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米軍への精密誘導兵器供給が間に合わない [Joint・統合参謀本部]

JDAM-Empty.jpg11月号の米空軍協会webサイトが「Empty-Racks:弾がない爆弾搭載ポイント」ととの記事を掲載し対ISIL等の戦いで精密誘導兵器の使用が増加しており、細部は明らかにされて以内ながら、弾薬の十分な蓄積が失われていると警鐘を発しています。

一般市民への被害を局限したい前線指揮官の意向から、JDAMやHellfireミサイルやSDBの需要が急増しているのですが、米軍だけでなく危機感を募らせる中東諸国、またロシアを恐れる欧州諸国からも需要が急増しているようです。

一方で、米国の予算状況は未だ強制削減の悪夢から抜け出せずに暫定予算を繰り返し、例年ベースの予算しか確保できず、また製造企業も各種関連企業が各パーツを分担して製造していること等もあり、簡単に大増産が可能な状況でもないようです

米軍幹部の公式見解は「在庫減少を気にしているが、必要な任務の遂行には影響はない」と「から元気感」が漂うもので、実態が数字で明らかになることはないでしょうが、雰囲気を感じて頂くため記事をご紹介します

記事「Empty-Racks」によれば
JDAM-New.jpg米空軍が弾薬の保有レベルが危機的に低下していることを明らかにして1年が経過したが、依然として空軍は苦労しており、対ISILコアリション国の弾薬購入要求も断っている状態にある
●空軍は細部を開かさないが、前線の米空軍指揮官は「不足は真実だ。空の弾薬庫があちこちにある」、「弾薬備蓄量は、中東での戦いが開始以来、全米軍トータルで最低レベルに落ちている」と語っている

●今年4月、空爆用の弾薬不足が深刻さを増したことも受け、カーター国防長官が対ISILに野戦砲やアパッチ攻撃ヘリを投入すると発表し、6月頃から導入が始まり、多少は空爆用の精密誘導兵器需要が減る事が期待されている
●強制削減問題の中、在天予算で凌ぐ状況にある米軍は、通常予算ではない「海外緊急作戦費:Overseas Contingency Operations」で弾薬購入をまかなおうとしているが、手続きに時間がかかる事が問題である

●米空軍省の担当中将は、米軍の前線指揮官が安心できるレベルに備蓄量が達するまで、FMSによるJDAM等の海外提供には「No」である。正確には「今は応じられない」だが、対ISILに協力する諸国の要望にも対応できない状態

対リビア作戦は弾薬予算無し
SDB3.jpg弾薬不足が深刻化したのは、2011年のリビア作戦からである。米議会はイラクやアフガンで使用する弾薬予算は承認したが、リビア作戦には認めなかった。またリビア作戦に参加したNATO諸国が早々に弾薬を消耗し、米軍が貸し出す羽目になったことも大きかった
●ちなみに、ロシアの脅威が叫ばれる中でも、NATO諸国の弾薬不足は今も回復されておらず、今年7月のNATOサミットでも、NATO軍司令官が5年遅れとなっている弾薬備蓄努力を各国に訴えた

●米中央軍の空軍は2015年に28700発を対ISILに使用したが、2016年はそれを上回るペースで使用が進んでおり、多い時には毎日100発以上のペースとなる
米海軍と米空軍は「協力して」JDAMを調達していると報道官は言うが、在庫をシェアしていない。また米空軍は海外に貸した弾薬分の返却に新型JDAMを要求したりもしている

企業努力も単純ではない
●JDAMとSDB(Small Diameter Bomb)を製造するボーイング社は、キットの製造を毎日120から150に増産し、2017年末までに36500キットを製造する計画を立てている
無人攻撃機MQ-9が搭載する精密誘導兵器であるHellfireミサイルは、要員養成訓練用の使用も増加しており、増産を迫られている

SDB4.jpg●8月に米空軍長官は、ボーイングやロッキード以外にも製造メーカー拡大をしたい旨の取り組みを表明したが、物事はそう単純ではなかった。大企業が製造ライセンスを提供することには向かなかった
●JDAMなどの精密誘導兵器が登場した当時は、これほど大量に使用されるとは想定されず、レーダーやエンジンのように複数の製造企業を競わせる体制が必要だと考えず、法律の対象範囲とならなかったのである

●精密誘導兵器全体の需要が高まり、企業の製造部門が追いつかないこともある。例えば無誘導のロケット弾「Hydra rocket」の先端に装着するだけで誘導兵器になる、「Advanced Precision Kill Weapon System」も製造もそうで、3倍増に対応している
●爆弾製造が複数組織の共同作業であることも単純増産を難しくしている。例えばボーイングは誘導キットだけを製造しており、弾頭自体は米陸軍が空軍に提供しているだけで、これら関係者を組み合わせていくことが単純でないのだ
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弾薬の保有量は、基本的な作戦遂行上の重要秘密事項です
ですから、これくらい密かに話題になると言うことは、かなり深刻な事態になっていると見て良いでしょう

金目の問題だと思いますが、「勇猛果敢、支離滅裂」な空軍の世界では、最新の機体にだけ注目が集まり、弾薬予算は残予算で充当しておけ・・・的な収まりであることが多いのでしょう
ある日突然、大きな問題としてクローズアップされないことを祈ります

弾薬関連の記事
「リビア作戦での欧州惨状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-10
「韓国は地中貫通弾530発購入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-27-1
「JDAMキットで射程・全天候性向上」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-07

「ロケット弾を誘導兵器に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-12
「超巨大貫通弾MOP完成か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-18

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約60年ぶり:米空軍で下士官のソロ飛行 [米空軍]

下士官操縦者:何の問題もないじゃないか!

SoloF2.jpg3日、操縦者不足に悩む米空軍が開始した下士官へのパイロット教育コースの初級課程で、2名の1等軍曹がセスナ型練習機で初の単独飛行を行い、約60年ぶりの米空軍における下士官ソロ飛行となりました。

この2名は将来有人機の操縦者を目指しているわけではなく、攻撃任務を持たないRQ-4グローバルホーク無人偵察機の操縦者として、10月12日に開始された下士官用養成コースの第1期生4名の中の2名で、士官操縦者の同僚20名と共に教育を受けています

米空軍は無人機操縦者の不足問題への解決策として、2015年12月にRQ-4に下士官操縦者を導入することを決定し、千名以上の希望者の中から12名を要員として選定して段階的に教育訓練を開始しています。

4日付米空軍web記事によれば
●2名の下士官訓練生1等軍曹の「Alex」と「Mike」(フルネームは非公開)は、コロラド州の訓練基地で初級練習機(DA-20 Katana)による初の単独飛行を行った。「IFT:Initial Flight Training課程」の一環である
●RQ-4操縦者を目指す下士官操縦訓練生は、IFT課程を修了した後、「無人機計器飛行資格コース」と「無人機基礎コース」をテキサス州の基地で履修し、加州のビール空軍基地でRQ-4操縦の「基礎資格取得訓練」を受ける予定で、全て併せて約1年間のコースである

SoloF.jpg1912年に2名の米陸軍パイロットが初めて誕生したが、その中の一人が1等兵だった。その後のWW1やWW2では、数千人の下士官操縦者が訓練を受け任務に就いており、最終的に空軍准将で退役したChuck Yeager氏(初の音速突破で有名)も下士官操縦者としてのスタートだった
1961年までは、士官候補生の操縦者コースがあり、下士官として操縦資格を得たものは士官に任官する制度が存在していた。

●約60年ぶりで下士官単独飛行を行った1等軍曹「Mike」は、「空軍兵士には多くの機会やチャンスが与えられており、何かやりたいことがあれば達成可能だ」と20分間の初単独飛行の喜びを語り、「Alex」は「興奮しているがこれが終わりではない。集中を切らさず、全課程を修了できるよう努力する」と決意を語っている
●なお、第1期生4名のうちの1名は、医学的な理由によりコースを離れることとなった
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「Katana」との機種名が妙に気になりますが、それはさておき・・・

9月に米空軍報道官は、「2020年までに、RQ-4の操縦資格を持つ198名のうち、半数を超える操縦者は下士官となり、(将来的には)実際に日々の任務飛行を行うRQ-4操縦者の約7割は下士官となるだろう」と発言しています

RQ-4 Misawa4.jpgまた、他の攻撃型無人機への下士官操縦者採用については、「操縦訓練を行う下士官の様子から、下士官操縦者を他の無人機に導入するかどうかの資を得ることになる」、「RQ-4以外に下士官操縦者を拡大するかを語るのは時期尚早」とコメントしていますが、サイバーや宇宙分野で下士官が士官と同様の仕事をしていることや、無人機の操縦者不足に他の妙薬がないことから、採用拡大は既定路線でしょう・・・

9月の記事に続き、再度言わせて頂きます!
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13-1
●日本もRQ-4を3機導入しますがどうするんでしょう? 米国の下士官と日本の下士官は能力に差があるから、日本では下士官に操縦させないというのでしょうか?

日本の法制下ではより迅速に高度な判断が求められるから、戦闘機を始めとして操縦は士官でないとダメだというのなら、イラクのサマワの最前線で、実弾を装填したチームを率いて現場を仕切った立派な中堅下士官が多数活躍した陸上自衛隊とは異なると言うのでしょうか。南スーダンでも・

単に日本の士官操縦者の中にある「縄張り防衛意識」や「選民意識」や「手当も含めた特権意識」が、変化を阻害する根底にある・・・と考えるのは私だけでしょうか???

米空軍は無人機操縦者に苦しみ中
「RQ-4操縦者の7割が下士官に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13-1
「RQ-4操縦を下士官に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-19
「問題点と処遇改善の方向性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-11

海軍無人機関連の記事
「誰が海軍無人機を操縦するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-14-1
「映像:MQ-4初飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-23
「グアム配備MQ-4トライトンは今」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-05

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追加予算要求と米海兵隊F-35が飛行中火災! [亡国のF-35]

売り込み先行、試験後送りのつけが今・・・
更に550億円の追加開発経費を要求へ

F-35B-2.jpg7日付米国メディアが一斉に、飛行中の米海兵隊F-35で兵器搭載庫から火災が発生したと報じ、事故が2週間以上前の10月27日に発生していたと報道しています。また11月に入り、米国防省がF-35開発経費の更なる増額を要求することが明らかとなり、議会から厳しい声が上がっています

幸い、当該機は母基地である南加州のBeaufort海軍航空基地に無地たどり着き、パイロットも「長引く怪我はない:no injuries sustained」との事ですが、「原因究明中」で「分かり次第お知らせする」と海兵隊航空団の報道官は語るに止まっています

一方で同機が所属し、20機のF-35Bを保有する「第501攻撃訓練飛行隊」は、この火災事案後も飛行や訓練を継続している模様であり、日本の安全感覚からすると良く理解できない状態です
火災による機体へのダメージも精査中のようですが、米海軍の安全部局は本事案を2億円以上の損害が発生した場合に当たる「Class A mishap」に分類しているようです。

米海兵隊のF-35Bは、来年1月に岩国へ海外初展開を計画しており、先日は順調な着艦試験の様子をご紹介しましたが、無理矢理運用開始宣言のドタバタの余波か、不穏な事案が発生しました

垂直離着陸型のF-35Bでの火災は初ですが、空軍型F-35Aは原因未確定の9月23日のエンジン始動時の火災事故のほか、全機が飛行停止になった2014年の事案など、それなりに前科を抱えており、特に9月23日の機体尾部からの火災は、全く続報無しの不可解な状況が1ヶ月以上続いており、プンプン臭います。

F-35に関連する火災事案
●2016年9月23日
F-35A Eglin.jpg日本の1号機の受領式典が行われていた当日、別の基地で飛行訓練のためエンジンを始動したF-35A型機が尾部から火災を起こし、パイロットが慌てて脱出。けが人等無し。米空軍参謀総長は10月4日、「事故調査チームを派遣し、しっかり原因を究明する。まだ調査過程にある」と発言したが、その後1ヶ月経過しても全く追加情報無し

●2014年6月
F-35A型が離陸発進準備中に火災を発生。全てのF-35を飛行停止にして事故調査を行う。調査の結果、エンジンのローターの構造に問題が発覚し、対策実施中。将来的にはエンジンの設計変更も視野に

更に約550億円が開発&試験に必要
F-35 3-type.jpg4日、米国防省F-35計画室の報道官が、F-35開発の飛行試験や評価試験(IOT&E)のため、更に約550億円の経費が必要だと明らかにしました。既にF-35計画は当初の開発経費を5割上回っており、物議を醸しています

同報道官は、なるべく他のF-35経費から流用して国防省予算への影響を局限すると言っていますが、試験の終了時期も従来固守すると言い続けてきた2017年末から数ヶ月ずれ込むと言い始めておりマケイン上院議員等から厳しい非難が巻き起こっています

まずF-35計画室の報道官は
●2017年度予算に経費は発生しないが、2018年度と2019年度予算に飛行試験や評価試験(IOT&E)経費を追加要求する必要が出てきた
●約550億円の追加経費の半分は、2014年のエンジン火災対処やソフト「3F」開発の遅れに必要な予算で、約170億円は過去数年の間に明らかになった新要求事項で、残り110億円は2年前に削除した分のSDD(System Development and Demonstration)予算である
●このSDDは2017年末までに終了できると考えているが、3~4ヶ月遅れるリスクも出てきた。

マケイン上院軍事委員長は国防長官に書簡を
McCain5.jpg更なるSDDの遅れと1000億円は超えると予想されル経費増に、心の底から落胆させられた。そして国防省リーダー達の最近の行動や発言に、更なる疑問を呼び起こすことになった
●F-35計画室長のBogdan中将は4月に、SDDは予定通り終了するといい、追加経費も必要ないと断言していた。それなのにこの始末だ

●更に問題なのは、SDDについて米国防省内の試験評価局長は早くから、どんなに早くても2018年中旬頃までかかると予言しており、この見積もりの方が正しいことが証明された点だ
●カーター国防長官には、以下の10個の質問への回答を求める。SDDのスケジュールや追加経費、他の優先事業への予算的影響、将来のF-35計画への影響等に関する質問である
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11月1日に鮮やかな揺れる艦艇へのF-35垂直着陸映像を配信しながら、10月27日の飛行中火災事故を隠蔽していたことは、高等なメディア戦略だったのでしょうか。

「見事な着艦映像」は多くの方にご覧頂いていますが、火災隠蔽を耳にして、何となく着艦が大したことなく思えてきました

海兵隊と空軍F-35
「海兵隊F-35が見事な着艦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-05
「空軍トップ:火災原因未だ不明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-06
「9月23日の火災」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-24

2014年6月のF-35エンジン火災
「火災メカニズム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-04
「当面の対処と設計変更」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-29
「問題は軽易ではない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08

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トランプ当選をマキアベリと三浦瑠麗氏の視点で [ふと考えること]

気持ちの個人的整理のためにつぶやきます・・・

trump.jpg波風が立つことを嫌い、穏やかな老後を願っている典型的A型日本人のまんぐーすは、今考えれば、クリントン候補が最終的には勝つだろうと信じたい思いを秘めつつ各種予想報道を眺め、トランプ候補の失言を心の奥底で喜んでいたようなところがアリ、9日朝からの開票速報を「もしかして・・」の不安感一杯で眺めていました。

そして夕方の「トランプ勝利宣言」をTVで聞き、予想以上に「穏当で普通」の発言振りに、「もしかして、この人大丈夫なのでは・・」と不安感を何とか払拭したい気持ちで種々の報道を見るようになりました。
そして「はっとして我に返り」、思い出したのがマキアベリの「君主論」にあるこの言葉

人間というものは、危害を加えられると恐れる人から恩恵を受けると、普通以上に恩義を感じるものだ(君主論第9章)

トランプ氏からは何の恩恵も受けていないのですが、トランプ氏を「素晴らしい人物」だと信じたい思いに駆られている平均的日本人の姿を私自身の中に見いだしてしまいました。
10日の日本の株式市場の「予想外の反発」具合からすると、多くの日本人もそんな気持ちではないのかな・・と思います。

逆に、トランプ氏の選挙終盤での「ケツまくり戦術」が
どちらか一つを捨ててやっていくとすれば、愛されるより恐れられる方が、遙かに安全である(同第17章)
君主はライオンであると同時に狐であれ(同第18章) 
・・・を参考にしたのかな・・・と深読みしています

以下では、米大統領選挙分析で一貫して「トランプ強し」と発信を続け、結果が出た今になって分析の正しさが話題の国際政治学者・三浦瑠麗氏の9日付ブログ「山猫日記」記事の一部概要をご紹介し、皆様の頭の整理にも供したいと思います


トランプ強しを一貫主張の三浦瑠麗氏の選挙分析
MiuraR.jpg三浦氏はまず第一に北部の民主党支持と思われていた州における人口動態や投票率、地域の不満や労組票の離反を読み間違えたこと。これが従来の支持区分、共和党が「南部と中西部」、民主党が「北東部と太平洋岸と北部」という組み合わせの米国政治に、構造的転換をもたらす可能性を示したことを指摘。

第二に世論調査が人々の本音を反映していなかったこと。有権者が、女性蔑視発言について聞かれて否定的に答えるの当然で、何が一番大事な論点なのかをクリントン陣営が最後まで理解できなかったのではないかと指摘し、正攻法をとらず、トランプ氏の資質に焦点を絞ったのも戦略ミスだったと分析。

そして最も本質的な第三の点として、「トランプ現象の核心を理解できなかったこと」をあげ、「グローバリズムに対する否定」や「白人層の逆襲」の視点を一面的だと喝破し、最大の関心事は経済政策であることを最後まで理解できず、クリントン陣営がひたすら大企業バッシングと金持ち批判を繰り返すばかりで建設的な政策を打ち出せなかった点を指摘。

●一方のトランプ側が、「伝統的な共和党支持層を取り込みつつ、新しい有権者の獲得に成功した」理由として「中道の経済政策を語ったこと」を上げ、「小さな政府」が金科玉条の従来の共和党候補が決して打ち出せなかった、高齢者福祉は不可侵、公共事業の大盤振る舞い、一部の投資所得への増税を公約した点を指摘しています。その結果、トランプ氏は白人中上位層からも幅広い支持を


三浦氏の外交安全保障分析と日本への助言
trump2.jpg●トランプは、外交のプロ達が重視してきた経緯論はいったん脇に置いて、米国に課せられている足枷から逃れたい。国内政治を意識しながらゼロベースで考え、タフに交渉するするスタイル
●基本認識は、冷戦後の米国外交は、無原則に現実を積み上げ、無益な国際紛争に介入して米国の国益を損なった同盟国は、米国が提供する安全保障の上に胡坐をかき、責任とコストの分担が十分でない

●世界の外交筋が戦々恐々としているが、レーガン大統領当選時もそうだった。加州やテキサスから「カウボーイ達」が大量に政権に入り、ビジネス界や軍での経験を生かして従来の常識を次々と塗り替えた。レーガンはソ連への強硬姿勢を明確にし、新冷戦という新たな緊張を生んだものの、米軍の犠牲には一貫して慎重だった
トランプ大統領の外交を一言で表すとすれば、「意気揚々と撤退する米国」ということになろう。中国や北朝鮮と交渉して、米国の国益を確保する中で日本の国益が捨て置かれることもあるかもしれない。

日本にできることは、自分で考えて、自分で立って、自分で行動すること。相手はビジネスマンであり、双方に利益を見出せるようでなければ相手にされない。急にシッポを振っても軽蔑されるのが落ち
●経緯ではなく、米国が世界をどう見ているかの基本に立ち返るべきです。トランプ氏の中国に対する脅威認識は主に経済的なものであり、安全保障の観点ではほとんど脅威に思っていない。その点は、南シナ海有事や尖閣有事、朝鮮半島有事を想定したときにしっかり認識しておくべき

MiuraR2.jpg日米同盟の「片務性」や「在日米軍の駐留経費の損得」に関する回答要領を、この様なトランプ用に準備すべき
●なし崩し的な「思いやり予算」増額ではなく、限られた予算の中でも、米国の責任を一部分担し、通常兵力を増強するべきと思っている

TPPに関しては、様子見ではなく、曲がり角にきているグローバル経済を今一度活性化させるため、モノやサービス、環境や、労働や、公共入札などの分野で日米が主導して、国際的な標準を作り東南アジア市場を開放していくことが目的。日本の国益であった果実を取りに行くべき
●日本には、日本が独自に解決すべき問題がいくらでもあります。他国の大統領の暴言を気にしている場合ではありません

最後に「君主論」のマキアベリ節で締めます
Machiavelli2.jpg決断力のない君子は、当面の危機を回避しようとするあまり、多くの場合中立の道を選ぶ。そして、大方の君主は滅んでいく(同第21章)

どこの国も、いつも安全策ばかり取っていられるなどと思っては行けない。常に危ない策でも選ばねばならないと考えて欲しい。また物事の定めとして、一つの苦難を避ければ、どんな苦難にも遭わなくて済むなどと考えない方がよい(同第21章)
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trump abe.jpg一方で、今回の勝利に「最も驚き、困惑しているのはトランプ自身だろう」との巷の意見に1票入れたい気持ちもアリ、「英国のEU離脱」と「中国の混乱」と「トランプ大統領」と「中東の混迷」で惑星直列の大恐慌大混乱必至だとのご意見も気になって仕方のない「小心な日本人」代表のまんぐーすです。

三浦瑠麗女史が主張の「通常兵力を増強するべき」方向に進んだとしても、決して戦闘機命派や組織&職域防衛派の言いなりに進むことがないよう、「とぼとぼ」「ちまちま」と訴えるしかないまんぐーすです。

トランプの世界地図
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-10

三浦瑠麗さんの民進党分析
「代表選と蓮訪新代表」→http://lullymiura.hatenadiary.jp/entry/2016/09/16/010831

最近の色々考える記事
「ドゥテルテはなぜ10月25日に来日?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-06
「大局を見誤るな:J-20初公開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-02
「第3の波は日米韓海軍協力か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-21
「2016年版中国の軍事力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15

ご参考:トランプの世界地図
Trump-map1.jpg










Trump-map2.jpg
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米空軍が軽攻撃機の有用性確認を開始 [米空軍]

Paolu.jpg6日付Defense-Newsが、4月に米空軍が新技術や新戦略を検証するために立ち上げたミニ組織が、仕事始めに2つの課題に取り組もうとしていると報じ、その一つであるA-10攻撃機を補完する「軽攻撃機」の有効性を検証するため、複数の機種を調査確認していると紹介しています

オハイオ州Wright-Patterson空軍基地にある米空軍研究所(AFRL)内に設置された「Strategic Development Planning and Experimentation Office」は米空軍が限られた予算をどの分野に投資するかを判断するため、演習やシミュレーション等を通じて技術や戦略を確認しようとする15名程度で構成された組織です

4月の記事で本検討室を紹介すると
Pawlikowski6.jpg米空軍が過去1年かけて実施した「Air Superiority 2030」やWork副長官を中心に進められている「third offset strategy」に歩調を合わせ米空軍全体を統一した戦略計画を策定して空軍を導こうとするもの
●「技術分野」に特化したものではなく、作戦運用から兵站、ハードからソフト面まで含む検討を行って米空軍指導層に結果を報告するもの

10名程度の軍人と文民を核とし、更に米空軍内の作戦運用や兵站や計画部門のエキスパートを加え、ソフトとハードの両面から提言
●担当空軍大将は「戦略開発を活発化させる。third offset戦略とも緊密に連携させ、戦略長期計画と将来作戦運用概念も絡め敏捷性を重視」、「空軍の全ドクトリン専門家と前線の作戦運用者を結び付け(marry up)、今後30年のニーズを踏まえ、新技術をデモやウォーゲームや実験を活用して確認し投資につなげる」と説明

●この組織設置の背景を同大将は、「米空軍が長く対テロに集中しすぎ、また組織変更も相次いだことから、戦略的な思考過程を経ずに目先の装備品開発に没入しすぎた反省を踏まえている」と解説
●本検討チームを支える実験やモデリング検証の予算は既に確保されており、エネルギー兵器や超超音速兵器等の可能性を探る取り組みとなろうとも同大将は語った

最初の検討課題の一つは軽攻撃機
Blackhurst.jpg●同検討室長のJack Blackhurst氏は、「複数の軽攻撃機製造企業と協力し、一連のテスト飛行を行っている」と語り、検証実験は135日に渡るもので、軽攻撃機がA-10攻撃機を補完する有用で低コストの選択肢かどうかを判断する資を提供すると述べた
米空軍はA-10を早期退役させ、その整備員をF-35整備員に活用したい意向を持っていたが、議会等からの激しい抵抗で少なくとも2022年までは退役を延期することとなっている

●米空軍のJames Holmes戦略計画部長は、軽攻撃機がA-10の後継機ではなく、あくまでも補完機だと語り、老朽化で維持費が高騰するA-10継続運用費負担を軽減するため、多くのオプションを空軍リーダーに提示している
●その中には、アフガン空軍に提供した「A-29 Super Tucano」、A-29とアフガン提供機を激しく争った「AT-6 Wolverine」、また次期練習機候補の一つである「Alenia Aermacchi M-346」等があり、A-10でなくとも対処可能な過激派対処に活用する事を想定している

●15名で構成される検討室は、秘密事項である検証の様子の細部に言及しなかったが、米空軍リーダーが厳しい予算の中で投資の焦点をより細かく絞るために設置され、今後30年間の航空優勢獲得を確かなものにすべく活動する
A-10 turn.jpg●「軽攻撃機」を含め、2つの検証対象分野を同検討室は考えており、もう一つについても承認が得られれば検証実験棟を開始する予定である

1990年代以前は、装備品を具体的に製造する前に、もっと盛んに実験や試験を行い、技術やコンセプトの有効性を確認してから具体的製造に移行していた。
●この時代に立ち戻り、事前検証やシミュレーションやプロトタイプによる有効性確認プロセスを活性化し、製造ラインを稼働させる前に確認しなければならない。
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4月にこの検討室立ち上げが発表された際、空軍研究所を所轄するPawlikowski司令官は、「エネルギー兵器や超超音速兵器等の可能性を探る取り組み」を検証することを想定していたようですが、目の前の「航空機もの」が最初の検討対象になっていることに危惧を覚えます・・・

もう一つの検討対象が気になりますが、今後の報道や発表を待ちましょう。米空軍研究所(ARFL)という、セクショナリズムと既得権と、頭の固い研究者が多数いそうな組織の中で、どれだけ先見性を発揮できるかに注目です

A-29 軽攻撃機の映像


「映像解説A-29」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-02
「泥沼化:アフガン軽攻撃機の選定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-23

関連の記事
「ケンドールが航空機投資を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-25
「Penetrating Counter Air検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「2030年検討の結果発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-02

Third Offset Strategy関連の記事
「CSISが特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「相殺戦略を如何に次期政権に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15

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一部のF-35部品の修理担当国発表 [亡国のF-35]

US-2を12機インドに輸出との朗報の中ですが・・・

F-35 Sun-Set.jpg7日、米国防省のF-35計画室は、F-35部品の修理可能部品774個の中の65個部品について(海外の)修理担当国を発表し、英国とオランダと豪州らが分担して担当することが明らかになりました。
発表になった分担は期間が定まっており、2021年~2025年と、2025年以降とに分けて担当範囲を発表しています

今回発表になった65部品については、今年3月に共同開発国と購入国の修理担当に興味のある国に対し、関連修理能力等についての情報提供を求め(request for information)、その評価結果に基づき7日の発表に至ったようです

なお残りの709部品については、10月に関係国に情報提供要望を発出して選定作業に入っており、来年段階的に発表になる模様です
日本の企業が「どれだけ積極的に応募しているかは不明」ですが、今回発表分には日本の名前はなく、2025年以降に韓国の名前がちらり出て来る点は気になります

65個の部品の修理分担
(修理=MRO&U:maintenance, repair, overhaul and upgrade)

・2021年~2025年
---英国は48部品で、「electronic and electrical components, fuel, mechanical and hydraulic systems and ejection seat等」を担当
---オランダは14部品で、「landing gear」に集中
---豪州は3部品で、「life support systems」に集中

・2025年以降は、欧州とアジア太平洋で分割配分
---欧州では英国が51部品で、オランダが14部品
---アジアでは豪州が64部品で、韓国が1部品

7日付Defense-News記事によれば
F-35 luke AFB2.jpg●(3月に65部品に関する選定作業が始まって以降、)精力的に航空産業の修理能力キャンペーンを行ってきた英国にとって、7日の発表は大勝利であった。英国政府は、数百億円規模の修理事業と多くの雇用を英国にもたらすと、発表を大歓迎している。
●発表を受け、BAEとNorthrop社は、それぞれ発表を歓迎し、英国企業や英国民と緊密に連携していくことを楽しみにしていると声明を発表した

●Fallon英国防相も、「英国が欧州におけるF-35部品修理の拠点となる事は、英国のハイテク産業と国防産業に極めて大きな朗報である」、「英国産業界の能力へのお墨付きを与えるもので、英国の輸出を高めるものだ」と声明を発表している
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Defense-News記事には記述がありませんが、F-35の維持整備に場所に関しては、継続的に効率性やパフォーマンスをモニターし、最も費用対効果の高い場所を継続的に追求するのが基本原則だったと「記憶」していますので、「2025年以降」の分担が固定ではないと思います

F-35 luke AFB.jpgただし最初に受注した国の工場がノウハウや設備面で有利に立つのは間違いなく、推測ながら、固定化のモメンタムは高いのでしょう。EU離脱でも、英国が踏ん張っているのが印象的です(韓国に一部でも修理されたくないとの思いは脇に置いて・・・)

継続してねちっこくご紹介している「亡国のF-35」模様ですから、F-35の行く末を考えると修理に手を上げる国も勇気がいるのでしょうが、豪州の軍需産業基盤がどれほどか? 日本との差はどうなの? と考えるとき、日本側の熱意が「どうなの?」に興味津々です

F-35の組み立てや修理分担
「悲劇:日本でF-35組立開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「豪州と日本が分担」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-18
「欧州でのF-35整備拠点決定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-12-1

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カーター長官:DIB提言から、まず3つに着手へ [カーター国防長官]

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CSIS DIB.jpg10月28日、カーター国防長官はCSIS主催の第3の相殺戦略関連イベントで、彼自身が3月に設置した国防革新評議会による10月5日の提案(11項目)の中から、3項目に着手すると語りました。

残りの8項目の扱いについては言及がなく、言及した3項目についても細部は不明ですが、とりあえずスピード感溢れるカーター長官の動きをご紹介しておきます

でも、新政権での新たな国防長官がこれらの諸施策をどう扱うか不明な中、冷ややかな見方も国防省内にはあるようです。

しかしカーター長官自身は、「今私が語っている構想は、将来の国防長官にとっては当たり前のことになる。そして更なるモメンタムや制度的な基礎が確立され、発展しなければならない」、「国防省内にある変革を妨げる部分を取り除き、国防省を改革思考に意識改革し続けねばならない」と語っています

以下では、まず着手する3項目を簡単にご紹介します

Chief Innovation Officer配置
何時、誰がについては言及しなかったが、「Chief Innovation Officer」の配置を行うと語った
●そして「多くの組織が同様のポストを設け始めており、改革を競って行う環境構築に着手している。例えばIBMやインテルやグーグルである。我々も後に続き、勤務者を動機付け、革新的アイディアを出し合う雰囲気を生み出したい」と表現した

特定技術者の採用制度改革
DIB3.jpgコンピュータ科学者やソフト技術者の採用に新たな取り組みを開始する。
●この一連の取り組みでは、国防省のコンピュータ科学分野を中核となる科学分野に育てるため、ROTC制度から奨学金制度等々の様々な取り組みで、国防省における次世代の科学や技術リーダーを確保育成する事を目標にする

一般に大学生は、時間の経過と共に自動的に昇進するようなエスカレーター式の人事管理を求めておらず、ジャングルジムを上るように、様々な挑戦を通じて高見を目指すようなキャリアを望んでいる
●国防省は、この様な多くの人の望みに答えるような経歴管理を認知すべきである

ディープラーニングの研究所設置
DIUx-2nd  4.jpg機械学習への投資を拡大し、研究所「virtual center of excellence」を設置し、「既に本分野で業績を上げている企業や大学等に、我々の目標に参画してもらえるよう」な態勢を整える
●本分野の主担当は(シリコンバレーやボストンで企業の最新技術を取り込む出先機関として活動を開始した)DIUxが行い、機械学習の「prize challenge」を企画させる
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CSISの関連webページ
https://www.csis.org/events/assessing-third-offset-strategy?block2

政権交代直前の今のタイミングで「Chief Innovation Officer」を引き受けてくれる人がいるのか? 研究所「virtual center of excellence」が短命に終わらないのか等々、突っ込みどころはあるのですが、カーター長官の使命感に免じて、期待して見守ることと致しましょう・・

特定技術者の採用に関しては、結局「金目でしょ・・」との声を多く耳にするので、こちらも頑張って頂きましょう

10月5日のDIB初度会議の様子
「DIBの中間報告から8つ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-11

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ドゥテルテはなぜ10月25日に来日したか? [ふと考えること]

ドゥテルテは最初の特攻隊に敬意を表したのか?

duterte-J.jpgドゥテルテとは今話題のフィリピン大統領で、米国に対する過激な発言や、中国の習近平と「ガムをかみながら握手」しつつ多額の援助を引き出した興味が尽きない指導者です。
一方で、日本に対する感情は極めて良好で、2013年には米国旅行を希望する家族を押し切り、家族旅行で日本を訪れて長野でのスキーや東京観光を楽しんだ人物でもあります

また、フィリピンでも最悪の犯罪発生率だったダバオの副市長と市長勤める中で、「東南アジアで最も平和な都市」を標榜するまでに治安を改善させた功績が国民に支持され大統領になった人物ですが、そのダバオ市長時代に私財を投じ太平洋戦争時に米国と戦い、フィリピンが米国から独立する基礎を作ってくれた日本人の墓地に記念碑を建ててくれた人物でもあります

duterte-J4.jpgダバオ市と日本人の関係は古く、戦前、貧しかった日本人が約2万人も職を求めてダバオに渡り、紙幣の原料でもあるマニラ麻を栽培して生活しました。この日本人の活動はダバオに産業を興し、ドゥテルテ大統領は日本人がダバオの発展に貢献してくれたと今回の来日で安倍首相に感謝しています。

その他、戦後日本が、フィリピン政府とミンダナオ反政府ゲリラとの橋渡し役を務めてくれたことも評価しているそうです。

更にドゥテルテ大統領は、2013年3月に発生した東日本大震災に際しダバオ市長として海外のどこの自治体よりも早く「震災で、住む家を失ってしまった方は、ダバオで何人でも引き受けます。避難所としてではなく、楽園となるよう市を挙げて歓迎します。ダバオ市で役に立つことがあれば何でもします」と表明してくれていたことが、今回の訪日にあわせて話題になりました

邪推:なぜ10月25日に来日したか?
duterte-J2.jpgドゥテルテ大統領は10月18日~21日に訪中し、20日には習近平首席とスーツ姿で会談したが、その後の合意文書調印式ではガムを噛みながら、しかも途中から居眠りする様子が放映されるなどの態度をしめした
中国主席は、積極的な投資を約束すると共に、欧米が人権侵害とみる麻薬撲滅対策に理解を示すなど、大盤振る舞いの姿勢で「雪解け」を演出したが、南シナ海問題で特に進展はなかった模様

●その後フィリピン大統領は一端帰国し、改めて25日から訪日を開始。到着後の夕食会は岸田外相がホストを勤め、「仕事の具体的話はしていない」とのコメントを残しているが、大いに盛り上がった様子が外交筋から伝えられている
ではなぜ直接中国から日本を訪問せず、一端帰国して25日から訪日したのか。ここでは多くのフィリピン人の心に今も残り、ドゥテルテ大統領が資材を投じて慰霊碑を建立してくれた日本兵の作戦に関係しているのでは・・・との仮設を立てて考えます

Sikisima.jpg1944年(昭和19年)10月25日、日本軍が最初の「特攻隊」を編制して出撃させたのがフィリピンであり、その「敷島隊」5名はフィリピン各地で名前が今も知られ、慰霊行事が今でも行われています
ドゥテルテ氏はダバオに私財で慰霊碑を建立した当初から、毎年娘を必ず連れて慰霊行事に参加していたようです。そして今回の訪日で、米国の植民地から解放してくれ、地元経済の基礎を作ってくれた日本軍と日本人に対する礼を天皇陛下に直接述べるため、10月25日を選んだののではないかと「邪推」しています

岸田外相との夕食会でも、安倍首相との首脳会談でも、ドゥテルテ大統領は祖国フィリピンを代表し、歴史的観点に立って日本への尊敬と感謝の思いを伝え、今後の関係を構築したいと述べたのではないかと推察しています
duterte-J3.jpg●日本政府が今の時代に、特攻隊の精神を讃える外国首脳の話をオープンに出来るはずはありませんが、一方で米国に対するものとは全く別次元の感情を日本に持つフィリピン指導者と、楽しい食事や話が日本首脳は出来たであろうと想像します

●中国への対処を考える上で、邪推したフィリピン大統領の日本への感情と米国への反発が、単純にプラスになるとは思いませんし、東京裁判史観に反する「特攻隊」の話題化が対中国の米国同盟にプラスであるはずもないでしょう
●それでも、東京裁判史観で縛られた現代日本人の日本軍への偏った視線が、アジアに広く残る日本軍への極めて高い評価に向く切っ掛けになればと思います

最近のフィリピン関連記事
「比が米軍に南シナ海共同警戒中止を通告!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-08
「C-130が2機だけ展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-27
「比大統領南シナ海共同を拒否」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-15-1

「比空軍と米空軍が3日間会議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03
「EA-18G電子戦攻撃機が展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-18
「国防長官が交代派遣発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-16

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映像:F-35Bが揺れる艦艇に見事な着艦 [Joint・統合参謀本部]

F-35B 3rd-test.jpg11月1日DODBuzzは、米海兵隊がサンディエゴ沖の艦艇で行っている、F-35B最後の艦艇運用試験の映像を公開し、米軍事メディアが「今まで見たことがないレベル」の素晴らしい垂直着艦だと報じています

米海兵隊のF-35は、2015年7月31日に垂直離着陸型F-35の初期運用態勢確立を宣言しているのですが、「3回目で最後の艦艇運用試験」と言うことは、地上基地からだけ運用が可能な体制で、空母や艦艇からはまだ準備中だったようです

1日公開のF-35B着艦映像


11月1日DODBuzz記事によれば
米海兵隊のF-35Bは、2017年早々の日本への作戦展開に向け、「3回目で最後の艦艇運用試験」を強襲揚陸艦(USS America)で開始したばかりである
今回の最終段階試験で海兵隊は、波の荒いより困難な環境での運用に挑んでF-35Bの運用限界を検証しようとしており、うねりが2m程度の環境での艦艇着艦を試みている

F-35B-test.jpg●公開された映像では、F-35Bの垂直着艦がMV-22の広報から撮影されており、数秒でホバリング体勢を確立したF-35が、水しぶきを上げながら甲板に接近し、精密な着艦を見せている
●映像からは、艦艇の甲板が海のうねりで上下左右に揺れているのが確認できる

試験は今後約3週間継続され、最大搭載状態で最大性能を確認する予定で、2.5m程度のうねりまで試験で確認する予定だ。
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先日は、空母艦載型の米海軍F-35Cの着艦誘導装置が素晴らしく、着艦やり直しがほとんど無いことをご紹介しましたが、垂直離着陸型も着艦能力が素晴らしいとなれば、海上プラットフォームにおける運用上の効率性や経済性はかなり向上するのでしょう。

「うねり2.5m」の海の揺れがどの程度大変なことなのか語れず、この映像の着艦が過去と比較できないのですが、詳しい方にぜひご感想を伺いたいです

米海軍と海兵隊のF-35
「岩国の次は中東へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-03-1
「海兵隊F-35は1月に岩国展開」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-25
「海軍版F-35Cの着艦精度がすごい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-22
「海兵隊F-35がIOC宣言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-28

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トルコがF-35追加購入へ [亡国のF-35]

よく分からない米国とトルコ関係

F-35 Sun-Set.jpg10月28日、トルコの首相や国防相らで構成するトルコ軍装備品調達を審議する会議で、F-35の追加購入が決定した模様です。
追加と言っても、トータルで116機購入予定とは言うものの、今回の追加購入の規模は明らかになっていません

トルコはF-35共同開発国で、F-4戦闘機とF-16戦闘機の後継機種としてF-35を購入決定しましたが、2011年3月、米国がF-35の「source codes」提供を拒否したためF-35の発注を中断しており、この交渉は継続していると考えられている

また2013年1月にも、「トルコは独りぼっちになりたくない。(他国がF-35調達に消極的になる様子を見て)心理的な要因が作用した」と高官が語り、F-35のコストや技術的問題を理由に、予定していた2機のF-35初度調達の再度延期を決定した経緯があります。

そしてついに2014年5月6日、やっとの事で初度発注を政府決定しましたが、その際の購入機数は僅か「2機」

2018年に初号機を受領すること以外、調達予定の116機が何時までに必要なのか承知していませんが、まだまだ紆余曲折がありそうですし、現在の米国とトルコの関係を考えると、本当に「116機」購入するのか極めて不透明だと言わざるを得ません

10月31日付Defense-News記事によれば
Turkey USA.jpg10月28日、トルコ首相、国防相、軍参謀総長らで構成するトルコ軍装備品調達を審議する会議(トルコ名SSIK:Defense Industry Executive Committee)で、F-35の追加購入が決定された
●トルコは、建国100周年の2023年までに、F-35と新規開発する国産戦闘機の2機種体制を構築したい意向を持っている。

●同会議では、F-35追加購入も含めて12個の議題が審議された。
●例えば、既に国際的な機種選定を経てガルフストリームG550を2機調達することになっている空中指揮統制機の件も話し合われ、維持整備をトルコ航空が担当する方向が確認された

●またトルコ海軍関係では、25機保有するSH-60B Seahawkヘリ改良版である「S-70B」の近代化に関する選定作業についても議論された
●その他には、海洋監視システム(Integrated Maritime Surveillance System)、サイバー防御センター(cybersecurity and defense center)、電子戦指揮統制、電子戦統合データバンク、次世代軽装甲車両等々について議論された

この会議が開催されたのは7月15日のクーデター未遂事案以降初めてで、関係政府高官は「ショックの時期は過ぎ、物事が動き始めた」、「国産の次期戦闘機については次回の同会議で議論されるだろう」と語った
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Turkey USA2.jpgこの会議で議論されたテーマの装備品からすると、トルコと米国はそう簡単に関係を断ち切ることは難しそうです
トルコ大統領がプーチンや中国首脳と兵器について協議したとしても、全てではないにしろ、多くは米国製に頼らざるを得ないでしょう

しかし、現在の諸情勢からすれば、トルコのF-35「116機購入」も極めて「やわやわ」な数字と感じざるを得ません

「F-35死のスパイラル」に向け、英国やイタリアやノルウェー等々と並び、トルコも大きな貢献者になる可能性大でしょう

トルコとF-35
「トルコが2機購入を発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09-1
「再びF-35初度発注へ!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-23

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無人海洋ISR機MQ-4C飛行隊が編制完結 [Joint・統合参謀本部]

機体はなく、2018年運用開始だけど・・

MQ-4C 1.jpg10月25日付米海軍協会web記事は、28日に米海軍の無人海洋ISR機MQ-4C(Triton)部隊がフロリダ州のJacksonville海軍航空基地に編制されると報じています。

残念ながらまだ機体は同基地に到着しておらず、約130名の兵士も同基地を離れて訓練を行っているようですが、2017年末に最初の機体を受領し、2018年に初期運用態勢を確立してアジア太平洋で活用する計画があるようです。

また、同基地に所在するP-8対潜哨戒機との連携運用がMQ-4Cの鍵であることから、このような立地になったようです

ちなみにMQ-4Cは、米空軍の高々度無人偵察機RQ-4グローバルホークを海面監視用に改良した機体で、空軍用と異なり低高度を長時間連続飛行することから、他機との衝突防止装備や着氷防止装備などを備え、かつ海上や潜水艦捜索のためのセンサーを搭載しているようです

10月25日付米海軍協会web記事によれば
MQ-4C 2.jpg28日、最初のMQ-4C飛行隊である「Unmanned Patrol Squadron (VUP) 19」が、フロリダ州のJacksonville海軍航空基地に編制される。
●同飛行隊は、P-8対潜哨戒機の飛行隊も所属する「Patrol and Reconnaissance Wing 11」の配下に編制され、P-8との連携運用が円滑に進むよう準備が進められる

●MQ-4Cの操縦者はPatuxent River海軍航空基地で、同機の試験飛行操縦者から訓練を交代で受けており、整備員達は加州のPoint Mugu海軍航空基地で訓練を行っている
来年1月には、MQ-4Cの訓練装置がJacksonville基地に提供され、要員の訓練に活用される予定

●同飛行隊のメンバーはMQ-4C自体の運用の他に、P-8対潜哨戒機の運用者達と共に、2つの海洋監視偵察機を如何に組み合わせて作戦するかの戦術、技術、手順(TTP)を練り上げる任務を付与されている
●担当幹部は「対潜水艦作戦で、どのように協力し、人と機材を組み合わせるか。長時間在空可能なMQ-4の多様なセンサーから提供される情報を、如何に入手して活用するか等々を検討する」と述べている

MQ-4C5.jpg●また同幹部は、OODAループの「observing, orienting, deciding and acting against a problem」の中で、連続長時間作戦可能なMQ-4は最初の2つ「observingとorienting」の状況認識で大きな貢献が可能で、P-8は後半の2つに集中できるのではと考えている
●MQ-4C飛行隊は、無人ヘリMQ-8が有人ヘリMH-60と共に運用された教訓を参考にすることが出来るが、この2種類のヘリは同一飛行隊で運用された点が異なっている

●またMQ-4Cは、その前進であるBAMS-D(Broad Area Maritime Surveillance Demonstrator)の試験運用の教訓も活用することが出来る。BAMS-Dは第5艦隊エリア(中東)で、海洋パトロールを数年間試験実施した実績がある
米海軍はMQ-4C導入に、段階的な「learn, grow, learn, grow」姿勢を取っており、初期の訓練や戦術開発を米本土周辺で行い、2018年頃の初期運用態勢が近づく頃にはグアム島周辺でも運用経験を積む方向である

●そして初期運用態勢宣言後は、ニーズの高い第7艦隊エリア(アジア太平洋地域)で使用したいと考えている。その際、機体はJacksonville基地から遠隔操作され、整備員は機体の展開先で作業を行うことになる。しかし、任務展開していない時に機体をどこに置くかは定まっていない
MQ-4Cの2番目の飛行隊(VUP-11)はワシントン州のWhidbey Island海軍航空基地に設置される予定である。機体は更なるセンサーを搭載予定で、2020年代にEP-3Eの後継機に育てる方向である
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MQ-4C4.jpgMQ-4の運用が安定したら、RQ-4の様に日本が買わされる可能性極めて大です。海上自衛隊の皆様、特にP-1部隊の皆様はご注意アレ!

2013年当時は、グアム島配備が2016年後半との予定が示されていましたが、既に2年遅れています。予算が厳しいことも大きな理由だと思いますし、技術的な問題もあるのでしょう。

また段階的な「learn, grow」の姿勢もあるのでしょうが、別の背景には、無人機導入で職を奪われる有人機操縦者への「たっぷり配慮」も必要だからでしょう。定年による自然損耗や機種転換のペースにあわせての無人機体制の確立でしょう

また、米空軍で無人機を急増した結果、無人機操縦者の経歴管理や処遇が疎かになり、離職者が大量に出て任務をまかなえず、RQ-4には下士官操縦者を採用せざるを得ない状況に追い込まれており、この辺りも米海軍を慎重にさせている要因の一つでしょう

海軍無人機関連の記事
「誰が海軍無人機を操縦するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-14-1
「映像:MQ-4初飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-23
「グアム配備MQ-4トライトンは今」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-05

米空軍は無人機操縦者に苦しみ中
「RQ-4操縦者の7割が下士官に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13-1
「RQ-4操縦を下士官に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-19
「問題点と処遇改善の方向性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-11

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大局を見誤るな:J-20初公開に思う [中国要人・軍事]

J-20 Zhuhai.jpg1日、広東省珠海で開幕した「第11回中国国際航空宇宙博覧会」で、中国空軍のステルス戦闘機?「J-20:殲-20」が初めての一般公開飛行を行いました。

改良を重ねつつ、試作機が5番機か6番機まで製造されていると言われていますが各種報道から初飛行の様子を振り返ります

そしてこれを契機に改めて、ゲーツ国防長官(当時)の言葉、「米国に敵対しようとする国は、戦闘機VS戦闘機、艦艇VS艦艇などの通常兵器競争を米国に仕掛けて、破産する道を選ぶだろうか?」との言葉に思いを致し、「J-20騒ぎ」で悪のりするであろう戦闘機命派を嘆き、日本への脅威の本質である弾道・巡航ミサイルやサイバー・宇宙・電子戦の脅威を訴えておきたいと思います

各種報道より「J-20」初披露の様子
J-20 Zhuhai3.jpg公開飛行は、同博覧会の開幕式直後に行われた。2機の「J-20」が会場上空に姿を現し、1機はすぐに飛び去り、残りの1機は旋回して再度、会場の前を低空飛行で通りすぎ、急上昇して上空に消えた僅か約1分間の初お披露目だった
●「J-20」は四川省で開発が進められ、2011年1月に初の試験飛行を行った。米軍のステルス機F-22やF-35に似た形状や装備が外観上の特徴から、米軍機(サイバー戦で情報入手)を模倣してしているのでは、との見方が絶えない

低空で飛行しなかったにもかかわらず、飛行時の騒音が著しく激しかったと伝えられているが、以前の試験飛行より想像以上に「operational」だったとの印象を持つ者も居た。
●「weapon bays」も閉じたままだったが、モックアップにあった「EOTSのようなunder-nose pod」が確認された

胴体下には、F-22やF-35が装備するような「レーダー反射面積増幅器」を装着し、観客がRCSを測定することを防止していた
J-20以外では、専門家が南シナ海の埋め立て島への物資補給用ではないかと分析している新しい大型のAG600 flying boatが展示されている。中国側は、同機を捜索救難と消防用だと主張している

大局を見誤るな:J-20初公開に思う
J-20 Zhuhai2.jpg●ゲーツ国防長官(当時)の言葉、「米国に敵対しようとする国は、戦闘機VS戦闘機、艦艇VS艦艇などの通常兵器競争を米国に仕掛けて、破産する道を選ぶだろうか?」の意味を再度考えてみたい。この言葉は2009年のフォーリン・アフェアーズ誌に掲載された論文「A Balanced Strategy」で使用され、その後も多少表現を変えつつも、繰り返しゲーツ長官が訴えていた言葉である

●別の場でゲーツ氏はこの言葉を説明するように2011年当時、「中国のステルス機はゼロだが、米軍は200機以上保有している(現在はF-35運用開始を踏まえ、ゼロ対300機とも言える)。また海軍艦艇の総トン数は、世界1が米軍だが、世界2位から14位まで合計してやっと米軍と同規模となる。
●しかも「世界2位から14位のうち、2ヶ国以外は全て米国の同盟国か友好国だ」、更に「米海軍が保有する艦艇搭載の精密誘導兵器の数量は、世界2位から14位の合計の2倍以上だ」と述べ、中国の立場になれば、通常兵器で米国と正面から戦おうなどとは考えないだろうと喝破した

●ゲーツ氏のようにズケズケとものを言う幹部は今はいないが、米国防省が毎年発表する「中国の軍事力」レポートは、中国が高列度の短期戦で地域での紛争に勝利する事を目指しており、そのため弾道・巡航ミサイルで作戦基盤を緒戦で叩き、サイバー戦や宇宙戦や電子戦で米軍が依存するネットワークを寸断麻痺させる事を目指し、着実に力を蓄えていると毎年記述している。
●「中国の軍事力」レポートに限らず、米国の主要シンクタンクもこの様な視点で中国の軍事脅威を捉えており、最近米空軍が取り組んでいる「2030年代の制空検討」においても、速度や機動性と言った空中戦能力よりも、遠方からの活動を意識した航続距離を重視する方向性が示唆されている

J-20 Zhuhai4.jpg中国空軍が「J-20」に何を期待しているのか定かではないが、日本の戦闘機命派が期待しているような空中戦能力を追求しているとは考えにくく、高価値航空目標攻撃や突破型戦闘爆撃機的な役割を狙っていると考えるのが自然だろう
●今後この「J-20」をどのように日本の戦闘機命派が評価するかは、彼らの脅威認識の「リトマス試験紙」となり得る。
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補足することはありません
末尾にご紹介した「ロバート・ゲーツ語録100選」がオススメです! 安全保障感覚の「体幹強化」にどうぞ!

論文「A Balanced Strategy」
http://www.comw.org/qdr/fulltext/0901gates.pdf
https://www.foreignaffairs.com/articles/united-states/2009-01-01/balanced-strategy

関連の記事
「Balanced Strategyを振り返る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-27
「戦闘機や艦艇に囚われている」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-09

「2016中国の軍事力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06

「大幅改良J-20が初飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-20
「IISS:J-20は大した事ない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-08
「映像と評価中国ステルス機J-20」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-30

ロバート・ゲーツ語録100選
http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19

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屋根崩壊:核兵器関連施設の惨状 [ふと考えること]

NNSA aging3.jpg10月21日付Defense-Newsが、長年に渡りメンテナンスや立て替えが先送りされ続け、実際に崩壊が始まっている米軍核関係の研究機関や開発施設の惨状を伝えています。

最近は、顧みられなかった核兵器の維持更新にやっと腰を上げ始め、ICBMや戦術核爆弾、更に戦略爆撃機の後継開発や延命措置の具体的検討が始まった様子をご紹介してきましたが、注目度が低いながら、緊急性の高いのがこの関連施設の改修です

カーター国防長官も9月27日にニューメキシコ州の関連施設で記者団に、「核兵器や核兵器運搬システムと同様に重要なのがインフラである。これらへの投資も前進させなければならない分野の一つである。核関連の研究施設や関連の支援施設がその対象だ」と訴えたところです

21日付Defense-News記事によれば
NNSA aging.jpg●ここ数年、米軍の施設建設や施設維持予算は、訓練経費や装備の近代化予算の犠牲になって不十分な状態にある。核兵器関連の施設インフラもこのカテゴリーに入っている
核兵器関連施設を管理するエネルギー省隷下のNNSA(National Nuclear Security Administration)はこの現状を深刻に捕らえており、NNSAトップのFrank Klotz氏は、延期され続けてきた施設維持に約4000億円が必要だと語り、屋根の崩壊事案が続く現状を訴え

●そしてKlotz氏は具体的に、「このポストに就任した直後、核濃縮と行っている施設の屋根が崩壊した。大きなコンクリートの固まりが落下した。幸いけが人はなく、高価な装備への被害もなかったが、被害の可能性はあった
●更に「Lawrence Livermoreの電機関連施設でも、全ての施設の換気システムでもこのような崩壊が始まっている。対策を始めなければならない状態なのだ」とワシントンDCでの9月のイベントで訴えた

核インフラ予算や対策への理解は
●NNSAの2017年度予算案では、核弾頭の近代化予算が約1兆円の一方、インフラや施設運営経費は約3000億円である。
●NNSAの兵器システム開発責任者Brad Boswell氏は記者団に対し、「NNSAはどの部分が最も切迫した問題かを極めて効率的に見極めようとしており、施設全体をバランス感覚を持って中止している」と述べつつ、「極めて厳しい状態にある」「膨れあがりつつある問題の責任者として、極めて懸念している」と訴えている

NNSA aging4.jpg●一方で、この施設やその維持経費について、米議会の理解は十分とは言えない。例えば2月の米議会の上院軍事小委員会で、Jeff Sessions小委員長は懐疑的な目でNNSA関係者に対し、「予算が厳しい状況にある中、施設経費だけに4000億円とは正気なのか?」と問いつめた

●米国防省の元高官は、NNSAの懸念は真っ当であり、政府はこの問題に真剣に取り組み必要があると語り、この問題は単に施設だけの問題ではなく、そこで働く人達の士気に直結する問題だと訴えた
●そして元高官は「水漏れがありドアが壊れたままの施設は、そこで働く人達に、君たちは重要でないとのメッセージを送ることと同じ意味を持つ」と表現した
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核兵器そのものと関連施設や研究機関の問題は、過去6年間に渡りご紹介してきた事項ですが、兵器そのものには期限切れで動きが見え始めましたが、インフラ関連には冬の時代が続いています

いつかぷっつり大きな事故がない限り、この問題が真剣に議論されることはないのでしょうか??? あわせて、中国やロシアでの状況が気になります・・・

米軍「核の傘」で内部崩壊
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「国防長官が現場視察」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-18
「特別チームで核部隊調査へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-27

「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
「米核運用部隊の暗部」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-29

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3軍の文民トップがCNASで思いを語る [米国防省高官]

任期末期で、かなり自由に御発言です

James CNAS.jpg10月24日、CNASで開催されたイベントで米陸軍、米海軍、米空軍の各長官が揃ってパネル討議を行い、様々な勤務を通じての思いや気候変動の影響、大統領選後の備え、小型無人機対処、更にはシリア飛行禁止空域について語りました。

3軍の文民トップが一堂に会して語り合う場面はこれまで聞いたことがありませんが、それぞれの軍種の内部には口を挟まず大人の対応ですが、興味深い話も含まれており、またISIL等のイスラム過激派組織が使用する小型無人機への対処が急務との認識で一致している模様です

陸軍長官や海軍長官の興味深い話
陸軍長官は、新しいプロジェクトを停滞させないため注意すべき2つの事項を述べた。一つは「もう少し調べて検討してから」との姿勢を取らないこと、二つ目は「国防省全体で取り組むべき」との方向に安易に流れないことである
Fanning2.jpgMabus1.jpg●特に二つ目に関しては、全ての軍種への適応を考えたが故に、効率性を損なう結果になりかねないからであると説明し、各軍種がインキュベーターであるべきで、競争や実験重視の姿勢を持つべきだと語った

●海軍長官は気候変動の影響について、北極海の氷が溶けてロシアが派遣拡大を狙っても、米海軍は対処準備が出来ている。しかし温暖化に対策が取られなければ、海面上昇でNorfolk基地は20~30年後に水没するだろう

●11月8日に誰が大統領選ばれようとも、政権委譲チームが私たちのオフィスを訪れたなら、政権委譲に伴う間隙が生じないように準備は万端に出来ていると、3人の文民トップは口を揃えた
●James空軍長官は、特に予算の強制削減や暫定予算措置の停止を進めるよう申し送りを実施すると強調した


なぞの兵器で小型無人機撃退!?
James AFA1.jpg●最近米空軍は、どのような手段を用いたのかには言及を避けているが、ISILが使用していた小型無人機を「電磁的手段:electronic measures」で撃墜した
●James空軍長官は、中東に展開している米空軍部隊が、近傍に1機の小型無人機が飛行しているとの情報を入手し、「かなり迅速に撃退に成功した」と表現した
●空軍長官と同じくイベントで登壇していたメイバス海軍長官とファニング陸軍長官も、小型無人機への対処が急激に優先度を高めていると危機感を示した

シリア「no-fly zone」設置は困難だが言われれば・・
この問題の背景
●シリアの一般国民保護の観点から、これまでも議会等から度々、シリア上空に飛行禁止ゾーンを設定してアサド政権等による一般市民への航空攻撃を阻止するよう要望が出されているが、オバマ大統領は「意味ある手段だが、現時点で米国の選択肢にはない」との立場
●一方でクリントン大統領候補は、3回目の候補者ディベートで、「人命保護と紛争の早期終結のため、飛行禁止ゾーン設定を支持する」との立場を表明した

James空軍長官は
飛行禁止ゾーンの設定は困難で複雑だが、命ぜられればコアリションのメンバーとして実施する。現時点で飛行禁止ゾーン設定の計画はないが
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Rethinking Seminar.jpg米国防関係者の発言も、米軍事メディアの報道も、対ISILや対イスラム過激派関連が5割以上を占めています。
残り3割ぐらいが軍需産業の動きで、最後の2割で中東以外の地域が話題になり、その一部でアジア太平洋がときどき話題になっています

しっかり統計を取ったわけではありませんが、印象的には、アジア太平洋の話題はフィリピン大統領ぐらいで、南シナ海も少なくなりました

最近のJames空軍長官関連
「ICBM後継経費で相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「FMS手続きの簡素化を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-05
「F-35整備員確保の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-14
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