米海兵隊司令官が心臓発作で倒れNo2も空席の3日間 [Joint・統合参謀本部]
某上院議員による米軍将官人事承認阻止で370ポスト空席続く
米海軍と空軍トップ不在が2か月ぶり解消も
11月2日、米議会上院は米海軍トップに初の女性であるLisa Franchetti大将を、また空軍トップにDavid Allvin大将を配置することを承認し、2か月以上No2だった両大将が「臨時」で務めていた職務に正式就任することとなりました。(陸軍トップ不在は10月に何とか解消済)
また同時に、9月下旬から海兵隊司令官の任についていたEric Smith海兵隊大将が10月29日に「心臓発作:heart attack」で緊急入院して現在も治療中の中、「臨時代理」を務めるはずの副司令官ポストが9月から空席だった件に関しても緊急承認手続きが行われ、Christopher Mahoney中将(海兵隊司令部のprograms and resources部長)の大将昇任と副司令官就任も認められました
米海兵隊は、イスラエル―ハマス戦争で緊急派遣部隊を細部非公開ながらイスラエル周辺に展開させる命令を出している最中ですが、10月29日(日)にEric Smith海兵隊司令官が倒れた時点では「臨時代理」が存在せず、急遽、海兵隊司令部内で「最先任」であったKarsten Heckl部隊派遣&編制部長(中将)が海兵隊司令官職務を行うことが政府から指示されていたとのことです
上記で名前の挙がった新たなポスト就任が認められた将官は全て、6月から7月に大統領から米議会に承認依頼がなされていたもので、通常であれば8月から9月には上院承認手続きが完了し、新体制で10月1日からの新予算年度を迎えるのが期待された例年の流れですが、
今年は「米本土での妊娠中絶を希望する海外派遣中の女性兵士への旅費や休暇付与」に反対するTommy Tuberville上院議員(共和党:アラバマ州選出)によって人事承認がほとんど停滞しており、上記の海空軍トップや海兵隊No2に承認された幹部の「後任者」は未承認のままで、その他も含めた未承認将官ポスト数が「378ポスト」にもなる異常事態が続いています
10月29日に倒れたSmith海兵隊司令官は、Berger前司令官が退役した7月10日から、副司令官として「司令官代理」を務め、9月21日から正式な司令官(海兵隊司令官空白は約100年ぶり)に就任していますが、7月10日からは司令官と未承認副司令官の両方の職務を行っており、倒れる1週間ほど前にはインタビューで「朝6時から夜11時まで仕事をしており、睡眠時間は5時間だ。私は頑張るが、重要な判断をするポストには適切な状態とは言い難い」とコメントしており、
Jack Reed上院軍事委員長(共和党)は「Smith海兵隊司令官が身体不調に陥ったのは、難癖をつけて人事「一括」承認を拒否しているTuberville議員のせいだ」と厳しく批判していますが、これに対しTuberville上院議員は「私は「一括」承認を拒否しているだけで、個別審査を求めているのだ。また私も睡眠5時間程度で何年も継続して仕事しており、そのこと自体が原因とは言えない」と反論しています
本件と報じる2日付Defense-Newsは、「Tuberville議員の求める人事案の個別審議をしていては、1日8時間審議しても100日以上審議(378ポストなら150日程度)に要し、実現性の無い話だ」と批判しています。なお、11月2日の海空軍トップ等の承認審議は、民主党議員の提案により個別審議で緊急処理されたとのことです
共和党内でも同じ共和党のTuberville議員による昇任阻止を問題視する声は次第に高まっており、11月1日の夜には共和党の退役軍人上院議員2名により、特に国家安全保障上緊急で重要な67ポストの一括審議案が出され4時間以上審議されましたが、Tuberville議員は妥協に応じなかったようです
/////////////////////////////////////////
Tuberville上院議員は、米国大学フットボールの監督(ヘッドコーチ)として著名な人物で、2005年にはアーバン大学監督として年度無敗を記録して5つの異なる年間最優秀監督賞を受け、2015年には全米アメフト監督協会会長を務めた人物です。またアラバマ州では、アーバン大学監督として宿敵アラバマ大学に6年連続で勝利した「伝説の人」として根強い人気があるようです
政治の世界ではトランプ前大統領と強いつながりを持つ人物で、2020年の選挙で上院議員に初当選した後は、トランプ氏が大統領選挙でバイデン氏に敗北した選挙の不正を主張し続けた人物でもあります。
軍人高官人事の停滞が何時まで続くのかよく見えませんが、共和党内の混乱を示す象徴的な状態が続いています
停滞していた軍種トップ人事
「海兵隊トップ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/06/4711/
「海軍トップ」→https://holylandtokyo.com/2023/07/24/4888/
「空軍トップ」→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/
まだ未承認の空軍重要人事
「空軍戦闘コマンド司令官候補」→https://holylandtokyo.com/2023/05/11/4614/
「太平洋空軍司令官候補」→https://holylandtokyo.com/2023/04/26/4567/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
米海軍と空軍トップ不在が2か月ぶり解消も
11月2日、米議会上院は米海軍トップに初の女性であるLisa Franchetti大将を、また空軍トップにDavid Allvin大将を配置することを承認し、2か月以上No2だった両大将が「臨時」で務めていた職務に正式就任することとなりました。(陸軍トップ不在は10月に何とか解消済)
また同時に、9月下旬から海兵隊司令官の任についていたEric Smith海兵隊大将が10月29日に「心臓発作:heart attack」で緊急入院して現在も治療中の中、「臨時代理」を務めるはずの副司令官ポストが9月から空席だった件に関しても緊急承認手続きが行われ、Christopher Mahoney中将(海兵隊司令部のprograms and resources部長)の大将昇任と副司令官就任も認められました
米海兵隊は、イスラエル―ハマス戦争で緊急派遣部隊を細部非公開ながらイスラエル周辺に展開させる命令を出している最中ですが、10月29日(日)にEric Smith海兵隊司令官が倒れた時点では「臨時代理」が存在せず、急遽、海兵隊司令部内で「最先任」であったKarsten Heckl部隊派遣&編制部長(中将)が海兵隊司令官職務を行うことが政府から指示されていたとのことです
上記で名前の挙がった新たなポスト就任が認められた将官は全て、6月から7月に大統領から米議会に承認依頼がなされていたもので、通常であれば8月から9月には上院承認手続きが完了し、新体制で10月1日からの新予算年度を迎えるのが期待された例年の流れですが、
今年は「米本土での妊娠中絶を希望する海外派遣中の女性兵士への旅費や休暇付与」に反対するTommy Tuberville上院議員(共和党:アラバマ州選出)によって人事承認がほとんど停滞しており、上記の海空軍トップや海兵隊No2に承認された幹部の「後任者」は未承認のままで、その他も含めた未承認将官ポスト数が「378ポスト」にもなる異常事態が続いています
10月29日に倒れたSmith海兵隊司令官は、Berger前司令官が退役した7月10日から、副司令官として「司令官代理」を務め、9月21日から正式な司令官(海兵隊司令官空白は約100年ぶり)に就任していますが、7月10日からは司令官と未承認副司令官の両方の職務を行っており、倒れる1週間ほど前にはインタビューで「朝6時から夜11時まで仕事をしており、睡眠時間は5時間だ。私は頑張るが、重要な判断をするポストには適切な状態とは言い難い」とコメントしており、
Jack Reed上院軍事委員長(共和党)は「Smith海兵隊司令官が身体不調に陥ったのは、難癖をつけて人事「一括」承認を拒否しているTuberville議員のせいだ」と厳しく批判していますが、これに対しTuberville上院議員は「私は「一括」承認を拒否しているだけで、個別審査を求めているのだ。また私も睡眠5時間程度で何年も継続して仕事しており、そのこと自体が原因とは言えない」と反論しています
本件と報じる2日付Defense-Newsは、「Tuberville議員の求める人事案の個別審議をしていては、1日8時間審議しても100日以上審議(378ポストなら150日程度)に要し、実現性の無い話だ」と批判しています。なお、11月2日の海空軍トップ等の承認審議は、民主党議員の提案により個別審議で緊急処理されたとのことです
共和党内でも同じ共和党のTuberville議員による昇任阻止を問題視する声は次第に高まっており、11月1日の夜には共和党の退役軍人上院議員2名により、特に国家安全保障上緊急で重要な67ポストの一括審議案が出され4時間以上審議されましたが、Tuberville議員は妥協に応じなかったようです
/////////////////////////////////////////
Tuberville上院議員は、米国大学フットボールの監督(ヘッドコーチ)として著名な人物で、2005年にはアーバン大学監督として年度無敗を記録して5つの異なる年間最優秀監督賞を受け、2015年には全米アメフト監督協会会長を務めた人物です。またアラバマ州では、アーバン大学監督として宿敵アラバマ大学に6年連続で勝利した「伝説の人」として根強い人気があるようです
政治の世界ではトランプ前大統領と強いつながりを持つ人物で、2020年の選挙で上院議員に初当選した後は、トランプ氏が大統領選挙でバイデン氏に敗北した選挙の不正を主張し続けた人物でもあります。
軍人高官人事の停滞が何時まで続くのかよく見えませんが、共和党内の混乱を示す象徴的な状態が続いています
停滞していた軍種トップ人事
「海兵隊トップ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/06/4711/
「海軍トップ」→https://holylandtokyo.com/2023/07/24/4888/
「空軍トップ」→https://holylandtokyo.com/2023/05/19/4648/
まだ未承認の空軍重要人事
「空軍戦闘コマンド司令官候補」→https://holylandtokyo.com/2023/05/11/4614/
「太平洋空軍司令官候補」→https://holylandtokyo.com/2023/04/26/4567/
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/
コメント 0