レールガン:依然として摩擦と消費電力が課題 [Joint・統合参謀本部]

レールガンは、金属の飛翔体を強力な磁界を砲身内に形成して打ち出す兵器で、炸薬を爆発させて弾頭を飛ばす従来の大砲に比べ、安価に大量の飛翔体(弾頭)を艦艇に搭載でき、敵による各種ミサイルによる飽和攻撃を撃退したり、敵に対応の暇を与えない飽和攻撃を可能にするものと期待されてきました

主要な課題には、砲身が高速で射出される飛翔体との摩擦に耐えられず、耐久性が確保できないことや、更に必要とされる大電力の確保が容易でないことが挙げられており、実現化に向けた挑戦が続いています
7月21日付Defense-Tech記事によれば
●米海軍はDDG-1000 Zumwalt級駆逐艦にレールガンを搭載する予定であったが、いつ実現できるかは定かでない
●しかし米海軍研究室ONRはレールガンの早期実現に取り組んでおり、今年の夏から来年にかけ、飛翔体打ち出しパワーを「32 megajoules」にすることや、連続発射速度を1分間に10発発射可能にすることを目指している

●また研究者たちは発射機の砲身(barrel)に新たな複合材を準備し、射出パワーアップと時間当たりの発射弾数増加に備えており、Beutner博士は「パワーと発射速度の目標達成は、来年には可能になるだろう」と語っている
●しかし依然として未解決の課題を抱えており、その一つが飛翔体と砲身の摩耗でレールガンの耐久性が不十分なことである。それでもBeutner博士は、「システムのパーツをより長寿命なものに変えて取り組んでいる」と語り、「最初のころは数十発でダメになっていたが、最近では400発は射出可能で、将来的には1000発に耐えられるまでにできると考えている」と自信を見せた
●もう一つの課題は、大量のパワー(電力)確保である。レールガンが大量の電力を必要とするため、Zumwalt級駆逐艦にしか搭載できない

●米海軍研究室ONRでは、将来海軍艦艇の電力確保のために、どのような発電システムが必要か検討しているが、これはレールガンのためだけでなく、多様なエネルギ兵器や電磁兵器のためでもあると同博士は説明し、「発電と蓄電の課題は、我々の全ての研究開発事項の構成要素となっている」と語った
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レーザー兵器と一緒で、「いつまでたっても、あと完成まで5年」と揶揄されるようになるのでしょうか・・・?
400発発射ごとに砲身を交換する必要があるレールガン、それが1000発になったとしても・・・どうなんでしょうかねぇ・・。艦艇はいったん出航すると半年程度の任務派遣は普通ですからねぇ・・。

更に、ワーク前副長官は昨年5月、「レールガンだが、当初我々は主要な開発領域だと考えたが、試験を進めるうちに「従来型の炸薬型高性能砲弾:powder gun with a hypervelocity round」でも同様の効果が得られる事が判ってきた。それも開発や試験などの経費が不要な形で」と講演で語り、レールガンの有効性や開発コスト負担の妥当性も今後問われることになるのでしょう。
レールガン関連の記事
「期待の星レールガンの現状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-27
「Work副長官の指摘」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
「Zumwalt級駆逐艦を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-22
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