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欧州国軍の象徴か:ドイツ潜水艦が全艦使用不能に [安全保障全般]

冷戦後、放置・削減してきてた国防投資が生んだ惨状か

212A-class.jpg20日付Defense-Newsは、ドイツ海軍が最近購入したばかりの潜水艦に15日に発生したトラブルにより欧州の中核を担うドイツが保有する6隻の潜水艦が全て運用不能に陥ったと、その情けない状況を報じています

ドイツ海軍は、圧倒的な力量と発言力を持つドイツ陸軍の前に「冷や飯」を食わされてきた苦闘の歴史を持ち、例えば、WW2開戦時点に独海軍司令官が「いまや独海軍は勇敢に死ぬことを知っているだけだ」と嘆いた貧弱な状態でした

212A-class2.jpgしかし持ち前のゲルマン魂と知恵で、英国等の連合国に対する通商破壊戦を試み、特に「Uボート」はイギリスを崩壊寸前まで追い詰めて、後にチャーチル英首相に「私が大戦中に恐れたのはUボートの脅威のみである」と言わしめた意地を見せたのがドイツ潜水艦隊です

今でもドイツ軍人によれば、プライドの高い陸軍の発言力が圧倒的に強く、海軍や空軍は弱い立場だそうですが、ロシア軍の活動が活発化し、バルト海周辺の沿岸にロシアの隠密潜水艇が出現しているとの報道がよく出る中、なんともさみしい話です

20日付Defense-News記事によれば
●15日、ドイツ海軍が最近導入したばかりの2隻の「212A級」潜水艦の1隻で、唯一の運用可能状態であった艦番号U-35潜水艦が、ノルウェー沖で潜航動作中にラダーに故障が発生して非稼働状態になった
212A-class3.jpg●U-35は事故後、同潜水艦が建造された北ドイツ沿岸のキール港にある造船所TKMS(ThyssenKrupp Marine Systems)に戻っており、23日の週中には故障の程度を明らかにし、修理に必要な期間等がを見定めることになりそうだ

●TKMS製の「212A級」潜水艦は、イタリアで4隻が既に運用中で、更に今年初めにはノルウェーが発注して話題を集めたばかりである
ドイツ海軍が保有する「212A級」潜水艦6隻の現状は以下のとおりである。なお同潜水艦は、排水量約1500トンのAIP搭載潜水艦で、全長57mです。
・U-31 今年12月まで定期修理中
・U-32 故障で整備ドックの空き待ち
・U-33 来年5月まで修理中
・U-34 故障で整備ドックの空き待ち
・U-35 15日に故障、復旧見積もり中
・U-36 来年2月まで修理中

212A-class4.jpg●ドイツ海軍幹部は潜水艦隊の稼働率低下問題の原因を、部品の調達方式にあると述べ、緊張感のあった冷戦中は修理用予備部品の確保を重視していたが、予算削減の圧力で予備部品が十分確保できないことに根本原因があると訴えている
●それでもドイツ海軍の公式発表によれば、もっとも最近導入した「U-35」と「U-36」 から改善した維持整備方針を導入しており、今回のU-35故障前の段階では、来年中ごろからは3~4隻の潜水艦を運用可能状態で確保できる計画になっている
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ドイツは東西ドイツの統一に伴い、1990年には約80万人のドイツ軍を保有することになりましたが、2010年には約24万人体制(軍人18.5万人、文民5.6万人)にまで縮小されています。

更に2011年当時の政権は追加縮小を打ち出し、軍人18.5万人を6.5万人まで削減し、戦車や戦闘機を3割、攻撃ヘリは80機から40機へ削減する計画までまとめましたが、その後の情勢変化や米国の要請(圧力)もあって踏みとどまり、2016年には軍人と文民あわせて約1.8万人の増強計画を打ち出しました。

D&G3.jpgしかし少子化や人々の軍隊離れから、人集めは難航しており、2014年には給料・諸手当の改善や勤務時間の融通性向上などを含む人材確保策を打ち出し、2015年には今後5年間は国防費5%増を約束するなどしていますが、思うようには進んでいないようです

まぁ・・・計画通り潜水艦の稼働率が改善することを願いますが、国防分野は、一度緩めてしまうと取り返すのが極めて難しいとの事例でしょう。←左はドイツ国防大臣

ドイツ軍の苦悩関連
「美人大臣の増強計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-12
「独と蘭が連合部隊創設へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-05
「今後5年間国防費6%増へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-21-1

「ドイツ軍の人材確保策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-09-1
「2011年時には大軍縮計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-30

東欧中心に徴兵制等復活の動き
「世論支持7割でスウェーデンが検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-15
「ルーマニア・チェコ・リトアニア復活へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-04
「ノルウェーは女性徴兵へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「オーストリア徴兵制維持へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22

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