新政権の国防予算問題の鍵はF-35機数 [米国防省高官]

同次官は現職とは言え、政治任用である同ポストが他人に引き継がれるであろうことから、慎重ながらかなり達観した風に気楽に語っており、問題の本質が伺えます
やはり見え隠れするのがF-35調達機数の扱いで、現時点では絶対削減すると言えない立場とは言え、他の分野の装備を犠牲にすることの難しさを語りつつ、F-35が重要だと語りつつ、F-35の調達ペースや総機数を維持することが大きな代償を伴うことをしっかり語っています
CSBA研究員の話も交え、複数のメディア報道から「Common Defense 2016」の様子をつまみ食いでご紹介します
懸命に育てた革新技術の芽を維持できるか

●ここ最近国防省は、初期段階にある革新的技術を成熟させリスクを低減するための予算の重要性を認識し、多くの予算確保を懸命に行ってきたが、今後の5ヶ年計画にこれを続ける予算は確保できなかった
●誰が新たに国防省に来ようが、一連のかなり厳しい課題を引き継ぐことになる。技術革新や業務革新により、それら課題を軽減するよう努めてきた。(国防省には)革新が欠けているとの間違った印象を、我々が作り出してしまったかも知れないが、私はそうは思わない。
●多くの革新を生み出してきたこともあり、私は根本的な問題が、資源不足により革新技術等を具体化して前線や同盟国に提供できないことにあると考えている
●本件に関連してCSBAのTodd Harrison研究員は、新たな兵器を導入するため従来装備や他分野を犠牲にすることは、影響を受ける選挙区選出の議員の反対を受けることから容易ではないと、同イベントで指摘している
自立化や生物工学等の先端技術で敵が先んじたら

●第3の相殺戦略の中で国防省が自律システムを追求し、相手を凌駕しようとしても、敵に先を越されれば不利な立場に追いやられる
●また米国は人道的立場から殺傷兵器の使用を管理するが、相手がそうするとは限らない。我が方は一般市民の保護などの価値観を維持するが、他がそうするかは確信が持てない
F-35予算を巡る課題
●ケンドール国防次官は、予算の強制削減関連の縛りがあり、2017年度予算要求でも、5機のF-35購入を先送りした。しかし今後は優先度の高い複数装備の予算が必要となることから、後任者は計画通りのF-35購入困難に直面するだろうと述べた
●また、核兵器3本柱への予算確保や他の重要事業を前にし、バランスシートを見ながら、F-35を計画通り実施するほど予算が無いと言わざるを得ない誘惑に駆られる。F-35は強力な戦闘力だが、F-35に手を付けなければ、他の分野が大きな痛手を受けると表現した

●「LRIP contracts 9 and 10」と呼ばれる次期のF-35購入契約に関し、ロッキード社と国防省協議が難航している。ここ数年間価格が安定してきた中で、企業側の要求に変化があるものと推測されているが、当面の経費を確保すすための臨時支出要請が検討されている
●8月に国防省のMichael Gilmore試験評価部長が、引き続き問題を抱えるソフトウェア問題やセンサー等と兵器融合の不具合を厳しく指摘している。
●これに対しケンドール次官は、指摘は承知しているが、既に把握して対処を進めている課題で有り、引き続き適切な事業管理を行っていくと何時ものような回答をしている
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かねてより「」では、F-35の「死のスパイラル」入りは新政権誕生直後からと予言してきましたが、残念ながらその方向に事態が推移しそうな具体的発言が、装備品調達の責任者である米国防省高官から聞かれるようになってしまいました

F-35活動の基盤である数少ない地上インフラは、対中国有事には簡単に無効化され、F-35の極東での活躍は極めて限定的になると想像されるからです
「懸命に育てた革新技術の芽を維持発展」させるため、F-35は早めに正体を現してもらい、日本の戦闘機命派の「心変わり」を促進してほしいものです
F-35調達機数の削減は必至
「統参謀議長が削減検討に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-11
「重鎮マケイン議員も削減要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-22
「MDFを共有不可な購入国がある」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-01
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