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中国国営TV:中国J-20戦闘機が運用開始!? [中国要人・軍事]

J-20 Zhuhai.jpg9日夜、中国国営テレビが中国製のステルス戦闘機と言われる「J-20:殲20」が、運用態勢に入ったと報じました。10日付ロイターがこれを配信し、米軍事メディアもフォローしています。

「運用態勢に入った」以外の詳細に言及はなく、何処で、何機、どんな任務に、などなど判らないことだらけですが、とりあえず、一番詳しく現時点での分析結果を説明している14日付米空軍協会web記事から、米国防省関係者の見立て、推定配備先や現存機数、想定される用途についてご紹介します

14日付米空軍協会web記事によれば
J-20 Zhuhai3.jpg●2014年に低レート製造段階に入ったJ-20を、現時点で、中国は9機から12機のJ-20を保有しているか考えられている
●エンジンを2基備え、米国製F-22そっくりだと言われる中国Chengdu Aerospace Corp(CAC:成都飛機工業公司)製のJ-20は、8つのプロトタイプで様々な形態の飛行試験を2011年から開始しているが、兵器搭載試験は今も継続している

2016年11月に広東省珠海(Zhuhai)の航空ショーで初めて2機が飛行する様子を披露した

●中国が定義する「運用態勢に入った」とは、最前線での任務に投入可能との意味ではなく、正式な作戦運用試験が可能になったとの意味で、今後は他の航空機との連携試験や運用コンセプトの検証試験が可能になるとの意味だろう国防省高官は語っている
●別の中国ウォッチャーは、初配備基地は恐らく中国北部中央にある「Dingxin」だろうと考えており、10個以上の新たな格納庫が設置されていることや、垂直尾翼に運用部隊マークを付けたJ-20が確認されていること等を根拠に挙げている(同基地は各種装備品の開発試験基地して知られている)

J-20 Zhuhai2.jpg●J-20はF-22のように、内部弾倉庫に6発の空対空や空対地のレーダー誘導ミサイルを搭載可能と映像等から見られている
●J-20の操縦席前方には、F-22やF-35そっくりの光電照準装置が配置され、機体側面には、F-35の「Distributed Aperture System」のように複数のセンサーが見られ、またAESAレーダーの様な装備で米軍5世代機と同様に電子戦能力や識別能力に優れた構造を持っている

●しかし中国国営メディアもかつて言及しているように、J-20は必ずしも空中戦闘能力を追求した設計にはなっておらず、F-22やF-35と直接的な同類ではない
全方位のステルス性能を追求せず、前方からのステルス性を追求していることから、高価値目標(AWACS, aerial tankers, large formations of combat jets,surface targets)に一撃を加え、帰投するような運用構想も考えられる

●J-20運用態勢確立の発表に対し、米空軍は「for security reasons」でコメントを控え、米空軍報道官は「米空軍は他国の航空機の能力については(公には)論じない」としつつ、「米空軍は、第5世代機の長年の使用実績や、複雑な演習や機動展開しての運用経験を通じ、如何なる潜在的な敵にも優位性を維持している」と語っている

10日付Defense-Tech記事によれば
J-20 Zhuhai4.jpg●中国政府は報道を否定しているが、2016年の秋には、J-20がチベット近傍の「Daocheng Yading飛行場」で目撃されたとか、インドとの国境付近に展開した等の報道が流れている
●J-20は長射程と短射程の空対空ミサイルを搭載可能と言われ、米国製F-22と比較されることが多いが、J-20のステルス性はF-22には到底及ばない見られている

●英国Royal United Services研究所のJustin Bronk研究員は、「前方のカナード翼やエンジンの空気取り込み口、胴体下部のスタビライザーなど、全てがレーダー反射面積の削減を妨げている」と分析している
中国はまた、海外輸出用だとか空母艦載様だとか噂されるより小型のJ-31戦闘機を開発しており、その改良型試作機が昨年12月23日、遼寧省瀋陽で初のテスト飛行を行ったと中国メディアが報じている


再度、J-20関連報道に思うこと
2016ChinaReport.jpg米国防省が毎年発表する「中国の軍事力」レポートは、中国が高列度の短期戦で地域での紛争に勝利する事を目指しており、そのため弾道・巡航ミサイルで作戦基盤を緒戦で叩き、サイバー戦や宇宙戦や電子戦で米軍が依存するネットワークを寸断麻痺させる事を目指し、着実に力を蓄えていると毎年記述している。
●「中国の軍事力」レポートに限らず、米国の主要シンクタンクもこの様な視点で中国の軍事脅威を捉えており、最近米空軍が取り組んでいる「2030年代の制空検討」においても、速度や機動性と言った空中戦能力よりも、遠方からの活動を意識した航続距離を重視する方向性が示唆されている

●中国のステルス機数は、J-20が運用を開始したとしても10機程度だと思われるが、米軍ステルス機数は中国と同列で比較すれば400機程度の保有と換算できる(F-22を180機、B-2を20機、F-35を200機)
●また海軍艦艇の総トン数は、世界1が米軍だが、世界2位から12位まで合計してやっと米軍と同規模となる。しかも世界2位から12位のうち、2ヶ国以外は全て米国の同盟国か友好国である。更に米海軍が保有する艦艇搭載の精密誘導兵器の数量は、世界2位から14位の合計の2倍以上もあり、中国の立場になれば、通常兵器で米国と正面から戦おうなどとは考えないだろう

gatesCultureSV.jpg●だから当時のゲーツ国防長官は、「米国に敵対しようとする国は、戦闘機VS戦闘機、艦艇VS艦艇などの通常兵器競争を米国に仕掛けて、破産する道を選ぶだろうか?」と、2009年のフォーリン・アフェアーズ誌に掲載された論文「A Balanced Strategy」で喝破し、脅威認識を改めるよう米国防関係者に訴えた。
●この様に曇りのない目で中国脅威を分析した結果が、上で紹介した米国防省が毎年発表する「中国の軍事力」レポートとなって公開されているのだ。

●J-20がどのような運用思想の基に活用されるのか想像の域を出ないが、日本の戦闘機命派が期待しているような空中戦能力を追求しているとは考えにくく、高価値航空目標攻撃や突破型戦闘爆撃機的な役割を狙っていると考えるのが自然だろう
●今後この「J-20」をどのように日本の戦闘機命派が評価するかは、彼らの脅威認識の「リトマス試験紙」となり得る。
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チベットやインド国境付近で「J-20」が目撃されたとの報道には興味をそそられますが、それ以上に申し上げることはありません。生暖かく見守るだけです・・・。

J-20関連の過去記事
「改良版J-20エアショーで飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-02
「大幅改良J-20が初飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-20
「IISS:J-20は大した事ない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-08
「映像と評価中国ステルス機J-20」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-30

中国軍作戦機の話題
「改良版J-31初飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-27
「ロシアからSu-35輸入開始か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10
「南シナ海で米中大型機が異常接近」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-12
「最新H-6爆撃機の演習映像」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-04-1

論文「A Balanced Strategy」
http://www.comw.org/qdr/fulltext/0901gates.pdf
https://www.foreignaffairs.com/articles/united-states/2009-01-01/balanced-strategy

関連の記事
「Balanced Strategyを振り返る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-27
「戦闘機や艦艇に囚われている」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-09

「2016中国の軍事力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17

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未だ政治任用決定はマティス長官だけ:大丈夫か? [米国防省高官]

Poli-appo.jpg11日付Military-Times紙が、トランプ政権発足後2ヶ月が経過しようとしているが、米国防省内の政治任用ポストで上院の承認手続きまで終了したのは、マティス長官ただ一人(Work副長官は当面留任のため承認不要)だと報じています

この遅れは国防省に限ったことではないようですし、現時点で国防省の業務に大きな影響が出ているとの声はないようですが、遅れていることは確かで、懸念事項もあるようなのでご紹介します

陸軍長官と海軍長官が辞退し、順調だと思っていた空軍長官も、まだ正式に議会に推薦されていないとか・・・気になるところです

11日付Military-Times紙によれば
●トランプ政権発足後2ヶ月が経過しようとしているが、トランプ大統領就任の数時間後に職務に就いたマティス国防長官以降、誰一人として政治任用ポストに承認された者は居ない
Work-Atlantic3.jpg●公にはなっていないが、マティス国防長官とホワイトハウスの間で、人選を巡り対立があるとのとも言われており、後任者が決定するまで留任することを明らかにしたWork副長官以外の候補者がなかなか明らかにならない

新政権はこれまでに4名の政治任用者候補を発表したが、そのうちの2名が辞退している。辞退したのは陸軍長官候補だったVincent Viola氏(現ビジネスとの兼ね合い)と、海軍長官候補だったPhilip B. Bilden氏(同左)である
●元下院議員のHeather Wilson女史は空軍長官候補だと発表されたが、大統領は上院に正式な承認手続き依頼を提出していない。また7日にホワイトハウスは、国防省法務官にJohn J. Sullivan氏を候補とすると発表したばかりである

政党の変化を伴う政権交代例を振り返るとオバマ大統領は就任時にゲーツ国防長官の留任を決定し、多くの政治任用ポストを早期に埋めていった。(またゲーツ長官も多くの職員の留任を求めた
●2001年にブッシュ政権誕生時も、ラムズフェルド国防長官は7月まで政策担当次官を決めなかったが、多くの前政権の上級スタッフが数ヶ月居残ることに合意していた。ラムズフェルド時代の統計では、政治任用ポストの登用には、政権内部の調整に70日、上院の承認に50日かかっている

経験者や関係者の懸念や見方
gatesSTART2.jpg●2代目ブッシュ政権時に国防省の予算管理官を務めたDov Zakheim氏は、手続きが全く遅れていると指摘し、4月中旬までに政治任用ポストが埋まらないのは異常事態だと表現した(上院での手続期間を考えれば、現時点で推挙されていなければ、早くても4月中旬には間に合わない
●そしてZakheim氏は、「特に東南アジアや欧州の同盟国にとっては深刻な事態で、日々の業務で頻繁に連携が必要な地域担当次官補代理の任命が夏までかかるようだと、様々な混乱や問題発生が予期される」と懸念を示した

●新政権発足に伴い議会等に諸報告が求められおり、また対ISISやアフガニスタン作戦も難しい状況にあるが、現時点で国防省内に大きな混乱があるようには見えない
●ただ大統領は、対ISIS戦略やミサイル防衛計画、更に即応態勢改善策の計画作成等、複数の重要施策の再検討を命じており、主要な政治任用ポストの不在を長期間にするわけには行かない。また既に議会の軍事委員会でも、「核政策に関する質問をする相手がいない」等との不満の声が上がり始めている

●クリントン政権時の政策担当次官Walter Slocombe氏は、政治任用者の審議は政治的な駆け引きの場となりがちで、長く続けて良い事は無いと警告している。そして「政治任用者以外の国防省職員が、当面の業務を遂行し、大きな穴を空けることなく国防省を走らすことは可能で、危機対処も行うが、政策立案をリードすることは出来ない」と語っている

Rumsfeld.jpg●あまり表面化していないが、マティス長官と政権の間に、幾つかのポストを巡る対立があるようだ。例えば長官は政策担当次官に、エジプトやパキスタン大使を務めたキャリア外交官Anne W. Patterson女史を希望しているようだが、かなり揉めているようだ。前エジプト政権との親密さが問題となり、与党の共和党内にも反対意見が根強い
●この他にも重要ポスト、予算担当、情報担当、兵站調達担当、技術開発担当、人的資源担当などなど、昨年から空席になっている重要ポストが多くアリ、各方面がその動向を注視している

●国防省のJeff Davis報道官は、「長官と各スタッフが精力的に面談等で人選を進めており、ホワイトハウスとも連携しながら選定を行っている。重要ポストの候補選定は最終段階にある。間もなく公表出来るだろう」と述べている
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典型的な日本人のまんぐーすには、この政治任用の善し悪しが感覚的に分かりかねますが、歴史的に大きな問題が指摘されていないのですから、人心一新は悪くないのでしょう・・・

Mattis13.jpg今回は、大統領選挙中に「反トランプ」の旗を揚げた方が多かった事から、人捜しが容易ではないようですが、悲喜こもごものドラマをワシントンDC周辺で生む「政治任用」の今後に注目致しましょう。

それにしても、辞退された陸軍長官と海軍長官候補のお二人は、それぞれとても興味深い方だったので、とても残念です。

3軍の長官候補者(だった人も含め)
まだ「空軍長官候補」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-24
辞退した「陸軍長官候補」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-20
辞退した「海軍長官候補」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-14

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新時代に向け異例人事の米空軍新ACC司令官が就任 [米空軍]

HOLMES4.JPG10日、米空軍最大のコマンドで戦闘機など主要戦力約1300機と10万人を擁する戦闘コマンド(ACC:Air Combat Command )の新しい司令官に、空軍司令部の戦略計画部長だったJames M. Holmes 中将が大将に昇進して就任しました。

このACC司令官は、上記の人員装備のほか、有事に予備役を5万人と航空機700機を動員して指揮する任務もあり、「戦闘機族のボス」の異名を持つポストです(・・・でした)

「・・・でした」とご紹介したのはまんぐーすの勝手な解釈ですが、従来の戦闘機操縦者の最上位者を「上がりポスト」に「すえる」感覚からの離脱を表明するかのような人事だからです

これは前任のカーライル大将が、単に「ボス」としてではなく、人格見識とも優れた人物として、同ポストを2014年10月から3.5年も異例の長期間務めたあたりから序章が始まっていた傾向ですが、Holmes 新司令官の経歴等からも伺えます

推定59歳での大将昇任は遅く、またACC司令官が昇任したての大将が就任するのも異例です。つまり、米空軍の変革期に当たり、「名誉ポスト」のような扱いではなく、真に適任者を就任させたのだと思います

Holmes 新司令官の経歴等
Holmes6.jpg1981年にテネシー大学を卒業(電子工学:防大25期相当)して米空軍に入隊。F-15操縦者としてファイターウェポンコース等を経験し、教官操縦者としても活躍。飛行時間は4000時間で、戦闘飛行時間も500時間を超える
大佐あたりまでの経歴は、海軍大学の上級コースを履修した以外、ほとんど一貫して戦闘機部隊かその運用を司る司令部勤務。海外勤務も、戦闘機操縦者のポストで中尉くらいで嘉手納、中佐くらいでドイツぐらい

大佐の後半くらいから、空軍司令部の作戦立案特別チーム「Checkmateチーフ」を務めた以降、太平洋空軍司令部や空軍司令部で「Strategic Plans, Programs」や「Operations, Plans and Requirements」の仕事が連続し、
●その合間に、アフガン派遣航空団の指揮官、国防省での中東関連補佐官、教育訓練コマンドの副司令官を経験
●ACC司令官の直前は、「Strategic Plans and Requirements」の最上位ポストである米空軍司令部の部長(Deputy Chief of Staff )でした。
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Holmes-ACC3.jpg米空軍は2017年に次期制空機の要求性能を固める方向であり、これには「第3の相殺戦略」の流れで検討されている新たな戦い方や技術導入がカギとなります。

このように変革期にある米軍と米空軍の重要ポストは、変革への意欲と理解がある人物をすえるのがWork副長官やSelva統合参謀本部副議長の姿勢であり、その方向性を具現化したのが今回の人事だと思います

Holmes 新司令官は、過去10年間、米空軍の長期戦略や長期装備品調達計画に一貫して取り組んできた人物で、その合間に部隊指揮官や国防省勤務を挟んだような経歴の持ち主で、米空軍の新たな体制への変革を、現場指揮官として推進する役割を命ぜられたと考えるべきでしょう。
同様の人事は、宇宙コマンド司令官についているレイモンド大将にも見られます

ご年齢からすると勤務期間は長くないのかもしれませんが、その老練老獪なご表情そのままに、組織防衛や職域防衛に走る戦闘機操縦者等を操っていただきたいと思います

Carlisle-FB2.jpgなお、これまでACC司令官だったカーラール大将は同日夜に退任式を行い、5月1日の正式退役日を前に、表舞台から去りました。

太平洋空軍司令官時に日本との関係強化に尽力した功績から、日本が異例の叙勲(旭日大綬章)を授与したカーラーイル将軍に感謝です


Holmes 新司令官の公式経歴
http://www.af.mil/AboutUs/Biographies/Display/tabid/225/Article/1108488/general-james-m-holmes.aspx

新体制への布石関連
「相殺戦略を如何に次期政権に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
「統合参謀本部副議長が改革を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-27
「Holmes中将らが候補に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-09

次期制空を考える取り組み
「PCA検討はこの方向で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「2030年検討の結果発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-02
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2

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米国も歓迎!?:中国軍のアフガン進出 [中国要人・軍事]

米国政府は中国軍の存在を認知しつつも、多くを語らず・・
長期的に撤退を模索する米国の空白を狙う中国?

Afgan.jpg2日付MilitaryTimesが、中国軍がアフガンとの国境付近のアフガン内で国境警戒活動を始めている模様だが、米国はその動きを把握していながら黙認又は態度がはっきりとせず、ロシアやイランのアフガンでの活動を公に非難する姿勢と大きな差があると指摘しています。

また、中国がこの地域に関心を見せる背景について、「治安」と「経済」の両面から複数の専門家の見方を紹介しつつ、米国が手を引きたい思いを抱えていることも踏まえつつ、今後の動向を考察しています

言うまでもなく中国と米国は、南シナ海問題を巡り対立関係にアリ、通商分野でもトランプ政権が中国の自国優遇策を非難するなど、色々と対立点を抱えていますが、アフガンに関しては「もしかして暗黙の了解」で進むのかも知れません

2日付MilitaryTimes記事によれば
最近、中国軍とアフガン政府軍が、約50マイルの両国国境沿いで、共同の対テロパトロール活動を行っているのではとの噂や報道が相次いでいる。そしてこれらの報道等は、米国やNATOがアフガンを去った後に、中国がアフガンで野心を持っているのではとの憶測に油を注いでいる
EQ 2050 afgn.jpg中国とアフガンは、タリバンが勢力を盛り返していることを受け、2015年に協力強化に合意し、アフガン国境警察の訓練や警備車両・防弾チョッキ等の装備品提供を中国が行い、警察同士が共同国境警戒を行っているのみで、両国政府ともアフガン内での軍の共同パトロール(インドの報道)は否定している

インドの報道は中国製の装甲車がアフガン内を走行している写真を掲載し、最近ロイターも中国軍のアフガン内での活動を報じている
●また1月には中国メディアが、アフガン内で敵襲を受けた米軍特殊部隊を、中国軍が救出したとの記事を報じた。米国関係者はあり得ない救出劇だと否定したが、米国防省報道官は「中国軍がそこにいることは承知している」と答え、それ以上の言及は避けた

なぜ中国はアフガンに関心を?「治安」と「経済」
Gady afgn.jpg●東西研究所のFranz-Stefan Gady上席研究員は、中国は、1949年からウイグル族の独立を目指す過激派「東トルキスタン・イスラム運動」の撲滅を狙っており、アフガン国境付近で長年活動する同活動運動家を追撃していると見ている
●米国も2002年に同組織を「テロ組織」に指定しているが、同組織はISILへの支援から、中国内での活動強化を最近打ち出したところである

米国やNATO諸国は、最盛期には約13万人をアフガンに派遣していたが、現在はアフガン軍の訓練育成やテロ組織指導者の排除作戦などに1.5万人が存在するのみである
●在アフガン米軍司令官のJohn Nicholson陸軍大将は、西側部隊の減少に伴い悪化傾向にある治安情勢を踏まえ、兵力増強の可能性に言及しているが、長期的には撤退が目標である

Sung-Yoon Lee.jpg中国は繰り返し西側の関与削減への懸念を表明しており、国境付近の治安安定が中国の一番の関心事項だとフレッチャースクールのSung-Yoon Lee教授は説明し、「西側の関与削減に伴い、中国がパキスタンと協力してアフガン国内で治安維持を行う事は、中国の国益にかなっている」「中国が西方の不安定な隣国に軍事力を用いないはずがない」と述べている

●また、中国はアフガン内の豊富な天然資源や鉱物資源を求め、中央アジア市場へのアクセスとしてもアフガンの安定に関心を持っている。そして中国が打ち出した「一路一帯」構想で、中国とユーラシアを結ぶ重要な位置付けにアフガンはある
中国は地域の安定に関与せず、経済的利益だけを狙う「free rider」と見られており、西側の撤退に伴い生起する「空白」への中国の進出は、いつもの事とも言える

難しい立場に立たされる米国
Trump tel.jpg米国は難しい立場に立たされている南シナ海での中国の活動にいらだちを見せる一方で、中国が疲弊したアフガンに関与してくれることは米国にとって有り難いことだ。
●主張すべきは対立しても主張するが、協力できると事では協力するのが米国のスタンスであり、「安定したアフガンは、米中両国にとって国益にかなっている」「ある程度の中国のアフガンへの関与は、米国も理解しているに違いない」とGady上席研究員はコメントしている

●ただし同研究員は、少なくとも短期的には、また米国やNATO諸国が相当数アフガンに存在する間は、中国軍がアフガン内部に深く進出するとは考えにくいし、中国軍の規模も小さく戦力的にも大したことない程度が当面続くだろうと述べている
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トランプ大統領がアフガニスタンに関心があるとは到底思えず、インドやパキスタンの関係、中国とウイグル自治区との関係、中央アジア諸国の動向にも興味があるとは言えないでしょう

USCC4.jpgマティス国防長官やマクマスター安全保障担当補佐官が、アフガンの「底が抜ける」事を危惧し、アフガンへの小規模な増派はあり得るとしても、絆創膏を当てる程度の処置しか西側諸国にはとれないでしょう

そんな背景から、上記記事では中国がアフガンの安定に寄与することを期待していますが、中国が関与して安定した国があったでしょうか??? ロシアとイランと中国が組んだりして・・・怖ろしや・・

中東・アフガン関連
「ビンラディンの息子がブラックリストに」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-07
「オバマが対テロ7原則確認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-07
「中東に米空母なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-30
「軽攻撃機のデモ確認を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-21

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米空軍が電波式の無人機撃退システムを17億円で [米空軍]

ELTA drone counter2.jpg2月27日付各種報道によれば、米空軍がイスラエルの軍需産業ELTA社から携行可能(manpads)な無人機撃退システム(counter-unmanned aerial systems)21セットを約17億円で購入することで合意した模様です

21日に国防省が発表したところによれば、この「Man Portable Aerial Defense System kits」とも表現される装備は、イスラエル国内で製造され、米本土内で使用者への必要な訓練が今年7月末までに完了する形で納入されるようです

今後日本でも東京オリンピックに向け、この種の装備への関心が高まると予想されますので、また工事現場で無人機との衝突で初の負傷者が出たとの報道があったタイミングですので、ご紹介しておきます

27日付FlightGlobal電子版によれば
ELTA drone counter.jpg●イスラエルのIAI傘下のELTA社北米支社は、米空軍と同装備21セットについて、約17億円の経費固定契約を結ぶこととなった
昨年ELTA社は、小型無人機の発見・識別・飛行妨害を行う無人機防御システム完成を明らかにし、それが3次元レーダーと光電センサー、更に妨害技術から構成されていると説明していた

低高度低速の小型で発見されにくい無人機を探知するため、索敵半径5~10kmのEL/M-2026シリーズレーダーを使用し、光電センサーを目視識別に活用する装備となっている模様
ELTA製装備は、上記の発見&識別用装備と組み合わせて使用するが、妨害装置だけを独立して使用することも可能で、小型無人機を発進場所に帰投させる機能や、墜落させる機能を有している

27日付米空軍協会web記事によれば
昨年10月に、米軍はISISが使用する爆発物搭載無人機の脅威に直面していると明らかにし、その対処法を検討してきた
「IS無人機で初の犠牲者」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-15-1

ELTA drone counter3.jpg●本件に関連し、米空軍の研究開発拠点があるハンスコム空軍基地の報道官は質問に対し、ELTA社との契約を同基地組織が担当し、同時に関連の複数のシステムや技術の開発や試験を行っていると答えた

●同報道官はまた、米空軍は現在のところ、携帯型から地上装甲車両搭載型の「non-kinetic」な無人機対処システムに焦点を当て検討しているが、同時に小型無人機を「kinetic」に撃破するオプションも検討していると語った
●今回購入に合意したELTA社の製品について細部への言及は避けたが、米空軍は来年度末までには小型無人機対処の全体計画をまとめる予定だと明らかにした

モスルで米軍提供の無人機妨害装備が活躍
(3月8日付Defense-Tech)イラク軍の対テロ部隊司令官のAbdul Ghani al-Assadi中将は、「米国から提供された対無人機装備は素晴らしい。ISISは1機も無人機を送り込めなくなった」と語った
●同中将は、ISは小型爆弾や手りゅう弾を無人機に搭載して攻撃しようとしているが、米軍提供の妨害機材で効果的に対処できているとも語った

●先月から始まったモスル奪還作戦では、作戦初日に72機のIS無人機を確認し、2日目には52機をカウントしているが、これまでの約1週間で1機たりとも侵入を許していないと語った
●同作戦の多国籍軍報道官は、イラク軍に提供した装備は「ジャマーだ」としか説明しなかったが、イラク内で確認されているの新装備は「DroneDefender,」である

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ご紹介したELTA社の製品は、製品名も不明で、写真や性能等の関連情報も見当たりません
2015年に初期的な形が仕上がったとの関連報道がありましたが、上記「EL/M-2026シリーズレーダー」を活用との記述があるだけで、写真も当該レーダーの一部が確認できる程度です

DroneDefender.jpg妨害電波発射装置は、人間が携行できる規模ですから、イメージ的には左の写真(DroneDefender→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-30)のようなモノだと推測しますが、ここまで全体像を伏せるのは独自の技術があるからでしょうか?

21セットで17億円ですから、単純計算で1セットが約8100万円です。有効射程や使用電力等が気になりますが、とりあえず、ご参考まで紹介しておきます

もしかしたら、写真のもELTA製かも・・・

「DroneDefenderをご紹介」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-30
「IS無人機で初の犠牲者」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-15-1

米軍での無人機の「群れ」研究
「103機の群れ試験に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-10-1
「無人艇の群れで港湾防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-19
「国防長官が技術飛躍有りと」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「無人機の群れ:艦艇の攻撃や防御」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-10
「海軍研究所の滑空無人機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-04

「AI操作の無人機が有人戦闘機に勝利」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-19
「米空軍が小型無人機20年計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-18
「国防省戦略能力室の主要課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-10

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機種別パイロット数で無人機MQ-9が最多に [米空軍]

米空軍大将:現役中にこうなるとは夢にも思わなかった

Roberson.jpg3日、米空軍協会主催の「AWS17」で記者懇談を行った米空軍の教育訓練コマンド司令官Darryl Roberson中将は無人機MQ-1とMQ-9の操縦者数が他の機首の操縦者数を上回り、機種別パイロット数でトップになると語り、冒頭の言葉で驚きを表現しました

また本件を報じる8日付Military.com記事は、無人機パイロットの養成は下士官を対象に含めることで将来の道筋を開きつつあるが、一方で有人機パイロットの不足が深刻で、今後有人機操縦者の養成を大幅に増加する必要があるが、様々な施策を講じる必要があると報じています

MQ-1プレデターは2018年に運用を停止し、関連任務はMQ-9に引き継がれるので、2018年にはMQ-9操縦者が文句無しに機種別操縦者数トップになると言う事です。
Roberson司令官ならずとも、「へぇ・・・」と驚きの声が上がりそうな米空軍の急激な変化です。ちなみに航空自衛隊には、無人機操縦者は存在しません。ゼロです。

8日付Military.com記事によれば
MQ-9 5.jpg●具体的に、Military.comの入手した2017年度末(同年9月末)時点での機種別の操縦者数見積もり統計によれば、MQ-1とMQ-9操縦者が1000名を超え、次がC-17輸送機の889名、そしてF-16戦闘爆撃機が803名で続いている
●ちなみに米空軍は、武器を搭載しないRQ-4大型無人偵察機の操縦者を下士官にも広げる取り組みを2015年に始め、下士官用の操縦教育課程を立ち上げており、3月7日に能力審査委員会が30名の下士官無人機操縦者を選定し発表したところである

有人機操縦者不足と対策
●一方で7日、米空軍輸送コマンド司令官のCarlton D. Everhart II大将は、有人機操縦者の不足は海空軍及び民間機の全てで深刻だと語っている。
●そして対策として、今後米空軍はパイロット養成数を増やす計画だと説明し、2016年が1108名のところ、2017年は1200名、2018年以降は1400名を1年間で養成する計画だと述べつつも、それでも需要を満たすには不十分だと語った

Everhart.jpg●操縦者養成用T-38練習機の後継機となるT-Xの選定作業を開始しており、今年契約に至る計画だが、米空軍は操縦者養成数増に対応するため、旧式F-16の2個飛行隊を教育訓練コマンドに編入し、F-16操縦者の養成に当てる準備中だとも説明した
●更に戦闘機操縦者だけの数字で言えば、現在の年間235名養成体制から、今年は335名体制に拡大する予定である

●ただし、操縦者を養成するパイロットも不足しており、操縦者養成訓練を行う基地の数を増やし、(教官資格を持ちながら作戦部隊に所属する操縦者も有効に活用し、)操縦者不足に対処する必要があると考えていると同司令官は語った
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米軍の操縦者不足が深刻な一番の原因は、民間パイロットに引き抜かれる操縦者が急増しているからです。
下記の過去記事でボーイングの分析レポートをご紹介していますが、世界中の民間航空分野でパイロットや整備員の需要が急増しており、今後20年間はその傾向が続くとの見通しです。

UAV-cookpit.jpg危険が伴い、家族を残して海外派遣も多い軍隊勤務に比べ、生活設計が容易で給与的にも恵まれた民間機操縦者に人が流出するのを引き留めるのは容易ではありません。
上記記事は米空軍の話ですが、操縦者需要の高まりが世界的な傾向である以上、自衛隊も例外ではないはずです。その実態は承知していませんが・・・

無人機の導入は、そんな中で急務だと思うのですが・・・日本にとっても・・・。

世界的な操縦者不足
「今後20年の操縦者不足は深刻」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-29

米空軍の戦闘機パイロット2割不足
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-22

米空軍は無人機操縦者にも苦しんだ
「60年ぶり下士官が単独飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-10
「RQ-4操縦者の7割が下士官に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13-1
「RQ-4操縦を下士官に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-19
「問題点と処遇改善の方向性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-11

米海軍無人機関連の記事
「誰が海軍無人機を操縦するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-14-1
「映像:MQ-4初飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-23
「グアム配備MQ-4トライトンは今」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-05

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空自も真剣になれよ!米空軍F-22の迅速展開検討に思う [米空軍]

本日も相変わらず、抑止効果が疑問な対領空侵犯措置だけ
飛行場被害の対処を語ると、戦闘機の価値が下がるから?

F-22Hawaii2.jpg7日付米空軍協会web記事は、同協会の「Air Warfare Symposium」で講演した太平洋空軍司令官O’Shaughnessy大将の発言を紹介し、米太平洋空軍が有事に根拠基地が被害を受けたり、代替基地に展開する必要が生じた際の対応策として、F-22戦闘機の迅速&簡易展開パッケージを準備する様子を取り上げています

新たに検討されているACE(Agile Combat Employment)は、2013年から導入されている「Rapid Raptor concept」を発展させたモノで、どちらかというと平時の「Show of Force」的な展開をイメージしていた「Rapid Raptor」を、より実戦を意識した形態に発展させようとする取り組みです

しかし思います。米太平洋空軍が、対中国有事で第一列島線上の根拠飛行場や、グアムやハワイの飛行場が被害を受けることを想定し、施設が不十分な飛行場の使用を考えて知恵を絞る中、航空自衛隊は何をやっているのでしょうか?

7日付米空軍協会web記事で「けなげな」米空軍の努力を
(有効性は疑問ですが・・)
O'SHAUGHNESSY2.jpg●2日、フロリダ州で開催された「AWS17」でO’Shaughnessy太平洋空軍司令官は、「Rapid Raptor」コンセプトを発展させた「ACE」コンセプトを検討する機動展開訓練を行ったと聴衆に語った
●「Rapid Raptor」コンセプトは、通常の機動展開より小規模機数で兵站支援パッケージも局限した展開方式を具現化したものであるが、「ACE」コンセプトは、これまで展開先とは想定しなかった施設不十分な場所への展開を可能にするものを目指す

●例えば「ACE」では、どのようにして作戦下の機動を行うか? 指揮統制をどのように行うか? 不便な展開先で航空機が故障した場合の対応をどうするか? 等々への対策を盛り込んだ展開コンセプトをまとめる取り組みを行う
検討の一環として、太平洋空軍は2機のF-22と1機のC-17輸送機による機動展開を行った。アラスカの基地を出発し、豪州の豪空軍Tindal基地を経由し、より小規模な豪空軍Townsville基地に展開を試みた

Townsville基地で我々は、C-17輸送機の翼からF-22への給油を試みた。こうした小規模基地を利用するためには、海軍や陸軍に簡易燃料タンク(ゴム製の膀胱のような簡易タンク)を設営してもらう方法も考えられる
●またF-22操縦者をC-17に載せ、ハワイのヒッカム基地の航空作戦センターと連絡手段を確保する事も試みた。これによりインドアジア太平洋地域のどこからでも、十分な兵站支援がなくとも、厳しい環境下で作戦が可能になる
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米空軍が対ISILや対ロシアで疲弊する中でも、懸命に被害状況下に備えた準備に地道な努力を続けているのに、日本では同様の検討や装備品の導入が全く議論されていません

DF-21D-2.jpgそれもこれも、空自の飛行場が有事初動で大きな被害を受けると語ってしまうと、戦闘機の有効性に疑問符がつき、ただでさえ評判の悪いF-35予算の確保や、意味不明の国産戦闘機開発に暗雲が立ちこめるからです。

更に言えば(これがより比重が大きいかも)、戦闘機への疑問符に伴う戦闘機への投資削減は、パイロット削減や手当の減少につながりかねないからです。これを本末転倒と言わずして、何と呼びましょうか?

だから民間飛行場を活用しての空自戦闘機の訓練や、民間飛行場を有事活用する法的整備に関する政治サイドへの要望に力が入らないのです!!!

だから組織のトップが、極東の軍事バランスに全く関係のない英国空軍と「空中戦の訓練」をやって大喜びしたり、サイバーや宇宙は操縦者以外の誰かがやるんだろうと平然と口に出せるんです。

非パイロットで米シンクタンク研究員である元空将から、「長距離空対地ミサイルを備えたロシアや中国の戦闘爆撃機の配備は、空自の対領空侵犯措置の軍事的効果に根本的な疑問を投げかけている」、更に「より高度な戦闘能力の向上を期すため、これまで任務の中核であった対領空侵犯措置にかかる態勢の抜本的見直しを」と率直で正しい指摘を受けながら、相変わらずスクランブル回数の増加だけで「忙しさ」をアピールしています

Taiwan-China2.jpg過去に、台湾に国防政策を提言する米シンクタンクCSBAのレポートをご紹介した際の、執筆者達の言葉が耳に残っています。

「何よりも重要なのは、根本的に新たな国防戦略の採用を決心することにより、ワシントンと台湾国民に対し、台湾が自国の防衛に強く引き続き関与しているとのシグナルを発信することである」
「RAND:台湾は戦闘機中心を見直せ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-07
「慶応神保氏:台湾の劣勢戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-25
「CSBA:台湾は弱者の戦法を」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27

提言の内容を踏まえて上記発言を解釈すると、いつまでも脅威の変化から目を背け、台湾国防関係者が最新戦闘機や大型艦艇などの派手な装備ばかりを米国に要求しているようだと、国防に対する真剣さを米国関係者から疑われることになるよ・・・との警告です

航空自衛隊、本日も反省の色無し・・・

「米軍被害復旧部隊を沖縄から追い出した日本」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-28-1

米空軍は中国の攻撃に備え
「テニアンをグアムの代替に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16-1
「グアム施設強化等の現状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-30-1
「グアムの抗たん性強化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-30-1
「グアムで大量死傷者訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-08-1
「グアム基地を強固に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-12

「米と豪が被害想定演習を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-02
「在沖縄米軍家族の避難訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-21
「嘉手納基地滑走路の強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-09

「Wake島へ避難訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-04-1
「テニアンで作戦準備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-05
「ブルネイの飛行場を確認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-14

沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13

空自OBが対領空侵犯措置の効果を疑問視
「対領侵中心の体制見直しを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-18-1

いつまで戦闘機だけを優先するの???
F-3開発の悲劇と日本への提言http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18
F-35の主要課題http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17

サイバー関連の記事
「ホワイトハッカー活用が本格化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-16
「米空軍が兵器のサイバー対処室を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-05
「米軍サイバー機関の問題や対策を議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-14
「自ら創造したサイバー空間に苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-20
「サイバー脅威の変化と対処を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-21

「対ISサイバー作戦で大きな教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-23
「日本とイスラエルが覚書へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-21
「成果Hack the Pentagon」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-20-1

「組織の枠を超えた情報共有を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-07
「中国には君らも脆弱だと言っている」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-23

台湾の国防政策を提言
「RAND:台湾は戦闘機中心を見直せ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-07
「慶応神保氏:台湾の劣勢戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-25
「CSBA:台湾は弱者の戦法を」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2014-12-27

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米空軍トップが再び21世紀の抑止に言及 [安全保障全般]

Gold-Live.jpg2日、Goldfein米空軍参謀総長が米空軍協会主催の「Air Warfare Symposium」で講演し21世紀の抑止についての考え方を説明し、その中での米空軍の役割を訴えています

背景にはサイバーや宇宙と言った新たなドメインが戦いの場に登場し、本国の社会インフラや経済活動に対し、誰が犯人か判らないような手段で甚大な被害を与えることが可能となっており、核兵器を柱とした抑止の考え方を再整理する必要があるとの問題認識があります

またまんぐーすが本件に着目するのは、核戦争に発展するのを懸念するとの理由で、エアシーバトル(ASB)的な考え方を批判し、オフショア・コントロール(OSC)的な経済封鎖を、対中国戦略の一つの柱のように扱う議論が存在する事への、米国防省の姿勢を確認するためです。

ASB1.jpgつまり、米国防省は「第3の相殺戦略」を進める前提として、強固な核戦力を維持する前提の基で、圧倒的な通常戦力を「第3の相殺戦略」への取り組みを通じて米軍が今後も継続保持することによって、潜在的敵国を抑止するんだ!・・と考えていることの確認です

更に言えば、米国防省や米軍は、学者達がどのような議論を展開していようが、ASBを生み出したCSBAの元研究員であるWork副長官らのゲリラチームのような一群が、「第3の相殺戦略」の形を取って、あるべき軍事戦略追求を追求していると言う事です。

以下にご紹介する、空軍参謀総長の発言や、Work副長官やSelva統合参謀副議長の過去の発言は、事柄の性質抽象的な表現が多いですが、「抑止」の根本に関わる議論が始まっていると言うことです。

3月2日、Goldfein米空軍参謀総長は
Goldfein1-1.jpg21世紀の抑止とは陸海空、水中、宇宙、サイバーの多様なドメインで、敵に対して多様なジレンマを与え、かつ圧倒的なテンポで与えることにより敵を圧倒し、敵が我と同様の行動を起こさないようにする事である
●このため、統合戦力の全ての部隊が同じ作戦状況認識を共有する事が不可欠であるが、このために軍需産業界の皆さんには、強靭で新たなネットワークの創造への挑戦を期待したい

●この新たな創造のため、米空軍もこの「combat cloud」を実現するため、新たなアイディアに挑戦する環境提供に尽力するつもりである
●我々は、作戦状況を共有するための手段を創造しなければならない(We have to think about … creating that common operating picture)。

例えば、タクシーのような「Uber」では、アプリ上でUber車が何処に所在し、車種や運転手情報、進行方向、到着予想時間まで簡単に判る仕組みになっている。これが目指すべき方向ではないか。そう思わないですか?

2月7日、同参謀総長は
Goldfein6.jpgトランプ大統領が核兵器の増強発言をしていることに関し、「全てのオプションをオープンに検討する準備がある」「弾頭数や威力の議論も問題ない」「国防省が現在構想している核兵器近代化計画の継続が議論の主対象になるだろう」と述べたが、更に続けて
●「一方で、21世紀の抑止についてより幅の広い議論を期待したい。宇宙やサイバードに戦域が拡大し、世界共通の公共財が目標になり得る時代における、抑止のあり方や核抑止の関わり方にまで議論の幅を広げる必要があろう」と語った

2016年10月28日、Work副長官がCSISで講演し
work AFA.jpgJohn Mearsheimerが核兵器時代の大国の定義で示したように、核攻撃に生き残れることによる核抑止力と、無敵の通常兵器保有が「great power」には必要である
●「第3の相殺戦略」は一つに目的に焦点を絞っており、それは通常兵器による抑止力を絶対的に強力にし、米国が戦争に巻き込まれる可能性を極限まで低下させることである。他の大国に対する通常兵器による抑止を指すものである
本戦略は、米国の通常戦力抑止力を強化する事により、主要な大国との本格紛争を回避することを期待する戦略である

同日CSISでSelva副議長は
●「第3の相殺戦略」は、解答ではなく質問である。それは潜在的な敵の能力を凌駕するため、どんな能力が我に必要かを問うものである
同戦略には決められたゴールはなく、単に目的地に向けてドライブするのでも、各軍種にどんな装備を購入すべきかを示してくれるモノではない

Selva-CSIS.jpg●代わりに同戦略は、国防省が繰り返し継続的に、敵がどのような優れた能力を蓄えつつあるかを監視し、その敵がどんな脅威を友軍にもたらすかを考え、その脅威への対処が通常戦力抑止を強化するかを自身に問うことを求める
●そのためには、机上演習や実演習を通じた作戦実験が重要で、これらを通じて技術やアイディアを、戦術や手順やドクトリンに取り込んでいくことが解答につながる

●正しき認識された戦術や手順やドクトリンを試し、それらを米軍や同盟国にも伝え、敵が戦場に持ち込むであろう通常戦力に対し、優位を確保する手法を考えなければならない
●そして敵が戦場に持ち込むであろう通常戦力とは、単純化すれば、長射程で、精密誘導で、陸海空だけでなく宇宙やサイバードメインで発揮されるものであろう 


2015年5月、クレピネビックCSBA理事長(当時)は
ASBの運命と第3の相殺戦略への動きを絡め説明し、
krepinevich6.jpg今やエアシーバトルASB検討は統合参謀本部のJ-7に移され、よく分からない別の名前を付けられている。
ASBにペンタゴンは悲鳴を上げた。ある軍種の予算を配分を増やし、ある軍種から削減することになるからだ。結果ASBは拉致監禁(hold)され、今後は困難な道をたどるだろう

●ただ、(拉致されたASB検討とは別に)かつてCSBAで同僚だったWork国防副長官(事実上の第3の相殺戦略発案・推進者)らのゲリラチームのような一群が、(あるべき軍事戦略追求のため、関連装備である)LRS-B(空軍の次期爆撃機)、潜水艦や水中無人艇、空母艦載無人攻撃機UCLASS、エネルギー兵器等の実現・調達等を画策している
/////////////////////////////////////////////////////

「第3の相殺戦略」が正しいか間違っているかではなく、現在の米国防省において、「第3の相殺戦略」は上記の発言が示すような位置づけにあり、ASB的な考え方で通常戦力を圧倒的レベルに引き上げる努力が行われていると解釈して良いと思います

ASEANPlus.jpgASBが発展し、ASLB(Air,Sea,and Land Battel)になる方向でしょうし、陸軍火力に期待し、MaltiドメインやCrossドメインの方向に進むのかも知れませんが、実務は国防省や米軍が行っているのでアリ、学者の論文で進んでいるのではありません

引き続き、サイバーや宇宙を絡めた抑止議論に早々決着がつくとは到底思えませんし、また「combat cloud」なる新たなネットワークが実現可能で現実の場で有用なのか「???」なのですが、我が国も防衛を考えるに辺り、基礎知識としてMemoしてみました

頭の整理不十分で申し訳ありませんが、今日はここまで!

トランプ政権とNPR(核態勢見直し)
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-09

「第3の相殺戦略」関連の記事
「マティス長官と相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-19
「この戦略は万能薬ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11-1
「CSISが相殺戦略特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「相殺戦略を如何に次期政権に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04

「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12

「小野田治の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-05
「慶応神保氏の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-26
「第3のOffset Strategy発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-06-1
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フィリピン主要3閣僚が南シナ海の米空母訪問 [安全保障全般]

CV  Carl Vinson.jpg4日、米国との関係がギクシャクしてるフィリピンの国防相など閣僚3名が、在比米国大使館の招待に応じ、南シナ海で「航行の自由作戦」を遂行中の米空母カールビンソンを訪問し、FA-18の離着陸などの様子を刺殺した模様です。在比米国大使館が明らかにしました

米空母を訪れたのは、Lorenzana国防相、Carlos Dominguez財務相、Vitaliano Aguirre II司法相の3名で、加えて国防官僚が3名同行していたようです

この訪問を報じる5日付「Military.com」は、ドゥテルテ大統領の厳しい対米姿勢に関わらず、軍事関係者の間では「top-level」の交流や意見交換が続いている証拠だと報じています。

そして、CSISの客員研究員で、東南アジアで活動する企業へのアドバイザー企業を経営する専門家の言葉を紹介し、オバマ政権からトランプ政権に交代後、ドゥテルテ大統領のフィリピンへの姿勢が軟化し、両国軍事関係の進展を許容していると記載しています

Lorenzana3.jpgそれが本当であれば、同じ対中国最前線国である同士フィリピンと米国の関係改善は、日本人として喜ばしい出来事ですが、個人的にはまだ疑心暗鬼です

共同軍事演習は災害対処と人道支援の分野だけ」とか、「米中の紛争に巻き込まれたくないから、米軍兵器の比での保管はだめ」とか、ドゥテルテ大統領の発言は明確で、その姿勢が変化しているようには思えないからです

過去の経緯は、末尾の過去記事をご参照願いたいのですが、引き続き要フォロー事項だと思うので、ご紹介しておきます

5日付「Military.com」記事によれば
Sung Kim.jpg在比米国大使のSung Kim氏(韓国系米国人で、前職の北朝鮮問題担当の米国代表として、しばしば韓国や日本を訪問していた)が、3名の閣僚達を空母カールビンソンに案内し、約5500名が勤務する9万5千トンの空母の様子やFA-18の離発着を共に見学した
●3日、同空母群司令官のJames Kilby少将は記者団に対し、「我々は将来もここに存在し、公海は誰もが航行でき、通商に利用できる海域である事を示し続ける」と語っていた

CSISの東南アジア問題アドバイザーであるErnest Bower氏は、「皆の関心は、中国が南シナ海への他国のアクセスを遮断しようとしているのかにある」「米国はその様なことは受け入れない」とマニラで記者団に語った
Bower CSIS.jpg●Bower氏は、オバマ政権が終わってから、ドゥテルテ大統領の米国への発言は穏やかになり、両国軍事交流の発展の機会を認めており、またトランプ政権の安全保障チームは南シナ海問題に対しより強固な姿勢を示すであろうと語っている

●そして同氏は「南シナ海に関し、米国から中国に対し、より少し厳しい姿勢が示されると考えている」「正直に言えば、少しゴタゴタが起こるだろうと思う」と記者団に述べた
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Ernest Bower氏の専門家として位置付けや、発言の信憑性が不明ですが、マニラでの会見でもアリ、米国の東南アジア施策に20年以上関わってきた人物でもアリ、現在も多くの役職についているようなので、その発言をご紹介しておきます

CSISのBower氏経歴紹介
https://www.csis.org/people/ernest-z-bower

Trump tel.jpgトランプ大統領の関心事項が米国内の雇用や産業復活に絞られ、中国関係もその視点が基礎にある事が各方面から指摘されていますが、安全保障チームが中国に厳しい考えを持っていることとの折り合いがどうなるのか、依然不透明です。

比政府の閣僚が3名そろって米空母訪問とは普通ではありませんので、今後の動きに注目致しましょう

米比関係の記事
「米軍兵器の保管は認めない」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-31
「米と比が細々とHA/DR訓練を開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-18
「航行の自由作戦に比基地は使用させない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11

「ハリス大将:選挙後初の訪比へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「米比演習の中止に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-08
「C-130が2機だけ展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-27

「比大統領南シナ海共同を拒否」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-15-1
「比空軍と米空軍が3日間会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03

日本とドゥテルテ大統領
「なぜ10月25日に比大統領来日」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-06

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無人攻撃機MQ-1は2018年に引退へ [米空軍]

MQ-9 4.jpg2月23日付で米空軍webサイトが、21年間にわたり無人攻撃機として活躍してきたMQ-1を、2018年の早い時期に引退させると発表しました。MQ-1の抜けた穴は、MQ-9が埋めるそうです。

MQ-1は、もともとISR用だった無人機RQ-1を改良し、ターゲティング装備や兵器を搭載して「攻撃機」に仕立てたモノもであることから、MQ-9と比較して兵器等搭載量が1/8程度しかないことが大きな背景で、併せて操作要領や整備手順や部品が異なるMQ-1とMQ-9を、同時に維持する事による要員の訓練や維持整備コストが問題となっているようです

現在米空軍は、MQ-1を150機、MQ-9を93機保有しており、数字から見るとMQ-1の存在が大きいのですが、MQ-9の増産も行っているようでアリ、現場は何とかなるのでしょう

2月23日付米空軍web記事によれば
MQ-9 3.jpg●来年引退すると発表されたMQ-1は21年の運用実績があり、MQ-9は10年程度であるが、速度、高解像度のセンサー、兵器搭載量との能力で優れたMQ-9が、MQ-1に代わってより広範な任務を担うことになる
●また、今回MQ-1運用からMQ-9運用に任務が変わる部隊指揮官は、「単一の機種運用にすることで、要員訓練や兵站支援をシンプルにでき、部隊活動の柔軟性が確保でき、所属兵士のキャリア管理上のチャンスをより与えられるようになる」と効果を説明した

●現場の飛行隊長は、「2018年にMQ-1運用を終了するためには、2017年中にはMQ-1からMQ-9への移行を進めておく必要があり、今年7月1日にはMQ-1の飛行を停止し、MQ-9運用態勢の確立準備を開始し、年末までにはMQ-1だけで任務遂行できる体制を固めたい」と語った
●同飛行隊長は、科学研究の一環として始まったRQ-1運用が、偵察任務専用で前線に派遣され始め、やがてその有用性から目標照準装備や兵器搭載可能に機体改修が行われ、最前線で365日24時間休みなく活動を続けるようになった歴史を振り返りつつ、米空軍の記述進歩を体現した偉大な実例だと表現した

28日付Defense-Tech記事によれば
MQ-9 5.jpgMQ-9は3750ポンドの最大搭載能力を持ち、「AGM-114 Hellfire」「GBU-12 Paveway II」「GBU-38 JDAM」等を組み合わせて搭載可能だが、MQ-1は450ポンド程度しか搭載能力がない。
●現在米空軍は、無人攻撃機のCAP数を60から70個に増加させる方向で取り組んでいるが、追加の10個CAPは、米空軍の監督下で契約業者に委託運用させてまかなうこととなっている。なおCAP追加は、2018年末までに完了する計画だと、28日米空軍報道官は語った

●また米空軍は昨年9月、(無人機操縦者等の勤務環境改善のため)より環境の良い8つの新たな無人機運用基地候補を発表し、更に追加でエグリン、ティンダル、バンデンバーグ、ショー(Shaw)空軍基地の環境調査も行っている
●これらの候補基地はMQ-9航空団を受け入れる候補基地で、併せて無人機の維持整備拠点の候補地でもある。先月米空軍は、ショー基地に無人機操作部隊を配置するとのみ発表したが、まだ最終的な新たな無人機基地全体計画を決定していない
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gatesSTART2.jpg無人偵察機や無人攻撃機の急速な普及を目の当たりにし、MQ-1が20年以上運用されてきた歴史を再確認するとき、有人戦闘機や攻撃機を操縦するパイロットへの影響(削減)を恐れ、職域防衛に走った米空軍幹部達を厳しく非難し、無人機導入を推進したゲーツ国防長官を思い出さずにはおれません

核兵器の扱いを巡る不始末が直接の原因とされましたが、F-22計画継続への固執と無人機導入への頑なな反対姿勢を貫いてゲーツ国防長官と対立した、当時の空軍長官と空軍参謀総長を同時に「更迭」したゲーツ氏の豪腕が、今日の無人機隆盛を呼んだのです

ロバート・ゲーツ語録12
(ゲーツ語録100選より:http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19
私がCIA長官の時、イスラエルが無人機を有効使用することを知った。そこで米空軍と共同出資で無人機の導入を働きかけたが1992年に米空軍は拒否した。しかし私は2008年、今度は国防長官として無人機導入のため牙をむいて4軍と立ち向かった
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07

未だ日本では、ゲーツ長官のような見識ある文民指導者や政治家が現れず、もちろん戦闘機操縦者が支配する世界で自衛隊内部から無人機の積極活用論が生まれるはずもなく無人機放置プレーが続いています。本当に書籍「失敗の本質」が描く、「先の大戦」当時と状況は変わりません

同書が指摘した「失敗の本質」とは
http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-12-31
失敗の本質.jpg●旧日本軍は、官僚的組織原理と属人ネットワークで行動し、学習棄却(知識を捨てての学び直し)による自己革新と軍事的合理性の追求が出来なかった
戦略志向は短期決戦型で、戦略オプションは狭くかつ統合性が欠如し、戦略策定の方法論は科学的合理主義というよりも独特の主観的微修正の繰り返しで、雰囲気で決定した作戦には柔軟性はなく、敵の出方等による修正無しだった

●本来合理的であるはずの官僚主義に、人的ネットワークを基盤とする集団主義が混在システムよりも属人的統合が支配的。人情を基本とした独自の官僚主義を昇華
●資源としての技術体系は一点豪華主義で全体のバランス欠如

米空軍は無人機操縦者の離職者急増に苦悩中
「RQ-4操縦者の7割が下士官に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13-1
「RQ-4操縦を下士官に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-19
「問題点と処遇改善の方向性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-11

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スウェーデンが対露で徴兵制復活を決定 [ふと考えること]

10万人の対象者から、僅か4千人ですが・・・

Sweden.jpg2日、スウェーデンのフルトクビスト国防相(Peter Hultqvist)は2010年7月に一度は廃止していた徴兵制を、今度は女性にも対象を拡大して2018年1月から復活させる方針を明らかにしました。

同国防相は各種報道機関とのインタビューで、ロシアへの警戒感を背景として言及し、「彼らは我々のすぐ近くで、より多くの演習を行っている」「ロシアがクリミアを併合した現状がある」と危機感を露わにしています

注目すべきは現在政権を担って徴兵制復活を推進しているのは少数左派政党の連立政権(Social Democrat-Green coalition)であり、当然ながら議会の右派政党からも支持を受けている点です。

この背景には国民の極めて常識的な国防への危機感と理解があり、200年以上国土が戦争に巻き込まれていない(19世紀のナポレオン戦争が最後)ながら、昨年1月に報道機関が実施した世論調査によると、国民の7割以上が徴兵制復活に賛成で、反対はわずかに16%との結果がそれを物語っています

Sweden Hultqvist.jpgただ国土が日本の面積の1.2倍あり、人口約1000万人のスウェーデンですが、これまであまりにも国防に無頓着だったとも言え、軍は僅か約1.2万人の軽武装国家(陸軍5.5千人、海軍3.0千人、空軍3.3千人)です。

一方で、ODA実績は62億ドル(世界第6位)で、ODAの対GNI比は1.1%(世界第1位)と特徴的で、国際平和協力活動(PKO等)に積極的に参加し、軍縮・不拡散、人権、環境問題等にも貢献と、日本の野党がお好きそうなタイプのお気楽海外貢献国でした

しかし最近のロシアの活発化を受け、NATOには非加盟であるものの、2014年9月にはNATOとの「ホスト国支援」に関するMoUに署名するなど、情勢の変化に対応したような動きも見せていたところでした。

各種報道から徴兵制復活の概要
Sweden4.jpg同国の徴兵制は1901年から100年以上続いたが、7年前に廃止され、志願制に移行した。しかし、好景気を背景に賃金の低い兵士に志願する若者が減り、年4000人が必要なのに約2500人程度しか集められていなかった

●国防省報道官によれば、今年7月から来年1月開始の徴兵の手続きが開始され、従来から18歳以上の国民に提出が義務づけられてきたウェブ調査票の回答に基づき、1999年以降に生まれた18歳の男女の国民約10万人からまず1.3万人を選び、適性検査を経て当面は年4000人に9~11カ月間の兵役を課す。
●国防相は「gender equal profileが重要」「important to emphasise that military service is for girls and guys」だと強調し、史上初めて女性の徴兵も行うとも発表した。

●なお志願制度時代と異なり、徴兵を拒むと罰則がある。また志願制も並行して維持され、毎年採用する4000名の中には18歳以上の志願兵も含まれる(志願兵を優先するのかは不明)
●国防軍事組織のモデル再構築は、中心となる国防能力の強化につながるだけでなく、災害対処や救難救助や環境浄化に関する文民機関を支援する能力提供にもつながるとも説明している

2010年徴兵制廃止後のゴタゴタ
Sweden3.jpg2010年にスウェーデンは、徴兵制から志願制訓練に変更した。これは、志願制にすることで、よりプロフェッショナルな軍に移行すること狙ったのだ
●そしてスウェーデン軍は2016年末までに組織改編を行う計画を進め、2016年年初には人の充足を完了している予定であった。しかし現実には1000~1200名の正規兵が不足していた

●また「part-time positions」の不足はさらに深刻で、6千~7千人が不足している状況だった。更に予備役も約1000人不足
●そこでスウェーデン軍は、人員不足が発生している各部隊の状況を改善するため、従来の徴兵制と予備役制度の復活を求めている
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Sweden2.jpg余計な手間ばかりかかって社会的コストの大きい徴兵制は、先進国では避けるべきで、日本でも自衛官の処遇改善や社会的な地位向上で、志願制軍事組織を維持すべきと思います。

一方で、ロシアに直面したスウェーデンのこの動き、特に「男女平等に徴兵」あたりの考え方について、日本の民進党や社民党や共産党の皆様に伺ってみたいものです

森友学園とかどうでも良いので、世界の安全保守環境について、国会でしっかり議論して頂きたいものです

世界の徴兵制:背景は様々
●ロシアの脅威に対抗するため
「ルーマニア・チェコ・リトアニアが復活へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-04
「スウェーデンも復活検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-15
脅威対処と国民意識の醸成でイスラエル
「写真で確認:イスラエル女性兵士」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27

●究極の男女平等のためのノルウェー
「ノルウェーは女性徴兵へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
●国民意識と社会福祉への人員確保のオーストリア
「オーストリア徴兵制維持へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22

●若者の社会教育?とイラン対処?
UAEが徴兵制導入」→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-21-1

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米空軍F-35が今年太平洋軍エリアに展開予定 [米空軍]

追記:2月24日、カーライルACC司令官は「春から夏に」と

Carlisle-FB2.jpgカーライル大将が軍事記者団に語りました。米空軍F-35部隊の訓練を、指揮監督する戦闘コマンドACC司令官の発言だけに重みがあります。

Red Flag演習(17-1)でのF-35Aのパフォーマンスは「extremely well」だった
●何処に派遣するかは決定していないが、「短期間の太平洋エリア派遣」か「長期間の欧州派遣」、または逆の組み合わせもあり得る。ただし中東地域への派遣については「それほど遠くない将来」と述べるに止めた
●記者からの「中東でF-22やF-35は過剰戦力ではないか?」との質問に対しては、前線指揮官からのニーズがあれば何処へでも派遣すると対応し、初期運用態勢確立を宣言した機体だと強調した
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Harris Jr.jpg2月16日、下院軍事委員会の戦術部隊小委員会で米空軍の戦略計画副部長Jerry D.Harris Jr.少将が証言し、米空軍F-35部隊を追加で太平洋軍エリアに派遣する計画を立てていると語りました。

同小委員会には、Harris Jr.副部長の他に、国防省F-35計画室長Bogdan中将、米海兵隊航空副司令官Jon Davis中将、米海軍航空作戦部長Dewolfe Miller III少将が列席していることから判断すると、F-35の今後の作戦投入はどうなるんだ・・・的な関心が中心の委員会だったように推測します

これまで米空軍幹部は一貫して、米空軍F-35の初海外展開は、対ロシアを意識して欧州地域になると発言してきましたが、何かしらの「風向きの変化」があるのかも知れません。
断片的に証言を紹介した記事のご紹介でアリ、背景や理由について説明できませんが、とりあえず取り上げます

2月16日付Defense-Tech記事によれば
TSP.jpg●Harris Jr.副部長は、「最初に運用態勢を確立した米空軍F-35部隊が、太平洋コマンド担当エリアに、TSP(Theater Security Package)を含む形態で、追加派遣される予定である」と小委員会で証言した
日本には1月、米海兵隊のF-35B配備が開始され、日本の航空自衛隊もF-35を米国で受領して要員養成のための飛行訓練等を開始している

従来米空軍は、最初のF-35海外派遣を、12機程度で欧州に行う予定だと発信してきた。
●例えば昨年12月にJames前空軍長官はAtlantic Councilで講演し、今年の夏にF-35を欧州に派遣することを示唆しつつ、「例えA2AD環境にあろうとも、その戦域環境を変革するほどの能力を発揮するF-35を地域の同盟国等は期待している」と表現していた

TSP2.jpgトランプ政権誕生で米露「雪解け」の予兆があったが、13日のフリン前大統領補佐官の辞任で、その方向性はぼやけ始めている。
●16日、米空軍の報道官は「Military.com」に対し、F-35の欧州派遣が無くなると決定されたわけでは無く、前空軍長官が述べた夏の欧州展開オプションも同時に検討されていると語った
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TSP展開は太平洋軍エリアでは2004年から開始されており、1個飛行隊の半分程度の規模(10~12機)で実施されることが多いようす。

以前ご紹介した例では「2013年、嘉手納にF-22が12機で約4ヶ月」や、「2015年、ドイツにA-10が10機で約1ヶ月、その後は東欧諸国に移動して活動」があり、半年弱が母機地を離れる期間の標準のようです
TSP3.jpg10日から豪州に12機のF-22が展開していますが、これもTSPの一つかも知れません。

欧州か太平洋軍エリアか・・・。でも太平洋軍エリアと言っても、「アラスカ」も太平洋軍エリアであり、その可能性もかなりあると思います。
引き続きトランプ政権の対露姿勢は重要関心事項ですので、生暖かく進展を見守りたいと思います

米空軍戦力のTSP等ローテーション派遣
「豪州に12機のF-22展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-14
「欧州にもTSP派遣か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-14
「F-22嘉手納派遣はTSP」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-17
「アジア版Checkered Flag」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-04

「夏が期限のF-35最終試験開始は1年先でも不可能」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-17

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米軍AWACS将来と随伴電子戦機の早期導入発言 [米空軍]

Carlisle-FB.jpg24日、米空軍戦闘コマンド(ACC)司令官のカーライル大将が軍事記者団に会見を行いAWACSの将来や、21日にも言及していたエスコート型電子戦機の20年ぶり導入に関し言及しています。

いずれの検討も、米空軍全体を見渡して将来構想を考える特設チームECCT(Enterprise Capability Collaboration Team)が、1年間かけて行っている分析考察の結果報告に関係しているようですが、今後もECCTはいろんな所で出てきそうですので、関連する検討対象分野としてご紹介しておきます

それにしても・・・カーライル司令官は、後任者が決まってからも勤務が長いですねぇ・・・。でも最近、将来構想に関して口が滑らかなのは、ユニフォームを脱ぐ日が近いからでしょうか???

AWACSの任務は分散される方向
E-3 2.jpg●米空軍のE-3早期警戒管制機&空中戦闘管理機AWACSには、まだ十分な機体寿命が残されているが、将来のAWACSの任務をどうするかは、現在ECCTが行っている「複数ドメインに渡る指揮統制のあり方検討」の結果により導かれるだろう
●将来方向としては、現在AWACSが担っている戦闘管理任務は、複数の小型のアセットにより「分散して」担当されることになるだろう。しかし空中におけるAWACSの「中心的ノード」としての位置づけは変わらず、有人機と無人機、全てのセンサーやデータ通信を結びつける役割を担い続けるだろう

●ECCTは1年かけて検討を行っているが、「如何に指揮統制を行うか、強靭さを如何に獲得するか、複数ドメインに渡る指揮統制をどうすべきか等について、多くを学ぶことになろう
EC-130に対する空中指揮統制能力の向上施策を行うが、E-3AWACSは2030年台まで運用を続ける予算的制約から現時点でAWACS後継機を具体的に議論できないが、ECCT検討を踏まえロードマップを描きたい

エスコート電子戦機PEAをPCAより早期導入
PCA 20303.jpg●次世代制空機PCA(Penetrating Counter-Air)を改良し、エスコート型(又はスタンドイン型、随伴型)電子戦機としての活用を米空軍が検討しているPEA(Penetrating Electronic Attack)機は、原形のPCAより早期に実戦投入されるだろう
PCAはF-22やF-35の後継として次世代制空機として議論されているアセットだが、PEAはF-22やF-35やB-21次期爆撃機とペアを組み、強固に防空された空域にエスコートして進出し、「自立化又は半自立化」したスタンドイン電子戦機として活躍を期待している

米海軍は(スタンドイン方式とは)異なる電子戦形態を必要としており、統合作戦で共に制空を担う米空軍と海軍は、分担や協力方法を確立する必要がある。
電子戦環境が日増しに厳しさを増している中、PEAもPCAも導入は早ければ早いほど良く、現在想定の導入時期より早めることが望ましい
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何となく、敵の脅威が増す中、従来の役割でのAWACSの出番は減少するが、機体寿命があるので何か新たな任務を担わせよう・・・的な臭いを感じます。
そう言えば、AWACSへの近代化改修や追加投資の話はあまり耳にしませんので、今後閑職に追い込まれるのでしょうか・・・

NCCT4.jpgPEAの重要性が急にクローズアップされてきましたが、どの程度のスケジューリングをイメージした話なのでしょうか? PCAは早くても2020年代後半でしょうし・・・
EA-18Gで空軍を支援してきた米海軍から、急に冷たくされたのでしょうか??? トランプ大統領の軍拡発言で「乗り遅れるな」感が広まったのでしょうか?

いずれにしても、根本にある「米海軍と米空軍の対中国での協力体制如何に?」が依然ボンヤリしている(又は公に語られない)ため、NIFC-CAと米空軍の構想(NCCT)の関係がよく分からないため、個々のアセットの話題から「群盲、象をなでる」状態が続いています。

この辺り、どなたかご存じ???

レッドフラッグでNCCTを本格初使用
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-25
道遠し!?:NIFC-CAの進展状況
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-26

PEA関連の記事
「20年ぶりエスコート電子戦機?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-20
「道遠し?米海軍NIFC-CAの状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-26
「PCA検討はこの方向で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30

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米とカナダが本土防衛巡航ミサイル対処に協力 [米空軍]

Robinson Ottawa.jpg2月16日、お懐かしやロビンソン北米コマンド司令官がカナダのオタワで講演し北極海経由の巡航ミサイルなどマルチドメインな脅威に対処するため、カナダと2国間検討グループを設置し、20年ぶりに早期警戒システムや対処兵器のアップグレード検討を開始していると語りました

かっこいい女性大将であるロビンソン司令官は、前任務が太平洋空軍司令官であり、赤いスポーツカーを颯爽と操る日本の皆さんにはお馴染みの「男っぽい」女性で、つい最近までは米空軍参謀総長の有力候補だった人物です。そして女性として初めて、地域戦闘コマンド司令官に就任した話題の人物です

まだ初期的な検討段階のようですが、「史上初の2国共同による要求性能検討」や、具体的にロシア・北朝鮮・中国・イランの国名を上げて脅威対象国と言及している辺りに、巡航ミサイルの拡散に対する危機感迫る様子が伺えます。

24日付Defense-Tech記事によれば
N Warning System.jpg●現在米国とカナダは、1950年代に最初に設置(当時の名称はDEW:Distant Early Warning)された、アラスカからNewfoundlandに至る範囲をカバーする、47個の多様な覆域のレーダー拠点からなる「North Warning System」を運用している

●2015年に軍事情報メディア「DefenseOne」は、米国防省が低空進入ミサイルの迎撃ネットワークを公にせず検討していると報じ、レーダー施設を増設し、戦闘機や地対空ミサイルや艦対空ミサイルを誘導し、低高度高速目標の撃退を計画していると紹介した
●またその報道には、飛行船型のセンサーJLENSを活用し、地上レーダーが発見しにくい低高度目標探知に活用する構想も描かれていた

●2月16日、ロビンソン大将は「Conference of Defence Associations Institute in Ottawa」の聴衆に対し、具体的脅威について「金正恩は予測不可能で気性が激しい」、「ロシアは依然としてgame changerであり、ロシアの巡航ミサイルは我々がイメージするよりも遠方から到達可能で、彼らは北米大陸に接近することなく、我々を危機におとしいれる
●また「中国やイランも、常に我々の防御の弱点を探り、有形無形の防御態勢を崩壊させようとしている」と語った

カナダと2国間検討グループを
N Warning System2.jpg●これら脅威に対処するため、同司令官は、米国とカナダが「アラスカからカナダ北部に構築されている監視レーダーネットワーク「North Warning System」を更新するため、カナダと2国間検討グループを設置した」と語った
●そして、「史上初めて両国は、北方から米本土北部に接近する全ドメインの脅威を監視するするため、共同で要求性能検討(binational analysis of alternatives)を行う事に合意した」と付け加えた

●ロビンソン司令官は更に、「空や海中から発射される脅威に関する必要情報を入手して警報を発するため、遠方を継続的に監視できる体制を構築し、巡航ミサイルを早期に発見、追尾、識別し、必要なら撃破する能力を向上させる必要がある」と語った
●そして両国が共同で取り組む要求性能検討の結果により、「北米防空司令部が次世代の複数ドメインに渡る警戒監視能力を保有するに適当な技術投資方向を、両国は判断することになる」とロビンソン大将は語った

●更に同司令官は、「装備品に関する検討だけでなく、新たな戦略や作戦コンセプト、また検討に基づく新たな2国間演習の計画や策定にも取り組んでいる」と説明した
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日本も参考にすべき、又は議論に建設的な貢献が出来る可能性がある分野ですので、とりあえずご紹介しておきます。

Ottawa DFS.jpgただ以前ご紹介(http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-03-1)したように、JLENSの事故を受け同計画への再挑戦は期待薄で、これに変わりうる常続的な見通し線外レーダー(OTH:over-the-horizon)を求めている状況のようです。

何か画期的な技術革新があり、可能性があるから検討が本格化したのか、脅威に追い立てられて何か検討せざるを得なくなったのか不明ですが、ロビンソン大将のご健闘を祈念したいと思います!

NORAD関連
「米国首都の防空に航空局FAAレーダーと連携」→http://holyland.blog.so-net.ne.
jp/2017-02-03-1
「カナダがBMD姿勢見直し」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-02

JLENSの概要と試験
「2個目配置」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-20
「1個目設置」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-24

「空自OBが対領空侵犯措置の効果に疑問を」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-18-1

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今後1年間で米空軍が宇宙活動の大アピールへ [サイバーと宇宙]

JSPOC.jpg22日、米空軍のGoldfein参謀総長とJay Raymond宇宙コマンド司令官が連名で寄稿した宇宙ドメイン「決意表明文」がDefense-Newsに掲載され今後1年間かけ、宇宙ドメインの重要性、米空軍が宇宙で果たす(果たしてきた)役割、宇宙ドメインでの取り組みを、精力的に訴えていくと宣言しています

そしてアピール活動を通じ、宇宙ドメインの政策、戦略そしてアセットや資源配分について様々な議論が起こることを期待し、貴重な意見が得られることを望み、そして潜在的な敵に宇宙で戦いを仕掛けることが割に合わないことを知らしめたいと結んでいます。最後の一節は「That is a message that we are ready and willing to deliver.」です

米空軍参謀総長がトランプ大統領と初めて面談した際、5分間だけ時間を与えられ、いの一番に説明したのが宇宙ドメインの重要性と空軍がその大半を担っている点でした。
宇宙ドメインの重要性は感じていても、なぜ突然宇宙を前面に???との思いを持ちましたし、今もその?感は続いていますが、今までアピールや説明努力が不十分だった重要分野に、おれは真剣に取り組むぞとの参謀総長の決意のようです

背景や狙いがよく分かりませんが、一生懸命さや熱意は感じます。今後も様々な発言やイベントがありそうですが、まずは基礎となるであろう、熱気溢れる「決意表明文」をご紹介します

概要:空軍参謀総長と宇宙コマンド司令官の寄稿文
Goldfein.jpgRaymond-Space.jpg●米軍が宇宙のリーダーとしての責任を担い、米空軍はその中心にあるが、宇宙技術がどの程度我が米軍の活動を支え、我が経済の効率的運営に寄与しているかは、国民や社会に良く理解されていない。ガソリンの購入から車の運転、オンライン通販、物流、医療などなど、世界経済が軍によってもたらされた衛星技術に支えられているのに
●過去25年間、米空軍は軍事作戦におけるリアルタイム情報提供をリードし、米軍が戦う時、その作戦を宇宙技術で支えてきた。見通し外通信や遠方での部隊活動把握、精密誘導兵器の誘導などは、IS殲滅作戦の鍵となっている

今後1年間、皆さんは宇宙の話や米空軍が他軍種と如何に宇宙関連で緊密に連携しているかを耳にするだろう。
我々が迅速に宇宙アセットやネットワークの防御対策に取り組み、敵対者の企みを抑止する能力獲得を進めるに中で、米国民の皆さんには、宇宙で何が危機にさらされているのかを理解して頂く必要があると考える

3つの取り組みをアピール
JICSPOC.jpg●何よりも、戦いがあればそれは宇宙に拡大する。宇宙に戦いが拡大したなら、我々は如何に戦うかを考えておかなければならない。陸海空ドメインのように、宇宙ドメインでの戦いにも備えなければならない
●米空軍が宇宙を戦いのドメインに融合する取り組みの第1は、宇宙での脅威を探知し認識する能力を高め、敵の脅威が高いドメインで、宇宙アセットを指揮統制する能力を高める取り組みである

第2に、宇宙アセットの生存性を高め、国防省と情報機関の連携を強化し、国家安全保障に不可欠な宇宙アセットの保護、防御、運用を行う事である
●そして第3に、昨年コロラド州に立ち上げたJICSPOC(Joint Interagency Combined Space Operations Center)への取り組みである。情報機関と核兵器を扱う戦略コマンド等が協力して立ち上げた作戦センターは、宇宙での新たな手法を試験し革新する事を促進し、未知の世界を教えてくれる

●これらの取り組みは、敵が我々の宇宙での行動を阻害することを防ぎ、衛星を改善し、宇宙関連要員を新たな現実に対処できるように鍛え、そして思考法の根本的変革をもたらす
●宇宙での戦いは、地球での戦いと同じアプローチを必要としている。もはや空想小説の世界の話ではない脅威を早期に探知し、必要なら機動し、敵が武力に訴える気にならないよう果断に対処する必要がある

Goldfein1-1.jpg●対処には、短期的な取り組みと長期的視点で臨む必要のあるものがある。このため米空軍は、政策、戦略、資源配分等に関する議論を歓迎する
公に米国の宇宙アセットを守る決意を明らかにすることで、我々は潜在的な敵に対し、宇宙で米国に戦いを仕掛けることが割に合わないことを知らしめたい。これが我々が伝えたいメッセージだ
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あまり米国社会で認知されず、予算獲得の追い風が少ない宇宙ドメインに、追い風を起こそうとする取り組みかも知れません。

しかし、宇宙アセットがもたらす恩恵、GPSやスマホ通信やオンラインシステムなどなどなどに現代社会があまりにも依存し、それが中断した場合への備えがあまりにもない事への警告は誰かが行わなければなりません。

その警鐘と備えへの訴えでと見れば、今後1年間のアピール大作戦が楽しみです。そして日本の関係者が、JICSPOCで勤務でき、何らかの貢献が出来る日が来ることを祈念いたします

「米空軍トップが5分間でトランプに訴えたこと」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-04

「JICSPOCを副長官らが高評価」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-01

宇宙関連の記事
「新型宇宙監視望遠鏡が部隊へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-19
「宇宙改革法案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-13
「衛星小型化は相殺戦略でも」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-01
「宇宙戦本Ghost Fleet」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-08

「宇宙アセット防御予算8割不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-01-1
「米空軍の宇宙姿勢を改革」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-19-1
「F-15から小型衛星発射試験へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-09

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