SSブログ

スウェーデンが対露で徴兵制復活を決定 [ふと考えること]

10万人の対象者から、僅か4千人ですが・・・

Sweden.jpg2日、スウェーデンのフルトクビスト国防相(Peter Hultqvist)は2010年7月に一度は廃止していた徴兵制を、今度は女性にも対象を拡大して2018年1月から復活させる方針を明らかにしました。

同国防相は各種報道機関とのインタビューで、ロシアへの警戒感を背景として言及し、「彼らは我々のすぐ近くで、より多くの演習を行っている」「ロシアがクリミアを併合した現状がある」と危機感を露わにしています

注目すべきは現在政権を担って徴兵制復活を推進しているのは少数左派政党の連立政権(Social Democrat-Green coalition)であり、当然ながら議会の右派政党からも支持を受けている点です。

この背景には国民の極めて常識的な国防への危機感と理解があり、200年以上国土が戦争に巻き込まれていない(19世紀のナポレオン戦争が最後)ながら、昨年1月に報道機関が実施した世論調査によると、国民の7割以上が徴兵制復活に賛成で、反対はわずかに16%との結果がそれを物語っています

Sweden Hultqvist.jpgただ国土が日本の面積の1.2倍あり、人口約1000万人のスウェーデンですが、これまであまりにも国防に無頓着だったとも言え、軍は僅か約1.2万人の軽武装国家(陸軍5.5千人、海軍3.0千人、空軍3.3千人)です。

一方で、ODA実績は62億ドル(世界第6位)で、ODAの対GNI比は1.1%(世界第1位)と特徴的で、国際平和協力活動(PKO等)に積極的に参加し、軍縮・不拡散、人権、環境問題等にも貢献と、日本の野党がお好きそうなタイプのお気楽海外貢献国でした

しかし最近のロシアの活発化を受け、NATOには非加盟であるものの、2014年9月にはNATOとの「ホスト国支援」に関するMoUに署名するなど、情勢の変化に対応したような動きも見せていたところでした。

各種報道から徴兵制復活の概要
Sweden4.jpg同国の徴兵制は1901年から100年以上続いたが、7年前に廃止され、志願制に移行した。しかし、好景気を背景に賃金の低い兵士に志願する若者が減り、年4000人が必要なのに約2500人程度しか集められていなかった

●国防省報道官によれば、今年7月から来年1月開始の徴兵の手続きが開始され、従来から18歳以上の国民に提出が義務づけられてきたウェブ調査票の回答に基づき、1999年以降に生まれた18歳の男女の国民約10万人からまず1.3万人を選び、適性検査を経て当面は年4000人に9~11カ月間の兵役を課す。
●国防相は「gender equal profileが重要」「important to emphasise that military service is for girls and guys」だと強調し、史上初めて女性の徴兵も行うとも発表した。

●なお志願制度時代と異なり、徴兵を拒むと罰則がある。また志願制も並行して維持され、毎年採用する4000名の中には18歳以上の志願兵も含まれる(志願兵を優先するのかは不明)
●国防軍事組織のモデル再構築は、中心となる国防能力の強化につながるだけでなく、災害対処や救難救助や環境浄化に関する文民機関を支援する能力提供にもつながるとも説明している

2010年徴兵制廃止後のゴタゴタ
Sweden3.jpg2010年にスウェーデンは、徴兵制から志願制訓練に変更した。これは、志願制にすることで、よりプロフェッショナルな軍に移行すること狙ったのだ
●そしてスウェーデン軍は2016年末までに組織改編を行う計画を進め、2016年年初には人の充足を完了している予定であった。しかし現実には1000~1200名の正規兵が不足していた

●また「part-time positions」の不足はさらに深刻で、6千~7千人が不足している状況だった。更に予備役も約1000人不足
●そこでスウェーデン軍は、人員不足が発生している各部隊の状況を改善するため、従来の徴兵制と予備役制度の復活を求めている
///////////////////////////////////////////////////////

Sweden2.jpg余計な手間ばかりかかって社会的コストの大きい徴兵制は、先進国では避けるべきで、日本でも自衛官の処遇改善や社会的な地位向上で、志願制軍事組織を維持すべきと思います。

一方で、ロシアに直面したスウェーデンのこの動き、特に「男女平等に徴兵」あたりの考え方について、日本の民進党や社民党や共産党の皆様に伺ってみたいものです

森友学園とかどうでも良いので、世界の安全保守環境について、国会でしっかり議論して頂きたいものです

世界の徴兵制:背景は様々
●ロシアの脅威に対抗するため
「ルーマニア・チェコ・リトアニアが復活へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-04
「スウェーデンも復活検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-15
脅威対処と国民意識の醸成でイスラエル
「写真で確認:イスラエル女性兵士」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27

●究極の男女平等のためのノルウェー
「ノルウェーは女性徴兵へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
●国民意識と社会福祉への人員確保のオーストリア
「オーストリア徴兵制維持へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22

●若者の社会教育?とイラン対処?
UAEが徴兵制導入」→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-21-1

nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0