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「宇宙軍」独立法案が下院で承認 [サイバーと宇宙]

提案議員が訴え!
「非公開の情報ブリーフィングに来てくれ。とてもショッキングな現実がそこにある。中国とロシアは既に宇宙を再編(reorganize)してしまっている」
「宇宙分野は金づるで、空軍は長らく航空分野でこの資金に頼ってきた。だから戦闘機パイロットである将軍達は、宇宙軍独立に反対なのだ」

Space domain.jpg12日夜遅く、米下院の「Rules Committee」で同軍事委員会が提案している「宇宙軍」を創設する案を含む2018年国防授権法案の議論が行われ、宇宙軍独立案を修正する案は否決され、下院として「宇宙軍」創設案を持ち出す事と実質なりました

この提案は、米空軍から宇宙分野を独立させ、2019年1月1日までに空軍長官の下に「空軍」と「宇宙軍」を並列で置き、宇宙軍は空軍参謀総長と同格の宇宙軍参謀総長が率い、統合参謀本部のメンバーにもなるという案です
これは、海軍省内に米海軍と米海兵隊が並列で存在しているのと同じイメージです

この案が6月28日に下院軍事委員会で承認(60対1)された事を受け、マティス長官やWilson空軍長官が11日に関係議員に再考を促す書簡を送付し、ホワイトハウスも議員に働きかけたようですが、冒頭ご紹介した提案議員の言葉に代表される危機感や空軍への不満が大きな流れとなり、修正案は採用されませんでした

一方で、上院は下院案に乗り気でない模様で、最終的に大統領による拒否権発動もあり得る事から、法案成立の可能性が高いわけではないと思いますが、宇宙ドメインを巡る議論の一つとしてご紹介しておきます

13日付Defense-Newsによれば
Rogers.jpg●宇宙軍独立案は、共和党のMike Rogers議員(戦略戦力小委員長)や民主党のJim Cooper議員、更には共和党のThornberr軍事委員会委員長ら超党派の議員が取りまとめを行っている
●一方で反対派の共和党Mike Turner議員(戦術陸空戦力小委員長)は、宇宙軍独立の必要性調査を命じる文面に案を修正しようと奔走し、マティス長官や空軍長官もTurner議員を支持する書簡を関係者に送付し、ホワイトハウスも反対を表明している

●反対派のTurner議員は、一度の公聴会も開かず、この様な大きな組織改革を行うのは間違いで、もっとゆっくり段階的に検討し実行されるべきだと主張している。また、改編に関するコスト見積もりもなく、国防省も反対している事を指摘しつつ、「空軍は即応態勢アップや近代化に取り組んでおり、別の軍を創設するとはあまりに極端すぎる」と批判している
Turner.jpgマティス国防長官も上記書簡で、意志決定階層が増すだけで必要経費も増える不適切な案だと指摘し、「国防省が軍事機能の融合に取り組む流れに逆行するだけでなく、分割により宇宙ドメインに偏狭で視野の狭い視点を持ち込みかねない」と懸念を表明している

●一方で推進派のRogers議員は、超党派議員の支持がある案で、宇宙分野を独立させる喫緊のニーズがあると主張し、また法案成立後に6ヶ月間も米空軍には検討期間があると主張した
●そして同議員は「非公開の情報ブリーフィングに来てくれ。とてもショッキングな現実がそこにある。中国とロシアは既に宇宙を再編(reorganize)してしまっている」、「宇宙分野は金づるで、空軍は長らく航空分野でこの資金に頼ってきた。だから戦闘機パイロットである将軍達は、宇宙軍独立に反対なのだ」と危機感と空軍への批判を口にした
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Space domain3.jpg米空軍を支配している戦闘機操縦者が、宇宙配分予算を上手く活用して「air-domain」ニーズに利用しているとの極めて本質的な指摘が飛び出し、今後の議論の展開に興味津々です。

しかしもっと重要なのは、非公開情報に接することが出来るMike Rogers議員による「中国とロシアは既に宇宙を再編(reorganize)してしまっている」との指摘でアリ、この危機感を日本人も共有したいモノです。

中国とロシアの宇宙活動の状況を、しっかり勉強しないといけませんね

米国での宇宙の話題
「大統領が国家宇宙評議会を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-08
「下院が宇宙軍独立案を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-22-1
「米空軍はA-11設置で対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-18
「アジア太平洋での宇宙作戦が困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-10-1

米空軍が宇宙活動アピール
「商用データも活用へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-20-1
「JICSPOCからNSDCに改称」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06
「宇宙コマンド変化への取組」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-09
「米空軍が宇宙活動アピール作戦を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-24

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本当?:背風を受けF-35エンジン始動時に火災 [亡国のF-35]

F-35 AIB.jpg12日付Defense-Newsが、昨年9月23日に地上でのエンジン始動時に火災を起こしたF-35A型機の事故調査報告書(2017年5月9日付文書)を独自に入手し、その概要を報じています。

なお、同報告書が今後公表される予定だったのか、そのまま内部資料になる予定だったのかについて記事は触れていません

記事によれば火災事故原因は、機体やエンジンの不具合ではなく、強い背風(追い風)でエンジン始動時にエンジン回転数が上がらないまま、つまり燃料が十分消費されないままエンジンへの燃料供給量が増え、エンジン外部にまで炎が広がったためとなっています

パイロットが頭、クビ、顔に「跡が残るやけど:sustained burns」を負い、内部兵器格納庫の扉が開いていたこともアリ、機体尾部の表面2/3を焼き、特に機体中央部の焼けが激しかった火災で、修理費用は未確定ながら少なくとも19億円と見積もられています。

これだけの規模の火災でありながら、火災直後の飛行停止措置もなく、原因はリスクが指摘されていた天候(背風)と人的要因で、機体設計には大きな問題はなく、パイロットへリスク再教育とチェックリストの見直し程度で事故対策を完了しようとしています

記事には、エンジン計器に異常や警報ランプ点灯等があったのかどうか言及がありませんが、何となく「ごまかし」「もみ消し」「事を荒立てず」の姿勢が見え隠れしているような気がしてなりません

12日付Defense-News記事によれば
F-35 AIB3.jpg5月9日付の米空軍の事故調査委員会(AIB:accident investigation board)の報告書によれば、強い背風で高温のエンジン排気がエンジン内に押し返され、エンジンの回転トルクや回転速度が上昇せず、F135エンジンが燃料供給を加速度的に増加させたことが火災の原因である
●報告書では、「エンジン回転数が上がらない中で燃料供給が増え続けたため、炎をエンジン内に止められなかった。エンジンの排気口から溢れた炎は、背風により押し返され、機体表面に沿って急激に広がった」と表現している

●この火災事故は、ほとんどF-35訓練や運用に影響を与えていない。火災事故発生直後から、米空軍は事故原因が機体設計の問題ではなく背風と人的要因だと考え、F-35A型の飛行停止は考えないと明らかにしていた。
●また国防省F-35計画室も、同事故を受けての機体改修等を発表していない

●事故調査委員会(AIB)報告書は、エンジンを始め機体システムは設計通り作動したと記述しており、操縦者への教育面でこの様な事故防止のために為すべき事があったはずだと述べている
例えば、米空軍は背風がエンジンに問題を起こす可能性がある事をエンジン始動時のチェックリストに含めておらず、操縦者も本事案に関連する訓練や教育を受けていない。従って操縦者は当事案が発生した時、何ら問題発生の兆候を感じていない

F-35 AIB2.jpg●報告書はまた、背風に関する問題は事前に認識されていたにも関わらず、関連文書にキチンと表現されておらず、操縦者間には曖昧な認識のみがあった。この曖昧な認識が背風時のエンジン始動に対する不十分な訓練につながっていると指摘している
●調査責任者の大佐は、F-35は高度に自動化されていることから、操縦者の間に基本事項に対する「慢心」「油断」を生んだのではないかと指摘し、「エンジン始動はほとんど自動化され、グリーン表示の間は問題なしとの感覚が操縦者を支配している」と懸念を示している
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パイロットの知人によれば、ジェット機には機首毎に程度の差はあれ、背風時のエンジン始動には注意すべきとの認識が操縦者の間にはあるようです。
なので、当日の風の強さにもよりますが、なるべく背風にならないように機体を並べてエンジンを始動させるようです

F-35 Japan OUT.jpgだったら何でこんな火災が・・・と思わずにはいられませんが、これ以上「邪推」すると益々性格が歪みそうなので止めときます。これを契機に、本報告書が公開され、部外の専門家が突っ込むことを期待しつつ・・・

最後に、この火災事故が発生した同じ日に、航空自衛隊用F-35の1番機のお披露目式典(ロールアウト式)が行われていたと言う「縁起の悪さ」を、無理矢理思い出して頂きましょう。

2016年9月23日の火災事故記事
「日本用1番機の式典日に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-24

2014年6月の火災事案
「火災メカニズム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-04
「当面の対処と設計変更」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-29
「問題は軽易ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08

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次世代制空機PCAの検討状況 [米空軍]

検討結果は2018年に発表(publish)する
全体のステルス性は求めないかも
弾道&巡航ミサイル探知用センサーも!?

Grynkewich2.jpg10日、米空軍協会主催のイベントが開催され、米空軍の次期制空アセットPCAを検討するチームECCTのリーダーや主要メンバーがパネル討議を行い、その検討コンセプトを語りました。

昨年6月にチームECCT(Enterprise Capability Collaboration Team)は、PCA(penetrating counter air)の前提となる「Air Superiority 2030」とのレポートを発表し、空中戦を中心とした航空優勢のイメージを否定し、戦闘機(Fighter)との用語の使用を禁じ、ネットワークを重視し、航続距離や搭載量を速度や旋回性能より重んじる方向を打ち出していたところです

その後その考え方をチームリーダーAlexus Grynkewich准将が講演する様子をご紹介しましたが、その後フォローしていませんでしたので、久々に同検討の状況をご紹介致します

11日付Defense-Tech記事によれば
ECCT.jpg●Grynkewich准将のほか、ECCTでコンセプト開発担当のTom Coglitore大佐、そして分析担当のJeff Saling氏が登壇してパネル討議を行った。本チームECCTは来年にPCAの要求性能に関する提言をまとめて発表することを求められている。
●現在は様々な角度から、種々の要求性能のトレードオフや最新技術動向と活用可能性について検討しているが、F-22やF-35戦闘機より航続距離が長く、爆撃機のように特定任務に特化したモノでは無く、ステルスコーティングは航空機全体に要求しない可能性があると彼らは言及した

●Grynkewich准将は「ハイエンド脅威環境下で突破型の攻勢及び防御が可能な次世代アセットに求められる能力を議論している」、「検討を進める中で、我々は戦闘機(Fighter)との用語が不適当だと考え使用を禁じた」と語った
●検討では、ますます厳しさを増し予想困難な厳しい脅威環境に備え、最新第5世代機の不足能力を見極める事から始まっている

●同准将は「もはや航空戦は空中戦だけで語れるモノではない。ネットワークを構成提供するPCAは、航続距離、在空能力、生存性、破壊力等の観点で必要な特性が検討される」と語り、
●Coglitore大佐は「有人か無人か、航続距離、搭載兵器などなどをどうするかについて、分析を行っており、来年検討結果をまとめることになっている」と語った

ステルス性、レーザー、兵器について
AS-2030.jpg●例として同准将は、「米空軍はしばらくの間、ステルス機であれば大丈夫だと他の要素をあまり考えてこず、ステルス性が高ければ高いほど良いと考えてきた。(しかし全体でのトレードオフを考慮し、)生存性を検討するとき、各要素を比較して、電子戦能力や速度との関連も含めて議論することが可能だ」と表現して検討事項を説明した
●そして「ステルス性は当然考慮する(price of entry)が、速度など他の特性を活用した脅威対処も含めて総合的に効果を検討する」と説明した

●更に同准将は、「私にとってはセンサーがより重要だ。例えば、弾道ミサイルや巡航ミサイルを探知する長射程センサーは、PCA自身だけでなく他アセットからのスタンドオフ兵器にも情報を提供できる」と語った
●またレーザーなどエネルギー兵器も当然検討の選択肢に入っているとECCTメンバーは一様に語り、その急速な技術進歩に注目していると語った

一方でレーザーについてJeff Saling氏は、期待は極めて高いが、航空機に搭載するにはまだ多くの課題が残されている。防御か攻撃か、いずれに使用するかにもよるが・・・と語った
●Coglitore大佐は、レーザーに対する公式な要求はないと言及し、A2AD環境での生存性向上に寄与できるかにかかっていると語り、「他の要素と比較しながら見て居る」と表現した

●Grynkewich准将はまた、「兵器や弾薬も進化早く、脅威の変化に応じ、兵器の進化にも追随可能である必要がある」との論点も提示した
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ECCT2.jpg「もはや航空戦は空中戦だけで語れるモノではない」(Air combat is not all about fighter aircraft dogfighting anymore)との言葉を、日本の戦闘機命派に捧げます

また、ステルスコーティングは航空機全体に要求しない可能性、ステルス性と他要素とのトレードオフ、弾道ミサイル探知用の(航空機搭載)遠距離センサーなどの言葉も、戦闘機数と戦闘機飛行隊数維持しか眼中にない(これを聖域化することも同罪)に凝り固まった者達に供します

A-10など破棄したい旧式装備を議会の反対で破棄できず、航空戦力全体の練度向上や近代化が進まない米空軍ですが、せめて卓上の研究だけは理想を追求して頂きたいものです

米空軍の次期制空機PCA検討
「次期制空機検討は2017年が山!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-12
「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08

「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「F-35にアムラーム追加搭載検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-28

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ISIS後の空白にコンテナ式交番で対処 [Joint・統合参謀本部]

モスルはISISから解放されたけれど・・・

container Police 3.jpgcontainer Police.jpg7日付米空軍協会web記事によれば、対ISIS多国籍部隊の幹部が、ISISのプレゼンスがなくなったイラク内「真空地帯」の治安維持のためコンテナ式「Police station:交番」100個をイラク全土にこの夏配備し、将来は国境監視・警備にも同コンテナを活用する計画だと明らかにしました

対ISIS作戦(Operation Inherent Resolve)で多国籍部隊のパートナー育成部長であるカナダ軍のD.J. Anderson准将は、最初のコンテナ式交番が8日か9日にも到着する予定だと語っています。
日本が発明した「Police station:交番」システムが、中東の安定に貢献するチャンスですが、事態は全く予断を許しません

ISISが消滅しても、戦国時代さながらに多数の組織が「アラブの春」以降に生じた力の空白を狙ってうごめいており、「振り出し」に戻っただけのイラクやシリアですから、こんな地道な取り組みが必要な世界です。

Anderson准将によれば
container Police 2.jpg治安機関のインフラが破壊されたモスルのような地域で、イラク軍や治安部隊は活動拠点がない困難に直面しているが、米国率いる多国籍部隊は、コンテナ式の箱のような「Police station:交番」でこの事態に対応しようとしている
●多国籍部隊やイラク関係者は、空輸も地上輸送も可能で、必要装備品が収納されたコンテナ式交番を活用し、直ちに目に見える警察プレゼンスを確保したい考えだ

●「Police station:交番」と識別しやすい塗装等が施されたコンテナの中には、家具やパソコン、検問設置用具などが収納されており、2台のランクル車両とセットで、とりあえず警察プレゼンスを誇示できるように設計されている
この夏に100個の同コンテナ交番を設置する計画で、その後は同コンテナを応用し、「国境警備隊用のボックス拠点」としてイラク国境に配備する計画が検討されている
NHK-IS.jpgイラク警察は、イラク陸軍からの増強要員も活用し、イラク国内の警察体制の再構築に取り組んでいるが、多国籍部隊は地域に安定を提供するため、引き続き支援や助言を行っていく

同准将は「警察官の存在ほど通常状態を示すものはない」と同コンテナ式交番の意義を強調している
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元々ISISは、「アラブの春」を発端として中東諸国の支配体制が揺らぎ、シリアのアサド政権に対する反政府運動の「一つの武装勢力」として活動を始め、その支配や影響地域をイラクだけでなく世界に広げた組織です。

シリア反政府運動の「他の複数の武装勢力」は、とりあえず対ISISで活動の方向を一つにしていましたが、ISISが滅びた後は、反アサド政権の立場は共通ながら、それそれの武装勢力の利益追求を求め何を始めるか全く読めません。

NHK-IS2.jpg既にISISが「国家」と称していた地域では、さまざまな武装勢力が入り乱れているほか、利害関係を有する隣国など(トルコやイランやロシア)などの正規軍も含めて複雑な構図となっています。

ISISを壊滅できたとしても、シリア・アサド政権側と反アサドを掲げる武装勢力などによる戦闘が続く見通しで、平和が訪れる見通しは全く立っていません。

ISISとの戦い様々
「比南部のIS戦を米軍支援」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-12
「B-2によるリビアIS爆撃」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-02
「IS無人機で初の死亡者」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-15-1

「米空軍は外国軍訓練を重視せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-29
「ISが化学兵器で米軍を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-23
「対ISサイバー戦は大きな教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-23

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空軍士官学校の性犯罪対処室が捜査対象に [米空軍]

世界の空軍の代表格である米空軍が壊れていく・・・
米空軍士官学校で再び犯罪関連スキャンダル

Johnson.jpg3日付Military.comは米空軍士官学校の地元紙「The Gazette」を引用し、同士官学校に2003年から設置されている「性犯罪防止&対処室」が、性的犯罪被害者のケアに関し士官学校長である女性中将の信頼を失ったとして「1ヶ月以上に亘り捜査対象」となっており、新入生受け入れの重要時期だが「機能を停止」していると報じています

正式には「Sexual Assault Prevention and Response Office」と呼ばれる「性犯罪防止&対処室」は、同士官学校で性犯罪が大きなスキャンダルとなった2003年に設置され、士官候補生の性犯罪防止する広範な対策や教育を担当し、併せて士官候補生である性犯罪被害者のカウンセリングやサポートを行う部署で、4名のフルタイム職員を含む6名で構成される「室」です

仮にも国軍の士官を養成する士官学校に、「性犯罪防止」やら、防止教育やら、被害者カウンセリングやらを担当する6名モノ専従職員が配置されている事が信じられない事かも知れませんが、国防省調査によれば、空軍士官学校は3軍の士官学校の中で性犯罪認知件数が継続してトップで、昨年6月までの1年間で32件、陸軍が26件、海軍が28件となっています

Johnson2.jpgまた同調査によれば、空軍士官学校の女性士官の10%以上が「不愉快な接触」を訴えているなど、不名誉な状態が続いています

この性的犯罪や性的襲撃(Sexual Assault)は少なからず米軍全体で大きな問題となっていますが、特に米空軍内部で深刻で、米空軍から統合参謀本部議長が生まれなかったり、パイロット支配が組織を停滞させていると国防省や議会に不信感が募り、パイロット以外の大将や主要コマンド司令官、更には空軍参謀総長にも非パイロットを求める声が高まっていると軍事メディアが報じることも増えました

また米空軍は米空軍士官学校のトップに、4年前から女性のMichelle Johnson中将(輸送機パイロット)を配置し、特に性的犯罪防止に力を入れてきたところですが、同中将が8月の退役する直前の段階になって、この様な性的犯罪対策の根幹を揺るがす事案が発覚する始末です

空軍士官学校「性犯罪防止&対処室」の業務停止
Johnson3.jpg●米空軍士官学校のAllen Herritage報道官(中佐)は、非公開の「問題」により、士官学校長が同室の捜査を命じ、現在も1ヶ月以上におよぶ捜査が継続中だが、同室の4名が職務停止になっている
●士官学校長のJohnson校長や関係者は、同士官学校を性的犯罪防止や対処における米大学の見本とすべくその取り組みをアピールしてきたところであるが、そのアピールの根幹が揺らいでいる

●同報道官は「数十名から聞き取りを行い、その内容を精査して事実関係を調査中でアリ、またプライバシーに関わることも多く、捜査の状況についてコメントできない」とメールで回答している
●また同報道官は「複数の同室勤務者が既に業務を離れている」と認めた

匿名の関係者は、「性犯罪防止&対処室」は兼ねてから士官学校職員から不満の的となっており、空軍監察官室に対して調査を求める訴えが出されたり、議会調査室による外部査察を求める要望が出されたりしていたと語った
●また同関係者は、Johnson中将が士官学校主要幹部に対し、「性犯罪防止&対処室」は性犯罪被害者のケアに関する信頼を失ったと語っていたと明らかにし、彼自身も「同室は不安定でコントロールされていなかった」と表現した。

Johnson4.jpg●同士官学校は7月6日に新たな入学者を迎え、新入生トレーニングを開始する教育上非常な重要なタイミングに当たっているが、その教育の柱の一つである性犯罪防止と対処教育は第1週に時間が割り当てられる主要科目である
●同報道官は、士官学校には職務停止となった職員を代替する人材がいると説明し、同犯罪防止と対処は多様な組織が協力して実施するもので、組織的に対応するので問題ないとしている

●Johnson校長は8月に退役することとなっており問題職員の最終処分や扱いについては次の士官学校トップとなるJay Silveria中将に委ねられることになろう
問題の職員は性的犯罪を扱う資格を剥奪され、無期限停職(indefinite leave)になっている
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Silveria2.jpg問題の「性犯罪防止&対処室」の4名が何をやったのか全く不明ですが、普通なら現校長が退役するまでに処分し、一応片を付けてから次の校長に申し送ると思いますが、それだけ根が深い深刻な問題だと言う事でしょう。

同校では数年前に性的犯罪や麻薬使用問題に対処するために士官候補生の中に数十人の「内通者:informant」を指定し、米空軍特別捜査局OSIがそれら内通者からの情報を元に犯罪を摘発する体制を構築していたことが明るみになり、関連トラブルから内通者の一人が卒業1ヶ月前に退校処分となり、当該元士官候補生がマスコミに出て不当な処分に抗議する事案があったところです

「空軍士官学校の内通者が反旗」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-10-1

米空軍の状況をそのまま世界の空軍や日本に当てはめるのも「論理の飛躍」かも知れませんが、戦闘機や爆撃機が中心アセットで、その操縦者が空軍を支配してきた経緯がある中、脅威の変化を受け戦闘機や有人機の重要性が変化し、操縦者による組織支配が無理を生み、組織秩序が混乱&崩壊に向かう「兆し」を見せているというのがまんぐーすの仮説です。

米軍と性犯罪(Sexual Assault)問題
「性犯罪は依然高水準」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-06-1
「暴力削減にNGO導入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-05

「国防長官が対策会見」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-19
「指揮官を集め対策会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-04
「海軍トップも苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-20

「女性5人に一人が被害」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-10
「空軍内で既に今年600件」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-19-1
「米軍内レイプ問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-19

問題や負の話題が多い空軍士官学校
「空軍士官学校の内通者が反旗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-10-1
「オバマが議会批判」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-03
「ライス補佐官が政治的スピーチ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-19

米空軍トップが衝撃の新年メッセージ
戦闘機操縦者支配への反発が顕在化
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-04

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中国空母「遼寧」が20周年香港に堂々入港! [中国要人・軍事]

これこそ「Show Of Force」のお手本でしょう!
ちなみに「Show Of Force」とは、敵に対し、文字通り我の戦闘能力や意思を示すことで、相手を威嚇し警告する軍隊の行動を指します。

Liaoning Hong 4.jpg7日、返還20周年を迎えた香港に、駆逐艦とフリゲート艦を従えた中国海軍の空母「遼寧:Liaoning」が入港し、陸海空に及ぶ厳重な警備体制が敷かれる中、新しい香港総督らの盛大な出迎えを受けました。

香港に永住権を持つ限定2000名が空母への訪問を許可され、海軍基地周辺が7日から11日まで飛行禁止エリアに指定される中、結構フランクに空母見学に興じたようです。

香港返還20周年記念では習近平が香港を訪問。3000名の兵士を前に閲兵式を6月30日実施して力を誇示し、7月1日の20周年記念式典では、一国二制度の成功を自画自賛し、民主化を認めぬ中国政府に失望した若者の間で台頭する香港独立の動きをけん制し、香港政府が「有効な打撃を与えた」として対応を讃えていたところです。

特に申し上げることもないのですが、複数の写真でその「Show Of Force」ぶりをご紹介いたします
Liaoning Hong 7.jpgLiaoning Hong 3.jpg







空母戦闘群司令官Ding Yi少将は歓迎式で
●我々空母遼寧戦闘群は、香港返還のお祝いに参加するためやっていました
●この訪問により、香港の愛国者の皆さんに、中国軍の進化発展をより一層ご理解いただけると信じています
Carrie Lam.jpg
新しい香港総督のCarrie Lam女史は
中国政府が、返還20周年のこのタイミングに、空母派遣を許可してくれたことに感謝します
●この訪問により、香港市民の中国への理解と認識が大いに促進されるでしょう
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Liaoning Hong 5.jpgLiaoning Hong.jpg







中古の空母をウクライナから譲り受け、「本当にモノになるのか?」との懐疑的な諸外国からの視線を受けつつ、2012年に就航し、中国製J-15を艦載機として訓練を続けている空母遼寧です。

Liaoning Hong 6.jpgカタパルトを装備していないため、艦載機の搭載量や航続距離が限定され、戦力としては依然「疑問符」の付く同空母ですが、こうして「Show Of Force」の役割を堂々と果たしていることは否定できない事実です。

そして今、この「遼寧」の経験をもとに、2隻目の空母が建造されており、間もなく進水・就航するだろうといわれています。なんだかんだ言われても、着実な歩みです

空母遼寧などの関連記事
「司令官の視察映像」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-27
「2隻目の建造確認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-03-1

「中国海軍の集中検討会」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-26
「遼寧艦載機の予想リスト」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-08
「遼寧の運用準備が急ピッチ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-07

「映像:空母遼寧J-15離着陸」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-29
「空母遼寧が中国海軍へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-08
「論争:中国空母は脅威か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-28

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トランプ大統領が国家宇宙評議会を設置 [サイバーと宇宙]

Space Council.jpg七夕の7日、トランプ大統領が「国家宇宙評議会:National Space Council」を再設置(re-establish)する大統領令に署名しました。

ホワイトハウスで行われた「署名式」には、米国が宇宙開発で世界をリードした「往年の栄光」を象徴すべく、あのアポロ11号で、アームストロング船長(故人)に続き人類で2番目に月面に立ったBuzz Aldrin元宇宙飛行士(退役大佐:87歳)がゲストとして参列しています

大統領令によれば、この国家宇宙評議会は、最初の1年間で大統領に対し、米国の宇宙活動に関する長期計画と勧告を含む報告書を提出するよう求められています。

また同評議会のメンバーは、ペンス副大統領を評議委員長に据え、国防長官、国務長官、国土安全保障省、国家情報局長(DNI)、NASA長官、そして統合参謀本部議長で構成されます。

署名式でトランプ大統領は
Space Council2.jpg●この評議会は、我が政権内で宇宙政策を導く中核ハブとして機能する
かつて米国は、宇宙分野におけるパイオニア国家であり続けた。

●我々は宇宙での活動を始めたが、決して完成したわけではなかった。途中で立ち止まってしまったのだ。今日設置を命じた副大統領をリーダーとする評議会は、宇宙活動で米国をリーダーの位置に戻す役割を担う
●世界への明確なメッセージだ。米国はあの誇らしい伝説的な指導的立場を取り戻す
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トランプ大統領の発言からは、米国が宇宙分野で1番の地位にない危機感があふれていますが、中国は衛星打ち上げ数で、また軌道を柔軟に変更する衛星の運用など、米国に危機感を与えるに十分な状態で、ロシアも活発に活動しているようです

Space Council3.jpg何ができるのか、何がしたいのかよくわかりませんが、政府として宇宙ドメインへの資源配分を交通整理する必要があるのでしょう
しかしこの大統領令には様々な評価があり、報道では評価する声もあれば、また余計な意思決定階層を積み上げただけだとの辛辣な声も紹介されています。

米議会では米空軍に集中する宇宙活動を空軍から独立させる案が議論されるなど、宇宙への取り組みを再検討する動きが各所で見られます。日本ではさっぱり見られませんが・・

宇宙活動の変化
「宇宙戦本Ghost Fleet」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-08
「衛星小型化は相殺戦略でも」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-01
「民間企業も交え大規模演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-05
「中国版X-37B?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-15

「米空軍から宇宙部門実質独立プラン」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-22-1
「米空軍はA-11設置で対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-18
「商用データも活用へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-20-1
「米空軍宇宙活動アピール年」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-24

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マティス長官:北朝鮮ICBMも米国の姿勢に変化無し [マティス長官]

North Korea2.jpg6日、マティス国防長官が急遽記者会見を開き、北朝鮮が4日に実施したICBM発射試験に関連し、米国の姿勢に変化はないと語りました。

米軍は対ISISやアフガン対処だけで軍事力をフル稼働しており、加えて欧州方面で活発化するロシア軍への対抗措置として頻繁に部隊のローテーション派遣や演習を行うなど、限られた予算の中で四苦八苦の綱渡りが続いています

またトランプ政権は、ロシアンゲート問題関連で勢力を裂かれ、政権内部の足並みの乱れも指摘されています。また国務省や国防省の主要政治任用ポストも未定が多く、各分野での具体的な政策展開に着手できていない「スカスカ状態」が続いています。

North Korea.jpg更に韓国は、政経中枢であり人口密集地域(約2000万人)でもある首都ソウルやその近郊地域が北朝鮮との停戦ラインにほど近く、北朝鮮軍火力の射程圏内にあるなど、極めて有事に弱い地理的特性をもており、マティス長官も朝鮮半島有事に勝利する事は確実だが、その被害は甚大なものになるだろうと軍事オプションが現実的なモノではない事を示唆しています

要するに、北朝鮮に対して外科手術的なオプションは極めて選択困難で、時既に遅しとの見方が識者の共通認識になりつつあるように感じます。
まぁでも、水面下では様々な動きがあるのでしょうし、様々なプレーヤーの思惑でどちらに転ぶか不透明には違いありませんから、とりあえず事実関係として、国防長官の発言を記録しておきます

おまけで拓殖大学の川上高司・海外事情研究所所長が、「米国が北朝鮮の核保有を認める可能性が高まっている」との論考を発表していますので、ご紹介しておきます

6日のマティス長官発言
North Korea3.jpg●北朝鮮のICBM発射は、米国と北朝鮮の間の戦争の可能性を高めたわけではなく、当該地域での核戦争を避けるための外向的努力に米国は引き続き注力していく
●本件に関する米国のスタンスは変わりなく、地域の同盟国である日本や韓国と協調しながら、軍事態勢も併せて維持する。

これが挑発的な行動の中にあっても戦争を防止してきた、我が国の自制(self-restraint)である。我々の自制が続く限り、ご説明した外向的な努力が引き続き続けられる
●米国は前述の同盟国や中国と協力している。しかし北朝鮮が戦争を始めようとするなら、甚大な結果を招くことを承知すべきだろう

川上高司所長の「核保有容認の恐れ高まる」との見方
(6日付日経新聞朝刊9面)
Kawakam2i.jpg●米国が北朝鮮の核兵器保有を認める可能性は高まっている。次の焦点は6回目の核実験で、中国を刺激しないように共産党大会後に実施する可能性が高い。
ICBMに加え、核実験まで試みられれば、米国の軍事行動のレッドラインはなくなってしまう。米国は先制攻撃の機を逃した。4月に空母2隻を派遣した際、可能性は高まったが、トランプ政権は中国の圧力に期待して行動を見送り、ここで北朝鮮に足元を見られてしまった

●今、先制攻撃するのは難しい。北のICBM保有で米本土が反撃される可能性が高まった。ロシアンゲート等の問題で政権がごたつく中、大統領が大きな犠牲を払ってまで踏み切るとは考えにくい
最終的に好ましくないシナリオが浮上しそうだ。米政権が北の核兵器保有を認め、対話に動くケースだ。朝鮮半島(韓国が?)が統一に向けた南北対話に動き出す。

●金正恩体制の維持は中国にとっても望ましい
日本にとっては、国際社会が公認する核保有国が隣に生まれるという最悪の結果になる恐れがある
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槍ヶ岳と高山植物.jpgだいぶ省略しながらも整理していくと、川上所長の見方もさもありなん・・・と思えてきます。さすがに「統一に向けた南北対話」が実を結ぶとは思えませんが、今の韓国大統領はそんなアピールを始めるのでしょう・・・

そんなことすれば、第2、第3の北朝鮮が出現し、国際社会にとって由々しき事態だと日本は訴えるのでしょうが、決められない日本は米国からも足元を見られ、米国が売りたい兵器だけ押しつけられるのかも知れません・・・

朝鮮半島関連の記事
「韓国大統領の母親は米軍のお陰で脱出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-06
「韓国の混乱を大東亜戦争後の哀史に学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-25
「ルトワックの日韓関係分析」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-17

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韓国大統領の母親は米軍のお陰で脱出できた [ふと考えること]

「あの米軍兵士への感謝と尊敬の念を韓国は永遠に忘れない」
文在寅よ・・・この言葉を忘れるな!

Moon Jae-in2.jpg6月28日、訪米中の文在寅・韓国大統領が米海兵隊博物館の「Chosin Reservoir作戦記念碑」前で、海兵隊司令官や同作戦参加退役軍人らが見守る中でスピーチし、朝鮮戦争中に同大統領の母親を含む約14000名の韓国人を救出した「奇跡の船:SS Meredith Victory」の乗員や、Chosin作戦を戦った米海兵隊員に感謝の意を伝え、冒頭の言葉を述べながら「米韓同盟の将来に何の疑問もない」と語りました。

THAADの受け入れにさえ時間稼ぎをしている韓国大統領と、同一人物とは思えない「演出イベント」での発言ですが、北朝鮮のICBM発射試験もあり米国等の出方が注目される中、朝鮮半島で一朝有事の際には同じような「悪夢」が再現しかねないご時世ですので、一つのエピソードとしてご紹介しておきます

しかし、同大統領のお母様のような事態に巻き込まれる韓国民が出るかも知れない現下の情勢で、良くもまぁ「冬季五輪南北合同チーム」とか打ち出せるよなぁ・・・と思います。

朝鮮戦争の概要
Korean war.jpg1950年6月25日早朝、北朝鮮軍の突然の38度線からの南進によって始まった朝鮮戦争は、北朝鮮軍の戦力優位と奇襲攻撃と、韓国軍の準備不足が重なり、7月に入り在日米軍や米軍爆撃機が参戦したものの、韓国軍や米軍は朝鮮半島南部に押し込まれ、全軍が日本海に追い落とされる寸前となった
起死回生を狙って韓国軍と米軍を中心とする国連軍は9月15日、北朝鮮の伸びきった補給路を断つべく、半島中部西海岸の仁川に海兵隊を先頭とする7万人による上陸作戦を敢行し成功する。9月28日はソウルを奪還、10月1日には韓国軍が38度線を突破して北上を開始

●混乱する北朝鮮軍は敗走を続け、勢いに持った韓国&国連軍は北上を続け、中国国境の鴨緑江にまで達する。
しかし10月20日、今度は情勢に危機感を持った中国が志願兵の名目で軍20万人を投入し、人海戦術で韓国&国連軍に攻勢をかけ、その圧力で再び韓国&国連軍は敗走を重ねる。

12月5日には中国&北朝鮮軍が平壌を奪還、1951年1月4日にはソウルも奪い返された。しかし旧式装備で人海戦術頼みの中国軍の勢いも長くは続かず、重火器や戦車を補充した国連軍が巻き返し、3月14日にはソウルを再び韓国&国連軍が奪い返し
●その後は38度線を境ににらみ合いが続き、1953年7月27日に板門店で、北朝鮮、中国、国連の3軍の間で休戦協定が結ばれ、現在に至るまで「休戦状態」が続いている

同作戦と「奇跡の船」による脱出の概要
Korean war3.jpg中国軍が参戦し、韓国&国連軍が大ピンチに陥っていた当時、現在の北朝鮮西部に進出していた米海兵隊の第一海兵師団と米陸軍第7師団の一部が、約12万人の中国軍の包囲網を突破し、約150kmもの険しい地形の悪路を氷点下の気温の中で撤退して北朝鮮東岸の港町「興南:Hungnam」に何とか到達させたのが、1950年の11月27日~12月10日までの「Chosin Reservoir作戦」である
●その後、同港町を攻撃する中国軍10万と対峙しつつ、10万人の国連軍と10万人の避難民を、193隻の海軍艦艇や商船で韓国に避難させた中の一隻が、文在寅・韓国大統領の母親も乗った「奇跡の船:SS Meredith Victory」である。

Victory号の船長は、当時の米海兵隊や陸軍士官から韓国避難民を乗せてくれるように頼まれ、積み荷の兵器や荷物の一部を投棄してスペースを確保し、同避難作戦の中で最大の1隻14000人の避難民を乗船させ、3日間かけて釜山沖の島まで輸送した
●当時の避難民は、国連軍に協力した事で中国&北朝鮮軍から大量撲殺されることから逃げ延びた人々であった。移動は機雷が多数設置された海域を行く危険な航海だったが、航海中に避難民には一人の犠牲者も出ず、逆に5名赤ちゃんが誕生している。

文在寅・韓国大統領は同作戦記念碑の前で
Moon Jae-in.jpg●今90歳になった母の話によれば、脱出航海の途中でクリスマスイブを迎えたが、米軍兵士が避難民全員にクリスマスプレゼントとしてキャンディーを1個づつ配ってくれたそうだ。
それはたった1個のキャンディーだったかも知れない。しかし米軍兵士達は、あの厳しく激しい戦いの中で、精一杯の心遣いをしてくれたのだ。私はこれら米軍兵士の皆さんに今後も常に感謝をし続けるだろう

素晴らしい退役米軍人の皆様、韓国はこのことを忘れません。感謝と尊敬の念を韓国は永遠に忘れません。だからこそ、私は米韓同盟の将来に何の疑問も持っていません
●(この脱出航海の2年後に文在寅・韓国大統領が誕生している事を受け、)「Chosin Reservoir作戦」を戦った米軍兵士の皆さんの奮闘がなければ、私は生まれることも、ここで話をする事も出来なかったでしょう。皆さんが払った犠牲や献身的な行為を学ぶとき、私は感謝の気持ちをどのように表現して良いのかわかりません

Moon Jae-in5.jpg●母を救ってくれたVictory号に、当時22歳で勤務していたRobert Lunneyさんに今日お礼を言う事が出来ました。その際Lunneyさんは「私が死ぬまでに朝鮮半島の統一を目にしたい」と話されました。
●そうです。南北統一は私の夢でもあると、私はLunneyさんにお話しさせて頂きました
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このイベントの韓国内での報道振りと韓国民の反応が気になります

一方で、文在寅・韓国大統領のお母上は、息子の南北融和路線をどのように見ておられるのでしょうか?
Korean war4.jpg韓国軍や国連軍に協力したとの理由で、多数の一般住民を撲殺し略奪の限りを尽くした中国軍や北朝鮮軍の記憶をお持ちであろう「お母上」なら文在寅・韓国大統領に意見して下さるのではないでしょうか?

そして日本が韓国を統治していた当時の真の状況をご存じの「お母上」であれば、日本と仲良くせよ、ねつ造した韓国礼賛の歴史認識で道を誤るな・・・とアドバイス頂けるのではないでしょうか?

韓国関連の記事
「韓国の混乱を大東亜戦争後の哀史に学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-25
「ルトワックの日韓関係分析」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-17
「韓国はF-35と共に地中貫通弾530発購入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-27-1
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中国の巨大ミサイル駆逐艦「Type 055」進水 [中国要人・軍事]

Type 055 4.jpg6月28日、上海の江南造船所で中国海軍の新しい大型ミサイル駆逐艦「Type 055:Renhai-class」の1番艦が進水しました。

進水式典実施を発表する中国国防省声明は、具体的な艦名等で呼称しておらず正式名称は不明ですが、西側情報機関では「Type 055:Renhai-class」との名称で呼んでいます。

また、いちおう「駆逐艦:destroyer」とご紹介しましたが、2017年版米国防省「中国の軍事力」レポートでは巡洋艦(cruiser)に分類されており、米国としても大型艦と見なしているようです

Type 055.jpg細部について公式発表がありませんが、衛星写真等による分析では、中国海軍現有の「Type 054D」より大型で、また「054D」より大きい米海軍イージス艦(アーレイ・バーク級)より更に大型で、イージス艦と似たような装備を備えているようです。

今後は2019年の作戦運用開始に向け、各種試験が今後行われると見積もられていますが、6月28日Defense-News記事などでその概要をお勉強しておきましょう。

6月28日Defense-News記事などによれば
●6月28日の進水式典に併せて中国国防省は、同艦が排水量1万トンの艦艇であると紹介しているが、細部は明らかにしていない。しかし衛星写真等による分析ではこ
の数字は控えめなモノで、以下の様な大型艦艇だと見積もられている
---Type 055は、排水量12~13000トン、全長175~180m 幅20m
---Type 054Dは排水量7500トン、全長155m
---米イージス艦(アーレイバーク級)は排水量8700トン、全長155m

防空ミサイルやBMDミサイルの垂直発射装置VLS
--- Type 055は、112~128発セル
---米イージス艦(アーレイバーク級)は96発セル

その他の兵装
H/PJ-38 130mm単装速射砲、H/PJ-11 CIWS
HHQ-10 近SAM、VLS 112セル
●2019年と予想されている運用開始後「Type 055:Renhai級」は、比較的小型の052D駆逐艦や054Aフリゲート艦と共に、空母戦闘群を構成するモノと考えられている

●「Type 055:Renhai級」の建造ペースは従来の新型艦艇と比べて極めて早い052D駆逐艦の場合は、052, 052Bと052Cと改良を重ねた後に完成版の「052D」量産に至っているが、
●052D駆逐艦は2014年に試作艦が初めて確認されたばかりにも関わらず、大連市の大連造船所既に現在5番艦の建造開始が始まっている。このことから、海軍艦艇建造インフラの充実度が伺える
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Type 055 2.jpg中国海軍の艦艇の建造ペースが急速に速まっている事は確かでしょうし、米海軍が危機感を覚えて「355隻体制」を訴えていることは理解できます

しかし同時に忘れてはならないのは、空母や艦載機や艦艇搭載ミサイル等の戦力差を考えれば、中国軍が「艦艇VS艦艇」や「空母VS空母」の決戦を想定して軍事増強していると考えるのは適切とは言いがたく、やはり米軍や西側の弱点を突く、弾道・巡航ミサイル、サイバーや宇宙や電子戦を正面に据えた「Short duration, high intensity conflict」で勝利する事を狙っている(2017年版米国防省「中国の軍事力」レポートの表現)点です。

ちなみに、今では「駆逐艦:destroyer」とは巡洋艦(cruiser)の違いは、巡洋艦の方が少し大型で遠洋航海向きだ・・・程度の極めて微妙な感覚的な分類で、明確な定義はないようです

米海軍トップが355隻体制を打ち上げる 
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-18

中国海軍関連の話題
「RIMPACで日本に嫌がらせ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-27
「南シナ海で大規模演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-30
「インド洋に第4の艦隊?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-10

RAND研究所が200ページを超える本格的報告書を
「前:RAND中国軍弱点レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-15
「後:RAND中国軍弱点レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-15-1

Type 055 3.jpgウィキペディア「Type 055」
https://ja.wikipedia.org/wiki/055%E5%9E%8B%E9%A7%86%E9%80%90%E8%89%A6

「Type 052D」について
http://www.military-today.com/navy/type_052d_class.htm

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無人機の管理体制を根本的に再考せよ! [米空軍]

Deptula UAV.jpg6月27日、米空軍協会ミッチェル研究所のDavid Deptula研究本部長が、28日公表予定の「Consolidating the Revolution: Optimizing the Potential of Remotely Piloted Aircraft」とのレポート説明会を行い、急速に導入が進んでいる無人機の技術開発・調達・管理体制を抜本的に見直すべきと主張しています

2004年に僅か5個哨戒点だった無人機が、2017年には90個に急増するが、今後もその傾向は加速して更に無人機への依存度が高まると予想されるが、911事案以降の急速な普及は「国防省や各軍種内でバラバラに:disorganized」行われているとの危機感を訴えるものです

RQ-4 block 30.jpgそして同レポートは、無人機管理体制の制度的変革(institutional changes)と技術開発面での新たな取り組みを焦点として提言し、制度的変革を最も困難なものと分析しているようです
米空軍協会web記事が、同レポートの主要提言をまとめていますので、その概要をご紹介します

国防省は調達を円滑化するため
●無人機操作員と機体に共通の基準を設けよ
●個々の無人機部品を一般市場から容易に調達&搭載できる方式にせよ
●映像分析やデータ管理に伝統的軍需企業でない企業も呼び込め
他国が容易に無人機を購入できるようにせよ

国防省は無人機の技術的課題に対処するため
MQ-9-2.jpgオープンアーキテクチャー調達の仕組みを整えよ
作戦情報クラウドに無人機通信も取り込め
●無人機離着陸からISR分析まで多様分野で自動化を進めよ
●無人機搭載兵器をモジュール化せよ

無人機管理の組織制度を変革せよ
中高高度ステルス無人機を調整する国防省組織を設けよ
●同タイプ無人機を統合JFACCの下で作戦運用せよ
米本土に所在する無人機を訓練や支援任務に活用せよ
●無人機関連の用語や関連特権的組織やポストを再整理せよ
例えば、無人機の分類は得られる情報や効果でなされるべきで、同時に何機を操作できるかでなされるべきではない)
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全ての装備品に叫ばれている「オープンアーキテクチャー」や「モジュール化」や「伝統的軍需企業でない企業も呼び込め」が提言に含まれていますが、「共通基準を設けよ」や「データ分析洗練」は無人機が急激に導入されてきたことによる課題です

Deptula AFA.jpg「中高高度ステルス無人機を調整する国防省組織」は専門的な領域で、「統合JFACCの下で作戦運用せよ」も理解できなくはないですが、本当に言いたかったのは「用語や関連特権的組織(nomenclature)を再整理せよ」で、一番力が入っているように感じました

50ページを超えるどっしりしたレポートですので、無人機を取り巻く多様な課題を理解するにはよい資料でしょう。ご関心のある方はどうぞ!

ミッチェル研究所のwebサイト
http://www.mitchellaerospacepower.org/  

当該レポート(2.3MB) http://docs.wixstatic.com/ugd/a2dd91_ae7c550479d74d178d24c49ed7759677.pdf

いろいろな無人機の話題
「検査院が操縦者養成を批判」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-14
「空軍の無人機操縦者処遇を非難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-16

「米軍士官学校が無人機群れ対決」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-26
「国防省:空軍はもっと真剣に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-30
「米海軍が103機の群れ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1
「無人艇の群れで港湾防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-19
「無人機の群れ:艦艇攻撃や防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10

「海兵隊が援護・攻撃・偵察・電子戦機を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-24
「Ternの開発契約」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-30
「初の空母艦載無人機は?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-15
「MQ-25のステルス性は後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-27 

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2度目の航行の自由作戦と台湾武器輸出への反発など [中国要人・軍事]

米国の独立記念日週間で報道も低調ですが・・・
米中間に波風増幅傾向か

SouthChina-sea2.jpg6月28日に米国務省が台湾への約1700億円の武器輸出を容認すると発表し、翌日には米国政府が北朝鮮に弾道ミサイル関連部品を輸出した中国企業等に制裁を表明して波風が予期される米中関係について、トランプ政権2度目の「航行の自由作戦」など、追加の動きを時系列でご紹介します

オバマ政権の時にはこの様な動きがあったものの、トランプ政権誕生後は「様子見」状態だったモノが、再び動き始めた印象です。
しかし中国による南シナ海の人工島埋め立て建設や軍事装備配置は着々と進められており、米国だけが足踏みしている状況でしたので、事態は更に悪化しています。

日本では東京都議選というローカルな話題で盛り上がっていますが、中国は北朝鮮問題で世界が盛り上がっている間に、着々と既成事実を積み上げています

時系列で最近の米国と中国のやりとり事象を

5月25日
昨年10月から中断していた「航行の自由作戦」をミサイル巡洋艦「USS Dewey」で再開し、「Mischief Reef」沖を航行

6月28日
中国海軍が最新の大型駆逐艦「Type 055」を披露(進水)。西側関係者の分析によれば、その規模や能力が米海軍のアーレイバーク級ミサイル駆逐艦(イージス艦)そっくり

6月28日~29日
Harris3.jpg米国務省が台湾への約1600億円の武器輸出を容認すると発表、
28日ハリス太平洋軍司令官は、豪州との史上最大の演習中にブリスベーンで、「偽物の島を真実の人間は信じない:Fake islands should not be believed by real people」、「中国は軍事力及び経済力を用い、ルールに沿った国際秩序を浸食している」と訴えた

6月30日
●米国政府が北朝鮮に弾道ミサイル関連部品を輸出した中国企業等に制裁を表明
●この台湾への武器輸出承認に対し中国外務省報道官は、米国の「一つの中国政策」を堅持するとの言葉に反し、中国の核心的利益に反するモノであり、「誰も中国の主権と領土を保持する決意に水を差すことは出来ず、中国は如何なる国内問題に対する海外からの干渉にも反対する」と米国を批判した

●CSISの海洋監視チームは、「Mischief」「Fiery Cross」「Subi Reefs in the Spratly」に、レーダー施設を含む新たな軍事施設の設置を衛星写真で確認
(米国関係者は、中国が南シナ海の人工島などに高性能地対空ミサイルSAMを配備する事を懸念している。昨年12月に中国が海南島に射程距離が250マイルのSA-21ミサイルを訓練で持ち込んだことが確認されており、現時点では中国本土に戻っているが、人工島に配備されル可能性が懸念されている)

6月30日~7月1日
習近平.jpg香港返還20周年記念で習近平が香港を訪問。3000名の兵士を前に閲兵式を30日実施。力を誇示
●1日の20周年記念式典では、一国二制度の成功を自己自賛し、民主化を認めぬ中国政府に失望した若者の間で台頭する香港独立の動きにも言及しつつ、香港政府が「有効な打撃を与えた」として対応をたたえた
空母遼寧を香港に派遣すると発表。7日に香港に寄港し、8~9日には香港市民に遼寧の内部などが公開される予定

7月2日
USS Dewey.jpg●Fox News報道によれば、2日にトランプ政権2回目の航行の自由作戦として、駆逐艦USS Stethemが、「Paracel Islands」の「Triton Island」の12マイル以内を航行した。同等周辺での作戦は昨年10月以来
ただし、米側関係者は同作戦の遂行を発表しておらず、太平洋軍報道官は「我々は定期的に航行の自由作戦を行っており、今後も継続して実施する」とのみコメントしている
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これだけの事象で取り立てコメントすることもないのですが、中国とは「ディール」も出来ない雰囲気を感じ始めた米国内に静かに変化が起こりつつある様も気がします

まぁ・・・テレビを付ければグダグダの報道ばかりで、加えてこの猛暑ですから、トニックシャンプー(表現が古い!)のような役割をこの記事が少しは果たせれば・・・と思います。

最近の中国と米国の動き
「米国が台湾武器輸出&中国企業制裁示唆」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-30
「アジア安全保障会議直前の動き」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-01-3

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無人機の群れ第7世代機を今年夏に [米国防省高官]

Roper44.jpg7月号の米空軍協会機関誌が「Perdix Could be DOD’s Pathfinder:Perdixは米国防省の先駆者になる」との記事を掲載し、国防省SCO(緊急戦略能力開発室)が取り組む「小型無人機の群れ」試験・開発の状況を、SCO室長William Roper氏へのインタビューで紹介しています

2016年10月、1機の重量が300g以下の小型無人機「Perdix」を「103機」FA-18から投下し、群れとして運用する試験を行い、今年1月に初期成果の発表があったところですが、昨年10月の試験を行った第6世代無人機を改良した、第7世代機が今年夏には完了する事が明らかにされています

また2013年に研究が始まり、2015年に最初の試験を行った経緯など、なかなか興味深い「これまでの道のり」にも話が及んでいます。

市販部品を使用して創られた重量283g、全長16.5cm、翼長25.4cm、プロペラ長6.6cmの小型無人機「Perdix」と、「オープンアーキテクチャー」を存分に活用して国防省SCO(緊急戦略能力開発室)プロジェクトの「先駆者」にすべく奮闘するWilliam Roper室長の物語としても興味深い所です

7月号の米空軍協会機関誌によれば
Perdix2.jpg●Roper室長はインタビューに答え、第7世代目となる「Perdix」がこの夏にも完成すると述べ、約7ヶ月毎に新たな世代に進化している様子を、「政府のやるプロジェクトにしては上出来だろう」「スマホのように、継続してソフトとハードの両方を改良革新していくスタイルだ」と表現した
●また同室長は、幾つか最終的に固めていない仕様があり、全てをがちがちに固めないで使用者のニーズを反映できるように構えていると開発要領の違いを述べ、開発初期段階でパートナーに事業への関与のサインを求めず、何が出来るかが固まってきた段階でサインを求める形にしているとも説明した

●そしてラッキーナンバーである「7」代目の「Perdix」が米軍全体で受け入れられれば、開発手法と製造と部隊配備の面で、国防省SCO(緊急戦略能力開発室)の他のプロジェクトの「先駆者」となろうだろうと室長は語った
●昨年10月の試験であられたデータは膨大で分析評価が続いているが、「群れ」を自立的に制御するソフトは期待した役割を果たしたと評価している。群れから離れた無人機と他機が意思疎通し、再び群れに融合させる仕組みが確認できた等、人間が指示しなくともチームとして機能する喜ばしい結果が出ていると室長は述べた

Perdix.jpg●今は様々な教訓を踏まえ、何を「Perdix」に搭載するかも考え始めている。考えるのが楽しい仕事だ。監視任務は当然出てくる話だろうし、無人機MQ-1やMQ-9が出来ない場所の偵察監視を「Perdix」が担うことは可能だとRoper氏は語った
●しかし偵察監視だけじゃ無い。ただ新しい技術は奇襲的に用いるのが軍事的成功の鍵でもあるので、具体的な活用任務エリアについて同室長はこれ以上語らなかった

●国防省SCO室は、次々と今後現れるであろう新技術を「Perdix」にどんどん投入し、「オープンアーキテクチャー」を最大活用して改良し続けたいと考えている。
●そこで、従来のように一度に10万個購入して保管し、10年間少しづつ取り出して使うのではなく、改良を続けながら少量づつ購入する方向に向かいたいと同室長は例を出し、この方面でも語った「Perdix」を先駆者にしたいと語っていた

2016年10月試験映像


開発開始当初の様子
●2013年に開発が始まり、2015年に加州のエドワーズ空軍基地で試験した際は成功とは言えなかった。民生部品を多用した「Perdix」が、高速で低温の上空を飛行する航空機から投下することに耐えられるか確認するため、極地に同機を持ち込んでマイナス35度に耐えられるかを確認したりした。
●また民生部品は個々の部品重量が微妙に異なることから機体重量にバラツキが生じ、ソフトで柔軟対応が出来るように対応する必要があった。しかし基本的に乱暴な扱いにも耐久性がある事が明らかになり、興味を示した海兵隊で最初の試験を行った

Drone-mal.jpg反応しなくなった無人機には「kill signal」を出して使用しない。2016年10月の試験では、60秒間反応が無ければ破棄信号を出した。初期段階の試験では、寒さや通信途絶等から故障する無人機も多かったが、昨年10月の試験では9割以上の「Perdix」が運用可能だった。
●この背景には、民間企業の大量参入で小型無人機技術が急速に進歩していることがある。各種装置の小型化、信号処理装置の耐久性向上、バッテリーの能力向上等々、厳しい環境でも安定して動作する部品研究に、民間分野で多額の投資が行われているからである

●その耐久性が証明されるにつれ、海兵隊だけで無く、米海軍も空軍も特殊部隊も、皆が関心をこの技術に示していると同室長は語っている
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「無人機の群れ」プロジェクトは、今年1月の初期成果発表を受け当時のカーター国防長官が、「第3の相殺戦略」の一環であることを強調しつつ、「敵に一歩先んじる最先端の技術革新だ」と高く評価するコメントを出しているように、無人機活用の大きな力点・焦点ですので注目したいと思います

Roper4.jpgついでに言えば、次世代を担う若者に無人機の性能や特性を学ばせ、新たなアイディアを募るため、国防省DARPAがスポンサーとなり、米軍の陸海空軍士官学校の「無人機の群れ」対抗戦を今年4月に行ったぐらいの力の入れようです。

更に言えば、Roper室長はこの春、米空軍協会で講演し、「米軍の中で、米空軍が無人機の群れに一番消極的だ」と非難しており、職域やポスト防衛を図る操縦者の姿が浮き彫りになっています。そう、これは改革・変革へのリトマス試験紙の性格を持つプロジェクトでもあります。

無人機の群れ関連の記事
「3軍の士官学校が群れ対決」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-26
「国防省幹部:空軍はもっと真剣に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-30
「米海軍が103機の無人機群れ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1

「無人艇の群れで港湾防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-19
「無人機の群れ:艦艇の攻撃や防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10
「米空軍が小型無人機20年計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-18

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液体アンテナ:多様な周波数を一つのアンテナで [米空軍]

liquid antenna4.jpg6月13日付Defense-Techが、米空軍研究所が取り組む航空機搭載用の「液体金属アンテナ:liquid antenna」研究を紹介しています。

皆さんご存知のように、航空機には使用する様々な周波数の電磁波を発信&受信できるように、多数の様々なアンテナが取り付けられています。平均8~9個搭載されているそうです。
小さな突起物のようなアンテナだったり、機体に沿って埋め込まれていたり、機体表面にアンテナパネルを埋め込んだり・・・様々な形態で、様々な周波数に対応するアンテナが必要です

liquid antenna.jpgしかしこのように多様なアンテナは、全てが常に使用されるわけではなく、ある任務に必要ないアンテナも「余分な重量物」として常に航空機と共に移動します。

このような問題認識を持ち、液体金属をアンテナに活用することで、一つのアンテナで複数の周波数に対応できるアンテナを作ろうとする研究が始まっており、7~10年後の実用化を目指し研究が続いています

液体金属アンテナ:liquid antenna研究
liquid antenna3.jpg●国防省で行われた国防省研究機関展示会でMilitary.comは、液体アンテナを研究するChris Tabor氏にインタビューを行った。
●同氏によれば、液体金属を利用した多様な周波数に適応可能なアンテナには2つのタイプがある。チューブや管に液体金属を注入し、その量で対応周波数を変える方式と、曲げたり伸ばしたりできる柔軟な素材に液体金属を入れ込み、素材を曲げ伸ばしすることで多様な周波数に対応する方式である

チューブや管に液体金属を注入する方式では、液体金属がチューブ等の中で占める長さにより、アンテナの長さを変える効果を生み出す
●「NextFlex」に代表される曲げ伸ばしできる素材の研究は、2015年に国防省が企業や研究機関162団体と結成した「Manufacturing Innovation Institute for Flexible Hybrid Electronics」や、「FlexTech Alliance」が取り組む技術を利用する

液体金属と言えば常温で液体状態を保つ「水銀」が頭に浮かぶが、担当の少尉は水銀を使用しないと語り、電子機器よく使用される摂氏30度で液化する「ガリウム:gallium」の活用に言及した
liquid antenna2.jpg●そして同少尉は「イリジウムとの合金にすることで、液化温度をマイナス30度程度に下げることができ、多様な環境で使用できる」と語っていた

●Tabor氏は、「70メガHz~7ギガHzの範囲の広帯域周波数に対応する範囲を試験で取り組んでいる」と説明している
●現在はまだ実験室内での試験レベルだが、次のステップとして無人偵察攻撃機MQ-9などの航空機に液体アンテナを搭載して確認を狙っている。Tabor氏らは、7~10年後には実用化できるだろうと語ってくれた
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その他に同記事は、MQ-9無人攻撃機にデータリンクLink-16のニーズが高まっており、搭載容量に余裕のない同無人機のアンテナをどうするかが課題だが、自動制御装置のカバーに「printed antenna」を組み込む検討も紹介しています

MQ-9 5.jpgまだプロトタイプ作成段階らしいですが、2か月ほどでMQ-9用の「printed antenna」が組み込まれたカバーが出来上がるようです

軍用だけでなく、民生分野での活用範囲も広いでしょうから今後が楽しみな技術です。期待いたしましょう!

最近の興味深い技術
「F-35Cの着陸精度が素晴らしい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-22
「FA-18の着艦精度も改善」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-09
「SpaceXがロケット回収に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-02

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米国が台湾へ武器輸出&中国企業等へ制裁 [中国要人・軍事]

まだまだ中国の出方を見ながら極めて慎重ですが・・・

US taiwan2.jpg6月29日、米国務省が台湾への約1500億円規模の大型武器輸出を承認したと明らかにしました。「一つの中国」政策を変更するモノではないとの解説付きの発表で、慎重な姿勢は一応踏襲しています

もちろん、この判断は米議会の承認を得ないと正式な台湾との交渉には入れませし、交渉により価格に変化もあり得ます。

US taiwan.jpgまた、下記でご紹介する兵器の中身には、長射程や最新の兵器が含まれておらず、台湾の希望リストより限定的なモノでしょうし、中国を刺激する程度も「実質」低いと思われますが、台湾海峡に波風立てるには十分な規模と中身でしょう

更に、同28日に米国政府関係者が、北朝鮮に違法輸出を行う中国企業や個人への経済制裁措置を発動する方針を固めたとの報道が流れており、米国の対中国姿勢の「変化の兆し」かも知れませんのでご紹介します

国務省が承認した兵器のリストと価格など
●匿名で武器輸出承認の件を説明した米政府高官は、「長年基本としてきた一つの中国政策に変化はない」ときっちり説明しつつ、「台湾の防御能力強化は、台湾海峡を挟んだ対話に臨むに当たっての自身を与えるモノだ」とも語った
JSOW AGM-154C.jpg●更に、「この考え方に基づき、米国から台湾への武器売却は、台湾海峡だけでなく、アジア太平洋地域全体の平和と安定に寄与する事を目的としている。米国は今後更に、台湾海峡両側の人々が受け入れ可能なペースと範囲に於いて、台湾海峡を挟む関係の発展をサポートする」と語った

*早期警戒レーダー技術支援($400 million)
*AGM-154C 滑空型誘導兵器 (JSOW) ($185.5 million)
*AGM-88対レーダーミサイル (HARM) ($147.5 million)

*MK 48 6AT 大型魚雷 ($250 million)
*MK 46やMK-54等の軽魚雷能力向上($175 million)
*SM-2 艦対空ミサイル ($125 million)
*AN/SLQ-32A 艦載電子戦機材の能力向上($80 million)


米国が北朝鮮と違法貿易の中国企業や個人に制裁へ
6月30日付読売新聞朝刊1面のトップ記事が、「米政府は28日、核・ミサイル開発を進める北朝鮮と違法な取引をしている中国の企業や個人を対象にした金融制裁を、近く発動する方針を固めた」と報じています

USCC4.jpg複数の米政府関係者が28日、明らかにした。トランプ米大統領は4月以降、北朝鮮に影響力を持つ中国に圧力強化を要請してきたが、中国の対応は不十分と判断した。トランプ政権が、北朝鮮問題に絡み、中国企業に制裁を科すのは初めて。発動されれば、中国側の反発は必至で、米中関係が緊張する恐れがある。
●早ければ7月7~8日にドイツで開かれる主要20か国・地域(G20)首脳会議前に発動される可能性がある。ただ、米政府内には、対中関係の悪化を憂慮する声もある。中国が北朝鮮への圧力強化に傾けば、制裁発動について再検討する選択肢も残されているとみられる。

対象の中国企業は、遼寧省で北朝鮮と取引している貿易会社や経営者の男ら。同社は弾道ミサイルの誘導装置に転用可能なナビ装置などを北朝鮮に輸出した疑いをもたれている
●制裁が発動されれば、米国内の金融資産が凍結され、米金融期間等との取引が不可能になる
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AGM-154C 滑空型誘導兵器 (JSOW)は、航空機から投下された後、グライダーの様に滑空して最大40nm程度の範囲の目標をGPS誘導などで精密攻撃できる兵器で、AGM-88対レーダーミサイル (HARM)も射程は数十マイル程度です
またSM-2は艦艇の防空兵器で、最大射程が90nm程度です

Taiwan-China.jpg台湾海峡の幅からすると、また中国側にしてみれば脅威かも知れませんが、中国が保有する弾道・巡航ミサイルからすれば「かわいい兵器・おとなしい兵器」です。

中国の反応が気になります。また、米国が突っ張れるかがもっと気になります。日本国内の報道の劣化が激しく、テレビを見るのが苦痛になる今日この頃ですが、このニュースは注目致しましょう
都知事選の合間に、少しは報道されるかも・・・

最近の中国関連記事
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「マティス長官が台湾を公式会議で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-01-3
「RAND:台湾は戦闘機中心を見直せ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-07
「慶応神保氏:台湾の劣勢戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-25
「CSBA:台湾は弱者の戦法を」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27
「意味不明:岡崎研究所が台湾戦闘機擁護」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-23-1
「AIM-9X契約へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-07-1

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