ひどすぎる現場対処を酷評:艦艇火災喪失事故報告書 [Joint・統合参謀本部]
メインの泡消火装置について誰も操作法知らず
その他消火設備も約9割が整備不良で点検もせず
火災発見から10分以上も火災警報装置を作動せず
放火が火元も、艦艇喪失は艦の問題だと主要幹部を断罪
19日付Military.comは、2020年7月に二等水兵の放火による大火災に見舞われ、2021年4月に修理不能で廃艦が決定した「虎の子」のF-35B搭載可能な強襲揚陸艦Bonhomme Richardに関する事故調査報告書の概要を紹介し、同艦艇の火災対処訓練、関連設備維持整備、艦内艦外連携、管理体制等が全くでたらめであったことから艦艇を失うに至ったと、太平洋艦隊幹部を含む30名以上の責任を厳しく追及する内容だと取り上げています
同艦はF-35B搭載揚陸艦にする2年間の改修工事終了間際で、米海軍が4隻改修を進める中の貴重な1隻で、その廃艦は米海軍&海兵隊にとって大打撃で、その穴埋めとして無理やり英空母エリザベスに米海兵隊F-35Bを搭載し、アジア太平洋まで遠征させたのではないかと言われるほどでした
そんな戦力運用上の大打撃の他に、今回の米海軍艦艇管理のずさんさを暴いた報告書の内容は衝撃的で、艦長以下の主要乗艦幹部だけでなく、太平洋艦隊幹部や消火設備の修理補給に当たる地上勤務の幹部までやり玉に挙がっており、「何をやってもダメな米海軍」との陰口沈静化には程遠い状況です
AP通信が入手したとされる報告書は、正式には米海軍副参謀総長に提出され、処罰は太平洋海軍司令官が決定するらしいですが、問題点として指摘された一部についてご紹介しておきます。艦艇が長期停泊中で、乗員の士気が低下している状況だとしても、あまりにもひどいと思います
19日付Military.com記事による主要問題点
●出火の原因は放火だが、艦艇の喪失は、消火能力の低さが原因で、各所で繰り返された準備不十分な乗員による非効果的な消火活動によってもたらされたものである
●同艦艇の主要な消火システムである「あわ消火システム:firefighting foam system」は本火災において使用されず、火災の拡大を抑え遅らせる機会を逸しているが、聞き取りをした関係者全員が同システムの操作法を知らないか、またはその存在さえも知らなかった。また同装置は適切に維持されていなかった
●火災を発見後、火災発生を艦内に知らせ、火災対処活動開始の発令につながる「火災警報アラーム」が10分間鳴らされず、消火要員の集合編成、火災対処防護装具の装着や消火ホースの準備等の初動対処が遅れ、当日の乗員133名の内60名が、火傷や煙の吸引で等で手当てを受けたることにつながった
●消火関連装備のメンテナンス報告が改ざんされ、艦内消火器具の87%が問題を抱えるか点検されていない状態だった
●艦内は整理整頓がなされず混乱しており、多くの可燃物が乱雑に大量に放置され、火災の急速な艦内拡散につながった
●艦内での火災対処訓練は、パターン化した能力強化につながらないおざなりな訓練で、乗員の参加数は最低限レベルで継続され、乗員の火災対処に関する基礎的知識が欠如していた
●港湾の文民消防組織との連携や訓練は実施されておらず、火災時も乗員と艦外から支援に駆け付けた消防隊員との連携は適切には程遠かった
●発火点は、放火犯として逮捕された2等水兵の勤務エリアである船底に近い区域だが、極めて発火性の高い液体が発火点近くで見つかり、複数の消火栓で消火ホースが抜かれるなど不正改ざんが確認されている
●本火災事案を受け、米海軍は過去12年間の15件の艦艇火災事案をレビューし、火災予防や火災早期探知や初動対処など、同種の問題が再発している状況を再確認し、米海軍が対処を行っている。
●艦艇の喪失に直接的に責任を有すると名指しで指摘された幹部は、
・退役済の太平洋水上艦隊司令官(中将)、太平洋艦隊整備部隊司令官(少将)、米海軍艦艇整備司令官(少将)、地域整備センター司令官(少将)、サンディエゴ海軍基地司令官、第5強襲揚陸軍司令官など
・同艦艇艦長、同艦艇NO2、Command Master Chief
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最近の米海軍は、装備品開発では予算超過と開発期間超過、ついでに期待の性能発揮ができないケースが沿岸戦闘艦LCSやフォード級空母で連続し、部隊運用でも艦艇の衝突や事故が頻発、艦艇修理も補給処の根深い問題と予算不足で遅延が頻発、更にはシンガポール港湾業者による海軍士官へのワイロ事件などもあり、「何をやってもダメな米海軍」とのレッテルを議会や専門家から貼られる厳しい状況です。
米海軍人トップの選考でも、ダントツの本命で期待の星と言われた人物が、就任直前に不適切な業務処理で候補から外れ退役となり、予想外の人物が現在の海軍人トップを務めているなど、前線部隊が盛り上がらない負の話題がてんこ盛り状態です
約400ページの報告書らしいですが、ある意味米海軍の縮図のような内容なのかもしれません
虎の子:F-35B搭載用強襲揚陸艦の火災喪失
「F-35搭載用強襲揚陸艦火災の衝撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-15
米海軍の課題&問題の一端
「3大近代化事業から1つを選べ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-09
「第1艦隊復活を検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-20
「F-35搭載用強襲揚陸艦火災の衝撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-15
「コロナで艦長と海軍長官更迭の空母」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-27
「空母や艦艇修理の3/4が遅延」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-22
「空母フォード責任者更迭」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-08
「NGADの検討進まず」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-17
「米海軍トップ確定者が急きょ辞退退役へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-09
キューバ移民が初めて海軍長官に
「4つのCで海軍を導く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-20
「新海軍長官のご経歴」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-14
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997
ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
その他消火設備も約9割が整備不良で点検もせず
火災発見から10分以上も火災警報装置を作動せず
放火が火元も、艦艇喪失は艦の問題だと主要幹部を断罪
19日付Military.comは、2020年7月に二等水兵の放火による大火災に見舞われ、2021年4月に修理不能で廃艦が決定した「虎の子」のF-35B搭載可能な強襲揚陸艦Bonhomme Richardに関する事故調査報告書の概要を紹介し、同艦艇の火災対処訓練、関連設備維持整備、艦内艦外連携、管理体制等が全くでたらめであったことから艦艇を失うに至ったと、太平洋艦隊幹部を含む30名以上の責任を厳しく追及する内容だと取り上げています
同艦はF-35B搭載揚陸艦にする2年間の改修工事終了間際で、米海軍が4隻改修を進める中の貴重な1隻で、その廃艦は米海軍&海兵隊にとって大打撃で、その穴埋めとして無理やり英空母エリザベスに米海兵隊F-35Bを搭載し、アジア太平洋まで遠征させたのではないかと言われるほどでした
そんな戦力運用上の大打撃の他に、今回の米海軍艦艇管理のずさんさを暴いた報告書の内容は衝撃的で、艦長以下の主要乗艦幹部だけでなく、太平洋艦隊幹部や消火設備の修理補給に当たる地上勤務の幹部までやり玉に挙がっており、「何をやってもダメな米海軍」との陰口沈静化には程遠い状況です
AP通信が入手したとされる報告書は、正式には米海軍副参謀総長に提出され、処罰は太平洋海軍司令官が決定するらしいですが、問題点として指摘された一部についてご紹介しておきます。艦艇が長期停泊中で、乗員の士気が低下している状況だとしても、あまりにもひどいと思います
19日付Military.com記事による主要問題点
●出火の原因は放火だが、艦艇の喪失は、消火能力の低さが原因で、各所で繰り返された準備不十分な乗員による非効果的な消火活動によってもたらされたものである
●同艦艇の主要な消火システムである「あわ消火システム:firefighting foam system」は本火災において使用されず、火災の拡大を抑え遅らせる機会を逸しているが、聞き取りをした関係者全員が同システムの操作法を知らないか、またはその存在さえも知らなかった。また同装置は適切に維持されていなかった
●火災を発見後、火災発生を艦内に知らせ、火災対処活動開始の発令につながる「火災警報アラーム」が10分間鳴らされず、消火要員の集合編成、火災対処防護装具の装着や消火ホースの準備等の初動対処が遅れ、当日の乗員133名の内60名が、火傷や煙の吸引で等で手当てを受けたることにつながった
●消火関連装備のメンテナンス報告が改ざんされ、艦内消火器具の87%が問題を抱えるか点検されていない状態だった
●艦内は整理整頓がなされず混乱しており、多くの可燃物が乱雑に大量に放置され、火災の急速な艦内拡散につながった
●艦内での火災対処訓練は、パターン化した能力強化につながらないおざなりな訓練で、乗員の参加数は最低限レベルで継続され、乗員の火災対処に関する基礎的知識が欠如していた
●港湾の文民消防組織との連携や訓練は実施されておらず、火災時も乗員と艦外から支援に駆け付けた消防隊員との連携は適切には程遠かった
●発火点は、放火犯として逮捕された2等水兵の勤務エリアである船底に近い区域だが、極めて発火性の高い液体が発火点近くで見つかり、複数の消火栓で消火ホースが抜かれるなど不正改ざんが確認されている
●本火災事案を受け、米海軍は過去12年間の15件の艦艇火災事案をレビューし、火災予防や火災早期探知や初動対処など、同種の問題が再発している状況を再確認し、米海軍が対処を行っている。
●艦艇の喪失に直接的に責任を有すると名指しで指摘された幹部は、
・退役済の太平洋水上艦隊司令官(中将)、太平洋艦隊整備部隊司令官(少将)、米海軍艦艇整備司令官(少将)、地域整備センター司令官(少将)、サンディエゴ海軍基地司令官、第5強襲揚陸軍司令官など
・同艦艇艦長、同艦艇NO2、Command Master Chief
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最近の米海軍は、装備品開発では予算超過と開発期間超過、ついでに期待の性能発揮ができないケースが沿岸戦闘艦LCSやフォード級空母で連続し、部隊運用でも艦艇の衝突や事故が頻発、艦艇修理も補給処の根深い問題と予算不足で遅延が頻発、更にはシンガポール港湾業者による海軍士官へのワイロ事件などもあり、「何をやってもダメな米海軍」とのレッテルを議会や専門家から貼られる厳しい状況です。
米海軍人トップの選考でも、ダントツの本命で期待の星と言われた人物が、就任直前に不適切な業務処理で候補から外れ退役となり、予想外の人物が現在の海軍人トップを務めているなど、前線部隊が盛り上がらない負の話題がてんこ盛り状態です
約400ページの報告書らしいですが、ある意味米海軍の縮図のような内容なのかもしれません
虎の子:F-35B搭載用強襲揚陸艦の火災喪失
「F-35搭載用強襲揚陸艦火災の衝撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-15
米海軍の課題&問題の一端
「3大近代化事業から1つを選べ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-09
「第1艦隊復活を検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-20
「F-35搭載用強襲揚陸艦火災の衝撃」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-15
「コロナで艦長と海軍長官更迭の空母」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-27
「空母や艦艇修理の3/4が遅延」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-22
「空母フォード責任者更迭」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-08
「NGADの検討進まず」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-17
「米海軍トップ確定者が急きょ辞退退役へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-09
キューバ移民が初めて海軍長官に
「4つのCで海軍を導く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-20
「新海軍長官のご経歴」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-14
応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
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ブログサポーターご紹介ページ
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1
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