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国防省:8月に宇宙対処組織検討を議会に [サイバーと宇宙]

火消しをしたはずが、トランプ発言で再び火消しへ

Shahahan.jpg4月24日、Shanahan国防副長官が記者団に対し米空軍から宇宙分野を独立させて「宇宙軍:Space CorpsやSpace Force」を4軍と並ぶ軍として創設する議論についての検討レポートを6月1日までにまとめ、8月には議会に説明したいと語りました

宇宙軍分離独立案は、米空軍が戦闘機や爆撃機ばかりに投資し、重要性が増す宇宙アセットが後回しになっていると強い不満を持つ下院が昨年持ち出し、年末にかけ国防省と米空軍が必死になって「火消し」を行った経緯があります

しかし、国防省等がやっと一息ついた矢先の今年3月13日、トランプ大統領が海軍部隊訪問時、いきなり「宇宙軍創設案は素晴らしい!」と演説し、この発言の「火消し」に国防副長官を中心とした検討を行うことになっているわけです

Wilson_Goldfein.jpg国防省や米空軍幹部の言い分は、宇宙の重要性に鑑み、「宇宙軍」創設は将来あり得る選択肢の一つだろうが、中露の追い上げが激しく一刻の猶予も許されないこのタイミングでの宇宙軍分離独立は混乱を招くだけだ・・・です。

そして「火消し」のため米空軍は、空軍司令部に宇宙担当部長職(中将)を設けたり、宇宙関連予算を大幅に増額したり、宇宙アセット運用組織を改革したり等々、種々の取り組みを打ち出してきたところです

Shanahan国防副長官が記者団に対し
space-based 2.jpg●副長官は記者団との朝食会で、約6か月間をかけて取り組んできた内部検討レポートを、8月には議会に提出したいと語った
●「我々は、組織と調達プロセスと運用枠組みと4軍の統合融合等において、また攻撃と防御の能力整備において、何が必要で何を変える必要があるのか検討してきた」、「そして検討結果として求められる変化について、どのような仕組みで実現できるか・・・について答えを出したい」と語った

●8月に議会説明するため取り組んでいるが、米空軍は非常に協力的で対応が早く、検討は予定通り進んでいる
組織図を広げ、新たな組織や指揮系統を描くことは容易だが、実際に組織を機能させることは容易ではないと副長官は語り、実際に新システムを導入するケースに言及し、リーダーシップの問題等を指摘した

●更に「米空軍が必要な施策を実行できていないなら異なる手法も必要だろう。まさにここが分析検討しているところであり、どのような変革が可能か、実行可能性があるかを見ている」と説明した

●なお24日に上院軍事委員会で証言したWilson空軍長官は、米空軍の働きと予算配分に自信を示し、「オープンな議論をする準備がある」と語っている
space-based 4.jpg●そして長官は、「2018年度の5か年計画から18%も予算を増額した2019年度の同計画を作成した。ここにこそ変革がある。組織がどうのこうのではなく、敵対者に対して、我々が何をしているのかを示すことが重要だ。我々は宇宙で手を出す相手がいれば、凌駕する準備がある」と現状に自信を示した
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なおトランプ大統領は5月1日にも、ホワイトハウスに陸軍士官学校のアメフトチームを招いた際に記者団に対し、「6番目の軍を考えているんだ。宇宙だよ。この意味わかる?真剣に考えているところだ!」と語っています

肌感覚として、米空軍内の雰囲気がわかりませんが宇宙担当幹部の本音を聞いてみたいものです

宇宙軍独立を主張する議員が、空軍内部の不満分子や宇宙幹部OBをメディアの前で語らせる・・・なんて構図が夏にも見られるかもしれません。そんな時間はないと思いますが・・・

宇宙軍を巡るつばぜり合い
「トランプの宇宙軍発言に真っ青」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-17
「下院が独立法案承認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-14-1
「下院が宇宙軍独立案を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-22-1
「米空軍はA-11設置で対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-18
「米空軍が宇宙活動アピール作戦を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-24

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注目の独トルネード戦闘機後継選定 [安全保障全般]

4月27日、就任直後のポンペイオ国務長官はNATO外相会談で欧州諸国に国防費増を訴え、その矛先がドイツに向く中、同日訪米中のメルケル首相も努力すると発言する中で・・・

typhoon4.jpg25日、開催中のベルリン航空ショーでユーロファイターCEOが、独空軍が保有する90機のトーネード戦闘機の後継争いで、F-35よりもユーロファイターが有利に立っていると語っています。

先日ご紹介したように、仏と独が中心となり、次世代戦闘機の開発プロジェクトを立ち上げ、欧州全体を巻き込んだプロジェクトに成長させようとの取り組みが同航空ショーでぶち上げられ、2040年の運用開始を狙うようですが、トーネード後継機はその間の「つなぎ役」を期待されているようです

もちろん米国のF-35売り込みは激しく、かつ冒頭でご紹介したように、米国務長官の就任翌日の初仕事が同盟国への国防費増要求ですから、ユーロファイターCEOも枕を高くして眠れないでしょう。

同様の国防費増加要求(米国製兵器の売り込みも含め)が、今後日本にも、しかもポンペイオ国務長官経由でも来襲するでしょうから、直接関係ありませんが、ちょっと覗いておきましょう

NATO、特にドイツへの国防費増要求
Pompeo.jpg就任翌日にブラッセルでのNATO外相会合に出席したポンペイオ国務長官は、2024年までにGDP比で2%まで加盟各国の国防費を増加(うち2割は装備品導入に使用せよとの要求含む)するとした、2016年9月NATOサミットでの合意事項の履行を強く訴えた
●欧州NATO加盟国が国防費を増やす傾向にある中、独を含むいくつかの国は不十分で、特に独は、現1.24%から1.25%に増加する見通ししかたっていない

●同日、メルケル独首相はマクロン仏大統領に続くように訪米し、トランプ大統領との共同記者会見で、「米からの要望を受け、段階的に、今後数年間で国防貢献を増加する」、「NATOに貢献してきたが、より貢献が必要なことも認識している。欧州がこれ以上米国に依存することはできない」と語った

トーネード後継機選定について
typhoon3.jpg●ユーロファイター営業責任者は、「ステルス性は総合能力の1割程度を占めるに過ぎない。ユーロファイターは他の9割で(F-35に)優っている」と自信を見せた
●ユーロファイターCEOは、「ユーロファイターに投資されたすべての資金が欧州内に落ちることを保証する」と語るとともに、欧州市場で同機が引き続き存在感を見せる事を保証すると語った

●また両者はともに、同機がF-35のように「black boxes」を持たず、技術や運用ノウハウの全てを同社が保有して活用可能である点も強調した
独空軍内部には、F-35のステルス性や突破力などの第5世代の能力を支持し、ユーロファイターの能力不足を主張する声もあるが、独仏を中心として始まった次期戦闘機が完成するまでの「つなぎ役」にそれほど投資する必要があるのか・・・との意見が強い

●トーネードが担ってきた核兵器運搬能力に関しては、秘密事項に当たるとしてユーロファイター関係者は会話を避けたが、ドイツはNATOとの約束を履行すると同CEOは語り、米国が本件を盾にユーロファイター導入に抗議することはないだろうとも語った
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Pompeo2.jpgF-35も未だ核兵器搭載改修は手つかずで、今後その投資を検討する・・・段階だったと思います。核兵器搭載承認を行う米国に、ユーロファイターが意地悪されないことを祈りつつ・・・

また、中東とイスラエルをNATO本部の後に訪問したポンペイオ国務長官が、近いうちに極東にも表れ、強い要求を日本に行うのでは・・と気になります

そういえば、夏に退役後、豪州大使(2年近く空席)が予定されていたハリス太平洋軍司令官が、ポンペイオ氏の意向で韓国大使になるようです。動きが早いです

「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2

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ジブチで米空軍操縦者が中国レーザーで目を [安全保障全般]

外交ルートで正式に中国に抗議申し入れ

Djibouti.jpg3日、米国防省の報道官が記者会見で、アフリカの角ジブチに拠点を構える米軍C-130輸送機(特殊作戦機かも)の操縦者が、最近付近の中国軍拠点から「軍事用途レベルのレーザー光線」を照射される事案が連続発生し、目に軽度の障害を受ける事態も起こっていることから、正式に外交ルートで抗議したと明らかにしました

ジブチの周辺地域には、米軍と中国軍がほぼ隣り合わせで拠点を構え、中国はアフリカ大陸唯一の軍事拠点として、2016年3月から、公式にはアデン湾での海賊対処や艦艇への物資補給を目的として拠点を10年契約でリースしてると発表しています。

米国にとってジブチ「Camp Lemonnier」は、約6千名が活動中といわれるアフリカ大陸唯一の拠点(米アフリカ軍所属)で、イエメン支援の特殊部隊も拠点にしているようです。
フランスと日本も、海賊対処の基地として使用しています

3日付Defense-News記事によれば
●3日、Dana White報道官は外交ルートを通じて「demarche」と呼ばれる申し入れを中国政府に行い、事案に対する調査を要求したと明らかにした
●同報道官は「(レーザー照射は)米軍搭乗員にとって真に脅威である」、「重大な事態であり、だから我々は重く対処している」と語った

Djibouti2.jpg●別の報道官は、「軍用レベル:military grade」のレーザー照射を受けたC-130操縦者は回復に長期間を要しないと説明したが、最近数週間の間に発生した複数の事案の被害の一つだと語った
●正確に何件事案が発生しているのかには言及しなかったが、2~10件の事案が発生していると説明した。そして事案の頻度が増しつつあり、操縦者2名が同時に被害を受ける危険な事態が発生したことから公式な抗議を行ったと報道官は説明した

●記者団からのレーザー照射の目的を問う質問に対して報道官は、「その質問は記者の皆さんから中国側に行ってほしい危険な行為であり、我々は重大な事案だと考えているから公式な抗議を行ったのだ」と訴えた
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4日、中国外務省はすぐさま「中国は何もやっていない」「関係ない」と報道官が反論したようです。

「軍用レベル:military grade」の程度が不明ですが、最近では相当の出力のレーザー発射機が市販されており、日本でも民航機や自衛隊機への妨害事案が報じられています

あまりに単純なので、中国側の組織的なものなのか「?」な気がします。アフリカに派遣されえ暇な中国兵士が、勝手に持ち込んだレーザー発射器具で「いたずら」しているのでは・・・とも思います

まぁ・・・中国ですから、何を考えているかよくわかりませんが・・・

レーザー兵器関連
「米海軍が先行か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24
「無人機に弾道ミサイル追尾レーザー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-17-1
「私は楽観主義だ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-23
「レーザーにはまだ長い道が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-18
「AC-130に20年までにレーザー兵器を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-06

国防省高官がレーザーに慎重姿勢
「国防次官がレーザー兵器に冷水」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-12
「米空軍大将も慎重」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-24

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映像:エイ型の無人移動機雷トルコ製 [ちょっとお得な話]

3か月後に市場投入とか・・・
海底でセンサーとして機能しつつ待機し、敵艦艇を発見したら移動して船底に張り付き爆発!

Turkey sea.jpg16日付Defense-Newsが、トルコ企業が開発したエイのような形状でエイのように移動可能な無人機雷(mobile naval mine)「Wattozz」のプロモーション映像を紹介しています。

トルコの無人機企業「Albayrak Savunma」と、黒海近くに所在する「Karadeniz Technical University」が、約2年間をかけて開発した無人移動式機雷で、同企業の会長であるMustafa Adnan Albayrak氏は、トルコ国産で初の水中無人機となる同兵器を、3か月以内に市場投入すると語っているようです。

エイの目の部分に2つのカメラを搭載し、3つのエンジン(モーター?)を動力に、最大速度5.5ノットで最大12時間移動可能だそうです。
またエイ型の機体(船体)はチタニウムとアルミで出来ているそうですが、表面の塗装や形状などからステルス性を持ち、敵に発見されにくいそうです



このエイ型無人機雷は、海底で待ち伏せの間はセンサーで情報収集にも活用でき、敵艦艇(映像では空母)を探知すると(指令により?)動き出し、船底に張り付いて爆発するイメージの運用構想です。

記事では「It can carry explosives and is controlled by encrypted acoustic sound waves」となっており、爆発のタイミングを「暗号化された音波」で遠隔で行うのか、操縦も遠隔で行うのか細部が不明ですが、映像通りの動きが可能なら、恐ろしい兵器になりそうです
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Tuekey sea2.jpg失礼ながら、トルコの企業が地元大学と組んで2年間で開発できるなら、米国や中国などがすでに手を出しているような気もしますが、本当に映像のような製品が出来上がっているのか・・・気になるところです。

本物は、電池やモーターや爆発物を搭載すると考えると、もう少し「太っちょ」なもののような気がします。ネット上では実物の写真が見当たりません・・・楽しみにいたしましょう

映像で5つの視点から学ぶ
「A-10攻撃機を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10-1
「米空軍パイロット」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-05-1
「カモフラージュ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-16
「米海軍空母」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-25
「核兵器」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-05

「米海軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-27
「米海軍潜水艦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-26
「火炎放射器」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-11-2
「負傷者救出ヘリ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-07

「B-2爆撃機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-01
「AK-47ライフル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-28
「原子力潜水艦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-07-1

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マティス長官:ロシア製武器購入を許してやって [マティス長官]

Mattis CAA.png26日、マティス国防長官は上院軍事委員会の公聴会でロシア製武器を購入した米国の同盟国等に制裁を課す法律CAATSAの施行に例外を認めるよう訴えました。

具体的には、ロシア製で「F-35キラー」との異名を持つ高性能地対空ミサイルS-400を、トルコとインドが輸入しようとしていることに対し、制裁を控えるよう要望しているようです

このCAATSA(Countering America's Adversaries Through Sanctions Act )は、ウクライナの反体制分離派を支援し、シリア政権に加担するロシアに対する制裁措置として議会が提案したもので、トランプ大統領も効果を疑問視して署名を渋っていましたが、昨年8月サインしているようです

インドはともかく、NATOに防空を実質依存しながら、恩を仇で返す様にロシア製S-400購入に突き進むトルコには制裁がふさわしいのでは・・・と人間の未熟なまんぐーすは思うのですが、マティス長官は「そんな短気になってはならぬ」と仰せの様です

27日付Military.com記事によれば
S-400-2.jpg●マティス長官は上院軍事委員会で、長期的な米国の国益を考えて判断できるように、CAATSA法に「国家安全保障の視点からの例外規定」を設けるよう訴えました
●そして、世界の中にはロシア製兵器から西側兵器に切り替えようと取り組んでいる国があるが、そのような国も当面の間は現有のロシア製兵器の維持も行う必要があり、ロシア製品を必要としてるのだ・・・と説明した

●「インドやベトナム、その他の国に対し、厳格にCAATSA法を適用することは、長期的に見て米国自身を罰するようなものだ」と国防長官は訴えた
●そして同長官はインドネシアを例に挙げ、「インドネシアは、航空機やその他のシステムも米国製に切り替えようとしているが、旧式の(ロシア製)兵器を維持するため、なにがしら輸入する必要があるのだ」と説明した

S-400.jpg●4月上旬、プーチン大統領がトルコを訪問し、総額約3300億円のS-400売却交渉を加速させた。NATO諸国はNATO防空システムとの連接が認められないS-400購入に反対し続けている。
●また中国がS-400の購入を決定したことを受けたインドも、総額約5500億円のS-400購入交渉が最終段階にある。
●もちろんマティス長官も、ロシアによるS-400の売り込みを「多くの懸念を生じさせる」と警戒しているが。
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マティス長官の証言は26日ですが、同じ上院軍事委員会で、次期太平洋軍司令官であるPhil Davidson海軍大将も24日に同様の発言をしています。

mattis senate.jpg国家安全保障の視点からの例外規定:national security exceptions」を誰が判断するのかも気になりますが、ボルトン・ポンペイオ体制で、マティス長官のご意向がどこまで反映されるのかも今後気になるところです

シリア攻撃に関しては、マティス長官の慎重姿勢が大統領に理解され、攻撃対象がかなり絞り込まれた様ですが・・

トルコの防空ミサイル購入問題
「連接しないとの言い訳?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-30
「トルコ大統領が言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-14
「ロシア製S-400購入の動き」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-23 

「SAM選定で露に最接近」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-12
「中国製決定を破棄」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-16
「トルコ大統領訪中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-30-2
「NATOと連接しない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-20

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