が組まれていました

しかしここにきて、無人機対処用のニーズが大きくなり、技術的にも難しい航空機搭載用のレーザーは自己防御用も含めて厳しい立場に置かれているようで、そんな雰囲気が漂う高官の発言を中心にご紹介します

6月30日付Defense-News記事によれば
6月10日、米空軍研究所AFRLで「SHiELD」計画責任者のJeff Heggemeier氏は、「これは非常に難しい技術融合を伴うプロジェクトで、レーザー技術の成熟度合いを示すことが目的だが、コロナの影響もあり、2年遅らせることになった」と述べた
また「小さな航空機搭載用のポッドに様々なパーツを詰め込むことが非常に難しい。いま実用化に向けて期待されているレーザー兵器は、そのような難しさのない地上配備型であることを考えて頂きたい」とも述べ、技術的ハードルが高いことを示唆した

Roper.jpgHeggemeier氏の発言の雰囲気とは異なり、米空軍の新規装備f導入を仕切るWill Roper次官補の見方はより厳しく、6月9日には「SHiELD開発チームには、話し合いをしよう」と告げていると述べ、「夢見ている出力レベルとは異なる段階にあることを理解しなければならない」と表現した
そして Roper次官補は無人機対処の重要性と高い優先度について言及し、「レーザーがまず目指すべきは、単純な作りだが重要で恐れるべき脅威となっている小型無人機だ。これら無人機をいちいちミサイルで撃ち落とすわけにはいかない」「これこそレーザー兵器が成熟すれば対処すべき脅威だ。我々は出力向上を目指している」と語った

更に戦闘機搭載レーザーに関し、「SHiELD計画は装備化を前提としたプロジェクトではない。レーザー兵器が航空機に搭載可能なほどに成熟しているか、技術的課題をクリアーしているかを見極めることが目的のプロジェクトだ」とまで述べた
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SHiELD3.jpg辞任を表明したGriffin技術担当国防次官は、ミサイル防衛用の航空機搭載レーザー兵器の実現可能性について、「極めて懐疑的だ:extremely skeptical」ときっぱり語って摩擦を起こしていましたが、戦闘機搭載自己防御用レーザーも、今後しばらく、もしかしたら今後一切話題に上ることはないかもしれません

AC-130など大型装置が搭載可能な機体となれば、地上配備型レーザー兵器成熟を受け搭載の可能性はあるのでしょうが、無人機や無人機の群れ対処用のエネルギー兵器開発が優先投資の対象と考えてよいでしょう

SHiELD計画関連の過去記事
「F-15用自己防御レーザー試験」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-04
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21

無人機対処にレーザーや電磁波
「国防省として無人機対処策を絞り込む」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-14
「米軍のエネルギー兵器が続々成熟中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-30-1
「米空軍が無人機撃退用の電磁波兵器を試験投入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-27
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-05
「2021年に米艦艇にHELIOSを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24
「レーザーは米海軍が先行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24

エネルギー兵器関連
「米空軍が無人機撃退用の電磁波兵器を試験投入へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-27
「米陸軍が50KW防空レーザー兵器契約」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-05
「米艦艇に2021年に60kwから」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-24
「F-15用自己防御レーザー試験」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-04
「エネルギー兵器での国際協力」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-27
「エネルギー兵器とMD」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「レーザーは米海軍が先行」[→]https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24

「無人機に弾道ミサイル追尾レーザー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-17-1
「私は楽観主義だ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-23
「レーザーにはまだ長い道が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-18
「AC-130に20年までにレーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-06

国防省高官がレーザーに慎重姿勢
「国防次官がレーザー兵器に冷水」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-12
「米空軍大将も慎重」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-24

夢見ていた頃
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
「米企業30kwなら準備万端」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「米陸軍が本格演習試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14-1

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米陸軍は差別撤廃に昇任審査書類から写真廃止 [Joint・統合参謀本部]

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エスパー国防長官の差別撤廃検討会設置を受け
米空軍や沿岸警備隊は既に写真添付なし
どこまで進むんでしょうか・・・?

McConville.jpg6月24日、Ryan McCarthy米陸軍長官とJames McConville陸軍参謀総長が連名の指示を発出し、8月1日以降、対象者の「見た目(人種など)」から生じる恐れのある意識・無意識の差別をなくすため、米陸軍士官の昇任審査に用いる書類への写真掲載をやめると宣言しました

事の発端は、18日にエスパー国防長官がビデオメッセージを発表し、米軍内の差別撤廃に向けた取り組みを検討する第3者的検討委員会「Defense Advisory Committee on Diversity and Inclusion in the Armed Services」を設け、半年程度で提言をまとめると表明し、最初の取り組みとして「昇任、指揮官選抜、入校者選抜書類からの写真の撤廃」が有力な対策案だと述べたことにあり、米陸軍が素早く反応したようです

Esper.jpg米陸軍の写真撤廃決定に先だち、22日から教育訓練担当陸軍中将が非公式にツイッター上で、写真廃止の是非についての意見を求めたところ、24日時点で投票者3200名の75%が写真廃止に賛成意見を投じたことも後押しになったようですが、エスパー長官自身が前任の陸軍長官時に写真廃止を検討していたことも陸軍内の素早い判断につながったようです

記事によれば、以前から米空軍と沿岸警備隊は同種書類に写真を添付しておらず、米海軍や海兵隊の状況が気になりますが、以前から写真掲載について差別を誘発するとの意見もあった事も含め、米国社会の大きな波の中で、米軍及び米国防省としての取り組みをお知らせしておきます

25日付Military.com記事によれば
McCarthy2.jpg24日付の陸軍長官と参謀総長のメモは、「米陸軍の強さの根源は我々の多様性にある。能力を伴い人種的に多様性を持ったリーダーシップを追求し維持することは、効果的な任務遂行に不可欠であり、国家安全保障の欠かせない」と記している
併せて下士官の昇任関連書類から写真を取り除く事についても、8月から検討を開始し、2021年9月までに結論を得ると同メモで明らかにした

米空軍や沿岸警備隊では既に写真掲載を求めていないが、昇任審査書類における写真は、フィットネス状況や制服の着こなしなどを見る意味で必要だとして、米陸軍では求められてきた
写真添付に反対する者は、写真が白人優位を助長するとか、軍人リーダーのステレオタイプな見方が無意識のうちに影響し、白人以外の人材への評価に影響を与える等を反対理由に挙げている

McConville2.jpg18日にエスパー国防長官が第3者的検討会「Defense Advisory Committee on Diversity and Inclusion in the Armed Services」設置を明らかにした際、まず最初に取り組みたいこととして、この写真添付廃止を例として取り上げていた
この件に関しては、現役及び予備役の陸軍幹部からSNS上で写真廃止に賛成する発信が相次ぎ、「その人の才能や能力について、写真から判断できることは何もない」等のメッセージであふれている
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エスパー長官が設置する検討会では、恐らく心理学者による「写真が昇任審査員に与える悪影響」等の実験結果や関連論文が吟味されるのでしょう。でも写真によって、その人物を思い出す審査員もいるでしょうし、部隊レベルの選抜では写真の意味はあると思うのですが・・

BLM.jpg写真があることで、あの現場で活躍していた人物だ、名前は知らなかったが同席した会議で素晴らしい意見を述べていた、名前は知らなかったが地域コミュニティーのリーダーとして地域社会から尊敬されているとか、名前は知らなかったが活躍を目にしているケースなど、文字情報だけでは分からない情報を提供してくれるのでは・・・とおもいます

米国や欧州を中心とした、「人種差別」問題に対する運動は、歴史上の人物の銅像引き倒しに発展していますが、6月25日にはキリスト像を撤去する動きにも発展したところがあるようで、何が何だかよくわからない印象です。外部からの力の作用を懸念しています

次の米空軍トップ(黒人)が自身の軍経験を振り返り、人種差別問題を語る
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-06-1

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専門家寄稿:米空軍は兵器庫航空機を追求するな [米空軍]

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「Stand-in」と「Standoff」の適切なバランスが不可欠
CSBA研究員や国防省戦力変革担当経験者が米空軍に意見
ステルス爆撃機B-21の増強に注力せよと

Gunzinger2.jpg6月18日付Defense-Newsに、CSBA研究員も兼務するミッチェル研究所のMark Gunzinger部長が寄稿し、中国による攻撃能力や射程距離が増す中、対抗する米軍が如何なるバランスで遠方攻撃能力を保有するかについて米軍内で様々な動きがあるが、米空軍は輸送機等から長射程兵器を投下するような検討は止めるべきだと主張しています

筆者は、コストが高い長射程兵器を、有事に需要の多い輸送機から投下したり、新たに開発するステルス性のない兵器庫航空機(arsenal plane)から発射するのではなく、突破型のB-21ステルス爆撃機から安価な兵器を敵目標近傍から投下する方が、より現実的で費用対効果も高いと主張しています

B-21.jpgまた、長射程兵器を米陸軍や海軍、更には海兵隊まで導入を検討している中、同じような性格を持つ「standoff」兵器使用を米空軍が追求することへの疑問も、元B-52教官パイロットだったGunzinger氏は主張しています

Gunzinger氏は、輸送機(C-17やC-130)や兵器庫航空機(arsenal plane)から「standoff」兵器を使用することを5つの点から不適切だと主張し、数万個と言われる大規模紛争での攻撃目標数を考えるとき、ステルス性を持つ突破力のある爆撃機の不足解消に集中して米空軍は取り組むべきだと述べています

Gunzinger5.jpgご覧いただく際の注意点は、遠方攻撃(Long-range strikes)には、ステルス長距離爆撃機による「Stand-in strikes」と巡航ミサイルなど長射程兵器を用いた「standoff strikes」の2つが存在するという点です

同氏は大佐で米空軍を中途退役していますが、現役中は空軍司令部から国防長官室に引き抜かれ、2006年QDR取りまとめや戦力変革検討を行って国防長官賞を授与され、後にホワイトハウスのNSCスタッフも務め、退役後のCSBAではエアシーバトル報告書をまとめたメンバーの一人で、単に元爆撃機操縦者としてB-21増強を主張しているのではないとも感じますので、ご紹介しておきます

Mark Gunzinger氏の寄稿文によれば
Goldfein米空軍参謀総長が、数多くのウォーゲームやシミュレーション結果から、米軍が将来想定される大規模紛争に勝利するには、遠方攻撃(Long-range strikes)における「Stand-in strikes」と「standoff strikes」の適切なバランスが不可欠だと主張していることを忘れてはいけない
B-21 bomber.jpg今日の戦力構成は適切なバランスを失っており、僅か20機のB-2爆撃機を除いては、米軍の遠方攻撃能力は「standoff strikes」に依存している。だから国防省がB-21を優先事業として推進しているのだ

●輸送機や兵器庫航空機からの遠方攻撃の問題点5つ
1.輸送機や兵器庫航空機から遠方攻撃(Long-range strikes)を行う場合は「standoff」兵器を使用することになるが、B-21爆撃機導入を犠牲にし、「standoff」兵器に過剰投資して「Stand-in strikes」と「standoff strikes」のアンバランスにすることは不適切米陸海軍が「standoff」兵器導入に動く中、なおさら許容できない
2.有事において戦力の分散運用を追求するためには輸送機の役割が重要になるが、輸送機に攻撃任務を付与することで輸送力をそぐことになる。有事には民間機の動員も視野にある中、軍用輸送機に余裕はない

Gunzinger4.jpg3.輸送機や兵器庫航空機はより遠方からの兵器投下を強いられることになるが、長射程の「standoff」兵器は大型化して航空機への搭載量が減り、弾頭の大きさも制約を受けて攻撃対象が限定されることから、様々な面で攻撃作戦に支障をきたす。これに対してステルス爆撃機は、敵目標に接近することが可能で、安価で破壊力のある兵器を大量に使用することができる
4.「standoff」兵器への過剰な依存は、1目標当たりの攻撃コスト面で受け入れがたい。一般的な長射程兵器は1億円以上し、最も安価な極超音速兵器でも2-3憶円と予想されている。一方でJDAMは500万円以下である。次世代「standoff」兵器はもちろん重要だし必要だが、数千・数万の攻撃目標が想定される中で、「standoff」兵器への過剰依存は大きな負担となる

5. 輸送機や兵器庫航空機の活用は、安価で迅速な選択肢に必ずしもならない。C-17の生産ライン立ち上げだけで数千億円が必要だろうし、新たな兵器庫航空機を開発するとなれば過去の経験から開発と試験で6年、更に運用開始まで3-4年は必要だろう。つまりB-21が相当数配備されるまで、新たな兵器庫航空機は使用できない計算となる

b-1b.jpg過去30年間で米軍全体の遠方攻撃能力は減少を続け、米空軍の爆撃機はその歴史上最小規模(76機のB-52、62機のB-1、20機のB-2)となっているが、米軍として最も費用対効果の高い攻撃オプションを確保しておくことが、戦場指揮官の多様なニーズに応えるオプションを提供するために必要ではないだろうか
米空軍はB-1やB-52爆撃機を兵器庫航空機として保有しており、これ以上は必要ない。米陸海軍が遠方攻撃用の「standoff」兵器に投資を始める中、米空軍は重複投資を避け、バランスを考慮して「stand-in」戦力に焦点を絞るべきである
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Gunzinger氏の本件に関するレポート(53ページ)
https://a2dd917a-65ab-41f1-ab11-5f1897e16299.usrfiles.com/ugd/a2dd91_4f2e5df4b4b2464ca6d50d0dcd9ea04f.pdf

ステルス爆撃機であるB-21は、1機550億円以下として100機程度の調達を機種選定の前提としていましたが、米空軍は170機以上が必要だと主張し始めています

Gunzinger氏の主張する費用対効果の高い遠方攻撃(Long-range strikes)の費用面に、B-21の機体価格が含まれているのか定かではありませんが、本格紛争時には4万から6万の目標を攻撃する必要があるとの事ですので、「standoff」兵器偏重はありえないと言うことなのでしょう

Goldfein米空軍参謀総長は、陸海軍の遠方攻撃への投資を批判的に述べて、「Stand-in strikes」と「standoff strikes」のバランスの必要性を主張していましたが、Gunzinger氏は陸海軍の投資方向には口を出さない姿勢であり、このあたりの違いも興味深いところです

輸送機や兵器庫航空機からの遠方攻撃を、誰が「検討せよ」と言っているのかよくわかりませんが、今後の陸海海兵隊も交えた遠方攻撃(Long-range strikes)分担議論を見る上での一資料としてご覧いただければ幸いです

Gunzinger氏の経歴概要
https://csbaonline.org/about/people/staff/mark-gunzinger

輸送機や兵器庫航空機関連の記事
「輸送機から誘導兵器投下試験」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-01
「米空軍は弾薬庫航空機を継続検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-05
「カーター長官が17年度予算案で表明」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-02-03
「弾薬庫航空機に向け改修」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-13

遠方攻撃に傾く米軍地上部隊
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「射程1000㎞の砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「中国対処に海兵隊が戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16

米空軍トップが遠方攻撃に物申す
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22

ブログ「東京の郊外より」支援の会を立ちあげました!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

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https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

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