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切迫イランの脅威で中東にB-52を緊急展開へ [安全保障全般]

イラン軍が米軍攻撃を準備中との明確な情報あり 

B-52.jpg8日国防省が、イラン軍による米軍攻撃準備に関する明確な情報(recent and clear indications)があることから米中央軍の要請に基づき、空母リンカーン派遣前倒しに続き、B-52爆撃機を中東に派遣すると発表しました

5日にホワイトハウスが、「イランが米軍部隊を攻撃するようなことがあれば、穏やかならざる戦力で反撃されるだろう」とし、空母と爆撃機部隊の派遣を明らかにしたことを受けた具体的な行動です

空母リンカーンの中東派遣は以前から計画されていましたが、本情勢を受け臨時国防長官が派遣を早めるよう指示したようです。

Lincoln.jpg米空軍大型爆撃機は、911事案以降、ほぼ絶え間なくB-52とB-1が交替でカタールのアルウデイド基地に前方展開していましたが、3月にB-1が帰国し、IS作戦も落ち着いてきたことから、「爆撃機は打ち止め」説も出ていたところでした

中東のUAEには、4月15日に米空軍F-35が展開し、同30日には初実戦任務を遂行したところですが、この展開をイランと絡めて説明する報道もあったところです。

7日付米空軍協会web記事によれば
米国防省関係者は、B-52を何機派遣するのか、どこの基地から派遣するのかを明らかにしなかったが、イラン軍による米軍攻撃準備の兆候を受け戦力派遣要請を開始し、今も「number of credible threat streams」なイランの動きに関する情報を入手していると明らかにした
米国防省はそれが如何なる脅威なのか、どのぐらいの数の攻撃準備情報を把握しているのか明らかにせず、中央軍もB-52展開の具体的な内容については明らかにしなかった

B-52 Guam4.jpg声明で米国防省は、「爆撃機派遣部隊は、当該地域における米軍部隊と利害を守るために派遣される」と述べている
米本土バーススデール空軍基地所属のB-52部隊の一部は、最近欧州展開から帰国したところである。またミノット空軍基地所属のB-52の一部は、現在グアム島にCBP(continuous bomber presence)の一環として派遣されている
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日本では米中貿易摩擦とトランプ大統領による関税引き上げ問題が大きな話題ですが、イラン情勢は急激に緊迫の度合いを高めています

注意が必要です

米空軍F-35中東展開と初攻撃
「米空軍F-35が初実戦任務」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-01
「米空軍F-35Aが中東初展開」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-16-1
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F-15搭載自己防御レーザーの基礎試験成功 [米空軍]

また地上試験ですが
まだ軽量化・高出力化等の課題ありですが

SHiELD.jpg3日、米空軍研究所AFRLは、2021年にF-15搭載PODの形で飛行デモを予定している自己防御用レーザー兵器の基礎試験として、地上配備の装置でミサイル迎撃に成功したと発表しました

試験は4月23日にニューメキシコ州のホワイトサンズ試験場で行われ、どのようなミサイルを対象に試験が行われたのかは明らかにされていませんが、「a key milestone」を達成したとの発表がされているのでご紹介しておきます

3日付米空軍協会web記事によれば
●米空軍研究所AFRLによる航空機の自己防御用レーザー開発計画は、「SHiELD」(Self-Protect High-Energy Laser Demonstrator)と呼ばれているが、4月23日に地上装置を用いた一連の試験を成功裏に終了し、一つのカギとなる成果を上げたとAFRLが発表した
Laser HEL.jpg●発表声明は、「Demonstrator Laser Weapon Systemが複数の飛翔中の空中発射ミサイルを迎撃した」と言及しているが、どのようなミサイルが目標に使用されたかは不明である

●「SHiELD」はF-15の自己防御装置PODとして開発されており、同PODから発射される強力なレーザーにより地対空ミサイルや空対空ミサイルからF-15を防御することを狙いとしているが、航空機からの高出力レーザーでのデモが2021年に計画されている
●本計画には、ボーイング、ロッキード、Northrop Grummanが分担して参画しており、レーザー生成部分、ビーム制御部分、POD部分などに分かれて取り組んでいる

●AFRLは声明で「一連の試験はSHiLD開発の重要なステップの一つで、目標となるミサイルに対するレーザーの有効性を確認するものである。しかし最終的なシステムは、より小型軽量で、航空機搭載時の環境に耐えるものである必要がある」と述べている
米空軍は今年1月、SHiLDよりも高出力の次の世代の装備についても検討していると明らかにしている
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Laser NG2.jpg3年くらい前に非常に盛り上がったレーザー兵器等のビーム兵器ですが、最近はあまり目立った発表や報道がありません

ファイバーレーザーが大きな技術的ブレークスルーだったようなイメージでしたが、依然として高出力を車両搭載型や航空機搭載型で実現することは「いつまでたっても完成まであと5年」状態なのかもしれません

自己防御型の場合、ミサイルを完全に破壊しなくても、シーカーなどの誘導装置を無効化することで役割を果たせるのですが、ビーム制御や出力確保(&小型化)は容易ではないのでしょう

エネルギー兵器関連
「エネルギー兵器での国際協力」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-27
「エネルギー兵器とMD」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「レーザーは米海軍が先行」[→]https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24

「無人機に弾道ミサイル追尾レーザー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-17-1
「私は楽観主義だ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-23
「レーザーにはまだ長い道が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-18
「AC-130に20年までにレーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-06

国防省高官がレーザーに慎重姿勢
「国防次官がレーザー兵器に冷水」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-12
「米空軍大将も慎重」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-24

夢見ていた頃
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
「米企業30kwなら準備万端」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「米陸軍が本格演習試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14-1

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米空軍F-35の維持費削減は極めて困難 [亡国のF-35]

現在時間当たり44000を36000にの見通しも
しかし目標の25000には程遠く、以後増加予想も

F-35 luke AFB2.jpg2日、下院軍事委員会の航空地上部隊小委員会に出席した国防省F-35計画室長と国防省コスト評価局長はF-35導入上の大きな問題となっている維持整備費(F-16の3倍に近い)の削減見込みについて証言し、目標となっている2025年に飛行1時間当たり維持整備費を$25000にまで削減するのは極めて難しいと述べました

米空軍が導入しているF-35Aの機体価格は徐々に低下していますが、F-16戦闘機では$15-16000と言われている時間当たりの維持整備費が現時点で$44000と3倍近い額となっており、計画している年間調達機数に踏み込めない大きな障害となっており、一方で第4世代機F-15改良型を再び調達する決定を後押しした背景となっています

証言した両者の将来見積もり数値は微妙に異なっていますが、目標設定前年の2024年時点で$34-36000で、目標の$25000とは大きな開きがあり、更にその後は初期導入機体の補給処整備が始まるため、横ばいか増加傾向になるとの見通しで、全く光明が見えない状況にある模様です

念のためこれは最も最適な環境にある米空軍F-35Aの話であって、FMSで日本が購入するF-35Aの維持整備費がどれだけ膨らむかは、恐ろしくて考えたくもない話です。ましてや、ライセンス国産しているF-15Jとの比較など・・・

2日付米空軍協会web記事によれば
Winter2.jpg国防省F-35計画室のMat Winter中将は、現状で$44000の時間当たり維持整備経費が2024年時点で$34000にまで低下すると証言し、国防省Robert Daigleコスト分析評価局長は$36000だとの見積もりを示した
●両者とも今後細かなデータ収集と分析を行う事でこの数値は変化すると説明したが、いずれにしては2025年の目標である$25000まで維持整備費を抑えることは極めて難しいと証言した

F-35計画室長は、今後5年間で44000から34000に23%削減する見積もりであるが、その後の1年間で34000から25000に削減することに今後も取り組んでいくと苦しい説明を行った
●一方でDaigleコスト分析評価局長は淡々と、「2025年に$25000に到達する見込みはない」と述べ、 更に2025年以降は機体の整備所要と補給処整備が増加し、飛行時間当たりの維持整備費は良くて横ばい・普通なら増加すると証言した

F-35 luke AFB.jpg国防省自身は、その維持整備費削減に必要なことを把握している。機体維持に必要な部品を迅速に調達すること、補給処レベルの部品修理を迅速にすること、前線部隊での整備時間を削減して実動時間を確保すること等である
F-35計画室長は「この機体は2077年まで運用する見込みだが、長期的視点でaffordableにすることに焦点を当てている。今後20204年までに、どれだけ維持整備費を削減できるかをその時まで明らかにすることは出来ない」と微妙な表現で語った
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頑張ったとしても、第4世代機の2倍の維持整備費を覚悟する必要があるのでしょう時間当たり$30000前後になるのでしょうか・・・

今年2月28日、米空軍参謀総長はF-35維持費が第4世代機並みに低下すると想定するのは非現実的だ」と述べ、F-15EX購入に踏み出すことへの説明をしています

F-35 3-type.jpgステルス性を持つ機体に、高度で複雑なセンサーを搭載し、かつ外部の情報融合能力を持つ高度な機体F-35を、第4世代機と同レベルの維持整備費で保有するのは非現実的だとの本音ですが、2018年4月には「F-35の維持費をF-16並みにしたい。そうしなければ米軍だけでなく世界の空軍が困難に直面する」と言っておきながら・・・・です

組織の人とは言え、様々なしがらみがあるとはいえ、将来の歴史家はF-35計画を推進した人達を厳しく評価せざるを得ないでしょう・・・

関連の記事
「F-15EXは空軍の選択ではない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-02
「ALISは依然大きな障害」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-02
「2Bソフト機は稼働率4割台」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-10-1
「2/3が飛行不能FA-18の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-07
「世界中のF-35稼働率は5割」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-3
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「維持費をF-16並みにしたい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-01-1
「再びGAOが警告」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-10

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米空軍F-35が初実戦でIS拠点攻撃 [亡国のF-35]

中東展開から約2週間後に初実戦
イスラエル空軍と米海兵隊に続くF-35実戦投入

F-35 Gilmore.jpg4月30日、中東UAEのAl Dhafra空軍基地に展開中の米空軍F-35A(展開機数も非公開)が、初の実戦任務としてISISの地中トンネルと兵器庫を同日攻撃したと米中央軍が発表しました。

F-35が実戦投入されたのは、2018年5月のイスラエル空軍機、2018年9月の米海兵隊機に続くもので、2016年8月に米空軍がF-35の初期任務態勢確立を宣言してから2年8か月を経て初めての実戦投入となりました。

米中央軍は、攻撃の成否については明らかにしていませんが、2機のF-35AがJDAMで、「ISIS戦闘員たちが戦力再興のために人員兵器装備を移動させようとするのを阻止し、イラク治安部隊による反撃を支援するために」任務を遂行したと発表しました。

F-35 3-type.jpg今回の初実戦任務は、米空軍F-35が初めて戦闘地域である中東に展開した4月15日から約2週間後に行われたもので、航空自衛隊F-35Aによる同型機として初めての墜落事故が4月9日に発生してからも僅か3週間後に行われています

長期間にわたり慎重に検討された末の中東展開と初実戦投入でしょうが、同型機の墜落事案が発生した直後に作戦地域である中東に機動展開し、現地での作戦運用に習熟した後、直ちに作戦投入されたことからすると、あくまでも推測ですが、三沢沖の墜落事案は機体の問題以外が原因で発生したものと当初から明らかなのかもしれません

調査中の事案について安易な推測は慎むべきですが、同墜落事案と米空軍F-35実戦投入のタイミングが同じであることから、そんなことが頭をよぎりました・・・

F-35実戦投入関連の記事
「米空軍F-35Aが中東初展開」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-16-1
「大型爆撃機の中東展開終了?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-30-1
「海兵隊F-35が初実戦投入」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-28-1
「イスラエルが世界初実戦投入」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26
「米空軍F-35部隊がIOC宣言」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-28 

タグ:Al Dhafra ISIS F-35A
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太平洋軍司令官が米議会にお願いした事項 [Joint・統合参謀本部]

法律に基づき、予算化された以外の要望事項を提出
米陸軍のマルチドメイン部隊に期待大

Davidson6.jpg4月18日付米海軍協会web記事は、太平洋軍司令官Phil Davidson大将が米議会の軍事委員会あてに出した(提出した)、「予算から漏れた事項で要望したい一覧」レター(3月22日付)を入手し、その概要を報じています。なお、同レターの内容は同17日にWSJ紙が最初に報じた模様です

米軍の各軍種は、予算案を提出する際、併せて「予算枠に収まらないため要求を断念した重要事業リスト」を提出することになっていますが、メジャーコマンド司令官にも同様のリストを求めることはあまり例がないようです

レターの中には、地域の弾道ミサイル防衛を強化するミサイル駆逐艦増強やグアム島への地上ミサイル防衛装備の設置、米陸軍のマルチドメイン部隊の増強、訓練環境を改善する施設の改良などが含まれており、米太平洋軍の置かれている脅威認識が伺えます

Davidson大将は「この要望に含まれている事項は、安全保障環境を勘案したうえで、実践的で有効なアプローチによりアドバンテージを再び獲得する条件を整え、同盟国等に安心させ、潜在的敵対国が一方的に国際規範に基づく秩序を変えることが無いよう思いとどまらせるためのものである」とレターで説明しています

要望事項に含まれた事項の概要
Davidson4.jpgアジアにおける米陸軍マルチドメイン戦力への支援。同戦力は、防空、ミサイル防衛、及び精密誘導ロケット、砲、ミサイルと高等通信力による沿岸防衛においてクロスドメイン任務を遂行するだろう
グアム島における、恒久的でこう坦性のある地上配備型IAMDシステムの配備支援

●米国と協力する東南アジアとオセアニア諸国の有志同盟国等に必要な航空及び海洋軍事能力及び兵站能力を提供するため、 「modest foreign military construction」を支援
●技術開発が進む最新の超々音速兵器や弾道ミサイル脅威に対抗するため、イージス駆逐艦に最新の「AN/SPY-6」レーダー搭載する近代化改修を加速する

宇宙配備の弾道ミサイル探知識別レーダー改良開発、および地上配備レーダーシステムの発展開発の支援
同盟国等とのマルチドメイン(クロスドメイン)情報共有のためのデータネットワークに必要な投資やインフラ整備の支援 

Davidson7.jpgオセアニア諸国のための海洋安全保障取り組みを、東南アジア諸国の成功例を踏まえて構築
ハワイ、グアム、アラスカの老朽化が進む訓練演習施設インフラへの投資を支援し
●インドアジア太平洋軍の同地域での体制を再調整し、敵対者に対する優位的立場を奪還するために必要なサイト調査、設計、施設等整備投資への支援
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報道された部分は「公開可能部分」(非公開部分に具体的な予算規模や必要人員数が記載されている模様)で、「中国」との具体的な脅威対象を明示する記述はないようですが、エアシーバトル(懐かしい響き:涙目・・・)当時から指摘され続けている中国の軍事増強を意識したものとなっています。

Davidson3.jpg課題は明白ですし、約10年間変わりありません米軍の西太平洋地域での問題である少なく脆弱な飛行場をはじめとする作戦基盤を、中国の各種ミサイル攻撃から守り、地域同盟国の力を養成しつつ協力し、クロスドメインの旗印のもと統合戦力の力を最大限に発揮して敵対国に対処することです

そして、なんと言っても、各種の面で失った優位的立場を「奪い返す、再度確保する:Regain」との言葉を繰り返し使っている点を肝に銘じるべきです。冷戦当時から続いている「戦闘機だけの防衛力整備」を改めるべきと言い続けている理由もここにあります

マルチドメインの関連
「対中国で米軍配置再検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-16-1
「射程1000㎞の砲を真剣検討」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-26-1
「RIMPACで日米陸軍が訓練」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-21
「再びハリス司令官が陸軍に要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16

「尖閣防衛に地対艦ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14
「ハリス大将も南シナ海で期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06
「陸自OBが陸自で航空優勢と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-12
「CSBA:米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14

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