低価格で大量搭載可能なCM対処兵器試験に成功 [米空軍]
対地用レーザー誘導ロケット弾APKWSを使用
価格1/20以下で2倍以上搭載可能
12月19日、米空軍の試験評価飛行部隊が、巡航ミサイルに見立てた無人標的を、F-16戦闘機から発射した安価で小型の空対地ロケットで迎撃に成功したと発表しました。
巡航ミサイルにいかに対処するかは頭の痛い問題で、米戦略軍司令官が少なくとも露のINF破り巡航ミサイルに対し「打つ手なし・お手上げ」だと率直に認める発言をしたこともありましたが、そのまま放置するわけにはいかず、先週実施された米空軍主導の統合のマルチドメインC2演習(今後4か月ごとに実施)でも。「巡航ミサイルからの米本土防衛」がメインテーマに選ばれたところでした
これまで巡航ミサイル迎撃には、高価で大型のAIM-120(通称アムラーム:AMRAAM)の使用が想定されていましたが、1発が6000万円から1億円と言われるAIM-120では非効率だとの意見が米空軍内で出され、代替兵器が検討されてきたようです
アムラームと今回使用されたAPKWSを比較するデータは公表されておらず、射程距離や命中精度などを対比すると当然高価なアムラームに軍配が上がるのでしょうが、中東の対テロで一般市民の巻き添えを局限するため開発された精密誘導ロケットが、異なった分野に応用されて結果を出したことを讃えたいと思います
23日付Military.com記事によれば
●米空軍第53航空団は、19日に所属する第85試験評価飛行隊のF-16戦闘機が、巡航ミサイルに見立てた BQM-167無人標的を、レーザー誘導空対地ロケットAGR-20A(APKWS:Advanced Precision Kill Weapon System)を使用して迎撃試験に成功したと発表した
●試験はフロリダ州のエグリン空軍基地が管理する メキシコ湾上の射撃爆撃演習場で行われ、同ロケットは標的に直撃して破壊した
●迎撃に使用されたAPKWSは、元々はアフガンやイラクでの使用を念頭に、安価に巻き添え被害を局限できる空対地兵器として開発されたものだが、従来対巡航ミサイルに使用を想定されてきたアムラームより安価である
●価格面では、APKWSは1発350万円程度($30,000)であるのに対し、アムラームは20倍以上の1発7000万円から1億円($600,000~$850,000)である
●またAPKWS(直径7cm、全長1m、重量6㎏)はアムラーム(直径18cm、全長3.6m、重量150㎏)より小型で、F-16で考えると、APKWSは14発搭載可能なのに対し、アムラームは6発しか搭載できない。大量に同時発射して敵防空網を飽和させるような使用が想定される巡航ミサイルに対しては、大量の防御兵器が必要であり、小型でプラットフォームに大量搭載できることは大きな利点である
●第53航空団のRyan Messer司令官はプレスリリースの中で、今年1月に開催された「2019 Weapons and Tactics Conference (WEPTAC)」で、アムラームより安価な代替迎撃兵器を見つけることが最優先課題とされたことが契機となり、今回の試験に結び付いていると背景を説明し、
●この実験の成功は、米本土防衛だけでなく、アラビア半島の防衛など、様々な地域の防衛に示唆するものがあり、実験に取り組んだ我が航空団と第85事件評価飛行隊のメンバーを誇りに思う、とコメントしている
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米空軍公開の試験映像
米空軍が20数秒の試験映像を公開していますが、F-16からAPKWSが覇者される場面だけで、迎撃する様子が含まれていません。邪推ですが、標的を珍距離で後ろから追跡する形のF-16からAPKWSを発射したのでは・・・と思います、
APKWSの最大射程は弾頭の大きさにもよるらしいですが、8㎞程度(4nm)であり、アムラームの1/10程度ですから、迎撃兵器としての応用範囲は限定的と考えたほうが良いでしょう
Messer司令官も、「This proof of concept can have implications for homeland defense missions, combined defense of the Arabian Gulf, and beyond」と、試験成果の活用に期待するコメントをしていますが、あくまでも「implications:示唆」との微妙な表現で、使用可能な場面は限定されるとの承知の上なのででしょう
米陸海空軍が統合全ドメインC2演習をルーティン化
「初回のテーマは巡航ミサイルからの米本土防衛」
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-10
CMや超超音速ミサイル対処
「CMから米本土を守る3つの方策」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-30
「宇宙センサー整備が急務」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31
「露の巡航ミサイルへの防御無し」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06
「攻防両面で超超音速兵器話題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-08-1
「超超音速兵器への防御手段無し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-21-1
ミサイル防衛関連の記事
「ミサイル防衛見直し発表」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-19
「グリフィン局長の発言」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08-1
「米ミサイル防衛の目指すべき道」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「BMDRはMDRに変更し春発表予定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24-1
最近話題の記事
「空母1隻とミサイル2000発とどっちが脅威?」
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-20
価格1/20以下で2倍以上搭載可能
12月19日、米空軍の試験評価飛行部隊が、巡航ミサイルに見立てた無人標的を、F-16戦闘機から発射した安価で小型の空対地ロケットで迎撃に成功したと発表しました。
巡航ミサイルにいかに対処するかは頭の痛い問題で、米戦略軍司令官が少なくとも露のINF破り巡航ミサイルに対し「打つ手なし・お手上げ」だと率直に認める発言をしたこともありましたが、そのまま放置するわけにはいかず、先週実施された米空軍主導の統合のマルチドメインC2演習(今後4か月ごとに実施)でも。「巡航ミサイルからの米本土防衛」がメインテーマに選ばれたところでした
これまで巡航ミサイル迎撃には、高価で大型のAIM-120(通称アムラーム:AMRAAM)の使用が想定されていましたが、1発が6000万円から1億円と言われるAIM-120では非効率だとの意見が米空軍内で出され、代替兵器が検討されてきたようです
アムラームと今回使用されたAPKWSを比較するデータは公表されておらず、射程距離や命中精度などを対比すると当然高価なアムラームに軍配が上がるのでしょうが、中東の対テロで一般市民の巻き添えを局限するため開発された精密誘導ロケットが、異なった分野に応用されて結果を出したことを讃えたいと思います
23日付Military.com記事によれば
●米空軍第53航空団は、19日に所属する第85試験評価飛行隊のF-16戦闘機が、巡航ミサイルに見立てた BQM-167無人標的を、レーザー誘導空対地ロケットAGR-20A(APKWS:Advanced Precision Kill Weapon System)を使用して迎撃試験に成功したと発表した
●試験はフロリダ州のエグリン空軍基地が管理する メキシコ湾上の射撃爆撃演習場で行われ、同ロケットは標的に直撃して破壊した
●迎撃に使用されたAPKWSは、元々はアフガンやイラクでの使用を念頭に、安価に巻き添え被害を局限できる空対地兵器として開発されたものだが、従来対巡航ミサイルに使用を想定されてきたアムラームより安価である
●価格面では、APKWSは1発350万円程度($30,000)であるのに対し、アムラームは20倍以上の1発7000万円から1億円($600,000~$850,000)である
●またAPKWS(直径7cm、全長1m、重量6㎏)はアムラーム(直径18cm、全長3.6m、重量150㎏)より小型で、F-16で考えると、APKWSは14発搭載可能なのに対し、アムラームは6発しか搭載できない。大量に同時発射して敵防空網を飽和させるような使用が想定される巡航ミサイルに対しては、大量の防御兵器が必要であり、小型でプラットフォームに大量搭載できることは大きな利点である
●第53航空団のRyan Messer司令官はプレスリリースの中で、今年1月に開催された「2019 Weapons and Tactics Conference (WEPTAC)」で、アムラームより安価な代替迎撃兵器を見つけることが最優先課題とされたことが契機となり、今回の試験に結び付いていると背景を説明し、
●この実験の成功は、米本土防衛だけでなく、アラビア半島の防衛など、様々な地域の防衛に示唆するものがあり、実験に取り組んだ我が航空団と第85事件評価飛行隊のメンバーを誇りに思う、とコメントしている
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米空軍公開の試験映像
米空軍が20数秒の試験映像を公開していますが、F-16からAPKWSが覇者される場面だけで、迎撃する様子が含まれていません。邪推ですが、標的を珍距離で後ろから追跡する形のF-16からAPKWSを発射したのでは・・・と思います、
APKWSの最大射程は弾頭の大きさにもよるらしいですが、8㎞程度(4nm)であり、アムラームの1/10程度ですから、迎撃兵器としての応用範囲は限定的と考えたほうが良いでしょう
Messer司令官も、「This proof of concept can have implications for homeland defense missions, combined defense of the Arabian Gulf, and beyond」と、試験成果の活用に期待するコメントをしていますが、あくまでも「implications:示唆」との微妙な表現で、使用可能な場面は限定されるとの承知の上なのででしょう
米陸海空軍が統合全ドメインC2演習をルーティン化
「初回のテーマは巡航ミサイルからの米本土防衛」
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-10
CMや超超音速ミサイル対処
「CMから米本土を守る3つの方策」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-30
「宇宙センサー整備が急務」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31
「露の巡航ミサイルへの防御無し」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06
「攻防両面で超超音速兵器話題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-08-1
「超超音速兵器への防御手段無し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-21-1
ミサイル防衛関連の記事
「ミサイル防衛見直し発表」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-19
「グリフィン局長の発言」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08-1
「米ミサイル防衛の目指すべき道」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「BMDRはMDRに変更し春発表予定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24-1
最近話題の記事
「空母1隻とミサイル2000発とどっちが脅威?」
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-20
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