次期制空機NGAD再検討の方向性 [米空軍]
「何を目指す?」「個別装備よりシステムで何が可能?」
「価格も重要」「その中でNGADに求めるものを再精査中」
9月4日、米空軍のHunter調達開発担当次官が講演で、本来なら2025年に機種選定が決着するはずだった次世代制空機NGAD計画を、7月末にKendall空軍長官が第6世代の有人航空機を開発するつもりだと述べつつも、要求内容を再精査&再検討するため「一時停止:Pause」と発表した件に関し、「全ての選択肢を排除しない、しかし元に戻すこともしない」と哲学的な言い回しを駆使しつつ、
様々な軍事技術発達を受け「航空優勢air superiority」概念の再考に迫られる中、米空軍は個々の装備単体で任務を遂行するのではなく、「a family of systems」全体で、かつ配分可能な予算枠の範囲で、所望の成果を得ることを目指しているが、NGAD要求性能検討時の想定より周辺軍事技術(AIやセンサーやネットワーク技術等々)の進化は早く、将来装備全体の中でNGADに求めるものを再検討する必要があると説明(まんぐーす解釈)しました
米空軍協会web記事によれば同次官は
●米空軍は「一時停止」期間の今、まず「我々は何をやろうとしているのか?」に立ち返って再検討を始め、「大規模紛争の困難な環境下で、如何に航空優勢を確保すべきか」も一つの質問で、別の枠組みで「第6世代の有人戦闘機はどうあるべきか」を再検討している。これら疑問は同じレベルの課題ではない。
●率直に言って、NGAD要求性能の初期分析を行って以後、軍事技術は予想以上に急速に進歩しており、NGAD構想時には存在を想定していなかった、新たなレベルの装備や機能が「a family of systems」内に存在可能になってきた。自立性を持った無人ウイングマン機CCAもその一つであり、米空軍が迅速配備に向け全力投球している
●NGADの「一時停止」により、CCAのような「a family of systems」内の装備や機能が、最新技術を反映して調整できる可能性も出てきている。全ての選択肢を排除しない、しかし元に戻すこともしない。我々は航空優勢実現に必要なパッケージ編成の際に、それが実際のニーズを可能な限り満たし、同時に手頃な価格であることを追求している
●(同時登壇のSlife空軍副参謀総長が、個々の装備より、システム全体での融合戦力発揮を重視と述べた点を踏まえつつ、)航空優勢を確保するのは個別装備ではなく、空軍全体で成すべきことで、今後数十年で我々が導入するF-35やF-15EX部隊も、現有のF-22 も任務を担う。これらアセット全体と新たな技術を結び付け、欠落部分を補完しつつ、「a family of systems」の中でNGADが成すべきことは何かを考えている。
●(聴衆からの質問:米空軍が2025年に契約締結してNGADを再開できる可能性は?、に対し)我々の分析が何をもたらすかは待って見なければならない
同記事は補足情報として以下を紹介
●米空軍ドクトリンでは「航空優勢air superiority」の定義を、「必要な特定の時間と場所で、空やミサイルの脅威による妨害を受けることなく作戦を遂行できる、1つの部隊による空の支配の程度」と定義しているが、「特定の時間と場所」との言葉に関し、
●Allvin空軍参謀総長2 月に、「従来やってきたように、何日も何週間も航空優勢を確保可能なレベルに空軍力を維持するには、費用がかかりすぎる」と述べ、5 月に前述のSlife副参謀総長は「制空権のようなものが意味する従来の概念は変化した」と発言している
●これまで米空軍が明らかにしてきた、F-22戦闘機は2030年頃までに退役させるという計画を、ハンター次官が変更し、2030年以降も保有し続ける可能性があるかは不明だ。しかし、NGAD開発とF-22の近代化計画が一時停止していることを考えると、F-22の延命保有される可能性はありそうだ。
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今年の6月まで、NGADは最優先事業で、F-22は早期退役、F-15EXの調達機数は削減、F-35の調達機数も少なくともペースダウン等しても事業を推進すると、米空軍幹部が口をそろえて主張していたのに、この情けない状況です。1機450億円もしそうなNGADは、今の予算状況では導入できないとのシンプルで以前から明白だった結論を、今頃になって「小難しく」言い訳している様子が滑稽です(「結果オーライ」ですが)
今ウクライナや中東で顕在化している、無人機が低高度航空優勢を支配し、戦闘機による従来型航空優勢が無意味なものとなりかけている状況は、ネット上の公開情報だけを片手間で眺めているまんぐーすにも容易に予測でき、米空軍が予測できなかったはずはありません。現実から目を背けていたということです。
さぁ、日本も参加している欧州の2つの次世代戦闘機計画への影響はどう出るでしょうか? 戦闘機製造の産業基盤が・・とか、米国の言いなりでどうする・・とか、極めて曖昧な論拠で、脅威の変化を無視し続けた「戦闘機命派」には即刻退場して頂きたいと思います。OBも含め・・・
次世代制空機 NGADの再検討関連
「数か月間保留する」→https://holylandtokyo.com/2024/08/06/6185/
「価格低減が必須」→https://holylandtokyo.com/2024/07/19/6083/
「NGADの将来は不透明」→https://holylandtokyo.com/2024/06/18/6040/
航空優勢に関する議論
「ドローンでへリ撃墜の衝撃」→https://holylandtokyo.com/2024/08/29/6213/
「重要だが不可能だし必要もない」→https://holylandtokyo.com/2024/06/07/5938/
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→ https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
「価格も重要」「その中でNGADに求めるものを再精査中」
9月4日、米空軍のHunter調達開発担当次官が講演で、本来なら2025年に機種選定が決着するはずだった次世代制空機NGAD計画を、7月末にKendall空軍長官が第6世代の有人航空機を開発するつもりだと述べつつも、要求内容を再精査&再検討するため「一時停止:Pause」と発表した件に関し、「全ての選択肢を排除しない、しかし元に戻すこともしない」と哲学的な言い回しを駆使しつつ、
様々な軍事技術発達を受け「航空優勢air superiority」概念の再考に迫られる中、米空軍は個々の装備単体で任務を遂行するのではなく、「a family of systems」全体で、かつ配分可能な予算枠の範囲で、所望の成果を得ることを目指しているが、NGAD要求性能検討時の想定より周辺軍事技術(AIやセンサーやネットワーク技術等々)の進化は早く、将来装備全体の中でNGADに求めるものを再検討する必要があると説明(まんぐーす解釈)しました
米空軍協会web記事によれば同次官は
●米空軍は「一時停止」期間の今、まず「我々は何をやろうとしているのか?」に立ち返って再検討を始め、「大規模紛争の困難な環境下で、如何に航空優勢を確保すべきか」も一つの質問で、別の枠組みで「第6世代の有人戦闘機はどうあるべきか」を再検討している。これら疑問は同じレベルの課題ではない。
●率直に言って、NGAD要求性能の初期分析を行って以後、軍事技術は予想以上に急速に進歩しており、NGAD構想時には存在を想定していなかった、新たなレベルの装備や機能が「a family of systems」内に存在可能になってきた。自立性を持った無人ウイングマン機CCAもその一つであり、米空軍が迅速配備に向け全力投球している
●NGADの「一時停止」により、CCAのような「a family of systems」内の装備や機能が、最新技術を反映して調整できる可能性も出てきている。全ての選択肢を排除しない、しかし元に戻すこともしない。我々は航空優勢実現に必要なパッケージ編成の際に、それが実際のニーズを可能な限り満たし、同時に手頃な価格であることを追求している
●(同時登壇のSlife空軍副参謀総長が、個々の装備より、システム全体での融合戦力発揮を重視と述べた点を踏まえつつ、)航空優勢を確保するのは個別装備ではなく、空軍全体で成すべきことで、今後数十年で我々が導入するF-35やF-15EX部隊も、現有のF-22 も任務を担う。これらアセット全体と新たな技術を結び付け、欠落部分を補完しつつ、「a family of systems」の中でNGADが成すべきことは何かを考えている。
●(聴衆からの質問:米空軍が2025年に契約締結してNGADを再開できる可能性は?、に対し)我々の分析が何をもたらすかは待って見なければならない
同記事は補足情報として以下を紹介
●米空軍ドクトリンでは「航空優勢air superiority」の定義を、「必要な特定の時間と場所で、空やミサイルの脅威による妨害を受けることなく作戦を遂行できる、1つの部隊による空の支配の程度」と定義しているが、「特定の時間と場所」との言葉に関し、
●Allvin空軍参謀総長2 月に、「従来やってきたように、何日も何週間も航空優勢を確保可能なレベルに空軍力を維持するには、費用がかかりすぎる」と述べ、5 月に前述のSlife副参謀総長は「制空権のようなものが意味する従来の概念は変化した」と発言している
●これまで米空軍が明らかにしてきた、F-22戦闘機は2030年頃までに退役させるという計画を、ハンター次官が変更し、2030年以降も保有し続ける可能性があるかは不明だ。しかし、NGAD開発とF-22の近代化計画が一時停止していることを考えると、F-22の延命保有される可能性はありそうだ。
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今年の6月まで、NGADは最優先事業で、F-22は早期退役、F-15EXの調達機数は削減、F-35の調達機数も少なくともペースダウン等しても事業を推進すると、米空軍幹部が口をそろえて主張していたのに、この情けない状況です。1機450億円もしそうなNGADは、今の予算状況では導入できないとのシンプルで以前から明白だった結論を、今頃になって「小難しく」言い訳している様子が滑稽です(「結果オーライ」ですが)
今ウクライナや中東で顕在化している、無人機が低高度航空優勢を支配し、戦闘機による従来型航空優勢が無意味なものとなりかけている状況は、ネット上の公開情報だけを片手間で眺めているまんぐーすにも容易に予測でき、米空軍が予測できなかったはずはありません。現実から目を背けていたということです。
さぁ、日本も参加している欧州の2つの次世代戦闘機計画への影響はどう出るでしょうか? 戦闘機製造の産業基盤が・・とか、米国の言いなりでどうする・・とか、極めて曖昧な論拠で、脅威の変化を無視し続けた「戦闘機命派」には即刻退場して頂きたいと思います。OBも含め・・・
次世代制空機 NGADの再検討関連
「数か月間保留する」→https://holylandtokyo.com/2024/08/06/6185/
「価格低減が必須」→https://holylandtokyo.com/2024/07/19/6083/
「NGADの将来は不透明」→https://holylandtokyo.com/2024/06/18/6040/
航空優勢に関する議論
「ドローンでへリ撃墜の衝撃」→https://holylandtokyo.com/2024/08/29/6213/
「重要だが不可能だし必要もない」→https://holylandtokyo.com/2024/06/07/5938/
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→ https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
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