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6日付書簡でトルコに最後通牒:F-35計画から排除へ [安全保障全般]

7月末にトルコF-35関係者を米国から排除
部品納入契約も2020年初には終了へ

F-35  Turkey.jpg6日付のShanahan臨時国防長官からトルコ国防相への書簡が明らかになり、今月中にも予期されているロシア製高性能地対空ミサイルS-400のトルコ搬入が行われれば、F-35共同開発国で同機を100機購入予定のトルコを、F-35計画から排除し、既に完成している4機の機体も引き渡さないと最後通牒したことが明らかになりました

Shanahan臨時長官は既に、トルコ国防相と同書簡の内容について5月28日に電話で話しているそうで、イスラム教の国として唯一のNATO加盟国であり、米軍の地域拠点であるインジュリック空軍基地を擁するトルコと米国の関係は、いよいよ正念場を迎えることになりました

Turkey USA.jpg直接のきっかけは、トルコがS-400の操作要領等を学ばせるため、トルコ軍の操作員や整備員をロシアに派遣したことが最近明らかになったための様ですが、西側最新兵戦闘機であるF-35を、ロシア製最新鋭SAMと同居させることで機密が漏洩すると、トルコ側には数年前からあらゆるチャネルを用いて警告してきたにも関わらず、反米のエルドワン大統領は一歩も引かない姿勢でS-400導入を進めてきました

7日に会見した米国防省のEllen Lord担当次官は、S-400の代替として、米議会の許可も得てパトリオットシステムをトルコに輸出する準備も整っているとトルコ側に呼び掛けていますが、トルコ側はこれまで、米側とNATO加盟国からのこのような要請に対し、「S-400導入は既に決定済で契約済の案件だ」として全く聞く耳を持たない様子です

とりあえず、臨時国防長官の書簡とLord担当次官会見から、米国防省の最後通牒内容を確認しておきましょう

7日付Defense-News記事によれば
S-400-launch.jpg報道された6日付の米臨時国防長官からトルコ国防相への書簡によれば、トルコがS-400導入を進めるならば、まず6月12日に予定されているF-35共同開発国と購入国関係者が一堂に会する年次会議「Chief Executive Officer roundtable」にトルコの参加を認めない
そして7月31日をもってトルコ側のF-35関係者(操縦や整備の教育を受けるトルコ軍人や米国防省F-35計画室に連絡官として勤務するトルコ関係者)の米軍基地や米国防省施設立ち入り許可が失効し、トルコへ帰国することになる

●この立ち入り許可取り消しにより、現在42人のトルコ軍兵士が操縦や整備の教育を米国内の基地で受けているが、28名が教育を終了することなく帰国することになる。既に操縦教育を受けた2名のトルコ軍教官パイロットも帰国する事になる
●なお計画では、6月にトルコ軍F-35要員を40人、7月からは追加で12名が米国内の米軍基地で操縦や機体整備の教育訓練を受ける予定であった

トルコ用に製造され、現在トルコ人パイロット養成のためアリゾナ州米空軍Luke基地に置かれている4機のF-35については、一部をトルコに移送する計画を4月から差し止めていたが、トルコ側に引き渡さないこととする

F-35共同開発国として、トルコ軍需産業は937種類のF-35関連部品やパーツ供給を担っているが、その中で400種類はトルコのみが製造している部品等であり、「early 2020」までの契約が締結されている
F-35-Turkey.jpg米国防省F-35計画室長は4月に、トルコからの部品供給が途絶えた場合、約2年にわたり計50-70機の生産遅延につながるとの見積もりを示していたが、Lord担当次官は7日、この見積もりは今年夏にトルコ企業との契約を打ち切った場合の見積もりであり、「early 2020」までの時間を利用して代替調達先の準備を進めれば、影響は局限できるとの見通しを示した

F-35の機体維持整備や修理、能力向上改修についても、トルコでの作業ができなくっても、他の欧州の施設でカバーできるとの見通しを同次官は述べた
●そして改めて同次官は、「トルコには選択肢が残されている。S-400の導入を見直すことで、F-35計画に何の問題もなく復帰が可能だ」と強調し、「昨年12月に米国務省がトルコへのパトリオットミサイルシステム輸出を許可しており、何時でもトルコ側と協議可能だ」と付け加えた

●同次官は、今準備が進んでいる米トルコ空軍共同演習「Anatolian Eagle」は、本事案に関わりなく、両国軍の協力のもとに行われると会見で語ったが、
●米国防省の欧州担当次官補代理は、「我々は決してそれを望んでいないが、トルコがS-400導入を進めた場合、これまでに述べたF-35計画からのトルコ除外以外にも、米議会がロシア製兵器を導入した国を対象とした国家制裁法を発動することになろう」、「今後、両国間の共同訓練にも影響が出るだろう」と語った
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USA Turkey.jpgただ、F-35を海外に売りさばきたい商売人トランプ大統領がトルコ大統領と水面下で「ディール」を画策しているとの噂も常にあり、NATO軍最高司令官の米軍大将が「You never know what the future will reveal」と語っているぐらいの案件ですから、まだまだ何が起こるか・・・

トランプ大統領による「オバマのやった政策は何でもかんでも嫌い」姿勢により、同盟国との関係が崩れ始め、そこに中露が食い込んでくさびを打つ、米国に不満を持っていた同盟国が独自の動きを始める・・・といった大きなうねりの中の大波ですが、対イランの件もあり、とても将来が心配です

米トルコ関係の記事
「6月第1週に決断か」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-23
「トルコが米国内不統一を指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-2
「もしトルコが抜けたら?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-21
「来年10月S-400がトルコ配備」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-27-1
「マティス長官がトルコF-35を擁護」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-24
「6月に1番機がトルコに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-15
「露製武器購入を見逃して」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28-1
「連接しないとの言い訳?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-30
「トルコ大統領が言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-14
「ロシア製S-400購入の動き」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-23 

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