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次の米軍人トップは陸軍から [Joint・統合参謀本部]

またもや空軍人は嫌われました
宇宙軍創設への「面従腹背」が原因か?

Milley2.jpg8日、トランプ大統領は伝統の陸軍士官学校VS海軍士官学校アメフト対抗戦で次の統合参謀本部議長に現在の陸軍参謀総長Mark Milley大将を推薦すると発表しました。通常は年明けに発表する様ですが、今回はなぜか早まっています

金曜日の時点で記者団に、「試合での先行チームを決めるcoin tossを、現在のDunford統合参謀本部の議長と「後任者」を伴って行う」と語り下馬評の高かった空軍参謀総長David Goldfein大将ではなく、陸軍か海軍人だと示唆していました

海軍トップのJohn Richardson大将は間もなく退役と言われていたことから、米メディアは一斉に「次の統合参謀本部議長はMark Milley陸軍大将だ」と7日時点で速報していたところでした

各種報道によれば11月に大統領とマティス国防長官とDunfrd現議長が候補者であるMilley陸軍大将とGoldfein空軍大将に面談した際、国防長官とDunford議長は空軍大将を押したそうで、下馬評でも空軍大将が断然有利と言われていたのですが、トランプ大統領はMilley陸軍大将を気に入った(兼ねてから良い関係だったとの記事も)ということです

Goldfein1-1.jpgマティス国防長官とDunford議長がGoldfein空軍大将を推薦したのは、陸海空海兵隊軍人が「偏りなく」兵員比に応じて順番に米軍人トップを務めてきた背景と、2005年退役のマイヤーズ空軍大将以来長期間空軍が同ポストについていないこともありましょうが、戦いの様相が航空宇宙やミサイルやサイバー重視になり、その中で指揮統制C2の中核を果たすのが空軍であることや宇宙軍創設の動きも強く関係していると考えられます

しかしトランプ大統領はMilley陸軍大将を選びました。カリスマ性のある人物として知られるMilley陸軍参謀総長に感じるものがあったのか、はたまた大統領が命じた宇宙軍創設に「面従腹背」感が漂う空軍幹部に不信感を持っているのか、空軍人に弱弱しさを感じたのか・・・その辺りは現時点で不明です

Goldfein112.jpgそれにしても、またもや米空軍人は嫌われました。現在の議長が19代目で、歴代では陸軍9名、海軍と空軍が4名、海兵隊が2名の配分で努めており、兵員数比率で考えると「美しい調和」を見せていますが、少なくともまんぐーすの知るここ10年間ほどは、空軍幹部の評価には厳しいものがあります

戦闘機にばかり拘る戦闘機パイロット出身がほとんどの米空軍参謀総長は、視野が狭くて統合参謀本部議長には不適とまで囁かれています。これで前回のマイヤーズ空軍大将後、5代の議長が空軍以外となります

どうやら、技術開発や戦力造成を主に掌握する副議長にはPaul Selva空軍大将以降も空軍大将が就任する方向で、有力候補がHyten戦略コマンド司令官(前空軍宇宙コマンド司令官)の様ですが、重要な分野なのにポストは与えられない情けない状況が、来年秋以降も最低2年間は続きます。

以下、次期議長候補のMark Milley陸軍大将をご紹介
Milley4.jpgボストン近郊の出身で1980年プリンストン大学出身。熱烈なMLBレッドソックスのファン。歩兵部隊士官としてキャリアをスタートするも特殊部隊指揮官を務めた経験もあり、パナマ侵攻、ボスニア紛争、イラク戦争で現場指揮をとっている
●最近では米陸軍戦闘コマンド司令官、アフガン駐留米軍の副司令官、第82空挺師団長、第5特殊作戦群司令官などを経験し、2015年8月に一般には「サプライズ」と言われながら陸軍参謀総長に就任した

Milley5.jpg誰にでも率直な意見を述べることで知られ、2017年に下院軍事委員会で予算決定が議会で遅れている状況を正面から非難し、議会を「professional malpractice:悪習慣のプロ集団」と揶揄して驚かせた
統合参謀本部では作戦幕僚として勤務経験があり、また国防省では国防長官の軍事補佐官のポストも経験している
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2019年は米軍主要指揮官の交代が相次ぎます

海軍人トップの作戦部長John Richardson大将、海兵隊司令官のRobert Neller大将、統合参謀副議長のPaul Selva空軍大将、そして陸軍参謀総長も後任者が指名されます

ただし、空軍参謀総長のGoldfein大将だけは、2020年夏までは現職で頑張るようです

Mark Milley陸軍大将の公式経歴
https://dod.defense.gov/About/Biographies/Biography-View/article/614392/general-mark-a-milley/

関連の記事
「次の米軍人トップは空軍から?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-21
「ダンフォード噂の記事」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-02
「デンプシー大将の課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-13

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RANDが中国空軍戦力に新たな視点でアプローチ [中国要人・軍事]

Rand China.jpg11月28日、RAND研究所の「Project Air Force team」が中国空軍の戦力・組織・ドクトリン造成において米空軍を模倣する分野や程度を分析し、そこから見えてくる中国空軍の傾向から、中国空軍や中国軍の対米軍戦略などが見えてくるのでは・・・との報告書を発表しました

この報告書は、既に2017年9月には(調査を依頼した)米空軍に報告されているとのことですが、何らかの理由で、今になって「Defeat, Not Merely Compete: China’s View of Its Military Aerospace Goals and Requirements in Relation to the United States」とのタイトルで公開されることになりました

全てを読んでおらず、同報告書のサマリーや紹介記事を見ての感想は、なかなか観念的で想像力をたくましくしないと理解が難しいですが、珍しい(当たり前とも言えますが)視点ですのでとりあえずご参考まで取り上げます

体系的にご紹介する気力に欠ける(能力もですが・・・)ので、結論を構成するであろうセンテンスを、ピックアップして取り上げます

29日付AirForceTimes等によれば
Rand China2.jpg●中国空軍や航空戦力は、技術的に、また戦略的に、米軍の能力やドクトリンを模倣したものが多いが、重要なことは、米国が中国との武力紛争に至ることを抑止するために、特定の能力を十二分な数量確保する傾向があることである
●中国軍は実際の戦闘行為でよりも、抑止により戦わずして相手を抑え込むことを大いに好む。この意味において、中国にとって軍事力競争は、実戦なしに米国を破ることだとみなすことが出来る

●模倣コピーすることと自力開発することの両方があるが、低コストで迅速にコピーしたり導入することが一般的には中国軍では好まれる

●中国には5軍があるが、中国空軍の構成や技術革新追及方向は、可能性がある米国との衝突を見据えたものとなっている(注:後で陸軍は違う・・との記述がある
●中国航空戦力の増強の動機は、米国の侵攻を抑止し、必要時には高列度紛争で米国を撃破することにある

●また中国のパワープロジェクション能力は、精密誘導弾道ミサイル、巡航ミサイルで、これらが濃密な地対空ミサイルSAMと戦闘機で補完されている
parade.jpg●中国軍は、諸外国の軍事技術、組織設計、作戦コンセプトを、中国軍にフィットする場合は、自力開発する能力がないわけではない場合でもにコピーする傾向がある。
2014年に当時の米空軍参謀総長が、航空、宇宙、サイバー空間のエアパワーを融合する事が任務達成に必要だと訴えたが、中国軍はこれを模倣し、ISR、戦術戦略空輸、及び攻撃アセットに応用したようである

報告書は米空軍に対し、これらでの分野での中国軍の変化や進展と、宇宙や衛星の変化をモニターするように推奨している
●加えて報告書は米空軍に、中国軍のドクトリン、組織、訓練、人的戦力、兵たん、調達、施設への投資や変化の程度に注目するよう求めている

装備分野別の物まね度と考察
J-31 F-35.jpg●装備の分野別で類似性をみると、中国空軍戦闘機であるJ-20やJ-31と、米空軍F-22やF-35との類似程度の高さが最高レベルであるが、一方で爆撃機や精密誘導攻撃装備に関しては類似度は低い
●中国軍の対地支援CAS(close-air support)は限定的であり米軍との類似性も低いが、これは米国と想定される紛争が、南シナ海等での海空軍によるものだと中国側が考えている可能性を示唆し、同時に中国側が中国本土での空対地戦闘の必要性を想定していないと解釈でき、ドクトリン上の弱点ともとらえることが出来る

●逆に中国側は、米国による衛星利用ターゲティングへの依存を弱点ととらえ、自身は衛星によるBMD早期警戒には注力せず、宇宙の経済的利用やソフトパワー活用に加え、宇宙アセット拒否能力の獲得増強に力を入れている
●最近中国空軍が力を入れている分野に空輸と空中給油があるが、ほんの数年前までは遠距離への戦力投射能力の必要性がなかったものの、中国がアフリカへの投資や役割拡大を図る中で変化が起きたとも考えられる

PilotMarch.jpg●これらの中国観察は、あくまで公開情報を基に行われたもので、どの国もそうであるように、全ての軍事努力が公になることはないので注意する必要がある。
●それでも、平時の中国軍の動きから、米国のどの利害域を攻撃目標としているかを察知する必要がある。また中国軍に関するこのような知見は、平時における軍事交流での接触で、中国側が求める情報を入手することを防止するために有用である
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読み返しても哲学的な感じのする表現が続くので疲れますし、当たり前のような気もするのですが、中国が注力していない部分に注目するのは面白いと思います。

例えば、CASとか衛星による弾道ミサイル警戒とか・・・

最近RANDは活発ですね・・・。御用シンクタンクだからでしょうか? 米軍からの委託契約で定期的に仕事が入るが、トランプ政権に振り回される民間シンクタンクは、腰を据えて研究に取り組めないのでしょうか???

RANDの関連webページ
https://www.rand.org/pubs/research_reports/RR2588.html

RAND関連
「朝鮮半島統一のためには」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-03-1
「必要な米空軍戦力量は」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-02
「中国の核抑止の変化」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-19
「台湾よ戦闘機を減らせ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-07
「女性特殊部隊兵士の重要性」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「RAND:米中軍を10分野で比較」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-18

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国防費削減を巡り大統領VS両院軍事委員長&マティス [マティス長官]

11月30日 両院軍事委員長がWSJに「国防予算削るな」投稿
12月1日  国防長官「財政と国防は両立する」
12月2日 トランプ「軍拡競争予算はCrazyだ」
12月4日  国防長官と両院軍事委員長が大統領と議論

Trump-NATO.jpgトランプ大統領が中間選挙前の10月16日に、世論の動向から財政健全化に「突然変身」し、全閣僚に2020年度予算案は前年度5%カットで持ってこいと指示し、国防費についても当初計画の$733 billionから$700 billionだと言い放って1月半。両院軍事委員会の委員長とマティス国防長官が巻き返しに動き始めました

11月30日付WSJ紙に両院の軍事委員長(今はともに共和党議員)が「Don’t cut military spending, Mr. President」とのタイトルの寄稿を行い、「国防予算を少しばかり削減しても財政赤字への影響はわずかだが、軍事力とその装備に与える影響は手痛いものとなる」と訴え、更に「最優先事項は前線兵士たちである。今後の国防費カットは、(過去2年間の国防費の伸びから)意味のない後退である」と主張しました

翌12月1日、両軍事委員長の主張を引き継ぐ形で、マティス国防長官が主要な国防関係者と軍需産業関係者が集まった「Reagan National Defense Forum」で講演し、「財政的な主権維持と戦略的な主権維持は両立しうる」、また「国防予算カットは我が兵士と米国民を危険にさらすものだ。米国はその生存に必要な予算を支出することが可能な国だと皆が知っている」と大統領の攻防費削減指示を批判的に表現しました

mattis senate2.jpg一方で講演後の質疑でマティス長官は「らしく」、「大統領が議会に提出する予算編成過程における正常なやり取りだ」、「大きな課題だが、必要以上の国防費を使いたいとはだれも考えていない」と述べ、更に「大統領には国防長官からの助言を行う。そして助言を公言する前に、大統領に直接伝える責務を負っている」とその律儀な姿勢を保っています

しかしトランプ大統領はこれらの声に反応したのか、全く関知していないのか定かではありませんが、2日にはツイッターで「軍拡競争による国防費の増大はばかげており、習近平やプーチンと遠くない将来議論したいと思う。今年の軍事予算$716 billionはCrazyだ」とつぶやき、脅威対象と手を組んでも国防費を削減したいとの意気込みを(?)を表現しました

そんなガチンコ対立の中の12月4日両院軍事委員長とマティス国防長官がホワイトハウスを訪問し、トランプ大統領に国防費カットを思いとどまるよう訴えに行きました。国防費を巡るこの協議後の両院軍事委員長や国防長官からの発言をご紹介します

4日付Defense-News記事によれば
Inhofe.jpg●4日に会談が行われることをワシントンポスト紙が最初に報じたが、訪問した3名の戦略は、トランプ大統領がしばしば批判するオバマ大統領を持ち出し、オバマの誤った過去の国防費削減を取り戻すべきだと訴えるものだったようだ
下院軍事委員長の補佐官は会談後、「まずオバマ政権時の予算削減が米軍に与えたダメージをレビューし、一方でトランプ大統領就任後は、選挙時の約束を守ってオバマ時代のダメージ修復と軍事力復活に継続して取り組んできたと確認した」と様子を説明した

●会談後に上院軍事委員長は「国家安全保障目標に関する率直で建設的な意見交換ができた。我々は国家防衛戦略NDSを遂行するため、オバマ時代のダメージを修復し、米軍を再構築する必要があるとの目標を共有した」と述べ
Thornberry4.jpg●更に「会談を通じて大統領は、我が国を強くし米軍に適切に投資し続ける決意をしたと確信している」、「今後もトランプ大統領及びペンス副大統領と協力していくことを楽しみにしている」とのステートメントを発表した

●ただし来年、下院軍事委員長は現在の共和党議員から、民主党の国防費削減を訴えてきたAdam Smith議員に交替する。
●また上院でも、有力な軍事委員会委員であるJack Reed議員が、「国家安全保障は国防費だけで論ずることはできない」と訴え続けており、「国務省も、FBIなどなども含め、効率的に総合的に国家安全保障を考えるべきだ。現状は効率的でも効果的でもない」と述べた
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Smith A2.jpg簡単にトランプ大統領が国防予算だけ例外にするとは考えにくく、財政赤字に敏感な民意を意識しての「方針転換」ですから、国家予算全体の5%カット路線が動くことはないでしょう

更に両院のねじれ状態もありますし・・・

次は日本に何を売り込んでくるのか・・・

米軍への態度豹変 トランプの姿勢
「トランプが閣議で次年度予算5%カット指示」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-2
「前線部隊を激励訪問しない大統領」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-23

トランプに困惑の現場
「相手の核を削減させるのが上策」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-16
「サイバー戦略がもたらすもの」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-02

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フォークランド戦争で尖閣有事を考える!? [ふと考えること]

かなりまんぐーすの解釈が入っています

フォークランド諸島.jpg11月14日付で防衛研究所webサイトが、同研究所戦史研究センター国際紛争史研究室の柳澤潤氏のブリーフィングメモ「フォークランド戦争における航空優勢」(4ページ)を掲載し、島嶼防衛を考える機会を提供してくれました。

もちろん同メモは「筆者の個人的な見解であり」、また決して尖閣諸島をはじめとする南西諸島が中国に占拠された際の奪還作戦を考えるための研究などとは一言も述べていませんが1982年にアルゼンチン沖の大西洋で起こった英国とアルゼンチンの戦いを、今更防衛研究所が取り上げる理由は「南西諸島における島嶼防衛」を意識してのことと考えるのが自然です

地図が示すように、フォークランド諸島は英本土から13000㎞、アルゼンチン航空基地から700㎞も離れた場所にあり、イギリスに占拠されてから150年周年の1982年に、アルゼンチン軍事政権が奪還を試みた紛争で、4月2日にアルゼンチンが奪還占領しましたが、6月14日に降伏して再び英国支配が戻った戦いです

柳澤.jpg島を占領して攻勢的立場で主導権を握ったアルゼンチンを中国に見立て、島奪還を目指して上陸部隊を送り、同部隊を守る防空的作戦の英国を日本に見立ててみる視点が一般的でしょうが、単純に例えられない相違もあるので、ぼんやりとご覧ください

筆者の柳沢氏は元航空自衛官(防衛大学28期生:50代後半)ですが、尖閣とか南西諸島との言葉を一切使用しない中で、苦心して今の防衛省に考察の論点を提供しようと試みていますので(邪推です)、その辺りを勝手に汲んで、表現等は勝手に同メモからアレンジして、ご紹介します

同ブリーフィングメモからまんぐーすが考察すると
フォークランド諸島2.jpg●英軍の政治的制約
英軍は政府方針として、アルゼンチン本土は攻撃しないことを命じており、英軍はアルゼンチン軍機の発進拠点攻撃ができなかった。実施する能力があったかどうかは別として。
教訓→このような政治レベルからの軍事作戦制約は、先進国側にありがち

●空中戦闘
5月1日から始まった本格紛争の初日に、英軍艦載機シーハリアーとアルゼンチン軍ミラージュ等の空中戦があったが、兵器の差や操縦者技量から英側が4撃墜。それ以降はアルゼンチン側は空中戦等を避ける。紛争期間中のアルゼンチン機の被害率は151出撃で19機撃墜の13%と高い
教訓→最初が肝心、兵器の質や搭乗員の技量が重要

●英爆撃機の1発命中
エグゾセ.jpg英軍ニムロッド爆撃機が5月1日に、フォークランドのアルゼンチン軍飛行場滑走路に1発爆撃し、直接被害はなかったが、アルゼンチン軍機はフォークランドから撤退し、大陸から遠距離作戦を余儀なくされた
教訓→実際の効果より、爆撃機の存在の心理的効果

●エグゾセ対艦ミサイルで英艦艇撃沈
安価なエグゾセ対艦ミサイルで英海軍駆逐艦シェフィールドが撃沈され、英空母2隻はエグゾセ射程外の遠方から作戦せざるを得なくなり、航空優勢獲得が極めて綱渡りになった。
教訓→艦艇の脆弱性顕在化、空中給油機能の重要性再認識。当時アルゼンチンは限定的給油受給能力あり。一方の英軍は本紛争間に急きょC-130とニムロッド爆撃機に空中給油能力を付加)

●アルゼンチン機が低空侵入で英の探知回避
A-4.jpg英軍が早期警戒機等を保有しないことを知るアルゼンチン機は、低空で侵攻してフォークランド島の英軍上陸部隊を急襲。シンプルな侵攻法だが効果大で、アルゼンチン軍機で最も攻撃成果を上げたのは最も旧式のA-4攻撃機だった

アルゼンチン軍は対艦攻撃時の爆弾信管の設定に不慣れで、多くの不発弾を生む結果となった。この不発弾がなければ英軍は敗北していた可能性が高いとも言われる
教訓→島嶼作戦は遠方での作戦となるが、低高度を含む航空状況の把握は不可欠。現代では巡航ミサイル対処を考える必要も

●紛争期間中にも装備改良
英国は遠方での作戦を支えるため、前述の空中給油機能付与のほか、紛争終了には間に合わなかったものの、シーキングヘリに早期警戒能力を付与して翌年には投入、紛争後も緊張の続く周辺地域の警戒にあたらせた
教訓→両軍とも想定しなかった地域での戦いであったが、状況に柔軟に対応して措置する能力が勝敗に大きな影響を与える
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シェフィールド2.jpg特に教訓部分は、同メモの内容からではなく、まんぐーすの勝手な解釈で書いていますので誤解なきようお願いいたします。

また紛争の流れ全体をご紹介するスペースがありませんので、ご興味のある方はブリーフィングメモを是非ご確認ください

このような戦史に関しては、ネット上でググると様々な情報を得られますが、軍事的な解釈については柳澤氏のような専門家の見方をきちんと確認したほうが良いと思います。

忘れてました! 時のサッチャー英国首相は、遥かかなたの島奪還作戦の戦費と犠牲を懸念して煮詰まらない議会に、「この場に男はいないのか!」と一喝し、13000㎞離れた島嶼奪還作戦を遂行したとの逸話が伝えられています

防衛研究所が平成22年~25年に実施の大規模研究プロジェクト
全12章の大作:「フォークランド戦争史」
http://www.nids.mod.go.jp/publication/falkland/index.html

防研のブリーフィングメモ
「トランプ政権の宇宙軍創設」→http://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary087.pdf
「自衛艦旗を巡る一考察」→http://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary089.pdf
「石津朋之氏の戦争の将来像」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-24-2
「米軍リバランス」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-17

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米空軍がFive Eyes Nations枠組みで親密議論 [安全保障全般]

Five Eyes.jpg11月15日付米空軍協会web記事は、米空軍副参謀総長であるSeve Wilson空軍大将が記者団に対し、「Five Eyes Nations」との2回目の会議に14日出席予定で、マルチドメイン指揮統制や超超音速兵器の開発について、情報を共有して各国の取り組みに重複がないように調整すると語ったと報じています

Wilson副参謀総長は具体的に、「多様な方面において、誰がリードして物事を進めるかを話しあう」、「誰がどの分野を得意としているか、米国はどの分野が強いかなどを話し合うが、超超音速兵器開発も関心分野だ」と述べた模様です

ただし「これ以上は話したくない。話し合いで結果を得たい」とも語り、親密な5か国間ならではのかなり突っ込んだ議論が行われているような気配を漂わせています

米空軍副参謀総長の動向についての情報はこれだけですが、これを機会に、1990年代後半に通信傍受網「ECHELON」の存在が表に出て物議をかもし、更に2013年にNSA契約職員だったEdward Snowdenによる情報リークで注目を集めた「Five Eyes Nations」について基礎勉強をいたしましょう

ネット情報によれば「Five Eyes Nations」は
Five Eyes4.jpg●「Five Eyes Nations」は、FVEYとも表記される米英加豪NZの5か国を意味し、WW2後の冷戦期に旧ソ連やその影響下にあった東欧諸国の信号情報(SIGINT:signals intelligence)収集を協力して実施する「UKUSA Agreement」を結んだ国々である
●当該5か国はその目的のため、通信傍受網「ECHELON」を構築したが、現在では世界中の官民両方の通信を傍受モニターしているといわれている

1990年代後半に通信傍受網「ECHELON」の存在が明らかになった際は、反体制的な活動家や影響力の大きい反政府的な発言を行う俳優や歌手にまで対象を広げて活動を行っていることが明らかになり、欧州や米国議会で議論を巻き起こした
911事案以降は、よりインターネット世界の情報流通に活動の焦点が向くようになったといわれている

2013年にNSA契約職員だったEdward Snowdenが行った情報リークでは、5か国の情報収集活動がそれぞれの国の法律を無視した違法レベルに及んでいる事を暴露し、また各国の法律違反にならないよう、他の加盟国に自国の要注意人物を監視させるなどの協力が行われていることも表面化した
Five Eyes3.jpg●このような活動に批判も起きたが、現在もFVEYは最も包括的ないわゆるスパイ同盟として存在して活動を継続しており、その活動は信号情報だけでなく、人的情報(HUMINT)や地理情報(GEOINT)などにも拡大している模様である

●かつて、フランスやドイツをメンバーに加えようとの動きもあったが、そのたびに反対勢力が優ってFVEYは維持されている
●これまでの様々な情報リークにより、著名人でFVEYに監視されていた人物として、俳優のチャップリン(共産主義的な思想)、ジェーンフォンダ(反政府的な活動)、ジョンレノン(反戦活動)、ネルソンマンデラ、メルケル独首相等々も監視対象であったことが暴露されている

「Five Eyes Nations」を中心に協力枠組み拡大も
Five Eyes2.jpgイスラエルとシンガポールは、FVEYのオブザーバーやパートナーと言われている
●5か国に、デンマーク、フランス、オランダ、ノルウェーを加えて「Nine Eyes Nations」との枠組みもある模様
●上記9か国に5か国(ベルギー、独、伊、スペイン、スウェーデン)を加え、「14Eyes Nations」との枠組みも
日本の名前が出てくるのは、コンピュータネットワーク監視の枠組みとして41か国に拡大される段階と言われている
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人種というものの壁を感じざるを得ませんが、秘密保護に関する体制が日本国内で不十分なことや、島国であるために情報管理やスパイ活動に「疎い」国民性も、海外からの信頼を得られない原因かもしれません

戦国時代や明治維新のころは、日本の人たちも情報感覚では世界一流だったと思うのですが・・・

少しは関係のある過去記事
「究極のインテリジェンス教科書」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-22
「司馬遼太郎で学ぶ日本軍事の弱点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-01
「失敗の本質」から今こそ学べ!→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-12-31
「イスラエル起業大国の秘密」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-20

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空自F-15MSIP機がEW&ミサイル増強改修へ [安全保障全般]

F-15 2040.jpgDefense-News記者が防衛省の宇野茂行・防衛政策局防衛政策課企画調整班長(principal deputy director of the defense planning and programming division)に突撃取材を敢行し、2019年度予算案に航空自衛隊F-15戦闘機の最新型に更なる近代化改修を行う予算を計上予定であるとの情報を紹介しています

11月30日まで東京ビックサイトで開催されていた「国際航空宇宙展2018」の取材に訪れていたMike Yeo記者は、この記事の数日前にも「日本がF-35飛行隊編成を準備中」との記事を掲載し、現在5名のF-35パイロットが中心となって部隊立ち上げ準備中だと紹介していましたが、これといった話題が展示会でなかったことから、苦心の末ひねり出したF-15改修の話題かと思われます

F-15 upgrades.jpg現在も航空自衛隊は約200機のF-15戦闘機を主力機として運用していますが、約半分が初期型で発展性がないため100機のF-35を後継機に導入するとの報道が最近ありました。

他の約100機は発展性のあるMSIP機として当初から導入され、うち88機は既にLink-16搭載などの改修を行っていますが、今回の取材により、このMSIP機に更なる改修を行う方針が明らかになったとのことです

11月30日付Defense-News記事によれば
●防衛省で宇野茂行氏は、2019年度予算にMSIP機の改修プロトタイプとして、2機の改修経費約100億円と初期費用400億円を計上する計画だと明らかにした
●改修内容を予算要求では、「周辺国軍の能力向上に対応するための新たな電子戦装備」と説明し、併せて搭載空対空ミサイルの増加や、長射程スタンドオフ空対地ミサイルJASSM(AGM-158)等を搭載可能にする改修が計画されている

F-15 upgrades3.jpg●東京で開催されている国際航空宇宙展に、ボーイング社が空対空ミサイル18発を搭載可能な先進F-15構想機を展示しており、現状8発搭載から大きく搭載量を増やしている
●また宇野氏は、予算要求資料には明確に述べられていないかったが、F-15レーダーの改修も含まれていると認めた。

●レーダーについて宇野氏は詳細に述べなかったが、新レーダーは恐らくボーイングがシンガポール(F-15SG)やサウジ(F-15SA)に提供しているのと同じAESA(active electronically scanned array)レーダーのAN/APG-63(V)3であろう
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ネット上で検索すると・・・
AESAレーダー(AN/APG-63(V)3)、
新型ミッションコンピューター(ADCPII)
新型電子戦システム(EPAWSS)への換装、
2連装AAMランチャー×4装備型コンフォーマル・フューエル・タンクの搭載
主翼下AAMランチャーの4連装化によるAAM搭載数増大 
がボーイングから売り込まれていたようです

F-15 AD.jpg戦闘機好きの皆様には既にご承知のニュースかもしれませんが、戦闘機だけにどれだけ予算をつぎ込むんだと、大きな疑問符と共にご紹介しました・・・

Defense-newsも防衛省で取材する時代になりましたか・・・感慨ひとしお・・・

日本への様々な売り込み
「F-22とF-35装備融合機提案も」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-01
「ボーイングがF-15X宣伝中」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-24-1

一方で米軍F-15は冷や飯
「コッソリF-15C電子戦能力向上を中止」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-03
「F-15Cの早期退役やむなし?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-22
「米空軍がF-16延命へ:F-15C退役に弾み?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-13
「衝撃:制空用F-15全廃検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-23

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