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米宇宙軍初の攻撃兵器CCSが初期運用態勢 [サイバーと宇宙]

衛星通信妨害兵器のようです
改良型バージョン10.2が運用態勢確立

CCS.jpg8日付C4ISRnetは、米宇宙軍の最初の攻撃型兵器であるCCS(対衛星通信システム:Counter Communications System)の第2世代型(Block 10.2)が、3月9日に初期運用態勢を確立したと報じ、細部は非公開ながら能力が向上し、更なる能力向上型の開発も始まっていると紹介しています

CCSは、「Harris Corporation」が「L3Harris」と協力して初期型(Block 10.1)を当時の米空軍に2004年に納入したもので、今回の第2世代型(Block 10.2)への能力向上も同じ2社が担当したようです。

公開情報がほとんどない装備品で、世界の軍装備品の性能等をまとめているSecure World Foundationが発表している「2020 Global Counterspace Capabilities」レポートでも、「対象の周波数レンジ、出力レベル、波形等々の公開情報が全くない」と記し、かろうじて推定情報として「C-,Ku- and X-band周波数帯への妨害を行い、主な目標は静止軌道にある衛星との通信だろう」しているようです

以下では、第2世代型が3月9日に初期運用態勢を確立したことに関する、関連企業関係者の言葉をご紹介します

8日付C4ISRnet記事によれば
CCS2.jpg「L3Harris」社の宇宙局責任者のPraveen Kurian氏は、「これは基本的に機動展開可能な通信妨害システムで、多様な任務に活用できるプラットフォームと考えていただいてよい」、「対象目標に恒久的なダメージを与えるのではなく、一時的に通信を拒否するものである」と表現し、初代型より能力が向上しているとも語った
創設されたばかりの米宇宙軍も、この装備を宇宙軍初の攻撃兵器だと讃えている。装備品の性格上、装備の細部については明らかにされていないが、宇宙軍は「移動可能で、一時的に敵能力を拒否して宇宙コントロール効果を得る電子戦装備の一つで、全てのタイプの紛争に使用可能だ」と表現している

●Kurian氏はまた、「第2世代型(Block 10.2)は大幅に実施できる任務の幅と能力を拡大した。更に輸送容易性も第1世代と比較して向上した」とも語っている
「L3Harris」社は既に第2世代型(Block 10.2)に続く、「Meadowlands」と呼ばれる次世代の装置開発を開始している。第1世代から第2世代への近代化では、物理的に装置を小型化する取り組みはなかったが、「Meadowlands」では大幅に装置の大きさを縮小することが検討されている、とKurian氏は語った

「ただ次世代の「Meadowlands」は第2世代型(Block 10.2)の後継を狙っているのではなく、2つを併用してより幅広い能力を提供したいと考えている」とKurian氏は説明した
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CCS3.jpg新装開店の宇宙軍は、様々な視点からアピールを試みており、コロナ報道に埋没ぎみですが、「Space Force」との単語が軍事メディアではコロナに続いて登場している今日この頃です

宇宙軍には様々な課題があり、それを詳しく語る知見のないまんぐーすですが、一つだけ印象に残っているのは、Willson前空軍長官が退任直前に指摘していた「組織体系や管理要領など目の前の課題はもちろんいろいろあるが、一番大きいのは、宇宙軍の人材をどのように育てていくかであろうと思う」、

「宇宙軍として人材の育成を考えるとき、高校や大学を卒業した新卒者を宇宙軍の中でどのように育成していくかは大きな課題だ。多くの重要な宇宙軍のアセットは、一度打ち上げてしまえば直接触れることができなくなり、陸海空軍等とは全く異なる状態での勤務となるからだ」との言葉です。

「一番大きい宇宙軍の課題」
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-18

宇宙関連の記事
「画期的:衛星が推進力衛星とドッキングで延命へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-27
「怪しげなロシア衛星問題提起」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-04
「宇宙Fenceレーダー試験開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-12-1
「同盟国にも宇宙関連訓練を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-21-2
「アジア太平洋での宇宙作戦が困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-10-1
「再び同高官が指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-26
「米高官が不審な露衛星を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-15

「Space Fence試験レーダー完成」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-29
「米空軍のSpace Fenceを学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-28

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5G企業に国防省大反対の周波数使用許可へ [サイバーと宇宙]

10年論争に大統領府が経済・政治面から決断か
国防商務内務運輸国土安全保障省NASA等の反対の中

Ligado5.jpg10日付C4Isrnetは、10年にわたり論争が続いていた民間5G企業「Ligado」に衛星通信用Lバンド周波数(1~2 GHz)の使用許可を与えるかについて、米国防省や多数の政府機関がGPSシステムへの電波干渉を懸念する中、判断する所轄のFCC(連邦通信評議会Federal Communications Commission)が、ホワイトハウス担当部署の強い後押しを受け、近く許可すると報じました

「Ligado」社は2010年に静止軌道に打ち上げた通信衛星SkyTerra-1等を使用し、全米のみならず世界をカバーする「5G」衛星通信網構築を狙っており、推進派の司法長官は「多数の地上局で全米の5G網を構築すれには10年間必要だが、雲や水滴に影響されないLバンド周波数を使用する衛星を活用すれば、地上局数を劇的に削減可能であり、18ヶ月間で構築できる」とその利点を説明しています

まんぐーすは技術的な知見がなく、この論争についてコメント困難なのですが、次世代通信の鍵を握る「5G」は中国企業ファーウェイが大きく先行し、米国は代替製品をエリクソン、ノキア、サムスン等との協力体制で打ち出そうとするものの苦労しており、米国通信業界からの電波使用要求を簡単に却下できない状況に追い込まれています

Ligado4.jpgアメリカファーストでコロナ打撃に苦しむトランプ政権からすれば、経済的にも政治的にも「5G」で他国の後塵を浴びることは耐え難く、10年の論争を何時までも放置して置けない状況にあります

以下では推進派・反対派の双方の意見を紹介するのですが、多くの試験や事前確認が行われているようで、推進派は十分事前確認は行ったし問題が出たら対応するとの姿勢ですが、反対派はリスクは排除されておらず、問題が出ても影響が広範膨大で実質的に迅速な対応が困難と主張しています

これは技術的な問題でなく、国防省を初めとする役所の官僚制から来る問題だと推進派は主張し、反対派は国家安全保障との間違いが許されない分野でリスクを犯すのか、車の自動運転や農業器具の制御、スマホやクレジットカード決済までが利用しているGPS信号を危険にさらすのか・・・との言い争いで、難しい問題です

推進派の主張
(ホワイトハウス経済部署、司法長官、FCC議長など)
5000時間もの各種試験や確認を行い、反対派が主張するGPSへの干渉問題は確認されていない
Ligado2.jpg反対派懸念派との意見交換を受け、Ligado社は電波出力の削減、使用周波数域の削減、許可された周波数以外への副次的電波放射量の極限措置などを行い、仮に使用後に干渉が生じた場合には関連部品の交換措置等も行う予定

これまでも、政府機関が独占使用する周波数帯の民間への開放問題は多数議論されてきたが、政府機関が干渉を恐れて強く反対してきた周波数においても、実際に開放されて過去に大きな問題となった周波数はない国家活動における民生分野の比重が拡大する時代の変化を政府機関は理解し、官僚的な閉鎖姿勢を改め、技術的な視点で議論に応じるべき
国防省を中心とした反対派は、あらゆる言い訳、遅延戦術、政治的根回しなどの本質的でない手段で、電波割り当て議論を妨害している

反対派の主張
(国防省、商務省、内務省、運輸省、国土安全保障省、連邦航空局、NASA、イリジウムなど)
様々な環境や用途で使用されているGPSへの干渉の可能性を否定できるだけの検証は行われておらず、リスクが厳然と残っている。国家安全保障の基礎を多様な形で支えるGPSを危機の淵に置く措置は許容できない
Ligado3.jpg最近だけでも、Lバンド使用許可に関する反対意見をまとめ、2016年3月に下院軍事委員会へ、2019年4月と11月に国防長官が、2020年2月には12の政府機関が連名で、3月には内務省と国防省連名で、Lバンド使用を許可しないように関係機関に申し入れ

推進派や企業側は、GPSへの干渉が発生する可能性がある旧式のGPS受信装置に影響が確認されたら影響を受けた装置の交換等で対応すると言うが、膨大なGPS装置をモニターすることはユーザーに大きな負担となり困難で、実行可能性のある対応ではない
2016年にニューメキシコ州の演習場で行われた実験で示されたように、Lバンド使用によるGPS装置への影響を把握分析するには膨大な時間と労力を要し、経費的にも不可能なのは明らかで、この結果を無視してはいけない

また企業側は、政府機関が使用するGPS装置への影響が出た場合にのみ言及しているが、車の自動運転や農業器具の制御、スマホやクレジットカード決済等々の広範な民生分野で使用されているGPS装置に影響が出た場合の問題について触れていない
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「Ligado」社への正式許可が間もなくだ、との複数の関係筋の証言から記事は始まっていますが、司法省や商務省では部署によって賛否が異なるドロドロ論争に至っているようで、Lバンド電波使用許可後も、事業開始から影響評価に至るまで、まだまだ紆余曲折がありそうです

Ligado.jpg米軍はその推移がますます早くなる将来戦に備え、統合レベルで指揮統制の一元化をめざし、その基礎として各種目標情報のリアルタイム共有を絶対的な命題として取り組んでいます。データリンクによる情報共有の基礎がGPS信号によるの把握で、GPSへの干渉はリスクを感受できない問題です

5Gの利用においても、GPS信号の位置情報や時刻情報が欠かせないと思うのですが、このあたりも知識不足で突っ込めません・・・

5Gと干渉問題の記事
「米議会でも国防省使用の周波数議論」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-05
「ファーウェイ5G使用は米国との関係に障害」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-17
「軍事レーダーの干渉確認」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-05
「5G企業とGPS関係者がLバンド電波巡り激突中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-22-2
「戦略コマンドが5Gとの電波争奪に懸念」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-27
「GPSが30日間停止したら」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-18
「5G試験のため民間に演習場提供案」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-14

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米統参議長「危機の米国に手を出すな。痛い目にあうぞ」 [エスパー国防長官]

国防長官と統合参謀本部議長が会見
米軍の即応態勢には全く影響ない
色々ちょっかいがあるんでしょうねぇ・・・

Corvid19.jpg9日、エスパー国防長官とMark Milley統合参謀本部議長がインターネット放送を行い、Milley統合参謀本部議長が、米軍の即応態勢には影響がなく、「米国が困難に直面している時に、敵対者がこの機を悪用しようと考えたりすれば、それは恐ろしい間違いで痛い目にあう」と警告しました

米軍には州兵や予備役を含めて230万人の戦力があり、9日現在で2000名弱の感染者が米軍兵士に出ているが、米軍全体の0.1%にも満たない状況であり、米軍の作戦遂行能力には全く問題がないとの主張です

また、州軍兵士29000名、正規米軍兵士17000名がコロナ対処に従事し、全米の医療機関の支援や病院外受け入れ施設での対応に当っていると説明しています

Crozier.jpgまぁ・・・感染者多発の空母ルーズベルト艦長更迭→同空母乗員の不満爆発→海軍長官が自ら乗り出すも不満更に爆発しSNS上に流出→海軍長官更迭との、最前線部隊の見苦しい状態をさらけ出した米軍トップとしては、その健全性を訴えざるを得ないところでしょう

「アジア派遣中の空母ルーズベルト騒動」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-08

また先日ご紹介したように、米海兵隊がこのタイミングでサイバー対処部隊を始めてアジア展開中の艦艇に派遣し始めたように、米国や西側同盟国を試そうとする「ちょっかい」がサイバーや宇宙や陸海空ドメインで始まっていると感じさせる事象もありますので、Milley統合参謀本部議長は「イエローカード」を敵対国等に出したものと解釈できます

「アジア活動中の艦艇にサイバーチーム初派遣」https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-08

いずれにしても、このような厳しい状況の際には、リーダーが先頭に立って「旗を振る」ことが大切ですので、ご紹介しておきます

9日付Military.com記事によれば
COVID-19.jpg9日、エスパー国防長官とMark Milley統合参謀本部議長がインターネット放送でメッセージ発信を行い、「トンネルの向こうに明かりが見えてきた」とコロナとの戦いに関する見通しを述べ、米軍の状況について、感染者はごく一部で、あらゆる事態への即応態勢には揺るぎがないと語った

特にMilley統合参謀本部議長は敵対国を意識し、「米国が困難に直面している時に、敵対者がこの機会を悪用しようとすれば、それは恐ろしい間違いで痛い目にあう」、「米軍は米国民を守るための如何なる作戦にも精通し、遂行する能力を十二分に備えている」と訴えた
9日時点で、1898名がコロナ感染(389 soldiers, 367 airmen, 164 Marines, 597 sailors and 381 National Guard)しているが、約230万人の米軍全体からすれば僅かな割合であり、同議長は「今日も明日も即応状態にある」と述べ、

エスパー国防長官は付け加え「私には如何なる任務をもこなしていく絶対的な自信がある」、「なぜなら、米軍の各級指揮官や下士官たちが、我がメンバーを守る手立てを打ってくれているからだ」と語った
●更に国防長官は、米軍内の感染率が0.09%と、一般社会の0.13%より遥かに低いのは、早い段階の2月3日からコロナ対応の指示を国防省内に出し、感染防止に先行的に取り組んできたからだと説明した

また約5万名の米軍や州軍兵士がコロナ対策の前線支援に当っていることに関しHyten統合参謀本部副議長は、多くの医療関係兵士が、一般病院のスタッフに感染者が出た穴を埋めたり、医師や看護師が休息を取る間のバックアップ要員として献身的な働きを見せていると説明した
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COVID-192.jpg発言の内容を見ていると、やはり「空母ルーズベルト」問題が米軍内外に波紋を起こし、兵士の心に動揺を与えていることが伺えますし、軍内にこれ以上の影響を及ぼさないようにするためのネットTV出演だったような気がします

更に「万全の即応態勢」については、中国正面から空母1隻が消えた今となっては苦しい言い訳ですが、爆撃機や潜水艦やミサイルが態勢を執っているのは間違いのない事実ですので、中国やロシアや北朝鮮は、自国内のことをまず心配してほしいものです

20世紀初頭に流行したスペイン風邪では、2度、3度と感染のピークが現れる長期戦となったようで、今回のコロナとの戦いでも長期戦を覚悟すると共に、「大恐慌以来で最悪」と見積もられる近未来の経済危機と安全保障の危機に、覚悟を決める必要がありましょう

米国防省とコロナ
「アジア活動中の艦艇にサイバーチーム初派遣」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-08
「アジア派遣中の空母ルーズベルト騒動」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-27
「米国防省コロナの影響と対応」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-27

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米国防省が5ヵ年投資計画の非公開化要求 [エスパー国防長官]

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4月3日、米国防省報道官が反論。完全非公開を求めているのではなく、どこまで公開し、どこを非公開にするかを議論したいと語る。今の議会の要求の緩和を求めていると
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敵対国に手の内を知られる恐れを主張
軍需産業との交渉も不利になると

FYDP.jpg3月30日付Defense-Newsは、国防省が米議会に対し、1989年から公開されてきているFYDP(国防5カ年計画:Future Year Defense Program)における支出計画を「非公開:classify」にするよう求めていると報じています

米国科学者連盟(FAS)のSteven Aftergood氏が、このような要求がなされていることを30日明らかにしたもので、Aftergood氏のほかメディアや研究者から、複雑な国防費の支出把握が難しくなるとか、国防計画の変更が一般国民から見えなくなるとかの反対論が早速上がっています

情報公開を善とするのが世の流れで、税金の不透明な流れや使途を明らかにして不正を正すことや、政治家を巡る不透明な金の流れを抑止するために役割を果たしてきたことは間違いないところですが、軍事に関しては微妙なところもあり、これだけ中国やロシアに追い上げ追い越されている状況では、少し公開レベルを考えたいのかもしれません

実際、B-21爆撃機を初めとして、様々な最近の装備品開発について、非公開の度合いが急上昇していますので・・・

3月30日付Defense-News記事によれば
FYDP2.jpgFYDP(国防5カ年計画:Future Year Defense Program)における支出計画数値データは、米国民にとっては、国防省が将来どの分野に投資するのかを知る重要な数値データであり、その数値が変更された際には適切性を見極める指標となるものである

Steven Aftergood氏が明らかにした国防省から米議会への要求によれば、国防省は「世に出回る様々なデータ分析技術や手法が高度化する中、既に国防省の活動や作戦に関する様々なデータや情報が公開され入手可能な状態にあり、これらに加えてFYDPデータが一般公開されれば、敵対勢力が公開情報を繋ぎ合わせ、戦略計画、兵器開発や戦力構成などについて抽出することを許容することになる」と懸念を示している
また国防省は軍需産業との関係に関する視点から、「FYDPデータを各予算年度ごとに予算額を公開する以前に明らかにすることで、将来にわたる資源配分計画を明らかにすることになり、これによって、各年度に企業側が入札する際や企業が開発計画を検討する際、国防省側にとって望ましくない結果を生む」と非公開を要求する理由を説明している

FYDP3.jpgFASのAftergood氏は国防省の動きを、「米議会や米国民が、国防予算や戦力構成について吟味することを困難にするものだ」と批判し、CSISのSeamus Daniels予算分析担当研究員は、「国民が、国防戦略に沿って予算配分が適切に行われているかや、どのように国防計画が変遷していくかを把握する機会を制限するものだ。米国防省の透明性を確保する点で大きな後退だ」と批判している
●また、軍人の中にも国防省の秘密主義を批判する者もおり、年初に統合参謀本部副議長が、国防省が「必要以上に秘密主義な傾向にある:tendency toward overclassification」と評したこともある
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関連記事でご紹介していますが、昨年秋に国防省情報機関の高官が、「ロシアや中国による情報戦やハイブリッド戦に対抗するため、同盟国を含めた西側情報コミュニティーは、情報分析手法や分析結果についてよりオープンに公開する方向に向かうべきではないか」と訴えていましたが、これは敵の動きや兵器開発に関する分析情報公開を推奨したもので、我の資源配分に関するものではありませ

また本文最後の統合参謀本部副議長による年初の発言も、どうも一部が切り取られたもののような気がします。

とは言え、F-35、フォード級空母、コロンビア級次期SSBN、KC-46空中給油機、ズムウォルト級ステルス駆逐艦などなど・・・突込みどころいっぱいの装備品だらけの米国防省ですから、「信じてくれ!」と言われても・・・な所はねぇ・・・

情報管理と情報戦
「ハイブリッド情報戦に備えて」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-05
「中国を欺瞞でだまそう」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21
「対ロシア情報戦に国家として」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-24

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なぜ今?:海兵隊サイバー防御チームが艦艇初展開 [サイバーと宇宙]

コロナで艦艇運用が大変なこの時期に発表
前方展開艦艇群のサイバー防御の将来像を追及

DCO-IDM.jpg7日付FifthDomeinは、米海兵隊第31海兵遠征部隊が、自身が保有するサイバー防御チームを初めて艦艇に乗船展開させ、本格的な前方展開艦艇群のサイバー防御体制構築に向けた動きを始めたと報じています

5日付で同海兵隊部隊が発表したもので、初の展開先は佐世保所属の強襲揚陸艦USS America(45000トン、アメリカ級強襲揚陸艦の一番艦)で、米海兵隊の主力艦艇です

派遣されたサイバー防御チームは、「Defensive Cyberspace Operations-Internal Defensive Measures (DCO-IDM)」との任務を帯びた小規模「unit」で、人数規模は明らかにされていません。ただ、米海兵隊第31海兵遠征部隊(31st MEU)は、海外に駐在する唯一の海兵遠征部隊で沖縄が根拠地ですから、沖縄の地上勤務部隊が艦艇に派遣されたものと推測します

DCO-IDM2.jpg前線部隊のサイバー能力を強化するのは自然な流れで、何も驚くことではないのですが、海軍艦艇でコロナ感染が広まる中、典型的な「3密」職場である艦艇へのサイバーチーム派遣を、なぜ、このタイミングでわざわざ公式発表したのでしょうか?

以下は完全にまんぐーすの「邪推」ですが、米軍にもコロナ感染が進む中で、中国を初めとする「相手の弱みに付け込む輩」から米海軍海兵隊部隊へのサイバー攻撃が急増していることから、サイバー防御能力を強化するため、また防御を固めているとアピールすることで敵サイバー攻撃を抑止するための発表ではないかと思います

以上はあくまでまんぐーすの邪推ですが、以下では米海兵隊の発表をご紹介しておきます

7日付FifthDomein記事によれば
(米海兵隊第31海兵遠征部隊の報道官声明によれば)
Defensive Cyberspace Operations-Internal Defensive Measures (DCO-IDM)は、米海兵隊や米海軍ネットワークを安全に融合し、敵対者の悪意ある行動や侵入から守る役割を担う
●またDCO-IDMは、将来のサイバセキュリティーを担うチームの枠組みを検討するものともなる。この将来チームは、前方展開する全ての艦艇を支援することになる

DCO-IDM3.jpg●このDCO-IDMで艦艇に派遣されているチームは、「動き回る防御部隊」とも呼ぶことができ、派遣部隊が使用しているネットワークを探索して普段と異なる傾向や悪意ある兆候を見つけ出す
チームのメンバーは、何か異状が探知されてから能動的に対応するのではなく、「先行的:proactively」に米海軍戦力攻撃群ネットワークを防御するのが役割だとチームの特徴を語っている

●そして具体的に「DCO-IDMは脅威を即座に識別し、影響を局限する事が出来る。最新の分析手法を用い、ネットワークにフィルターをかけ、敵に侵入手法に対抗できる」、「我が海兵隊部隊は、悪意ある侵入者を追跡し、ネットワークISR能力で敵の根拠地までさかのぼることが出来る」、「怪しい動きはレポートにまとめ、データを蓄積して分析に活用し、日々の活動にフィードバックする」と明らかにしている

●また関連チームは、例えば地域諸国との共同演習である「Cobra Gold 2020」に参加し、タイ軍の関係者とともに情報交換したり訓練したりして、能力強化とスキルアップに励んでおり、同様の活動を、日本、マレーシア、インドネシア、シンガポールとも行っている
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記事を読めば読むほど、「邪推」に確信を深めるまんぐーすであります

DCO-IDM4.jpg記事とは直接関係ありませんが・・・コロナ感染が進む中で、SNS利用者やYouTuberの中には、アクセス数やフォロワーや視聴数を増やすために、「ワザと悲観的な情報を流す」とか「センセーショナルな見出しを付ける」とかの「ゲス」な手法を用いる者が増えているようです。人間そこまで落ちたくないですが、国家としてそのレベルまで落ちることをなんとも思わない国や輩がおりますので、ご注意を

サイバー関連の記事
「サイバー攻撃停電に備えミニ原発開発中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07
「米国務省のサイバー対策はデタラメ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-27
「やっとサイバーチームの職務規定が」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-13
「喫緊の脅威は中露からではない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-16
「ハイブリッド情報戦に備えて」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-05
「ドキュメント誘導工作」を読む→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-22-1
「サイバー攻撃に即時ミサイル反撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-11-1
「NATOが選挙妨害サイバー演習」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-13
「サイバーとISR部隊が統合して大統領選挙対策に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-19
「ナカソネ初代司令官が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-17
「大活躍整備員から転換サイバー戦士」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-3
「サイバー戦略がもたらすもの」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-02
「市販UAVの使用停止へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-07-1
「サイバーコマンドの課題」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-04
「サイバー時代の核兵器管理」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-02

「人材集めの苦悩」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-31
「米空軍ネットをハッカーがチェック」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-23
「米国政府サイバー予算の9割は攻撃用!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-31
「装備品のサイバー脆弱性に対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-02

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ドイツがトーネード後継を3機種混合で? [安全保障全般]

独経済紙の報道らしいですが
Eurofighters、Super Hornets、EA-18G Growlers混合

Tornado2.jpg3月26日付Defense-Newsは、独ビジネス紙「Handelsblatt」報道を取り上げ、約10年後に退役する80機の独空軍トーネード戦闘爆撃機の後継として、独軍がEurofighter90機、Super Hornet30機(戦術核搭載)、EA-18G Growler15機を混合で購入する方向だと報じ、英国専門家の批判的なコメントと共に紹介しています

数年前からドイツで議論されているこの問題を複雑にしているのは、独空軍トーネードがNATOの任務として、米軍保有の戦術核爆弾B61を運搬して投下する役割を担っていることから、その後継機にも特別な機体仕様や米国防省の審査を通過する必要がある戦術核爆弾B61搭載能力が求められる点です

Eurofighter3.jpgこれまで後継候補になったF-35、F/A-18 Super Hornet、Eurofighter Typhoonは、いずれもこの搭載能力がなく、現在準備が進められているF-35の「Block 4」バージョンで能力付加が計画されている程度です。

独空軍の問い合わせに対し米側は、Eurofighter Typhoonが本能力を認められるには3-5年が必要だと回答し、F/A-18E/F Super Hornet(旧FA-18は搭載能力有り)に関してはボーイング社幹部が、米国防省の協力が得られ独の求める期限までの能力付与が可能と語っている様ですが、具体的な必要期間等に関しては不明です

残るF-35ですが2017年当時の独空軍トップKarl Muellner中将が強いF-35推進派でしたが、欧州製トーネード後継であることや、独仏が共同開発を始めた第6世代戦闘機(FCA)開発までの間、独英伊共同開発のEurofighter Typhoonの生産ラインを残したい政治的意向等が働き、更迭されると言う「黒歴史」を刻んでいます

FA-18 2.jpg2019年秋には、F-35への嫌悪感と、戦術核爆弾B61搭載能力獲得への道のりに配慮し、消去法的な流れの中でF/A-18 Super Hornetに決定された・・・との報道も流れましたが、ここに来てトーネードの電子戦機としての役割の後継も考慮し「3種混合」案が飛び出してきたようです

最終決定の期限がどれくらい迫っているのか不明ですが、本日はこの「3種混合」案が最悪の案だと批評する英シンクタンクRoyal United Services InstituteのJustin Bronk研究員の視点をご紹介しておきます・・・

3月26日付Defense-News記事によれば
英シンクタンクのJustin Bronk研究員は、「3種混合」案が、検討されてきた種々の案の中で最悪の案(the worst of all previously mooted outcomes)だとコメントしている
●同研究員は3種混合案の背景として、「EurofighterはFA-18より、パワー、搭載能力、敏捷性など多くの点で優れており、トーネードの後継として総合能力は高いが、戦術核搭載改修や審査の過程で、米側に同機の細部技術情報を提供しなければならないことから、軍需技術面でも政治的にも必要時間の点からも受け入れがたい」と述べ、Super Hornetに戦術核搭載オプションが選択されたのだろうと分析した

F-35 fuselage2.jpg●しかし同研究員は「EurofighterもSuper Hornetも、対ロシアで戦術核運搬任務を求められていることを考えれば、ロシア軍の強固な防空網を突破するには脆弱である」と指摘し、本質的な点で選択が間違っていると批判した
●そして「独空軍が(戦略環境を踏まえて)信頼に足るDCA機(通常兵器と戦術核の両方搭載可能な機体)を求めるなら、F-35しか選択肢は無い。F-35は多くのDCA欧州NATO諸国が導入を決めており、訓練や維持整備の上でも負担軽減になるはずだ」と主張した
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欧州における戦術核共同運用は「Nuclear sharing」と呼ばれ、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコが、各国推定20~80発の戦術核爆弾B61を米軍から提供を受け保管し、有事にはNATO加盟国として各国航空アセットに搭載して運用する任務を帯びています

EA-18growler.jpg上記5カ国の中では、ベルギー、イタリア、オランダの3カ国がF-35導入を決定しており、トルコが排除された今となっては、ドイツが最後の非F-35国です

欧州における戦術核の必要性議論も尽きないところですが、次世代の制空機を巡る開発競争や、軍需産業政策を絡めた政治的駆け引き、トランプ政権による欧州への兵器売り込み攻勢もあり、様々な意味でリトマス試験的な機種選定です

戦術核兵器とF-35等
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

ドイツと戦闘機関連記事
「トーネード後継でFA-18優位?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-08
「独の戦闘機選定:核任務の扱いが鍵」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-02-01
「独トーネード90機の後継争い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28

「独戦闘機選定に米圧力?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2

「独レーダーがF-35追尾」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-01
「米独2000名に安保アンケート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-10

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F-35問題の元凶:ALISとその後継ODINの現在位置 [亡国のF-35]

コロナ関連で各試験が中断しているようですが、それ以前に

年末からALISの後継ODIN投入開始予定も
2022年末のODIN完全運用開始まではALISで
問題だらけの現在位置を米国会計検査院GAOが

ALIS8.jpg3月16日付米空軍協会web記事は、米会計検査院(GAO)が16日付で発表したF-35自動兵站情報システム(ALIS)の現状レポートと、今年末からALISの後継として投入が開始され、2022年末に完全運用態勢確立を目指すODIN(Operational Data Integrated Network)の現状について取り上げています

少なくとも2022年末まで使用するALISの現状は、新ソフトの投入で若干の改善が見られるも、ほとんど大勢に影響なく問題多発状態が続き、問題ない航空機まで「飛行停止」指示を発する状態が続き、航空機の維持整備よりALISの世話に人手が必要な悲惨な現状を、会計検査院が指摘しています

ALISの後継となるODINについては、部隊の機動展開時に持ち運びが容易で、操作しやすくわかりやすく、リアルタイムでF-35の状態把握が可能なシステムとするための戦略計画を、米国防省がLord調達担当国防次官を通じてGAO等に示すことになっていますが、期限が迫る中、本当に夢のような装置への道筋が示せるのか、関係者に疑心暗鬼が広がっているようです

GAOレポートによればALISの現状は?
ALIS7.jpg●GAO検査官はF-35を使用する5つの基地を訪問し、本来、個々のF-35の状態をリアルタイムで把握でき、整備計画を自動立案して提案し、必要な部品を発注し、任務計画や訓練記録まで助けてくれるシステムのはずだったALISが、2015年に投入し始めた新ソフトでも、一部の改善が確認できる程度で、依然として以下の主要問題が放置されていることを確認している

---ALISは、機体のどこに問題があるのかを示すことなく、当該機の飛行停止を指示することがある。整備員が確認し、全く問題がないことを確認しても、飛行停止指示を解除しない。この原因は、ALISが入力したデータを完全に管理保存できず、データの抜けや欠損を生み出していることにある模様

---F-35部隊の機動展開に不適。ALISは装置が「かさばり」、ネット接続が限定され、契約企業技術者の支援がないと運用を継続できないため、母機地を離れての運用に大きな支障がある
---F-35飛行部隊編成時に想定されていたよりも、ALISの運用に多くの人員が必要で、また整備員などへのALISに関する教育内容が不適切である

ALIS2.jpg●GAOが訪問した部隊では、1週間で最大400件のALIS不具合が発生しており、部隊指揮官が演習シナリオの中に「ALIS不具合対処」を訓練項目に入れなければならない情けない状態である
●またGAOは、5年前から国防省に対し、ALISの不具合が原因で、どれだけF-35の稼働率が低下しているか、要求性能に対して、どこがどれだけ未達成なのかをまとめよう要求しているが、国防省はこれを行っていない

●GAOは、ALISの問題点とその影響を明確にしないと、新しいODINを設計開発するにしても、どこにどれだけコストと時間を投入すべきか判断できないはずだと指摘し、米議会に対し、まずALISの現状とその影響を国防省に把握・報告させるような法的措置を執るよう要求している
●この背景には、ALISの開発経費が当初想定で1兆9000億円だったのに対し、様々なトラブル対処に継続対処中の現時点で、どれだけの経費が投入されているかについて、国防省から情報が出てこないことへの不満と、ODINへの警戒感がある

ODINの現在位置:Lord調達担当国防次官は
Lord2.jpg2月23日付のGAO宛レターでLord次官は、「国防省は、ODIN開発を導く戦略を構築しつつあり、その中に主要課題、スケジュール、リスクと機会、開発管理体制、コスト見積もりを含んでいる。国防省F-35計画室がこれを取りまとめ、担当国防次官の承認を3月末までに得ることとなっている」と状況を説明し、
●更に「上記のODIN開発戦略とは別に、ODINの要求性能書とユーザー同意文書を、ODIN開発の基礎として、国防省の責任で準備する」、「これらの文書には、明確な要求性能と将来にわたっての能力拡張柔軟性の規定が必要だと考えている。また、前線のF-35から収集したデータの管理が十分に信頼され保障された環境で行われるようなシステム構築にもコミットしている」と述べている

●GAOは、現時点で世界に400機あまりが存在し、今後4年程度で1000機に達するF-35が、各所で「問題児」化することを懸念しており、これを防止するための基礎として、ALISの現状を国防省が明確な基準で包括的に把握することが大前提だと考えている
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ALISに代わる、「快刀乱麻」のような解決をロッキードが担当するODINに期待していたわけではありませんが、まだまだ泥沼感が続きそうですねぇ・・・

しかし、世界各地への機動展開が不可欠なF-35飛行部隊なのに、ALISの実態が「bulky:かさばる」、「Internet connectivityが限定的」、「契約企業の技術者支援が必要」で機動展開に不便だなんて、どんな要求性能と妥協の産物で生まれた「お荷物」なんでしょうか・・・

こんなものに振り回される、世界13カ国の空軍兵士がかわいそうですし、資源の浪費です。だから「亡国のF-35」なんです

最近のF-35
「ボルトの誤使用:調査もせず放置へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-29
「ポーランドが13カ国目に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03

ALIS関連の記事
「ALISを断念しODINへ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-22
「ALIS問題を議会で証言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-15
「ALISは依然大きな障害」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-02

F-35維持費の削減は極めて困難
「国防省F-35計画室長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-03
「米空軍参謀総長が語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-02
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1

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米空軍トップ:米軍の長射程攻撃を誰が担う? [米空軍]

陸海海兵隊が長射程攻撃兵器を重視し始める中
従来この任務を担っていた空軍として一言

Goldfein4.jpg1日、米空軍協会ミッチェル研究所からの遠隔インビューに臨んだGoldfein空軍参謀総長は、これまで米空軍が担ってきた長距離の戦力投射任務に陸海海兵隊が力を入れ始めていることに関し、予算の伸びが期待できない中で、超超音速兵器(hypersonics weapon)開発で3軍が分担協力して素晴らしい成果を挙げているように、米軍全体として長射程攻撃の分担等あり方を考えるべきだと語りました

中国が各種弾道ミサイルや対艦ミサイルを整備し、そのA2AD領域を第2列島線にまで拡大しようとしている中、米陸軍は「射程1000nmの砲」開発を開始し、海軍海兵隊は2021年度予算案で「地上や艦艇発射型トマホーク」や「Naval Strike Missileの車両搭載版」導入を柱にすえるなど長射程攻撃能力の強化が米軍内で並行的に進んでいるとこを踏まえたインタビューでのやり取りです

空軍参謀総長は、ウォーゲームの結果等から、長射程兵器だけでは勝利できず、長射程兵器と従来兵器を組み合わせたハイブリッド戦力(hybrid force of both stand-off and stand-in systems)が必要だと主張し、インタビューした湾岸戦争航空作戦計画の中心人物であったデプチューラ元中将も、大きな戦いでは4-6万個の攻撃目標に対処するが、費用面で長射程兵器だけでは耐えられないだろうと意見を述べています

1日付米空軍協会web記事によれば
Goldfein3.jpg米軍全体で長射程兵器への投資が過剰重複になっていないか、との質問に対し、)Goldfein空軍参謀総長は、中国やロシアなどの状況に鑑み、陸軍や海軍が各任務や文化に応じて長射程兵器に注目することに驚きはないし、以前中東軍で統合航空戦力指揮官だったときに陸海軍から射程1000nmの長射程兵器提供の申し出があったなら、絶対に断らなかったと思う、と述べた
●一方で同参謀総長は、現在の厳しい予算状況を勘案すれば、米軍内に重複投資はないか? より4軍が協力して必要能力を獲得維持する方法はないかと考えることが強く求められている、と述べた

●そして、超超音速兵器(hypersonics weapon)開発は米軍内協力の「success story」で、どの軍種が誘導装置を、弾頭部分を、本体部分を担当するのが最善かを吟味し、協力体制を作って効率的な取り組みが迅速に行われている、と評価し、
この「黄金律」を、今後の長射程兵器導入検討に生かす必要があるし、また、長射程兵器だけでは将来の戦いで勝利できないとも訴えた

●同大将は将来戦に関する多くのウォーゲームの結果を引き合いに出し、長射程兵器(standoff missiles)と使い捨て無人機(attritable aircraft)で構成される「outside force」では勝利できていない、と説明し、最も厳しいシナリオでも勝利できたのは、長射程兵器と従来兵器を組み合わせたハイブリッド戦力(hybrid force of both stand-off and stand-in systems)だけだと主張した
NMESIS.jpg●また同参謀総長は「長射程兵器のみ戦力推奨派」に対し、そう主張したいのなら分析結果を示せ、国家防衛の責任を負うなら、勢いだけで主張するなと厳しく表現し、将来戦において勝利できるとの証拠を示すべきだと強く訴えた

ただし同大将は、今後の兵器技術や敵情の変化などの最新軍事情報に基づき、ウォーゲーム等は継続的に実施されることから、その結果を踏まえた方向性の修正は当然ありえるとも語り、中国、ロシア、北朝鮮や他の敵対国の動静を注視する必要があると説明した
●インタビューしたミッチェル研究所のDavid Deptula元中将は、主要な地域紛争レベルになると4-6万個の攻撃目標に対処する必要があるが、その全てを長射程誘導兵器で攻撃することはコスト的に耐えがたくありえないと補足した

●最後にGoldfein空軍参謀総長は、米陸軍と海軍が、米空軍が従来担ってきた任務や役割を「密漁」しようとしているとの指摘に対し、つまらない考え方だと表現し、他軍種の動きを妨げるつもりは毛頭ないと述べた
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映像(約39分)米空軍参謀総長インタビュー
記事内容の他に、コロナ対応や操縦者不足問題などについても語っています


Goldfein空軍参謀総長や、湾岸戦争航空作戦計画でワーデン大佐の「懐刀」として中央軍作戦中枢で辣腕を振るったDavid Deptula氏の主張には頷く点が多いのですが、米陸軍の「射程1000nmの砲」や、海軍海兵隊の「地上や艦艇発射型トマホーク」や「Naval Strike Missileの車両搭載版」導入について、統合参謀本部や国防省レベルでのすり合わせが低調な様子に驚くばかりです。

中国やロシアや北朝鮮が「仁義なき戦い」を吹っかけてくるのは織り込み済みでも、ペンタゴン内での「仁義なき戦い」は、過去の歴史を教訓にぜひとも避けていただきたいものです。

大統領選挙での黒人票取り込みを狙うトランプ大統領の意向が働いて、初の黒人軍種トップとしての話題性で次の空軍参謀総長に引っ張り出されたと「勝手に邪推」しているBrown太平洋空軍司令官に置かれましては、気持を強く持っていただきたいと願うしだいです

米軍地上部隊の変革
「中国対処に海兵隊が戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「射程1000㎞の砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1

「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「尖閣防衛に地対艦ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14
「ハリス大将も南シナ海で期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06

「海洋プレッシャー戦略に唖然」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-13
「陸自OBが陸自で航空優勢と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-12
「CSBA:米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14

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米国防次官:中国の超超音速兵器には同盟国の協力が鍵 [米国防省高官]

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3月頭の話ですが
日本も逃げられない運命です
どれぐらいコスト負担を覚悟なのか気になります

Griffin DOD.jpg3月4日、米国防省のMike Griffin技術開発担当次官が講演し、冷戦後に油断した米国は、中国やロシアの追い上げにより「Great Power Competition」を戦う準備に取り組まざるを得なくなった現実を受け入れるべきと述べ、特に宇宙アセットの脆弱性克服や根本的変革が超超音速兵器対処に不可欠だとし、この改革には同盟国が大きな役割を果たすと期待とも圧力とも取れる発言をしました

講演前半の情勢認識の部分は悲壮感にあふれ、米国の不適切な軍事技術投資が将来の米国優位を危うくし、同時に宇宙分野を例として、新思考を求める声が高まる中でも旧態然とした方向に向かう傾向が見られると語り、またこのような変化の必要性を国家に理解させることにも大きな困難を伴うと現状を訴えています

hypersonic china3.jpg具体的に同次官は低高度軌道LEOに集中する少数の多機能で高価な人工衛星依存の現状を問題視し、多様な軌道に分散配備する多数のシンプルな衛星全体で機能を支える体系への変換の必要性を主張し、特に探知追尾手段がなく大きな問題となっている中国の超超音速兵器に対して早急な対応が必要だと述べました

そしてこの変革に必要な技術開発には、同盟国が大きな役割を果たすと言及し、具体的な国名は挙げませんでしたが、「自由」「民主主義」「法による支配」といった根本的な西側の価値観を守る戦いだと訴え、技術協力を同盟国に大いに期待すると語っています

5日付米空軍協会web記事によれば同次官は
●(ワシントンDCで開催されたMcAleese and Associates conferenceで、)米国は、中国やロシアなどとの「great power competition」から逃れることは出来ないから、このために戦力等の再構築に真剣に長期間掛けて取り組む必要がある
米国は冷戦での勝利で満足し、リラックスしてしまった。勝利以降、21世紀における軍事技術優位を維持するための研究開発を適切に行ってこなかった。しかし敗者は復活を期し、再挑戦していたのだ。

hypersonic china.jpg中東での戦いは重要だが、(米国の)生存を脅かすものではない。米国は、その生存を左右する最新の一歩先を行く技術開発への投資をあまりにも絞りすぎている。この間に中国とロシアは、米国を出し抜く機会を生かしたのだ
これらの国は西側の価値観を尊重しない。「自由」「民主主義」「法による支配」「個人の財産権」「移動の自由」「自由な市場」などといった根本的な西側の価値観を共有するつもりがない

我々は「Great Power Competition」に直面している現実を受け入れる必要がある。ただ、この現実を国家に理解させることは容易ではない。しかし私は米国が変化できると考え、この仕事を引き受けたのだ
新たな脅威への対処を考える時、米国は宇宙アセットを再考する必要がある。敵の装備や動きから考えると、米国の軍事作戦遂行の全てを支える我々の宇宙アセットは、何よりも打たれ強く強靭でなければならない。

現状では、低高度軌道LEOに集中する少数の多機能で高価な人工衛星に依存しており、敵からすれば格好の攻撃目標となっている。敵に我々が脆弱だと思わせてはならず、多様な軌道に分散配備する多数のシンプルな衛星全体で機能を支える体系へ変換し敵に安易な目標を提供してはいけない

中国の超超音速兵器(hypersonic weapons)脅威は現実のものであり、その脅威は増加している。我々は同兵器1発や2発の飛来ではなく、同時多数の攻撃に備えなければならないが、この兵器は従来兵器の20倍探知追尾が難しい。我々の衛星赤外線追尾システム(SBIRS)を持ってしても困難である
Griffin.jpg●探知追尾できなければ対処できないが、敵の容易な攻撃目標になるような巨大な地上レーダーに頼るわけには行かず、我々には宇宙アセットを活用する道しか残されていない

この道を追求する技術開発には、同盟国が大きな役割を果たす。我々西側の価値観を守るため、米国は孤独な戦士である必要はなく、「full and open partnerships」を求める必要がある。我々は関連の多くの技術分野で同盟国と協力を行っており、細部に言及できないが、極めて有効であり、この協力なしには成功はない
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超超音速兵器(hypersonic weapons)が一発「おいくら万円」か把握していませんが、Griffin次官が追求する探知追尾システムと迎撃システムを整備すると「おいくら万円」必要なのかがとっても気になります。

同兵器1発の防御のために、100倍の投資が必要・・・なんて試算が出てきそうな雰囲気がしますGriffin次官は昨年10月、空母1隻と同価格で購入可能なミサイル2000発のどちらが有効か問題提起するような率直な人物ですので、そのあたりの経費感覚はお持ちだと思いますが・・・

それにしても、米国防省高官が、普通に中国やロシアに「出し抜かれた:steal a march」と発言するようになりました。もちろん増加する気配の見えない国防費への危機感を訴えるためでもありましょうが、実態面での危機感も相当なレベルにあると感じます

コロナが深刻になる前の講演ですが、コロナによって、米国が中国より大きな打撃を受けないか心配です

Griffin次官の刺激的発言
「ミサイル2000発と空母1隻の有効性比較」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-20

超超音速兵器の関連
「ロシアの対艦超超音速ミサイル」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-21
「プーチンが超超音速兵器を大自慢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-26
「米議会で中国抑止を考える」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-17
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-10
「米空軍も取り組み本格化」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-16
「ミサイル防衛見直し発表」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-19
「ロシアが超超音速兵器試験に成功」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-27
「日本に探知追尾レーダー配備?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-24
「LRDRレーダー開発が順調」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-10
「グリフィン局長の発言」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08-1
「米ミサイル防衛の目指すべき道」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「BMDRはMDRに変更し春発表予定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24-1
「米空軍が1千億円で」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-21-1
「同兵器は防御不可能」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-21-1
「ロシアが新型核兵器続々開発と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-1
「中国が超超音速兵器で優位」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-27-1

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KC-46にまた最重大不具合:今度は燃料漏れ [米空軍]

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2019年7月発覚の問題が今頃カテゴリー1に
修理専門工場で10日で修理可能と言うも・・
これまでに16機で同不具合発見

KC-46 2.jpg3月30日、米空軍はKC-46A空中給油機で新たに「Category 1」(不具合の中で最も重大な区分)が見つかったと発表し、燃料漏れだと明らかにしました

これまで散々KC-46の不具合についてはご紹介してきましたが、固定開発費契約でボーイング社が約5500億円で請け負ったものの、既にボーイングの追加持ち出し経費が3800億円を超えたといわれる問題児となっており、B-737Max墜落事故による生産停止で6兆円以上の公的資金投入をトランプ大統領に泣きついたと言われる同社に、更に塩を刷り込む状態になっています

KC-46は他にも3つの「Category 1」が

---給油操作員が映像カメラを通じて給油操作を行うRVS(remote vision system or RVS)が、太陽や照明の位置によっては、現場の様子が正確に操作員から視認できない不具合で、空軍参謀総長とボーイングCEOが直接会談してまで早期解決を目指しているが、結局2023年以降にしか解決しないことが明らかになっている
KC-46 RVS2.jpg---上記RVSの不具合から、給油ブームで給油相手機に「引っかき傷」をつける事象が多発し、特にステルス塗装へのダメージが問題になっている。上記RVS問題解決が必要な問題

速報、4月2日付Defense-Newsによれば
米空軍とボーイングがRVS問題解決法で合意に至った模様
まず、暫定策として、ソフトとハードの対処療法を当面続け、更に数年かけてシステムの抜本的再設計(カメラやセンサーの変更を伴う)を実施する模様
●細部を両者語らず。いずれにしても2020年代半ばまで同機は実戦投入できず

---A-10攻撃機に給油ブームを十分に差し込めない不具合で、米空軍側の要求性能値が正しくなかったために生じた不具合であることから、米空軍負担で約60億円の追加改修契約を昨年結び、改修が行われる

今回の燃料漏れは、上記3つに加え、4つ目の最重大不具合となります。ただ、不具合修理法は確立されており、専門の工場に搬入すれば約10日で修理が完了できるそうで、早くても2023年まで修理開始を待つ必要があるRVSに比べると、「傷は浅い」と言えましょう

3月31日付Defense-News記事によれば
30日米空軍は、更なるKC-46A空中給油機の不具合として、最も安全に関し深刻なレベルの「Category 1」な「過剰な燃料漏れ:excessive fuel leaks」を認めたと発表した
米空軍の声明によれば、この不具合が最初に見つかったのは2019年7月らしいが、なぜ8ヶ月も経過した今頃になって「Category 1」に格上げされたのか、どの程度の重大度なのか等の質問に対して、米空軍は答えなかった

ボーイング報道官は、(既に納入している約30機の中の)16機で燃料漏れ不具合が見つかり、既に内7機の修理を完了していると語った
●同社の発表声明では「KC-46は重複した燃料閉じ込め構造を備えているが、発覚した事例では、機体整備員により第1弾燃料収納バリアと第2段バリアの間で燃料漏れが発見されている」と説明している

KC-463.jpg米空軍報道官は「米空軍とボーイング社は協力して根本原因を究明し、対策を実行する」、「米空軍のKC-46計画室は、引き続き全てのKC-46の状態をモニターし、米空軍として機体の受領検査を燃料系統について強化し、部隊に配備される前に不具合を是正する」と語った
●ボーイング社は、最大限の迅速さをもって事象に対応し、テキサス州San Antonioの工場に持ち込まれた機体に対しては10日間で修理を完了する、としている。またワシントン州Everettの機体製造工場では、同様の問題を再発させない対策を完了している、と述べている
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ボーイングは既に組織としての呈をなしていないのかもしれません。上層部は既に、会社の切り売りと自身の転職にしか感心がないのかもしれません・・・

かわいそうなのは現場従業員と、ボーイング製品を買わされた米空軍とイスラエル空軍と航空自衛隊です

3度の機種選定をやり直してまで、世界中で活躍(英国、UAE、サウジ、シンガポール、豪州、インド、仏など)しているエアバスA330型の給油機を排除したことを、米空軍関係者は心のそこから後悔していることでしょう・・・

KC-46関連の記事
「やっぱりだめで更に1年遅れ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-04
「重大不具合について3月に手打ち!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-21
「空軍トップが新CEOに改善要求」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-03
「ついに空中給油の民間委託検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-15
「貨物ロックに新たな重大不具合」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-12
「海外売り込みに必死なボーイング」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-22-1
「米空軍2度目の受領拒否」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-1
「機体受領再開も不信感・・・」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-16-1
「米空軍がKC-46受け入れ中断」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-3
「不具合付きの初号機受領」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-12-2
「初号機納入が更に遅れ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20
「10月納入直前に不具合2つ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-19
「10月に初号機納入を発表」→ https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-22
「開発が更に遅れ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-11-1

空中給油機ゴタゴタ
「ブームで相手にひっかき傷」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-02-1
「空中給油機の後継プランを見直しへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-22
「KC-46ブーム強度解決?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-15

「納期守れないと認める」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-01
「Boom強度に問題発覚」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-03
「予定経費を大幅超過」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-21

「韓国はA330に決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-01

米空軍によるKC-46A選定のゴタゴタ記録
「KC-X決定!泥沼回避可能か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25

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米軍基地勤務の韓国人5千名レイオフ開始 [安全保障全般]

駐留経費を巡る米韓の合意未成立の影響で
4倍増求める米側が態度変えず
コロナ対策への高評価で韓国政権支持率上昇中で

Korea3.jpg3月31日付Defense-Newsは、在韓米軍の駐留経費負担額を巡る米韓交渉が2019年に決裂し、その後も双方に歩み寄りがない中、4月1日から約5000名の在韓米軍基地で働く韓国人労働者に対する給料支払いがストップし、レイオフ(一時的解雇:furloughed)が始まったと報じ、4月15日の韓国総選挙を控え、情勢が注目されると解説しています

トランプ大統領が韓国側に、SMA(Special Measures Agreement)で決定される韓国側負担額の4倍増を要求したことから、5年ごとに実施されるSMA見直しが2019年に決裂し、今年3月17日にLAで行われた7回目の米韓交渉でも実質進展なく終了しているようです。なおSMAは1991年から更新されつつ今日に至っています

Korea5.jpg様々な要因が絡む本交渉で、4月15日に予定される韓国総選挙の結果も大きな要素ですが、各方面から評判の悪かった韓国大統領が、コロナ対策で韓国国民からの評価を急上昇させつつあり、3月23日の週の世論調査では最近で最高の50%以上の支持率を集め、総選挙の結果次第では、韓国側の出方に影響を与えるとの見方が出ているようです

5千名のレイオフにより困っているのは韓国人労働者だけでなく、在韓米軍基地で勤務する米軍人もで、南北境界線から遠い場所に新設された在韓米軍司令部を含むCamp Humphreysに移動したばかりの米兵が、施設の整備や維持管理を行う人を失い、米兵が任務外の仕事を行う事態になる可能性が高くかわいそうな状況です。

結論や落とし所が見えない状況ですが、日本にも「飛び火」する可能性のある件ですので、状況をご紹介しておきます。

3月31日付Defense-News記事によれば
米軍駐留経費負担の4倍増を求められた韓国政府は、以下のような主張で米側の過剰な要求に反発している
--- 韓国は駐留経費以外にも、例えば、米軍の海外における最大の基地である「Camp Humphreys」建設費の9割(約1兆円)を負担している(ソウル市内の南北境界線から近い位置から、70kmほど南に位置。家族用住宅や福利厚生施設も充実)

--- 米国製兵器3兆円のFMS購入契約を結んでいる。例えば、F-35、グローバルホーク、F-16近代化改修、イージス艦システム、パトリオットPAC-3、ハプーン対艦ミサイル、AH-64Eアパッチヘリなどなど
--- 上記FMS契約以外にも、2014年以降商業ベースで、約2.8兆円規模の国防関連装備品や兵器を米国から輸入している

Korea4.jpg●また、韓国国防相は最近Defense-Newsに寄稿し、「これまで増額を続けてきた在韓米軍の安定を支える約7700億円の駐留経費負担に加え、土地や建物の提供、共同訓練や演習への協力支援、軍需産業間の協力関係など」で貢献してきたと主張している。

2005-2008年に在韓米国大使を務めたAlexander Vershbow氏は、「北朝鮮の脅威もあり、トランプ大統領は交渉の主導権を握り、主張を押し通すことが出来るかもしれない。しかし韓国側に一方的な譲歩を強制することは、韓国国民からの支持を大きく損ねることとなり、Pyrrhic victory(古代ギリシャの歴史・ピュロスの勝利「損害が大きく、得るものが少ない勝利)になりかねない」と警告している
Atlantic Councilのアジアプログラム部長であるMiyeon Oh氏は、「この韓国人労働者レイオフはSMA交渉に更なる不確実性をもたらした。コロナ対策で各国が忙殺される中、その混迷度が深まったと言える。SMA交渉に関する両国間の溝が縮まる気配はないが、両国安保上の連携やコロナ対処における連携の障害になってはならない」と警鐘を鳴らした
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当初、コロナ感染が地方の教会を発信源に爆発的に広がった韓国ですが、積極的にコロナ検査を行う作戦(既に42万人に実施)で、現時点では感染者数の発生増加を比較的抑えられている(3月31日で新規感染101名)と評価されているようです。

Korea2.jpg年初頃には、レイオフされる5千名が反韓国政権の動きに加わると警戒されていたようですが、コロナ対策への評価で「どうしようもない」現大統領への韓国内の支持率が5割強となっている状況で、日韓「通貨スワップ」について、上から目線の発言を韓国閣僚が始めた背景もそのあたりに原因がありそうです

コロナ感染で、イタリアの道でなく、韓国の道を目指すとぶち上げた米国が厳しい状況におかれていますが、駐留経費については、日本にも「飛び火」する可能性のある件ですので注意しておきましょう

韓国は「対北」を越えた軍備増強中
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-03

在韓米軍関連の記事
「在韓米軍司令部が70㎞南へ移動」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-07-08
「韓国の米軍再編は順調」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-27
「在韓米軍は兵士に不人気?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-10-02

KF-X関連の記事
「KF-Xは欧州のミサイル搭載?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-30-1
「米が韓への技術提供拒否」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-28
「KF-X計画公式発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-01-1
「韓国KF-Xは2個エンジン」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-22
「F-35がらみでKF-X支援要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-31

韓国とF-35関連記事
「韓国F-35とKF-Xのゴタゴタ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-04
「韓国F-35とKF-X」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-25
「韓国がF-35に最終決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-22-1
「急転直下:F-35を選定か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-19

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小規模僻地展開構想ACEに備え三沢部隊が演習 [米空軍]

コロナが猛威を振るい始める前の話ですが
次期米空軍トップのBrown太平洋空軍司令官が主導
欧州米空軍とも意見交換しつつ案を練る

MISAWA ACE.jpg3月19日付米空軍協会webは、米空軍三沢基地の第35戦闘航空団が最近、米空軍が対中国に備えて構想を練っているACE(Agile Combat Employment)関連演習を行ったと伝え、その中で一人の兵士が複数の役割をこなす方式を試みたと紹介しています

ACE(Agile Combat Employment)構想は、従来のように大規模根拠基地に航空アセットを集中して運用していては中国ミサイル攻撃の餌食になるとの危機感から、航空アセットを小規模に分割し、機敏に機動展開させて敵の攻撃を困難にして影響を極言しようとのコンセプトです。

しかしこの構想では、小規模アセットを普段使用しない施設や装備が不十分な飛行場等に展開させる必要があり、米空軍は航空機運用に必要な地上支援装備の小型化や共通化、事前集積保管、ロボットの活用、更には電力確保のため輸送可能な小型原発の開発にも着手しているところです

小規模部隊として展開するACEではマンパワーの確保も課題で、「一人の兵士が複数の役割」との具体的検討が演習を通じて行われロシアと対峙してACE構想を練る欧州米空軍とも意見交換を行い、米空軍司令部への「ACEの雛形」提案を考えているようです

19日付米空軍協会web記事によれば
MISAWA ACE2.jpg●米空軍三沢基地の第35戦闘航空団で、監察室と航空団計画部に所属するAlexander Wieczorek上級軍曹は、「我々の活動する世界は変化している。私が育った時代の米空軍が行ってきた、大規模部隊が施設の整った展開先基地で作戦運用する時代は終わりつつある。未来を想定して準備しなければならない」と語った
●ACE構想が機能するためには、従来のように一人の兵士が細かく分割され専門化された指定職域の任務だけを行っている現状を改め、自身の職域以外の役割も最低限担えるように準備し、緊急事態に備える必要ある

次期空軍参謀総長候補であるCharles Q. Brown太平洋空軍司令官は2月のインタビューで、ACEでは柔軟性が必要で、複数の役割がこなせるメンバーで構成されるチームによる機動展開を考えている、と語っていた
●一方で同大将は、全ての空軍兵士に同構想を適用することは考えていないし、特殊作戦軍の「Contingency Response Groups」との融合も考えていないと説明していた

MISAWA ACE3.jpg●同司令官は、「完全な職域教育を受けていないと当該業務を実施できないとの壁を取り除きたい。例えば、戦いに臨めば人的損失が生じるが、そんな時に航空機への燃料補給や輸送機への貨物搭載を、専門兵士の指示を受けて支援可能な程度の能力を持つ要員を準備しておきたい」と説明していた
三沢基地での演習では、24名の様々な階級・職域の兵士が互いに教えあって技量を高めた。完全なレベルの技量を求めるのではなく、他兵士が普段行っている業務の基礎的な知識を得ることが狙いである

Brown太平洋空軍司令官は、欧州米空軍のJeffrey Harrigian司令官とも話し合い、ACE構想の中で太平洋地域と欧州地域で共有できる部分を見極めようとしている。両地域ではニーズが異なる部分もあり、欧州の経験からは、展開先による相違も大きいことが明らかになりつつある
欧州米空軍は、既に定期的に小規模部隊を域内各国に派遣し、独自のACEコンセプトを固めつつあり、施設不十分で不慣れな展開先で求められる事項への対応を進めている。Harrigian司令官は、現時点では同コンセプトは公開できないが、将来的には公開可能なものを準備し、地域の同盟国とも共有し、協力して取り組めるようにしたい、と語っている
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MISAWA ACE4.jpg欧米では、仕事に就く際は「職務規定」なるものを労使で確認してサインし、同規定で定められた仕事を淡々とこなすことが慣習となっており、米軍でも各兵士の職域(Specialty Code)が厳格に運用されているのでしょ

ですから、他職域の仕事を手伝うとか支援するとかの概念が、日本人が考えるより一般的ではないのかもしれません。航空機への燃料補給や弾薬の搭載、輸送機への貨物搬入など、既にやっているよ・・・との声が自衛隊からは聞こえてきそうですが・・・

小さなことからコツコツと・・・は重要ですから、がんばっていただきましょう・・・

集中配備から、分散運用する新コンセプトACEへ
「太平洋空軍がACEに動く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-12
「太平洋空軍司令官がACEを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「F-22でACEを訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08

沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「嘉手納中心に基地防空とACE訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-15
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13

日本を含む西太平洋地域の現実
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21
「岩田元陸幕長の発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09

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