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伊の軍需産業会長:F-35で米国にだまされた [亡国のF-35]

Italy F-35.jpg10日、イタリアの元国防次官で現在はイタリア軍需産業界会長を務めるGuido Crosetto氏はF-35の維持整備や製造分担に関し、米国やLockheed Martin社は当初の約束を破り、イタリアの担当分担が大幅に削減されていると不満を爆発させました

イタリアは2002年にF-35共同開発国に加わり、開発に約1100億円を投資し、同時に131機を購入する決定をしています(後に90機に削減決定してますが・・・)
当時これだけの投資が政治的に受け入れられたのは、米国やLockheed Martin社から、投資額に応じた相応の部品製造や維持整備分担をイタリア配分すると約束されたからなのに、現状では当時の約束1/3以下程度しか配分が実現しないと激怒しています

そして更に同氏は、今年予想されるイタリア総選挙を引き合いに出し、F-35計画へのイタリアの参画が政治的に支持されなくなる可能性を示唆しています。
イタリア軍需産業側だけの言い分ですから、「workshare」に関する約束や実態がどうなのか断定は出来ませんが、諸外国にF-35を購入させるため、米国やLockheed Martin社が「バラ色の夢」を誇張して語った可能性は否定できず、世界中で同様の問題が生起しそうですのでご紹介しておきます

10日付Defense-News記事によれば
F-35 RIAT.jpg●Crosettoイタリア軍需産業界会長は2008年から11年の間にイタリア国防次官を務めた人物で、米国やLockheed Martin社とのF-35に関する交渉にも関与していた人物である
●同会長によれば、イタリアがF-35計画に参加を決定し、投資額を議論した際には、米国やLockheed Martin社はイタリアに投資額の約65%の「workshare」を配分すると約束していたが、現在は「20%以下の配分しか得ていない」と同会長はまくし立てた。

●そして同会長は、競合しないと説明を受けていた英国North Walesの整備施設や、後出しで自国の機体整備を行うと主張したイスラエルにより、イタリア北部Cameriの整備拠点の「workshare」が侵害されていると非難した
●更に同会長は今年イタリアで総選挙が想定されることに言及しつつ、「私が国防次官当時は、F-35計画を通じてイタリアが享受できる雇用や新技術を議会に説明して理解を得たが、現状でF-35計画への支持を得ることが容易だとは考えられない」と強調した

●なお現在では、イタリアのCameri整備拠点は胴体や翼の維持整備を担当し、英国North Walesの整備拠点はアビオニクスの整備を担当する事になっている
Italy F-35 2.jpg●また昨年11月、774品目の修理分担の中の65品目の担当国が発表されたが、48個が英国に、14個がオランダに、3個が豪州に割り当てられた。これに対し同会長は、イタリアの企業が小規模だとして不当に関連事業から排除されていると訴えている

●同会長は付け加え、「米国政府とLockheed Martinは私のオフィスで、Cameriの整備拠点で全ての維持整備作業を行うとの提案をしたのだ。従って、英国とイスラエルへの業務の横流しは約束破りだ」と訴えた
●また同工業界の事務総長もCameriの整備拠点について、「当時Lockheed Martinから、欧州唯一の整備拠点となり、全てを担当する事になるから投資しないかと提案を受け、投資を決断した」と憤懣やる方ない思いを語った
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日本とは異なり、イタリアではF-35の開発遅延や価格高騰が世論の非難を浴び、そんな金があるなら教育や福祉医療に予算を使えとの声が日増しに大きくなっているようです。
一方で、失礼ながらイタリア人の主張ですので、しかも業界人の話ですので、話半分とは言わないものの、同会長の発言は割り引いて聞く必要があるでしょう。

F-35 MHI.jpgでもイスラエルが米国との「特殊な関係」を持ち出し、自国で整備と言いだしたのは確かですし、イタリアの企業が現時点で65部品の修理担当から漏れていることは事実です。

まぁ・・・財政破綻の深淵をのぞきつつあるイタリアですから、90機の購入自体が頓挫する可能性が極めて高く、ある意味時間の問題なのでしょうが・・・

F-35の組み立てや修理分担
「F-35部品の修理担当国一部発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-08
「悲劇:日本でF-35組立開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「豪州と日本が分担」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-18
「欧州でのF-35整備拠点決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-12-1

「伊が米に要求:もっと分担を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-01

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米国首都の防空に航空局FAAレーダーと連携 [Joint・統合参謀本部]

NORAD2.jpg米空軍協会が米本土の防空を担当するNORAD関係者にインタビューを行い、首都防空に関する脅威感や対策について触れていますので、東京五輪時のテロ対策等の予習としてご紹介します。

また一連のインタビューで、ロシアからの防空をより強く意識する方向に変化が見られ、関連でOTHレーダーの必要性についてNORAD関係者が語っていますので、併せてご紹介しておきます

3日付米空軍協会web記事によれば
●北米大陸への非対称脅威を考慮し、NORAD(北米防空司令部)は、探知追尾が困難な低高度&低速度目標への対処を焦点の一つにしている。
●そして2015年4月15日、ペンシルベニア州から飛来した小型の有人ヘリ(gyrocopter)に、米議会敷地内への着陸を許した失態以来、NORADは改善を進めてきたと同幹部は語った

NORAD.jpg●NORADのSteve Armstrong戦略計画課長は、最近、首都圏(NCR:National Capital Region)を想定した「机上演習」を実施し、gyrocopter事案を再現するようなシナリオで再検証を行ったと語った
●そして同「演習」の結果、「十分な信頼性を持って、低速低高度航空機をほぼ常に探知追尾できた」と明らかにし、NCRエリアにおける「low-profile aircraft」探知に改善が図れたことを確認したと語った

●今回の結果を導いた改善には、空中状況をより良く把握するための連邦航空局FAAと米軍レーダーデータのコラボが含まれている(collaboration between the FAA and military radar data in terms of what feeds the air picture

対露に常続的なOTHレーダー装置を
JLENS22.jpg911事案以降のシフトから、NORADは本土防衛の焦点を変えつつアリ、ロシアの長距離爆撃機や最新巡航ミサイル脅威への備えの鍵として、常続的な見通し線外レーダー(OTH:over-the-horizon)を求めている
ISR航空機や先進戦闘機によるOTH任務遂行も不可能ではないが、費用対効果の面から常続的な実施は難しいとArmstrong戦略計画課長は語った

2015年にヘリウムを使用した係留型飛行船でOTH機能を狙ったJLENS計画を立ち上げたが、強風にあおられて係留ロープが切れ、漂流しながらケーブルで電線等を傷つけて地域に停電を引き起こし、F-16を出動させて撃墜する騒ぎになった
●NORADのScott Miller広報課長(海軍大佐)は、この事故を受けJLENS計画への再挑戦は期待薄で、これに変わりうる常続的なOHT能力確保の手段を思案中であると述べている
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米本土と日本の防空を単純には比較できませんが、首都の対テロを含む防空を考える場合、民間航空交通を司る当局と空軍の空域監視レーダーとの連携は待ったなしの課題でしょう。

OTH radar.jpgその点、具体的な方法は記事から読み取れませんが、「連邦航空局FAAと米軍レーダーデータのコラボ」は素晴らしい取り組みですし、先進国全てが学ぶべき手法でしょう。

日本の状況を良く承知しては居ませんが、日本の民間航空交通を司る国土交通省管轄の管制機関には「左巻き」の方が多く、自衛隊との協力には「地球の果てまで後ずさり」的な姿勢の方がいらっしゃるのでは・・・と危惧しております。誤解でしたらごめんなさい。

官邸の屋上に軟着陸したドローンのようなレベルの小型飛翔体への対処は困難でしょうが、有人機には何とか対処したいモノです。

JLENSの概要と試験
「2個目配置」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-20
「1個目設置」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-24

NORAD関連
「カナダがBMD姿勢見直し」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-02

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トランプ政権はNPR(核態勢見直し)をどうするのか? [安全保障全般]

核兵器関連のトランプ発言&ツイート

12月22日と23日
「世界の核兵器情勢を踏まえれば、核戦力を大幅に強化拡大する必要がある」
「核兵器の軍拡競争だ」「米国は対抗する国全てを圧倒するであろう」

1月27日の大統領令
「国防長官にNPR(Nuclear Posture Review)を命じる。米国の核抑止力が、最新で強固で柔軟性に富み、強靭で即応態勢に有り、21世紀の脅威を適切に抑止し、同盟国に信頼されるモノであるような態勢を検討させる」

B-2takeoff.jpg8日付Defense-Newsが、上記のトランプ大統領指示等を受け、米国の核兵器やその体制が今後どのように変化する可能性があるのか、NPR検討をマティス国防長官らがどのように進めるのか等々について、様々な専門家の見解を紹介しています

現時点で断定的に言える材料は無いが、そんなに劇的な変化が可能とも思えない一方で、不拡散態勢や核実験禁止条約に手を付ける可能性も否定できないし、ご覧の通りのトランプ大統領なので注視する必要がある・・・と言った雰囲気です

ただし、前回2010年のオバマ政権時のNPRが基本としていた「3つのNO」、つまり、「新たな弾頭、新たな能力、新たな任務は追及しない:no new warheads, capabilities, and missions」方針は、北朝鮮やイランやパキスタン等の動向からしても議論すべき・・・との雰囲気はあるようです

前回のNPR発表は、3回に亘る発表延期の末、オバマ大統領誕生から1年3ヶ月も経過後に行われており、脅威の変化や核拡散の中で抑止全体を議論する困難な作業で、オバマ時代からの大転換を臭わせるトランプ政権下での作業を考えると、時間がかかる可能性も大です。実際、NPR検討を命じる大統領令も、特に期限を設けていません

長い記事なので、いろんな視点を少しずつ、何時ものように独断と偏見で「つまみ食い」紹介を試みます。

8日付Defense-News記事によれば
B-52-UK.jpg●NPRを命じる大統領令は、マティス国防長官に大きな裁量の余地を残しており、誰がどのように何時まで等の点に関し、特段指定していない。従って大統領は国防長官に任せたのだと見る専門家もいる
●どのような変革が予期されるかについては種々の意見はあるが、オバマ政権時代に方向付けられているB-21爆撃機、次期戦略原潜、ICBM後継設計に大きな変更は無いだろうと多くの専門家や関係者は見て居る。

●トランプ政権は全ての既定政策を吟味するだろうが、現在国防省内で検討されている新たな指揮統制システムや核搭載巡航ミサイルは、色々と話題を呼ぶ可能性がある
●また、オバマ前政権が核兵器の削減を追求していた方向とは異なり、脅威の状況から、「抑止の重要性や優先度」をより重視する方向に向かう可能性を、トランプ政権の安保関係スタッフは示唆しているようだ

B-61 LEP.jpg●まだ多くの関連スタッフが埋まっていないことから予測が難しいとしつつも、新政権は不拡散態勢よりも抑止と戦力近代化を重視し、「ブッシュ政権時のように、実現可能性が薄くても、あくまで理想の強固な核戦力態勢を目標に掲げる可能性が、マティス&Work体制にはあり得る」との見方もある
●別の専門家は、オバマ政権時の核戦力近代化計画を前倒し推進する方向を予測し、核弾頭近代化を担うNNSAへの予算増額を優先するのではと指摘している。具体的には、現在5種類の戦術核を2種類(W80-4 and the B61-12)に更新集約し、5種類の戦略核ミサイル弾頭を3つ(IW-1, IW-2, and IW-3)に集約する計画の加速である

昨年12月に国防科学評議会がまとめたレポートを基礎に、新たな核兵器オプションを新大統領に提示する可能性も指摘されている。2010年NPRの「3つのNO」方針から離れ、より威力の小さな核兵器や運搬手段をオプションとする構想が含まれる可能性がある

抑止概念の再検討や不拡散や核実験条約も議論に
B-21 2.jpg●7日の記者会見でGoldfein空軍参謀総長は、「全てのオプションをオープンに検討する準備がある」「弾頭数や威力の議論も問題ない」「国防省が現在構想している核兵器近代化計画の継続が議論の主対象になるだろう」と述べたが、更に続けて
●「一方で、21世紀の抑止についてより幅の広い議論を期待したい。宇宙やサイバードに戦域が拡大し、世界共通の公共財が目標になり得る時代における、抑止のあり方や核抑止の関わり方にまで議論の幅を広げる必要があろう」と語った

前回のNPRに国防省の担当次官補代理として関わったHersman氏は、実務上の論点として、ペンタゴン以外の外部有識者を何処まで関与させるかを論点としてあげている。多くの意見を聞くことでプラスもあるが、議論を複雑にして集約に時間を要すると注意喚起している。
NPRの完成時期については、トランプ大統領から具体的な指示が無いと国防省関係者も認めている。議会から早期の検討を求められるかも知れないし、2018年度予算案に反映させるためなら早期のとりまとめが必要となろう

Minuteman III 4.jpg●別の観点として、核兵器の不拡散には超党派で支持が強く、これを新政権が無視することは難しいだろうが、国際環境を踏まえ、駆け引きの材料になる可能性は否定できない
●同様に、核抑止や核開発の専門家の間では、ケリー前国務長官らが再強調していた核実験禁止条約の効力を疑問視し、同条約の存在意義を再評価すべきとの意見も聞かれる

●一方で、核非拡散の諸国間には、米国が核兵器使用の原則を堅持しない可能性への懸念が広がりつつアリ、2010年NPRの「3つのNO」変更は、不必要に不安定化を招いてコストが増すだけで無く、主要な同盟国を含む国内国外の分断を招く恐れがある
トランプ大統領が核ボタンを保持していることだけでも懸念の材料となっている中、更に恐れや懸念を大きくする可能性があると、NPR検討を心配する声もある
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通常戦力の増強どころか、維持費の捻出にも苦労している米軍部隊の現状を何回かご紹介してきましたが、核兵器に関わる「忘れられた・無視され続けた」現場の状況は、更に輪をかけて厳しいのが現状です。
この対策には、今後20年間、毎年約2兆円の追加予算が必要とWork副長官が見積もっており、その捻出だけでも容易ではありません

SSBN.jpgですから、トランプ氏の「核兵器増強」ツイート等が、「大山鳴動してネズミ一匹」で収束する可能性も大なのですが、それでは再び現場の士気は「ウナギ下がり」が予想され、反動が懸念されます。

「不拡散の見直し」は日本や韓国に核武装を・・・とのトランプ発言を受けた話題でしょうが、2017年に入ってから一度も耳にしませんので、スルーして良いかと思います

ところで空軍参謀総長が言及している「抑止全般の再検討が必要」との問題認識は、日本の関係者にも注目してもらいたいモノです。
何時までも、実質的に効果の薄い対領空侵犯措置だけに「陶酔」し、脆弱性が増すばかりの「戦闘機部隊だけ命」思考では、日本の抑止力向上は図れません

戦闘機の存在による抑止効果が「ウナギ下がり」である事を良く認識し、抗たん性のある戦力構成への投資シフトや、脆弱なサイバーや電子戦、はたまた宇宙アセット代替確保等々への投資を、真剣に議論すべき時を既に迎えているはずです

前回のNPR(核態勢見直し:Nuclear Posture Review)
「2010年NPR発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07
「NPR発表3回目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-02
「バイデンが大幅核削減を公言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-19

米新政権の国防予算を考える
「規模の増強は極めて困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-10

空自OBが対領空侵犯措置の効果を疑問視
「対領侵中心の体制見直しを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-18-1

戦術核兵器とF-35記事など
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

ICBM後継に関する記事
「ICBM経費見積もりで相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1

オハイオ級SSBNの後継艦計画関連
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13

米軍「核の傘」で内部崩壊
「屋根崩壊:核兵器関連施設の惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-23
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「国防長官が現場視察」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-18
「特別チームで核部隊調査へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-27

「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「米核運用部隊の暗部」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-29

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米海軍FA-18の2/3が飛行不能の惨状 [Joint・統合参謀本部]

F-18.jpg6日付Defense-News記事は、トランプ大統領が米軍の航空機や艦艇の大増強をぶち上げている一方で、予算の強制削減法(予算管理法)や暫定予算(CR)態勢に何ら変化の兆しがなく、米海軍部隊は槍の穂先を担う海軍攻撃機の2/3が部品不足や整備未完で飛行不能状態にあると実情を指摘しています

また、艦艇修理費の削減により空母や潜水艦の定期修理期間が延伸したり、操縦者の飛行訓練時間が不足したする事態が常態化し、そんな悩ましいペンタゴンや司令部勤務を命じられた士官の転勤拒否率もうなぎ登り状態にあることも紹介されています

また、新政権下でマティス長官が2017年度予算の修正案を提出することになっている一方で、そのお金はほとんど全てが艦艇や航空機の増強ではなく、目の前の稼働率を確保するための修理費や部品費に投入されル実態も紹介しています

オバマ政権8年間の「強制削減態勢」がもたらした傷は如何にも深くトランプ大統領の威勢の良いかけ声がむなしくペンタゴンや米軍現場に響く惨状を、安保関係者はまず把握する必要がありましょう

6日付Defense-News記事によれば
Aegis3.jpg●通常の状態でも、米海軍の航空戦力の非稼働率は、定期整備等のため2割から3割程度はあるが、現在は52%が非稼働状態にある。
●そして戦力発揮の最先端にあるFA-18の非稼働率に至っては、何と62%に達している。62%の内訳は、27%は大規模定期修理に入っているためだが、残りの35%は単に部品が入手出来なたために飛行不能の状態に置かれて居るのだ

米海軍艦艇の修理費も不足している。米海軍は、長期間を要する艦艇建造を削減/中断すると取り返しが難しく、また造船所の人員や技術基盤の態勢維持のため、整備維持費を削減しても艦艇建造に予算を優先配分しており、整備維持費へのしわ寄せが大きくなっている
2017年度予算でも、本来であれば必要な14隻の艦艇定期修理を2018年度に先送りする決定を行っている。14隻には、潜水艦1隻、巡洋艦1隻、駆逐艦6隻、揚陸艦修理艦2隻、揚陸艦1隻、掃海艦3隻が「含まれている

●この様な修理先送りは、やり残し修理の蓄積を招き、また修理延期により艦艇等の痛みも進むことになり、結局実際の修理期間が延伸する悪循環に陥っている。
●例えば最近では、空母の定期修理が少なくとも3年、潜水艦に至っては4年以上必要な状態に至っており、潜水艦「Boise」は潜水不能なレベルにまで艦の状態が悪化している。海軍幹部は現状の暫定予算状態が続けば、今年更に潜水艦5隻が同様の状態になると危惧している

9年連続で暫定予算(CR:continuing resolutions)が続き、前年ベースの査定が続き、新規事業予算枠が確保できない中のやりくりにより、例えば兵士の移動旅費確保も難しくなっており、2017年に入ってからの移動が、前年より15000件減っている状態である
●(この様な困難な部隊運用の中、)ペンタゴンや司令部勤務への移動を拒否する操縦者が増加しており、司令部等への移動を拒否するものの比率が、2013年には17%であったが、2016年には29%にまで急増している

新政権の動きに期待できるか?
トランプ大統領は強制削減の言及である「予算管理法」の撤廃を主張していたが、何時、どのようにこれが実行されるのか明らかになっていない

mattis-about.jpg1月31日にマティス国防長官が、今後の予算関連の時程を「three-phase計画」をMemoで示し、まず2017年度予算の修正案を3月1日までに大統領府に提出、第2段階として5月1日までに2018年度予算案を大統領府に提出することを命じている
●更に第3段階として、新政権が議会への提出を義務づけられている「National Defense Strategy」を作成し、「FY2019-2023」の国防計画をまとめ、その中で「新たな米軍の戦力規模」を明らかにする事としている

今週は4軍の副参謀総長が下院と上院の軍事委員会に出席し、各軍種の現状を説明して当面の追加予算を要望することになるだろうが、長期的な話にはならず、残された2017年度5ヶ月間で穴埋めすべき予算確保を訴えるだろう。
米海軍で言えば、新造艦の予算ではなく、緊急に必要な艦艇の維持整備費でアリ、航空機の部品調達予算の話になろう。米海軍高官の言葉を借りれば「我々の最優先事項は即応態勢確保だ。航空機を飛行させ、艦艇や潜水艦を海に送り出し、水兵を訓練して使えるようにする予算が問題なんだ。新たな装備の話する余裕はない」なのである。
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Bush-CV2.jpg当分はトランプ大統領による「大統領令」騒動が続きそうですが、地に着いた視点で新政権の動向を見守るため、改めて米軍部隊の現状を米海軍を例にご紹介しました。

米国全体で大規模な財政出動を行うような「前振り」があり、その流れの米軍艦艇や航空機の増強計画ぶち上げだったと思うのですが、「足もと」がこの状態ですから「落としどころ」が見当たらないのかも知れません。

副参謀総長グループの発言にも注目ですが、「足りない足りない」と予算増額発言ばかりでは疲れるので、少しは政策や戦略を語って欲しいものです。
それから、ハリス太平洋軍司令官あたりにも、そろそろ対中国発言を期待したいモノです

米新政権の国防予算を考える
「規模の増強は極めて困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-10
「新長官と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-19
「次期政権と相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04

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米空軍トップが5分間でトランプに訴えたこと [サイバーと宇宙]

Goldfein1-1.jpg3日、Goldfein米空軍参謀総長が米空軍協会Mitchell研究所で講演し、米空軍の宇宙における役割の重要性を主に訴えました。

許された僅か5分間のトランプ大統領へのプレゼンで宇宙を語ったことや、米空軍が有志連合国を含む共同航空宇宙作戦センターで宇宙分野をリードしていることをアピールしつつ、宇宙アセット調達の問題点も訴えています

宇宙アセットの重要性や脆弱性が鍵であることは承知しているつもりですが、B-21やF-35やKC-46A等の大物航空アセットの調達に目途が立った余裕を感じないでもありません。
いやいや・・・やはり宇宙装備の脆弱性が頭から離れないんだと思いますが誘導兵器の発達で航空機自体のアピール度が低下していることを「首筋辺り」で感じているようにも思います

限定5分でトランプ大統領に説明したのは
Goldfein1-4.jpg●マティス長官の議会証言が行われた当日、4軍のトップがトランプ大統領と面談する機会を与えられ、それぞれが各5分で説明した。私はまず宇宙において空軍の果たしている役割を強調した
地球上全体を俯瞰する12個の衛星を運用しているが、そこから得られるデータ自体では役に経たず、意志決定に供するレベルの情報に変換して活用することで初めて意味を持つ。米空軍はその処理能力で航空宇宙優勢の多くを確保し、統合戦力の活動を根本で支えていると説明した

●またリビアのISIS拠点を、米本土を出撃したB-2爆撃機が往復32時間の連続飛行で任務を達成した件も取り上げ、米空軍が世界中で米国の国益を支えていると大統領に説明した
●最後に大統領に述べたのは、米空軍の全ての任務遂行は米国産業の成長そのものである点だ。ここ数年の軍縮小で史上最低規模にある空軍だが、あるべき規模や体制を取り戻し、国家の負託に応えたいと説明した

宇宙練度は連合や共同で飛躍的に進歩
Space Fence1.jpg●例えば最近発生した無人機MQ-9の衛星通信トラブルでは、従来なら数日から数週間対処に必要だったものが、分単位で解決されるレベルに進化している
●当該事案は「衛星通信への干渉発生」がトラブルとなったが、連合の航空作戦センター(CAOC)が問題を把握し、多様な関係者がチームで問題解決に取り組み、問題を分析して関連捜査員とレポートを共有して対処に当たった

数分の間に、有志連合国の装備が妨害源となっていることが突き止められ、問題解決に繋がった。このような迅速な問題処理は、CAOCに多様な関係者が一堂に会して勤務することで可能になることである
●平均すると、このような問題解決に要する時間が1/8に短縮している

宇宙ドメインの主導を米空軍に
Gold-Live.jpg米空軍を宇宙を主導する軍種に指名してほしい。米空軍の兵士に統合の場で宇宙のより大きな役割を担わせて欲しいまた「family of systems」アプローチを、国防省全体の宇宙活動に導入して欲しい
●我々は戦略レベルで、宇宙ドメインを統合参謀本部や地域コマンド司令官たちとどのように導くかについて議論を必要としている

●最後にMike Rogers下院議員が取り組んでいる宇宙アセット調達改革について言及し、宇宙に関わる計画の意志決定に、60もの異なる関係者が意志決定に関わる現状の規定を、「この複雑な規定により、調達戦略の一体性が損なわれている」と訴えた
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4軍のトップである参謀総長や司令官でも、報道されるトランプ大統領の主張や「大統領令」を気にしながら、何を語るべきか思案している様子が伺えます

Birds-Tra2.jpg「偉大な軍隊」を取り戻すには無駄を削減することも必要で、4軍が互いに根回しして政権と対峙しないよう、4軍に連携させないよう分断策を採るのでは・・・と推測する方もいらっしゃいますが、現時点では何とも言えません

それにしても・・・今回のマティス長官来日ですが、あまりに日本関係者が聞きたい事をポンポン言ってくれるので有り難いのでしょうが、とりあえず対ISISが忙しくなるから、対中国や対北朝鮮には「たっぷり口先介入」だけで時間稼ぎ・・・の思いが滲んでいるような気がします

宇宙関連の記事
「新型宇宙監視望遠鏡が部隊へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-19
「宇宙改革法案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-13
「衛星小型化は相殺戦略でも」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-01
「宇宙戦本Ghost Fleet」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-08

「宇宙アセット防御予算8割不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-01-1
「米空軍の宇宙姿勢を改革」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-19-1
「F-15から小型衛星発射試験へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-09

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マティス長官は対中国を日本でどう語ったか? [マティス長官]

Japan.jpg3日から4日にかけ、マティス国防長官が来日し、安倍総理、管官房長官、岸田外務大臣、そして稲田防衛大臣とそれぞれ会談しました。

尖閣への「日米安保条約第5条」の適応再確認や、在日米軍経費に関する件は議題にならなかった等が日本のメディアで盛んに報じられていますが、やはり日本の安全保障を懸念するまんぐーすとしては、マティス長官の対中国発言に注目したいと思います

それと、長官が儀仗隊をほめてくれた事と、稲田大臣は何歳に見えたんだろうの「謎」ついても、マティス長官の来日に関する4日付米国防省web公開記録で触れたいと思います

本当は「箸休め第3弾」にしたかったのですが、この対中国発言からは、当面「放置プレー」が継続される事が伺え、箸休めしてられない印象を受けました・・

儀仗隊評価と謎?稲田大臣何歳に見えた・・・
(4日公式会談のマティス長官冒頭発言より)
20170204b.jpg●稲田大臣の温かな歓迎に感謝致します。また、昨夜はディナーにご招待頂き、とても率直にフランクに、そしてなおかつ、安全保障情勢について活発な意見交換が出来たことに感謝致します
●私が日本で自衛隊の皆さんと初めて接したのは、私がまだ少尉だった1972年の事です。恐らく、稲田大臣がお生まれになるずっと以前のことだと思うのですが・・・。
(ちなみに、稲田大臣は1959年2月生まれの57歳です)

●そして今回、もう一度日本の部隊の前に立つことが出来て嬉しかったです。今朝の「儀仗」は切れ切れで素晴らしかった(they looked very sharp, very impressive)。セレモニーに感謝します

中国に対する姿勢を問われ
(4日の共同記者会見でマティス長官は)
質問1:NHKの中村氏中国は東や南シナ海で海洋進出を強めているが、どのように対応するか?」
マティス長官
●日米同盟は揺るぎなく、より強固になってきている。これは韓国も含めてであり、この同盟に代わるモノはない
●我々は変化する地域情勢に対応していかなければならない。共に協力して足並みを揃えて対処していく。そして現時点では、特に中国との関係に於いて、アジア太平洋地域で安定を維持する事が出来ないような事象(理由)はない

質問2:Financial Times記者「中国の南シナ海での活動を抑制する行動を米国はほとんど行っていないが、より強い政策を採るべきでないか?何を行うべきと考えるか?」
20170204c.jpgマティス長官
●南シナ海の様子を見ていて、中国は地域の信頼を台無しにしていると思う。周辺諸国の外交、安保、経済主権に対する拒否権を行使しているようなものだ
ルールに基づく国際秩序の観点からすれば、係争があれば交渉を行うのが我々のやり方だ。我々は土地の領有に関し、誰に属するか、公海なのかについて、軍事的手段に訴えたり、占有したりしない

●我々がやるべきは、外向的手段など全ての努力により適切に解決し、通商ルートを公に開放し続ける事である。我々の軍事力はこの外向的な手段を補強するモノであるべきだ
●しかし現時点では、軍事的な行動やそれに類似する動きは全く必要ない外向的手段で最も適切に解決しうる課題だからである

●同時に、航海の自由は絶対的なモノであり、商船であろうと米海軍艦艇であろうとも、我々は公海上での航行を(ルールに則って今後も)行っていく
●であるので、現時点では、大きな軍事的動きが必要だとは全く考えていない
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20170204d.jpg1972年生まれだとしても「45歳」ですし、マティス長官から見て稲田大臣は「30代半ば」くらいに見えたのかも知れませんねぇ・・・
最近、日本の週刊誌やネット上では「垢抜けない稲田大臣のファッション」とか、国会答弁で涙ぐんだ・・・とかの話題が多いですが、大丈夫です! 稲田大臣!お若いしお綺麗ですよ!

儀仗隊への評価は嬉しいですね! 流石は元将軍! 目の付け所が違います。302保安中隊に最敬礼です!

本題の対中国発言ですが、解釈しますと、「対ISISが大統領の最優先事項であり、当面そちらに手一杯だから、外向的手段(つまり口先介入)だけでやり過ごすので宜しくね! 東シナ海でも対中国で波風立てないでね」との意味と理解致しました。
尖閣での「施政権」を死守する覚悟があるなら、「安保条約第5条」は有効だけれど、決して波風は立てるなよ!・・・と釘を刺された感ありです。

安倍総理まで加わった3日夜の夕食会の様子が気になりますが、「Jimと呼んでイイかしら?」とのフレーズ・・・稲田大臣はご活用頂けたのでしょうか???

マティス国防長官の関連記事
「対IS新戦略を30日以内に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-30
「F-35Cと改良FA-18の比較を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-29
「狂犬じゃなくてJimと呼んでくれ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-27
「全職員と兵士へのメッセージ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-23

「新長官と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-19
「市民と軍の分断を埋める」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-02
「トランプ氏がMattis氏と面談」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-21

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映像と5つの視点で学ぶ:核兵器 [安全保障全般]

atomic city3.jpg米軍事情報サイト「Military.com」が提供しているシリーズ「5 Things You Don't Know About」をまたまたご紹介します
このシリーズは軍事装備品を映像と共に、5つの豆知識から学ぼうとするもので、これまで7つほどご紹介してきました。過去の記事は末尾をご覧下さい

今日のテーマは「核兵器:Nuclear Weapons」で、2016年7月に作成されたものですが、いつものように同テーマに5つの話題でアプローチします。聞き取りの間違いにはご容赦を・・・

5つの視点は旧ソ連核兵器の再利用、ラスベガスは核実験観光で儲けていた、未だに原因不明の核爆発、現在の核弾頭保有数、そして米軍核兵器を保管・使用可能な他国について です。

映像は約7分です


話題1:旧ソ連核兵器を米国は核燃料に
米ソの戦略兵器削減交渉の結果、両国が核弾頭の削減に合意したが、あわせて旧ソ連の核弾頭を原子力発電のウラン燃料に転換し、米国内で使用するプロジェクトが1993年にスタートした
1993年から2013年まで行われたこの「メガトンTOメガワット」プロジェクトにより、旧ソ連の核弾頭2万発が核燃料に転換され、米国の発電所で使用されている

話題2:ラスベガスは核実験観光で
atomic city.jpg1951年から1963年の間に、ラスベガスから約65NM離れた核実験場で計200回の核実験が行われたが、これは3週間に一度の頻度であった。
核実験によって発生する「キノコ雲」がラスベガスから視認できたので、「Atomic City」の名で町を宣伝し、カジノやホテルは「核実験キノコ雲見学」を売り物に観光客を集めたほか、
●当時ラスベガスには、核実験に参加する兵士を歓迎するネオンサインや、キノコ雲との記念撮影が人気で、「Atomicカクテル」まで現れた時代だった

話題3:未だに原因不明の核爆発
atomic city2.jpg●核実験による大気汚染や「死の灰」が問題視され、やっと1963年に関係国で部分的核実験禁止条約が締結されて核実験が制限されるようになった
●これを受け、米国は監視衛星「ディーラー」等で核実験の監視体制を整えたが、そんな中で1979年9月にに原因不明の「閃光」「振動」等々が「インド洋」で観測され、その特定に全力を挙げた
●当時の米国情報機関は、諸情報から当該爆発が核実験だと断定したが、現在に至るまで、誰がこれを引き起こしたのかは不明のママである

話題4:各国の核弾頭保有数
●現在、世界には約16000発の核弾頭が存在している。最も多く保有しているのがロシアの7700発、ついで米国が7100発、フランスが3000発、以下、中国と英国が各250発等と言われている(まんぐーす注:合計があわないのですが、解説はそうなっています)

話題5:米軍核兵器を保管・使用可能な他国
米国の核弾頭(戦術核兵器)が、以下のNATO諸国に分散保管されており、保管する各国は有事に米国の承認を得て、各国の戦闘爆撃機機に搭載して同兵器を使用できることになっている
●現在この形態の核弾頭を保管している国は、ドイツ、イタリア、ベルギー、トルコ、オランダの5カ国である。昨今のトルコ情勢の流動化を受け、トルコ保管の核兵器の安全性が最近議論になっている
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「核実験観光」ですか・・・時代に流れを感じますねぇ・・・
しかし、1979年9月の「なぞ」は何とかならないんでしょうか・・・・・・。誰か取り上げて欲しいですね・・・。イスラエルとか南アフリカとかが疑惑の対象らしいですが・・・

なかなか興味深い「5 Things You Don't Know About」シリーズでした!!!

映像で5つの視点から学ぶ
「米海軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-27
「米海軍潜水艦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-26
「火炎放射器」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-11-2
「負傷者救出ヘリ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-07

「B-2爆撃機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-01
「AK-47ライフル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-28
「原子力潜水艦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-07-1

映像で見るシリーズ
「12㎏の兵器搭載地上ロボット」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-09
「防空&ミサイル防衛の融合IAMD」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-27-2
「威力強烈:AC-130」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-06
「CASの歴史を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-19

「イメージ中国軍の島嶼侵攻」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-06
「泣ける:帰還兵士と犬との再会」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-05
「レーザー兵器試験@ペルシャ湾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-13

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米空軍が整備員不足に対策も苦悩続く [米空軍]

Cooper222.jpg1日、米空軍協会主催の朝食会で講演した米空軍のJohn Cooper兵站部長(中将)は、3年半続いた約4000名の整備員不足への対処方針を決心し2021年までには100%不足を解消したいと語りました。

ただ整備員養成数を増加させる等の措置を執るものの、「パイの奪い合い」「質の確保」「民間委託」等の課題が完全に払拭できるわけではなく、悩ましい状態が今後も継続する事に間違いなさそうです。

この問題は、A-10を退役させて熟練整備員をF-35に「振り回す」構想が頓挫したことや、対ISIS作戦の激化で航空アセットへの負担が想定以上に重くのしかかり、整備所要が急増している等々から生じており、「快刀乱麻」の解決策は存在しません

3日付米空軍協会web記事によれば
PGM-Grant.jpg●Cooper兵站部長は朝食会で、3年半に亘って米空軍を悩ませている約400名の整備員不足を、2020年か2021年までに100%解消する計画だと語った
米空軍は必要な人的戦力を(他の分野から)整備分野にシフトさせる決定を行い、そこ不足人員は既に3400名程度にまで減少していると説明した

●また整備員の養成数を劇的に増加させてもいると同中将は説明したが、人的戦力のシフトの状況を、どこかを犠牲にしてどこかを穴埋めしている状況だと認めざるを得なかった
●そして新たな整備員養成増加の実態として、整備員不足部署を若くて経験不足な新人で埋めざるを得ない状況にあると兵站部長は説明し、「整備員の量の問題には対処しているが、質の問題にも今後は取り組む必要がある」と語った

●またF-35部隊での整備員不足に対しては、教育訓練部隊には民間契約業者に整備を委託する暫定的な対策を取り入れ、戦闘部隊には現役兵士の整備員を配置する方向で対処していると説明した
●なおCooper兵站部長は、民間委託する場合と空軍兵士で整備を担当する場合の費用の差はほとんど無いと付け加え、民間委託による経費の増大批判には該当しないと主張した
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人的戦力のシフト(decision to move critical accession manpower to maintenance)が、どの分野を犠牲にして行われているのか不明ですが、とても興味があるところです。

B-52 wing-W.jpg整備業務の民間委託に関し、James前空軍長官は在任時、空軍兵士と民間整備企業が現場で接することで、「空軍兵士が民間企業に引き寄せられる(人材が民間に流出する)」事を危惧していましたし、そのリスクを覚悟の上の「民間委託」なのでしょう。

また「民間委託」により、空軍内の整備員育成が「細る」マイナス面も無視できず、その影響は長期に亘り空軍の現場に残ることになります。

トランプ氏は軍装備の増強を掲げ、海軍艦艇や空軍機の増強を訴えていますが、予算面での厳しさに加え、「兵站の重さ」を無視したビジネスマン手法は現場の混乱を招くので、国防長官等がしっかりもの申して欲しいものです

米空軍が整備員確保で苦悩
「航空業界全体で人手不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-29
「F-35整備員確保の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-14
「A-10全廃は延期へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-22

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次期練習機T-X選定から候補が続々脱落 [米空軍]

T-X  Boeing3.jpg1月31日、米空軍の次期練習機を選ぶ機種選定レースに参加がすると名乗りを上げていた「Northrop Grumman/ BAE」チームが、「企業と株主にとっての最適の選択ではない」との判断から、機種選定に参加しないと明らかにしました

数日前には、「Raytheon, Leonardo and CAE」組も価格設定でチーム内の折り合いが付かなかったとして選定からの脱退を発表しており、当初4~5チームの争いが予期されていた2兆円超えの大型事業T-X選定は、対決相手が絞り込まれる方向に向かっています

次期練習機T-Xは、50年以上使用している420機のT-38後継として350機の調達を予定する、米空軍が取り組む調達改革の試金石とも言える調達事業です。
米空軍が掲げる「早い段階からの企業との情報共有」、「コストと性能のトレードオフを精査」等々の指針に沿い、通常より1年近く早い2015年3月に要求性能案が公開され、企業とじっくり検討した後に提案要求書(RFP)が決定、昨年12月30日に発出されたところです。

今後は2017年秋に企業と機首を決定する事になっており、提案要求書には、2022年から納入を開始、2024年度中には運用体制が確立可能であることが条件となっています

1日付DODBuzz記事によれば
T-X trainer.jpg●1月31日、「Northrop Grumman/ BAE」チームが声明を発表し、米空軍からのT-X提案要求書を慎重に吟味した結果、「企業と株主にとっての最適の選択ではないとの判断から、T-X機種選定に提案しない事を決定した」と明らかにした
同チームは、「ボーイングとSaab」チームと並び、完全な新機種提案で選定に臨むと予想されていたチームであった

同チームの候補となるはずだった機体は、昨年夏に「Mojave Desert」で初飛行試験を行ったと軍事メディアが報じ、その後SNSで流布された映像を同社が認めていた
●Northrop社は、当初BAE社製の「Hawk T2/128」をRolls-Royce社等と改良して参戦する検討もしていたが、最終的には新たな機体を設計する方向に取り組んでいた

数日前に撤退を発表した「Raytheon, Leonardo and CAE」チームは、「T-100練習機」改良型で参戦を狙っていたが、報道によれば、イタリア企業である「Leonardo」が大幅なコスト削減に対応できないことが撤退の理由だと言われている

残っているのは、1月に初飛行したばかりの新型機で臨む「ボーイングとSaab」チーム、「Lockheed Martinと韓国KAI」チームのT-50練習機改良型、そして詳細は不明だが「Sierra NevadaとトルコのTAI」チームである
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候補機種の具体的性能や特徴を詳細に把握しているわけではありませんが、極めて感情的かつ情緒的かつ恣意的かつ個人的な希望を「正直」に吐露させて頂きます。

T-X compe.jpgあんな韓国の企業KAIには絶対勝たせたくありませんし、Lockheed MartinはF-35だけで十分でしょう・・・。

一方で、初の固定経費契約となったKC-46A空中給油機に果敢に挑んでいるボーイング社は、自業自得かも知れませんが、度重なる開発トラブルに「自社持ちだし」で懸命に対処しており、どこかで「埋め合わせ」してあげたいと思います

またどこかで埋め合わせしておかないと、日本の「KC-46A」に「つけ回し」されても困りますから・・・

T-X関連の記事
「T-X提案要求書発出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-01
「ボーイングがT-X候補発表」→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-16
「T-X要求性能の概要発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-23-1
「シミュレーターが重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-21

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CAS能力対決:来年F-35対A-10 [米空軍]

Pleus.jpg発言日時場所が不明ですが、25日頃、米空軍F-35導入準備室長のScott Pleus准将が、2017年度予算関連法で求められているA-10攻撃機とF-35戦闘機のCAS(close air support:地上部隊支援攻撃)能力比較テストを、2018年早々に実施する方向で具体的検討を進めていると語りました

A-10攻撃機は冷戦期の対ソ連戦線で戦車阻止を狙いとして設計された航空機で、対空脅威の高い地域での使用は想定されていませんが、対ISILや対アルカイダ等、中東戦線で大活躍しており、A-10を早期退役させて運用経費や整備員等をF-35に振り向けたい米空軍の意向に反し、2022年までの運用継続が決定されています

A-10退役開始時期の判断については、F-35の運用態勢が確立した後に、A-10対F-35のCAS能力比較試験を行ってから判断する事となっており、2017年度を規定する国防権授法が「対決試験」の実施を空軍に命じています

Pleus准将は、CAS能力からすればA-10の能力が優れているだろうが、敵の対空脅威があるエリアでの活動能力はA-10にはなく、その差は決定的だと空軍側の主張を繰り返していますが、色々お騒がせのF-35ですので、議会の理解が得られるか不透明です

25日付DODBuzz記事によれば
A-10 4.jpg●Pleus准将は、法律により求められている一連の試験を「as early as next year」に実施することで計画を進めていると語った
試験内容や方法は、国防省の作戦運用試験&評価室が検討作成する事になっており、現在中身を検討してもらっていると説明した

A-10攻撃機は強力な対戦車を想定した7砲身からなる30mm機関砲を装備し、弾丸も約1200発搭載できる。一方でF-35は25mm機関砲で弾丸も約200発しか搭載できない。
F-16操縦者であるPleus准将も経験から、CAS用アセットとしてはA-10が優れているとの結果になると予想するが、あくまで敵の脅威がない環境での比較である

Pleus3.jpg●F-16能力の延長線上のあるF-35は、A-10が20nm以内に進入できないような脅威環境を想定して設計されており、F-35だけが同環境では飛行作戦を継続できることを念頭に置いてほしいと語った
●更に同准将は、この試験は単に両機種のCAS能力比較だけに止まってはならず、空軍指導層や議会による、今後の本分野への投資配分をどうするかの判断に資するものであるべきだとの考えを述べた
////////////////////////////////////////////////

A-10運用停止に強硬に反対している議員は対ISILを重視しすぎる傾向があり、Pleus准将ら米空軍幹部は湾岸戦争のような「空軍が主役だった頃よ再び」との思いが、又は熟練整備員をA-10からF-35へ早急に配置転換してF-35体勢を確立したいとの思いが強すぎるのでしょう。

Pleus2.jpgやっと最近になって中間を探る動きも見られ、対テロや不正規戦用に軽攻撃機を導入する検討が本格化し、春には米空軍が候補機首のデモ飛行を計画するようです。
A-10のような特殊な力強さを既存の軽攻撃機に求めるのは無理ですが、それなりの道が開けるかもしれません。

まぁ・・空軍戦闘機操縦者の「選民意識」が改まれば・・・の話ですが。

A-10攻撃機関連
「F-35整備員確保の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-14
「A-10全廃は延期へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-22
「シリアへ派遣」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-21
「米陸軍は全廃容認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-29

軽攻撃機のデモ確認を春に
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-21

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元NY市長が仲介:米イスラエルのサイバー協力強化へ [サイバーと宇宙]

Netanyahu cyber.jpg1月31日、イスラエルのネタニアフ首相が大規模なサイバー関連イベントで講演し2月中旬に訪米の際に、米イスラエル間のサイバー協力態勢を更に強化する提案を行うと明らかにしました。

どうやらこの提案は、イスラエルからの一方的な強化提案ではなく、トランプ政権のサイバー対処担当が先週既にイスラエルを訪れて下調整を開始しているようで、「出来レース」のようです

もちろん、事柄の性質上、協力強化の方向性まではネタニアフ首相は発言していませんが、トランプ大統領とネタニアフ首相が組むとなれば、何が飛び出すか判りません。

1月31日付「Fifthdomain」記事によれば
Giuliani cyber.jpg●1月31日、「CyberTech international」2017年次総会で講演したネタニアフ首相は、数千人の会議参加者に向け、「イランが当地域や西側の主要インフラへのハッキングを試みている。インターネットに接続されているモノは、悪意に満ちた奴らにハックされる可能性がある」と述べ、
●「だから来るワシントンDCでのトランプ大統領との会談で、私はサイバー協力を話題に取り上げるのだ」と聴衆に語りかけた

●そして同首相は、「米国とイスラエルはサーバー分野をリードする2大パワーである。米国が先頭を走っているが、イスラエルは直ぐそこで肩を並べる勢いがある」とイスラエルのサイバー能力を訴え、「両国間の政府間協力だけでなく、サイバー関連企業同士で何が出来るのかを考え、本分野における両国間の関係強化を進める事が極めて重要だ」と語った
●また同首相は、トランプ政権の「軍以外のサイバー問題担当:civilian cybersecurity issues」であるRudy Giuliani元NY市長と先週会談したと明らかにしつつ、両政府間で「重要な議論」が既に開始されているが、新政権と(更に)協力を積み重ねル事を希望すると述べた

Giuliani cyber2.jpg●先週イスラエルの国営放送に出演したGiuliani氏は、トランプ大統領から両国共同のサイバー委員会設置が設置できないかと要請されていると明らかにしている
Giuliani氏は今年1月にサイバー補佐官役に任命されているが、彼はNY市長を初めとする法執行機関での大きな業績の他に、民間部門のサイバー対策業務に16年間従事してきた経験を持っている

●またイスラエルは、世界人口の0.1%程度の人口しかないが、世界中の民間サイバーセキュリティー投資の約20%を受注するサイバー大国でアリ、ネタニアフ首相は「人口比率からすれば、イスラエルは200倍の働きを本分野で果たしている」と自信を見せている
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Giuliani氏については、NY市長として同市の治安を劇的に改善して重大犯罪を削減した功績ぐらいしか知りませんでしたが、サイバー問題にも実績があるんですねぇ・・・

でも、両国が新たな協力で何を目指すのでしょうか? ヨルダン川西岸地区への入植地増殖を黙認(陰で推奨)しそうなトランプ政権ですから、訪米時の両国合意では、中東7ヶ国からの入国禁止に見られるように、サイバー戦での人権側面のハードルが下がったり、攻撃的なサイバードメインの使用であったり、結構過激な協力枠組みが飛び出しそうな気がします。色々想像をかき立てられます・・・

最近のサイバー関連記事
「米空軍が兵器のサイバー対策室」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-05
「米軍サイバー機関の問題議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-14
「自ら創造したサイバー空間に苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-20

「サイバー脅威の変化と対処を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-21
「装備品のサイバー脆弱性に対処」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-02
「2017年予想イスラエル目線」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-02

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フィリピン大統領が米軍兵器の国内保管を拒否 [安全保障全般]

Sung Kim.jpg下記のドゥテルテ大統領発言に関し、1月31日、フィリピン駐在の新しい米国大使Sung Kim氏は米国はフィリピン内に弾薬貯蔵庫を建設する予定は当初から無いとし、兵器の貯蔵を懸念するような表現をした比大統領発言を否定した

そして同大使は、5カ所のフィリピン軍基地内に「facilities and structures」を構築する計画が2014年の合意に含まれていると説明しつつも、フィリピン指導者や国民から許しを得られなければ、その建設も不可能であると語った

まんぐーすの感想
ドゥテルテは、米軍装備がフィリピン内に「一時的」にしろ存在することで、米中紛争に巻き込まれることを毛嫌いしているのだから、弾薬庫であろうが、「facilities and structures」であろうが、反対するのだと推測します
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Duterte US3.jpg1月29日、フィリピン大統領はTV放映されている記者会見で、米中の戦闘に巻き込まれたくないから2014年の米比国防合意に基づき米軍が開始している米軍兵器の比軍基地内保管を認めないと語りました。そして、2014年の米比国防合意の破棄も示唆しました

当該会見は、フィリピン大統領が比軍と比警察幹部などの治安機関幹部との会議後に行われた会見であり、記者からの質問にその場で答えたものか、自ら積極的に発言したモノかは不明ですが、南シナ海近傍のフィリピン軍基地内に関連施設の建設を始めた米軍にとっては、ちゃぶ台返しの発言でしょう

Duterte.jpg2014年の米比国防合意は、米軍がクラーク空軍基地やスービック海軍基地から撤退した1990年代以降、中国の台頭を踏まえて数年の交渉を経てやっと合意した「米軍による一時的なフィリピン軍基地の使用」を認め、他の軍事協力も併せて推進する内容で、米国にとっては悲願の合意でした。

その後、比の最高裁判所まで「合意」の合憲性が争われ、やっと昨年ぐらいから米軍の比基地での活動が始まった矢先であり、米軍との軍事演習の中断などの動きもドゥテルテ大統領は見せていたものの、根本合意の破棄まで言及されては溜まりません。

1月30日付Mmilitary.com記事によれば
●1月29日、フィリピンのドゥテルテ大統領はTV放映記者会見で、米中間に生起する戦闘に巻き込まれる恐れがあるので、2014年の米比国防合意に基づき米軍が開始している米軍兵器の比軍基地内保管を認めないと発言した
●また同大統領は、米軍が比軍基地内に兵器保管施設を設けたなら、「米軍による一時的なフィリピン軍基地の使用」を認めると規定した2014年の米比軍事合意を破棄することを検討するとも発言した

Duterte US.jpg●ドゥテルテ大統領は、「米軍は兵器の持ち込みを始めようとしているが、私は米軍に対し止めろと通告している。私は兵器の持ち込みを許さない」と明言した
●2014年の米比国防合意は、両国の国防協力を定めた「EDCA:Enhanced Defense Cooperation Agreement」も含めて結ばれたが、比大統領はその合意の多くから引き始めている

●1月26日、フィリピンのLorenzana国防相が、今年早い時期に同合意で規定された施設を米軍が建設開始する予定だと述べたばかりであった。そして合意に記されていた3箇所の比軍基地名に触れ、兵舎や装備保管庫の建設が始まると説明していた
米側政府関係者は、これまでのところ、同大統領発言に対しコメントしていない
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Duterte US2.jpgドゥテルテ大統領は、トランプ政権の対フィリピン政策だけでなく、南シナ海政策にまで「強行偵察」「威力偵察」を実施してくれているようにも見えますが、米側の反応に興味津々です。

特定の中東諸国からの入国拒否問題で、最優先事項である対ISの有志連合国からも反発の声が上がるトランプ政権ですが、対中国の前線国家であるフィリピンとの関係をどう考えるでしょうか?

似たタイプの人物としてメディアが取り上げる2国のリーダーですが、似たもの対決は同様な方向に向かうのか・・・引き続き注目したいと思います

米比関係の記事
「米と比が細々とHA/DR訓練を開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-01-18
「航行の自由作戦に比基地は使用させない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-11
「ハリス大将:選挙後初の訪比へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-16
「米比演習の中止に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-08

「C-130が2機だけ展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-27
「比大統領南シナ海共同を拒否」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-15-1
「比空軍と米空軍が3日間会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03

日本とドゥテルテ大統領
「なぜ10月25日に比大統領来日」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-06

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