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同盟国等へ:米軍の弾薬を今後頼りにするな [米空軍]

戦闘機ばかりを優先し、弾薬を後回しにするな!

Grant-AFA5.jpg18日、米空軍省の国際問題担当次官補を6年以上務めている大御所Heidi Grant女史が空軍協会で講演し、対ISIL作戦等で消費が急増して在庫が不足しつつある精密誘導兵器等の弾薬の同盟国等への売却について、従来のように必要時に米軍弾薬庫から融通するようなことは出来なくなると明言して関係国に警鐘を鳴らしています

精密誘導兵器在庫が不足しつつある事は先日の記事でもご紹介しましたが、Grant女史は同盟国等が戦闘機など目立つ装備の予算配分には力を入れる一方で、弾薬を後回しにする姿勢にまで踏み込んで批判的に言及し、計画的に戦いを想定した予算配分を行うべきと厳しい姿勢を示しています

戦闘機の機数と飛行隊の数維持だけを最優先にし、脅威の変化を無視し続けている我が空軍も、もしかしたら「弾薬後回し」になっているのでは・・・と邪推し、勝手に心配になったのでご紹介しておきます

それともう一つ、クウェートに40機のFA-18E/F、カタールに72機のF-15QAを売却する許可を米国務省が出し、両機種を製造するボーイングが大喜びで、製造ラインが2020年代まで稼働する方向が強まったとの「喜ばしい」ニュースもご紹介します

18日Grant女史が空軍協会で講演し
PGM-Grant.jpg●18日、米空軍協会主催の朝食会で講演したHeidi Grant米空軍省の国際問題担当次官補は、米国の同盟国や友好国が米軍の豊富だった精密誘導兵器等の在庫に依存し、いざという時に融通するような長きに亘った慣習は変更すべきであると語った
●Grant女史は「同盟国等には厳しく協議に臨んでおり、戦闘機の様な主要装備の近代化ばかりに目をやり、弾薬を後回しにして予算の残りで調達するような姿勢を改めるよう指摘している」と述べた

●更に「予算案を練る際は、将来予想される紛争シナリオを良く吟味し、適切な組み合わせの弾薬の購入をしっかり組み込むべきである」、「従来の同盟国等の弾薬への姿勢は、必要になったら米国の在庫を当て身すれば良い・・だった様に見える」と厳しく指摘した
●そして米軍が精密誘導壁に不足に直面していることに言及し、予算配分から弾薬入手まで2年間の猶予が必要なことに触れ、「米国はもはや大規模な弾薬在庫を持ち得ず、同盟国等の弾薬庫の役割は果たせない」と突き放した

Grant-AFA2.jpg米軍自身も強制削減を控えた暫定予算下で不足弾薬の大量調達が不可能であり、何とか軍需産業の協力を得てやりくりを行っているのであり、同盟国にも考えを改めてもらう必要があると同女史は示唆した
●更に踏み込んでGrant次官補は同盟国等に対し、「精密誘導壁が必要なければ使用するな。目標に応じた弾薬兵器を選択すべきだ。先を見越して先行的に購入予算を確保すべきだ」とまで言い切った

ボーイング驚喜:FA-18とF-15増産へ
●17日、米国務省がクウェートに40機のFA-18E/F、カタールに72機のF-15QAを売却する許可を出し、最終的に議会の承認が必要ですが、実質上問題なしと見られている。
●関連装備を含めると、40機のFA-18E/Fは約1兆1千億円、72機のF-15QAは約2兆2千億円規模の事業だと、国防協力庁は発表している

FA-18.jpg両機種は共にボーイングが製造しており、FA-18については海軍用に電子戦機に改造するEA-18Gの製造が終了する2018年、F-15はサウジやシンガポール用等に生産を終了する2019年には生産ラインを停止する予定だったところ、製造ラインが2020年代まで稼働する方向が強まり、ボーイングは大喜び
●なお、クウェートは現在旧式のFA-18を使用しており、カタールはフランスから購入したMirage 2000とAlpha Jetsを使用している

Grant女史は本件について
●本件は長期に亘り関係国と協議してきた案件でアリ、次期政権関係者と本件については何も話していない。2年前には実現していたはずの案件である
●米国は淡々と本件を進め、来年1月20日(トランプ大統領就任式)までに手続きは終了する
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Grant-AFA4.jpg米空軍省の国際問題担当次官補を6年以上連続して務めていること自体が、「余人を持って代え難い」存在感を示しているGrant女史ですが、「プラットフォーム優先」で「弾薬後回し」問題はごもっともな指摘であり、対ISILで射耗している中東やリビア作戦で射耗した欧州にとっては頭の痛いことでしょう。

我が国防軍はと言えば、創設当時の作と思われる「たまに打つ、弾がないのが、玉(弾)に瑕(きず)」との川柳が思い出されますが、今もそうなんでしょうか???
 
60周年を迎えたと数年前言ってましたが、還暦を迎えれた今となっては、少しは改善されていると信じたいモノです(嫌みタップリ・・)

FA-18やF-15の増産はボーイングにとって朗報ですが、生産ラインが「延命」されることは我が空軍のF-2やF-15戦闘機の後継を考える上で吉報でしょう。
我が空軍には4.5世代機程度で十分でしょうし、他に投資すべき分野があるはずですから・・・

精密誘導兵器が不足
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-03

いい加減にしろ戦闘機命派
「悲劇:F-35の主要問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
「悲劇:F-3開発の問題整理と提言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18
戦闘機の呪縛から脱せよ」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16

戦闘機への投資を語る空自OB
織田邦男の戦闘機命論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-06
広中雅之は対領空侵効果に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-18-1
小野田治も戦闘機に疑問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-05

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