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米議会見積:今後30年で核兵器予算は140兆円 [安全保障全般]

B-2restart.jpg10月31日、米議会の予算検討室CBOが、現状の政府計画で今後30年間に核兵器の維持開発にどれだけ予算が必要かの見積もりを公表し、近代化に約45兆円($800 billion)、維持と運用に約90兆円($400 billion)など、計約140兆円が必要だと分析しています

同CBOは今年2月、今後10年間の同経費見積もりを約45兆円と発表していましたが、これを30年スパンに拡大して見積もりを公表したもので、つまりは、「こんな計画は実行できるわけねぇーだろ!(怒)」、今政府が検討しているNPR(核体制見直し:Nuclear Posture Review)でしっかり現実を直視してアウトプットを出せ・・・との思いが滲んでいるように感じます

そんな思いは、同見積もりに、全く「近代化」を行わなかった場合は総経費が約50%削減できる、との見積もりも含まれている点からも察することが出来ます。

本見積もりを紹介する31日付Defense-News記事からは、何が近代化で、何が維持なのか、何が国防省担当で、何がエネルギー省担当なのか等々、細部区分がわかりにくいのですが、爆撃機もICBMも指揮統制も負担する米空軍が、F-35やKC-46A購入とダブって「実行可能性?」な状況はTake Noteしておきましょう

31日付Defense-News記事によれば
Ohio-Class.jpg●今後30年間で近代化更新計画されているのは、オハイオ級戦略原潜の後継導入(約35兆円)、ミニットマンⅢ後継ICBM導入(17兆円)、戦略爆撃機B-21導入(約30兆円)、その他に約5兆円とCBOは見積もっている
●これらシステムを維持近代化する国防省が約100兆円で、核弾頭の維持開発や関連研究施設を担当するエネルギー省が約40兆円必要と見積もられている

別の区分でCBO見積もりを見てみると
・「短距離の戦術的運搬システム(航空機)と弾頭の運用・維持・近代化:operation, sustainment, and modernization of tactical nuclear delivery systems — the aircraft capable of delivering nuclear weapons over shorter ranges — and the weapons they carry」に、約3兆円

・「戦略的な核兵器運搬手段と弾頭の運用・維持・近代化、潜水艦用原子炉:operation, sustainment, and modernization of strategic nuclear delivery systems and weapons — the long-range aircraft, missiles, and submarines that launch nuclear weapons; the nuclear weapons they carry; and the nuclear reactors that power the submarine」に、約85兆円

・「核兵器を支える研究や製造施設、指揮統制・通信・早期警戒システム:complex of laboratories and production facilities that support nuclear weapons activities and the command, control, communications, and early-warning systems that enable the safe and secure operation of nuclear forces」に、約50兆円

Minuteman III 4.jpg特筆すべきは、CBO見積もりが、近代化を全く行わず、兵器の更新と維持のみに絞った場合のケースを取り上げ、総経費が約50%削減できると指摘している点だが、この案は国防省がこれまで繰り返し拒否しているところである
●核兵器不拡散(核兵器削減)論者は、皮肉たっぷりに、「CBOが示した数字の実現は、幻想世界の虹の向こうに見える、打ち出の小槌でもない限り、破滅的な現実に直面する」と指摘している

国防省関係者は予算問題に関し、核兵器関連予算の規模は、今後30年間の国防予算の6%に過ぎないと主張しているが、CBOの見積もりでは「2017年に5.5%で始まり、2020年代後半から30年代前半に8%のピークを迎え、20204年代に4.5%まで徐々に下がる」と予想している
●特に、戦略爆撃機と巡航ミサイルとICBMに加え、指揮統制システムも担う米空軍に、F-35とKC-46A等の装備購入が重なる2020年代初頭から中盤にかけて訪れる「装備調達の大波」対応が迫ってくる

●専門家は「もし政権が核体制見直しNPRで3本柱の規模縮小を打ち出さなければ、国家安全保障に重要な他の予算計画を脅かすことになる」と警告している
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B-21 2.jpg核兵器というのはお金がかかるんです。 軽々しく核兵器の保有を叫ぶ人がいたら、その辺への理解をぜひ確認したいものです

またその維持には特別な施設や組織が必要であり、またその運用に携わる人は、使用の可能性が極めて低い中で、訓練や待機を続け、士気を維持しなければなりません。非常に扱いが難しい兵器です

日本では普通に議論できない分野でもありますので、以下の関連記事をご参考に、思索を深めて頂きたいと思います

21世紀の抑止概念を目指す
「3本柱はほんとに必要か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-22
「米戦略軍も新たな抑止議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「21世紀の抑止と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03

「相殺戦略特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「期限を過ぎてもサイバー戦略発表なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-25

NPR(核態勢見直し)関連
「次期ICBMと核巡航ミサイルの企業選定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-27-1
「マティス長官がNPRに言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-15-1
「トランプ政権NPRの課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-09

「2010年NPR発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07
「NPR発表3回目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-02
「バイデンが大幅核削減を公言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-19

戦術核兵器とF-35記事など
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

ICBM後継に関する記事
「初のオーバーホールICBM基地」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-15
「ICBM経費見積もりで相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1

オハイオ級SSBNの後継艦計画関連
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13

「RAND:中国の核兵器戦略に変化の兆し」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-19

三浦瑠璃女史の北朝鮮と核持ち込み
http://lullymiura.hatenadiary.jp/entry/2017/04/24/000359

ロシアのINF条約破り
「露を条約に戻すためには・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「ロシア巡航ミサイルへの防御なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06

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国防革新評議会:2025年にAIで中国に負ける [ふと考えること]

Schmidt.jpg1日、米国防革新評議会(DIB)の議長でグーグル幹部であるEric Schmidt氏(AlphabetのCEO)が、CNASのAI関連イベントで講演し、昨年国家AI戦略を発表して精力的に取り組む中国が、2025年には国家戦略もない米国を追い越し、2030年にはAIで世界を支配すると警告しました

そして戦略もなく国がばらばらにAIに取り組み、更に有能な海外の人材を移民規制法で排除している米国の現状を危機的だと訴えました。
また中国をいつまでも2流国だと考えていたら大きな間違いだと主張しました。

2日付C4ISNET記事によれば
artificial intel.jpg●ハイテクTI企業の代表格であるAlphabetのCEOで、グーグルの最高経営陣の一人である Schmidt氏は、もし米国が国家主導で精力を集中してAI分野に取り組まず、また移民政策を変更しなければ、米国は中国にAI分野で支配されると警告した
●そして、将来の商業分野と国防分野の両方を決定図けるであろうAIで後れを取りたくなかったら、米国は力を合わせて取り組まなければならないと訴えた

●具体的に同CEOは、昨年中国がAI国家戦略を発表したことを緊急事態警告だと認識すべきと語り、「事態は明白で、2020年までに中国は米国に追いつき、2025年には米国を追い越し、2030年には中国がAIで世界を支配する」と説明してその計画を解説し、「中国は計画通りに前進している」と述べた
●更に「国家戦略を発表した中国を2流国扱いしてはならない」、「中国にそんな人材はいない、そんなことはできないと考えているなら、完全に間違っている」と警鐘を鳴らした

artificial intel3.jpg●スプートニク・ショックともいえる時代にある米国の唯一の対策は、研究開発努力や資金をAIに集中することだとし、基礎研究投資の重要性を強調した。背景にはトランプ政権最初の予算編成で、AI関連予算を削減した経緯がある
●そして同CEOは「政府が私企業と共に、このAI技術が重要だと宣言する時だ。国家として共に行動することが求められている」と訴えた

●一方で Schmidt氏は、世界の優秀な頭脳の米国への入国を阻む移民政策が米国のアキレスけんになると警告し、「真に最高の頭脳を持った人々が、米国が入国を拒む国に存在し、彼らは他国でその能力を発揮するのだ。皆さんは優秀な彼らに米国で活躍してほしくないか?」と語り、
●「例えばイランには、世界最高峰のコンピュータ科学者がいるのだ。私は彼らに米国で活躍してほしいし、グーグルやAlphabetで働いてほしい。米国に入国できないなんて馬鹿げている」と訴えた
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artificial intel2.jpgトランプ大統領が移民管理を厳しくすると打ち出した直後から、米ハイテク企業が先頭に立って反対運動を行っており、Eric Schmidt氏の主張はそんな背景があることを頭において見ていただきたいと思います

しかし、いろんな分野で、独裁国家が資源を集中し、反対派を押さえつけ、新しい分野で西側諸国を凌駕していく姿を目にする今日この頃です。
今後5年程度でAIで中国は米国に追いつくそうです。対日歴史問題に投入され、多量の歴史書き換えに利用されたりとか・・・悪い想像ばかりが頭に浮かびます・・・

技術革新の関連記事
「注目の将来技術分野を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-09-1
「DIUxとSCOの現在」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-12
「液体アンテナ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-01

「米ハイテク企業に中国資金が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-25
「超超音速兵器に進化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-11
「DARPA長官が語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11-1

「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02

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米国防省幹部:有事には在日米軍戦闘機は分散後退 [Joint・統合参謀本部]

緊急アップ:米国防省高官ブリーフィング
中国と紛争に至ったら、「在日の米軍戦闘機は、地域の10以上の島々に分散後退させる」

Dunford korea.JPG10月31日付ハワイ発Defense-New記事は、複数の国防省高官(The officials)がダンフォード統合参謀本部議長のASEAN国防相会議から韓国訪問に同行した記者団に対し対中国を中心に情勢ブリーフィングを行った様子を紹介しています

ブリーフィングの日時は記載されておらず、誰が行ったのかも伏せていますが、冒頭にご紹介した言葉が示すように、かなり本音で率直に東アジアの脅威と米軍の見方や対応の一端に言及しており、意図的にリークしたようにも感じられます

東シナ海で中国機に対する自衛隊のスクランブルが昨年900回を超えたとか、航空自衛隊が那覇基地に2個目の戦闘機部隊を持ってきたとか、丁寧に記者団に説明しているようですが、本日は、まんぐーすが「ほぉ------。ここまで公言するようになったか・・」と感じた部分をピックアップしてご紹介します

10月31日付Defense-New記事によれば
Arctic Ace3.jpg●国防省高官たちは、北朝鮮が核兵器開発計画を推進していることで脅威は増しているが、北朝鮮との戦いは「我々が勝てる戦いだ」と表現し、一方で中国との戦いは「その推移が懸念される」述べた。 
中国軍戦闘機と日本の航空機は毎日のように接近を繰り返しており、米軍機と中国機の間の接近も増加しており、常態になりつつあると述べた

●そして高官らは、中国機による米国の防空ゾーンへの接近も試みられていると述べ、射程1000nmの巡航ミサイル搭載用に改良されたH-6Kバジャー爆撃機が、グアム島に接近していると語った
H-6Kが搭載巡航ミサイル射程距離までグアム島に接近することも「まれではない」と述べ、「中国はグアム島攻撃の訓練を行っている」と説明した

有事に米軍機は日本から撤退
Arctic Ace2.jpg●ブリーフィングした全ての国防省高官は、中国との紛争の危機が差し迫っているという状況にはないと強調したが、地域の米軍は、太平洋での戦いがどうなるかを再考していると述べた
●そして「(中国との)紛争では、敵からの航空攻撃にさらされることになろう」と想定していると述べた。

●また、同高官らが共有している一つの作戦コンセプト「agile combat employment:機敏な戦力展開」について言及し、「在日本の米軍最新戦闘機は、地域の島々の10-15の未整備な緊急展開基地に分散させる」と述べ、
●「このコンセプトでは、分散した不便な展開場所でも最新戦闘機が作戦可能なように、迅速に兵たん支援も分散支援体制を整える必要がある」、「米空軍は最近のArctic Ace演習などで、燃料の緊急配分訓練をすでに開始している」と説明した

●そして高官たちは、戦力を分散配備することで、中国がどこを優先して攻撃すべきか判断することを困難にすることが狙いだと述べた
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Arctic Ace.jpgagile combat employment:機敏な戦力展開」とはよく言ったもので、帝国陸軍が「撤退」ではなく「転進」と表現したことが思い出されます

9月中旬に元陸幕長の岩田氏が、有事に米軍が第一列島線からグアムのラインまで一時的にせよ撤退する検討をしているから、日米が協力してガイドラインと防衛大綱を同時並行見直し、備えを強化すべきと訴えていました

決して米軍の「転進」を責めているわけではありません軍事的合理性に基づく、極めて自然な動きであり、当然の考え方です

問題は、「脅威の変化」に対応した「戦い方」や「作戦」の変化を自由に語れない日本人の軍事的素養の低さと、脅威の変化を無視する国内戦闘機命派の存在です

トランプ大統領の来日で急激な動きがあるとは思いませんが、表層的な情勢動向だけでなく、ましてや野党の視点でもなく、大きな脅威の変化をしっかり見据えて備えたいものです

米シンクタンクで同期の3将軍と
「岩田元陸幕長の発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09

沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13

グアム島の抗たん化対策
「被害復旧部隊を沖縄から避難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-28-1
「テニアンをグアムの代替に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16-1
「グアム施設強化等の現状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-30-1

「グアムの抗たん性強化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-30-1
「グアムで大量死傷者訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-08-1
「グアム基地を強固に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-12

「米と豪が被害想定演習を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-02
「在沖縄米軍家族の避難訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-21
「嘉手納基地滑走路の強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-09

「Wake島へ避難訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-04-1
「テニアンで作戦準備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-05
「ブルネイの飛行場を確認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-14

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あのX-47B製造企業がMQ-25から撤退 [Joint・統合参謀本部]

米軍需産業界に衝撃!
X-47Bで空母艦載無人機開発をリードしてきたNorthrop Grummanが撤退表明

Wes Bush.jpg10月25日、Northrop Grumman社(NG社)のCEOであるWes Bush氏が会見し、10月初めに米海軍から公式発刊された初の空母艦載無人機で空中給油を主任務とするMQ-25の提案要求書を検討した結果、要求に答えられない可能性があるとして提案を辞退すると発表しました

NG社は、空母艦載無人機がステルス性も持った攻撃機UCASやUCLASSとしてコンセプト開発されていた時の担当企業で、デモ機であるX-47Bを仕上げ、空母への離発着に成功させて空母無人機のノウハウを確立した先駆者であり、MQ-25競争でも優位だと見る向きもあったことから、業界や関係者に衝撃を与えています

NG社CEOは、具体的に提案要求書のどの部分に課題が見つかったのか明確にしなかったようですが、いろいろな見方があるようで、要は米海軍の無人艦載機への要求があまりにも単純な給油機レベルで、つまんない・・・やってられない・・みたいな感情もありそうでご紹介します

10月25日付Defense-News記事によれば
NG MQ-25 3.jpg●NG社CEOのWes Bush氏は具体的な理由は語らなかったが、同社幹部の間に、この提案要求書に示された細部要求に対応し、かつ利益を出すことに疑問の声が上がったようである
●同CEOは25日の会見で、「この機会を頂いたところであるが、率直に言えば、機種選定競争に勝つことだけが目的ではない。勝利は重要だし、その時はうれしいだろう。しかし実際にそれを実現できないまま、製品を提供するようなことになれば、それは誤った行為である」と語った

●そして「長年にわたり米国で、わが社の目的は何かを考え、懸命に事業に取り組んできた」、「国防分野で米国や同盟国の信頼を得て努力してきた中で、侵すことができない信頼があり、この提案要求書を厳正に審議し、我々が遂行できるかを検討した結果でもある」と表現した
●更に「最終的に提示された特別な形の提案要求書(particular nature of that final RFP)」が、わが社をして機種選定から撤退することを決断させた、と語った

●専門家は、今年に入って同社が応じなかった3件目の提案要求書だとし、次期練習機T-XとLong Range Standoff Weaponに続く事例だと語った
●同社はX-47B以外にも、海軍分野で無人機の実績がグローバルホークの海洋監視版であるMQ-4C Tritonや、無人多用途ヘリであるMQ-8 Fire Scoutの実績がある

NG MQ-25 4.jpg●これで機種選定に参加するのは3企業(Boeing、 General Atomics、Lockheed Martin)になったが、シンクタンクCNASのJerry Hendrix氏は、NG社提案と同じ「flying wings」タイプを準備しているロッキードも危ういのではないかと見ている
●またTeal GroupのPhil Finnegan氏は、NG社の決断はもっともで、米海軍がハイエンド機から低コスト給油機に考え方を変えたことから生じた決断だと述べ、「ボーイングはコストに重点を置いて最初から取り組んでおり、FA-18部品の流用や、米空軍給油機の経験も生かしている」との見方を語った

●更に提案機を公開しているGeneral Atomics社もコスト重視で、MQ-1の経験を生かして中高度長時間航空機の実績が豊富であると分析している。ただ、海上システムの経験が不足してる点も指摘している
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NG MQ-25.jpg要するにNG社は提案要求書を見て、米海軍はわが社の提案に目を向けていない、わが社の提案に勝ち目無し・・・と判断したということでしょう。
米海軍がハイエンド機から低コスト給油機に考え方を変えた」ということです。

ボーイング社は、米空軍の3大重要事業である次期空中給油機KC-46Aを受注し、経費固定契約で取り組んでいますが、大幅に経費超過状態にあり、自腹を切って2018年に18機納入期限を目指し、苦しい戦いを継続中です

政治的な背景で、ボーイングの傷を癒すような結果に誘導されないことを期待しますが・・・

MQ-25のゴタゴタな道のり
「提案要求書を発出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-13
「MQ-25でFA-18活動が倍に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-03
「MQ-25のステルス性は後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-27 

「CBARSの名称はMQ-25Aに」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-17
「UCLASSはCBARSへ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-02
「UCLASS選定延期へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-05-1

「米海軍の組織防衛で混乱」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-01
「国防省がRFPに待った!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-12

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海兵隊が輸送艦からロケット弾発射試験 [Joint・統合参謀本部]

HIMARS3.jpg10月22日、米海兵隊の揚陸輸送艦Anchorageに搭載した車両搭載ロケット弾発射機(HIMARS)からロケット弾で、約70㎞離れた陸上目標の攻撃に成功したようです。

実験は、20日から加州沖で実施れている米海軍と海兵隊の共同着上陸作戦演習「Dawn Blitz 17」で行われ、ちなみに同演習には陸自の1個中隊規模のみが海外から正式参加しています(オブザーバーはチリ、ペルー、コロンビア、メキシコから)

米軍は中国やロシアの対艦ミサイルの脅威を重視し、「クロスドメイン」や「マルチドメイン」の発想でこれに対処しようと取り組み始めていますが、これまで遠距離攻撃能力のなかった輸送艦に、軽易にロケット発射車両を搭載することで、攻撃能力を付与する発想です

25日付Defense-News記事によれば
HIMARS.jpg2010年から始まった着上陸作戦演習「Dawn Blitz」であるが、今年の同演習では、HIMARS(High Mobility Artillery Rocket System)と米海兵隊F-35Bを着上陸部隊に組み込むことを一つの眼目としている
●車載ロケット発射機を運用する士官は、「敵の強固な防御エリアで、長射程攻撃能力で地上部隊の活動を支援する方策を探っている」と説明した

●9月21日、海兵隊司令官のRobert Neller大将が海兵隊協会総会で、着上陸部隊に敵の沿岸防御部隊を妨害したり破砕する能力が必要になると述べ、「それが着上陸部隊艦艇の発射管からであれ、無人機からであれ、精密誘導兵器の射撃を目にするだろう」と予言し、
●更に同司令官は、海兵隊は将来「戦いの場に到達するために、戦わなければならなくなる」 と述べ、敵が米空母や輸送艦を洋上で攻撃する能力を蓄え、米軍艦艇群が敵の航空機や巡航ミサイルや防御システムの餌食になる可能性があると警鐘を鳴らしていた

Neller4.jpg●今や中国やロシアだけでなく、テロ組織のヒズボラやイエメンのHouthi rebelsも長射程ミサイルを備えており、2016年10月には、イエメン沖を航行中の米駆逐艦「Mason」に数発の巡航ミサイルが発射される事案も発生している
●そこで同司令官は、過去の戦いでも米海兵隊は沿岸防御を突破してきており、今後の課題はより遠方からその任務を果たすことだと語り、「仮に敵が数百マイル遠方から我が艦隊を攻撃できるなら、何とかしなければならない」、「だから我が艦艇も敵の攻撃能力を破砕しなければならない」と述べている
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中国の対艦巡航ミサイルの射程が1000nm、対艦弾道ミサイルが2300nmとか言われる中、射程70㎞のロケット弾では心もとないところですが、対テロ重視から本格紛争への備えにも舵を切った「Dawn Blitz」が始まったのが2010年ですから、仕方ないところでしょうか・・・

それにしても、Robert Neller海兵隊司令官の動きがどうしても気になります。今時珍しい、個性の強そうな方ですから

陸軍とクロスドメイン
「再度陸軍に南シナ海で活躍期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「ハリス長官がcross-domainを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-05
「ハリス大将も南シナ海で陸軍に期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06

「射程300kmの対艦ミサイルを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「CSBA:米陸軍をミサイル部隊に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14
「尖閣防衛に地対艦ミサイル開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14

Neller海兵隊司令官の熱い信念
「被害状況に備え訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-16
「基本的な防御手段を復習せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-10
「生活習慣を改善せよ!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-08

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