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アフガン軽攻撃機が初のレーザー誘導爆弾投下 [Joint・統合参謀本部]

能力構築支援の成功例を目指して

A-29 la.jpg3月22日、米国を中心とするNATO諸国が支援して立ち上げたアフガニスタン軍(空軍)が保有するプロペラ攻撃機A-29がアフガン人パイロットの操縦で初めてレーザー誘導爆弾を投下し、見事命中させました

2001年には存在していなかったアフガン空軍を、多くの労力と資金を投入して育成してきたわけですが、2015年8月に攻撃ヘリMD-530で初の航空攻撃を実施し、2016年4月にはプロペラ軽攻撃機A-29でも初攻撃を記録していました

現在は12機のA-29を運用するアフガン空軍ですが、2019年には25機体制になり、2023年に36機体制を確立する計画の様ですが、アフガン操縦者のフライト数は現在でも毎日100ソーティーを記録し、多国籍軍の空爆の10%を担っているということですからなかなかです

3月27日付Defense-News記事によれば
A-29 af.jpg●アフガン軍を支援する多国籍軍司令部「Resolute Support Headquarters」の声明によれば、アフガン人操縦者最初のレーザー誘導爆弾は「GBU-58:250-pound」で、カブール航空団所属のA-29から投下された
同A-29は精密誘導爆弾と通常爆弾を搭載していたが、パイロットは目標周辺に一般人の存在を認めたため、レーザー誘導爆弾を選択した。攻撃は成功し、アフガン陸軍による地域制圧作戦を大いに支援した

●アフガン空軍への支援責任者Phillip Stewart准将は、「アフガン空軍は既に繰り返しその能力を実戦で示しており、通常爆弾でも目標の10m以内に投下する能力を備えている」、「今回は精密攻撃が必要と判断し、冷静に兵器を選択して改めてその能力を披露したまでだ」と語っている
●支援任務の将来計画を担当するLance Bunch准将は、「2017年には2016年より500ソーティーも多くの飛行をアフガン空軍は遂行し、アフガン軍の攻撃力の中核を担っている」、「アフガン人操縦者は任務を良好に遂行でき、国のために行動することが可能になっている」と評価している
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A-29 Afghan.jpg支援する多国籍軍の発表ですから負の側面には触れていませんが、訓練を施したアフガン人兵士の残存率が気になります。
イラク軍の例だと、数百人養成して10人程度しか残らなかったとか、与えた武器が横流しされたとか・・・散々な結果しか残っていません。

それでも、ダンフォード統合参謀本部議長から、「米空軍は地元軍育成に本気で取り組んでいるのか? やる気はあるのか? 空軍に入っている私の甥に聞いたが、優秀な人材は支援用に選ばれておらず、選ばれた者の士気が低いらしいじゃないか? やる気あるのか?」と、ボロクソに注意された前科のある米空軍ですから、それなりに取り組んでいるのでしょう。

ちょっと気になったのは、目標へのレーザー照射もアフガン軍がやっていたのでしょうか? そうだとそれなりに本物ですが、JTACが米軍人だったりしたらちょっとがっかりですね・・・

ご参考の記事
「米空軍は外国軍教育を重視せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-29
「朝鮮半島の戦いは汚い戦いに」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-10

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米空軍が意思決定迅速化に規則削減 [米空軍]

有事に兵士が自身で判断する癖をつけるには、平素の業務からそうしておくべき

wilson8.jpg30日、米空軍協会主催の朝食会で講演したWilson空軍長官は米空軍の業務効率化や意思決定の迅速化、更には将来戦に必要とされる前線兵士への権限の委譲と判断の適切化に向けた準備として、不要な規則の削減に就任以来精力的に取り組んでいると語りました

どの組織にも当てはまる事項で、なぜそうなっているのか当時のニーズが忘れられ、手順のみが生きているケースとか、デジタル化やIT化でもっと効率的な方法があるのに因習が残っているケースなど、いろいろと考えさせられるお話なのでご紹介します

30日付Military.com記事によれば
●Wilson空軍長官は、昨年5月に就任直後に2年計画の規則や規程の見直し削減を命じ、空軍内に存在する1400の規則や規程の100個を削減したと語った。
●また空軍長官は、時代に合わなくなっている規則の抽出を優先して行わせ、毎月見直し状況を報告させているとし、今後も2年計画を精力的に進めると説明した

wilson7.jpg●撤廃した規則の例として同長官は、米空軍の基地内に体力強化用の障害物訓練コースを構築するのに空軍長官の承認が必要だとする規則が存在していたことを取り上げ、「障害物訓練コース設置の基準が存在しているのに、その上私の承認がなぜ必要なのか」と空軍の体質を自嘲気味に語った
●そして、米空軍が直面している大きな課題が人的制約と作戦量の多さであるとし、意思決定権限を下部組織に移譲して意思決定を早め、時間と予算を節約したいと語った

●また同長官は、規則を削減することで、各兵士が自分自身で考え判断することを教えたいとも語り、「将来戦においては、敵は我の意思疎通を妨害してくると予想され、過去30年近く我々が行ってきた複雑化した指揮統制が機能するとは考えにくい。」
●更に長官は、「将来米空軍が必要とする兵士は、自らの任務と置かれた状況を的確に自身で把握でき、任務を自身が判断した手法で成し遂げる兵士だ」と述べ、「そのような兵士を望むのであれば、平時からそのように行動できるように兵士の環境を整えなければならない」とも説明した
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Wilson.jpgWilson空軍長官は、空軍士官学校卒業生として初めての空軍長官で、しかも初めての女性空軍長官です。将来戦の様相に対応できる、自身で判断して行動できる空軍兵士の育成に期待いたしましょう

改めてご紹介しると、米空軍士官学校の卒業生(女性で3期目)で7年間の空軍勤務がアリ、その後NSCのスタッフ、サウスダコタ州の児童教育長、下院議員を11年間、それらの合間に今も続く国防関係コンサル企業を設立したほか、複数のエネルギーや国防関連企業の顧問も務めた経験を持つ、3人の子供の母親です

「Wilson長官のご経歴など」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-24

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米空軍研究所が提案する将来兵器 [米空軍]

Air Force 2030.jpg3月22日、米空軍研究所AFRLが「Air Force 2030 -- Call to Action」との約5分の映像を公開し、米空軍が将来ものにしたいと考える新装備や技術をアピールしています。

映像の前半は米空軍の研究開発の歴史を振り返り、装備化されなかった数々の「Xプロジェクト」が、現在のステルス機や超音速飛行の推進装置やセンサーやサイバーや宇宙ドメインに生かされていると研究開発の意義を強調し、後半3分ごろから将来装備のイメージを紹介する構成となっています。

米空軍は2016年に「Air Superiority 2030」を発表し、旧世代戦闘機と5世代機を共存させつつ、次世代の制空を目指すとしています
そしてその描く将来の脅威下では、単一のアセットですべてを備えることは不可能で、「family of systems」で対応し、構成要素は随時最新技術を取り入れて能力向上することが可能な形態を目指すとされています

将来装備の描写はチラッとで、これまでご紹介したものですが、具体的に米空軍が映像化したことに意義がありますので、映像になっている新装備新技術をご紹介します

映像「Air Force 2030 -- Call to Action」(4分45秒
 

3月26日付Military.com記事によれば
●無人機ウイングマン(Loyal Wingman)
第5世代機の僚機として自動操縦で行動する無人ステルス航空機。2022年にデモ飛行を予定しており、敵領域に侵攻して情報収集や航空攻撃をイメージ

●次世代フライトスーツ
操縦者の血圧や脈拍や筋肉の緊張度を想定する機能を備えた飛行服

●マイクロ無人機の群れ
映像では輸送機の貨物室から投下され、主力の戦闘機や艦艇や装甲車両が敵地に侵入する前に、群れで敵の防御網をかく乱するイメージ。AFRLとDARPAが2019年にデモ飛行を計画

●CHAMP(EMP効果で電子部品や電力網を無効化)
高エネルギーのマイクロウェーブで、インフラの物理的破壊無しに電力網や電子回路を無効化する。2012年にAFRLとボーイングやレイセオンが協力して試験に成功

●レーザー兵器
AC-130やF-15等々への搭載に向け開発中
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Air Force 2030 2.jpg

見たままですが、ロシアや中国もこの映像を見て研究するでしょうし、既に米国に先んじているかもしれません

関連の過去記事
「CHAMPが復活か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-25
「核紛争前にけりをつける」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-01
「米海軍が103機の無人機群れ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1
「レーザーは海軍が先行?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24

「無人機の群れで都市戦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-09
「Nugent議員がCHAMP実用化要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-05
「夢のようなCHAMP!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-08

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西側が露の海底光ケーブル探査を警戒 [安全保障全般]

80年代以来のロシアの動きを西側が警戒

cable.jpg31日付Fifthdomainは、世界の情報通信を担う海底光ケーブルの周辺で、ロシアの深海海洋調査局に所属する「Yantar」との調査船がここ数年怪しげな動きを見せていると警戒する西側諸国の様子を報じています。

海底光ケーブルは世界の海に約400本が設置され、その総延長は地球を25周する長さにも及び、世界中の電子メールや電話やテキスト情報を運ぶことで、毎日1000兆円もの経済取引を支えてると推計されています

直径3㎝程度のケーブルの位置は公開情報で容易に確認でき、特に地上から海にケーブルが入る地点にはケーブルが集まっており、格好の脆弱点を形成しています。

調査船「Yantar」が何か悪さをしているという証拠は全く無いようですが、同ケーブルが極めて重要なのにあまりにも脆弱であるため、西側諸国は80年代以降初めて復活し始めたロシアの動きに深い悩みを抱えてしまったようです

31日付Fifthdomain記事によれば
Yantar.jpg●同調査船はロシアの「Main Directorate of Deep Sea Research」に所属し、全長約100mで60名あまりの乗員で運用される程度の艦艇である。最近ではアルゼンチン海軍の潜水艦がゆくへ不明になったことを受け、捜索のためアルゼンチンで目撃されている

●ロシア議会の文書によれば、同調査船は深海調査や秘密情報を扱う海底ケーブルの接続業務を行うとされており、2015年9月には米ジョージア州の米海軍潜水艦基地の近くで米潜水艦や各種センサーやネットワークの調査を行ったと記録されている
●ロシアのTV局は、ケーブル接続だけでなく、特別な装備を用いてケーブルの切断や海底センサーの妨害を行うことができると報じたこともある。なお、ロシア国防省は同調査船に関する質問に一切回答をしてくれない

●調査船「Yantar」が悪事を働いている証拠はないが、同艦艇が緊要な海底ケーブル敷設海域で遊弋したり、艦艇識別装置のスイッチを切って活動していることがある点を指摘し、将来の軍事作戦行動に備えた情報収集を行っているのではといわれている
Yantar2.jpg海底光ケーブル関係のトラブル発生時にその周辺に現れて状況を観察しているように見える活動もしばしば確認されており、2016年10月にはシリア通信会社のシリア地周辺を結ぶケーブルの緊急メンテナンス時に現れたり、湾岸諸国とイランを結ぶケーブルにトラブルが発生した2016年11月にもイラン沖に出現している

●海底ケーブルは一般社会インフラとしてだけでなく、米軍の軍事作戦にも使用されており、例えば2008年にイラク上空での米軍無人偵察機の活動を中断したケースでは、同無人機を操縦する米本土とイラクを結ぶケーブルが船の錨で切断され、数日間無人機の運用が停止した例もある
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考えれば考えるほど、我々の日常生活は脆弱な基盤の上に成り立っています

全長100mの調査船一杯に夜も眠れず・・・の心境です・・・。
中国もいろいろ悪さを考えているんでしょうねぇ・・・

ロシア関連の記事
「露の毒牙がセルビアに」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-10-2
「ロシアの情報戦に総力対処すべき」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-24
「露の脅威を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-23-1

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米空軍の報道規制を参謀総長が説明 [米空軍]

Goldfein media.jpg29日、米空軍参謀総長David Goldfein大将が記者団に対し3月から米空軍が各部隊に指示しているメディア対応の再教育と、再教育終了までのメディア取材受け制限について説明し、最近連続した軍事情報漏洩につながる報道対応を反省し対処するためだと語りました。

空軍トップクラスの定例会見を除き、基地への訪問取材や前線兵士へのインタビューなどを実質6か月間停止し、その間にメディ担当部署兵士のみならず、全兵士へのメディア対応再教育を行うとした3月1日付の空軍内部文書が軍事メディアにより暴露され、米メディアが大騒ぎになっていることへの対処会見です

米空軍首脳も、メディア対応を制限すれば、「知る権利の侵害だ」とか言ってプレスが騒ぐのを十分承知の上でのこの厳しい措置とその背景にある危機感を、空軍制服トップの発言から感じ取っていただきましょう

ちなみに、今回の厳しい措置の引き金となった「最近3~4件連続した秘密情報漏洩につながる不適切な取材対応事案」の中には、恐らく本ブログで取り上げた嘉手納基地F-15部隊取材記事も含まれているものと推察しています

「嘉手納基地所属の整備員はベテラン不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03 

30日付米空軍協会web記事によれば
F-15 upgrades4.jpg●29日空軍参謀総長は記者団に、冷戦期には当たり前だった情報保全に関する意識が希薄になっており、対テロだけでなく大国との本格紛争に備えるべき米国にとって、秘密保全意識を再び取り戻さすことが極めて重要だと説明した
●そして同大将は、自身が若手士官の時には、敵が欲しがるような米軍の情報を悟られない漏らさないよう、徹底的に教育を繰り返し受けた物だと振り返り、最近20年間余りの対テロ紛争でそのような教育が疎かになっていた点を反省した

●「私が若手の時はそういう時代だった。口にしてよいことと良くないことを教えられたのに・・・」と振り返りつつ、「最近3~4件連続して発生した、機微な作戦運用関連情報を軍事メディアに語って報道された不適切な取材対応事案」が、今回の措置を決断した背景にあると説明した
Goldfein-AUSA.jpg●そして「対テロが作戦の中心であった時には不適切とまでは言えなかったが、大国との競争を考える今は不適切なのだ」、「相手は我々に強い関心の目を向けているからだ」と語った

●また同時に参謀総長は、「何をどれだけメディアに語るかはバランス感覚の問題である」、「米国民に対し、米軍がどのような活動を行っているかを知ってもらうのは米軍の義務である」とも説明し、メディアに対しこれまで同様の報道を期待していると語った
●そしてメディア対応再教育を精力的に進めていることと、その必要性を再度説明し、必要な米空軍の活動に関する情報がメディアに提供されているかについて、メディアの皆さんから意見を聞く機会を設けると約束した
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本格紛争への対処を忘れ、対テロに没頭せざるを得なかった過去約20年間の「つけ」は、あらゆる方面に及んでいます。
敵から攻撃を受けることを忘れ、電子戦を忘れ・・・・そして秘密情報の管理まで疎かになる・・・恐ろしいことです。

F-35 AIB3.jpg確かに、最前線の航空機整備に従事する軍曹が、「うちの整備員は、米本土の基地と比較してベテランが少なく、2年程度で転勤していくから、現場は大変だ」などと発言してはいけませんよねぇ・・・
でもまぁ・・・F-35の問題点は、どんどんリークしていただきたいものです。「亡国のF-35」ですから・・・

「嘉手納基地所属の整備員はベテラン不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03 

F-35関連記事240本
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/archive/c2302846744-1

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