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米軍戦術核の改修延命に約1兆円 [Joint・統合参謀本部]

B-61 LEP.jpg19日付Defense-Newsが、米空軍が保有する戦術核爆弾「B-61」の改修延命経費に関するエネルギー省隷下のNNSA(National Nuclear Security Agency)の見積もりや、改修計画概要を紹介しています。

見積もりによれば、NNSAが担当する爆弾本体関連が約8500億円で、国防省が担当する「tailkits」が約1500億円となり、合計約1兆円となる模様です

カーター長官は9月26日、戦術核兵器「B-61」だけでなく、戦略原潜やICBMを含めた米軍核戦力が、当初の寿命を10年以上超えて保有されており、「この更新を行わないなら、不安全で、信頼性が低く、効果が不十分になる」「更新するか維持するかではなく、更新するか保有ゼロになるかの選択だ」と述べ、予算確保の必要性を訴えています

戦略原潜やICBM、更には各関連各種施設や新型爆撃機B-21等まで含めると、必要経費は10兆円とも言われていますが、本日はとりあえず戦術核爆弾B-61の更新経費を見てみます

19日付Defense-News記事によれば
B-61 LEP3.jpg●核兵器の使用や運搬手段(艦艇、航空機、ミサイル)については米軍が担当するが、核弾頭の開発・維持・破棄はそのものはエネルギー省隷下のNNSAが担当する
●今年夏までにNNSAがまとめたB-61戦術核爆弾の延命経費は、爆弾関連直接経費が約7800億円で、関連技術や製造経費が700億円である。これとは別に、国防省が担当する爆弾の「tailkits」が約1500億円となり、合計約1兆円と見積もられる

●NNSAは米軍が保有する全ての核弾頭10種類を、5種類に整理統合する「3+2 Strategy」を基に本見積もりを行っている
外部の専門家は、この見積もりは20年以上前から繰り返し行われてきたものだが、2013年当時の見積もりと大きな変化は無く、実施上の新たな問題は発生していないのだろうとコメントしている

●「3+2 Strategy」とは、現有の弾道ミサイル弾頭5種類を3種類(IW-1, IW-2, and IW-3)に集約し、戦術核や巡航ミサイル用の5種類を2種類(W80-4 and the B61-12)に集約する構想である
B-61戦術核に関しては、現有の4種類(B61-3, -4, -7 and -10)を1種類(B61-12)に集約する計画である

次期の核巡航ミサイルLRSOが批判対象に
LRSO3.jpg●米空軍が開発を進めようとしている新しい核搭載長距離巡航ミサイル(LRSO:Long Range Stand-Off)は、戦術核兵器等との重複だとして、以前から議会等から批判されているが、大統領候補のクリントン氏が9月にLRSOへの懸念を表明し、向かい風が更に強くなっている
●先述の専門家は「LRSOの調達コストは2~2.6兆円と見積もられており、米軍核兵器の役割過剰重複の議論に拍車をかけている」と批判的にコメントしている
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Work副長官を始め米国防省首脳部が推進する「第3の相殺戦略」や、その背景にしっかり息づいている「エアシーバトル」の考え方も、確固たる核抑止態勢が維持されていることが大前提にあります。
以前Work副長官は、ミアシャイマーの定義を引用し、核戦力と通常兵器の両輪が重要だと語っていたところです

B-61 LEP2.jpgですから、実質「忘れられていた兵器」扱いになっていた核兵器とその運用部隊は、必要規模を精査しつつ、必ず堅実に維持される必要があります。
一方で、長年放置されてきた付けは大きく、その負担を厳しい予算状況の中で同負担するかが重い課題となっています。

韓国や日本が核武装だと言っても、その経費は莫大で、やはり米国にお願いするのが「右肩下がり」の日本の有力な選択肢です。
クリントンでもトランプでも、核抑止の維持には注目が必要です

戦術核兵器とF-35記事など
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

ICBM後継に関する記事
「ICBM経費見積もりで相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1

オハイオ級SSBNの後継艦計画関連
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13

関連記事
「核戦力維持に10兆円?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-09
「次期空母の建造費を削れ!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-07

オバマ大統領が「核兵器先制不使用」の宣言準備?
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-07

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