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米空軍がF-16延命へ:F-15C退役に弾み? [米空軍]

再び・・・日本の戦闘機命派よ、どうする?

F-16 AF.jpg12日、ロッキード社が300機の米空軍F-16戦闘機の延命&能力向上措置を米空軍が正式決定したと発表し、契約に入ると明らかにしました。このF-16への投資により、同戦闘機の寿命を1.5倍にし、アビオニクスを改修することで、2048年以降も運用可能にするとの事業です。

この発表を受け、3月22日に米空軍幹部が「検討中」と議会証言した、制空用F-15C/D型約230機を引退させて穴を改良F-16で埋める案が俄然注目を集め、同日、米空軍幹部から発言が相次いでいます。

「3月22日の議会証言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-23

なお、米空軍が保有する230機のF-15C(複座D型は約30機)の大部分は州空軍に所属して米本土防衛に当たっており、正規軍所属は嘉手納基地と英空軍Lakenheath基地への配備機だけです。

米空軍参謀総長は「作戦ニーズが高く2020年代まではない」「米空軍アセット全体を総合的に検討して」「F-15とF-16だけの話では無い」等々と慎重に検討中とのニュアンスを強調しましたが、一方で米空軍作戦部長が脅威の変化やF-15C/D型維持が困難になりつつある事を強調するなど、実務レベルでは制空用F-15C/D型に傾きつつあるような臭いを放っています

ロッキードのF-16延命改修発表
F-16 AF2.jpg●12日ロッキード社は、当初の機体寿命が8000飛行時間時間であったF-16に延命&能力向上措置を実施することで、12000時間まで寿命を延ばす措置に関し、米空軍が意志決定をした(authorized)と発表した
●この延命等措置SLEP(service life extension program)はF-16の「Block 40~52」300機を対象とし、2048年以降も運用が可能にする措置で、併せてアビオニクス改修と耐久性試験が含まれている

(まんぐーす注:米空軍はF-16を約950機保有しており、正規軍約570機、州空軍約330機、予備役50機の構成。Block 40~52は米空軍保有の主力部分であるが、300機との数の理由は不明

制空用F-15C/D型引退検討を巡る発言(12日)
Goldfein米空軍参謀総長(Heritage財団で)
F-15C.jpg米空軍は予算に応ずるため、常に全てのオプションを検討しているが、実に難しい作業である。だから皆さんは、時折いろんなオプションの話を耳にするのだ
F-15C/Dに関して何も決断していないし、他の航空機に関しても同様だ。F-15Cは少なくとも2020年まで維持することにも変化は無い

米空軍アセットは、欧州でも、中東でも、朝鮮半島でも高い需要がアリ、ますます高まっている。だから米空軍がどの規模を維持すべきが検討しているところだ
●米空軍が行っている検討は、特定機種と特定機種の比較や代替検討ではなく、国家に求められる任務を、アセット全てを結びつけて如何に達成するかの検討であり、戦闘機から爆撃機から宇宙アセットまでを含めたトータル戦力の長期的検討である

Mark Nowland空軍作戦部長(中将)
F-15C2.jpgF-16を適切に能力向上(AESAレーダー搭載等)すれば、本土防衛用F-15C/Dの任務を引き継ぐことは可能であろう。
●しかし、いずれにしても第4世代機であるF-15やF-16は、将来の厳しい脅威環境では単独で能力を発揮できず、第5世代機に依存しないと任務を果たせないだろう。
欧州シナリオでも撃墜されるだろう。しかし、第5世代機と一体となり電子戦を行い、タイミングやテンポを執り、長射程兵器をすれば、事態は改善される

●州空軍はF-15Cを有効活用しているが、私が2001年当時に操縦していた当時で既に7100時間あまり飛行していた古い機体で、手間のかかる整備作業が必要だった
●Lakenheath英空軍基地で同機を操縦していた頃、同機の頭部が飛行中に折れる事故が発生した。実態として、F-22の方が航空優勢任務をより良く遂行できるし、F-15に可能な延命措置にも限界がある。だから機体全体の扱いを検討しているのだ
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米空軍の検討案は、主に州空軍で本土防空に当たっているF-15C/Dを退役させ、F-22でも補完しつつ、改良型F-16に代替させようとの案です。そしてこの検討案には、F-16を現F-15C配備基地に移動させる経費や操縦者の確保等の課題もあると報道されています。
なおこの検討で、嘉手納基地所属の正規軍F-15Cがどうなるのかは不明です

また、F-15Cの運命が未定の現時点で、300機のF-16延命&能力向上改修が決断された背景は記事からは不明ですが、恐らく、F-35開発&調達の遅れをカバーするため、また米海軍FA-18と同様に、中東での対テロ作戦等で想定以上に機体の酷使が続き、対策を打たないと目の前の任務が遂行できなくなるからでしょう。

F-15 JASDF.jpgいずれにしても、F-15Cの兄弟分であるF-15Jを主力戦闘機とし、F-15Jの後継をどうしようか思案中の航空自衛隊にとって、極めて重大なニュースです。

3月24日付記事の繰り返しになりますが、米空軍による-15C引退検討の重要考慮事項として、米空軍F-15を引退させることで、米国が日本に追加でF-35を購入させる強力カードとなる事を指摘しておきたいと思います

米空軍F-15の関連記事
「衝撃:制空用F-15全廃検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-23
「現実的で低価格なF-15能力向上案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-15
「米メディア:心神よりF-15改修」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-16
「F-15全機の電子戦機材換装へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-05

「米空軍がF-15と16の延命検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-25
「F-15の寿命を2倍に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-27
「F-16の延命措置300機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-31-1

米空軍の将来制空アセット検討
「Penetrating Counter Air検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「2030年検討の結果発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-02

「悲劇:F-3開発の動きと戦闘機命派への提言」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18

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国防長官は空母の朝鮮半島?派遣をどう語ったか? [マティス長官]

mattis-about.jpg10日、マティス国防長官が定例の記者会見を行い、シリア情勢と併せ、豪州行きを急遽変更してシンガポールから「北上」する事になった空母カールビンソンの動きについてコメントしているのでご紹介します。

同空母は9日にハリス太平洋軍司令官の「北上」命令を受けましたが、8日には既にシンガポールを出航しており、出発後の行き先変更となりました。

Carl Vinson2.jpg国防省や太平洋軍は「北上」とか「西太平洋」としか行き先に言及していませんが、マクマスター大統領補佐官は9日のテレビ番組で、空母群が朝鮮半島に向かうと報じられていることについて、「妥当な行動だ」「米国民や地域の同盟国への脅威を取り除くため、あらゆる選択肢を提示できる準備をするよう、大統領は求めている」と発言し、朝鮮半島方面が行き先であることを事実上認めています。

なお同空母群は、同空母のほか、ミサイル駆逐艦2隻(USS Wayne E. MeyerとMichael Murphy)とミサイル巡洋艦(USS Lake Champlain)とで構成されています。(注:空母群には一般的に攻撃型潜水艦も含まれているが、通常公表されない。大統領は潜水艦も同行のような発言を)

11日付米海軍協会web記事によれば
N-Korea.jpg●米海軍協会の理解では、8日にシンガポールを出航した空母群が朝鮮半島近海に到達するには1週間以上が必要でアリ、途上の訓練も中止していない様子である事から、北朝鮮にとって重要な記念日である4月15日には間に合わない
●ちなみに4月15日は、北朝鮮の建国の父である金日成の誕生日で、過去に北朝鮮が核実験やミサイル発射試験を行ってきた特別な日である

10日の記者会見でマティス国防長官は、同空母群の「北上」について、特段の理由があるわけでは無いとし、「我々が空母を北上させる特別な要求や兆候、または理由があるわけでは無い」と語った
Mattis44.jpg●更に長官は、「同空母は西太平洋に派遣されており、太平洋地域を自由に行き来している。我々が最も落ち着きが良い・賢明(prudent)とその時点で考える場所に、向かうのだ」と表現した

●なお同空母群はサンディエゴに拠点を置く第3艦隊に所属しているが、今年1月5日から西太平洋地域に派遣されている。
●派遣されて以降、これまでに3月の米韓共同演習「Foal Eagle 2017」や海上自衛隊との共同演習を行っているほか、南シナ海でのパトロール航海も行っている
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北朝鮮との国境付近に中国軍が15万人を派遣したとか、4月27日に米軍がミサイル攻撃を計画しているとか、様々な不確かな情報が飛び交う事態となっていますが、外務省が「スポット情報」を出した以外は不確かな情報ばかりですので、慎重に見極めたいと思います

Carl Vinson.jpg一方で、マティス長官の発言は慎重の上にも慎重を期し、誤解や誤認識が事態急変を招くことを警戒した表現だと思いますが、日本のメディアが「真央ちゃん一色」なのも考え物です。

これが日本人のオストリッチ症候群(ダチョウが現実から目を背け、頭を穴に突っ込み周囲を見なくする行動を人間に例え)の兆候だとしたら、そしてその反動でちょっとした事案に過敏に反応するようであれば大変困ったことでアリ、見極めたいと思う次第です

北朝鮮の核やミサイルの話題が出ると視聴率急降下
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-21
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以下に宇都隆史参議院議員のFacebookより「コピー&ペースト」して掲載しておりました、韓国在留邦人に対する外務省「スポット情報」の適否に関する議論や、自衛隊による在外邦人救出の難しさに関する引用は、宇都議員に断りなく行ったものであり、宇都議員をはじめ支持者の皆様からマナー違反だと厳しくお叱りを受けました

また、宇都議員のお名前を間違って記載するなどなど、宇都議員とその支持者の皆様に大変ご無礼いたしました。
無断引用部分を削除するとともに、関係者の皆様にお詫び申し上げます

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続報:シリア巡航ミサイル攻撃の裏側 [マティス長官]

Mattis44.jpg10日、米軍によるシリア空軍基地への巡航ミサイル攻撃について、マティス国防長官と中央軍報道官がそれぞれ作戦の狙いと効果について、声明または会見で語りました。

同攻撃については、7日、匿名の米国防省高官2名が記者団にブリーフィングを行っており、その内容を速報した9日アップ記事「シリア巡航ミサイル攻撃の裏側」は大変ご好評頂いております

「シリア巡航ミサイル攻撃の裏側」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-08

特に9日(日)、日本のメディアで専門家や研究者が「いい加減な推測」で同攻撃に言及し、攻撃の狙いや効果への「誤解」を振りまく一方で、発端となった化学兵器攻撃と証拠隠滅を図る病院への攻撃を紹介し、更に「何を攻撃し、何を攻撃しなかったか」と「ロシアへの配慮と疑念」の視点で攻撃計画をご紹介したことに対し、「地道な公開情報フォローの勝利」だと多くの賛辞を頂戴致しました

T-miso.jpg手前味噌はここまでとし、本日は、匿名ではなく、国防長官や軍報道官が同攻撃を説明した内容をご紹介します。
驚きの新事実があるわけではありませんが、日本のメディア報道と自称専門家の「いい加減さ」や「フェイクニュースぶり」を感じて頂くため、重複になる事を恐れずご紹介します

11日付米空軍協会web記事によれば
10日、マティス国防長官や米中央軍報道官のJohn Thomas陸軍大佐は、6日のシリア軍Shayrat空軍基地への巡航ミサイル攻撃が、同飛行場補破壊することが目的ではなく、「短期的に」シリア政府の空爆作戦能力を減殺する事だったと説明した。なお同基地は、シリア軍機がシリア市民への化学兵器攻撃を発起した基地である

Chemical4.jpg●マティス国防長官は10日の声明で、攻撃は将来の化学兵器使用を抑止する目的で、「measured response:管理された効果を狙った対応」であったと述べ、シリア軍作戦機の20%を破壊したと表現した。
●そして「シリア政府は同基地で給油や弾薬搭載を行う能力を失った。滑走路使用の可否に我々の関心は低かった」とも表現している。
●(注目すべきは、)最後に声明は「シリア政府には再び化学兵器を使用しないようメッセージが与えられた:The Syrian government would be ill-advised ever again to use chemical weapons」と結んでいる

参考:国防長官声明→https://www.defense.gov/News/News-Releases/News-Release-View/Article/1146758/statement-by-secretary-of-defense-jim-mattis-on-the-us-military-response-to-the

●米中央軍のJohn Thomas報道官は、燃料庫と給油施設、格納庫、兵器庫等を破壊したと語り、本作戦は「一度限り:one off」で、繰り返し行う事は考えていないと述べた
Chemical2.JPG●巡航ミサイル攻撃後もあまり時間を置かず、シリア軍機は空爆作戦を再開している。米軍側はシリア内での活動を低下させ、多国籍軍司令官は自軍の防御態勢確認を重点に行い、攻撃任務はそれほど行っていない

●また攻撃後ロシアは、シリア領内でのロシア軍と多国籍軍との不意遭遇や摩擦を避けるための意思疎通ラインの中断を発表した。しかし攻撃翌日、米露間ではこれまで通り、スケジュール調整の対話が同ラインで行われている
●しかし米中央軍は、今後も同ラインでやりとりが行われるかどうかには言及しなかった。しかし、ロシアとの意思疎通は、例えば上空で操縦者同士が無線通信する等の方法があると同報道官は語った
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「一度限り:one off」は米国連大使の発言とトーンが真逆で、政権内の意思統一に疑問符が付く発言です

Chemical3.jpg給油や弾薬供給能力は、現場の実態を知る軍人が選ぶプロの目標です。滑走路には被害復旧部隊がアリ、復旧機材がありますが、給油や弾薬は代替が無く復旧に時間が必要なウィークポイントでしょう。
当然、我が空軍は・・・戦闘機数と戦闘機機数にしか興味がありませんから・・・・

攻撃の成果は評価できませんし、今回の攻撃前提となるはずの戦略が米国のシリア政策や中東政策にあるのかとの問いは、当然議論されるべきでしょう。しかし何が計画されたのかは、米側の考え方を把握するためきちんとフォローする必要があります。議論の大前提です

特にひどかったのは、9日朝のNHK日曜討論に出席していた東京外国語大学で中東を専門にする青山弘之教授で、堂々と今回の攻撃でシリアの化学兵器がどれだけ破壊されたかを見極めないと評価できないとか、米軍の軍事的狙いが不明とか、左より発言で自らを守りつつ、偉そうな態度で批評する様子が際立っていました。

桜4.jpg7日既に報道されていた米側作戦の背景や狙い(化学兵器庫や滑走路やロシア軍施設は攻撃対象外)を全く把握していない「無知&馬鹿丸出し」発言で、軍事問題から逃避して中東研究を進めている様子を自ら暴露していました

日本に身近な北朝鮮問題でも、今後(今までも)この様ないい加減報道やコメントが為される可能性がありますので、注意していきたいと思います

アクセス多数
「シリア巡航ミサイル攻撃の裏側」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-08

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FA-18の「Block III Upgrades」がチョイ明らかに [Joint・統合参謀本部]

トランプ大統領が言及した改良型FA-18とはこれ???

FA-18 Inherent Resolve.jpg3日から5日に行われた米海軍協会「Sea-Air-Space会議」の場で、記者会見を行ったボーイング社FA-18&EA-18G責任者のDan Gillian氏がトランプ大統領がF-35Cの代替として大量購入を示唆していたFA-18の「Block III upgrades」改修型機についてボンヤリながら言及しました。

この「upgrades」版が、トランプ氏が国防省に対しF-35と比較せよと命じたモノなのか、別の改良計画もあるのか不明ですが、Gillian氏は「この能力向上計画案により、他の空母アセットには無い能力を提供できる」との表現でF-35との差異を強く示唆する表現で語っており、注目を集めています

この他にGillian氏は、FA-18の「増産能力」や「延命措置」についても語っており、トランプ大統領が示唆した大量購入を強く意識した会見となっています。
国防省が行っているであろう比較検討分析の結果が待たれるところですが、とりあえず「前振り」としてご紹介しておきます

Block III Upgradesについて
FA-18EF.jpgボーイング社は2013年に、よりステルス性を追求した改修計画を打ち出していたが、今回の「Block III Upgrades」構想は当時の案からシフトしている。
●そして今時提案の主眼は、FA-18E/Fの「tactical targeting技術」を向上させることに置かれ、米海軍のNIFC-CA構想における「smart node」として機能しうるように改修することなどが含まれる

●Gillian氏は「これまでFA-18E/Fは、情報を提供してもらうだけのシューターだったが、今後は全ての情報を融合し、作戦ネットワークへの貢献者である事がとても重要だ」と表現した
●ステルス性については諦めていないが、「ステルス性向上には少しだけ取り組む。シンプルで低コストの施策を考えている」とのみ同氏は言及し、細部を語らなかった

FA-18EF3.jpg●また2013年提案にも含まれた、燃料増装タンクを翼付け根上部に追加し、約3500ポンドの燃料追加で約120nm行動半径が増加する改修も含まれている
●更に、先進コックピットにするため大型ディスプレイを導入し、「smart node」に相応しいインターフェイスにすることや、「敵ステルス機の熱源を探知する空対空の長距離赤外線センサー」導入を構想している
●なお米海軍は、2015年にロッキード製のIRSTをFA-18E/F用に製造開始することを承認している

増産への備え
●2017年度補正予算には、FA-18を24機購入する関連予算が含まれており、ボーイング社は毎月2機製造可能な体制で臨んでいるが、米海軍や諸外国から追加注文があれば、増産可能な状態にある
●ちなみに2015年時点で、米海軍は545機のFA-18と114機のEA-18Gを保有しているが、将来的にはそれぞれ563機と153機になる予定である
●諸外国では、カナダがF-35開発の遅れの穴埋めとしてFA-18を18機購入すると発表し、クウェートも28機(追加で12機のオプション付き)を計画している

機体寿命の延長施策
FA-18EF2.jpg●ボーイング社は、現在の機体寿命6000飛行時間を9000時間に延長する延命改修案をまとめている
FA-18E/F型機は、F-35開発の遅れと対テロ戦争での想定以上の酷使により、機体寿命を想定以上の速度で消費しつつある。

●ボーイングの機体延命計画部長であるMark Sears氏は、ホーネットを2040年代まで活用するには、機体の補強などの整備事業が必要だと語り、米海軍が同延命改修を確認するため既に2機の機体をセントルイス工場に搬入していると明らかにした
●そしてボーイング社は米海軍が同延命施策を正式採用することに楽観的だと述べ、2018年早々には契約に至るだろうと語った
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EA-18G Clark3.jpg最初に述べたように、トランプ大統領がF-35との比較分析を求めた改良型FA-18なのか不明ですが、財政状況や米海軍の作戦構想等から判断すれば、ステルスはほどほどに、NIFC-CAに役立つ方向性で・・・との構想は理にかなっており、F-35と何処まで争えるのかはよく分かりませんが、ステルス機探知のIRSTが売りで一つの案にはなるのでしょう

NSCからバノン氏が追い出され、ますます軍人や軍人OBの存在感がましているトランプ政権ですが、中東での対テロ作戦が強化され、米軍の自由裁量が拡大する中、FA-18への負担は増すのでしょうから、価格が不明ですが、今後色々話題になる改修計画なのでしょう

トランプ大統領はFA-18とボーイング好き!?
「再びトランプがFA-18大量購入を示唆」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-18
「F-35の代替にF-18改良型を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-23-1
「国防副長官候補にB社幹部」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-17

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米軍司令官:ロシア巡航ミサイルへの防御なし [Joint・統合参謀本部]

Hyten5.jpg4日、米戦略コマンドのJohn Hyten司令官(空軍大将)が上院軍事委員会で証言し、INF全廃条約に違反してロシアが開発した巡航ミサイル(恐らくSSC-8:9M729)が欧州方面に配備され欧州全域が射程範囲内に入る可能性があるが、米国や欧州同盟国は防御手段を有していない(no defense)と語りました

この時期の議会証言は次年度予算案の背景説明ですから、厳しい脅威の実態を訴えるのが常套手段ですが、何度かご紹介してきたロシアのINF全廃条約破りの動きを、2月14日付NYT紙が実戦配備開始と報じたことから、米国政府としての対応が注目されているところです。

なおINF全廃条約とは、レーガン・ゴルバチョフ間で1987年12月8日に署名された同条約は、米露が射程500kmから5500kmの地上発射ミサイルの廃棄と保有禁止を約束するものです。もちろん、中国や北朝鮮やイランを拘束する条約ではありません

SSC-X-8.jpg特にロシア側は、プーチンが「ほぼ全ての隣国が中距離ミサイルを開発している」と危機感を訴え、ロシアによる条約破棄は「控えめに言っても議論対象だ」と発言しているように、同条約に不満を持っています。しかしロシアは「SSC-8:9M729」が同条約違反だとは認めず、ずるずると実質米国だけが条約に縛られている状態を上手く作為しています

関連報道とINF条約を巡る経緯
「NYT紙が露のINF破り配備報道」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15

JICSPOC.jpgもう一つ同司令官は米軍が大宣伝売り出し中の関連政府機関や諸外国人の協力も得て運用している「JICSPOC:統合共同多機関宇宙作戦センター」の名称を、判りやすく「NSDC:国家宇宙防衛センター」に改称すると発表しています。

なお「JICSPOC」はコロラド州のSchriever空軍基地に所在し、米戦略コマンドがリードし、国家偵察室(NRO)、空軍宇宙コマンド、米空軍研究所ARRL、情報コミュニティー、宇宙関連情報提供企業が協力して運用する形態で、2015年10月に正式運用を開始した宇宙作戦センターです。

INF条約違反のロシア巡航ミサイルに関し
●上院軍事委員会でJohn Hyten司令官は、最近ロシアが配備したINF全廃条約違反の地上発射型巡航ミサイルに関し、「我々には防御手段が無い。特に欧州同盟国を防衛する手立てが無い」と証言した
●なお同巡航ミサイルは2個部隊編制されており、1個がカスピ海北方のボルゴグラード市近郊部隊に配備されているが、もう一つの部隊の所在は不明である(公開されていない)

SSC-X-8 2.jpg●同司令官は更に、「同巡航ミサイルの展開場所にもよるが、欧州大陸の大部分はミサイルの射程内で脅威にさらされる。国家としてどのように対応するかを考えなければならない」と付け加えた
米国は、同巡航ミサイルが試験発射を行った2014年から、オバマ政権がINF条約違反だと指摘しているが、ロシアは条約違反を否定し、逆に米国の装備を違反だと批判している

●また同司令官は、核兵器の近代化を進めていることに懸念を示し、更に中国とロシアによる米国軍事衛星への脅威が高まっていると訴えた
●ただし同司令官は、ロシアが2018年2月までに弾頭数を1550発にまで削減する新START条約には協力的であると証言している

「JICSPOC」を「NSDC」へ改称
JICSpOC2.jpg●「JICSPOC:Joint Interagency Combined Space Operations Center」から、「NSDC:National Space Defense Center」への改称についてHyten司令官は、「誰もが何のための組織か理解できるようにするため」とジョーク混じりに同委員会で説明した
●一方で同司令官はNSDCの重要性とその活躍振りをアピールし、同作戦センターの名称がどうであろうが、「(各政府機関や関連省庁や企業の間にある)全ての壁を取り除き、優れた設備のある場所に各組織を代表する優れた人材を集結させる事で、迅速に対処する方法を案出しており、驚くべき成果を出している」と証言した

●4日、戦略コマンドの世界作戦副部長のJohn Shaw准将は別の場で、NSDCは引き続き「宇宙に拡大する戦いに備える」とその役割を説明した。
●そしてNSDCのの任務遂行には「cross-agency」体制での業務体制が不可欠で、また「interagency」での業務で成果を生んでいると語った
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ちなみに、米軍がシリアへの巡航ミサイル攻撃を行う以前に行われた議会証言です。

Hyten7.jpg北朝鮮の弾道ミサイルと核兵器が大きな話題ですが、世界には巡航ミサイルという「低空を侵入する」対処の難しい飛び道具がアリ、ロシアが「SSC-8:9M729」で欧州の軍事風景を一変させれば、追随する輩が次々現れるという事です

巡航ミサイル対処のため低空を常続的に監視する事、そして迎撃すること、弾道ミサイル防衛や航空機対処と並行して実施する事は極めて大きな負担で、受け身で全てをこなすことは困難です。
サイバー戦と同じで、防御では戦えません

繰り返しになりますが、NSDCに日本人も早く仲間入りできるよう、人材育成が望まれます

INF条約関連の記事
「NYT紙が露のINF破り配備報道」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「露がINF全廃条約に違反」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-27
「米陸軍にA2ADミサイルを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14
「INF条約25周年に条約破棄を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-10

「米とカナダが巡航ミサイル対処に協力へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-01

宇宙作戦センター関連
「米空軍が宇宙活動アピール作戦を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-24
「副長官がJICSPOCを高評価」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28
「宇宙と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-01

「米サイバー戦予算の9割は攻撃用」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-31

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シリア巡航ミサイル攻撃の裏側 [米国防省高官]

Chemical3.jpg7日、シリア空軍基地への米軍による巡航ミサイル攻撃について、匿名の米国防省幹部2名が記者団に作戦遂行までの生々しい背景をブリーフィングし、化学兵器が使用された数時間後、化学兵器の痕跡を抹消するため、負傷者が搬送された病院まで攻撃した邪悪な相手の存在を明かしています

7日付Defense-News記事が、匿名幹部2名の会見を整理し、攻撃までを時系列で紹介しているので概要を取り上げます

4月4日
現地時間午前6時50分→
(巡航ミサイル攻撃を受けた)Shyrat基地を飛び立ったシリア軍のSu-22と思われる航空機1機が、Kahn Sheikoumの町の通りに1発の爆弾を投下。「同機の飛行ルートと、攻撃時刻に上空通過したことを把握している」と幹部が説明

同爆撃跡クレーターを分析した結果、化学兵器特有の痕跡が確認された。ロシアとシリアは、反アサド派が占領する地域にあった化学兵器工場での爆発で被害が発生したと主張するも、国防省幹部は爆撃の痕跡からロシア等の主張を否定

現地時間午前7時→
Chemical5.jpg地元病院に被害者が搬送され、化学兵器使用の最初の情報が情報機関から入る。その直後、「アサド政権かロシアが使用する」小型無人機が病院上空に現れ、約5時間にわたり状況を偵察する様子が確認されている。

その小型無人機が帰還した直後、同病院は1機の固定翼機に攻撃された。「病院を攻撃した航空機の所属等に関する確たる情報はないが、何者かが、化学兵器使用の痕跡を抹消するため、被害者が運び込まれた病院を5時間も偵察した後に攻撃した可能性が考えられる」と同幹部は説明した

4月5日
トランプ大統領はマティス国防長官に対し、この化学兵器攻撃に対する軍事オプションを検討するよう命じた。
●国防省は複数のオプションを取りまとめてNSCに持ち込み、大統領補佐官や複数のスタッフ、ダンフォード統合参謀本部議長などが加わった複数のミーティングで選択肢が議論された

4月6日
Chemical2.JPG●NSC等での議論を経た最終的な提案が大統領に提示され、米国東部時間の午後には最終案が決定された
東部時間午後4時30分:::大統領が国防省に対し作戦実施を命ずる

同午後7時40分:::米海軍ミサイル巡洋艦「Porter」と「Ross」が、シリア軍Shyrat空軍基地に対し60発のトマホーク巡航ミサイルを発射。うち1発が射出しなかったため、代替の別ミサイル1発を発射。なお、発射したミサイルが飛翔中、1発は正常に飛翔せず海没したため、59発での攻撃となった
同午後8時40分:::59発のトマホークがすべて目標に着弾。各ミサイルはすべて異なる目標をアサインされていた。

何を攻撃し、何を攻撃しなかったか
Chemical4.jpg攻撃対象となったのは、シリア軍施設とシリア軍機。燃料施設、格納庫、弾薬庫、ロシア製地対空ミサイルが攻撃され、シリア軍機約20機も破壊された。細かな攻撃成は不明 ●攻撃を避けた対象は、化学兵器庫、滑走路、ロシア軍兵士や装備。化学兵器庫は周辺への影響を避けるため、また滑走路は兵器がトマホークであったことや「反撃強度の適切度:proportionality」を考慮して目標にせず

ロシアへの態度
●同空軍基地には約100名のロシア軍兵士と装備が展開していたが、これらを攻撃にないよう配慮された。また攻撃に先立ちロシア側には、同基地のシリア軍施設にトマホーク攻撃が行われることが通知され、誤解が生じないよう措置された

Chemical.JPG●匿名の国防省高官2名はブリーフィングにおいて、ロシアと化学兵器攻撃を結びつけないよう慎重に配慮していた。しかし両名はその表現ぶりで、攻撃対象基地に化学兵器貯蔵施設が存在し、ロシアがその存在を承知していたであろうと示唆し、病院への爆撃に関してもロシア関与の可能性を否定しなかった
●「我々はロシアの化学兵器専門家がシリアに所在することを知っている。ロシアとシリア政権間の緊密な関係についてここでは言及しないが、シリアの化学兵器能力に関与するロシア人関連情報を慎重に分析している」、「化学兵器使用へのロシアの関与を示す証拠は現時点でないが、全ての情報を分析している。まだ分析中だ」と語った
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ロシアは米国を批判し、中東情勢への影響も極めて大きそうですが、トランプ政権の外交姿勢を知るうえで、バノンを排除した安全保障チームの考え方を知るうえで非常に興味深い今後の展開です。

米中首脳会談の分析で盛り上がるはずの週末でしたが、中東政策やロシア政策も含めて「てんこ盛り」となりました

長島昭久議員の「民進党離党」も横眼で眺めつつ、ゴルフのマスターズを忘れるわけにはいきませんし、桜も今週末が最後だろうし・・忙しい週末になりそうです

トランプ政権の国防指針は???
「新政権下で米軍の権限拡大中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-03
「対ロシアの情報戦に国家として」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-24
「戦略軍が21世紀の抑止議論を要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「リバランスは終了:それで?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-15
「政治任用で決定は長官一人のみ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-13

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戦略軍司令官:艦艇配備の通常兵器PGSを [Joint・統合参謀本部]

Hyten.jpg3月31日、米戦略コマンドのJohn Hyten司令官(空軍大将)が軍事記者会議で講演し、CPGS(通常兵器による世界即時攻撃:conventional prompt global strike)が戦略抑止の「拡大ビジョン」の一角を担うべきで、特に艦艇に装備してこそ有効性を生かせるのでは無いかと語りました

PGSとは、大気圏内を超超音速で飛翔し、地球上のどの場所でも1時間程度で攻撃可能にする構想で、スクラムジェットや宇宙ロケットの活用などで実現する研究が行われていますが、中国やロシアもこれに追随して開発を精力的に進めています。

Hypersonic2.jpg米国はこれに通常兵器(鉄の槍とか小玉)を搭載し、核戦争へのエスカレーションを避けつつ、圧倒的な攻撃力で相手に反撃を諦めさせるほどの効果を狙っていますが、発射を探知した相手が核攻撃と区別できるか等の問題提起や、技術的困難性と予算不足がアリ、「第3の相殺戦略」の一部として検討されているようですが、開発状況は聞こえてきません

一方で、中国やロシアは核兵器搭載の可能性もちらつかせ、特に中国はここ数年連続して実験を行っており、米国レベルにあるのではと専門家が懸念する状況にあります

3日付米空軍協会web記事によれば
Hypersonic4.jpg●Hyten司令官は同会議で、戦略抑止の「拡大ビジョン」の一角を担う「integrated global capabilities」の追求に辺り、CPGSはこの一部となるべきだと語った
●そして、従来より拡大された抑止概念の元で、戦略コマンドは単なる一つの機能コマンドでは無く、「a global warfighting command」として見なされるべきだと主張した
●その際の任務として同大将は、「各地域戦闘コマンドの(CPGSを)戦力として提供する」ことが戦略コマンドの任務の一つだと表現した

●同司令官は、戦略コマンドが1月に実施した2機のB-2爆撃機によるリビア攻撃に触れ、米本土(モンタナ州)から出撃し、2箇所のISIS訓練基地の84箇所を個別に攻撃した同コマンドの能力を紹介しつつ、
●この様な作戦は、全ての場面でより迅速に行われるべきだとの認識を示し、より迅速な手段を手にするため、同司令官自身は引き続き、CPGS開発&導入を訴えていきたいと語った

hypersonic5.jpg●そしてCPGS構想が議論され始めた頃は、ICBMやSLBMの代わりに、CPGSの通常攻撃力を導入する案も提示されたことに触れつつ、海上配備型が最も生存性が高く、潜水艦装備より水上艦艇配備を望むと自説を語った
●更にCPGSが「multi-domain指揮統制モデル」に組み込まれて融合されたならば、「根本的な非対称優位性を確保できる」と述べた
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Hyten空軍大将の個人的こだわりか、米軍や国防省としての取り組みがあるのか等々が不明ですが少なくとも中国の技術はかなり上がっている(昨年までの最近2年間で6回も実験)ので、何とか研究を進めて頂きたいものです

また、戦略抑止の「拡大ビジョン」検討にも注目したいと思います

超超音速技術やPGC関連の記事
「超超音速ミサイルの脅威が大きな話題に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-19
「中国が優位なのか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-14
「ロシアも取り組み表明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-11
「米空軍30年構想に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-31
「あのLM社も積極投資」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1

「戦略軍が21世紀の抑止議論を要求」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11

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タイ軍が中国製潜水艦に続き戦車を追加購入へ [安全保障全般]

VT4 tank.jpg4日付Defense-Newsによれば、タイ政府報道官が既に28両を2016年に発注している中国製主力戦車VT4(MBT-3000)の追加購入10両を発表した模様です。

朝鮮戦争当時に開発された現有の「米国製軽戦車M41」を更新するモノで、当初はウクライナ製の「T-84 Oplot戦車」200両を購入する方向で、2011年時点で49両を受領していたものの、その後のウクライナ情勢混乱で供給が不能となり、代替戦車として輸出を目的に設計製造された中国製戦車購入にタイが動いているモノです

M41.jpg中国製VY4(重量52トンの重戦車)は2014年から海外売り込みが開始されており、「125mm smoothbore cannon」や「active protection system」、火器管制装置も最新の技術が導入されており、米国製よりも安いことから海外から注目を集めているようです。

本日はこの戦車の戦力的な意味合いでは無く、2014年のタイ軍事クーデター以降、米国から冷たくされているタイが、2015年7月に中国製潜水艦3隻(2000トン級のType 039A Yuan級攻撃潜水艦)購入の発表(最終決定は2016年末)した流れを受け、ますます全方位外交(米国離れ)に傾く現状としてご紹介します

4日付Defense-News記事によれば
US  thai.jpg●この戦車の追加購入報道は、タイと中国が関係強化を図っている最新の事例でアリ、2016年末に固まった3隻のType 039A Yuan級攻撃潜水艦と、今年3月に発表になったばかりの「VN18輪兵員装甲車」購入に続くものである
この他にもタイ軍は、同海軍が中国製のフリゲート艦や沿岸警備艇を既に使用している。これは中国製兵器の価格が安いことに要因がある事は確かだが、IISSアジア部のTim Huxley上級部長は、タイが中国武器に傾きつつあるのは政治的な影響も受けていると語っている

US  thai2.jpg●Huxley上級部長は、西側諸国の2014年クーデターへの反応がタイと(米国等と)の関係を損ね、米国や西側製兵器から中国製兵器への変化の流れを促進していると見て居る
米国は2003年12月にタイを非NATOである主要同盟国と位置づけたが、クーデター以降に軍事援助や諸協定をキャンセルした。回復基調にあるものの

●一方で中国は、タイのクーデター後、主要国で最初に軍事政権を承認し、それ以降はタイの主要貿易相手国となり、タイにとって2番目に大きな投資受け入れ先としてインフラ施策を担っている

2015年7月の中国潜水艦導入発表時の記事
●「単に中国との接近なら理解出来るが、ドイツやスウェーデン製の選択肢がある中での中国潜水艦の購入は、より強い意味を持つ」と専門家は語った
●バンコクの大学の安全保障講座長は、「タイ政権から米国に対する、タイの価値観や国益を注意深く扱うべきとの警報」であり、中国潜水艦の購入決定が米タイ関係を悪化させると見ている。

Cobra Gold.jpg●また、米国の軍事政権批判がタイを中国よりに向かわせる主因だとし、「2006年と2014年のタイ軍事クーデター関係軍人を、中国が賞賛している」、「中国がタイ軍事政権側に立っていることが、タイの体面や正当性を大きく支えている」とも分析している
●シンガポールの専門家も、米国がクーデターや軍事政権の存在でタイに罰を与えることが、米国に害を及ぼすことをタイは示そうとしていると分析している。米国がアジアでの同盟強化に努力する中で、タイは中国との関係強化も可能だと示そうとしていると。

冷戦間、米タイ軍事関係は堅強で、「Cobra Gold演習」も1982年に開始されている。一方で、80年代以降のタイ海軍の艦艇調達先は世界に分散し、中国、イタリア、シンガポール、スコットランド、スペイン、米国である
90年代に入ると、中国から2隻のフリゲート艦と4隻のJianghu III級ミサイルフリゲートを購入している。しかし両艦とも、第3国装備の融合に関する技術的問題に問題を抱えている
●タイはまた、90年代にスペインから空母を調達したが、維持整備の問題で9機のハリアーは運用不能で、空母も大部分の時間はドックに係留されている
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Cobra Gold2.jpgタイも苦渋の決断なんでしょうが、オバマ前政権が進めた「人権重視外交」の代償は大きいです
この点、トランプ政権がどう考えているのかが気になります。実業家らしく、タイ内政の混乱を回復させた軍事政権を認め評価し、実利を重んじる姿勢でタイと仲良くやって頂きたいものです

最近、ホワイトハウスが国務省の政治任用ポスト(主席次官補代理など)50あまりを意図的に空席にし、「クシュナー氏ら」が直接外交を指示するような動きを見せていると報じられており、「人権外交」の流れがどうなるか気になります

その試金石の一つであるタイとの関係に、今後も生暖かく注目したいと思います

米タイ関係を考える記事
「2015年7月の中国潜水艦導入発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-13
「米タイ軍事関係50年ぶりの仕切り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-16

シャングリラ会議記事
「2016年会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-30
「2015年会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-28
「2014年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-27
「2013年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-31
「2012年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25
「2011年会合」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-01

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米空軍作戦機や輸送機の稼働率が異常低下 [米空軍]

F-22Hawaii2.jpg​3月22日の下院軍事態勢小委員会用に米空軍が提出した資料より、米空軍の作戦機と輸送機(combat and mobility aircraft)17機種のうち16機種が健全な水準の稼働率を下回っていることが明らかになりました。

作戦機と輸送機(combat and mobility aircraft)17機種の内訳が報道からは確認できませんが、断片的な報道には、戦闘機、爆撃機、輸送機の機種名が含まれており、主要な米空軍戦力を対象にした統計と考えられます

単純に維持整備予算の不足が原因ではなく、将来を見据えた計画的な稼働率低下もあるようですが、装備老朽化や人手不足など短期的に解決が難しい問題も明らかになっており、米空軍の「足元」を覗き見る機会ですのでご紹介します

3月30日付米空軍協会web記事によれば
B-2takeoff.jpg米空軍の維持整備課長であるMichael Lawrence大佐は、米下院軍事態勢小委員会に提出した資料について米空軍協会の取材に応じ、米空軍の作戦機と輸送機(combat and mobility aircraft)のほとんど全てが健全な稼働率レベルより低い状態にあると語った
●「稼働率」とは、当該機種の何%の航空機が飛行可能で任務遂行可能状態にあるかを示す数値で、その機種の健全性を示す指標と考えられている

●同統計に資料によれば、2016年度最終四半期において、米空軍の主要な17機種のうち、16機種が健全性を示す基準レベルの稼働率を下回ってい
●基準レベルを下回っていても、ある範囲内であれば一時的な変動や誤差として「許容範囲内」とみなされるが、その「許容範囲内」にある機種も16機種中で6機種にとどまっている

●Lawrence大佐は基準レベルを下回った理由は背景には、機種ごとに様々な理由があり一様ではないと説明したが、大きく大別すると3つのタイプに分類されると語った
B-1やB-2爆撃機、さらにF-15Eストライクイーグルは、前線部隊には我慢を強いているが、本格的な敵対者に備え、能力向上や延命対策を行っていることで稼働率が低下している

F-15E-Afgan.jpg2つ目の理由は、米空軍の保有する作戦機の平均年齢が高くなり、各航空機の整備に必要な時間が増え、修理施設で非稼働状態になる時間が増えているためだ
F-22は新しい機体だが、機体表面のステルス措置工程が主原因で、最も低い稼働率46%となっている
●そして3つ目は、整備員の不足である。
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これ以上の細部は不明ですが、「航空機の老朽化」はF-15、F-16、A-10、B-1、B-2、B-52等々の25年以上使用している航空機が依然中核であることから来ています

「整備員不足」は、A-10を全廃してベテラン多数を含む整備員を、F-35や他機種に配分して整備体制を整える計画だったものが、議会等の強い反対でA-10全廃がとん挫したことが等々の影響が出ていると考えられます
また、民間でも航空需要が拡大しており、パイロットと同様に給与や勤務環境面で魅力が高い民間航空会社に人材が流失していることも考えられます

Pentagon2.jpg以上は「足元」の現状ですが、米軍全体、全米政府機関は5月1日以降の予算が不確定で、「2013年強制削減」の悪夢の淵に再び立たされています。米空軍は現在、強制削減状態になった場合に備え、どの予算を削減するかの検討を行っています

現在の暫定予算が切れる4月末までに、議会で強制削減を回避する何らかの措置や妥協が行わなければ、空軍では飛行時間の大幅削減、施設修理の極限、文民職員の雇用停止、各種プロジェクトの中断等々の「2013年強制削減」の悪夢がそこまで迫っているわけです

「米海軍FA-18の2/3が飛行不能の惨状」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-07

米空軍が整備員確保で苦悩
「整備員不足対処案も苦悩続く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-03
「F-35整備員確保の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-14
「A-10全廃は延期へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-22

「航空業界全体で人手不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-29

5月1日から再び強制削減の悪夢か
https://www.dodbuzz.com/2017/03/25/air-force-cut-flying-hours-math-problem/

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米国政府サイバー予算の9割は攻撃用!? [サイバーと宇宙]

Cyber Top.jpg3月29日付「FifthDomain」が、米国の総合ITサービス大手「Cisco Systems」の製品にサイバーセキュリティー上の重大欠陥がある事を察知しながら、CIAが必要時のサイバー潜入や攻撃に活用するためその事実を伏せていた事案を契機として、米政府のサイバー予算が攻撃面に偏ってる点を指摘し、複数の専門家の見方を紹介しています

何が「offensive」サイバー予算で、どれが「defensive」なのか具体的な説明が無い事もあり、明確に区別できるの?・・との疑問も残るのですが、「サイバー防御には限界がある」との元担当責任者の言葉には重みがアリ、また馴染みの薄い分野でもある事から、消化不良気味の記事ですがご紹介します

結局は、最大のサイバー予算使用機関であるNSAがサイバー進入&攻撃に注力しているからだとの説明ですが最後の最後で本音が伺える記述が現れます

3月29日付「FifthDomain」記事によれば
Cyber Top3.jpg3月初旬WikiLeaksの創設者アサンジ氏が、Cisco Systems製品の脆弱性を突くハッキング手段を、CIAが保有していると暴露した件を受け、CIAが1年以上前から同社製品の欠陥を知りつつ、CIAの活動用に情報を管理していた事が話題となり、議論を呼んでいる
●当然Ciscoは、脆弱性対策のため早急に対策を取り、300以上の製品の問題点を改善したが、米国の主要企業である同社が、米情報機関では無くWikiLeaksから脆弱性を気付かされた点が、米国政府のサイバー防御への姿勢に疑問を投げかけることになっている

ロイター通信はシスコ社の関係者3名に匿名で取材しているが、3名は、米国政府機関や企業が、外国政府が関与している疑われるサイバー攻撃を受ける件数が急増する中、米国政府は攻撃的なサーバー施策を過大に重視しているのではと疑問を呈している
●そして、米国政府全体では、サイバー関連予算の9割が、敵コンピュータシステムへの侵入、通信情報の入手、インフラ機能の阻害手段開発などの攻撃的なサイバー施策に充当されていると、同3名はロイターに語っている

●近く退任予定のNSA副長官のRick Ledgett氏も、政府サイバー予算の90%が「offensive」側に投資されていると認め、「予算配分の観点から、考えるべき点であろう」「サイバー脅威が高まる中、防御と情報保障の重要性は増している」と語っている
●スノーデン氏がリークした文書も、米情報機関の非公開情報予算は2013年度時点で5兆円を超え、その中のわずか8%が「cyber security強化費」で、72%が戦略情報収集や過激派との戦いに投入されている事を示している

●シスコの件についてCIA報道官はノーコメントの姿勢で、CIAとNSAを束ねるDNI(Director of National Intelligence)も、ホワイトハウスと同様にノーコメントの立場である


攻撃重視と防御軽視の背景
Cyber Top2.jpg長年「offense」が重視されてきた背景には、最もサイバー分野で能力の高い機関がNSAで、そのNSAが海外情報の収集や政府機関システムの防御を支援してきた事もある
●ただ、2010年から14年の間にNSAで「defensive」部門長だったDebora Plunkett女史は、「敵の脅威や能力や意図が級数的に増加する状況にあり、より防御側に努力を傾けるべきと強く思う」と訴えている

政府の役割を何処まで拡大するかも引き続き難しい課題である。Alexander前NSA長官やカーター前国防長官は、企業や国防省以外の機関が、ロシア、中国、北朝鮮、イラン等の国家的サイバー攻撃から独力で対処するのは不可能だと語っていた
●一方で、今回のCIAとシスコ脆弱性の件のように、現在のCIAの方針では、自国企業に問題があっても、CIA任務のためその情報を企業に提供しないことになっている。企業側は不満を募らせている。

●それでもNSAは最近、「NSA 21」と呼ばれる組織改編を行い、政府機関内で最大のサイバー防御組織であった「Information Assurance Directorate」を廃止し、NSAの主力である「signals intelligence」に吸収した
NSAの首脳達は、(表面的には)攻撃と防御側の職員が机を並べて勤務することの効能を強調しているが、(本音の部分で)NSA職員やホワイトハウス経験者は、完全な防御は不可能だから、より多くの資源を敵ネットワークへの侵入など、敵による攻撃を阻害し、または妨害源を探る(攻撃的な)活動に注ぐべきだと主張している

●NSAの防御部門責任者を先月退任したばかりのCurtis Dukes氏は端的に状況を語り、「NSAが防御が重要だというのは義務のようなモノだが、決してそうはならない」と吐露している。
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Cyber Top4.jpgここは「無法地帯の最前線」で戦っているNSA等の人達の言葉を信じ、「やっぱりサイバードメインでは攻撃(侵入、情報入手、相手装備妨害など)が重要なんだ」と気付くことが重要なんでしょう。

攻撃も防御も、どちらも重要なことは明々白々ですが、限られた予算の配分を考えるとき、「攻撃は最大の防御」との言葉を噛みしめつつ、そういう世界なんだと認識しておくことが基本なんでしょう

まぁ・・・日本では「攻撃」と口に出すだけで、福山とか辻元とかブーメラン好きのごろつきや、小池とか赤旗とか平和委員会とかの反社会分子から攻撃されそうなので、サイレントマジョリティー育成に本記事を捧げます

サイバーと宇宙カテゴリー記事(118本)
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/archive/c2302888136-1 

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トランプ政権下で米軍の現場裁量拡大中 [Joint・統合参謀本部]

中東での米軍の権限拡大や、なし崩し増派を懸念する声

trump6.jpg2日付Military.comがAP通信記者の投稿を掲載し、トランプ大統領誕生後の約2ヶ月間で、トランプ大統領の対テロ重視や対テロ作戦強化の指示のもと、国防省や米軍前線指揮官の作戦裁量の範囲が日々拡大し、派遣兵力も公式な上限を超えて一時的との名目でどんどん増強されていると警戒感を強めています

オバマ政権時は、ホワイトハウスによる「マイクロマネイジメント」が国防長官や米軍幹部からしばしば非難を浴びてきましたが、逆に現場裁量の拡大は、民間人への被害の拡大や兵士の犠牲を増やすことにつながりかねず、既にその兆候が現れていると記事は指摘しています

軍事作戦への政治レベルの関与度合いは永遠の課題でしょうが、トランプ政権が未だクリントン支持派やマスコミ等々とゴタゴタしながら、政権の体制固めの段階にある中、なし崩し的に作戦が拡大するのは危険だとの声にも一理あるので、記事概要をご紹介しておきます

2日付Military.com記事によれば
ISIS Ope2.jpg●中東やアフリカでの対テロ作戦において、トランプ政権誕生後は日を追う毎に、国防省はあまり公になる事がないままに、作戦意志決定の裁量を拡大し、派遣兵力も増加しており、その対象国も拡大している
今週、トランプ大統領はソマリアで対アルカイダ航空攻撃に関し、より大きな権限を米軍に与えることを許可した。そしてこの動きは、現場米軍指揮官からの要請を受け、来週イエメンにも拡大し、イエメンで作戦で正面に立つUAE支援が強化されるだろう

●この様な変化は、国防省に日々の作戦運用は任せるとの新大統領の意図の表れであり、オバマ政権時とは大きく異なっている。しかし権限委任の拡大は、軍事的にも政治的にもリスクをはらんでおり、民間人や軍人の被害増加が懸念の一番大きいものだ
イラクで行われている市街戦やイエメンでの特殊作戦への関与強化は、米軍兵士の被害拡大のリスクと伴い、作戦判断を迅速化するための権限委任は、モスルの人口密集地帯に過激派が入り込む中、民間人犠牲者の拡大につながり危険を秘めている

ISIS Ope3.jpg●CSISのAlice Hunt Friend上級研究員は、「既に政治指導者は軍事作戦を制御できなくなっている」と危機感を訴え、「軍事作戦が外交政策と分離し始めている」と語って警告を発している
●一方で、米軍指揮官達は迅速な作戦判断の重要性を訴え、イスラム過激派掃討を重視し、オバマ政権の細部介入に批判的な大統領も強くその方向を支持している

米アフリカ軍のWaldhauser司令官はソマリアでの柔軟で迅速な意志決定プロセスの必要性を3月に議会で訴えたが、3月29日に大統領がそれを許可した
●その他の地域でも、例えばシリアでは米軍兵士の数は2倍に増えており、より前線で活動する米軍人が増えている。アフガニスタンでも同様の傾向にある。匿名の政府高官は、今週、イエメンで作戦するUAE支援を議論する非公開会議が開催されると述べている

オバマ政権時の派遣兵力上限は公式には変更されていない。シリアには503名で、イラクには5262名である。しかし米軍は「一時的な派遣:temporary」との位置づけで「上限」を無視しており、数百人単位で目立たないようにシリア政府軍支援の海兵隊員等が最近派遣された
●3月31日に国防省は、在イラク米軍は5262名だと公式に明らかにしたが、関連高官は実質的には更に数千名が派遣されていると認めている

ISIS Ope.jpg●トランプ政権は未だ立ち上がり初期段階にあり、複雑な軍事作戦を遂行しつつ、税制改革や健康保険法の扱い等々の困難な課題をやっかいな議会と折衝しているが、軍事作戦のみが政権の独自色を出せる分野との見方が専門家の間にはある
●国防省や米軍関係者は、イラク軍によるモスル奪還がもう少しで、ラッカにも米国支援の兵力が迫っており、今がISISへの圧力を強める時だと考えており、より多くの米軍アドバイザーを戦場近くに派遣したいと考えている
////////////////////////////////////////////////////////

オバマ政権時代に政治の現場介入に苦しめられてきた現場軍人にとっては、待ちに待った「権限拡大」でしょうから、その効果に期待したいモノです。でも・・・

Trump tel.jpgこの記事のスタンスや執筆記者の考え方が影響しているのかも知れませんが、危険な臭いがプンプンですねぇ・・・。政治に文句言っている段階と、予想していなかったトランプが大統領になり、いつの間にか口に出したことが認められるようになって・・・。口に出したことを引っ込められずに突っ走って・・・ああ恐ろしあ。誰かがしっかり見ていないと・・・。

マティス長官やダンフォード統合参謀本部議長の采配に期待致しましょう。

トランプ政権の国防指針は???
「対ロシアの情報戦に国家として」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-24
「戦略軍が21世紀の抑止議論を要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「リバランスは終了:それで?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-15
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米空軍よ、使い捨て無人機の群れに真剣たれ! [米空軍]

4軍の中で空軍が最も消極的だ。間違いである事を望むが
空軍は間もなく組織文化の変更に迫られるだろう

Roper5.jpg3月28日、米国防省SCO(戦略的能力緊急造成室)のWilliam Roper室長が米空軍協会ミッチェル研究所で講演し、関心が高まっている使い捨て無人機の群れの使用に関し、4軍の中で米空軍が最も消極的だと皮肉たっぷりに語り、ハイエンドの戦いでの「使い捨て&群れ」の重要性から、米空軍は早晩考え方の根本的変革を余儀なくされるであろうと批判的に訴えました

つまり有人機の機数やパイロットのポスト死守のため、無人機に消極的すぎるとの批判でしょう。航空自衛隊に対しては、この10倍強い口調で非難しても良いくらいですが・・・

米空軍協会は米空軍の応援団で主要軍需産業や空軍OBで構成され、ミッチェル研究所は米空軍の主張を下支えする「サポーター」の様な視点で研究を行うシンクタンクです。
従って、米空軍に対してあまり批判的なことを言う事は無く、やんわり提言する程度が多いのですが、あえて厳しい視線を持つSCO室長を招き、気合いを入れる必要を感じたのでしょう

Roper55.jpgなおSCOは「Strategic Capabilities Office」の略で、最新の技術や戦いのコンセプトを、鈍重な国防省の調達プロセスを「すっ飛ばして」でも迅速に装備に反映して部隊に届けようとの機能を持った、国防長官直属の組織で、カーター前国防長官が実質立ち上げた組織です
各軍種にも同様の役割を持つRCO(緊急能力造成室:Rapid Capability Office)等が立ち上がっており、

3月29日付Defense-Tech記事によれば
シンクロして機動し、戦闘機の前方を群れをなして飛ぶ、使い捨て航空機のイメージと、その重要性をRoper室長は訴え、消極的な米空軍に対し警鐘を発した
●(米空軍の従来の考え方とは異なり、)カオスな考え方だと思われるかも知れないが、米空軍は想定しているよりも早期に、この無人機コンセプトを受け入れる必要があると訴え、「単独で別々の検討でなく、チームを形成すればより高い結果が得られるだろうし、将来的に検討を発展させるにも有効だ」と同室長は語った

Roper.jpg●しかし同時に、皮肉なことに4軍の中で米空軍が一番、この技術の導入に消極的であると訴え、「間違えであれば嬉しいのだが、米空軍では使い捨て無人機の群れ検討が困難に直面している」と指摘した
●そして「現有アセットの全てが高価すぎるが、これは離陸したモノは帰還しなければならないとの前提に立っているからだ」、「ライフサイクルコスト議論で調達が鈍重になっている」、「ハイエンドの戦いを想定している」とも説明した

●更に、これまで使い捨てアセットの概念がなかった米空軍にとっては、組織文化の変更は困難だろうが、これまで問題なかったとは言え、アセットを守り、維持し、支えていくのは大きな負担である。何かを捨てる発想も悪くない
●例として、DARPAとSCOが空軍とも協力しつつ進めている「Avatar」があり、旧式戦闘機を無人機に改良したモノやUAVを、有人戦闘機に先行させて強固に防護された敵空域へ侵攻させるイメージを語り、「少なくとも戦いの初期段階では、操縦者の安全を考え、無人機に困難な部分を担わせるべきだ」と説明した

米海軍は今年1月、FA-18から103機の小型無人機を射出し、群れとして運用する実験を行っている。米空軍も2014年に、F-16から無人機投下の実験いる
米空軍は昨年5月、「小型無人機の将来計画:Small Unmanned Aircraft Systems Flight Plan」を定め、今後20年間を見据えてつつ、小型無人機の群れを既存の諸事業に盛り込むことを示唆している

Roper2.jpg●Roper室長は、空軍は文化の変革をより早く迫られるだろうと述べ、冷戦時代に米空軍はアセットの長期使用を想定したが、米軍は永久にその考え方を続ける事は出来ないとし、ハイエンドからローエンド紛争まで、無人機の群れ活用等に舵を切る必要があると訴えた
●そして、仮に米空軍がその方向を選択せず今日の状況を続ければ、世界はその様子を見逃さず、敵はその隙を突くだろうと訴えた
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新政権の下でSCOが生き残るのかも気になるところですが、日本への影響も心配です。というか、日本が反応できるのかが心配です

日本でも、「策源地攻撃」とか「敵地攻撃」とかの話題が出始めていますが、戦闘機飛行隊と戦闘機の数を維持する事しか考えず、ダチョウよろしく脅威の変化から目を背け、有事の運用を全く考えてこなかった航空自衛隊は、この講演をどのように捕らえるのでしょうか?

Rethinking Seminar.jpgF-15CやDを全廃して改良型F-16に役割を移管する案が飛び出したり、THAADの押し売りだったり、無人機の群れの話だったり・・・玉石混淆、米国の様々な方面から、様々なアイディアや泥舟やジャブが今後も飛んでくるでしょう

受け身で受動的にその都度検討していては、政治サイドや外交サイドの押し切られてしまいますよ・・・。自らがしっかりした脅威認識の基、世界の軍事技術動向を押さえつつ、財政状況や日本の優先施策も視野に入れつつ、あるべき姿を持っていないと、流されて流されて、組織がバラバラになってしまいますよ・・・既にその兆しが見えていますが・・・

関連の記事
「米海軍が103機の無人機群れ試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1
「無人艇の群れで港湾防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-19
「無人機の群れ:艦艇の攻撃や防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10

「米空軍検討:F-15C引退でF-16が補完」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-23
「米空軍が小型無人機20年計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-18

「国防省戦略能力室SCOの主要課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-10
「カーター長官のSCOアピール」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03

米空軍や陸軍のRCO
「米陸軍もRCO設立」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-01
「次期爆撃機の要求検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-07
「謎のRQ-180」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-09
「謎の宇宙船X-37B」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12
「国防長官がMC-12工場激励」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-02

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米ハイテク技術企業に中国政府系投資資金が [安全保障全般]

china-J21-J31.jpg3月24日付Defense-NewsがNYT紙記事(22日付)を引用しつつ、中国の政府系投資会社がリスクを恐れない姿勢で米国のベンチャー企業に資金を投入し、その額が急増しており、軍事技術を扱う企業もその中に多く含まれていることから、国防省やトランプ政権が技術流失の可能性に警戒感を強めていると報じています

この報道のきっかけは、カーター前国防長官が要請していた外国資金の国内ハイテク企業への投資状況を調査した報告書原案が、20日の週に国防省やトランプ政権関係者に供覧されたことにあり、NYT紙が匿名の関係者に聞き取りをして報じています

国防省報道官は「国防省内部の作業中の文書に関しコメントはしない」との姿勢で正確なところは不明ですが、中国の資金が有望なベンチャー企業に相当流れ込み、その額が急増している様子がうかがえますので、断片的ながらご紹介します

24日付Defense-News記事によれば
parade.jpg中国政府と関係の強い中国投資会社が、軍事分野と関係の深い最先端技術を扱う米国ベンチャー企業(American startups)への投資を増加させている
米国政府も重要技術の流出を防止する監督を行っているが、十分には機能しておらず、担当するCFIUS(Committee on Foreign Investment in the United States)の権限拡大等をトランプ政権も考え始めているようである

●中国資金が流入しているハイテクベンチャー企業には、例えば、宇宙ロケットエンジン企業、自立型海軍艦艇のセンサー企業、戦闘機操縦席への使用が想定される柔軟なスクリーンへの印刷技術企業、人工知能企業等々が含まれている
●投資をする中国系投資会社は、契約を通じて投資先の知的財産や開発プロセスにアクセス可能になるだろうし、企業の設備や人材に関するデータも入手する可能性がある

●民間の調査会社CB Insightsによれば、2015年に中国系投資会社は約1兆円を米ベンチャー企業に投資しており、前年比で4倍の急増を見せている。しかし契約や取引の細部を公開する義務はなく、よくわからない部分が多い
●政府のCFIUSは小規模な投資には目が届かず、チェックが十分できないが、それでも2012年から14年の3年間に確認したケースは358件で、前の3年間の318件から増加しており、その中の中国関係投資は39件から68件に増加し、国別で最も多い

parade2.jpgボストン所在の人工知能ベンチャー企業の「Neurala」は典型的な例である。同社の技術に興味を持った当時のJames空軍長官が来訪し、同社は市販の無人機に開発したソフトを投入し、その技術つをデモした
空軍長官らはその技術の高さに感嘆していたが、それ以降何ら反応はないと同社CEOは嘆き、最終的に中国国営Everbright Group傘下の「Haiyin Capital」から投資を得ることなって現在に至っている。それでも同社CEOは、重要な技術やプログラムが流出しないように細心の注意を払っていると強調している。

最初に報じた22日付NYT紙は
●中国からの投資の多くは問題あるものではなく、純粋に投資益を求めるものや、中国の大気汚染を改善する技術や交通問題を解決する技術などなどへの投資であり、米国の監視強化の動きを批判する者もいる
しかし中国が最近公開したJ-31戦闘機が米国製F-35戦闘機とそっくりであるように、先進軍事技術が米国から中国に流出し、中国が資金を投入することなく技術を手にしているとの批判は絶えない

共産党中央軍事委員会3.jpg●米軍関係者もベンチャー投資の難しさを認めており、「レイセオン社に1兆円は可能でも、ベンチャーには1億円でも容易ではない」と語っている
●また、一度中国資本が入った「Neurala」のような企業に、米国が後から投資することの判断は難しい
カーター前長官はベンチャー技術の発掘を目的として、先端技術発掘のための出張事務所DIU-x(Defense Innovation Unit Experimental)を、先端ベンチャー企業が集まるシリコンバレーやボストンやテキサスに設置したところである

●中国側の米国ベンチャーへの投資意欲は強く、シリコンバレーの銀行「Silicon Valley Bank」の社長は、過去半年間だけで3つの中国政府系企業から、同地域で新技術獲得や新企業投資・買収を行うエージェントにならないかと誘いを受けたと語っている
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DIU-Xや長官直属で新技術を導入するSCOなどの組織は、トランプ大統領とマティス長官の下でも機能しているのでしょうか???

中国資金の動向と同じように気になります

米国製にそっくりな中国ステルス戦闘機
「J-20改良型が運用開始?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-14
「改良版J-31初飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-27 
「改良版J-20エアショーで飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-02

カーター前長官の技術革新促進
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
「SCOが存続をかけ動く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-10
「ボストンにもDIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-27-1

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Bogdan中将退役でF-35計画室長は海軍人へ [亡国のF-35]

お疲れ様でした! Bogdan空軍中将殿!

Winter.jpg3月28日、米国防省はF-35計画室長のChristopher Bogdan空軍中将が数週間後に退役するのに伴い、昨年12月から同副室長を務めているMathias W. Winter海軍少将を中将に昇任させて室長ポストに就けると発表し、上院でWinter少将の中将昇任が認められれば直ちに交代するとしました

Bogdan空軍中将は、同ポスト就任直前に「ロッキード社との関係は、私が知りうる限り最悪だ」と発言して大きな注目を集める中、室長職を海軍中将から2012年12月に引き継ぎ、4年以上の激務を乗り切りました

遅延と追加予算要求の繰り返しが続いていたF-35計画を、再整理して実行可能性のある計画に再セットした計画に基づき、同中将は就任後繰り返し、F-35計画室は更なる予算や時間を今後要求しないと内外に発信し、必ずしも守れたわけではありませんが、全力を尽くしてきた人物です

Bogdan6.jpg就任して半年ほど経過した頃から、Bogdan空軍中将のF-35とロッキード社への批判的なコメントが急に影を潜め、予算強制削減の影響下、製造機数を確保するため海外への売り込みを意識した態度に豹変したのには興ざめでしたが、宮仕えの軍人官僚として立派にその任務を果たしたと思います

また、海兵隊と米空軍の初期運用態勢確立を、無理矢理こじつけだと言われつつも、実現した事は歴史的事実として記憶されるでしょう

特に最後の最後になって、トランプ新大統領がF-35計画を破綻した制御不能なプロジェクトだと発言する事態に見舞われましたが、ロッキード社と協力して大統領への事業説明を行い。何とかなだめて現状を理解させたことは、記憶に新しいところです

何よりも装備品開発に経験豊富で、しかも熱血漢で正義感も強く、次々と発生するトラブルと意地悪なプレスの取材にも、正々堂々と軍人らしい潔さを持って対応するBogdan中将の人柄への信頼感が、F-35計画をここまでサバイバルさせたと言っても過言ではないと個人的に感じています
Winter2.jpg
しかしトランプ新大統領は、米海軍空母艦載用のF-35C型に関し、改良したFA-18との費用対効果比較を行うよう国防省に命じており、まだまだ一波乱ありそうな雰囲気ですが、ここで海軍人が室長を引き継ぐことで、大統領対処体制を整えたのかも知れません


Winter次期F-35室長はどんな人?
1984年ノートルダム大学卒業で海軍に入り、空母艦載攻撃機A-6E Intruderの爆撃手・航法員として空母サラトガ、アメリカ、アイゼンハワー、ワシントンで乗艦勤務
Winter3.jpg●装備品開発や調達業務経験は、「Joint Standoff Weapon System」計画責任者補佐、F-35計画上級補佐官、F-35飛行推進主任エンジニア、トマホーク全面改修計画責任者補佐、戦術航空機計画担当幹部のスタッフチーフ、「Precision Strike Weapons」計画責任者などを経験

●将軍になってからは、「Naval Air Warfare Center」の兵器部門司令官、「Naval Air Systems Command」試験評価司令官補佐、「無人航空攻撃機」計画責任者、等を経て、2016年12月に副室長に就任するまでは米海軍の開発部門のトップであるCNR(chief of Naval Research)

ちなみにBogdan中将は・・・
1983年空軍士官学校を卒業したテストパイロット。KC-135や戦闘爆撃機FB-111部隊で勤務し、その後専門のテスト操縦者として35機種以上に搭乗する。その後、新装備開発計画の全般管理業務に従事。
●開発にかかわった機種は多数あるが、大尉や少佐としてB-2、准将時代には新空中給油機KC-46の開発計画全般にかかわり、初の固定価格契約を実現した。

Bogdan3.jpgBogdan4.jpg●その他にも、ミサイル防衛、電子戦やネットワーク、特殊作戦用システムの各開発・計画管理監督業務を経験。また兵站や調達分野での勤務も多く、米空軍の補給コマンド、兵站調達担当国防次官の軍事補佐官や空軍省の兵站ポストを経験している。
●Bogdan中将も室長就任の約5ヶ月前から、副室長として業務の掌握と引き継ぎを行っている
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まだまだ、一山も二山もありそうな「亡国のF-35」ですので、Winter暫定中将にはますますご活躍頂きたいものです!
最初の会見の「雰囲気」に注目したいと思います。気が向けば・・・ですが・・・

Winter次期F-35室長の公式経歴
http://www.navy.mil/navydata/bios/navybio.asp?bioID=578

Bogdan中将のご就任当時は
就任時→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-05
発表時→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-09-1

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